(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】列車監視システム
(51)【国際特許分類】
H04N 7/18 20060101AFI20240827BHJP
B61L 25/02 20060101ALI20240827BHJP
B61D 37/00 20060101ALI20240827BHJP
H04N 23/60 20230101ALI20240827BHJP
H04N 23/661 20230101ALI20240827BHJP
【FI】
H04N7/18 D
B61L25/02 Z
B61D37/00 G
H04N23/60 300
H04N23/661
(21)【出願番号】P 2023508881
(86)(22)【出願日】2022-03-03
(86)【国際出願番号】 JP2022009063
(87)【国際公開番号】W WO2022202179
(87)【国際公開日】2022-09-29
【審査請求日】2023-03-27
(31)【優先権主張番号】P 2021051609
(32)【優先日】2021-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100098383
【氏名又は名称】杉村 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100155860
【氏名又は名称】藤松 正雄
(72)【発明者】
【氏名】岩永 一成
(72)【発明者】
【氏名】相川 智弘
(72)【発明者】
【氏名】惠美 博文
【審査官】西島 篤宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-215082(JP,A)
【文献】特開2005-323393(JP,A)
【文献】特開2004-215201(JP,A)
【文献】特開2021-002835(JP,A)
【文献】特開2020-166550(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 7/18
B61L 25/02
B61D 37/00
H04N 23/60
H04N 23/661
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
GOP形式の映像データを出力するネットワークカメラと、前記ネットワークカメラから出力される映像データを表示するモニタとを列車に搭載した列車監視システムにおいて、
前記モニタ、又は前記モニタを制御するサーバは、
GPSにより得られる前記列車の位置情報または駅のプラットホームへの入線時の接点信号に基づいて、前記列車が駅のプラットホームに入線する直前のタイミングであることを特定して前記モニタの表示をオンにする際に、所定の制御信号を前記ネットワークカメラに送信し、
前記ネットワークカメラは、映像データの出力中に前記所定の制御信号を受信したことに応じて、次のIフレーム生成タイミングを待たずに前倒しでIフレームを生成して出力することを特徴とする列車監視システム。
【請求項2】
請求項
1に記載の列車監視システムにおいて、
前記ネットワークカメラは、映像データの出力中に所定の制御信号を受信したことに応じてIフレームの生成を前倒しした場合に、前倒しでIフレームを生成したタイミングを基準にして以降のIフレーム生成タイミングをリセットすることを特徴とする列車監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GOP形式の映像データを出力するネットワークカメラに関する。
【背景技術】
【0002】
列車に乗降する際の乗客の安全確保は、列車運行にとって重要な課題である。このような安全対策の一環として、車両の側面に取り付けられたカメラでドア付近を撮影し、そのカメラ映像を運転台のモニタに表示させる列車監視システムが開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このようなシステムを利用することで、列車の運転士は、駅停車時に運転台のモニタで乗客の乗降を確認し、列車の運行を行うことが可能となる。従来は、乗客の安全の監視にはリアルタイム性が求められるため、遅延が発生しないアナログシステムが優先して用いられていたが、近年では、IP技術の進歩により低遅延伝送が可能となったので、全ての装置がIPネットワークに接続されるようになった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
列車監視システムで使用するカメラとして、例えば、H.264やH.265などの、GOP(Group Of Picture)形式の圧縮符号化ストリームで映像データを出力するネットワークカメラが使用される。GOP形式の映像データは、Iフレーム(Intra-coded Frame)、Pフレーム(Predicted Frame)、又はBフレーム(Bi-directional predicted Frame)のいずれかの形式による、連続する複数フレームの画像で構成される。Iフレームは予測を用いず単体で符号化された画像であり、Pフレームは前方予測で符号化された画像であり、Bフレームは前方・後方・双方向のいずれかで符号化された画像である。
【0006】
列車監視システムでは、列車の走行中は運転士が運転に集中できるようにモニタの表示をオフにしておき、駅の停車時(又はその直前)にモニタの表示をオンにプラットホームの様子を運転士が確認するように運用される。カメラ映像は、モニタの表示がオンになった際に直ちに表示されるのではなく、Iフレームが生成されるまでは表示できない。これは、PフレームやBフレームが、その基準になったIフレームがないと復号(デコード)できないためである。
【0007】
このため、Iフレームの間隔が長い場合には、モニタの表示をオンにしたタイミングによっては長い待ち時間が発生することになる。例えば、30fps(フレーム毎秒)、Iフレーム間隔10秒のGOPの場合には、
図7に示すように、10秒毎(300フレーム毎)のIフレーム生成タイミングT101,T102,T103,T104でIフレームが生成される。ここで、Iフレーム生成タイミングT102の後でモニタの表示がオンになった場合には、次のIフレーム生成タイミングT103が到来するまではIフレームが生成されない。その結果、モニタの表示をオンにしてからカメラ映像の表示が開始されるまで、最大で10秒近くの待ち時間が発生してしまう。この間、運転士は、駅のプラットホームや乗客の乗り降りの様子をカメラ映像で確認することができない。
【0008】
本発明は、上記のような従来の事情に鑑みて為されたものであり、ネットワークカメラから出力されるGOP形式の映像データを速やかに表示できるようにする技術を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明では、ネットワークカメラを以下のように構成した。すなわち、GOP形式の映像データを出力するネットワークカメラにおいて、映像データの出力中に所定の制御信号を受信したことに応じて、次のIフレーム生成タイミングを待たずに前倒しでIフレームを生成して出力することを特徴とする。
【0010】
ここで、映像データの出力中に所定の制御信号を受信したことに応じてIフレームの生成を前倒しした場合に、前倒しでIフレームを生成したタイミングを基準にして以降のIフレーム生成タイミングをリセットするようにしてもよい。
【0011】
また、所定の制御信号を受信したタイミングから次のIフレーム生成タイミングまでの時間又はフレーム数が所定の閾値より大きい場合に限り、次のIフレーム生成タイミングを待たずに前倒しでIフレームを生成して出力するようにしてもよい。
【0012】
また、上記目的を達成するために、本発明では、列車監視システムを以下のように構成した。すなわち、GOP形式の映像データを出力するネットワークカメラと、ネットワークカメラから出力される映像データを表示するモニタとを列車に搭載した列車監視システムにおいて、モニタ、又はモニタを制御するサーバは、モニタの表示をオンにする際に、所定の制御信号をネットワークカメラに送信し、ネットワークカメラは、映像データの出力中に所定の制御信号を受信したことに応じて、次のIフレーム生成タイミングを待たずに前倒しでIフレームを生成して出力することを特徴とする。
【0013】
ここで、ネットワークカメラは、映像データの出力中に所定の制御信号を受信したことに応じてIフレームの生成を前倒しした場合に、前倒しでIフレームを生成したタイミングを基準にして以降のIフレーム生成タイミングをリセットするようにしてもよい。
【0014】
また、列車の速度がゼロ又は所定の閾値以下になったタイミングでモニタの表示をオンにして、ネットワークカメラに所定の制御信号が送信されようにしてもよい。
【0015】
また、列車が所定の位置に到達したタイミングでモニタの表示をオンにして、ネットワークカメラに所定の制御信号が送信されるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ネットワークカメラから出力されるGOP形式の映像データを速やかに表示できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るネットワークカメラの構成例を示す図である。
【
図2】
図1のネットワークカメラによるフレーム生成処理のフローチャート例を示す図である。
【
図3】本発明の第2実施形態に係る列車監視システムの構成例を示す図である。
【
図4】
図3の列車監視システムにおけるIフレームの生成タイミングの変更に係る第1実施例を示す図である。
【
図5】
図3の列車監視システムにおけるIフレームの生成タイミングの変更に係る第2実施例を示す図である。
【
図6】
図3の列車監視システムにおけるモニタのオン/オフの制御タイミングの例を示す図である。
【
図7】従来のカメラによるIフレームの生成タイミングの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の幾つかの実施形態について、図面を参照して説明する。[第1実施形態]
図1には、第1実施形態に係るネットワークカメラの構成例を示してある。本例のネットワークカメラ10は、撮像部11と、符号化部12と、主記憶部13と、制御部14と、ネットワークインタフェース(I/F)15とが、バス16を介して互いに接続されている。
【0019】
撮像部11は、レンズ等の光学系を通じて撮像面に結像された光信号を電気信号に変換し、デジタルデータ(RAWデータ)として出力する。符号化部12は、撮像部11から出力されるデジタルデータを所定の方式で圧縮・符号化し、IフレームやPフレームを含むGOP形式の映像データを生成する。主記憶部13は、撮像部11により撮像されたデジタルデータや、符号化部12により符号化された映像データなどを記憶する。制御部14は、後述するように、符号化部12の動作を制御する。ネットワークI/F15は、有線又は無線のネットワーク20を通じて、主記憶部13上の映像データを外部の装置に送信し、また、外部の装置から送信された各種の制御信号を受信するためのインタフェースである。
【0020】
次に、ネットワークカメラ10の制御部14の動作について説明する。なお、本例のネットワークカメラ10は、撮影動作を開始すると、ライブの映像データを継続的に出力するものとする。制御部14は、ネットワークカメラ10が映像データの出力中に映像要求信号(所定の制御信号の一例)を外部の装置から受信したことに応じて、符号化部12によるIフレームの生成タイミングを変更する。すなわち、次のIフレーム生成タイミングを待たずに前倒しでIフレームを生成させると共に、前倒しでIフレームを生成したタイミングを基準にして以降のIフレーム生成タイミングをリセットする。その具体的な処理内容について、以下に
図2を参照して説明する。
【0021】
図2は、ネットワークカメラ10によるフレーム生成処理のフローチャート例を示してある。ネットワークカメラ10は、撮影動作を開始すると、まずIフレームを生成する(ステップS101)。その後、所定間隔のフレームタイミングが到来する毎(例えば、30fpsの場合は1/30秒毎)に、Iフレーム生成タイミングか否かを判定する(ステップS102)。その結果、Iフレーム生成タイミングである場合には、Iフレームを生成した後に(ステップS104)、次のフレームタイミングの到来を待つ。一方、Iフレーム生成タイミングでない場合には、外部の装置から映像要求信号を受信したか否かを判定する(ステップS103)。その結果、映像要求信号を受信していない場合には、Pフレーム(あるいはBフレーム)を生成した後に(ステップS107)、次のフレームタイミングの到来を待つ。一方、映像要求信号を受信した場合には、Iフレームを生成し(ステップS105)、以降のIフレーム生成タイミングをリセットした後に(ステップS106)、次のフレームタイミングの到来を待つ。
【0022】
このように、本例のネットワークカメラ10は、映像データの出力中に映像要求信号を受信したことに応じて、次のIフレーム生成タイミングを待たずに前倒しでIフレームを生成して出力すると共に、前倒しでIフレームを生成したタイミングを基準にして以降のIフレーム生成タイミングをリセットするように構成されている。したがって、ネットワークカメラ10から出力される映像データを受信して表示する外部の装置は、映像表示をオンにする際(つまり、映像表示を開始又は再開する際)に映像要求信号をネットワークカメラ10に送信することで、本来のIフレーム生成タイミングを待たずに前倒しでIフレームを受信できるので、カメラ映像を速やかに表示することが可能である。また、Iフレーム生成タイミングをリセットしない場合と比較すると、Iフレームを生成する頻度が少なくなり、映像データのサイズを小さくできる。
【0023】
ここで、上記の説明でのネットワークカメラ10は、映像データの出力中に映像要求信号を受信した場合、無条件に、次のIフレーム生成タイミングを待たずにIフレームを生成しているが、映像要求信号の受信タイミングによっては、次のIフレーム生成タイミングまでIフレームの生成を待つ方が効率的な場合がある。そこで、映像要求信号を受信したタイミングから次のIフレーム生成タイミングまでの時間が所定の閾値(例えば、1秒)より大きい場合に限り、次のIフレーム生成タイミングを待たずに前倒しでIフレームを生成するようにしてもよい。あるいは、映像要求信号を受信したタイミングから次のIフレーム生成タイミングまでのフレーム数が所定の閾値(例えば、30フレーム)より大きい場合に限り、次のIフレーム生成タイミングを待たずにIフレームを生成するようにしてもよい。これにより、Iフレーム生成の無用な前倒しを防ぐことが可能となる。
【0024】
[第2実施形態] 第2実施形態では、第1実施形態に示したネットワークカメラ10を列車監視システムに用いる場合について説明する。
図3には、本発明の第2実施形態に係る列車監視システムの構成例を示してある。
【0025】
図3の列車監視システム100は、車両111~116の6両で編成された列車に搭載されている。図面左方向に向かって列車が進行する場合には、左端に示す1両目の車両111が先頭となり、右端に示す6両目の車両116が最後尾となる。また逆に、図面右方向に向かって列車が進行する場合には、右端に示す6両目の車両116が先頭となり、左端に示す1両目の車両111が最後尾となる。以下では、列車の進行方向において先頭となる車両(例えば、1両目の車両111)に運転士が搭乗し、列車の運行(運転やドアの開閉等)の操作を一人で行う場合を例にして説明する。
【0026】
列車監視システム100は、カメラ121、モニタ122、録画装置123、監視サーバ124、上位サーバ125、スイッチングハブ(HUB)126を含む。これらの機器は、ネットワークケーブルを用いて接続される。また、これらの機器には、電源供給ケーブルが接続されており、各車両の電源供給部(不図示)から電源が供給される。
【0027】
車両111~116の各々には、4台のカメラ121-1~121-4と、スイッチングハブ126が設置されている。また、1両目の車両111及び6両目の車両116には運転室があり、この運転室内に2台のモニタ122-1~122-2が設置されている。各車両のカメラ121及びモニタ122は、その車両のスイッチングハブ126にネットワークケーブルで接続されている。更に、1両目の車両111には、録画装置123と、監視サーバ124と、上位サーバ125も設置されている。録画装置123及び監視サーバ124は、スイッチングハブ126にネットワークケーブルで接続されており、上位サーバ125は、監視サーバ124にネットワークケーブルで接続されている。なお、6両目の車両116にも、1両目の車両111と同様に監視サーバ124や上位サーバ125を設け、これらの装置を多重化してもよい。
【0028】
また、各車両のスイッチングハブ126は、隣接する車両のスイッチングハブ126とネットワークケーブルで接続されている。このように、隣り合う車両にそれぞれ搭載されたスイッチングハブ126同士を接続することで、列車内に1つのネットワークを構成している。なお、これらのネットワークケーブルは、例えば、車両床下を経由してツナギ箱(不図示)へ接続され、車両間についてはそれぞれ隣り合う車両のツナギ箱間をジャンパ線で接続する。
【0029】
上位サーバ125は、例えば、列車の運行を管理する装置である。上位サーバ125としては、一例として、TMS(Train Management System)のサーバが用いられる。上位サーバ125は、列車の運行中には、列車の運行情報を監視サーバ124に所定の周期で出力する。列車の運行情報には、列車速度情報、ドア開閉情報(例えば、ドアの開閉状態を示す情報)、次に停車する駅若しくは現在停車中の駅のプラットホームにおける乗降口情報(例えば、開扉すべきドアが列車の右側か左側かを示す情報)、車両数、列車進行方向情報などが含まれる。
【0030】
各車両のカメラ121は、第1実施形態に示したネットワークカメラ10であり、予め定められた視野(画角)内を所定のフレームレート(例えば、30fps)で撮影する。また、各車両のカメラ121は、撮影した映像を符号化して得られたGOP形式の映像データを、スイッチングハブ126やネットワークケーブルを通じてモニタ122や録画装置123に送信する。
【0031】
録画装置123は、各車両のカメラ121から受信した映像データを、その映像データの送信元を識別するカメラ識別情報及び撮像時刻と関連付けて常時記録している。録画装置123に記録された映像データは、主に事故や犯罪の発生等の有事の際に、解析資料や証拠映像として使用される。
【0032】
運転室のモニタ122は、各車両のカメラ121から送信されるライブの映像データを表示する。また、運転室のモニタ122は、録画装置123に記録された過去の映像データを表示することもできる。運転士は、モニタ122を用いて、各車両のカメラ121により撮影されたカメラ映像を確認することができる。
【0033】
2台のモニタ122-1~122-2は、これらの表示を運転士が同時に見ることができるように、上下若しくは左右に並べて配置することが好ましい。また、本例では、モニタ122-1のディスプレイ領域を上下2分割及び左右6分割の12分割にしてあり、モニタ122-2も同様である。したがって、モニタ122-1だけで、6両編成の列車のカメラ映像(列車の片側にある合計12のカメラ映像)を同時に表示することができる。また、モニタ122-2を併用することで、最大で12両編成の列車のカメラ映像を同時に表示することもできる。また、モニタ122-1に表示された複数のカメラ映像の中から運転士に選択された画像をモニタ122-2に拡大表示するなど、各モニタを他の用途に使用することも可能である。
【0034】
監視サーバ124は、運転士から受けた指示に応じて、又は列車の運行状態に応じて、モニタ122の表示を制御する。監視サーバ124は、例えば、列車が駅に停車中の場合はモニタ122の表示がオンとなり、列車が走行中の場合はモニタ122の表示がオフとなるように制御する。このような表示制御は、例えば、上位サーバ125から取得できる列車速度情報に基づいて実行することが可能である。なお、列車の速度がゼロか否かに応じて表示のオン/オフを制御してもよいし、列車の速度が所定の閾値以下であるか否かに応じて表示のオン/オフを制御してもよい。
【0035】
また、監視サーバ124は、モニタ122による表示対象のカメラ121を切り替える制御も行う。例えば、駅で列車の右側のドアが開扉する場合には、列車の右側に設置されたカメラ121-1,121-2を表示対象とし、列車の左側のドアが開扉する場合には、列車の左側に設置されたカメラ121-3,121-4を表示対象とする。表示対象のカメラ121は、例えば、乗降口情報や列車進行方向情報に基づいて特定することができる。
【0036】
ここで、本例の監視サーバ124は、モニタ122の表示をオンにする制御の際に、各車両のカメラ121に対して映像要求信号を送信するように構成されている。これにより、モニタ122は、各車両のカメラ121から本来のIフレーム生成タイミングを待たずに前倒しでIフレームを受信できるので、カメラ映像を速やかに表示することが可能となる。
【0037】
図4には、本例の列車監視システム100におけるIフレームの生成タイミングの変更に係る第1実施例を示してある。例えば、30fps(フレーム毎秒)、Iフレーム間隔10秒のGOPの場合には、
図4に示すように、本来は10秒毎(300フレーム毎)のIフレーム生成タイミングT101,T102,T103,T104でIフレームが生成される。ここで、Iフレーム生成タイミングT102のすぐ後で、監視サーバ124による制御の下でモニタ122の表示がオンになったとする。このとき、監視サーバ124から各車両のカメラ121に対して映像要求信号が送信される。
【0038】
各車両のカメラ121は、映像データの出力中に映像要求信号を受信したことに応じて、次のIフレーム生成タイミングT103を待たずに前倒しでIフレームを生成する。また、前倒しでIフレームを生成したタイミングT103’を基準にして、以降のIフレーム生成タイミングをリセットする。すなわち、次にIフレームを生成する予定であったIフレーム生成タイミングT104を取り消して、タイミングT103’から10秒(300フレーム)後のタイミングを次のIフレーム生成タイミングT104’に設定し直す。その後のIフレーム生成タイミングも同様である。このような処理を行うことで、モニタ122の表示がオンになった際に、カメラ映像の表示が速やかに開始又は再開されることになる。
【0039】
ここで、
図4に示す第1実施例では、各車両のカメラ121が、映像データの出力中に映像要求信号を受信したことに応じて、次のIフレーム生成タイミングを待たずに前倒しでIフレームを生成すると共に、以降のIフレーム生成タイミングをリセットしているが、Iフレーム生成タイミングをリセットしない構成としてもよい。この場合の動作について、
図5を参照して説明する。
【0040】
図5には、本例の列車監視システム100におけるIフレームの生成タイミングの変更に係る第2実施例を示してある。第2実施例では、各車両のカメラ121が、映像データの出力中に映像要求信号を受信したことに応じて、次のIフレーム生成タイミングT103を待たずに、これを前倒したタイミングT103’でIフレームを生成するが、その後に到来する本来のIフレームの生成タイミングT103でもIフレームを生成する。このような処理によっても、モニタ122の表示がオンになった際に、カメラ映像の表示が速やかに開始又は再開されることになる。
【0041】
以上のように、本例の列車監視システム100では、モニタ122を制御する監視サーバ124が、モニタ122の表示をオンにする際に、映像要求信号をカメラ121に送信し、カメラ121が、映像データの出力中に映像制御信号を受信したことに応じて、次のIフレーム生成タイミングを待たずに前倒しでIフレームを生成して出力するように構成されている。したがって、モニタ122は、映像表示がオンになる際(つまり、映像表示を開始又は再開する際)に、本来のIフレーム生成タイミングを待たずに前倒しでIフレームを受信できるので、カメラ映像を速やかに表示することが可能である。
【0042】
なお、上記の説明では、監視サーバ124が各車両のカメラ121に対して映像要求信号を送信しているが、モニタ122が、監視サーバ124による制御の下で表示をオンにした際に、各車両のカメラ121に対して映像要求信号を送信してもよい。
【0043】
また、上記の説明では、列車の速度がゼロ又は所定の閾値以下になったタイミングでモニタ122の表示のオン/オフを切り替えているが、
図6に示すように、列車が所定の位置に到達したタイミングでモニタ122の表示のオン/オフを切り替えてもよい。例えば、列車が駅のプラットホームに入線する直前のタイミングでモニタ122の表示をオンにしてもよく、列車が駅のプラットホームから出線した直後のタイミングでモニタ122の表示をオフにしてもよい。このような制御は、GPS(Global Positioning System)により得られる位置情報に基づいて行うことが可能である。また、位置情報に代えて、入線時の接点信号などの他の情報を用いるようにしてもよい。また、モニタ122の表示のオン/オフを、運転士が手動で切り替えるようにしてもよい。
【0044】
また、上記の説明では、カメラ121やモニタ122を列車に搭載した列車監視システム100を例に説明したが、カメラ121を駅のプラットホームに設けてもよいし、モニタ122を駅のプラットホームや監視センタなどに設けてもよい。
【0045】
以上、本発明について一実施形態に基づいて説明したが、本発明はここに記載された構成に限定されるものではなく、他の構成のシステムに広く適用することができることは言うまでもない。例えば、本発明に係るネットワークカメラを防犯用として使用してもよく、赤ちゃんやペットなどの見守り用として使用してもよく、その他の任意の用途に使用することが可能である。
【0046】
また、本発明は、例えば、上記の処理に関する技術的手順を含む方法や、上記の処理をプロセッサにより実行させるためのプログラム、そのようなプログラムをコンピュータ読み取り可能に記憶する記憶媒体などとして提供することも可能である。
【0047】
なお、本発明の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらす全ての実施形態をも含む。更に、本発明の範囲は、全ての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画され得る。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、GOP形式の映像データを出力するネットワークカメラに利用することが可能である。
【符号の説明】
【0049】
10:ネットワークカメラ、 11:撮像部、 12:符号化部、 13:主記憶部、
14:制御部、 15:ネットワークインタフェース、 16:バス、 20:ネットワーク、 100:列車監視システム、 121-1~121-4:カメラ、 122-1~122-2:モニタ、 123:録画装置、 124:監視サーバ、 125:上位サーバ、 126:スイッチングハブ