(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】重ね合わせ複合部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 3/18 20060101AFI20240827BHJP
B60R 13/02 20060101ALI20240827BHJP
B29C 59/04 20060101ALI20240827BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
B32B3/18
B60R13/02 B
B29C59/04 Z
B32B27/00 J
(21)【出願番号】P 2023190052
(22)【出願日】2023-11-07
【審査請求日】2024-02-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000241496
【氏名又は名称】豊田鉄工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106781
【氏名又は名称】藤井 稔也
(72)【発明者】
【氏名】宮下 長武
【審査官】岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/202626(WO,A1)
【文献】中国実用新案第208698097(CN,U)
【文献】国際公開第2007/063653(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B29C 39/00-39/24,39/38-39/44
B29C 43/00-43/34,43/44-43/48,43/52-43/58
B29C 59/04
B60R 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材を覆う表皮材と、軟質樹脂材料により形成されるとともに前記基材と前記表皮材との間に設けられる中間部材と、を備え
、
前記中間部材は、板状のベース部と、前記ベース部における前記基材に対向する第1面から突出する複数の第1突起と、前記ベース部における前記表皮材に対向する第2面から突出する複数の第2突起と、を有し、
前記第1突起および前記第2突起は、前記第1面における前記第1突起の基端部分と前記第2面における前記第2突起の基端部分とが前記ベース部の厚さ方向において重ならないように配置され
、
前記基材および前記中間部材および前記表皮材が重ね合わされてなる重ね合わせ複合部品の製造方法であって、
前記中間部材を成形する成形装置としては、外周面が前記第1突起を成形するための第1孔を有する第1加工ロールと、外周面が前記第2突起を成形するための第2孔を有する第2加工ロールと、が外周面同士が対向配置された状態で回転駆動されるものが用いられ、
前記第1加工ロールおよび前記第2加工ロールを回転駆動した状態で、前記第1加工ロールの外周面と前記第2加工ロールの外周面との間に溶融樹脂材料を送り込むことで、前記中間部材を押出成形する、
重ね合わせ複合部品
の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重ね合わせ複合部品の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、基材と、同基材に向かって突出するとともに撓み変形可能にされた複数の突起を有する表皮材とを備える重ね合わせ複合部品が開示されている。この複合部品では、表皮材が基材に向かって押し込まれると、複数の突起の少なくとも一部が基材と接触するとともに撓み変形する。そのため、使用者に対して、発泡ウレタンなどの発泡材が埋め込まれた複合部品に似た感触を提示することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
重ね合わせ複合部品として、基材と表皮材との間に、板状のベース部と同ベース部の両面に設けられる複数の突起とを有する中間部材が設けられたものを採用することが考えられる。この複合部品によれば、上記感触の設定についての自由度が高くなる。しかしながら、この場合には、中間部材の構造が両面に複数の突起を有する複雑な形状になってしまう。そのため、成形装置を用いて中間部材を成形する場合に、ショートショットが発生し易くなるなど、中間部材の形成に際して不具合が発生し易くなる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための重ね合わせ複合部品は、基材と、前記基材を覆う表皮材と、軟質樹脂材料により形成されるとともに前記基材と前記表皮材との間に設けられる中間部材と、を備え、前記基材および前記中間部材および前記表皮材が重ね合わされてなる重ね合わせ複合部品であって、前記中間部材は、板状のベース部と、前記ベース部における前記基材に対向する第1面から突出する複数の第1突起と、前記ベース部における前記表皮材に対向する第2面から突出する複数の第2突起と、を有し、前記第1突起および前記第2突起は、前記第1面における前記第1突起の基端部分と前記第2面における前記第2突起の基端部分とが前記ベース部の厚さ方向において重ならないように配置されている。
【0006】
前記課題を解決するための重ね合わせ複合部品の製造方法は、基材と、前記基材を覆う表皮材と、軟質樹脂材料により形成されるとともに前記基材と前記表皮材との間に設けられる中間部材と、を備え、前記中間部材は、板状のベース部と、前記ベース部における前記基材に対向する第1面から突出する複数の第1突起と、前記ベース部における前記表皮材に対向する第2面から突出する複数の第2突起と、を有し、前記第1突起および前記第2突起は、前記第1面における前記第1突起の基端部分と前記第2面における前記第2突起の基端部分とが前記ベース部の厚さ方向において重ならないように配置され、前記基材および前記中間部材および前記表皮材が重ね合わされてなる重ね合わせ複合部品の製造方法であって、前記中間部材を成形する成形装置としては、外周面が前記第1突起を成形するための第1孔を有する第1加工ロールと、外周面が前記第2突起を成形するための第2孔を有する第2加工ロールと、が外周面同士が対向配置された状態で回転駆動されるものが用いられ、前記第1加工ロールおよび前記第2加工ロールを回転駆動した状態で、前記第1加工ロールの外周面と前記第2加工ロールの外周面との間に溶融樹脂材料を送り込むことで、前記中間部材を押出成形する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態の重ね合わせ複合部品について中間部材における第1突起および第2突起の配置態様を示す模式図である。
【
図2】第1実施形態の重ね合わせ複合部品の断面構造を模式的に示す断面図である。
【
図3】第1実施形態の中間部材の第1面側を示す斜視図である。
【
図4】第1実施形態の中間部材の第1面側を示す平面図である。
【
図5】第1実施形態の中間部材の形成に用いる成形装置を示す略図である。
【
図6】第1実施形態の作用を説明するための作用図である。
【
図7】第2実施形態の重ね合わせ複合部品について中間部材における第1突起および第2突起の配置態様を示す模式図である。
【
図8】変形例の重ね合わせ複合部品について中間部材における第1突起および第2突起の配置態様を示す模式図である。
【
図9】他の変形例の重ね合わせ複合部品について中間部材における第1突起および第2突起の配置態様を示す模式図である。
【
図10】その他の変形例の重ね合わせ複合部品について中間部材における第1突起および第2突起の配置態様を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1実施形態)
以下、
図1~
図6を参照して、重ね合わせ複合部品および同重ね合わせ複合部品の製造方法の第1実施形態について説明する。
【0009】
図2に示すように、重ね合わせ複合部品(以下、内装部品10)は、例えば自動車のドアトリムなどである。内装部品10は、基材11や、同基材11を覆う薄板状の表皮材12、基材11と表皮材12との間に設けられる中間部材13を備えている。内装部品10は、基材11、中間部材13、および表皮材12が重ね合わされることで形成されている。
【0010】
基材11は、ポリプロピレンなどの硬質樹脂材料により形成されている。表皮材12は、軟質ポリ塩化ビニルなどの軟質樹脂材料により形成されている。中間部材13は、軟質ポリ塩化ビニルなどの軟質樹脂材料により形成されている。
【0011】
図2および
図3に示すように、中間部材13は、ベース部20と、複数の第1突起30と、複数の第2突起40とを有している。これらベース部20、複数の第1突起30、および複数の第2突起40は一体成形されている。
【0012】
ベース部20は板状をなしている。複数の第1突起30は、ベース部20における上記基材11に対向する第1面31から突出している。複数の第2突起40は、ベース部20における上記表皮材12に対向する第2面41から突出している。なお、ベース部20は一定の厚さを有している。ベース部20では、第1面31および第2面41は互いに平行である。
【0013】
図2に示すように、表皮材12に対して外力が作用していない状態において、各第1突起30の先端は基材11に接触している。また、上記状態において、各第2突起40の先端は表皮材12に接触している。
【0014】
図2および
図3に示すように、第2突起40は、四角錐体であり、全ての角が丸められている。また、図示は省略するが、第1突起30も第2突起40と同様な四角錐体であり、全ての角が丸められている。本実施形態では、第1突起30と第2突起40とは同一形状をなしている。
【0015】
第1突起30および第2突起40の突出方向は、ベース部20に対して傾斜している。すなわち、第1突起30の突出方向は、第1面31の法線L1に対して所定角度αだけ傾斜している。また、第2突起40の突出方向は、ベース部20の上記第2面41の法線L2に対して所定角度αだけ傾斜している。
【0016】
<第1突起30の配置態様>
次に、ベース部20の第1面31における第1突起30の配置態様について説明する。
図4に示すように、本実施形態では、ベース部20の第1面31に、多角形格子をなす仮想線(以下、第1仮想格子32)が設定される。本実施形態では、第1仮想格子32の多角形格子としては、複数の正六角形(以下、第1六角形33)により構成される正六角形格子が採用される。
【0017】
第1突起30は、上記第1六角形33の辺(以下、第1辺34)にあたる位置に設けられる。具体的には、1つの第1六角形33に対して、6つの第1辺34に1つずつ、合計6つの第1突起30が設けられる。各第1突起30は、第1面31における基端部分が第1六角形33の第1辺34の上に位置するように設けられている。
【0018】
同一の第1六角形33において対向する2つの第1辺34に設けられる第1突起30は、同一方向に傾斜した状態で突出している。また、隣合う第1辺34に設けられる第1突起30は、互いに異なる方向に傾斜した状態で突出している。
【0019】
<第2突起40の配置態様>
次に、ベース部20の第2面41における第2突起40の配置態様について説明する。
ベース部20の第2面41における第2突起40の配置パターンは、上述した第1面31における第1突起30の配置パターンと同一である。
【0020】
具体的には、ベース部20の第2面41には、多角形格子をなす仮想線(以下、第2仮想格子42)が設定される。本実施形態では、第2仮想格子42の多角形格子としては、複数の正六角形(以下、第2六角形43)により構成される正六角形格子が採用される。
【0021】
第2突起40は、上記第2六角形43の辺(以下、第2辺44)にあたる位置に設けられる。具体的には、1つの第2六角形43に対して、6つの第2辺44に1つずつ、合計6つの第2突起40が設けられる。各第2突起40は、第2面41における基端部分が第2六角形43の第2辺44の上に位置するように設けられている。
【0022】
同一の第2六角形43において対向する2つの第2辺44に設けられる第2突起40は、同一方向に傾斜した状態で突出している。また、隣合う第2辺44に設けられる第2突起40は、互いに異なる方向に傾斜した状態で突出している。
【0023】
<第1仮想格子32と第2仮想格子42との位置関係>
本実施形態では、第1仮想格子32における第1六角形33の第1辺34と第2仮想格子42における第2六角形43の第2辺44とが中間部材13の延在方向にずれる態様で、第1仮想格子32および第2仮想格子42が設定されている。詳しくは、正六角形状をなす第1六角形33の大きさと正六角形状をなす第2六角形43の大きさとが同一になるように、第1仮想格子32および第2仮想格子42は設定されている。また、第1六角形33の中心と第2六角形43の角とがベース部20の厚さ方向H(
図4の紙面に直交する方向)において重なるように、第1仮想格子32および第2仮想格子42は設定されている。そして、第1仮想格子32の第1辺34にあたる位置に第1突起30が設けられる一方で、第2仮想格子42の第2辺44にあたる位置に第2突起40が設けられる。
【0024】
これにより、第1突起30および第2突起40は、第1面31における第1突起30の基端部分と第2面41における第2突起40の基端部分とが上記厚さ方向Hにおいて重ならないように配置されている。
【0025】
本実施形態では、厚さ方向Hから見て、第1六角形33の内側には3つの第2突起40の基端部分が配置されている。これら3つの第2突起40の基端部分は、正三角形の各頂点の位置に対応して設けられている。そして、これら3つの第2突起40は、互いに異なる方向に傾斜した状態で突出している。
【0026】
また、厚さ方向Hから見て、第2六角形43の内側には3つの第1突起30の基端部分が配置されている。これら3つの第1突起30の基端部分は、正三角形の各頂点の位置に対応して設けられている。そして、これら3つの第1突起30は、互いに異なる方向に傾斜した状態で突出している。
【0027】
<成形装置50>
次に、中間部材13の形成に用いる成形装置50について説明する。
図5に示すように、成形装置50は、第1加工ロール51、第2加工ロール52、および供給部53を有する。
【0028】
各加工ロール51,52は円柱形状をなしている。第1加工ロール51の外周面には第1突起30を成形するための第1孔511が複数設けられている。また、第2加工ロール52の外周面には第2突起40を成形するための第2孔521が複数設けられている。加工ロール51,52は外周面同士が対向配置される。加工ロール51,52は、各々の中心軸を回転中心に、互いに反対方向に回転駆動される。供給部53は、第1加工ロール51の外周面と第2加工ロール52の外周面との間に、溶融樹脂材料を送り込むものである。
【0029】
成形装置50によって中間部材13を成形する際には、加工ロール51,52を回転駆動した状態で、供給部53から加工ロール51,52の間に溶融樹脂材料が送り込まれる。これにより、第1突起30および第2突起40を有する中間部材13が押出成形される。
【0030】
<作用効果>
本実施形態によれば、以下に記載する作用効果が得られる。
(1-1)内装部品10は、基材11と、基材11を覆う表皮材12と、軟質樹脂材料により形成されるとともに基材11と表皮材12との間に設けられる中間部材13と、を備えている。内装部品10は、基材11、中間部材13、および表皮材12が重ね合わされることで形成されている。中間部材13は、板状のベース部20と、ベース部20における上記基材11に対向する第1面31から突出する複数の第1突起30と、ベース部20における上記表皮材12に対向する第2面41から突出する複数の第2突起40とを有している。第1突起30および第2突起40は、第1面31における第1突起30の基端部分と第2面41における第2突起40の基端部分とが上記ベース部20の厚さ方向Hにおいて重ならないように配置されている。
【0031】
図6に示すように、成形装置50により中間部材13を成形する際には、第1加工ロール51と第2加工ロール52との間において、2つの分岐する溶融樹脂材料の流れ(
図6中に矢印F1,F2で示す)が生じている。2つの流れの一方(以下、第1の流れF1)は、ベース部20を成形する部分から分岐して第1突起30を成形する部分、すなわち第1加工ロール51の第1孔511に向かう溶融樹脂材料の流れである。2つの流れの他方(以下、第2の流れF2)は、ベース部20を成形する部分から分岐して第2突起40を成形する部分、すなわち第2加工ロール52の第2孔521に向かう溶融樹脂材料の流れである。
【0032】
本実施形態によれば、成形装置50により中間部材13を成形する際に、第1加工ロール51と第2加工ロール52との間において、第1孔511に向かう第1の流れF1と第2孔521に向かう第2の流れF2とが異なる位置で分岐するようになる。これにより、成形装置50の構造を、2つの流れF1,F2が同一の位置で分岐する比較例の成形装置と比較して、溶融樹脂材料の流れの分岐部分における同溶融樹脂材料の圧力低下を招き難い構造にすることができる。そのため、成形装置50を用いて中間部材13を成形する際に、ショートショットの発生を抑えながら、第1突起30および第2突起40を有する中間部材13を容易に成形することができる。これにより、そうした中間部材13、基材11、および表皮材12が重ね合わされてなる内装部品10を容易に形成することができる。
【0033】
(1-2)第1面31に設定されて正六角形格子をなす仮想線を第1仮想格子32とするとともに、第2面41に設定されて正六角形格子をなす仮想線を第2仮想格子42とする。第1仮想格子32および第2仮想格子42は、第1仮想格子32の正六角形格子を構成する第1六角形33の第1辺34と、第2仮想格子42の正六角形格子を構成する第2六角形43の第2辺44と、が中間部材13の延在方向にずれる態様で設定されている。第1突起30は、第1六角形33の第1辺34にあたる位置に設けられている。第2突起40は、第2六角形43の第2辺44にあたる位置に設けられている。
【0034】
こうした構成によれば、ベース部20の第1面31に設定される第1仮想格子32をもとに、同第1面31に第1突起30をバランス良く配置することができる。またベース部20の第2面41に設定される第2仮想格子42をもとに、同第2面41に第2突起40をバランス良く配置することができる。
【0035】
しかも上記構成では、第1仮想格子32と第2仮想格子42とがベース部20の延在方向においてずれている。これにより、第1突起30および第2突起40は、第1面31における第1突起30の基端部分と第2面41における第2突起40の基端部分とが上記厚さ方向Hにおいて重ならないように配置されている。上記構成によれば、このように第1突起30および第2突起40が配置されるため、第1面31および第2面41を有するベース部20の全体に対して、第1突起30および第2突起40をバランス良く配置することができる。したがって、表皮材12を基材11に向かって押し込む際の感触についての内装部品10の各部におけるばらつきを抑えることができる。
【0036】
(1-3)第1仮想格子32および第2仮想格子42は、各々が正六角形格子をなす仮想線である。第1仮想格子32における第1六角形33の大きさと第2仮想格子42における第2六角形43の大きさとは同一になっている。第1仮想格子32および第2仮想格子42は、第1六角形33の中心と第2六角形43の角とが厚さ方向Hにおいて重なるように設定されている。
【0037】
こうした構成によれば、第1仮想格子32の多角形格子として正六角形格子が採用されるため、正三角形格子や正方形格子が採用される場合と比較して、多角形格子を構成する第1多角形(本実施形態では、第1六角形33)を効率良く配置することができる。そのため、そうした第1仮想格子32の正六角形格子をもとに、第1面31に第1突起30を効率良く配置することができる。
【0038】
また、第2仮想格子42の多角形格子として正六角形格子が採用されるため、正三角形格子や正方形格子を採用する場合と比較して、多角形格子を構成する第2多角形(本実施形態では、第2六角形43)を効率良く配置することができる。そのため、そうした第2仮想格子42の正六角形格子をもとに、第2面41に第2突起40を効率良く配置することができる。
【0039】
しかも上記構成では、第1六角形33の中心と第2六角形43の角とが厚さ方向Hにおいて重なるように、第1仮想格子32および第2仮想格子42が設定されている。これにより、
図1から明らかなように、第1仮想格子32と第2仮想格子42とが、ずれ方向に偏りがない状態で最大限ずれた位置に設定されるようになる。したがって上記構成によれば、第1突起30および第2突起40を、第1面31および第2面41を有するベース部20の全体に対して、偏りを抑えながらバランス良く配置することができる。これにより、表皮材12を基材11に向かって押し込む際の感触を、内装部品10の各部において同等にすることができる。
【0040】
(第2実施形態)
以下、
図7を参照して、第2実施形態について第1実施形態との相違点を中心に説明する。なお第1実施形態と同一の構成または対応する構成については、同一の符号を付すことにより、重複する説明を省略する。
【0041】
<仮想格子>
第1実施形態では2つの仮想格子(第1仮想格子32および第2仮想格子42)が設定されるのに対し、本実施形態では、仮想格子が1つのみが設定されている。
【0042】
図7に示すように、本実施形態の仮想格子60は、ベース部20の延在方向において延在して正六角格子をなす仮想線である。本実施形態では、この仮想格子60をもとに、ベース部20の第1面31には第1突起30が配置されるとともに、同ベース部20の第2面41には第2突起40が配置される。
【0043】
<第1突起30および第2突起40の配置態様>
第1突起30および第2突起40は、厚さ方向Hから見て、第1面31における第1突起30の基端部分と第2面41における第2突起40の基端部分との間に仮想格子60の正六角格子を構成する六角形63の辺64を挟むように配置されている。詳しくは、上記六角形63の辺64を間に挟んで対をなすように、第1突起30および第2突起40が1つずつ設けられている。
【0044】
また第1突起30および第2突起40は、上記六角形63の辺64に沿う位置に設けられている。そして、六角形63の内側においては、隣合う辺64の一方に第1突起30が設けられるとともに他方に第2突起40が設けられるといったように、隣合う辺64で第1突起30と第2突起40とが互い違いになっている。
【0045】
本実施形態では、このようにして第1面31における第1突起30の基端部分と第2面41における第2突起40の基端部分とが上記厚さ方向Hにおいて重ならないように、第1突起30および第2突起40が配置されている。
【0046】
同一の六角形63の内側に配置される3つの第1突起30の基端部分は、正三角形の各頂点の位置に対応して設けられている。この3つの第1突起30は、互いに異なる方向に傾斜した状態で突出している。また同一の六角形63の内側に配置される3つの第2突起40の基端部分は、正三角形の各頂点の位置に対応して設けられている。この3つの第2突起40は、互いに異なる方向に傾斜した状態で突出している。
【0047】
<作用効果>
本実施形態によれば、先の(1-1)に記載の作用効果に加えて、以下の(2-1)に記載する作用効果が得られる。
【0048】
(2-1)ベース部20の延在方向において延在して正六角格子をなす仮想線を仮想格子60とする。第1突起30および第2突起40は、ベース部20の厚さ方向Hから見て、第1面31における第1突起30の基端部分と第2面41における第2突起40の基端部分との間に仮想格子60を構成する六角形63の辺64を挟むように配置されている。
【0049】
こうした構成によれば、第1面31と第2面41とで共通の仮想格子60をもとに、第1面31には第1突起30を、第2面41には第2突起40を同一の配置パターンでバランス良く配置することができる。
【0050】
しかも上記構成では、第1突起30および第2突起40は、第1面31における第1突起30の基端部分と第2面41における第2突起40の基端部分とが上記厚さ方向Hにおいて重ならないように配置されている。そのため、第1面31および第2面41を有するベース部20の全体に対して、第1突起30および第2突起40をバランス良く配置することができる。したがって、表皮材12を基材11に向かって押し込む際の感触についての内装部品10の各部におけるばらつきを抑えることができる。
【0051】
(変更例)
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記各実施形態および以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0052】
・第1実施形態において、第1六角形33の中心と第2六角形43の角とが厚さ方向Hにおいて重ならないように、第1仮想格子32および第2仮想格子42を設定することができる。この場合には、第1六角形33の第1辺34の少なくとも一部と第2六角形43の第2辺44の少なくとも一部とが厚さ方向Hにおいて重ならないように、第1仮想格子32および第2仮想格子42が設定されていればよい。
【0053】
・第1実施形態において、第1仮想格子32および第2仮想格子42の多角形格子としては、正六角形格子を採用することの他、正方形格子や正三角形格子を採用することができる。
【0054】
第1仮想格子32および第2仮想格子42を正方形格子とする場合には、例えば以下のように中間部材13を構成することができる。
図8に示すように、ベース部20の第1面31には、正方形格子をなす仮想線(以下、第1仮想格子32)が設定される。また、ベース部20の第2面41には、正方形格子をなす仮想線(以下、第2仮想格子42)が設定される。本例では、厚さ方向Hから見て、第2仮想格子42の正方形格子を構成する第2正方形は、第1仮想格子32の正方形格子を構成する第1正方形に対して45度回転した状態になっている。また、4つの第1正方形により構成される正方形を「大正方形」とすると、第2正方形の4つの角は「大正方形」の4つの辺に接した状態になっている。そして、第1突起30は、上記第1正方形の辺にあたる位置に設けられる。また、第2突起40は、上記第2正方形の辺にあたる位置に設けられる。
【0055】
第1仮想格子32および第2仮想格子42を正三角形格子とする場合には、例えば以下のように中間部材13を構成することができる。
図9に示すように、ベース部20の第1面31には、正三角形格子をなす仮想線(以下、第1仮想格子32)が設定される。また、ベース部20の第2面41には、三角形格子をなす仮想線(以下、第2仮想格子42)が設定される。
【0056】
本例では、第1仮想格子32の正三角形格子を構成する第1三角形と第2仮想格子42の正三角形格子を構成する第2三角形とが次の関係になるように、第1仮想格子32および第2仮想格子42は設定されている。すなわち、4つの第2三角形により構成される正三角形が第1三角形となるように、第1仮想格子32および第2仮想格子42は設定されている。そして、第1突起30は、上記第1三角形の辺にあたる位置に設けられる。また、第2突起40は、上記第2三角形の辺にあたる位置に設けられる。
【0057】
・第2実施形態において、仮想格子60の多角形格子としては、正六角形格子を採用することの他、正方形格子や正三角形格子を採用することができる。
仮想格子60を正方形格子とする場合には、例えば以下のように中間部材13を構成することができる。
【0058】
図10に示す例では、ベース部20の延在方向において延在して正方形格子をなす仮想線(以下、仮想格子60)が設定される。
第1突起30および第2突起40は、厚さ方向Hから見て、第1突起30の基端部分と第2突起40の基端部分との間に上記正方形格子を構成する正方形の辺を挟むように配置されている。詳しくは、上記正方形の辺を間に挟んで対をなすように、第1突起30および第2突起40が1つずつ設けられている。
【0059】
仮想格子60を正三角形格子とする場合には、例えば次のように中間部材13を構成することができる。すなわち、ベース部20の延在方向において延在して正方形格子をなす仮想線(以下、仮想格子60)を中間部材13に設定する。そして、厚さ方向Hから見て、第1面31における第1突起30の基端部分と第2面41における第2突起40の基端部分との間に上記正三角形格子を構成する正三角形の辺を挟むように、第1突起30および第2突起40を配置する。詳しくは、上記正三角形の辺を間に挟んで対をなすように、第1突起30および第2突起40を1つずつ設ける。
【0060】
・各実施形態において、中間部材13の成形に用いる成形装置50としては、射出成形機を採用するなど、任意の成形装置を採用することができる。この場合においても、上記各実施形態と同様に、成形装置を用いて中間部材13を成形する際に、ショートショットの発生を抑えながら、第1突起30および第2突起40を有する中間部材13を容易に成形することができる。
【0061】
・各実施形態において、仮想格子32,42,60を、正多角形により構成される正多角形格子にすることに限らず、各角の角度が異なる多角形により構成される多角形格子にすることが可能である。
【0062】
・表皮材12の材料を、エラストマー(ショア硬度30D~40D程度)などの軟質ポリ塩化ビニル以外の軟質樹脂材料や、織布などに変更することもできる。
・中間部材13の材料を、ポリエステル系エラストマーなどの軟質ポリ塩化ビニル以外の軟質樹脂材料に変更することもできる。
【0063】
・第1突起30および第2突起40の形状や大きさを適宜変更することができる。例えば、第1突起30の形状と第2突起40の形状とを互いに異ならせたり、第1突起30の大きさと第2突起40の大きさとを互いに異ならせたりすることが可能である。
【0064】
・中間部材13は、全体が一体成形されるものに限定されない。例えば、中間部材13を、ベース部20における第1突起30側の部分および同第1突起30により構成される第1分割部と、ベース部20における第2突起40側の部分および同第2突起40により構成される第2分割部とに分割して構成することができる。
【0065】
・第1突起30の突出方向の前記法線L1に対する傾斜角度と、第2突起40の突出方向の前記法線L2に対する傾斜角度とを互いに異ならせることができる。
・第1突起30および第2突起40は前記法線L1,L2に対して傾斜しているものに限定されない。例えば、第1突起30および第2突起40の双方の突出方向がベース部20に対して直交しているものであってもよい。その他、第1突起30および第2突起40のいずれか一方がベース部20に対して直交しているものであってもよい。
【0066】
・上記各実施形態では、各第1突起30の先端が基材11に接触するとともに、各第2突起40の先端が表皮材12に接触する構成について説明した。こうした構成に限らず、複数の第1突起30のうちの一部または全部の先端が基材11に接触していない構成や、複数の第2突起40のうちの一部または全部の先端が表皮材12に接触していない構成であってもよい。
【0067】
・上記各実施形態にかかる重ね合わせ複合部品および重ね合わせ複合部品の製造方法は、ドアトリムを構成する内装部品10に適用することに限らず、車両のインストルメントパネルやグローブボックスなどの他の内装部品に適用することもできる。また、車両の内装部品に適用することに限らず、車両用以外のパネル部品などにも、上記各実施形態にかかる重ね合わせ複合部品および重ね合わせ複合部品の製造方法は適用可能である。
【符号の説明】
【0068】
10…内装部品
11…基材
12…表皮材
13…中間部材
20…ベース部
30…第1突起
31…第1面
32…第1仮想格子
33…第1六角形
34…第1辺
40…第2突起
41…第2面
42…第2仮想格子
43…第2六角形
44…第2辺
50…成形装置
51…第1加工ロール
511…第1孔
52…第2加工ロール
521…第2孔
53…供給部
60…仮想格子
63…六角形
64…辺
【要約】
【課題】容易に形成することのできる重ね合わせ複合部品および同重ね合わせ複合部品の製造方法を提供する。
【解決手段】重ね合わせ複合部品は、基材、表皮材、中間部材13が重ね合わされることで形成されている。中間部材13は、軟質樹脂材料により形成されるとともに基材と表皮材との間に設けられる。中間部材13は、板状のベース部20と、ベース部20における基材に対向する第1面31から突出する複数の第1突起30と、ベース部20における表皮材に対向する第2面41から突出する複数の第2突起40とを有する。第1突起30および第2突起40は、第1面31における第1突起30の基端部分と第2面41における第2突起40の基端部分とがベース部20の厚さ方向において重ならないように配置されている。
【選択図】
図1