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特許7544968金属の導電性を向上させる複合材料およびその製造方法
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  • 特許-金属の導電性を向上させる複合材料およびその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】金属の導電性を向上させる複合材料およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/04 20060101AFI20240827BHJP
   H01B 1/04 20060101ALI20240827BHJP
   C23C 16/26 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
B32B15/04 B
H01B1/04
C23C16/26
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023519925
(86)(22)【出願日】2021-08-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-16
(86)【国際出願番号】 CN2021113324
(87)【国際公開番号】W WO2023019484
(87)【国際公開日】2023-02-23
【審査請求日】2023-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】521438010
【氏名又は名称】中▲車▼工▲業▼研究院有限公司
【氏名又は名称原語表記】CRRC ACADEMY CORPORATION LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】裴 中正
(72)【発明者】
【氏名】章 瀟慧
(72)【発明者】
【氏名】柳 柏杉
(72)【発明者】
【氏名】梁 俊才
(72)【発明者】
【氏名】李 要君
(72)【発明者】
【氏名】楊 為三
(72)【発明者】
【氏名】陳 強
(72)【発明者】
【氏名】王 雅倫
(72)【発明者】
【氏名】孫 ▲バン▼成
(72)【発明者】
【氏名】▲ゴン▼ 明
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106584976(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第110371955(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0629215(US,A1)
【文献】特表2020-531408(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102815695(CN,A)
【文献】特開2020-098909(JP,A)
【文献】国際公開第2019/220903(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
C23C 16/00-16/56
H01B 1/00- 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
n個のA-B-A構造を複合化することで得られ、前記Aはグラフェン断片層であり、前記Bは金属箔層であり、前記nは2以上の整数であり、前記グラフェン断片層は、前記金属箔層の上に敷かれた、面積および間隔が均一であるグラフェン断片を含
各前記グラフェン断片の面積は、いずれも50~1000μm であり、隣接する前記グラフェン断片の間の距離は、いずれも5~20μmである、
ことを特徴とする金属の導電性を向上させる複合材料。
【請求項2】
記グラフェン断片は、化学修飾されていない単層、二層または多層のグラフェンを破断したものである、
ことを特徴とする請求項1に記載の金属の導電性を向上させる複合材料。
【請求項3】
前記グラフェン断片の前記複合材料における質量分率は0.0004%~0.07%であり、または、前記グラフェン断片の前記複合材料における体積分率は0.001%~0.05%である、
ことを特徴とする請求項1に記載の金属の導電性を向上させる複合材料。
【請求項4】
前記金属箔層は、銀、銅、アルミニウム、マグネシウムおよびこれらの合金または複合材料から選択される少なくとも1つである、
ことを特徴とする請求項1に記載の金属の導電性を向上させる複合材料。
【請求項5】
前記金属箔層の厚さは10~50μmである、
ことを特徴とする請求項1に記載の金属の導電性を向上させる複合材料。
【請求項6】
n個のA-B-A構造を複合材料として複合化し、前記Aはグラフェン断片層であり、前記Bは金属箔層であり、前記nは2以上の整数であり、前記グラフェン断片層は、前記金属箔層の上に敷かれた、面積および間隔が均一であるグラフェン断片を含
各前記グラフェン断片の面積は、いずれも50~1000μm に設定され、隣接する前記グラフェン断片の間の距離は、いずれも5~20μmに設定される、
ことを特徴とする金属の導電性を向上させる方法。
【請求項7】
CVD法を用いて金属箔層の上下表面にグラフェンを堆積させ、次に延伸によりグラフェンを均一に破断させて一定の面積と距離を有するグラフェン断片を形成することで前記A-B-A構造を形成し、前記n個のA-B-A構造をホットプレスすることにより、前記複合材料を形成する、
ことを特徴とする請求項に記載の金属の導電性を向上させる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属基複合材料の技術分野に関し、特に、金属の導電性を向上させる複合材料およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気エネルギーは現代社会の生産と生活において最も重要なエネルギーであり、国家統計局によると、中国の年間総電力消費量は7.15兆キロワット時(2018年)であり、そのうち、年間送配電損失は3351.7億キロワット時であり、これは三峡ダムの3年間の発電量に相当するので、導電材料の導電率を向上させると送配電損失を大幅に低減でき、省エネと排出削減に大きく貢献する。
【0003】
文献CN106584976Aには、純銀よりも優れた導電率を形成するために、高純度で単結晶または単結晶に近い銅基板を用いた高導電性グラフェン/銅基層状複合材料およびその製造方法が開示されている。しかし、上記の複合材料は、ホットプレス時にグラフェンの無秩序破断が起こり、一部のグラフェン断片が大きすぎ、グラフェン断片間の距離が小さすぎたり大きすぎたりする構造になりやすい。断片が大きすぎる場合、および/または断片間の距離が小さすぎる場合では、グラフェンは曲がった状態で大きな応力を受け、さらに無秩序破断が起こり、均一で良好なキャリアチャネルを形成することができないため、材料の曲がった状態での応用における導電率が低下し、断片間の距離が大きすぎる場合も、良好なキャリアチャネルを形成することができない。さらに、従来の導電性金属およびその合金、複合材料などについては、銅の表面の単結晶構造と異なることや、高純度ではないことから、上記の文献における方法で得られたこれらの複合材料は、対応する導電性や曲がったり折れ曲がったりするときの導電性を向上させることはできない。
【0004】
現在、曲がった状態での応用ニーズの増加に基づき、従来の導電性金属材料の導電特性の問題を解決することが急務となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、金属の導電性を向上させる複合材料を提供し、従来の金属材料の導電率が低いという問題、およびさらに曲がった状態での応用における導電率が低いという問題を解決し、従来の金属材料の導電率を少なくとも18%以上向上させ、折れ曲がった状態での導電率を通常の状態とほぼ同じレベルに維持することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
具体的には以下の通りである。
【0007】
本発明は、金属の導電性を向上させる複合材料に関し、前記複合材料はn個のA-B-A構造を複合化することで得られ、前記Aはグラフェン断片層であり、前記Bは金属箔層であり、前記nは2以上の整数である。
【0008】
前記nは、好ましくは10~30である。当該好ましい範囲にあることにより、以下の質量分率および体積分率を有する複合材料を比較的容易に得ることができる。
【0009】
さらに、前記グラフェン断片層は、前記金属箔層の上に均一に敷かれたグラフェン断片を含む。
【0010】
さらに、各前記グラフェン断片の面積は、いずれも50~1000μmであり、隣接する前記グラフェン断片の間の距離は、いずれも5~20μmである。
【0011】
さらに、破断前の前記グラフェン断片は、化学修飾されていない単層、二層または多層のグラフェンである。
【0012】
グラフェンの酸化還元などの化学修飾は、グラフェンに多くの欠陥や不純物を導入し、グラフェンの移動度に影響を与えるため、高導電性複合材料の設計や製造には向かない。
【0013】
さらに、前記グラフェン断片の前記複合材料における質量分率は0.0004%~0.07%であり、または、前記グラフェン断片の前記複合材料における体積分率は0.001%~0.05%である。
【0014】
上記の質量分率は、前記体積分率と異なる金属箔層の密度とに基づいて得られる。
【0015】
上記のグラフェン断片の含有量は、最適な導電性を実現できるだけでなく、複合材料の引張強度や曲がりなどの性能も保証することができ、グラフェン断片の含有量が高すぎても低すぎても上記の性能は実現できない。
【0016】
さらに、前記金属箔層は、従来の導電性金属材料から選択される。単結晶構造を有する高純度銅に限定されない。
【0017】
さらに、前記金属箔層は、銀、銅、アルミニウム、マグネシウムおよびこれらの合金または複合材料から選択される少なくとも1つである。
【0018】
さらに、前記金属箔層の厚さは10~50μmである。
【0019】
金属箔層が厚すぎても薄すぎても、上記の質量分率や体積分率の要求を満たすことは困難である。
【0020】
さらに、本発明は、金属の導電性を向上させる方法に関し、n個のA-B-A構造を複合材料として複合化し、前記Aはグラフェン断片層であり、前記Bは金属箔層であり、前記nは2以上の整数であり、前記グラフェン断片層は、前記金属箔層の上に均一に敷かれたグラフェン断片を含む。
【0021】
さらに、各前記グラフェン断片の面積を、いずれも50~1000μmに設定し、隣接する前記グラフェン断片の間の距離を、いずれも5~20μmに設定する。
【0022】
さらに、CVD法を用いて金属箔層の上下表面にグラフェンを堆積させ、次に延伸によりグラフェンを均一に破断させて一定の面積と距離を有するグラフェン断片を形成することで前記A-B-A構造を形成し、前記n個のA-B-A構造をホットプレスすることにより、前記複合材料を形成する。
【0023】
CVD法によるグラフェンの堆積は、化学修飾などの方式の欠点を回避し、欠陥の少ない高品質なグラフェンを得ることができ、キャリアチャネルの形成が容易になる。
【0024】
金属箔層の延伸に伴ってグラフェンが均一に破断するようにXY双方向延伸を行い、一定の面積と間隔を有するグラフェン断片を生成するように延伸力を制御してもよく、上記延伸および制御方法は、均一な延伸を実現できる一般の実験装置を用いる。
【0025】
あらかじめ金属箔層上でグラフェンを破断させることで、グラフェン断片の面積や断片間の間隔を制御可能にし、グラフェンの応力を低減し、ホットプレス時にさらに無秩序に破断・断片化する可能性を大幅に低減し、ホットプレス時に間隔が大きすぎるグラフェン破片が形成されてキャリアチャネルが形成できなくなったり、ホットプレス時に間隔が小さすぎるグラフェン破片が形成されて最終的に複合材料が曲がった状態で過剰な応力を受けてさらに無秩序に破断したりすることによる導電率の低下や、導電率が急激に落ちたり不安定になったりすることを防止する。
【0026】
本発明の具体的な原理は次のとおりである。一般に、グラフェンと金属とを複合化する場合、グラフェンは完全であればあるほど良いと考えられているが、ホットプレス時にグラフェンが破断しないことは不可能であり、従来は、グラフェンを破断させないか、またはグラフェン断片間の距離を短くする方向に研究が行われてきた。しかしながら、本発明は、グラフェンを断片にし、断片の面積と断片間の間隔を一定の範囲にすると、大きな面積のグラフェン断片の応力を低減しつつ、グラフェンが均一なキャリアチャネルを形成できるようにし、完全なグラフェン複合材料に近い導電性を実現するだけでなく、複合材料の曲がった状態での導電性がほとんど変化せず、さらにグラフェンを従来の様々な金属導電材料に適応させることができ、金属材料への要求を低減し、従来の金属導電材料の導電率を少なくとも18%向上させることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、先行技術に対して以下の利点を有する。
【0028】
1.本発明が提供する構造は、金属複合材料をサポートして高い導電性を実現する特性を有するため、モータや変圧器などの産業用駆動分野、新エネルギー自動車、風力発電、太陽光発電、原子力などの新エネルギー分野、ケーブルや電気キャビネットなどの電力産業、通信チップや産業用制御チップなどのハイエンド応用分野に広く適用され得る。また、本発明は、曲がった状態でも優れた導電性能を有するため、特に、モータの巻線コイルなど、材料の曲がった状態での応用に適する。
【0029】
2.本発明が提供する構造では、グラフェン断片が多く存在し、断片間隔が比較的大きいことが許容されるため、従来のようにグラフェンの断片化および断片間の距離を減らすための努力は必要なく、それによって、グラフェンの層数および完全性、グラフェン断片の形態、大きさおよび間隔、金属の種類への要求がそれほど厳しくない。
【0030】
3.本発明が提供する構造は、グラフェン断片間の比較的適切な距離により、導電率の向上が実現できるとともに、複合材料の曲がった状態での導電率がほとんど変化しないことを保証する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
本発明の実施例における技術的解決策をより明確に説明するために、以下、実施例の説明に必要な添付図面の簡単に説明するが、明らかに、以下の説明における添付図面は本発明の一部の実施例に過ぎず、当業者にとって、これらの図面に基づいて創造的な労力をかけずに他の添付図面を得ることができる。
図1】本発明の2個のA-B-A構造を複合化することで得られた複合材料を示す図である。
図2】実施例1の複合材料におけるグラフェン断片層の走査型電子顕微鏡による形態を示す図であり、図1におけるAの形態も表せる。
図3】実施例1の複合材料における金属が腐食液により溶解した後に残存したグラフェン断片の巨視的形態を示す図である。
図4】実施例1の複合材料における金属が腐食液により溶解した後に残存したグラフェン断片のRamanスペクトログラムである。
図5】対照例1の複合材料におけるグラフェン断片層の走査型電子顕微鏡による形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明をさらに理解しやすくするために、以下、いくつかの実施例と併せて、本発明の好ましい実施形態を説明するが、これらの説明は、本発明の特徴および利点をさらに説明するためのものにすぎず、本発明の特許請求の範囲を限定するものではない。
【0033】
図1は、本発明の一実施例を示すもので、具体的には、金属の導電性を向上させる複合材料を示し、前記複合材料は2個のA-B-A構造を複合化することで得られ、Aはグラフェン断片層を表し、Bは金属箔層を表し、グラフェン断片層Aは、前記金属箔層Bの上に均一に敷かれたグラフェン断片を含む。
【0034】
実施例1:CVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いて厚さ30μmの圧延銅箔の両側の表面にグラフェンを堆積させ、それぞれ連続する単層の高品質なグラフェンを形成し、前記グラフェンの複合材料における質量分率が約0.0008%、または前記グラフェンの複合材料における体積分率が約0.003%となるように制御することでグラフェン-銅箔の3層構造が得られ、延伸によりグラフェンが均一に破断するように制御し、HIP(Hot Isostatic Pressing、熱間等方圧加圧)装置を用いて20層のグラフェン-銅箔に920℃の温度と45MPaの圧力を加えることで成形を行い、成形されたグラフェン-銅の複合材料の四探針法測定による導電率は119.84%IACS、引張強度は258MPa、曲げ実験(曲げ実験とは、各角度でいずれもある程度の曲げを行う実験のことを指し、以下の曲げ実験も同じである)後の導電率は118.91%IACSである。腐食液を用いて、グラフェン-銅の複合材料の片側の表面の銅をエッチングしてグラフェンの形態を露出させて走査型電子顕微鏡で観察した結果(図2)、グラフェンは、複合材料内でランダムに破断した後も、銅基において均一に分布しており、形態は矩形の断片状となっており、各断片の面積は50~1000μmであり、互いに垂直な2つの方向における断片間隔はいずれも5~20μmである。図3に示すように、グラフェン-銅の複合材料をFeCl3溶液に浸し、銅を溶解させた後、グラフェンの巨視的形態が黒い顆粒状で観察されたことから、複合材料におけるグラフェンの形態が完全なグラフェン膜ではなく、断片状であることが分かる。図4は、グラフェン-銅の複合材料がFeCl3溶液により溶解した後に残存したグラフェンのRamanスペクトログラムであり、グラフェンの層数が少なく、明らかな凝集が起きていないことが分かる。以上の実験結果から、本実施例の複合材料は、本発明の複合構造に適合していること、すなわち、断片化した高品質なグラフェンが金属材料のマトリックス中に連続的かつ均一に分布するようにし、グラフェン断片が適切な大きさと間隔を有することを保証すると、キャリアの高速移動チャネルを形成することができ、導電性金属の導電率を18%以上向上させることがわかる。
【0035】
実施例2:CVD法を用いて厚さ40μmの電解アルミニウム箔(導電率59.1%IACS)の両側の表面にグラフェンを堆積させ、それぞれ連続する多層の高品質なグラフェンを形成し、前記グラフェンの複合材料における質量分率が約0.01%、または前記グラフェンの複合材料における体積分率が約0.01%となるように制御することでグラフェン-アルミニウム箔の3層構造が得られ、延伸によりグラフェンが均一に破断するように制御し、ホットプレス装置を用いて10層のグラフェン-アルミニウム箔に480℃の温度と15MPaの圧力を加えることで成形を行い、成形されたグラフェン-アルミニウムの複合材料の四探針法測定による導電率は71.52%IACS、引張強度は223MPa、曲げ実験後の導電率は69.98%IACSである。腐食液を用いて、グラフェン-アルミニウムの複合材料の片側の表面のアルミニウムをエッチングしてグラフェンの形態を露出させて走査型電子顕微鏡で観察した結果、グラフェンは、複合材料内でランダムに破断した後に、アルミニウム基において均一に分布しており、形態は多角形の断片状となっており、各断片の面積は50~1000μmであり、互いに垂直な2つの方向における断片間隔はいずれも5~20μmである。
【0036】
実施例3:CVD法を用いて厚さ20μmの銀箔(導電率107.8%IACS)の両側の表面にグラフェンを堆積させ、それぞれ連続する二層の高品質なグラフェンを形成し、前記グラフェンの複合材料における質量分率が約0.002%、または前記グラフェンの複合材料における体積分率が約0.01%となるように制御することでグラフェン-銀箔の3層構造が得られ、延伸によりグラフェンが均一に破断するように制御し、ホットプレス装置を用いて15層のグラフェン-銀箔に800℃の温度と40MPaの圧力を加えることで成形を行い、成形されたグラフェン-銀の複合材料の四探針法測定による導電率は127.59%IACS、引張強度は129MPa、曲げ実験後の導電率は126.33%IACSである。腐食液を用いて、グラフェン-銀の複合材料の片側の表面の銀をエッチングしてグラフェンの形態を露出させて走査型電子顕微鏡で観察した結果、グラフェンは、複合材料内でランダムに破断した後に、銀基において均一に分布しており、形態は矩形の断片状となっており、各断片の面積は50~1000μmであり、互いに垂直な2つの方向における断片間隔はいずれも5~20μmである。
【0037】
対比例1:実施例1と同じ方法を用いたが、グラフェンがホットプレス前に延伸操作を受けない点、グラフェンをあらかじめ破断させない点、および/またはグラフェン断片の面積および間隔の大きさを制御しない点で相違する。成形されたグラフェン-銅の複合材料の四探針法測定による導電率は116.54%IACS、曲げ実験後の導電率は109%IACSである。腐食液を用いて、グラフェン-銅の複合材料の片側の表面の銅をエッチングしてグラフェンの形態を露出させて走査型電子顕微鏡で観察した結果(図5)、グラフェンは、複合材料内でランダムに破断した後に、銅基において不均一な大きさで分布しており、形態は矩形の断片状となっており、最大断片面積は約2500μmであり、互いに垂直な2つの方向における断片間隔の最小間隔は約2μmであり、最大間隔は約30μmであり、大きすぎる断片面積や小さすぎる断片間隔など、上記の不均一な断片面積と間隔は、導電率の低下や、曲がった状態での応力の著しい増大を招き、曲がった状態で優れた導電率を維持することができない。
【0038】
対比例2:実施例2と同じ方法を用いたが、グラフェンがホットプレス前に延伸操作を受けない点、グラフェンをあらかじめ破断させない点、および/またはグラフェン断片の面積がいずれも50~1000μmであるわけではない点、互いに垂直な2つの方向における断片間隔がいずれも5~20μmであるわけではない点で相違する。成形されたグラフェン-アルミニウムの複合材料の四探針法測定による導電率は64.52%IACS、曲げ実験後の導電率は59.81%IACSである。
【0039】
対比例3:実施例3と同じ方法を用いたが、グラフェンがホットプレス前に延伸操作を受けない点、グラフェンをあらかじめ破断させない点、および/またはグラフェン断片の面積がいずれも50~1000μmであるわけではない点、互いに垂直な2つの方向における断片間隔がいずれも5~20μmであるわけではない点で相違する。形成されたグラフェン-銀の複合材料の四探針法測定による導電率は118.89%IACS、曲げ実験後の導電率は109.92%IACSである。
【0040】
上記の実施例および対比例は、あくまでランダムな例であり、上記の実施例しか本願発明の効果を奏することができないことを意味しない。
【0041】
上記の実施例および対比例から、グラフェン断片の面積が50~1000μm、隣接するグラフェン断片の間の距離が5~20μmとなるように制御された金属複合材料は、金属材料の導電性を大幅に向上させることができ(少なくとも18%向上)、曲がった状態での導電性を維持することができる。
【0042】
本発明に記載された具体的な実施例は、単に本発明の精神を例示するものである。本発明の属する技術分野の当業者は、記載された具体的な実施例に対して様々な修正、追加、または類似の方法を用いた置換を行うことができるが、本発明の精神から逸脱することなく、または添付の特許請求の範囲に定義された範囲を超えることはない。
【0043】
上記実施例の各技術的特徴については、任意の組み合わせが可能であり、説明を簡潔にするために、上記実施例の各技術的特徴のすべての可能な組み合わせを説明していないが、これらの技術的特徴の組み合わせが矛盾しない限り、本発明の記載の範囲内にあると考えるべきである。
符号の説明
【0044】
A グラフェン断片層、B 金属箔層。
図1
図2
図3
図4
図5