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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/26 20060101AFI20240827BHJP
【FI】
E02F9/26 Z
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2023510238
(86)(22)【出願日】2021-12-16
(86)【国際出願番号】 JP2021046639
(87)【国際公開番号】W WO2022209046
(87)【国際公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-08-18
(31)【優先権主張番号】P 2021061270
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】西川 真司
(72)【発明者】
【氏名】山下 亮平
(72)【発明者】
【氏名】楢▲崎▼ 昭広
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-68236(JP,A)
【文献】特開2005-350930(JP,A)
【文献】特開2001-90118(JP,A)
【文献】特開平6-311570(JP,A)
【文献】特開平9-217383(JP,A)
【文献】特開2001-200553(JP,A)
【文献】特開2002-47690(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
施工現場で作業を行う建設機械において、
前記建設機械の動作を制御する車体制御装置と、
通信端末を介して外部から受信した操作信号に応じて制御信号を生成し、前記制御信号を前記車体制御装置に送出することで、運転室へのオペレータの搭乗による操作を必要としない無人運転の制御を行う外部操作制御装置と、
前記建設機械の無人運転が正常に動作中であることを示す運転表示灯と、
前記建設機械への作業者の接近許可を示す接近許可表示灯とを備え、
前記外部操作制御装置は、前記車体制御装置に収集された情報に応じて、前記建設機械が正常に動作していると判定した場合には前記運転表示灯を点灯させるように制御するとともに、前記建設機械への前記作業者の接近を許容できると判定した場合には前記接近許可表示灯を点灯させるように制御することを特徴とする建設機械。
【請求項2】
請求項1記載の建設機械において、
前記運転表示灯と前記接近許可表示灯とは、それぞれ異なる位置に配置されることを特徴とする建設機械。
【請求項3】
請求項2記載の建設機械において、
前記運転表示灯と前記接近許可表示灯の点灯色は同じ色であることを特徴とする建設機械。
【請求項4】
請求項2記載の建設機械において、
前記運転表示灯をオペレータが搭乗する運転室の上方に配置し、
前記接近許可表示灯を前記運転室の下方に配置した
ことを特徴とする建設機械。
【請求項5】
請求項2記載の建設機械において、
前記運転表示灯を前記建設機械の車体上部に配置し、
前記接近許可表示灯を前記運転表示灯よりも下方の前記車体に配置した
ことを特徴とする建設機械。
【請求項6】
請求項2記載の建設機械において、
前記運転表示灯を運転室に搭乗したオペレータから視認不能な位置に配置し、
前記接近許可表示灯を運転室に搭乗したオペレータから視認可能な位置、かつ運転室の周囲の作業者から視認可能な位置に設置した
ことを特徴とする建設機械。
【請求項7】
請求項1記載の建設機械において、
前記運転室内に配置され、前記外部操作制御装置による前記接近許可表示灯の点灯条件を切り替える点灯条件切替スイッチを備え、
前記外部操作制御装置は、前記車体制御装置に収集された情報が運転室にオペレータが搭乗して前記建設機械の操作を行う有人運転で、かつ、前記点灯条件切替スイッチが操作された情報であるときに、前記接近許可表示灯を常時消灯とすることを特徴とする建設機械。
【請求項8】
請求項1記載の建設機械において、
前記運転室内に配置され、前記外部操作制御装置による前記接近許可表示灯の点灯条件を切り替える点灯条件切替スイッチを備え、
前記外部操作制御装置は、前記車体制御装置に収集された情報が運転室にオペレータが搭乗して前記建設機械の操作を行う有人運転で、かつ、前記点灯条件切替スイッチが操作された情報であるときに、前記接近許可表示灯を常時消灯にするとともに、前記運転表示灯を常時点灯とすることを特徴とする建設機械。
【請求項9】
請求項1記載の建設機械において、
前記外部操作制御装置は、
エンジン始動や停止、アクチュエータの動作可否の切り替え、及び、アクチュエータ動作の少なくとも1つの動作が前記通信端末を介して外部から受信した制御信号に応じて実行可能な状態である場合に、前記建設機械の無人運転が正常に動作中であると判定するとともに、
アクチュエータが動き出さない状態が確保されている場合に、前記建設機械への前記作業者の接近を許容できると判定することを特徴とする建設機械。
【請求項10】
請求項1記載の建設機械において、
前記外部操作制御装置は、
少なくとも、前記通信端末を介して外部から受信した制御信号によるアクチュエータ動作が無効になっている場合、かつ、アクチュエータが動き出さない状態が確保されている場合に、前記建設機械への前記作業者の接近を許容できると判定することを特徴とする建設機械。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の建設機械において、
前記通信端末を介して外部から受信した制御信号に応じた前記建設機械の操作が可能な状態から不可の状態に遷移したときに、
前記車体制御装置は、アクチュエータを動作不可とし、
前記外部操作制御装置は、前記運転表示灯を消灯させるとともに、前記接近許可表示灯を点灯させることを特徴とする建設機械。
【請求項12】
請求項11記載の建設機械において、
前記通信端末を介して外部から受信した制御信号に応じた前記建設機械の操作が不可の状態から可能な状態に遷移したときに、
前記外部操作制御装置は、前記運転表示灯を点灯させるとともに、前記接近許可表示灯を消灯させることを特徴とする建設機械。
【請求項13】
請求項12記載の建設機械において、
前記通信端末は、周囲の作業者が所持する作業者用通信端末との相互通信、及び、無人運転時の前記建設機械の動作を制御する制御室との相互通信を行い、
前記車体制御装置は、前記作業者用通信端末から無人運転の開始を許可する制御信号を受信する前は、前記制御室からの指令による前記建設機械の動作の制御を無効とすることを特徴とする建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベルに代表される建設機械の運用においては、作業現場で稼働する建設機械に対して周囲の作業者が不用意に近づくことを抑制するために、例えば、回転灯などを用いて建設機械が稼働中であることを報知し、周囲の作業者に注意を促している。
【0003】
夜間においても建設機械を認識できるように建設機械の形状に沿って設置した発光体により、積極的に車体の状態を周囲の作業者に通知して注意喚起する技術としては、例えば、特許文献1に記載のものが知られている。特許文献1には、下部走行体と、下部走行体の上部に旋回自在に装着され、運転室を搭載した上部旋回体と、上部旋回体に俯仰自在に装着された作業機とを備えた作業車両において、上部旋回体の外側面に線状発光体を装着した作業車両が開示されている。
【0004】
また、車体に備えた表示灯により、遠隔操作や自動運転のように作業者の非搭乗時に離れた場所から車体の自動運転中の異常を確認する技術として、例えば、特許文献2に記載のものが知られている。特許文献2には、車両のフレームと、フレーム上に載置されるエンジンと、エンジンの動力により駆動される車輪と、走行操作装置と、走行操作装置を制御する制御装置と、車両に装架されるボディと、ボディ上部に装備される表示ランプと、有人運転によるマニュアルモードと無人運転によるオートモードを切り換えるスイッチを有する操作パネルと、遠隔操作によって運転モードの切り換えと起動、停止を指令するリモートコントローラとを備えてなる自動走行車両が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-180503号公報
【文献】特開1996-255019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、作業機械が無人運転(遠隔運転、自動運転)を行う場合、建設機械の周囲の作業者が止むを得ず無人運転中の車体に接近する必要や、建設機械による作業を中断してもらう必要が生じることが考えられる。
【0007】
このとき、例えば、無人運転(遠隔運転、自動運転)中の建設機械を周囲の作業者が強制的に停止させることが可能である場合であっても、実際に無人運転を停止させたとすると、無人運転による作業が意図せずに中断あるいは停止してしまうことになり、作業性の不要な低下を招いてしまう。
【0008】
建設機械の無人運転(遠隔運転、自動運転)を遠隔で管理している管理者に何らかの連絡手段によって無人運転を一時的に中断してもらう場合であっても、車体が動き出さない状態であることが周囲の作業者に伝わらなければ、周囲の作業者は安全を確認できないために作業機械に近づくことができず、作業性の低下を招いてしまう。また、無人運転が中断されていない場合であっても、作業機械が動いていない様子から周囲の作業者が無人運転の中断を誤認して、建設機械に不用意に接近してしまうことも考えられる。
【0009】
また、作業機械が無人運転(遠隔運転、自動運転)を行う場合、無人運転を監視する管理者は、安全管理や作業管理を行うために作業機械の動作状態を把握する必要がある。無人運転を行う建設機械は、ネットワーク通信によって管理者が操作する制御装置と接続されており、ネットワーク接続が正常であれば、管理者は車体の状態を制御室のモニタ等で把握することが可能であるが、ネットワーク通信が遮断されてしまった場合には、作業機械の動作状態をモニタ等で確認することができなくなってしまう。
【0010】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、車体の動作状態を周囲の作業者や管理者に簡潔に通知することができ、車体の周囲の作業者や管理者の安全性と作業性を両立させることができる建設機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、施工現場で作業を行う建設機械において、前記建設機械の動作を制御する車体制御装置と、通信端末を介して外部から受信した操作信号に応じて制御信号を生成し、前記制御信号を前記車体制御装置に送出することで、運転室へのオペレータの搭乗による操作を必要としない無人運転の制御を行う外部操作制御装置と、前記建設機械の無人運転が正常に動作中であることを示す運転表示灯と、前記建設機械への作業者の接近許可を示す接近許可表示灯とを備え、前記外部操作制御装置は、前記車体制御装置に収集された情報に応じて、前記建設機械が正常に動作していると判定した場合には前記運転表示灯を点灯させるように制御するとともに、前記建設機械への前記作業者の接近を許容できると判定した場合には前記接近許可表示灯を点灯させるように制御するものとする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、車体の動作状態を周囲の作業者や管理者に簡潔に通知することができ、車体の周囲の作業者や管理者の安全性と作業性を両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】建設機械の一例である油圧ショベルの外観を模式的に示す側面図である。
図2】建設機械の油圧システムや制御システムを関連構成とともに抜き出して示す機能ブロック図である。
図3】各状態表示灯の名称、表示色および用途(点灯条件)の関係を示す図である。
図4】油圧ショベルにおける車体の制御状態の状態遷移を示す図である。
図5】各制御状態において、搭乗したオペレータと遠隔(外部)指令のそれぞれによる車体操作の可否の関係を示す図である。
図6】有人運転状態における状態表示灯の制御パターンの切り替えの様子を示す図である。
図7】有人運転状態における状態表示灯の制御パターン(点灯制御パターン1)における制御テーブルを示す図である。
図8】有人運転状態における状態表示灯の制御パターン(点灯制御パターン2)における制御テーブルを示す図である。
図9】有人運転状態における状態表示灯の制御パターン(点灯制御パターン3)における制御テーブルを示す図である。
図10】無人運転状態における制御テーブルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図1図10を参照しつつ説明する。
【0015】
なお、本実施の形態では、建設機械の一例として、フロント作業機を搭載した油圧ショベルを例示して説明するが、他の建設機械においても本発明を適用することができる。
【0016】
図1は、本実施の形態に係る建設機械の一例である油圧ショベルの外観を模式的に示す側面図である。また、図2は、建設機械の油圧システムや制御システムを関連構成とともに抜き出して示す機能ブロック図である。
【0017】
図1において、油圧ショベル100は、クローラ式の下部走行体1と、下部走行体1に対して旋回可能に設けられた上部旋回体2と、上部旋回体2に対して垂直方向に回動可能に設けられたフロント作業機3と、上部旋回体2の前方上部に操作者(オペレータ)が搭乗して油圧ショベル100の各種操作を行うために設けられた運転室4とから概略構成されている。下部走行体1と上部旋回体2は、油圧ショベル100の車体を構成している。
【0018】
下部走行体1は、油圧アクチュエータである左右一対の走行油圧モータ1aと、走行油圧モータ1aに対してそれぞれ前後方向に掛け回されたクローラ1bとを備えている。下部走行体1は、図示しない減速機構等を介して各走行油圧モータ1aにより各クローラ1bを独立して回転駆動することで、前方又は後方に走行動作を行う。
【0019】
上部旋回体2は、エンジン16等の原動機、油圧ポンプ18、旋回油圧モータ2aなど、油圧ショベル100の油圧システムとその関連機構を備えている(図2参照)。上部旋回体2は、油圧アクチュエータである旋回油圧モータ2aにより下部走行体1に対して右方向又は左方向に旋回動作を行う。
【0020】
フロント作業機は、垂直方向にそれぞれ回動する複数のフロント部材(ブーム3a、アーム3b、バケット(作業具)3c)を連結して構成された多関節型であり、ブーム3aの基端は上部旋回体2の前部に垂直方向に回動可能に支持されており、アーム3bの一端はブーム3aの基端とは異なる端部(先端)に垂直方向に回動可能に支持されており、アーム3bの他端には作業具としてのバケット3cが垂直方向に回動可能に支持されている。ブーム3a、アーム3b、及び、バケット3cは、油圧アクチュエータであるブームシリンダ3d、アームシリンダ3e、及び、バケットシリンダ3fによりそれぞれ回動駆動される。
【0021】
フロント作業機3には、ブーム3aの角度を検出する角度センサ6(ブーム角度センサ)と、アーム3bの角度を検出する角度センサ7(アーム角度センサ)と、バケット3cの角度を検出する角度センサ8(バケット角度センサ)とが設けられている。角度センサ6,7,8は、例えば、IMU(Inertial Measurement Unit:慣性計測装置)であり、角度センサ6~8からの検出結果に基づいて、ブーム3a、アーム3b、バケット3c、上部旋回体2の相対角度を算出することができる。
【0022】
また、上部旋回体2のフレーム上には、車体の前後方向角度(ピッチ角)および左右方向角度(ロール角)を検出する傾斜センサ9が取付けられており、下部走行体1と上部旋回体2をつなぐセンタージョイント(図示せず)には、下部走行体1に対する上部旋回体2の相対角度(旋回角度)を検出する旋回角度センサ10が取付けられている。傾斜センサ9は、例えば、加速度センサやIMUなどである。
【0023】
運転室4の内部には、オペレータが油圧ショベル100の状況を確認できるように各種の計器類や機体情報が表示される液晶モニタなどの表示装置5が設けられている。
【0024】
運転室4の内部には、油圧ショベル100の全体の動作を制御する車体制御装置11が搭載されており、車体制御装置11は油圧ショベルの動作を決めるための各種センサの信号入力機能や,ポンプやコントロールバルブ等を駆動するための信号出力機能,エンジン制御装置等の他の車載制御装置との通信機能などを備えている。
【0025】
角度センサ6,7,8、傾斜センサ9および旋回角度センサ10は、この車体制御装置11に電気的に接続されている。車体制御装置11は、これらの姿勢演算用の各種センサの情報を用いて油圧ショベルの姿勢(ブーム3a、アーム3b、バケット3cの対地角度や下部走行体1と上部旋回体2の相対角度)を演算しており、マシンコントロール機能や領域制限機能に利用したり、遠隔操縦や自動運転に利用したりする。
【0026】
また、油圧ショベル100の運転室4内には、遠隔操縦や自動運転などの無人運転時に、車体制御装置11に対してポンプやコントロールバルブ等の駆動要求を送信する外部操作制御装置60が備えられている。無人運転時に、この駆動要求信号を受けた車体制御装置11がポンプやコントロールバルブ等を駆動させることで、搭乗したオペレータによる操作装置15の操作がされていなくとも、油圧ショベル100の油圧アクチュエータ(ブームシリンダ3d、アームシリンダ3e、バケットシリンダ3fや走行油圧モータ1a,旋回油圧モータ2aなど)を駆動させることが可能である。
【0027】
油圧ショベル100の運転室4の外部には、無人運転時の外部との通信用に通信端末61が備えられており、周囲の作業者が所持する作業者用通信端末(図示せず)や、遠隔操縦オペレータが操作する遠隔操縦装置(図示せず)、遠隔で車体の状態を監視したり遠隔で車体の動作を操作したりする制御室(図示せず)との相互通信を可能としている。
【0028】
油圧ショベル100には、車体の状態を周囲に通知するための表示器としての状態表示灯62a,62b,62c,62d,62e,62fが設けられている。状態表示灯62a,62b,62c,62d,62e,62fは、それぞれ単色の回転灯である。以降、複数の状態表示灯62a,62b,62c,62d,62e,62fをまとめて状態表示灯62と記載することがある。
【0029】
図3は、各状態表示灯の名称、表示色および用途(点灯条件)の関係を示す図である。図3では、各状態表示灯の名称201、表示色202、及び用途(点灯条件)203の関係を、各状態表示灯の名称201a~201fごとに表形式で示している。
【0030】
油圧ショベル100に備えられる状態表示灯62は、

「作業表示灯」(名称201a)の名称を付した状態表示灯62a(以降、作業表示灯62aと称する)と、
「警告表示灯」(名称201b)の名称を付した状態表示灯62b(以降、警告表示灯62bと称する)と、
「通信表示灯」(名称201c)の名称を付した状態表示灯62c(以降、通信表示灯62cと称する)と、
「運転表示灯」(名称201d)の名称を付した状態表示灯62d(以降、運転表示灯62dと称する)と、
「接近許可表示灯」(名称201e)の名称を付した状態表示灯62e(以降、接近許可表示灯62eと称する)と、
「行動要求表示灯」(名称201f)の名称を付した状態表示灯62f(以降、行動要求表示灯62fと称する)とから構成されている。
【0031】
作業表示灯62aには、車体が稼働中であることを周囲に通知し、注意を促すために黄色を採用している。
【0032】
警告表示灯62bには、異常や故障の発生、非常時の状態であることを通知するために赤色を採用している。
【0033】
通信表示灯62cには、通常の状態を表す色の一つとして、青色を採用している。
【0034】
運転表示灯62dには、正常な状態を表す色として、緑色を採用している。
【0035】
接近許可表示灯62eには、周囲の作業者に対して車体への接近を許可する安全状態を表す色として、緑色を採用している。
【0036】
行動要求表示灯62fには、周囲の作業者に対して車体への接近を要求する(行動を強制する)ための色として、青色を採用している。
【0037】
車体から無人運転の管理者や周囲の作業者に通知したい情報は上記のように多く存在するが、使用する色が多くなりすぎると、それによって認識のしやすさが低下したりするため、不必要に使用する色を増やしすぎることは避ける方が良い。
【0038】
また、液晶パネルなどへの文字による表示とした場合、より正確な情報を伝達できる一方で、作業者が内容を認識するまでに時間がかかったり、視認できる方向が限られたりする懸念がある。
【0039】
本実施の形態では、一般的に工業機械で使用される色である、赤、黄、青、緑の4色を使用しており、各色に割り当てる意味合いとしても、「正常」「許可」という意味合いには緑色を割り当て、周囲作業者への「指示(接近要求)」の意味合いには青色を割り当てているため、意味の誤認識や混同などが生じにくい。
【0040】
状態表示灯62のそれぞれの搭載位置についても、意味の誤認識や混同などの抑制を考慮して以下のように配置している。
【0041】
作業表示灯62aは、稼働中に周囲から目に付きやすいように、上部旋回体後端半径付近のカウンタウェイト上に配置する。
【0042】
警告表示灯62b、通信表示灯62c、運転表示灯62dは、遠隔操縦や自動運転を監視する管理者を主な通知対象とするため、車体から離れた場所や車体よりも高い場所から視認しやすいように、運転室の上面に配置する。
【0043】
接近許可表示灯62e、行動要求表示灯62fは、車体の周囲、特に近傍に存在する作業者を主な通知対象とするため、車体に近い場所や作業者の目線の高さから視認しやすいように、運転室4のドアの開閉ハンドル付近である運転室左前に配置する。
【0044】
警告表示灯62b、通信表示灯62c、運転表示灯62dの3つの状態表示灯62は、互いに近傍に、すなわち、連なってひとまとまりとなるように配置されている。また、接近許可表示灯62e、行動要求表示灯62fの2つの状態表示灯62は、互いに近傍に、すなわち、連なってひとまとまりとなるように配置されている。また、警告表示灯62b、通信表示灯62c、運転表示灯62dのまとまりと接近許可表示灯62e、行動要求表示灯62fのまとまりとの距離は離して配置されている。このように配置することで、それぞれの状態表示灯62が情報の通知対象とする作業者が状態表示灯62を視認する際に、意味の混乱が生じないようにすることができる。
【0045】
さらに、車体の運転状態の「正常」を示す緑色の状態表示灯と、車体への接近「許可」を示す緑色の状態表示灯に対して、その通知対象としている無人運転の管理者および周囲作業者に対して、意味の混乱を生じないように、同じ色を使用する状態表示灯を距離を離して配置し、また、無人運転の管理者を通知対象とする状態表示灯は運転室上方に配置し、周囲作業者を通知対象とする状態表示灯は運転室下方に配置し、それぞれの通知対象が必要とする情報を示す状態表示灯の方がより視界に入りやすいようにしている。
【0046】
さらに、周囲作業者を通知対象とする接近許可表示灯62eと行動要求表示灯62fを連なる位置に配置することで、この2つが周囲作業者に向けた通知内容を表していることを認識しやすくしている。
【0047】
また、以下のような工夫を適用することにより、より安全性と作業性を高めることができる。
【0048】
運転表示灯62dは搭乗時のオペレータがキャブ内から視認できない位置に配置し、接近許可表示灯62eは、搭乗時のオペレータがキャブ内から視認できる位置、かつ、運転室近傍のキャブ外にいる周囲作業者から視認できる位置に配置するとよい。
【0049】
この場合、同じ緑色の表示灯である運転表示灯62dと接近許可表示灯62eのうち、接近許可表示灯62eのみが運転室4に搭乗したオペレータの視界に入るので、オペレータの搭乗時、接近許可状態であること(周囲作業者が接近してくる可能性が高い状態)の認識のしやすさを向上することができ、安全性を向上させることができる。
【0050】
また、オペレータが搭乗したまま接近許可表示灯62eの点灯を確認できるため、接近許可表示灯62eが正常に作動しているかを、運転室内にいながら確認することができる。
【0051】
また、接近許可表示灯62eは、接近許可表示灯62eを視認する周囲作業者が運転室4に搭乗したオペレータの視界内に入る位置に設置するとよい。
【0052】
作業現場のルールとして、接近許可表示灯62eが点灯時のみ接近を許可する、ということを定めた場合、周囲の作業者は、車体に接近する際に、まず接近許可表示灯62eの点灯状態を確認しようとするようになる。よって、接近許可表示灯62eを目視できる位置が運転室4に搭乗したオペレータの視界内に含まれるようにしておくと、周囲作業者が車体に近づく場合、その作業者は運転室4に搭乗したオペレータの視界内にいち早く入るようにすることができる。これにより、車体右後方などの運転室4に搭乗したオペレータが視認しにくい方向からの作業者接近の可能性を抑制することができ、作業現場の安全性を向上させることができる。
【0053】
以上のように、それぞれの状態表示灯62の配置と表示色を工夫することで、車体周囲にいる作業者と、車体から離れたところにいる作業者(車体の管理・監視者)それぞれによって、必要な情報を誤認識せず認識することができるようになり、作業者の安全性と作業性を向上させることができる。
【0054】
図2に示すように、油圧ショベル100は、機体全体の動作を制御する車体制御装置11と、車体の全ての動作可否を切り替える動作ロック手段を切り替えるためのレバー式スイッチであるロックスイッチ12と、オペレータが油圧ショベルの状況を確認できるように各種の計器類や機体情報が表示される表示装置5と、エンジン回転数を手動で変更したり表示装置5を操作したりするためのスイッチボックス13と、スイッチボックス13の各種スイッチ入力を受け付け、表示装置5の表示内容を変更するモニタ制御装置14とを備えている。車体制御装置11、ロックスイッチ12、表示装置5、スイッチボックス13、モニタ制御装置14は、運転室4の内部に設けられている。
【0055】
また、油圧ショベル100の運転室4内には、油圧ショベルの各種操作を行う操作装置15が設けられている。操作装置15は、例えば、ブーム上げ操作、ブーム下げ操作、アームクラウド操作、アームダンプ操作、バケットクラウド操作、バケットダンプ操作、左旋回操作、右旋回操作、右前進走行操作、右後進走行操作、左前進走行操作、左後進走行操作などを行う複数の操作レバーである。
【0056】
油圧ショベル100は、原動機としてエンジン16を搭載しており、エンジン16と電気的に接続されているエンジン制御装置17は、エンジンに組み込まれている温度センサやピックアップセンサの信号からエンジン16の状態を把握し、バルブ等を制御することで回転数やトルクを制御している。
【0057】
車体制御装置11、モニタ制御装置14、エンジン制御装置17はCAN通信によって接続されており、それぞれ必要な情報の送受信を行っている。
【0058】
例えば、エンジン回転数制御については、車体制御装置11が、エンジンコントロールダイヤルにより設定されて出力される制御電圧や操作装置15の操作状態、油圧ポンプ18の負荷状態や温度条件などに応じてエンジン目標回転数を演算し、演算したエンジン目標回転数をエンジン制御装置17に送信する。エンジン制御装置17は、車体制御装置11で演算されたエンジン目標回転数となるようにエンジン16を制御するとともに、エンジン16に内蔵されているピックアップセンサの信号からエンジン実回転数を演算して車体制御装置11に送信する。モニタ制御装置14は、CAN通信上にあるエンジン目標回転数とエンジン実回転数を取得し、取得したエンジン目標回転数やエンジン実回転数などの情報を車体の状態表示の一つとして表示装置5に表示する。
【0059】
エンジン16によって駆動される可変容量式の油圧ポンプ18から吐出される作動油は、各油圧アクチュエータ1a,2a,3d,3e,3fへの圧油の流れを制御するコントロールバルブ19を介して、走行油圧モータ1a、旋回油圧モータ2a、ブームシリンダ3d、アームシリンダ3e、及び、バケットシリンダ3fに供給される。
【0060】
なお、本実施の形態においては、1つの油圧ポンプ18を備えた場合を例示しているが、複数のアクチュエータを同時操作する状況などを考慮して複数の油圧ポンプを搭載するように構成してもよい。
【0061】
操作装置15は、電気式の操作レバーであり、操作量に応じたPWM出力信号(操作信号)を車体制御装置11に出力する。
【0062】
油圧源であるパイロットポンプ20は、エンジン16によって駆動されており、パイロットポンプ20からの吐出圧がポンプレギュレータ21、および、動作ロック手段であるロックバルブ22に供給されている。パイロットポンプ20からの吐出圧は、図示しないパイロットリリーフバルブによってパイロット一次圧(例えば、4MPa)に保たれている。
【0063】
ポンプレギュレータ21は、パイロットポンプ20からのパイロット一次圧を減圧して使用するための電磁比例弁であるポンプ流量制御電磁弁を備えており、車体制御装置11が出力する指令電流に応じてパイロット一次圧を減圧してポンプ流量制御圧(二次圧)を生成する。また、ポンプレギュレータ21は、油圧ポンプ18の傾転(押除け容積)を制御する制御機構を備えており、ポンプ流量制御電磁弁の出力(ポンプ流量制御圧)に応じて油圧ポンプ18の容積すなわち吐出流量を制御する。
【0064】
ポンプレギュレータ21は、油圧ポンプ18の特性が、ポンプ流量制御圧が最小(例えば、0MPa)ではポンプ容積最小、ポンプ流量制御圧が最大(例えば、4MPa)でポンプ容積最大となるように制御する。ポンプ流量制御電磁弁は、非制御状態(例えば、0mA)では遮断位置(例えば、0MPa)となっており、車体制御装置11からの指令電流が増加するのにしたがってポンプ流量制御圧が増加するように制御される。
【0065】
ポンプレギュレータ21には、ポンプ流量制御圧を検出するためのポンプ流量制御圧センサ23が設けられている。ポンプ流量制御圧センサ23により検出されたポンプ流量制御圧は、検出信号として車体制御装置11に入力される。車体制御装置11は、予め保持しているポンプ流量制御圧とポンプ容積との関係を用い、ポンプ流量制御圧センサ23により検出されたポンプ流量制御圧に基づいて
ポンプ容積を推定し、推定したポンプ容積とエンジン回転数とを掛け合わせることで油圧ポンプ18の吐出流量を演算する。
【0066】
ロックバルブ22は、車体の全ての動作可否を切り替える動作ロック手段である。ロックバルブ22は車体制御装置11によって駆動するソレノイドによって遮断位置と連通位置に切り換えられる。
【0067】
ロックスイッチ12は、運転室4内に設置されたロックレバー(図示せず)がロック位置にあるときには、OFF(端子間は開放)状態になっている。車体制御装置11はロックスイッチ12の状態を監視し、ロックスイッチ12がOFFのときはロックバルブ22を非励磁状態の遮断位置に切り換える。
【0068】
また、ロックスイッチ12は、ロックレバーがロック解除位置にあるときには、ON(端子間は導通)状態になっている。車体制御装置11はロックスイッチ12の状態を監視し、ロックスイッチ12がONのときにはロックバルブ22に制御電圧(例えば、24V)を印加することで励磁状態の連通位置に切り換える。
【0069】
ロックバルブ22とコントロールバルブ19との間のパイロット回路には、パイロット圧制御減圧弁24が設けられている。車体制御装置11は、操作装置15の入力信号であるレバー操作量の大きさに応じて、パイロット圧制御減圧弁24を駆動する。
【0070】
ロックバルブ22が連通位置のときには、パイロット圧制御減圧弁24にパイロット一次圧が供給されており、パイロット圧制御減圧弁24によってパイロット操作圧が生成されると、生成されたパイロット操作圧はコントロールバルブ19内に複数あるスプール(方向切換弁)を動かし、それによって油圧ポンプ18から吐出される作動油の流れを調整することで、対応する油圧アクチュエータ1a,2a,3d,3e,3fの動作を可能とする。
【0071】
ロックバルブ22が遮断位置のときには、パイロット圧制御減圧弁24にパイロット一次圧が供給されないため、パイロット操作圧も生成されなくなり(例えば、0MPaとなり)、油圧アクチュエータ1a,2a,3d,3e,3fの動作は不可となる。
【0072】
すなわち、運転室4内に設置されたロックレバー(図示せず)の位置に応じて、車体の全ての動作可否が切り換えられる。具体的には、ロックレバーがロック位置にあるときには車体の全ての動作が禁止され、解除位置にあるときには車体の動作が許容される。
【0073】
パイロット圧制御減圧弁24とコントロールバルブ19の間のパイロット回路には、パイロット操作圧を検出するための操作圧センサ25が設けられている。
【0074】
操作圧センサ25の検出信号は車体制御装置11に入力されている。車体制御装置11は、操作圧センサ25により検出されたパイロット操作圧に基づいて、油圧ショベル100の操作状況やパイロット圧制御減圧弁24が正常に作動しているか否かを把握することができる。
【0075】
油圧ポンプ18とコントロールバルブ19の間のデリベリ回路には、ポンプ吐出圧を検出するためのポンプ吐出圧センサ26が設けられている。車体制御装置11は、ポンプ吐出圧センサ26により検出されたポンプ吐出圧に基づいて、油圧ショベル100の油圧ポンプ18のポンプ負荷を把握することができる。
【0076】
車体制御装置11は、エンジン回転数や操作装置15の入力に応じて操作によるポンプ目標流量を算出する。また、車体制御装置11は、エンジン回転数や操作状況やその他の車体状態(温度等)に応じて制限馬力を演算し、ポンプ吐出圧センサ26の入力と制限馬力とから、馬力制限によるポンプ上限流量を算出する。車体制御装置11は、操作によるポンプ目標流量と馬力制限によるポンプ上限流量の小さい方をポンプ目標流量として選択し、油圧ポンプ18の吐出流量がポンプ目標流量となるようにポンプ流量制御電磁弁を駆動する。
【0077】
通信端末61は、遠隔操縦や自動運転などの無人運転を行うための指令信号を車体の外部から受信し、また、車体の姿勢や各種状態情報を外部に送信する。
【0078】
通信端末61は、CAN通信によって外部操作制御装置60と接続されている。また、外部操作制御装置60と車体制御装置11ともCAN通信によって接続されている。外部操作制御装置60は、油圧ショベル100の無人運転(遠隔運転、自動運転)時には、通信端末61を介して外部から受信した操作指令を車体制御装置11に受け渡すことで、無人運転時のアクチュエータ動作やポンプ、バルブ類の作動を実行する。
【0079】
また、外部操作制御装置60は、外部操作制御装置60と車体制御装置11をつなぐCAN通信によって、車体制御装置11に接続させている各種スイッチや各種センサの状態を把握することが出来る。
【0080】
また、通信端末61は、外部操作制御装置60の他に、車体制御装置11ともCAN通信によって接続されており、車体制御装置11から受信する車体の各種状態情報(温度やエンジン回転数、姿勢情報等)をネットワーク経由で遠隔操作装置や制御室に送信することができる。
【0081】
また、通信端末61は、車体制御装置11を経由してモニタ制御装置14にも指令を送ることができるようになっており、遠隔からの指令によって、モニタ(表示装置5)に特定のメッセージやアイコンなどを表示させることができる。
【0082】
また、通信端末61は、車載された複数のカメラ63とイーサネット通信で接続されており、この映像信号を通信端末がネットワーク経由で送信することで、遠隔地からでも車体の周囲映像を確認することができる。
【0083】
外部操作制御装置60には、車体の状態を周囲に通知するための状態表示灯として、作業表示灯62a、警告表示灯62b、通信表示灯62c、運転表示灯62d、接近許可表示灯62e、行動要求表示灯62fの6種類の回転灯が電気的に接続されており、外部操作制御装置60の指令によって点灯(ON)と消灯(OFF)とが切り替えられる。
【0084】
また、外部操作制御装置60には、周囲の作業者に、無人運転に関連した音声メッセージや警報音を通知するための外部スピーカ66が接続されており、外部操作制御装置60の指令によって通知音を出力する。
【0085】
油圧ショベル100の運転室4内には、有人運転と無人運転の切替えを行うための運転状態切替スイッチ64が搭載され、車体制御装置11と電気的に接続されている。運転状態切替スイッチ64は、所謂、モーメンタリ型のスイッチであり、車体制御装置11は、運転状態切替スイッチ64が押されている状態(ON)であるか、押されていない状態(OFF)であるかを判別することができる。
【0086】
また、油圧ショベル100の運転室4内には、状態表示灯62の点灯条件を搭乗したオペレータが変更する(切り替える)ための点灯条件切替スイッチ65が搭載され、車体制御装置11と電気的に接続されている。点灯条件切替スイッチ65は、所謂、モーメンタリ型のスイッチであり、車体制御装置11は、点灯条件切替スイッチ65が押されている状態(ON)であるか、押されていない状態(OFF)であるかを判別することができる。
【0087】
ここで、図示しないが、車体制御装置11、モニタ制御装置14、エンジン制御装置17、外部操作制御装置60は、それぞれ、中央演算装置(CPU)、メモリ、インタフェースによって構成され、メモリ内に予め保存されているプログラムを中央演算装置(CPU)で実行し、メモリ内に保存されている設定値とインタフェースから入力された信号に基づいて中央演算装置(CPU)が処理を行い、インタフェースから信号を出力するものである。
【0088】
図4は、油圧ショベルにおける車体の制御状態の状態遷移を示す図である。また、図5は、図4に示した各制御状態において、搭乗したオペレータと遠隔(外部)指令のそれぞれによる車体操作の可否の関係を示す図である。図5では、制御状態211、搭乗したオペレータによる車体操作の可否212、及び、遠隔(外部)指令による車体操作の可否213の関係を、制御状態ごとに表形式で示している。
【0089】
ここで、車体操作とは、油圧ショベル100の始動キーのON/OFF操作と運転状態切替スイッチ64の押下操作に相当する操作以外の全ての操作であり、例えば、エンジン16の始動・停止、ロックバルブ22の遮断・解除、油圧アクチュエータ1a,2a,3d,3e,3fの動作、その他の電装品の操作、車体の設定変更などの操作を含んでいる。
【0090】
油圧ショベル100のキーOFF(電源OFF)の状態300において、運転室4に搭乗したオペレータの操作によってキーON操作がなされると、車体制御装置11および外部操作制御装置60は、有人運転状態310に遷移する。
【0091】
有人運転状態310は、油圧ショベル100を手動操作により動作させる状態である。図5に示すように、有人運転状態310では、運転室4に搭乗したオペレータによって車体操作が可能である一方で、遠隔(外部)指令による車体操作は不可となっている。
【0092】
有人運転状態310において、ロックバルブ22が遮断状態にあるときに、運転室4に搭乗したオペレータが運転状態切替スイッチ64を押下すると、車体制御装置11と外部操作制御装置60は、無人運転状態320の一つである無人運転一時解除状態321に遷移する。
【0093】
また、無人運転状態320の無人運転一時解除状態321において、ロックバルブ22が遮断状態にあるときに、運転室4に搭乗したオペレータが運転状態切替スイッチ64を押下すると、車体制御装置11と外部操作制御装置60は、有人運転状態310に遷移する。
【0094】
ここで、有人運転状態310と無人運転状態320の間の状態遷移の条件にロックバルブ22の遮断状態を含めているのは、有人運転と無人運転の制御状態の切り替えを必ず車体が停止している状態(すなわち、油圧アクチュエータ1a,2a,3d,3e,3fが動作していない状態)で行うようにし、制御状態の切り替えの際に意図せず急に車体が動いてしまうことを防ぐためである。
【0095】
ここで、本実施形態においては、無人運転が可能な建設機械(油圧ショベル100)が稼働する作業現場では、ネットワーク接続が可能な通信端末(作業員用通信端末:例えば、腕時計型のウェアラブル端末)を全ての作業員が所持し、作業員用通信端末と、建設機械(油圧ショベル100)と、無人運転を管理・監視する制御室は同一ネットワークに接続されて、それぞれの機器で相互通信によるデータ授受が可能である。
【0096】
図5に示すように、無人運転一時解除状態321では、運転室4に搭乗したオペレータによって車体操作が可能である一方で、遠隔(外部)指令による車体操作は不可となっている。
【0097】
無人運転一時解除状態321において、運転室4に搭乗したオペレータ(運転状態切替スイッチ64を押下した作業者)は、車体の作業範囲の外に移動した上で、車体周囲の安全を確認し、作業員用通信端末を操作して車体および制御室に無人運転開始許可信号を送信する。無人運転一時解除状態321において、油圧ショベル100が無人運転開始許可信号を受信すると、車体制御装置11と外部操作制御装置60は、無人運転待機状態322に遷移する。
【0098】
無人運転待機状態322は、制御室側の判断によっていつでも遠隔操作を開始できる状態である。図5に示すように、無人運転待機状態322では、運転室4に搭乗したオペレータによる車体操作(運転室4内のレバーやスイッチ類の操作)が不可に切り替わる。また、遠隔(外部)指令による車体操作は不可となっている。
【0099】
無人運転待機状態322において、無人運転状態320をとりやめて有人運転状態310に戻す場合は、作業員用通信端末もしくは制御室から、油圧ショベル100に対して無人運転停止信号を送信する。無人運転待機状態322のときに油圧ショベル100が無人運転停止信号を受信すると、車体制御装置11と外部操作制御装置60は、無人運転一時解除状態321に遷移するので、ロックバルブ22が遮断状態にあるときに、運転室4に搭乗したオペレータが運転状態切替スイッチ64を押下することで、車体制御装置11と外部操作制御装置60を有人運転状態310に遷移させることができる。
【0100】
無人運転待機状態322において、制御室が油圧ショベル100に対して無人運転開始信号を送信し、油圧ショベル100が無人運転開始信号を受信すると、車体制御装置11と外部操作制御装置60は、無人運転作業状態323に遷移する。
【0101】
図5に示すように、無人運転作業状態323では、運転室4に搭乗するオペレータによる車体操作(運転室内のレバーやスイッチ類の操作)は不可となっており、全ての操作は遠隔(外部)指令によってのみ可能である。
【0102】
このように、本実施の形態においては、無人運転一時解除状態321から無人運転待機状態322を経て無人運転作業状態323に遷移するように設定した。すなわち、遠隔(外部)指令による車体操作が可能な無人運転作業状態323に遷移するためには、作業員用通信端末による無人運転開始許可信号の送信を始めとした、車体周囲の作業者と制御室双方の意思確認を必要とするように設定した。このように状態遷移の手順を定めることで、周囲作業者が意図しないタイミングや、周囲の安全確認ができていないタイミングでの無人運転作業(車体の動作)の発生を防ぐことができ、安全性を向上させることができる。
【0103】
無人運転作業状態323での作業中において、運転室4に搭乗したオペレータにより一時的に車体操作を行ったり、有人運転状態310に戻したりする場合には、制御室が油圧ショベル100に対して無人運転停止信号を送信し、油圧ショベル100が無人運転停止信号を受信すると、車体制御装置11と外部操作制御装置60は、無人運転一時解除状態321に遷移する。
【0104】
なお、無人運転作業状態323における無人運転停止信号の送信は、作業者用通信端末からは送信不可としておく(又は、車体側の車体制御装置11や外部操作制御装置60において、無人運転作業状態323では作業者用通信端末からの無人運転停止信号を受け付けないようにしておく)ことが望ましい。これにより、無人運転での作業中に、不用意に無人運転を停止されることが無く、無人運転の作業性を向上することができる。
【0105】
無人運転作業状態323において、周囲の作業者が一時的に無人運転の停止を要求する場合、作業者は作業者用通信端末を操作して制御室に無人運転停止要求を送信する。無人運転停止要求を受信した制御室にいる管理・監視者は、作業の区切りまで車体を動作させ、停止させるための適切な姿勢に車体の姿勢を合わせたあとに、車体に対して無人運転停止信号を送信し、無人運転停止信号を受信した車体は無人運転一時解除状態321に遷移する。これにより、無人運転を正常に停止させることができるので、無人運転の作業プロセスの管理や、安全な作業停止を行うことができ、作業現場の安全性と作業性を向上させることができる。
【0106】
無人運転一時解除状態321、無人運転待機状態322、無人運転作業状態323において、緊急停止スイッチ(図示せず)の押下で発信される、或いは、ネットワーク経由で送信される非常停止信号を車体が受信すると、車体制御装置11および外部操作制御装置60は、無人運転強制停止状態324に遷移する。なお、無人運転一時解除状態321、無人運転待機状態322、無人運転作業状態323において、無人運転を継続することに支障をきたす異常が発生したと車体制御装置11や外部操作制御装置60が判定したときにも、同様に、無人運転強制停止状態324に遷移する。
【0107】
無人運転強制停止状態324における車体の振る舞いについては、発生している事象の程度に応じて設定しておくとよい。
【0108】
例えば、エンジン16を稼働し続けることで危険な状況を発生させると判断する場合は、自動でエンジン16を停止させることが考えられる。また、フロント姿勢が正常範囲を外れてしまったという程度であれば、油圧アクチュエータ1a,2a,3d,3e,3fの動作を停止させるだけでもよい。
【0109】
油圧アクチュエータ1a,2a,3d,3e,3fの停止のさせ方については、例えば、非常停止スイッチが押されるような場合には、油圧アクチュエータ1a,2a,3d,3e,3fをすぐに停止させることが考えられる。また、ネットワーク接続が途切れてしまったという程度であれば、車体側の制御によって緩やかに油圧アクチュエータ1a,2a,3d,3e,3fを停止させることにより、急停止によって車体や積荷が大きく揺れてしまうことによる影響を小さくすることができ、安全性を高めることができる。
【0110】
また、ロックバルブ22については、車体を停止させる際に自動でロック状態に切り替えるようにしておくと、その後に作業員が搭乗する際に、意図せずレバーに触れてしまい車体が動くという誤操作を防止することができる。
【0111】
図5に示すように、無人運転強制停止状態324では、無人運転が停止している状態なので、車体操作は運転室4に搭乗したオペレータ(運転室4内のレバーやスイッチ類)によってのみ可能となる。
【0112】
無人運転強制停止状態324において、ロックバルブ22が遮断状態にあるときに、運転室4に搭乗したオペレータが運転状態切替スイッチ64を押下すると、車体制御装置11と外部操作制御装置60は、有人運転状態310に遷移する。これにより、例えば、ネットワーク接続に問題が発生して無人運転ができなくなった場合でも、作業者が油圧ショベル100の運転室4に搭乗して車体を退避させることができる。
【0113】
また、無人運転強制停止状態324において、異常状態が解消されたと車体制御装置11や外部操作制御装置60が判断した場合には、自動的に無人運転一時解除状態321に遷移する。
【0114】
続いて、外部操作制御装置による状態表示灯の制御について説明する。
【0115】
図6は、有人運転状態における状態表示灯の制御パターンの切り替えの様子を示す図であり、図7図9は、各制御パターンにおける制御テーブルを示す図である。また、図10は、無人運転状態における制御テーブルを示す図である。
【0116】
図7図10に示す制御テーブルには、状態表示灯の名称221、表示色222および点灯条件(点灯するときの車体の状態)223の関係が状態表示灯ごと(詳しくは、状態表示灯の名称221a~221fごと)に設定されており、外部操作制御装置60に記憶されている。
【0117】
外部操作制御装置60は、状態表示灯62の点灯消灯を制御するものである。状態表示灯62の点灯制御は、大きく分けて有人運転状態310のときと無人運転状態320のときで切り替わる。さらに、有人運転状態310のときの点灯制御は、点灯条件切替スイッチ65が押される度に「点灯制御パターン1」~「点灯制御パターン3」の間で切り替わる。
【0118】
まず、有人運転状態310のときの点灯制御について説明する。
【0119】
外部操作制御装置60は、有人運転状態310における状態表示灯62の点灯制御パターンとして、「点灯制御パターン1」(図7参照)、「点灯制御パターン2」(図8参照)、「点灯制御パターン3」(図9参照)の3種類の制御テーブルを保持している。制御パターンは、運転室4に搭乗するオペレータが点灯条件切替スイッチ65を押下するたびに、「点灯制御パターン1」、「点灯制御パターン2」、「点灯制御パターン3」、「点灯制御パターン1」の順番で切り替わる。なお、外部操作制御装置60は、キーOFF時に選択されていた点灯制御パターンを記憶しており、次回のキーON時には、前回終了時の点灯制御パターンを読み出して用いる。
【0120】
図7に示すように、有人運転状態310の「点灯制御パターン1」では、作業表示灯62aは、エンジンが稼働しているときに点灯する。これは、油圧ショベル100が稼働中であることを周囲に通知するためである。
【0121】
接近許可表示灯62eは、エンジンが停止しているとき、または、ロックバルブ22が遮断位置にあるときに点灯する。つまり、車体が動き出さない状態が確保されているときに点灯する。
【0122】
これにより、周囲の作業者がやむを得ず車体に接近する必要があるときに、運転室4に搭乗するオペレータが確実に車体を停止状態にしてくれたのか、周囲の作業者が目視確認することができ、作業現場の安全性が向上する。
【0123】
警告表示灯62b、通信表示灯62c、運転表示灯62d、行動要求表示灯62fは、無人運転状態320に関連する情報を通知するための状態表示灯62なので常時消灯とする。
【0124】
これにより、周囲の作業者によって不要な情報を通知しないことで、本当に必要な情報である接近許可かどうかということの視認性を高めることができるとともに、無人運転を管理・監視している作業者にとっては、これらの無人運転の状態を通知する状態表示灯62が消灯であることを確認することで、無人運転状態320ではないこと(外部指令を受け付けない状態となっていること)を判断することもできる。
【0125】
図8に示すように、有人運転状態310の「点灯制御パターン2」では、作業表示灯62aは、「点灯制御パターン1」と同様に、エンジン16が稼働しているときに点灯するが、それ以外の状態表示灯は常時消灯となる。つまり、有人運転状態のみを備える油圧ショベルと同じ点灯パターンとなる。
【0126】
「点灯制御パターン1」のように接近許可を示す通知ができた方が、周囲作業者にとっては安全性を向上させることができるが、接近許可表示灯62eは運転室4に搭乗したオペレータの視界に入る場所に設置されているため、作業中断中などのエンジン停止中やロックバルブ遮断中において、接近許可表示灯62eが点灯し続けることを煩わしく感じることが考えられる。
【0127】
そういった場合に、周囲の作業者への接近許可の通知は従来と同じ(ジェスチャーや声、音によるもの)として運用することとし、運転室4に搭乗するオペレータの作業性を優先して、接近許可表示灯62eを常時消灯とできるパターン(すなわち、「点灯制御パターン2」)を選択できるようにしている。
【0128】
図9に示すように、有人運転状態310の「点灯制御パターン3」は、エンジンが停止しているとき、または、ロックバルブ22が遮断位置にあると、すなわち、車体が動き出さない状態が確保されているときに点灯する状態表示灯62を、接近許可表示灯62eではなく運転表示灯62dとしている点が「点灯制御パターン1」と異なる。
【0129】
これにより、「点灯制御パターン1」において懸念される点、すなわち、有人運転時に運転室4に搭乗するオペレータの視界に点灯した状態表示灯62が入ることによる煩わしさを解消することができる。無人運転状態320において、運転表示灯62dが点灯する際には、必ず通信表示灯62cも点灯しているため、無人運転を管理・監視している作業者にとっては、通信表示灯62cが消灯であることを確認することで、運転表示灯62dが点灯していても、無人運転状態320ではないこと(すなわち、外部指令を受け付けない状態となっていること)を判断することもできる。
【0130】
次に、無人運転状態320のときの点灯制御について説明する。外部操作制御装置60は、無人運転状態320における状態表示灯62の点灯制御パターン(図10参照)を定めた制御テーブルを保持している。
【0131】
図10に示すように、無人運転状態320では、作業表示灯62aは、エンジンが稼働しているときに点灯する。
【0132】
警告表示灯62bは、制御状態が無人運転強制停止状態324のときに点灯する。赤色の表示灯で、無人運転を継続できない異常状態であることを管理・監視者に通知する。
【0133】
通信表示灯62cは、制御状態が無人運転一時解除状態321、無人運転待機状態322、無人運転作業状態323、無人運転強制停止状態324のいずれか(すなわち、有人運転状態ではないとき)、かつ、車体と制御室とのネットワーク接続が正常のときに点灯する。実際の作業時においては、有人運転状態310では消灯しているため、運転室4に搭乗するオペレータが運転状態切替スイッチ64を押して無人運転一時解除状態321に遷移したときに、ネットワーク接続が正常であれば消灯から点灯に切り替わる。作業者は、この通信表示灯62cが点灯していることと警告表示灯62bが消灯していることを確認し、車体が無人運転を行う状態であることを認識することができる。
【0134】
運転表示灯62dは、制御状態が無人運転作業状態323のときに点灯する。運転表示灯62dが点灯しているときは、運転室4に搭乗するオペレータによる車体操作は不可になっており、遠隔(外部)指令による車体操作が可能となっている。
【0135】
接近許可表示灯62eは、制御状態が無人運転一時解除状態321、無人運転待機状態322、無人運転強制停止状態324のいずれか(すなわち、無人運転状態320において無人運転作業状態323ではないとき)、かつ、エンジン停止中またはロックバルブ22が遮断状態である(すなわち、車体が動き出さない状態が確保されている)ときに点灯する。エンジン停止中やロックバルブ22が遮断中であっても、無人運転作業状態323であれば点灯しない(消灯する)。これは、仮にロックバルブ22が遮断中であっても、無人運転作業状態323の場合には遠隔(外部)指令によってロックバルブ22が解除状態に切替えられて車体が動き出す可能性を考慮したものであり、確実に遠隔(外部)指令を受け付けない状態となった場合にのみ、周囲作業者に接近許可を通知することで、より安全性を向上させている。
【0136】
行動要求表示灯62fは、無人運転状態320の車体にて、作業者に運転室に搭乗して特定の行動を要求する異常状態が発生したとき(これは、無人運転強制停止状態324への遷移条件の一つである)、または、車体が行動要求表示灯62fの点灯信号を受信したときに点灯させる。ここで、行動要求表示灯62fの点灯信号は、無人運転を管理・監視する制御室からネットワークを介して送信されるものとする。
【0137】
例えば、無人運転状態320で遠隔操縦作業を実施中(すなわち、無人運転作業状態323の場合)に、車体と制御室とのネットワーク接続が切断されてしまったとき、運転状態は無人運転状態320の無人運転作業状態323から無人運転強制停止状態324に遷移し、外部操作制御装置60は、油圧アクチュエータ1a,2a,3d,3e,3fの動作を停止させ、ロックバルブ22を遮断する。この状態(無人運転強制停止状態324)となった車体は、遠隔(外部)指令による車体操作ができない状態であるものの、異常状態となっている車体を長時間放置すると作業に支障がでるため、復旧作業を行うために、車体の姿勢を変更したり、車体を安全な場所や特定の避難場所まで移動させたりする必要がある。しかしながら、車体から離れた場所にある制御室から管理・監視者が車体に向かう場合には、時間を要してしまったり、管理・監視者が一人の場合には、制御室側で情報を確認する作業者がいなくなり、復旧作業の効率が落ちてしまったりすることが想像される。
【0138】
このような場合に、前提となる作業現場の運用ルールとして「行動要求表示灯62fの点灯時には車体の運転室4に搭乗して復旧作業に協力する」ことを予め共有しておくことで、無人運転強制停止状態324となったときに行動要求表示灯62fを点灯させることで、車体の近くにいる作業者に協力を求めることができる。
【0139】
さらに、行動要求表示灯62fを点灯させるときに、運転室4内のモニタ(表示装置5)に、制御室や管理・監視者の連絡先(電話番号)や、搭乗した作業者に求める操作や行動について表示されるようにしておけば、復旧作業をスムーズに行うことが可能となる。
【0140】
別の場面として、例えば、正常に無人運転作業状態で稼働中だった場合でも、車体の周囲の状況を直接目視で確認してもらいたくなった場合、制御室から車体に対して、無人運転停止信号を送信すると同時に、行動要求表示灯点灯信号を送信することもできる。この場合も、周囲の作業者に運転室に搭乗してもらい協力を仰ぐことで、車体の停止時間を短くすることができ、作業現場全体としての作業性を向上させることができる。
【0141】
また、さらに、この行動要求表示灯62f点灯時に、外部操作制御装置60に接続された外部スピーカ66から音声ガイダンスを出力すると、より周囲の作業者が車体の状態に気づきやすくすることもできる。
【0142】
また、行動要求表示灯62fの消灯について次のような運用を行うことにより、作業性をさらに向上させることができる。例えば、行動要求表示灯62fの点灯時において、作業者に油圧ショベル100に搭乗してもらって復帰対応を実施してもらっている場合に、そのときの車体の状態(例えば、異常状態や、車体の姿勢などの情報)を外部操作制御装置60や遠隔の制御室が監視しているものとする。このとき、外部操作制御装置60や制御室が、作業者に搭乗して対応してもらう作業が完了したこと(例えば、異常状態が解消されたことや、指定した車体姿勢に変更したこと)を含む消灯条件を満たしたと判定したら、外部操作制御装置60は行動要求表示灯62fを消灯させる。
【0143】
このように構成することで、行動要求表示灯62fの点灯を見て油圧ショベル100に搭乗した作業者は、自分に要求された行動が完了したことをより明確に知ることができるため、作業完了の判断を早く正確にすることができ、作業現場としての作業性をより向上させることができる。
【0144】
なお、このときに、作業者用通信端末や運転室4内の通信端末61等を通じて、油圧ショベル100搭乗した作業者と車体の管理・監視者が通話等で相互に情報を伝え合えば、さらに早く正確に作業を行うことができる。
【0145】
以上のように構成した本実施の形態の効果を説明する。
【0146】
作業機械が無人運転(遠隔運転、自動運転)を行う場合、建設機械の周囲の作業者が止むを得ず無人運転中の車体に接近する必要や、建設機械による作業を中断してもらう必要が生じることが考えられる。
【0147】
このとき、例えば、無人運転(遠隔運転、自動運転)中の建設機械を周囲の作業者が強制的に停止させることが可能である場合であっても、実際に無人運転を停止させたとすると、無人運転による作業が意図せずに中断あるいは停止してしまうことになり、作業性の不要な低下を招いてしまう。
【0148】
建設機械の無人運転(遠隔運転、自動運転)を遠隔で管理している管理者に何らかの連絡手段によって無人運転を一時的に中断してもらう場合であっても、車体が動き出さない状態であることが周囲の作業者に伝わらなければ、周囲の作業者は安全を確認できないために作業機械に近づくことができず、作業性の低下を招いてしまう。また、無人運転が中断されていない場合であっても、作業機械が動いていない様子から周囲の作業者が無人運転の中断を誤認して、建設機械に不用意にしてしまうことも考えられる。
【0149】
また、作業機械が無人運転(遠隔運転、自動運転)を行う場合、無人運転を監視する管理者は、安全管理や作業管理を行うために作業機械の動作状態を把握する必要がある。無人運転を行う建設機械は、ネットワーク通信によって管理者が操作する制御装置と接続されており、ネットワーク接続が正常であれば、管理者は車体の状態を制御室のモニタ等で把握することが可能であるが、ネットワーク通信が遮断されてしまった場合には、作業機械の動作状態をモニタ等で確認することができなくなってしまう。
【0150】
これに対して本実施の形態においては、施工現場で作業を行う油圧ショベル100において、油圧ショベル100の動作を制御する車体制御装置11と、通信端末61を介して外部から受信した操作信号に応じて制御信号を生成し、制御信号を車体制御装置11に送出することで、運転室4へのオペレータの搭乗による操作を必要としない無人運転の制御を行う外部操作制御装置60と、油圧ショベル100の無人運転が正常に動作中であることを示す運転表示灯62dと、油圧ショベル100への作業者の接近許可を示す接近許可表示灯62eとを備え、外部操作制御装置60は、車体制御装置11に収集された情報に応じて、油圧ショベル100が正常に動作していると判定した場合には運転表示灯62dを点灯させるように制御するとともに、油圧ショベル100への作業者の接近を許容できると判定した場合には接近許可表示灯62eを点灯させるように制御するように構成したので、車体の動作状態を周囲の作業者や管理者に簡潔に通知することができ、車体の周囲の作業者や管理者の安全性と作業性を両立させることができる。
【0151】
<付記>
なお、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内の様々な変形例や実施の形態の組み合わせが含まれる。また、本発明は、上記の実施の形態で説明した全ての構成を備えるものに限定されず、その構成の一部を変更や削除したものも含まれる。
【0152】
例えば、上記の実施の形態においては、状態表示灯62を点灯させることで、情報表示灯62にそれぞれ割り当てられた情報を、油圧ショベル100の周囲の作業者や制御室にいる管理・監視者に伝える場合を例示して説明したが、これに限られず、例えば、状態表示灯62を点滅させることで情報を伝えるように構成しても良い。
【0153】
また、上記の各構成、機能等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等により実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。
【符号の説明】
【0154】
1…下部走行体、1a…走行油圧モータ、1b…クローラ、2…上部旋回体、2a…旋回油圧モータ、3…フロント作業機、3a…ブーム、3b…アーム、3c…バケット、3d…ブームシリンダ、3e…アームシリンダ、3f…バケットシリンダ、4…運転室、5…表示装置、6~8…角度センサ、9…傾斜センサ、10…旋回角度センサ、11…車体制御装置、12…ロックスイッチ、13…スイッチボックス、14…モニタ制御装置、15…操作装置、16…エンジン、17…エンジン制御装置、18…油圧ポンプ、19…コントロールバルブ、20…パイロットポンプ、21…ポンプレギュレータ、22…ロックバルブ、23…ポンプ流量制御圧センサ、24…パイロット圧制御減圧弁、25…操作圧センサ、26…ポンプ吐出圧センサ、60…外部操作制御装置、61…通信端末、62…状態表示灯、62a…作業表示灯、62b…警告表示灯、62c…通信表示灯、62d…運転表示灯、62e…接近許可表示灯、62f…行動要求表示灯、63…カメラ、64…運転状態切替スイッチ、65…点灯条件切替スイッチ、66…外部スピーカ、100…油圧ショベル、状態表示灯の名称…221a~221f222…表示色、223…点灯条件、300…状態、310…有人運転状態、320…無人運転状態、321…無人運転一時解除状態、322…無人運転待機状態、323…無人運転作業状態、324…無人運転強制停止状
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