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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】医薬製剤含有フィルター内蔵シリンジ
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/31 20060101AFI20240827BHJP
   A61M 5/28 20060101ALI20240827BHJP
   A61L 31/06 20060101ALI20240827BHJP
   A61L 31/04 20060101ALI20240827BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240827BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240827BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240827BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
A61M5/31 540
A61M5/28
A61M5/28 520
A61L31/06
A61L31/04 110
A61K45/00
A61K39/395 N
A61K9/08
A61P7/04
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2023547198
(86)(22)【出願日】2023-04-26
(86)【国際出願番号】 JP2023016386
(87)【国際公開番号】W WO2023210670
(87)【国際公開日】2023-11-02
【審査請求日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】P 2022072513
(32)【優先日】2022-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003311
【氏名又は名称】中外製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100122644
【弁理士】
【氏名又は名称】寺地 拓己
(74)【代理人】
【識別番号】100220098
【弁理士】
【氏名又は名称】宮脇 薫
(72)【発明者】
【氏名】山中 祐治
(72)【発明者】
【氏名】江上 貴一
(72)【発明者】
【氏名】堀川 絢乃
(72)【発明者】
【氏名】堀田 泰治
(72)【発明者】
【氏名】小川 幸弘
(72)【発明者】
【氏名】谷口 健介
(72)【発明者】
【氏名】宮川 惇紀
【審査官】川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-523050(JP,A)
【文献】特表2019-528912(JP,A)
【文献】特表2004-512869(JP,A)
【文献】米国特許第04331146(US,A)
【文献】国際公開第2020/027220(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/31
A61M 5/28
A61L 31/06
A61L 31/04
A61K 45/00
A61K 39/395
A61K 9/08
A61P 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶液がシリンジに充填された注射用製剤であって、
シリンジが、
先端部及び基端部を有する筒状に形成され、内部に収容した溶液を外部に注出するための注出孔が前記先端部に設けられたバレルと、
前記バレルの内部において前記注出孔よりも基端側に配置されたフィルターと、
溶液が前記フィルターを介してフィルターの基端側から先端側に流入するように、フィルターが設けられており、
フィルターがメンブレンであって、その材質が、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフッ化ビリニデン(PVDF)、ポリスルホン(PS)及びアクリル共重合体から選択される1以上を含み、
前記シリンジが、前記バレル内部の空間を基端側空間と先端側空間とに仕切る仕切手段を備え、
前記仕切手段は、前記バレルの内面に対して液密に接触するように配置される筒状のハウジングと、該ハウジングの内部を介して前記基端側空間と前記先端側空間とが連通又は非連通となるように前記ハウジングの内部に対して開閉可能に配置された中栓部とを備え、
前記ハウジングは、閉時係合部を有し、
前記中栓部は、前記閉時係合部に対して基端側から係合する閉時被係合部を有し、
前記仕切手段は、前記バレル内部に基端側から挿入されるピストンにより基端側から押圧力がかかると、前記閉時係合部及び前記閉時被係合部のうち一方が他方を乗り越えて、前記閉時係合部と前記閉時被係合部との係合が解除され、前記中栓部が前記ハウジングの内部に対して開放されて前記基端側空間と前記先端側空間とが連通するように構成されており、
前記フィルターがハウジングの先端側部分に保持された、注射用製剤。
【請求項2】
前記閉時係合部及び前記閉時被係合部の一方は、前記閉時係合部及び前記閉時被係合部の他方に対して、先端側と基端側とに配置されている、請求項に記載の注射用製剤。
【請求項3】
中栓部の材質が、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)または低密度ポリエチレン(LDPE)である、請求項に記載の注射用製剤。
【請求項4】
前記仕切手段は、前記バレルの先端側空間の体積が150mm以下となるように配置される、請求項に記載の注射用製剤。
【請求項5】
溶液に含まれる有効成分である化合物が、低分子化合物、中分子化合物、またはタンパク質である、請求項に記載の注射用製剤。
【請求項6】
目視により検出可能な粒子を含まない溶液の排出において使用するための、請求項1~5のいずれか一項に記載の注射用製剤。
【請求項7】
溶液の排出における目視により検出可能な粒子の除去において使用するための、請求項1~5のいずれか一項に記載の注射用製剤。
【請求項8】
メンブレンの材質が、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリスルホン(PS)及びアクリル共重合体から選択される1以上を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の注射用製剤。
【請求項9】
メンブレンの材質が、アクリル共重合体である、請求項1~5のいずれか一項に記載の注射用製剤。
【請求項10】
アクリル共重合体が疎水性である、請求項に記載の注射用製剤。
【請求項11】
フィルターの先端側には先端側副空間が設けられ、フィルターの基端側には基端側副空間が設けられ、バレルの軸心方向から視たとき、注出孔の面積は基端側副空間の面積よりも小さく、先端側副空間の面積よりも小さい、請求項1~5のいずれか一項に記載の注射用製剤。
【請求項12】
溶液が有効成分としてエミシズマブを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の注射用製剤。
【請求項13】
前記シリンジがオートインジェクターに装着されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の注射用製剤。
【請求項14】
粒子が40μmより大きい粒径を有する、請求項に記載の注射用製剤。
【請求項15】
粒子が40μmより大きい粒径を有する、請求項に記載の注射用製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有効成分を含有する溶液が容器に充填された医薬製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、種々の抗体含有製剤が開発され実用に供されているが、多くの抗体含有製剤は静脈注射用製剤として用いられている。一方、医療現場のニーズにより、抗体含有製剤を自己注射可能な皮下注射用製剤として開発する要望が高くなっている。特に、シリンジに溶液が封入されているプレフィルドシリンジ製剤が、利便性から開発の要望が高い。
【0003】
皮下注射用の抗体含有製剤を設計するにあたっては、1回あたりの抗体投与量が大量となる一方で(80~200mg程度)、皮下注射では一般的に注射液量の制限があることから、投与液中の抗体の高濃度化が必須となっている。
【0004】
近年、自己注射用のプレフィルドシリンジ製剤として医療現場で使用される製剤では、内部に薬剤が充填された筒状の注射器本体と、前記注射器本体の先端に取り付けられた注射針と、着脱可能に取り付けられた注射針を覆うシリンジキャップと、前記注射器本体内に挿入され、該注射器本体の軸芯方向にスライド移動可能なプランジャとを備えたシリンジが使用されている。
【0005】
プレフィルドシリンジ製剤を使用する際には、シリンジキャップを取り外し、投与部位に針を挿入後、プランジャロッドでプランジャを前方に移動させることで、薬液を排出・投与する。一般的に、本プランジャの摺動性を確保するために、プレフィルドシリンジの内壁及びプランジャに潤滑剤であるシリコーンオイル等を塗布することが行われている。
【0006】
抗体含有製剤においては、水溶液中での粒子の形成が問題となる。形成する粒子としては、二量体や三量体といった多量体よりも大きい凝集体であるが、一般的に目で見るのは困難とされる、1.5μm~50μm未満までの粒径の微粒子であるサブビジブル粒子(sub-visible particle、SVP)や、標準照度(2,000-3,000 lx程度)で目視により検出可能な可視粒子(visible particle:VP、100μmより大きい)が知られている。なお、医薬製剤における可視粒子の目視による検出率は実施者による間差が大きいが、日本薬局方に規定されている標準照度(2,000-3,000lx程度)においては100μmの粒径の粒子の検出感度が40%程度、150μmの粒径の粒子の検出感度が70%程度、200μmの粒径の粒子の検出感度がほぼ100%となることが報告されている(非特許文献1)。また、医薬製剤を観察する照度を上げたり、観察時間を長くすることで、実際には最小40μm程度の更に小さな粒径の粒子まで目視で検出することも可能である。本明細書では、特にこのような40μm以上~100μmの粒子を高照度でのみ目視により検出可能な粒子と呼ぶ。また、40μm以上の粒径を有する粒子は、高照度で目視により検出可能な粒子であり、目視により検出可能な粒子と称する。
【0007】
一般的に抗体は気液界面や固液界面といった界面において凝集する性質を有している。これら界面の存在が上記目視により検出可能な粒子の形成に寄与している可能性がある。抗体溶液を充填したシリンジにメカニカルストレスを与えることで、界面の存在に起因する微粒子の顕著な増加が報告されている(非特許文献2)。シリンジに充填された抗体溶液においては、気泡が存在することで気液界面が生じ、プランジャ及びシリンジバレルと接触することで、固液界面を形成する。また、プレフィルドシリンジのプランジャ及びバレルがシリコーン塗布されている場合、抗体溶液は固相表面のシリコーンと接触し、新たな固液界面が生じる。また、固液界面に吸着し、凝集したタンパク質はプレフィルドシリンジ製剤の溶液中の空気の移動により、液中に剥がれ落ち、可視粒子として現れることも報告されている(非特許文献3)。
【0008】
このような水溶液中で形成されたタンパク性の粒子は、免疫原性のリスクを否定できないため、体内に投与されないことが望ましい。
また、抗体含有製剤に限らず、低分子化合物又は中分子化合物を有効成分として含有するプレフィルドシリンジ製剤においても、内在性異物や外来性異物の粒子が問題となり得る。
【0009】
バイアルに充填された製剤中の粒子を投与直前に除去する方法として、移注針に孔径5μmのフィルターを備えたフィルターニードルや輸液セット中のインラインフィルターを使用することが挙げられる。フィルターニードルはBDブラントフィルターニードル(日本ベクトン・ディッキンソン社)やSterifix(登録商標)(B Braun社)という製品名で市販されている。また、複数の内容物を混合して投与する注射器において、チャンバー内の空間を湿潤部分と乾燥部分に仕切る封止機構及びフィルターを有する注射器(特許文献1~3)や、アンプルの薬液を注射針を通じて吸い込んで注射針を使って注射する場合に、異物を注射器内でろ過するためのフィルターを装着した注射器(特許文献4)が知られている。一方で、プレフィルドシリンジ製剤中の粒子を投与直前に除去する方法はこれまで確立されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開第2007-508898号公報
【文献】特開第2019-051338号公報
【文献】特表第2005-537106号公報
【文献】特表第2015-536213号公報
【非特許文献】
【0011】
【文献】James A. Melchore, AAPS PharmSciTech; 2011; 12(1): 215-221.
【文献】Torisu et al., J. Pharm. Sci. 106 (2017) 2966-2978.
【文献】Gerhardt et al., J. Pharm. Sci. 103 (2014) 1601-1612.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
バイアルに充填された製剤中の粒子を投与直前に除去する方法は知られている一方で、シリンジに充填された溶液製剤中の粒子を投与直前に除去する方法は確立されておらず、技術的にも困難である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
そこで、本発明者らは、新規フィルター内蔵シリンジについて鋭意研究を行い、本発明を完成させた。本明細書は以下の発明の開示を包含する。
[1-1]溶液がシリンジに充填された注射用製剤であって、
シリンジが、
先端部及び基端部を有する筒状に形成され、内部に収容した溶液を外部に注出するための注出孔が前記先端部に設けられたバレルと、
前記バレルの内部において前記注出孔よりも基端側に配置されたフィルターと、を備え、
溶液が前記フィルターを介してフィルターの基端側から先端側に流入するように、フィルターが設けられており、
フィルターがメンブレンであって、その材質が、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフッ化ビリニデン(PVDF)、ポリスルホン(PS)及びアクリル共重合体から選択される1以上を含む、注射用製剤。
【0014】
[1-2]メンブレンの材質が、アクリル共重合体である、[1-1]に記載の注射用製剤。
[1-3]アクリル共重合体が疎水性である、[1-2]に記載の注射用製剤。
【0015】
[1-4]フィルターが5μm以下、好ましくは5μmの孔径を有する、[1-1]~[1-3]のいずれかに記載の注射用製剤。
[1-5]フィルターの先端側には先端側副空間が設けられ、フィルターの基端側には基端側副空間が設けられ、バレルの軸心方向から視たとき、注出孔の面積は基端側副空間の面積よりも小さく、先端側副空間の面積よりも小さい、[1-1]~[1-4]のいずれかに記載の注射用製剤。
【0016】
[1-6]シリンジが、前記バレル内部の空間を基端側空間と先端側空間とに仕切る仕切手段を備え、
前記仕切手段は、前記バレルの内面に対して液密に接触するように配置される筒状のハウジングと、該ハウジングの内部を介して前記基端側空間と前記先端側空間とが連通又は非連通となるように前記ハウジングの内部に対して開閉可能に配置された中栓部とを備え、
前記ハウジングは、閉時係合部を有し、
前記中栓部は、前記閉時係合部に対して基端側から係合する閉時被係合部を有し、
前記仕切手段は、前記バレル内部に基端側から挿入されるピストンにより基端側から押圧力がかかると、前記閉時係合部及び前記閉時被係合部のうち一方が他方を乗り越えて、前記閉時係合部と前記閉時被係合部との係合が解除され、前記中栓部が前記ハウジングの内部に対して開放されて前記基端側空間と前記先端側空間とが連通するように構成されており、
前記フィルターがハウジングの先端側部分に保持された、[1-1]~[1-5]のいずれかに記載の注射用製剤。
【0017】
[1-7]前記閉時係合部及び前記閉時被係合部の一方は、前記閉時係合部及び前記閉時被係合部の他方に対して、先端側と基端側とに配置されている、[1-6]に記載の注射用製剤。
【0018】
[1-8]中栓部の材質が、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)または低密度ポリエチレン(LDPE)であり、好ましくは低密度ポリエチレン(LDPE)である、[1-6]又は[1-7]に記載の注射用製剤。
【0019】
[1-9]シリンジが、前記バレル内部の空間を基端側空間と先端側空間とに仕切る仕切手段を備え、
前記仕切手段は、前記バレルの内面に対して液密に接触するように配置される筒状のハウジングを備え、
フィルターがハウジングの先端側部分に保持された、[1-1]~[1-5]のいずれかに記載の注射用製剤。
【0020】
[1-10]前記仕切手段は、前記バレルの先端側空間の体積が150mm以下となるように配置される、[1-6]~[1-9]のいずれかに記載の注射用製剤。
[1-11]ハウジングの材質が、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)または低密度ポリエチレン(LDPE)であり、好ましくは低密度ポリエチレン(LDPE)である、[1-6]~[1-10]のいずれかに記載の注射用製剤。
【0021】
[1-12]溶液に含まれる有効成分である化合物が、低分子化合物、中分子化合物、またはタンパク質である、[1-1]~[1-11]のいずれかに記載の注射用製剤。
[1-13]前記化合物が、抗体もしくはその結合断片、または環状ペプチドを含む、[1-12]に記載の注射用製剤。
【0022】
[1-14]低分子化合物が、500未満の分子量を有する、[1-12]に記載の注射用製剤。
[1-15]中分子化合物が、500~15000の分子量を有する、[1-12]に記載の注射用製剤。
【0023】
[1-16]前記化合物が、リボザイム、アンチセンス分子、阻害剤オリゴヌクレオチド、アプタマー、マイクロRNA、および低分子干渉RNA(siRNA)からなる群より選択されるポリヌクレオチドである、[1-12]に記載の注射用製剤。
【0024】
[1-17]溶液が使用される前はフィルターと非接触の状態で保たれる、[1-1]~[1-16]のいずれかに記載の注射用製剤。
[1-18]溶液が使用される前にフィルターと接触した状態におかれる、[1-1]~[1-16]のいずれかに記載の注射用製剤。
【0025】
[1-19]溶液がシリンジに充填された注射用製剤の製造時又は製造後に、当該溶液は使用される前はフィルターと非接触の状態で保たれる、[1-17]に記載の注射用製剤。
【0026】
[1-20]95cP以下の粘度を有する溶液を300mm/分の排出速度でフィルターを通して排出した後においても、フィルターの破損及びフィルターとハウジング間の接着面の剥離がない、[1-1]~[1-19]のいずれかに記載の注射用製剤。
【0027】
[1-21]95cP以下の粘度を有する溶液を100mm/分の排出速度でフィルターを通して排出する際、フィルターを内蔵していないシリンジと比較して、10mmの平均摺動抵抗値が1.3倍以内、1.4倍以内、又は1.5倍以内である、[1-1]~[1-20]のいずれかに記載の注射用製剤。
【0028】
[1-22]溶液が、糖、糖アルコール、緩衝剤、保存剤、担体、酸化防止剤、キレート剤、天然ポリマー、合成ポリマー、凍結保護剤、増量剤、および安定化剤から選択される1以上の薬学的に許容される賦形剤を含む、[1-1]~[1-21]のいずれかに記載の注射用製剤。
【0029】
[1-23]シリンジに接続される注射針を備える、[1-1]~[1-22]のいずれかに記載の注射用製剤。
[1-24]溶液が水溶液である、[1-1]~[1-23]のいずれかに記載の注射用製剤。
[1-25]溶液が有効成分としてエミシズマブを含む、[1-1]~[1-24]のいずれかに記載の注射用製剤。
【0030】
[2-1]溶液がシリンジに充填された注射用製剤であって、
シリンジが、
先端部及び基端部を有する筒状に形成され、内部に収容した溶液を外部に注出するための注出孔が前記先端部に設けられたバレルと、
前記バレルの内部において前記注出孔よりも基端側に配置されたフィルターと、を備え、
溶液が前記フィルターを介してフィルターの基端側から先端側に流入するように、フィルターが設けられており、
フィルターがメンブレンであって、その材質が、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフッ化ビリニデン(PVDF)、ポリスルホン(PS)及びアクリル共重合体から選択される1以上を含み、
当該溶液の排出において、排出された溶液から目視により検出可能な粒子を除去することができる、注射用製剤。
【0031】
[2-2]メンブレンの材質が、アクリル共重合体である、[2-1]に記載の注射用製剤。
[2-3]アクリル共重合体が疎水性である、[2-2]に記載の注射用製剤。
【0032】
[2-4]フィルターが5μm以下、好ましくは5μmの孔径を有する、[2-1]~[2-3]のいずれかに記載の注射用製剤。
[2-5]フィルターの先端側には先端側副空間が設けられ、フィルターの基端側には基端側副空間が設けられ、バレルの軸心方向から視たとき、注出孔の面積は基端側副空間の面積よりも小さく、先端側副空間の面積よりも小さい、[2-1]~[2-4]のいずれかに記載の注射用製剤。
【0033】
[2-6]シリンジが、前記バレル内部の空間を基端側空間と先端側空間とに仕切る仕切手段を備え、
前記仕切手段は、前記バレルの内面に対して液密に接触するように配置される筒状のハウジングと、該ハウジングの内部を介して前記基端側空間と前記先端側空間とが連通又は非連通となるように前記ハウジングの内部に対して開閉可能に配置された中栓部とを備え、
前記ハウジングは、閉時係合部を有し、
前記中栓部は、前記閉時係合部に対して基端側から係合する閉時被係合部を有し、
前記仕切手段は、前記バレル内部に基端側から挿入されるピストンにより基端側から押圧力がかかると、前記閉時係合部及び前記閉時被係合部のうち一方が他方を乗り越えて、前記閉時係合部と前記閉時被係合部との係合が解除され、前記中栓部が前記ハウジングの内部に対して開放されて前記基端側空間と前記先端側空間とが連通するように構成されており、
フィルターがハウジングの先端側部分に保持された、[2-1]~[2-5]のいずれかに記載の注射用製剤。
【0034】
[2-7]前記閉時係合部及び前記閉時被係合部の一方は、前記閉時係合部及び前記閉時被係合部の他方に対して、先端側と基端側とに配置されている、[2-6]に記載の注射用製剤。
【0035】
[2-8]シリンジが、前記バレル内部の空間を基端側空間と先端側空間とに仕切る仕切手段を備え、
前記仕切手段は、前記バレルの内面に対して液密に接触するように配置される筒状のハウジングを備え、
フィルターがハウジングの先端側部分に保持された、[2-1]~[2-5]のいずれかに記載の注射用製剤。
【0036】
[2-9]前記仕切手段は、前記バレルの先端側空間の体積が150mm以下となるように配置される、[2-6]~[2-8]のいずれかに記載の注射用製剤。
[2-10]粒子が40μmより大きい粒径を有する、[2-1]~[2-9]のいずれかに記載の注射用製剤。
【0037】
[2-11]粒子が溶液の成分由来の粒子又は溶液の成分以外に由来する粒子を含む、[2-1]~[2-10]のいずれかに記載の注射用製剤。
[2-12]粒子が溶液の成分由来である、[2-11]に記載の注射用製剤。
【0038】
[2-13]粒子が溶液の成分以外に由来する、[2-11]に記載の注射用製剤。
[2-14]溶液に含まれる有効成分である化合物が、低分子化合物、中分子化合物、またはタンパク質である、[2-1]~[2-13]のいずれかに記載の注射用製剤。
【0039】
[2-15]前記化合物が、抗体もしくはその結合断片、または環状ペプチドを含む、[2-14]に記載の注射用製剤。
[2-16]低分子化合物が、500未満の分子量を有する、[2-14]に記載の注射用製剤。
【0040】
[2-17]中分子化合物が、500~15000の分子量を有する、[2-14]に記載の注射用製剤。
[2-18]前記化合物が、リボザイム、アンチセンス分子、阻害剤オリゴヌクレオチド、アプタマー、マイクロRNA、および低分子干渉RNA(siRNA)からなる群より選択されるポリヌクレオチドである、[2-14]に記載の注射用製剤。
【0041】
[2-19]溶液が使用される前はフィルターと非接触の状態で保たれる、[2-1]~[2-18]のいずれかに記載の注射用製剤。
[2-20]溶液が使用される前にフィルターと接触した状態におかれる、[2-1]~[2-18]のいずれかに記載の注射用製剤。
【0042】
[2-21]溶液がシリンジに充填された注射用製剤の製造時又は製造後、当該溶液はフィルターと非接触の状態で保たれる、[2-19]に記載の注射用製剤。
[2-22]95cP以下の粘度を有する溶液を300mm/分の排出速度でフィルターを通して排出した後においても、フィルターの破損及びフィルターとハウジング間の接着面の剥離がない、[2-1]~[2-21]のいずれかに記載の注射用製剤。
【0043】
[2-23]95cP以下の粘度を有する溶液を100mm/分の排出速度でフィルターを通して排出する際、フィルターを内蔵していないシリンジと比較して、10mmの平均摺動抵抗値が1.3倍以内、1.4倍以内、又は1.5倍以内である、[2-1]~[2-22]のいずれかに記載の注射用製剤。
【0044】
[2-24]溶液が、糖、糖アルコール、緩衝剤、保存剤、担体、酸化防止剤、キレート剤、天然ポリマー、合成ポリマー、凍結保護剤、増量剤、および安定化剤から選択される1以上の薬学的に許容される賦形剤を含む、[2-1]~[2-23]のいずれかに記載の注射用製剤。
[2-25]溶液が水溶液である、[2-1]~[2-24]のいずれかに記載の注射用製剤。
[2-26]溶液が有効成分としてエミシズマブを含む、[2-1]~[2-25]のいずれかに記載の注射用製剤。
【0045】
[3-1]注射用製剤に含まれる目視により検出可能な粒子を除去する方法であって、
注射用製剤が溶液であり、かつシリンジ内に充填されており、
シリンジが、先端部及び基端部を有する筒状に形成され、内部に収容した注射用製剤を外部に注出するための注出孔が前記先端部に設けられたバレルと、前記バレルの内部において前記注出孔よりも基端側に配置されたフィルターと、を備え、溶液が前記フィルターを介してフィルターの基端側から先端側に流入するように、フィルターが設けられており、
該方法がフィルターを通してシリンジ内に充填された溶液を排出することを含み、フィルターがメンブレンであり、その材質が、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフッ化ビリニデン(PVDF)、ポリスルホン(PS)及びアクリル共重合体から選択される1以上を含む、方法。
【0046】
[3-2]メンブレンの材質が、アクリル共重合体である、[3-1]に記載の方法。
[3-3]アクリル共重合体が疎水性である、[3-2]に記載の方法。
[3-4]フィルターが5μm以下、好ましくは5μmの孔径を有する、[3-1]~[3-3]のいずれかに記載の方法。
【0047】
[3-5]フィルターの先端側には先端側副空間が設けられ、フィルターの基端側には基端側副空間が設けられ、バレルの軸心方向から視たとき、注出孔の面積は基端側副空間の面積よりも小さく、先端側副空間の面積よりも小さい、[3-1]~[3-4]のいずれかに記載の方法。
【0048】
[3-6]シリンジが、前記バレル内部の空間を基端側空間と先端側空間とに仕切る仕切手段を備え、
前記仕切手段は、前記バレルの内面に対して液密に接触するように配置される筒状のハウジングと、該ハウジングの内部を介して前記基端側空間と前記先端側空間とが連通又は非連通となるように前記ハウジングの内部に対して開閉可能に配置された中栓部とを備え、
前記ハウジングは、閉時係合部を有し、
前記中栓部は、前記閉時係合部に対して基端側から係合する閉時被係合部を有し、
前記仕切手段は、前記バレル内部に基端側から挿入されるピストンにより基端側から押圧力がかかると、前記閉時係合部及び前記閉時被係合部のうち一方が他方を乗り越えて、前記閉時係合部と前記閉時被係合部との係合が解除され、前記中栓部が前記ハウジングの内部に対して開放されて前記基端側空間と前記先端側空間とが連通するように構成されており、
フィルターがハウジングの先端側部分に保持された、[3-1]~[3-5]のいずれかに記載の方法。
【0049】
[3-7]前記閉時係合部及び前記閉時被係合部の一方は、前記閉時係合部及び前記閉時被係合部の他方に対して、先端側と基端側とに配置されている、[3-6]に記載の方法。
【0050】
[3-8]シリンジが、前記バレル内部の空間を基端側空間と先端側空間とに仕切る仕切手段を備え、
前記仕切手段は、前記バレルの内面に対して液密に接触するように配置される筒状のハウジングを備え、
フィルターがハウジングの先端側部分に保持された、[3-1]~[3-5]のいずれかに記載の方法。
【0051】
[3-9]前記仕切手段は、前記バレルの先端側空間の体積が150mm以下となるように配置される、[3-6]~[3-8]のいずれかに記載の方法。
[3-10]粒子が40μmよりの大きい粒径を有する、[3-1]~[3-9]のいずれかに記載の方法。
【0052】
[3-11]粒子が溶液の成分由来の粒子又は溶液の成分以外に由来する粒子を含む、[3-1]~[3-10]のいずれかに記載の方法。
[3-12]粒子が溶液の成分由来である、[3-11]に記載の方法。
【0053】
[3-13]粒子が溶液の成分以外に由来する、[3-11]に記載の方法。
[3-14]溶液に含まれる有効成分である化合物が、低分子化合物、中分子化合物、またはタンパク質である、[3-1]~[3-13]のいずれかに記載の方法。
【0054】
[3-15]前記化合物が、抗体もしくはその結合断片、または環状ペプチドを含む、[3-14]に記載の方法。
[3-16]低分子化合物が、500未満の分子量を有する、[3-14]に記載の方法。
【0055】
[3-17]中分子化合物が、500~15000の分子量を有する、[3-14]に記載の方法。
[3-18]前記化合物が、リボザイム、アンチセンス分子、阻害剤オリゴヌクレオチド、アプタマー、マイクロRNA、および低分子干渉RNA(siRNA)からなる群より選択されるポリヌクレオチドである、[3-14]に記載の方法。
【0056】
[3-19]溶液が使用される前はフィルターと非接触の状態で保たれる、[3-1]~[3-18]のいずれかに記載の方法。
[3-20]溶液が使用される前にフィルターと接触した状態におかれる、[3-1]~[3-18]のいずれかに記載の方法。
【0057】
[3-21]溶液がシリンジに充填された注射用製剤の製造時又は製造後、当該溶液はフィルターと非接触の状態で保たれる、[3-19]に記載の方法。
[3-22]95cP以下の粘度を有する溶液を300mm/分の排出速度でフィルターを通して排出した後においても、フィルターの破損及びフィルターとハウジング間の接着面の剥離がない、[3-1]~[3-21]のいずれかに記載の方法。
【0058】
[3-23]95cP以下の粘度を有する溶液を100mm/分の排出速度でフィルターを通して排出する際、フィルターを内蔵していないシリンジと比較して、10mmの平均摺動抵抗値が1.3倍以内、1.4倍以内、又は1.5倍以内である、[3-1]~[3-22]のいずれかに記載の方法。
【0059】
[3-24]溶液が、糖、糖アルコール、緩衝剤、保存剤、担体、酸化防止剤、キレート剤、天然ポリマー、合成ポリマー、凍結保護剤、増量剤、および安定化剤から選択される1以上の薬学的に許容される賦形剤を含む、[3-1]~[3-23]のいずれかに記載の方法。
[3-25]溶液が水溶液である、[3-1]~[3-24]のいずれかに記載の方法。
[3-26]溶液が有効成分としてエミシズマブを含む、[3-1]~[3-25]のいずれかに記載の方法。
【0060】
[4-1]溶液が充填されたシリンジであって、
先端部及び基端部を有する筒状に形成され、内部に収容した溶液を外部に注出するための注出孔が前記先端部に設けられたバレルと、前記バレルの内部において前記注出孔よりも基端側に配置されたフィルターと、を備え、溶液が前記フィルターを介してフィルターの基端側から先端側に流入するように、フィルターが設けられており、
フィルターがメンブレンであり、その材質が、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフッ化ビリニデン(PVDF)、ポリスルホン(PS)及びアクリル共重合体から選択される1以上を含み、95cP以下の粘度を有する溶液を300mm/分の排出速度でフィルターを通して排出した後においても、フィルターの破損及びフィルターとハウジング間の接着面の剥離がない、シリンジ。
【0061】
[4-2]溶液が充填されたシリンジであって、
シリンジが、先端部及び基端部を有する筒状に形成され、内部に収容した溶液を外部に注出するための注出孔が前記先端部に設けられたバレルと、前記バレルの内部において前記注出孔よりも基端側に配置されたフィルターと、を備え、溶液が前記フィルターを介してフィルターの基端側から先端側に流入するように、フィルターが設けられており、
フィルターがメンブレンであり、その材質が、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフッ化ビリニデン(PVDF)、ポリスルホン(PS)及びアクリル共重合体から選択される1以上を含み、95cP以下の粘度を有する溶液を100mm/分の排出速度でフィルターを通して排出する際、フィルターを内蔵していないシリンジと比較して、10mmの平均摺動抵抗値が1.3倍以内、1.4倍以内、又は1.5倍以内であるシリンジ。
【0062】
[4-3]メンブレンの材質が、アクリル共重合体である、[4-1]又は[4-2]に記載のシリンジ。
[4-4]アクリル共重合体が疎水性である、[4-3]に記載のシリンジ。
【0063】
[4-5]フィルターが5μm以下、好ましくは5μmの孔径を有する、[4-1]~[4-4]のいずれかに記載のシリンジ。
[4-6]フィルターの先端側には先端側副空間が設けられ、フィルターの基端側には基端側副空間が設けられ、バレルの軸心方向から視たとき、注出孔の面積は基端側副空間の面積よりも小さく、先端側副空間の面積よりも小さい、[4-1]~[4-5]のいずれかに記載のシリンジ。
【0064】
[4-7]シリンジが、前記バレル内部の空間を基端側空間と先端側空間とに仕切る仕切手段を備え、
前記仕切手段は、前記バレルの内面に対して液密に接触するように配置される筒状のハウジングと、該ハウジングの内部を介して前記基端側空間と前記先端側空間とが連通又は非連通となるように前記ハウジングの内部に対して開閉可能に配置された中栓部とを備え、
前記ハウジングは、閉時係合部を有し、
前記中栓部は、前記閉時係合部に対して基端側から係合する閉時被係合部を有し、
前記仕切手段は、前記バレル内部に基端側から挿入されるピストンにより基端側から押圧力がかかると、前記閉時係合部及び前記閉時被係合部のうち一方が他方を乗り越えて、前記閉時係合部と前記閉時被係合部との係合が解除され、前記中栓部が前記ハウジングの内部に対して開放されて前記基端側空間と前記先端側空間とが連通するように構成されており、
フィルターがハウジングの先端側部分に保持された、[4-1]~[4-6]のいずれかに記載のシリンジ。
【0065】
[4-8]前記閉時係合部及び前記閉時被係合部の一方は、前記閉時係合部及び前記閉時被係合部の他方に対して、先端側と基端側とに配置されている、[4-7]に記載のシリンジ。
【0066】
[4-9]中栓部の材質が、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)または低密度ポリエチレン(LDPE)であり、好ましくは低密度ポリエチレン(LDPE)である、[4-7]又は[4-8]に記載のシリンジ。
【0067】
[4-10]シリンジが、前記バレル内部の空間を基端側空間と先端側空間とに仕切る仕切手段を備え、
前記仕切手段は、前記バレルの内面に対して液密に接触するように配置される筒状のハウジングを備え、
フィルターがハウジングの先端側部分に保持された、[4-1]~[4-6]のいずれかに記載のシリンジ。
【0068】
[4-11]前記仕切手段は、前記バレルの先端側空間の体積が150mm以下となるように配置される、[4-7]~[4-10]のいずれかに記載のシリンジ。
[4-12]ハウジングの材質が、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)または低密度ポリエチレン(LDPE)であり、好ましくは低密度ポリエチレン(LDPE)である、[4-7]~[4-11]のいずれかに記載のシリンジ。
【0069】
[4-13]溶液に含まれる有効成分である化合物が、低分子化合物、中分子化合物、またはタンパク質である、[4-1]~[4-12]のいずれかに記載のシリンジ。
[4-14]前記化合物が、抗体もしくはその結合断片、または環状ペプチドを含む、[4-13]に記載のシリンジ。
【0070】
[4-15]低分子化合物が、500未満の分子量を有する、[4-13]に記載のシリンジ。
[4-16]中分子化合物が、500~15000の分子量を有する、[4-13]に記載のシリンジ。
【0071】
[4-17]前記化合物が、リボザイム、アンチセンス分子、阻害剤オリゴヌクレオチド、アプタマー、マイクロRNA、および低分子干渉RNA(siRNA)からなる群より選択されるポリヌクレオチドである、[4-13]に記載のシリンジ。
【0072】
[4-18]溶液が使用される前はフィルターと非接触の状態で保たれる、[4-1]~[4-17]のいずれかに記載のシリンジ。
[4-19]溶液が使用される前にフィルターと接触した状態におかれる、[4-1]~[4-17]のいずれかに記載のシリンジ。
【0073】
[4-20]溶液がシリンジに充填された注射用製剤の製造時又は製造後、当該溶液はフィルターと非接触の状態で保たれる、[4-18]に記載のシリンジ。
[4-21]溶液が、糖、糖アルコール、緩衝剤、保存剤、担体、酸化防止剤、キレート剤、天然ポリマー、合成ポリマー、凍結保護剤、増量剤、および安定化剤から選択される1以上の薬学的に許容される賦形剤を含む、[4-1]~[4-20]のいずれかに記載のシリンジ。
[4-22]溶液が水溶液である、[4-1]~[4-21]のいずれかに記載のシリンジ。
[4-23]溶液が有効成分としてエミシズマブを含む、[4-1]~[4-22]のいずれかに記載のシリンジ。
【0074】
[5-1]溶液がシリンジに充填された、10日以上の保存が可能な医薬として使用するための注射用製剤であって、
シリンジが先端部及び基端部を有する筒状に形成され、内部に収容した溶液を外部に注出するための注出孔が前記先端部に設けられたバレルと、前記バレルの内部において前記注出孔よりも基端側に配置されたフィルターと、を備え、溶液が前記フィルターを介してフィルターの基端側から先端側に流入するように、フィルターが設けられており、
フィルターがメンブレンであり、その材質が、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフッ化ビリニデン(PVDF)、ポリスルホン(PS)及びアクリル共重合体から選択される1以上を含む、注射用製剤。
【0075】
[5-2]5℃、25℃、又は40℃で保存後においても、フィルターを内蔵していないプレフィルドシリンジに充填された製剤と比較して、製剤の物性の変化が少ない、[5-1]に記載の注射用製剤。
【0076】
[5-3]メンブレンの材質が、アクリル共重合体である、[5-1]又は[5-2]に記載の注射用製剤。
[5-4]アクリル共重合体が疎水性である、[5-3]に記載の注射用製剤。
【0077】
[5-5]フィルターが5μm以下、好ましくは5μmの孔径を有する、[5-1]~[5-4]のいずれかに記載の注射用製剤。
[5-6]フィルターの先端側には先端側副空間が設けられ、フィルターの基端側には基端側副空間が設けられ、バレルの軸心方向から視たとき、注出孔の面積は基端側副空間の面積よりも小さく、先端側副空間の面積よりも小さい、[5-1]~[5-5]のいずれかに記載の注射用製剤。
【0078】
[5-7]シリンジが、前記バレル内部の空間を基端側空間と先端側空間とに仕切る仕切手段を備え、
前記仕切手段は、前記バレルの内面に対して液密に接触するように配置される筒状のハウジングと、該ハウジングの内部を介して前記基端側空間と前記先端側空間とが連通又は非連通となるように前記ハウジングの内部に対して開閉可能に配置された中栓部とを備え、
前記ハウジングは、閉時係合部を有し、
前記中栓部は、前記閉時係合部に対して基端側から係合する閉時被係合部を有し、
前記仕切手段は、前記バレル内部に基端側から挿入されるピストンにより基端側から押圧力がかかると、前記閉時係合部及び前記閉時被係合部のうち一方が他方を乗り越えて、前記閉時係合部と前記閉時被係合部との係合が解除され、前記中栓部が前記ハウジングの内部に対して開放されて前記基端側空間と前記先端側空間とが連通するように構成されており、
フィルターがハウジングの先端側部分に保持された、[5-1]~[5-6]のいずれかに記載の注射用製剤。
【0079】
[5-8]前記閉時係合部及び前記閉時被係合部の一方は、前記閉時係合部及び前記閉時被係合部の他方に対して、先端側と基端側とに配置されている、[5-7]に記載の注射用製剤。
【0080】
[5-9]シリンジが、前記バレル内部の空間を基端側空間と先端側空間とに仕切る仕切手段を備え、
前記仕切手段は、前記バレルの内面に対して液密に接触するように配置される筒状のハウジングを備え、
フィルターがハウジングの先端側部分に保持された、[5-1]~[5-6]のいずれかに記載の注射用製剤。
【0081】
[5-10]前記仕切手段は、前記バレルの先端側空間の体積が150mm以下となるように配置される、[5-7]~[5-9]のいずれかに記載の注射用製剤。
[5-11]溶液に含まれる有効成分である化合物が、低分子化合物、中分子化合物、またはタンパク質である、[5-1]~[5-10]のいずれかに記載の注射用製剤。
【0082】
[5-12]前記化合物が、抗体もしくはその結合断片、または環状ペプチドを含む、[5-11]に記載の注射用製剤。
[5-13]低分子化合物が、500未満の分子量を有する、[5-11]に記載の注射用製剤。
【0083】
[5-14]中分子化合物が、500~15000の分子量を有する、[5-11]に記載の注射用製剤。
[5-15]前記化合物が、リボザイム、アンチセンス分子、阻害剤オリゴヌクレオチド、アプタマー、マイクロRNA、および低分子干渉RNA(siRNA)からなる群より選択されるポリヌクレオチドである、[5-11]に記載の注射用製剤。
【0084】
[5-16]当該注射用製剤は使用される前はフィルターと非接触の状態で保たれる、[5-1]~[5-15]のいずれかに記載の注射用製剤。
[5-17]当該注射用製剤は使用される前にフィルターと接触した状態におかれる、[5-1]~[5-15]のいずれかに記載の注射用製剤。
【0085】
[5-18]溶液がシリンジに充填された注射用製剤の製造時又は製造後、ストレスが負荷されても、当該溶液はフィルターと非接触の状態で保たれる、[5-16]に記載の注射用製剤。
【0086】
[5-19]95cP以下の粘度を有する溶液を300mm/分の排出速度でフィルターを通して排出した後においても、フィルターの破損及びフィルターとハウジング間の接着面の剥離がない、[5-1]~[5-18]のいずれかに記載の注射用製剤。
【0087】
[5-20]95cP以下の粘度を有する溶液を100mm/分の排出速度でフィルターを通して排出する際、フィルターを内蔵していないシリンジと比較して、10mmの平均摺動抵抗値が1.3倍以内、1.4倍以内、又は1.5倍以内である、[5-1]~[5-19]のいずれかに記載の注射用製剤。
【0088】
[5-21]溶液が、糖、糖アルコール、緩衝剤、保存剤、担体、酸化防止剤、キレート剤、天然ポリマー、合成ポリマー、凍結保護剤、増量剤、および安定化剤から選択される1以上の薬学的に許容される賦形剤を含む、[5-1]~[5-20]のいずれかに記載の注射用製剤。
[5-22]溶液が水溶液である、[5-1]~[5-21]のいずれかに記載の注射用製剤。
[5-23]溶液が有効成分としてエミシズマブを含む、[5-1]~[5-22]のいずれかに記載の注射用製剤。
【0089】
[6-1]タンパク質を有効成分として含有する溶液がシリンジに充填された注射用製剤であって、
シリンジが、
先端部及び基端部を有する筒状に形成され、内部に収容した溶液を外部に注出するための注出孔が前記先端部に設けられたバレルと、
前記バレルの内部において前記注出孔よりも基端側に配置されたフィルターと、を備え、
溶液が前記フィルターを介してフィルターの基端側から先端側に流入するように、フィルターが設けられており、
フィルターがメンブレンであって、その材質が、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフッ化ビリニデン(PVDF)、ポリスルホン(PS)及びアクリル共重合体から選択される1以上を含む、注射用製剤。
【0090】
[6-2]メンブレンの材質が、アクリル共重合体である、[6-1]に記載の注射用製剤。
[6-3]アクリル共重合体が疎水性である、[6-2]に記載の注射用製剤。
【0091】
[6-4]フィルターが5μm以下、好ましくは5μmの孔径を有する、[6-1]~[6-3]のいずれかに記載の注射用製剤。
[6-5]フィルターの先端側には先端側副空間が設けられ、フィルターの基端側には基端側副空間が設けられ、バレルの軸心方向から視たとき、注出孔の面積は基端側副空間の面積よりも小さく、先端側副空間の面積よりも小さい、[6-1]~[6-4]のいずれかに記載の注射用製剤。
【0092】
[6-6]シリンジが、前記バレル内部の空間を基端側空間と先端側空間とに仕切る仕切手段を備え、
前記仕切手段は、前記バレルの内面に対して液密に接触するように配置される筒状のハウジングと、該ハウジングの内部を介して前記基端側空間と前記先端側空間とが連通又は非連通となるように前記ハウジングの内部に対して開閉可能に配置された中栓部とを備え、
前記ハウジングは、閉時係合部を有し、
前記中栓部は、前記閉時係合部に対して基端側から係合する閉時被係合部を有し、
前記仕切手段は、前記バレル内部に基端側から挿入されるピストンにより基端側から押圧力がかかると、前記閉時係合部及び前記閉時被係合部のうち一方が他方を乗り越えて、前記閉時係合部と前記閉時被係合部との係合が解除され、前記中栓部が前記ハウジングの内部に対して開放されて前記基端側空間と前記先端側空間とが連通するように構成されており、
前記フィルターがハウジングの先端側部分に保持された、[6-1]~[6-5]のいずれかに記載の注射用製剤。
【0093】
[6-7]前記閉時係合部及び前記閉時被係合部の一方は、前記閉時係合部及び前記閉時被係合部の他方に対して、先端側と基端側とに配置されている、[6-6]に記載の注射用製剤。
【0094】
[6-8]中栓部の材質が、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)または低密度ポリエチレン(LDPE)であり、好ましくは低密度ポリエチレン(LDPE)である、[6-6]又は[6-7]に記載の注射用製剤。
【0095】
[6-9]シリンジが、前記バレル内部の空間を基端側空間と先端側空間とに仕切る仕切手段を備え、
前記仕切手段は、前記バレルの内面に対して液密に接触するように配置される筒状のハウジングを備え、
フィルターがハウジングの先端側部分に保持された、[6-1]~[6-5]のいずれかに記載の注射用製剤。
【0096】
[6-10]前記仕切手段は、前記バレルの先端側空間の体積が150mm以下となるように配置される、[6-6]~[6-9]のいずれかに記載の注射用製剤。
[6-11]ハウジングの材質が、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)または低密度ポリエチレン(LDPE)であり、好ましくは低密度ポリエチレン(LDPE)である、[6-6]~[6-10]のいずれかに記載の注射用製剤。
【0097】
[6-12]タンパク質がモノクローナル抗体である、[6-1]~[6-11]のいずれかに記載の注射用製剤。
[6-13]溶液が使用される前はフィルターと非接触の状態で保たれる、[6-1]~[6-12]のいずれかに記載の注射用製剤。
【0098】
[6-14]溶液が使用される前にフィルターと接触した状態におかれる、[6-1]~[6-12]のいずれかに記載の注射用製剤。
[6-15]タンパク質を有効成分として含有する溶液がシリンジに充填された注射用製剤の製造時又は製造後に、当該溶液は使用される前はフィルターと非接触の状態で保たれる、[6-13]に記載の注射用製剤。
【0099】
[6-16]溶液中のタンパク質の濃度が0.1mg/mL以上である、[6-1]~[6-15]のいずれかに記載の注射用製剤。
[6-17]溶液中のタンパク質の濃度が0.1~300mg/mLの範囲である、[6-1]~[6-16]のいずれかに記載の注射用製剤。
【0100】
[6-18]溶液中のタンパク質の濃度が1~200mg/mLの範囲、50~200mg/mL又は80~200mg/mLの範囲である、[6-1]~[6-17]のいずれかに記載の注射用製剤。
【0101】
[6-19]95cP以下の粘度を有する溶液を300mm/分の排出速度でフィルターを通して排出した後においても、フィルターの破損及びフィルターとハウジング間の接着面の剥離がない、[6-1]~[6-18]のいずれかに記載の注射用製剤。
【0102】
[6-20]95cP以下の粘度を有する溶液を100mm/分の排出速度でフィルターを通して排出する際、フィルターを内蔵していないシリンジと比較して、10mmの平均摺動抵抗値が1.3倍以内、1.4倍以内、又は1.5倍以内である、[6-1]~[6-19]のいずれかに記載の注射用製剤。
【0103】
[6-21]溶液が、糖、糖アルコール、緩衝剤、保存剤、担体、酸化防止剤、キレート剤、天然ポリマー、合成ポリマー、凍結保護剤、増量剤、および安定化剤から選択される1以上の薬学的に許容される賦形剤を含む、[6-1]~[6-20]のいずれかに記載の注射用製剤。
【0104】
[6-22]シリンジに接続される注射針を備える、[6-1]~[6-21]のいずれかに記載の注射用製剤。
[6-23]溶液が水溶液である、[6-1]~[6-22]のいずれかに記載の注射用製剤。
[6-24]前記タンパク質が、エミシズマブである、[6-1]~[6-23]のいずれかに記載の注射用製剤。
【0105】
[7-1]タンパク質を有効成分として含有する溶液がシリンジに充填された注射用製剤であって、
シリンジが、
先端部及び基端部を有する筒状に形成され、内部に収容した溶液を外部に注出するための注出孔が前記先端部に設けられたバレルと、
前記バレルの内部において前記注出孔よりも基端側に配置されたフィルターと、を備え、
溶液が前記フィルターを介してフィルターの基端側から先端側に流入するように、フィルターが設けられており、
フィルターがメンブレンであって、その材質が、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフッ化ビリニデン(PVDF)、ポリスルホン(PS)及びアクリル共重合体から選択される1以上を含み、
当該溶液の排出において、排出された溶液から目視により検出可能な粒子を除去することができる、注射用製剤。
【0106】
[7-2]メンブレンの材質が、アクリル共重合体である、[7-1]に記載の注射用製剤。
[7-3]アクリル共重合体が疎水性である、[7-2]に記載の注射用製剤。
【0107】
[7-4]フィルターが5μm以下、好ましくは5μmの孔径を有する、[7-1]~[7-3]のいずれかに記載の注射用製剤。
[7-5]フィルターの先端側には先端側副空間が設けられ、フィルターの基端側には基端側副空間が設けられ、バレルの軸心方向から視たとき、注出孔の面積は基端側副空間の面積よりも小さく、先端側副空間の面積よりも小さい、[7-1]~[7-4]のいずれかに記載の注射用製剤。
【0108】
[7-6]シリンジが、前記バレル内部の空間を基端側空間と先端側空間とに仕切る仕切手段を備え、
前記仕切手段は、前記バレルの内面に対して液密に接触するように配置される筒状のハウジングと、該ハウジングの内部を介して前記基端側空間と前記先端側空間とが連通又は非連通となるように前記ハウジングの内部に対して開閉可能に配置された中栓部とを備え、
前記ハウジングは、閉時係合部を有し、
前記中栓部は、前記閉時係合部に対して基端側から係合する閉時被係合部を有し、
前記仕切手段は、前記バレル内部に基端側から挿入されるピストンにより基端側から押圧力がかかると、前記閉時係合部及び前記閉時被係合部のうち一方が他方を乗り越えて、前記閉時係合部と前記閉時被係合部との係合が解除され、前記中栓部が前記ハウジングの内部に対して開放されて前記基端側空間と前記先端側空間とが連通するように構成されており、
フィルターがハウジングの先端側部分に保持された、[7-1]~[7-5]のいずれかに記載の注射用製剤。
【0109】
[7-7]前記閉時係合部及び前記閉時被係合部の一方は、前記閉時係合部及び前記閉時被係合部の他方に対して、先端側と基端側とに配置されている、[7-6]に記載の注射用製剤。
【0110】
[7-8]シリンジが、前記バレル内部の空間を基端側空間と先端側空間とに仕切る仕切手段を備え、
前記仕切手段は、前記バレルの内面に対して液密に接触するように配置される筒状のハウジングを備え、
フィルターがハウジングの先端側部分に保持された、[7-1]~[7-5]のいずれかに記載の注射用製剤。
【0111】
[7-9]前記仕切手段は、前記バレルの先端側空間の体積が150mm以下となるように配置される、[7-6]~[7-8]のいずれかに記載の注射用製剤。
[7-10]粒子が40μmより大きい粒径を有する、[7-1]~[7-9]のいずれかに記載の注射用製剤。
【0112】
[7-11]粒子が溶液の成分由来の粒子又は溶液の成分以外に由来する粒子を含む、[7-1]~[7-10]のいずれかに記載の注射用製剤。
[7-12]粒子が溶液の成分由来である、[7-11]に記載の注射用製剤。
【0113】
[7-13]粒子が溶液の成分以外に由来する、[7-11]に記載の注射用製剤。
[7-14]タンパク質がモノクローナル抗体である、[7-1]~[7-13]のいずれかに記載の注射用製剤。
【0114】
[7-15]溶液が使用される前はフィルターと非接触の状態で保たれる、[7-1]~[7-14]のいずれかに記載の注射用製剤。
[7-16]溶液が使用される前にフィルターと接触した状態におかれる、[7-1]~[7-14]のいずれかに記載の注射用製剤。
【0115】
[7-17]タンパク質を有効成分として含有する溶液がシリンジに充填された注射用製剤の製造時又は製造後、当該溶液はフィルターと非接触の状態で保たれる、[7-15]に記載の注射用製剤。
【0116】
[7-18]溶液中のタンパク質の濃度が0.1mg/mL以上である、[7-1]~[7-17]のいずれかに記載の注射用製剤。
[7-19]溶液中のタンパク質の濃度が0.1~300mg/mLの範囲である、[7-1]~[7-18]のいずれかに記載の注射用製剤。
【0117】
[7-20]溶液中のタンパク質の濃度が1~200mg/mL、50~200mg/mL又は80~200mg/mLの範囲である、[7-1]~[7-19]のいずれかに記載の注射用製剤。
【0118】
[7-21]95cP以下の粘度を有する溶液を300mm/分の排出速度でフィルターを通して排出した後においても、フィルターの破損及びフィルターとハウジング間の接着面の剥離がない、[7-1]~[7-20]のいずれかに記載の注射用製剤。
【0119】
[7-22]95cP以下の粘度を有する溶液を100mm/分の排出速度でフィルターを通して排出する際、フィルターを内蔵していないシリンジと比較して、10mmの平均摺動抵抗値が1.3倍以内、1.4倍以内、又は1.5倍以内である、[7-1]~[7-21]のいずれかに記載の注射用製剤。
【0120】
[7-23]溶液が、糖、糖アルコール、緩衝剤、保存剤、担体、酸化防止剤、キレート剤、天然ポリマー、合成ポリマー、凍結保護剤、増量剤、および安定化剤から選択される1以上の薬学的に許容される賦形剤を含む、[7-1]~[7-22]のいずれかに記載の注射用製剤。
[7-24]溶液が水溶液である、[7-1]~[7-23]のいずれかに記載の注射用製剤。
[7-25]前記タンパク質が、エミシズマブである、[7-1]~[7-24]のいずれかに記載の注射用製剤。
【0121】
[8-1]注射用製剤に含まれる目視により検出可能な粒子を除去する方法であって、
注射用製剤がタンパク質を有効成分として含有する溶液であり、かつシリンジ内に充填されており、
シリンジが、先端部及び基端部を有する筒状に形成され、内部に収容した注射用製剤を外部に注出するための注出孔が前記先端部に設けられたバレルと、前記バレルの内部において前記注出孔よりも基端側に配置されたフィルターと、を備え、溶液が前記フィルターを介してフィルターの基端側から先端側に流入するように、フィルターが設けられており、
該方法がフィルターを通してシリンジ内に充填された溶液を排出することを含み、フィルターがメンブレンであり、その材質が、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフッ化ビリニデン(PVDF)、ポリスルホン(PS)及びアクリル共重合体から選択される1以上を含む、方法。
【0122】
[8-2]メンブレンの材質が、アクリル共重合体である、[8-1]に記載の方法。
[8-3]アクリル共重合体が疎水性である、[8-2]に記載の方法。
[8-4]フィルターが5μm以下、好ましくは5μmの孔径を有する、[8-1]~[8-3]のいずれかに記載の方法。
【0123】
[8-5]フィルターの先端側には先端側副空間が設けられ、フィルターの基端側には基端側副空間が設けられ、バレルの軸心方向から視たとき、注出孔の面積は基端側副空間の面積よりも小さく、先端側副空間の面積よりも小さい、[8-1]~[8-4]のいずれかに記載の方法。
【0124】
[8-6]シリンジが、前記バレル内部の空間を基端側空間と先端側空間とに仕切る仕切手段を備え、
前記仕切手段は、前記バレルの内面に対して液密に接触するように配置される筒状のハウジングと、該ハウジングの内部を介して前記基端側空間と前記先端側空間とが連通又は非連通となるように前記ハウジングの内部に対して開閉可能に配置された中栓部とを備え、
前記ハウジングは、閉時係合部を有し、
前記中栓部は、前記閉時係合部に対して基端側から係合する閉時被係合部を有し、
前記仕切手段は、前記バレル内部に基端側から挿入されるピストンにより基端側から押圧力がかかると、前記閉時係合部及び前記閉時被係合部のうち一方が他方を乗り越えて、前記閉時係合部と前記閉時被係合部との係合が解除され、前記中栓部が前記ハウジングの内部に対して開放されて前記基端側空間と前記先端側空間とが連通するように構成されており、
フィルターがハウジングの先端側部分に保持された、[8-1]~[8-5]のいずれかに記載の方法。
【0125】
[8-7]前記閉時係合部及び前記閉時被係合部の一方は、前記閉時係合部及び前記閉時被係合部の他方に対して、先端側と基端側とに配置されている、[8-6]に記載の方法。
【0126】
[8-8]シリンジが、前記バレル内部の空間を基端側空間と先端側空間とに仕切る仕切手段を備え、
前記仕切手段は、前記バレルの内面に対して液密に接触するように配置される筒状のハウジングを備え、
フィルターがハウジングの先端側部分に保持された、[8-1]~[8-5]のいずれかに記載の方法。
【0127】
[8-9]前記仕切手段は、前記バレルの先端側空間の体積が150mm以下となるように配置される、[8-6]~[8-8]のいずれかに記載の方法。
[8-10]粒子が40μmよりの大きい粒径を有する、[8-1]~[8-9]のいずれかに記載の方法。
【0128】
[8-11]粒子が溶液の成分由来の粒子又は溶液の成分以外に由来する粒子を含む、[8-1]~[8-10]のいずれかに記載の方法。
[8-12]粒子が溶液の成分由来である、[8-11]に記載の方法。
【0129】
[8-13]粒子が溶液の成分以外に由来する、[8-11]に記載の方法。
[8-14]タンパク質がモノクローナル抗体である、[8-1]~[8-13]のいずれかに記載の方法。
【0130】
[8-15]溶液が使用される前はフィルターと非接触の状態で保たれる、[8-1]~[8-14]のいずれかに記載の方法。
[8-16]溶液が使用される前にフィルターと接触した状態におかれる、[8-1]~[8-14]のいずれかに記載の方法。
【0131】
[8-17]タンパク質を有効成分として含有する溶液がシリンジに充填された注射用製剤の製造時又は製造後、当該溶液はフィルターと非接触の状態で保たれる、[8-15]に記載の方法。
【0132】
[8-18]溶液中のタンパク質の濃度が0.1mg/mL以上である、[8-1]~[8-17]のいずれかに記載の方法。
[8-19]溶液中のタンパク質の濃度が0.1~300mg/mLの範囲である、[8-1]~[8-18]のいずれかに記載の方法。
【0133】
[8-20]溶液中のタンパク質の濃度が1~200mg/mL、50~200mg/mL又は80~200mg/mLの範囲である、[8-1]~[8-19]のいずれかに記載の方法。
【0134】
[8-21]95cP以下の粘度を有する溶液を300mm/分の排出速度でフィルターを通して排出した後においても、フィルターの破損及びフィルターとハウジング間の接着面の剥離がない、[8-1]~[8-20]のいずれかに記載の方法。
【0135】
[8-22]95cP以下の粘度を有する溶液を100mm/分の排出速度でフィルターを通して排出する際、フィルターを内蔵していないシリンジと比較して、10mmの平均摺動抵抗値が1.3倍以内、1.4倍以内、又は1.5倍以内である、[8-1]~[8-21]のいずれかに記載の方法。
【0136】
[8-23]溶液が、糖、糖アルコール、緩衝剤、保存剤、担体、酸化防止剤、キレート剤、天然ポリマー、合成ポリマー、凍結保護剤、増量剤、および安定化剤から選択される1以上の薬学的に許容される賦形剤を含む、[8-1]~[8-22]のいずれかに記載の方法。
[8-24]溶液が水溶液である、[8-1]~[8-23]のいずれかに記載の方法。
[8-25]前記タンパク質が、エミシズマブである、[8-1]~[8-24]のいずれかに記載の方法。
【0137】
[9-1]タンパク質を有効成分として含有する溶液が充填されたシリンジであって、
先端部及び基端部を有する筒状に形成され、内部に収容した溶液を外部に注出するための注出孔が前記先端部に設けられたバレルと、前記バレルの内部において前記注出孔よりも基端側に配置されたフィルターと、を備え、溶液が前記フィルターを介してフィルターの基端側から先端側に流入するように、フィルターが設けられており、
フィルターがメンブレンであり、その材質が、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフッ化ビリニデン(PVDF)、ポリスルホン(PS)及びアクリル共重合体から選択される1以上を含み、95cP以下の粘度を有する溶液を300mm/分の排出速度でフィルターを通して排出した後においても、フィルターの破損及びフィルターとハウジング間の接着面の剥離がない、シリンジ。
【0138】
[9-2]タンパク質を有効成分として含有する溶液が充填されたシリンジであって、
シリンジが、先端部及び基端部を有する筒状に形成され、内部に収容した溶液を外部に注出するための注出孔が前記先端部に設けられたバレルと、前記バレルの内部において前記注出孔よりも基端側に配置されたフィルターと、を備え、溶液が前記フィルターを介してフィルターの基端側から先端側に流入するように、フィルターが設けられており、
フィルターがメンブレンであり、その材質が、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフッ化ビリニデン(PVDF)、ポリスルホン(PS)及びアクリル共重合体から選択される1以上を含み、95cP以下の粘度を有する溶液を100mm/分の排出速度でフィルターを通して排出する際、フィルターを内蔵していないシリンジと比較して、10mmの平均摺動抵抗値が1.3倍以内、1.4倍以内、又は1.5倍以内であるシリンジ。
【0139】
[9-3]メンブレンの材質が、アクリル共重合体である、[9-1]又は[9-2]に記載のシリンジ。
[9-4]アクリル共重合体が疎水性である、[9-3]に記載のシリンジ。
【0140】
[9-5]フィルターが5μm以下、好ましくは5μmの孔径を有する、[9-1]~[9-4]のいずれかに記載のシリンジ。
[9-6]フィルターの先端側には先端側副空間が設けられ、フィルターの基端側には基端側副空間が設けられ、バレルの軸心方向から視たとき、注出孔の面積は基端側副空間の面積よりも小さく、先端側副空間の面積よりも小さい、[9-1]~[9-5]のいずれかに記載のシリンジ。
【0141】
[9-7]シリンジが、前記バレル内部の空間を基端側空間と先端側空間とに仕切る仕切手段を備え、
前記仕切手段は、前記バレルの内面に対して液密に接触するように配置される筒状のハウジングと、該ハウジングの内部を介して前記基端側空間と前記先端側空間とが連通又は非連通となるように前記ハウジングの内部に対して開閉可能に配置された中栓部とを備え、
前記ハウジングは、閉時係合部を有し、
前記中栓部は、前記閉時係合部に対して基端側から係合する閉時被係合部を有し、
前記仕切手段は、前記バレル内部に基端側から挿入されるピストンにより基端側から押圧力がかかると、前記閉時係合部及び前記閉時被係合部のうち一方が他方を乗り越えて、前記閉時係合部と前記閉時被係合部との係合が解除され、前記中栓部が前記ハウジングの内部に対して開放されて前記基端側空間と前記先端側空間とが連通するように構成されており、
フィルターがハウジングの先端側部分に保持された、[9-1]~[9-6]のいずれかに記載のシリンジ。
【0142】
[9-8]前記閉時係合部及び前記閉時被係合部の一方は、前記閉時係合部及び前記閉時被係合部の他方に対して、先端側と基端側とに配置されている、[9-7]に記載のシリンジ。
【0143】
[9-9]中栓部の材質が、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)または低密度ポリエチレン(LDPE)であり、好ましくは低密度ポリエチレン(LDPE)である、[9-7]又は[9-8]に記載のシリンジ
【0144】
[9-10]シリンジが、前記バレル内部の空間を基端側空間と先端側空間とに仕切る仕切手段を備え、
前記仕切手段は、前記バレルの内面に対して液密に接触するように配置される筒状のハウジングを備え、
フィルターがハウジングの先端側部分に保持された、[9-1]~[9-6]のいずれかに記載のシリンジ。
【0145】
[9-11]前記仕切手段は、前記バレルの先端側空間の体積が150mm以下となるように配置される、[9-7]~[9-10]のいずれかに記載のシリンジ。
[9-12]ハウジングの材質が、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)または低密度ポリエチレン(LDPE)であり、好ましくは低密度ポリエチレン(LDPE)である、[9-7]~[9-11]のいずれかに記載のシリンジ。
【0146】
[9-13]タンパク質がモノクローナル抗体である、[9-1]~[9-12]のいずれかに記載のシリンジ。
[9-14]溶液が使用される前はフィルターと非接触の状態で保たれる、[9-1]~[9-13]のいずれかに記載のシリンジ。
【0147】
[9-15]溶液が使用される前にフィルターと接触した状態におかれる、[9-1]~[9-13]のいずれかに記載のシリンジ。
[9-16]タンパク質を有効成分として含有する溶液がシリンジに充填された注射用製剤の製造時又は製造後、当該溶液はフィルターと非接触の状態で保たれる、[9-14]に記載のシリンジ。
【0148】
[9-17]溶液中のタンパク質の濃度が0.1mg/mL以上である、[9-1]~[9-16]のいずれかに記載のシリンジ。
[9-18]溶液中のタンパク質の濃度が0.1~300mg/mLの範囲である、[9-1]~[9-17]のいずれかに記載のシリンジ。
【0149】
[9-19]溶液中のタンパク質の濃度が1~200mg/mL、50~200mg/mL又は80~200mg/mLの範囲である、[9-1]~[9-18]のいずれかに記載のシリンジ。
【0150】
[9-20]溶液が、糖、糖アルコール、緩衝剤、保存剤、担体、酸化防止剤、キレート剤、天然ポリマー、合成ポリマー、凍結保護剤、増量剤、および安定化剤から選択される1以上の薬学的に許容される賦形剤を含む、[9-1]~[9-19]のいずれかに記載のシリンジ。
[9-21]溶液が水溶液である、[9-1]~[9-20]のいずれかに記載のシリンジ。
[9-22]前記タンパク質が、エミシズマブである、[9-1]~[9-21]のいずれかに記載のシリンジ。
【0151】
[10-1] 溶液がシリンジに充填された、10日以上の保存が可能な医薬として使用するための注射用製剤であって、
シリンジが先端部及び基端部を有する筒状に形成され、内部に収容した溶液を外部に注出するための注出孔が前記先端部に設けられたバレルと、前記バレルの内部において前記注出孔よりも基端側に配置されたフィルターと、を備え、溶液が前記フィルターを介してフィルターの基端側から先端側に流入するように、フィルターが設けられており、
フィルターがメンブレンであり、その材質が、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフッ化ビリニデン(PVDF)、ポリスルホン(PS)及びアクリル共重合体から選択される1以上を含む、注射用製剤。
【0152】
[10-2]5℃、25℃、又は40℃で保存後においても、フィルターを内蔵していないプレフィルドシリンジに充填された製剤と比較して、製剤の物性の変化が少ない、[10-1]に記載の注射用製剤。
【0153】
[10-3]メンブレンの材質が、アクリル共重合体である、[10-1]又は[10-2]に記載の注射用製剤。
[10-4]アクリル共重合体が疎水性である、[10-3]に記載の注射用製剤。
【0154】
[10-5]フィルターが5μm以下、好ましくは5μmの孔径を有する、[10-1]~[10-4]のいずれかに記載の注射用製剤。
[10-6]フィルターの先端側には先端側副空間が設けられ、フィルターの基端側には基端側副空間が設けられ、バレルの軸心方向から視たとき、注出孔の面積は基端側副空間の面積よりも小さく、先端側副空間の面積よりも小さい、[10-1]~[10-5]のいずれかに記載の注射用製剤。
【0155】
[10-7]シリンジが、前記バレル内部の空間を基端側空間と先端側空間とに仕切る仕切手段を備え、
前記仕切手段は、前記バレルの内面に対して液密に接触するように配置される筒状のハウジングと、該ハウジングの内部を介して前記基端側空間と前記先端側空間とが連通又は非連通となるように前記ハウジングの内部に対して開閉可能に配置された中栓部とを備え、
前記ハウジングは、閉時係合部を有し、
前記中栓部は、前記閉時係合部に対して基端側から係合する閉時被係合部を有し、
前記仕切手段は、前記バレル内部に基端側から挿入されるピストンにより基端側から押圧力がかかると、前記閉時係合部及び前記閉時被係合部のうち一方が他方を乗り越えて、前記閉時係合部と前記閉時被係合部との係合が解除され、前記中栓部が前記ハウジングの内部に対して開放されて前記基端側空間と前記先端側空間とが連通するように構成されており、
フィルターがハウジングの先端側部分に保持された、[10-1]~[10-6]のいずれかに記載の注射用製剤。
【0156】
[10-8]前記閉時係合部及び前記閉時被係合部の一方は、前記閉時係合部及び前記閉時被係合部の他方に対して、先端側と基端側とに配置されている、[10-7]に記載の注射用製剤。
【0157】
[10-9]シリンジが、前記バレル内部の空間を基端側空間と先端側空間とに仕切る仕切手段を備え、
前記仕切手段は、前記バレルの内面に対して液密に接触するように配置される筒状のハウジングを備え、
フィルターがハウジングの先端側部分に保持された、[10-1]~[10-6]のいずれかに記載の注射用製剤。
【0158】
[10-10]前記仕切手段は、前記バレルの先端側空間の体積が150mm以下となるように配置される、[10-7]~[10-9]のいずれかに記載の注射用製剤。
[10-11]タンパク質がモノクローナル抗体である、[10-1]~[10-10]のいずれかに記載の注射用製剤。
【0159】
[10-12]当該注射用製剤は使用される前はフィルターと非接触の状態で保たれる、[10-1]~[10-11]のいずれかに記載の注射用製剤。
[10-13]当該注射用製剤は使用される前にフィルターと接触した状態におかれる、[10-1]~[10-11]のいずれかに記載の注射用製剤。
【0160】
[10-14]タンパク質を有効成分として含有する溶液がシリンジに充填された注射用製剤の製造時又は製造後、ストレスが負荷されても、当該溶液はフィルターと非接触の状態で保たれる、[10-12]に記載の注射用製剤。
【0161】
[10-15]溶液中のタンパク質の濃度が0.1mg/mL以上である、[10-1]~[10-14]のいずれかに記載の注射用製剤。
[10-16]溶液中のタンパク質の濃度が0.1~300mg/mLの範囲である、[10-1]~[10-15]のいずれかに記載の注射用製剤。
【0162】
[10-17]溶液中のタンパク質の濃度が1~200mg/mL、50~200mg/mL又は80~200mg/mLの範囲である、[10-1]~[10-16]のいずれかに記載の注射用製剤。
【0163】
[10-18]95cP以下の粘度を有する溶液を300mm/分の排出速度でフィルターを通して排出した後においても、フィルターの破損及びフィルターとハウジング間の接着面の剥離がない、[10-1]~[10-17]のいずれかに記載の注射用製剤。
【0164】
[10-19]95cP以下の粘度を有する溶液を100mm/分の排出速度でフィルターを通して排出する際、フィルターを内蔵していないシリンジと比較して、10mmの平均摺動抵抗値が1.3倍以内、1.4倍以内、又は1.5倍以内である、[10-1]~[10-18]のいずれかに記載の注射用製剤。
【0165】
[10-20]溶液が、糖、糖アルコール、緩衝剤、保存剤、担体、酸化防止剤、キレート剤、天然ポリマー、合成ポリマー、凍結保護剤、増量剤、および安定化剤から選択される1以上の薬学的に許容される賦形剤を含む、[10-1]~[10-19]のいずれかに記載の注射用製剤。
【0166】
[10-21]溶液が水溶液である、[10-1]~[10-20]のいずれかに記載の注射用製剤。
[10-22]溶液が有効成分としてエミシズマブを含む、[10-1]~[10-21]のいずれかに記載の注射用製剤。
【発明の効果】
【0167】
本発明により、シリンジに充填された注射用製剤の溶液において仮に目視により検出可能な粒子が存在していたとしても、シリンジ内に充填されていた溶液の全量が排出時にフィルターでろ過されることで、粒子を含まない高品質の製剤を供給することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0168】
図1図1は、本実施形態に係るプレフィルドシリンジのシリンジにおける中栓部の閉じ状態を説明するための断面図である。
図2図2は、前記プレフィルドシリンジにおける中栓部の開き状態を説明するための断面図である。
図3図3は、図1のIIIで示す領域の拡大断面図である。
図4図4は、図2のIVで示す領域の拡大断面図である。
図5図5は、前記シリンジにおける中栓部の斜視図である。
図6図6は、前記中栓部の斜視図である。
図7図7は、変形例に係るプレフィルドシリンジのシリンジにおける中栓部の閉じ状態を説明するための側面図である。
図8図8は、前記プレフィルドシリンジにおける中栓部の開き状態を説明するための断面図である。
図9図9は、図7のIXで示す領域の拡大断面図である。
図10図10は、図8のXで示す領域の拡大断面図である。
図11図11は、前記シリンジにおける中栓部の斜視図である。
図12図12は、前記中栓部の斜視図である。
図13図13は、変形例に係るプレフィルドシリンジの使用時の模式断面図であり、(a)は中栓部の閉じ状態を示し、(b)は中栓部の開き直後の状態を示し、(c)は中栓部の開き状態を示し、(d)は薬剤の投与後の状態を示す。
図14図14は、変形例に係るプレフィルドシリンジの使用時の模式断面図であり、(a)は中栓部の閉じ状態を示し、(b)は中栓部の開き直後の状態を示し、(c)は中栓部の開き状態を示し、(d)は薬剤の投与後の状態を示す。
図15図15は、保持部材を備えたプレフィルドシリンジのシリンジの断面図である。
図16図16は、図15のIIIで示す領域の拡大断面図である。
図17図17は、保持部材におけるフィルターの取り付けを説明するための模式図である。
図18図18は、変形例に係るプレフィルドシリンジのシリンジの側面図である。
図19図19は、図18のVIで示す領域の拡大断面図である。
図20図20は、変形例に係るシリンジの側面図である。
図21図21は、図20のVIIIで示す領域の拡大断面図である。
図22図22は、溶液排出後において(a)正常な破損のないフィルターと(b)異常な破損してしまったフィルターの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0169】
(1)プレフィルドシリンジ
以下、本発明の実施形態に係るシリンジを備えたプレフィルドシリンジについて、図1図6を参照しつつ説明する。
【0170】
プレフィルドシリンジ1は、図1及び図2に示すように、薬剤を投与するためのシリンジ2を備える。また、プレフィルドシリンジ1は、シリンジ2に挿入されるピストン3を備える。さらに、プレフィルドシリンジ1は、シリンジ2に接続される注射針4を備える。プレフィルドシリンジ1は、注射針4をキャップするキャップ5を備える。薬剤は、液状の薬剤であり、例えば、タンパク質製剤である。
【0171】
シリンジ2は、先端部60及び基端部61を有する筒状に形成され、バレル6と、バレル6内部の空間Sを基端側空間S1と先端側空間S2とに仕切る仕切手段7と、を備える。また、シリンジ2は、略筒状である。
【0172】
以下、プレフィルドシリンジ1及びシリンジ2において、先端部60の配置される側(図1図4における下側)を単に「先端側」と称し、基端部61の配置される側(図1図4における上側)を「基端側」と称する。また、シリンジ2の筒軸方向を単に「筒軸方向」とも称する。
【0173】
バレル6は、内部に薬剤を収容する部材である。また、バレル6では、内部に収容した薬剤を外部に注出するための注出孔が先端部60に設けられている。本実施形態では、バレル6は、先端部60及び基端部61に加えて、先端部60と基端部61とを接続する筒状部62を備える。また、バレル6は、筒状部62の筒軸方向における他端の外周全周から外方(筒状部62の径外方向)に向かって延出するフランジ部63を有する。
【0174】
バレル6は、例えば、透明、且つ、薬剤を投与する際にかかる内圧に耐えうる材質で形成される。具体的に、バレル6の材質は、ノルボルネンなどの環状オレフィンを繰り返し単位に含む樹脂である。より具体的に説明すると、バレル6の材質は、環状オレフィンによる単独重合体であるCOP(シクロオレフィンポリマー)や環状オレフィンとエチレン等との共重合体であるCOC(シクロオレフィンコポリマー)等の透明な樹脂である。なお、バレル6の材質は、PP(ポリプロピレン)やガラスであってもよい。
【0175】
なお、バレル6の内面(例えば、筒状部62の内面)には、バレル6の内周面に対するピストン3の摺動抵抗を抑えるために、シリコーンオイルが塗布されていてもよい。
バレル6の先端部60は、筒状部62の筒軸方向における一端(具体的には、先端側の端部)に設けられている。先端部60には、図3及び図4に示すように、内部に収容した薬剤を外部に注出するための注出孔64が設けられている。本実施形態のバレル6では、注出孔64は、注射針4が挿通される針孔である。
【0176】
注出孔64に挿通される針が、例えば、27ゲージである場合、注出孔64の内径は、0.27mmであり、筒軸方向から視たときの注出孔64の面積は、0.057mmである。また、注出孔64に挿通される針が29ゲージである場合、注出孔64の内径は、0.21mmであり、筒軸方向から視たときの注出孔64の面積は、0.035mmである。
【0177】
先端部60の基端側端面600は、筒状部62の先端側に位置する縁部のうち注出孔64以外の部位を塞ぐように形成されている。基端側端面600は、例えば、径内方向側ほど先端側に位置するように傾斜した状態で延びている。
【0178】
筒軸方向から視たときの筒状部62の面積は、例えば、略一定であり、具体的には12.56mm以上314mm以下である。筒状部62の内径は、例えば、略一定であり、具体的には、4mm以上20mm以下である。
【0179】
このようなバレル6の内部には仕切手段7が収容されており、該仕切手段7によって、バレル6内部の空間Sが筒軸方向基端側の基端側空間S1と筒軸方向先端側の先端側空間S2とに仕切られている。本実施形態のバレル6では、図2~5に示すように、仕切手段7よりも基端側の空間である基端側空間S1には液剤、仕切手段7よりも先端側の空間である先端側空間S2には薬剤は収容されていない空の状態である。具体的には、先端側空間S2は、フィルター80よりも先端側の空間であり且つ薬剤が収容されていない第一先端側空間S21と、フィルター80よりも基端側の空間であり且つ薬剤が収容されていない第二先端側空間S22と、を含む。
【0180】
なお、第一先端側空間S21、第二先端側空間S22には、どちらかに固形剤が収容されていてもよい。また、基端側空間S1及び先端側空間S2に、それぞれ液剤が収容されてもよい。
【0181】
仕切手段7は、筒状のハウジング8と、ハウジング8の内部に対して開閉可能な中栓部9とを備える。本実施形態では、仕切手段7は、ハウジング8と中栓部9とを一つずつ備える。また、仕切手段7は、バレル6の先端部60に配置される(図3及び図4参照)。さらに、仕切手段7は、バレル6の内部において、ハウジング8に取り付けられたフィルター80を備える。この仕切手段7は、一枚のフィルター80を備えるが、複数枚重ねられたフィルター80を備えてもよい。
【0182】
なお、仕切手段7は、フィルター80を備えなくてもよい。この場合、仕切手段7は、例えば、筒状のハウジング8と、ハウジング8の内部に対して開閉可能な中栓部9とで構成される。
【0183】
ハウジング8は、バレル6の内面(例えば、筒状部62の内面)に対して液密に接触するように配置される部材である。また、ハウジング8は、バレル6に対して圧接した状態で、バレル6内に収容されている。具体的に、ハウジング8の外周面800の少なくとも一部は、バレル6の内面に密着している。
【0184】
本実施形態では、ハウジング8の外周面800は、基端側に配置される基端外周面部801と、先端側に配置される先端外周面部802とを備え、先端外周面部802が、基端外周面部801に対して小径に形成されている。そして、基端外周面部801が、バレル6の内周面に液密に密着する。先端外周面部802は、バレル6の内周面に対して隙間を介して対向している。
【0185】
また、ハウジング8は、柔軟性を有する材質で形成されている。本実施形態のハウジング8は、バレル6よりも柔軟性を有する。具体的に、ハウジング8の材質は、例えば、バレル6の材質よりも軟質の樹脂、ゴム、エラストマー等である。バレル6とハウジング8との柔軟性については、例えば、デュロメータ硬さを測定して確認できる。ハウジング8がこのような材質で形成されることにより、ハウジング8のバレル6に対する柔軟性を確保して、バレル6のクラックを防止することができる。
【0186】
ハウジング8は、円筒形状を有する。本実施形態では、ハウジング8は、フィルター80よりも基端側に配置されている。換言すると、ハウジング8は、フィルター80よりも基端側に配置される基端側部分のみで構成されている。
【0187】
なお、本実施形態のハウジング8は、基端側部分のみで構成されていたが、フィルター80よりも先端側に配置される先端側部分を、基端側部分と一体または別体に含んで構成されてもよい。
【0188】
ハウジング8は、閉時係合部81を有する。具体的に、ハウジング8は、一つの閉時係合部81を有する。閉時係合部81は、中栓部9が閉じ状態であるときに(図3参照)、中栓部9と係合する部位である。
【0189】
閉時係合部81は、ハウジング8の内周面82から径内側に突設され、周方向全域に連接して、又は、周方向全周に間隔をあけて複数形成される。本実施形態では、閉時係合部81は、ハウジング8の内周面82から筒軸側(径内側)に突出するリブである。具体的に、閉時係合部81は、周方向に連続するリブである。また、閉時係合部81は、内周面82の筒軸方向における中央部に設けられている。なお、閉時係合部81の基端側端面は、径方向に延びる平坦な面である。
【0190】
また、本実施形態では、ハウジング8の内周面82は、基端側に配置される基端内周面部821と、先端側に配置される先端内周面部822とを備え、基端内周面部821が、先端内周面部822に対して大径に形成されている。
【0191】
以上のハウジング8は、先端側に小径内周面(具体的には、先端内周面部822)、基端側に大径内周面(具体的には、基端内周面部821)、及び、小径内周面と大径内周面との間に閉時係合部81を有する。
【0192】
また、ハウジング8は、内周面82から径内側へ延出し、基端側に面する段付面810を有する。このハウジング8では、閉時係合部81の基端側端面が段付面810であるが、閉時係合部81とは別の部位の面が段付面810であってもよい。さらに、段付面810は、閉時係合部81よりも先端側、基端側どちらに位置していてもよい。
【0193】
本実施形態では、ハウジング8は、フィルター80が取り付けられる取付部位83と、閉時係合部81が位置する本体部位84と、本体部位84から延びる延出部位85と、を含む。このハウジング8では、先端側から基端側へと順に、取付部位83、本体部位84、及び、延出部位85が並んでいる。また、このハウジング8では、取付部位83、本体部位84、及び、延出部位85は、いずれも円筒状である。ハウジング8の厚み(筒軸方向と垂直な方向である径方向におけるハウジング8の内周面と外周面との距離)は、不均一である。具体的に、取付部位83の厚みは、延出部位85の厚みよりも厚い。
【0194】
取付部位83の外周面は、バレル6の内周面(具体的には、バレル6の筒状部62の内周面)からわずかに離間している。さらに、取付部位83は、先端側ほど外径が小さいテーパ形状を有する。取付部位83の内周面は、先端側ほど内径が大きいテーパ形状を有する。
【0195】
本体部位84は、取付部位83と延出部位85とを接続している部位である。本体部位84の外周面は、バレル6の内周面(具体的には、バレル6の筒状部62の内周面)からわずかに離間している。さらに、本体部位84は、先端側ほど外径が小さいテーパ形状を有する。本体部位84の内周面は、閉時係合部81の突出端面で構成されている。また、本体部位84の内周面は、ハウジング8の内周面のうち最も径内側に位置している。
【0196】
延出部位85の外周面は、バレル6の内周面(具体的には、バレル6の筒状部62の内周面)と面接触している。このように、延出部位85の外周面がバレル6の内周面に密着することで、薬剤がハウジング8の外周面とバレル6の内周面との間を介して先端側に漏れ出すことを防止できる。延出部位85の内周面は、取付部位83の内周面よりも径外側に位置している。即ち、延出部位85の内径は、取付部位83の内径よりも大径となっている。
【0197】
以上のハウジング8では、閉時係合部81の径内側に、基端側空間S1から先端側空間S2への薬液の流路となる液流路C8が形成されている(図4参照)。即ち、本体部位84の内周面の内側には、液流路C8が形成されている。
【0198】
中栓部9は、ハウジング8の内部を介して基端側空間S1と先端側空間S2とが連通又は非連通となるようにハウジング8の内部に対して開閉可能に配置された部材である。本実施形態では、中栓部9は、ハウジング8の内部に設けられた栓であるが、ハウジング8を先端側から覆う蓋でもよい。
【0199】
また、中栓部9は、中栓部9が閉じ状態であるときに、閉時係合部81に対して基端側から係合する閉時被係合部90を有する(図3参照)。閉時被係合部90は、閉時係合部81に対して、先端側と基端側とに配置されている。具体的に、閉時被係合部90は、基端側に位置する基端側閉時被係合部901と、先端側に位置する先端側閉時被係合部902と、を含む。即ち、中栓部9は、複数(例えば、二つ)の閉時被係合部90を有する。
【0200】
中栓部9は、閉時係合部81と閉時被係合部90との係合が解除されて、基端側空間S1と先端側空間S2とが連通した状態の中栓部9の先端側への移動を規制する規制手段91を有する。この中栓部9は、規制手段91を有することにより、基端側空間S1と先端側空間S2とが連通した状態で、中栓部9が注出孔64等の流路を塞ぐことを防止する。
【0201】
本実施形態では、規制手段91は、中栓部9がフィルター80に対して基端側に離間した位置で、中栓部9の先端側への移動を規制する。これにより、中栓部9がフィルター80の目を塞ぐことを防止できる。
【0202】
また、中栓部9は、閉時被係合部90を外周面に有し且つハウジング8の液流路C8を開閉可能に構成された蓋部位92を有する。さらに、中栓部9は、蓋部位92よりも基端側に配置され且つ蓋部位92よりも径外側に突設された段係合部93と、段係合部93の径内側に配置され且つ蓋部位92と段係合部93との間に筒軸方向に形成される栓流路C9と、を有する(図4参照)。これにより、中栓部9を開き状態で規制したときに、基端側空間S1に収容される薬液は、段係合部93よりも径内側の栓流路C9を介して、閉時係合部81の径内側の液流路C8を基端側から先端側へ(図4の矢印方向に)流れ、蓋部位92と閉時係合部81との間を通ってスムーズに先端側空間S2に流れる。また、蓋部位92の外周部920とハウジング8の先端内周面部822とは全周に渡って接触しないように構成されているため、薬液は全周に均一に流れることができる。
【0203】
本実施形態では、中栓部9は、規制手段91として、段付面810と、径外側へ突出し、段付面810に基端側から係合可能な段係合部93とを有する。規制手段91が段付面810と段係合部93とを含むことにより、段係合部93が、段付面810に基端側から係合するため、中栓部9の移動を確実に規制できる。
【0204】
段係合部93は、例えば、周方向全周に連続、又は、間欠的に設けられ、本実施形態では、連続して設けられている。このような構成では、閉時係合部81と閉時被係合部90とが係合解除して、中栓部9が先端側に移動し、基端側空間S1と先端側空間S2とが完全に連通した時点で、周方向全周に連続、又は、間欠的に設けられた段係合部93が基端側から段付面810に係合し、中栓部9の先端側への移動が規制される。段係合部93も段付面810も蓋部位92よりも径外側で全周に亘るように形成されているため、中栓部9は安定した姿勢で、移動規制される。
【0205】
中栓部9は、蓋部位92に加えて、蓋部位92から延出された脚部位94を含む。本実施形態では、中栓部9は、図5及び図6に示すように、複数の脚部位94(具体的には、四つの脚部位94)を含む。また、中栓部9は、各脚部位94からハウジング8側(径外側)にそれぞれ突出する複数の突出部位95(具体的には、四つの突出部位95)を含む。さらに、中栓部9は、複数の突出部位95を繋ぐ環状部位96を含む。
【0206】
なお、中栓部9は、段係合部93として突出部位95を有し、より具体的に、中栓部9は、段係合部93として突出部位95に加えて環状部位96も有する。
蓋部位92は、ハウジング8の内部に嵌まる部位である(図3及び図4参照)。また、蓋部位92は、閉時被係合部90を外周面に有して、ハウジング8の内部に対して開閉可能な部位である。さらに、蓋部位92は、基端側空間S1先端側空間S2との間を仕切る部位である。例えば、蓋部位92は、略円盤状である。蓋部位92の外周部920には、閉時被係合部90が設けられている。蓋部位92の内周部921(蓋部位92における外周部920よりも径内側に位置する部位)は、円盤上の部位から基端側に延びる蓋脚部922を有する。本実施形態では、蓋脚部922の基端側端面は、脚部位94の基端側端面よりも先端側に位置している。また、蓋脚部922の基端側端面は、突出部位95の基端側端面よりも先端側に位置している。さらに、蓋脚部922の基端側端面は、環状部位96の基端側端面よりも先端側に位置している。
【0207】
蓋脚部922は、蓋部位92の径方向中心部から基端側に向けて突設されている。蓋脚部922の外径は、蓋部位92の外径よりも小さい。蓋脚部922は、複数の脚部位94(複数の突出部位)が周方向に並んで囲む領域の径方向中心部に設けられている。また、蓋脚部922は、環状部位96が囲む領域の径方向中心部に配置されている。
【0208】
閉時被係合部90は、例えば、ハウジング8側に突出する凸部である。具体的に、閉時被係合部90は、ハウジング8側に突出するリブである。本実施形態では、閉時被係合部90は、周方向に連続して設けられるリブであるが、周方向全周に間隔をあけて複数設けられるリブであってもよい。
【0209】
基端側閉時被係合部901は、蓋部位92の基端側の端部に設けられている。先端側閉時被係合部902は、蓋部位92の先端側の端部に設けられている。
基端側閉時被係合部901と先端側閉時被係合部902とは、筒軸方向に離間して設けられている。基端側閉時被係合部901と先端側閉時被係合部902との間には蓋凹部97が形成されている。この蓋凹部97には、ハウジング8の閉時係合部81が径外方向から嵌合する。この嵌合状態において、基端側閉時被係合部901が閉時係合部81に基端側から係合し、ハウジング8に対する中栓部9の先端側への移動が規制される。また、嵌合状態において、先端側閉時被係合部902が閉時係合部81に先端側から係合し、ハウジング8に対する中栓部9の基端側への移動が規制される。
【0210】
脚部位94は、蓋部位92の外周部920の基端側の端部から、基端側に延びる部位である。複数の脚部位94(具体的には、四つの脚部位94)は、周方向に等間隔をあけて配置されている。
【0211】
脚部位94の径内側には、栓流路C9が形成される。栓流路C9は、脚部位94の径内側にて筒軸方向に形成される軸流路C91と、軸流路C91と脚部位94の径外側の空間とを連通する連通流路C92と、を含む(図4参照)。軸流路C91は、突出部位95の径内側に配置され、突出部位95と蓋部位92との間に筒軸方向に沿って形成される。連通流路C92は、複数の脚部位94同士の間に形成されて径外側へ開放されており、軸流路C91の径外側で該軸流路C91に連通する。
【0212】
突出部位95は、脚部位94の基端側の端部から、ハウジング8側に延びる部位である。複数の突出部位95(具体的には、四つの突出部位95)は、周方向に等間隔をあけて配置されている。
【0213】
環状部位96は、突出部位95のハウジング8側の端部(径外側の端部)を繋ぐ部位である。また、環状部位96は、例えば、円環形状を有する。なお、環状部位96は、円環形状以外の環状、例えば、角筒状等であってもよい。
【0214】
以上の中栓部9では、中栓部9が開放された状態において、中栓部9の段係合部93(具体的には、突出部位95、本実施形態では突出部位95及び環状部位96)が、ハウジング8の段付面810(閉時係合部81の基端側端面)に係合するため、中栓部9のさらなる先端側への移動(中栓部9の閉時係合部81からの脱落)が規制されている。
【0215】
また、中栓部9には、バレル6内に基端側から挿入されるピストン3が当接可能である。即ち、中栓部9は、この挿入されるピストン3が当接可能な当接面98を備えている。
当接面98は、中栓部9の基端側の端面である。具体的に、当接面98は、蓋部位92の基端側の端面で構成されている。より具体的に、当接面98は、蓋脚部922の基端側端面、及び、脚部位94の基端側端面で構成されている。
【0216】
中栓部9は、柔軟性を有する材質で形成されている。本実施形態の中栓部9は、バレル6よりも柔軟性を有する。具体的に、中栓部9の材質は、例えば、バレル6の材質よりも軟質の樹脂、ゴム、エラストマー等である。中栓部9の柔軟性については、例えば、デュロメータ硬さを測定して確認できる。中栓部9の材質は、例えば、ハウジング8の材質と同じであるが、異なっていてもよい。
【0217】
フィルター80は、薬剤をろ過するためのフィルターである。また、フィルター80は、ハウジング8の先端側部分(本実施形態では、ハウジング8の取付部位83の先端面830)に配置され、バレル6の内部において注出孔64よりも基端側に配置されている。
【0218】
本実施形態では、フィルター80は、ハウジング8の先端側部分に取り付けられ、具体的には、先端面830に接着されている。この接着は、超音波溶着であるが、熱溶着等の別の溶着方法を含む接着方法を用いてもよい。なお、フィルター80は先端面830に接着されていてもよい。
【0219】
以上のシリンジ2では、仕切手段7は、バレル6内部に基端側から挿入されるピストン3により基端側から押圧力がかかると、閉時係合部81及び閉時被係合部90のうち一方が他方を乗り越えて、閉時係合部81と閉時被係合部90との係合が解除される。これにより、中栓部9がハウジング8の内部に対して開放されて基端側空間S1と先端側空間S2とが連通するように構成されている。即ち、仕切手段7は、この押圧力により、中栓部9が閉じ状態(図3参照)から開き状態(図4参照)に状態変化するように構成されている。具体的に、ピストン3により基端側から押圧力がかかると、閉時係合部81及び閉時被係合部90の少なくとも一方が弾性変形して、閉時被係合部90が閉時係合部81を乗り越えて、中栓部9が先端側へ移動することで、閉時係合部81と閉時被係合部90との係合が解除され、中栓部9がハウジング8の内部に対して開放されて基端側空間S1と先端側空間S2とが連通するように構成されている。
【0220】
また、シリンジ2では、バレル6とハウジング8の取付部位83とが、フィルター80を狭持している。具体的に、バレル6の先端部60の基端側端面600と、取付部位83の先端面830とが、フィルター80を筒軸方向で狭持している。これにより、薬液を投与する際に、フィルター80に圧力がかかっても、フィルター80の取付部位83への取り付けが外れにくい。
【0221】
さらに、シリンジ2では、基端側から先端側に向かって、基端側空間S1、先端側空間S2、注出孔64が順に並んでいる。本実施形態のシリンジ2では、基端側空間S1の中心軸、及び、先端側空間S2の中心軸は、いずれも、注出孔64の中心軸と一致している。これにより、薬剤の投与時に、基端側空間S1から注出孔64までの薬剤の流れが良好になっている。
【0222】
なお、本実施形態のシリンジ2に対しては、γ線等の放射線により滅菌が行われていてもよい。この滅菌は、エチレンオキサイドガス等のガスにより行ってもよいし、オートクレーブであってもよい。
【0223】
ピストン3は、バレル6内の薬剤を注出する際に操作される部材である。本実施形態のピストン3は、軸状のロッド部30と、該ロッド部30の長手方向における一端に取り付けられるとともに、バレル6の筒状部62の内周面全周に亘って密接するガスケット31と、ロッド部30の長手方向における他端に取り付けられた操作部32とを有する。
【0224】
本実施形態のピストン3では、先端面33は、ガスケット31の先端面で構成されている。具体的に、薬剤の投与完了時に、先端面33は中栓部9の基端側の端面に当接する。
なお、ピストン3は、医者や看護師等により操作されるものであるが、患者が操作するものであってもよい。この場合、プレフィルドシリンジ1は、オートインジェクターに装着されていてもよい。
【0225】
注射針4は、バレル6内の薬剤を患者に投与するための部材である。注射針4の先端は、キャップ5により覆われている。
以上のシリンジ2によれば、閉時係合部81と閉時被係合部90とが係合した状態から、ピストン3による押圧力で一方が他方を乗り越えることによって、(本実施形態では、閉時係合部81と基端側閉時被係合部901とが係合した状態から、押圧力で基端側閉時被係合部901が閉時係合部81を乗り越えることによって)、この係合が一気に解除される。そのため、バレル6内を仕切る仕切手段7が確実に開通して基端側空間S1と先端側空間S2とが連通し、薬液をスムーズに注出することができる。
【0226】
本実施形態のシリンジ2では、先端側と基端側とに配置された閉時係合部81及び閉時被係合部90の一方の間に他方が位置する(本実施形態では、基端側閉時被係合部901と先端側閉時被係合部902との間に閉時係合部81が位置する)ため、閉じ状態の中栓部9のハウジング8に対する筒軸方向における先端側及び基端側への移動を規制することができ、輸送時等の意図しない移動を規制することができる。
【0227】
また、本実施形態のシリンジ2では、ハウジング8の先端側部分にフィルター80が配置され、薬剤の注出までの間、仕切手段7がバレル6内を仕切っているため、基端側空間S1に薬剤を収容すれば、注出までにフィルター80が薬剤に接触することを防ぐことができる。
【0228】
さらに、本実施形態のシリンジ2では、仕切手段7がバレル6の先端部に配置されているため、薬剤の注出までの間、基端側空間S1に収容された薬剤にフィルター80が接触することを防ぐとともに、バレル6内を仕切る仕切手段7が開通した後に、フィルター80が薬剤をろ過することができる。
【0229】
仕切手段7の構成は、上述の構成と異なってもよい。例えば、中栓部9は、閉時被係合部90を備えていればよく、上述の構成と異なっていてもよい。
具体的に、中栓部9は、図7図12に示すように、環状部位96を備えなくてもよい。即ち、中栓部9は、閉時被係合部90と、基端側空間S1を覆う蓋部位92と、蓋部位92から延出された脚部位94(具体的には、四つの脚部位94)と、各脚部位94からハウジング8側(径外側)にそれぞれ突出する複数の突出部位95(具体的には、四つの突出部位95)と、を含むことが考えられる。
【0230】
また、中栓部9は、蓋部位92(具体的には、蓋部位92の蓋脚部922)と脚部位94とを接続する接続部位を含んでもよい。この場合、接続部位により、中栓部9がピストン3に押圧される際に、段係合部93(突出部位95)が段付面810に係合している状態で生じる脚部位94の径方向の撓みを規制できる。
【0231】
さらに、中栓部9は、環状部位96の代わりに、突出部位95のハウジング8側の端部(径外側の端部)から周方向に延びる栓延出部位を備えていてもよい。栓延出部位は、例えば、各突出部位95からそれぞれ延び且つ複数設けられてもよい。複数の栓延出部位は、周方向に隙間をあけて配置されてもよい。
【0232】
また、中栓部9は、脚部位94や突出部位95を含まなくてもよく、例えば、閉時被係合部90と蓋部位92とにより構成されていてもよい。
なお、上記実施形態では、ピストン3により基端側から押圧力がかかると、閉時係合部81及び閉時被係合部90の少なくとも一方が弾性変形して、閉時被係合部90が閉時係合部81を乗り越えて、中栓部9が先端側へ移動して閉時係合部81と閉時被係合部90との係合が解除されたが、この押圧力がかかるとき、閉時係合部81及び閉時被係合部90の少なくとも一方が弾性変形して、閉時係合部81が閉時被係合部90を乗り越えて、ハウジング8が先端側に移動して閉時係合部81と閉時被係合部90との係合が解除されてもよい。
【0233】
このような構成であっても、閉時係合部81と閉時被係合部90とが係合した状態から、ピストン3による押圧力で一方が他方を乗り越えることによって、この係合が一気に解除される。そのため、バレル6内を仕切る仕切手段7が確実に開通して基端側空間S1と先端側空間S2とが連通し、薬液をスムーズに注出することができる。
【0234】
上記実施形態では、仕切手段7が、一つの閉時係合部81と複数(具体的には、二つ)の閉時被係合部90とを有していたが、複数の閉時係合部81と一つの閉時被係合部90とを有していてもよい。具体的に、閉時係合部81が閉時被係合部90に対して先端側と基端側とに配置されていてもよい。このような場合、ハウジング8において、先端側と基端側とに配置された閉時係合部81同士の間に、凹部が形成されてもよい。この凹部には、中栓部9の閉時被係合部90が径内方向から嵌合する。この嵌合状態において、基端側に配置された閉時係合部81が閉時被係合部90に基端側から係合し、ハウジング8に対する中栓部9の基端側への移動が規制される。また、嵌合状態において、先端側に配置された閉時係合部81が閉時被係合部90に先端側から係合し、ハウジング8に対する中栓部9の先端側への移動が規制される。なお、仕切手段7は、一つの閉時係合部81と一つの閉時被係合部90とを有していてもよい。
【0235】
また、上記実施形態では、仕切手段7は、バレル6の先端部60に配置されていたが、バレル6の軸方向の途中位置に配置されていてもよい。例えば、仕切手段7がバレル6の軸方向の途中位置に配置され、基端側空間S1と先端側空間S2とを仕切った状態で、基端側空間S1に液剤MLが収容され、先端側空間S2(具体的には、第一先端側空間S21)に固形剤MSが収容されていてもよい(図13(a)参照)。この状態から、ピストン3により基端側から押圧力がかかり、図13(b)に示すように、中栓部9がハウジング8の内部に対して開放されて基端側空間S1と先端側空間S2とが連通すると、液剤MLが基端側空間S1から先端側空間S2に流れ込み、図13(c)に示すように、固形剤MSと液剤MLとが混合した混合薬剤MMが得られる。さらに、ピストン3により基端側から押圧力がかかることで、図13(d)に示すように、混合薬剤MMを投与することができる。
【0236】
このように、本実施形態では、仕切手段7は、バレル6の軸方向の途中位置に配置されてバレル6内の空間を基端側空間S1と先端側空間S2とに仕切っており、基端側空間S1側からのピストン3による押圧が所定圧になると開放し、ピストン3のバレル6の先端側への押込み動作に伴って、開放した状態でバレル6の先端部60まで移動する構成になっている。
【0237】
また、基端側空間S1と先端側空間S2とを仕切る仕切手段7がフィルター80を備えているため、仕切手段7が開放されて液剤MLが基端側空間S1から先端側空間S2に流れ込む際には、フィルター80によって不要な固形物が捕獲される。
【0238】
また、仕切手段7は、フィルター80を備えない構成でもよい。例えば、図14(a)に示すように、仕切手段7が、ハウジング8と中栓部9のみを備え、バレル6の途中位置に配置され、フィルター80を備えたフィルター部材86が仕切手段7よりも先端側に、互いに離間して配置することが考えられる。
【0239】
この場合であっても、仕切手段7によって、バレル6内部の空間Sが、ハウジング8及び中栓部9よりも基端側の空間である基端側空間S1と、ハウジング8及び中栓部9よりも先端側の空間である先端側空間S2とに仕切られていることが考えられる。本実施形態では、先端側空間S2は、ハウジング8及び中栓部9とフィルター部材86との間の空間である第三先端側空間S3と、フィルター部材86よりも先端側の空間である第四先端側空間S4と、を含む。この構成では、基端側空間S1に液剤MLが収容され、第三先端側空間S3に液剤ML又は固形剤MSが収容され、第四先端側空間S4に固形剤MSが収容される又はこの空間が空であることが考えられる。本実施形態では、基端側空間S1に液剤MLが収容され、第三先端側空間S3に固形剤MSが収容され、第四先端側空間S4が空である。
【0240】
なお、この仕切手段7では、ハウジング8はフィルター80を備えず、フィルター部材がフィルター80を備える。また、ハウジング8及びフィルター部材86は、いずれも略筒状である。なお、本実施形態では、フィルター部材86の内周面は、ハウジング8の内周面よりも小径に形成されているが、フィルター部材86の内周面は、ハウジング8の内周面と略同じ径で形成されていてもよい。
【0241】
この構成では、仕切手段7が基端側空間S1と第三先端側空間S3とを仕切った状態では、基端側空間S1に収容された液剤MLと、第三先端側空間S3に収容された固形剤MSとが仕切られている。この状態から、ピストン3により基端側から押圧力がかかり、図14(b)に示すように、中栓部9がハウジング8の内部に対して開放されて基端側空間S1と第三先端側空間S3とが連通すると、液剤MLが基端側空間S1から第三先端側空間S3に流れ込み、図14(c)に示すように、固形剤MSと液剤MLとが混合した混合薬剤MMが得られる。さらに、ピストン3により基端側から押圧力がかかることで、図14(d)に示すように、混合薬剤MMを投与することができる。
【0242】
このように、仕切手段7は、バレル6の軸方向の途中位置に配置されたハウジング8と中栓部9とがバレル6内の空間Sを基端側空間S1と先端側空間S2とに仕切っており、基端側空間S1側からのピストン3による押圧が所定圧になると開放し、ピストン3のバレル6の先端側への押込み動作に伴って、開放した状態でバレル6の先端部60まで移動するようになっている。また、この構成では、ハウジング8よりも先端側に配置され、基端側から先端側へ連通する流通孔が形成されたフィルター部材86と、フィルター部材86に取り付けられ、流通孔を流通する液体を濾すフィルター80と、を備える。このため、中栓部9がハウジング8に対して開放されて液剤MLが基端側空間S1から先端側空間S2に流れ込んで固形剤MSと混合してバレル6の先端部60から注出される際には、フィルター80によって不要な固形物が捕獲される。また、フィルター部材86は、バレル6の先端部60において先端側に移動しないように配置されているので、ハウジング8が先端側に移動する際のピストン3の押圧抵抗を均一化することができる。
【0243】
さらに、例えば、仕切手段7が、ハウジング8及び中栓部9のセットを二つ備え、一方のセットを基端側に他方のセットを先端側に離間して配置することが考えられる。この場合、基端側に位置するハウジング8及び中栓部9よりも基端側の空間に薬液液剤MLが収容され、基端側に位置するハウジング8及び中栓部9と先端側に位置するハウジング8及び中栓部9との間の空間に液剤ML又は固形剤MSが収容され、先端側に位置するハウジング8及び中栓部9よりも先端側の空間に固形剤MSが収容される又はこの空間が空である構成が考えられる。
【0244】
なお、閉時係合部81が、周方向全周に間隔をあけて複数設けられる場合、複数の閉時係合部81は、筒軸を挟んだ反対側の位置に配置されていてもよい。また、複数の閉時係合部81は、周方向において等間隔をあけて配置されていてもよい。閉時被係合部90も同様に、周方向全周に間隔をあけて複数設けられる場合、複数の閉時被係合部90は、筒軸を挟んだ反対側の位置に配置されていてもよく、周方向において等間隔をあけて配置されていてもよい。このような構成では、閉時係合部81と閉時被係合部90とが安定的に係合するため、シリンジ2の輸送時等に、中栓部9がハウジング8から外れにくい。
【0245】
本発明の一つの側面において、バレル内には仕切手段の代わりに保持部材10が配置されてもよい。本明細書において、保持部材10とは、中栓を有さず、ハウジングのみからなる仕切手段である。保持部材10は、フィルター80が取り付けられる部材である。また、保持部材10は、バレル6に対して圧接した状態で、バレル6内に収容されている。具体的に、保持部材10の外周面の少なくとも一部は、バレル6の内周面に密着している。
【0246】
また、保持部材10は、柔軟性を有する材質で形成されている。本実施形態の保持部材10は、バレル6よりも柔軟性を有する。具体的に、保持部材10の材質は、例えば、バレル6の材質よりも軟質の樹脂、ゴム、エラストマー等である。バレル6と保持部材10との柔軟性については、例えば、デュロメータ硬さを測定して確認できる。保持部材10がこのような材質で形成されることにより、保持部材10のバレル6に対する柔軟性を確保して、バレル6のクラックを防止することができる。
【0247】
保持部材10は、フィルター80よりも基端側に配置される基端側部分110を備える。本実施形態の保持部材10は、基端側部分110のみで構成されている。保持部材10の基端側部分110には、薬剤が基端側から先端側へ向けて流通する流路111が設けられている。
【0248】
保持部材10の基端側部分110は、バレル6内に基端側から挿入されるピストン3が当接可能な当接面200を基端側端面200として備えている。基端側部分110は、中央に貫通孔が設けられた円板により先端側が塞がれた円筒状を有する。
【0249】
基端側部分110の当接面200は、ピストン3の先端面33と対応した形状を有している。また、当接面200は、ピストン3の先端面33がバレル6の周方向全周に亘って面接触するように構成されている。
【0250】
本実施形態の当接面200は、例えば、図16に示すように、基端側に位置する基端側当接面201と、先端側に位置する先端側当接面202と、基端側当接面201と先端側当接面202とを接続する接続当接面203と、を含む。
【0251】
基端側当接面201は、例えば、軸心方向に対して略垂直な面である。先端側当接面202は、例えば、軸心方向に対して略垂直な面である。
接続当接面203は、軸心方向に沿って延びる面である。例えば、接続当接面203の軸心方向における中央部は、径外方向に向かって凹んでいる。
【0252】
本実施形態の基端側部分110は、フィルター80が取り付けられる取付部位112と、取付部位112から延びる脚部位113と、を含む。この基端側部分110では、取付部位112が先端側に設けられ、脚部位113は基端側に配置されている。
【0253】
流路111は、基端側部分80の取付部位112に設けられている。本実施形態の流路111の軸心方向から視たときの面積(軸心と直交する方向おける流路111の断面積)は、一定である。また、軸心方向から視たときの流路111の面積は、0.64mm以上1.33mm以下である。本実施形態の流路111の内径は、一定である。また、流路111の内径は、例えば、0.3mm以上0.9mm以下である。なお、流路111は、貫通孔であり、具体的には、円筒状であるが、角筒状であってもよい。
【0254】
取付部位112は、外周部が先端側に突出した形状を有する。本実施形態の取付部位112の外周面は、バレル6の内周面(具体的には、バレル6の筒状部62の内周面)からわずかに離間している。さらに、取付部位112は、先端側ほど外径が小さいテーパ形状を有する。また、取付部位112は、外周部を構成する取付外周部220と、取付外周部220よりも径内側に位置し且つ流路111を規定する取付内周部221と、を有する。
【0255】
さらに、取付部位112では、取付外周部220の先端面である外周先端面222が、取付内周部221の先端面である内周先端面223よりも先端側に位置している。換言すると、取付部位112の先端面は、周方向における中心部で凹んでいる。取付外周部220は、先端側の外周部として肩部224を有する。
【0256】
脚部位113は、外周部が基端側に突出した形状を有する。脚部位113の基端面230が、基端側部分110の当接面200を構成している。脚部位113の外周面は、バレル6の内周面(具体的には、バレル6の筒状部62の内周面)と面接触している。このように、脚部位113の外周面がバレル6の内周面に密着することで、薬剤は確実に保持部材10の流路111を通って、フィルター80によりろ過される。
【0257】
本実施形態のフィルター80は、保持部材10の基端側部分110の先端面804に取り付けられている。具体的に、フィルター80は、先端面204に接着されている。より具体的に、フィルター80は、取付外周部220の外周先端面222に接着されている。この接着は、超音波溶着であるが、熱溶着等の別の溶着方法を含む接着方法を用いてもよい。また、フィルター80は先端面204に接着されていてもよい。
【0258】
なお、図17に示すように、フィルター80の接着前の状態では、基端側部分110(例えば、取付外周部220)には、先端側に突出した突出部225が設けられている。フィルター80を接着する際に突出部225が溶けて広がることで、フィルター80の接着後の状態では、基端側部分110の先端面204は、略平坦面となる。
【0259】
先端側副空間71は、バレル6の内周面65(具体的には、先端部60の基端側端面600)とフィルター80(具体的には、フィルター80の先端側面)とで規定されている。また、先端側副空間71は、注出孔64と連続している。本明細書において、先端側副空間71は、第一先端側空間S21に対応する。
【0260】
さらに、先端側副空間71は、例えば、基端側から先端側に向けて筒状方向から視たときの面積(軸心と直交する方向おける断面積)が小さくなる形状、即ち、先端側ほど筒状方向から視たときの面積(軸心と直交する方向おける断面積が小さいテーパ形状を有する。本実施形態の先端側副空間71は略円筒状である。この先端側副空間71は、例えば、基端側から先端側に向けて内径が小さくなる形状、即ち、先端側ほど内径が小さいテーパ形状を有する。また、先端側副空間71は、外周側の部位ほど、フィルター80とバレル6の先端部60の基端側端面600との距離が小さい形状を有する。これにより、薬剤を投与する際に、薬液が、周方向において外周側から筒軸側に移動しやすい状態で先端側副空間71に押し出されるため、注出抵抗を抑えることができる。なお、先端側副空間71は角筒状であってもよい。
【0261】
先端側副空間71の基端側部位、即ち、先端側副空間71の最も面積(例えば、内径)が大きい部位は、バレル6の軸心方向において肩部224と並んでおり、その内径が保持部材10の肩部の外径と同程度の大きさとなっている。
【0262】
基端側副空間72は、フィルター80(具体的には、フィルター80の基端側面)と基端側部分110の先端面204(具体的には、取付内周部221の内周先端面223及び取付外周部220の内周面である取付内周面226)とで規定されている。また、基端側副空間72は、取付内周部221の内周先端面223が取付外周部220の外周先端面222よりも基端側に凹むことで形成されている、即ち、取付部位112の先端面が基端側に凹んでいることにより形成されている。本明細書において、基端側副空間72は、第二先端側空間S22に対応する。また、先端側副空間71と基端側副空間72を合わせた空間は先端側空間S2に対応する。
【0263】
また、基端側副空間72は、流路111と連続している。さらに、基端側副空間72は、例えば、基端側から先端側に向けて軸心方向から視たときの面債が大きくなる形状、即ち、先端側ほど軸心方向から視たときの面積が大きいテーパ形状を有する。本実施形態の基端側副空間72は、略円筒状である。この基端側副空間72は、例えば、基端側から先端側に向けて内径が大きくなる形状、即ち、先端側ほど内径が大きいテーパ形状を有する。基端側副空間72を規定する取付外周部220の取付内周面226の軸心方向に対する傾斜角度は、先端側副空間71を規定する先端部60の基端側端面600の軸心方向に対する傾斜角度よりも小さい。なお、基端側副空間72は、角筒状であってもよい。
【0264】
以上のシリンジ2では、バレル6と保持部材10の基端側部分110とが、フィルター80を狭持している。具体的に、バレル6の先端部60の基端側端面600と(具体的には、基端側端面600の基端側端縁601)と、基端側部分110の肩部224とが、フィルター80を軸心方向で狭持している。これにより、薬液を投与する際に、フィルター80に圧力がかかっても、フィルター80の基端側部分110への取り付けが外れにくい。
【0265】
基端側から先端側に向かって、流路111、基端側副空間72、先端側副空間71、注出孔64が順に並んでいる。本実施形態のシリンジ2では、流路111の中心軸、基端側副空間72の中心軸、及び、先端側副空間71の中心軸は、いずれも、注出孔64の中心軸と一致している。これにより、薬剤の投与時に、流路111から注出孔64までの薬剤の流れが良好になっている。
【0266】
流路111の軸心方向における寸法L111は、基端側副空間72の軸心方向における寸法L72よりも大きい。また、先端側副空間71の軸心方向における寸法L71(具体的には、先端側副空間71の中心軸における寸法)は、基端側副空間72の軸心方向における寸法L72よりも大きい。
【0267】
軸心方向から視たとき、注出孔64の面積は、基端側副空間72の面積よりも小さく、先端側副空間71の面積よりも小さく、流路111の面積よりも小さい。これは、注出孔64の面積は、基端側副空間72の軸心方向におけるいずれの部位の面積よりも小さく、先端側副空間71の軸心方向におけるいずれの部位の面積よりも小さく、流路111の軸心方向におけるいずれの部位の面積よりも小さいということである。具体的には、注出孔64の面積は、基端側副空間72の面積よりも小さく、先端側副空間71の最大面積(先端側副空間71の基端側端縁における面積)よりも小さく、流路111の面積よりも小さい。
【0268】
また、軸心方向から視たとき、流路111の面積は、基端側副空間72の面積よりも小さい。これは、流路111の面積は、基端側副空間72の軸心方向におけるいずれの部位の面積よりも小さいということである。
【0269】
具体的に、注出孔64の内径R64は、基端側副空間72の内径R72よりも小さく、先端側副空間71の最大内径R71(先端側副空間71の基端側端縁における内径)よりも小さく、流路111の内径R111よりも小さい。また、流路111の内径R111は、基端側副空間72の内径R72よりも小さい。
【0270】
このような寸法関係について、注出孔64の内径R64が0.27mm、0.21mmであるバレル6と、流路111の内径R111が0.3mm、0.6mm、0.9mmであり、且つ、基端側副空間72の内径R72が0.6mm、2.1mm、3.6mmである保持部材10と、を組み合わせて実験を行い注出抵抗(具体的には、摺動荷重)への影響を検討した。
【0271】
この実験の結果は以下の通りである。基端側副空間72の内径R72が0.6mmである場合、摺動荷重の増大を確認した。基端側副空間72の内径R72が2.1m、3.6mmである場合、摺動荷重に大きな変化は見られなかった。また、流路111の内径R111を上記範囲内で変化させた場合、摺動荷重に大きな変化は見られなかった。
【0272】
例えば、流路111の内径R111は、注出孔64の内径R64の1倍より大きく5倍以下が好ましく、注出孔64の内径R64の1.1倍以上4.3倍以下であることが望ましい。注出孔64の内径R64が0.21mm又は0.27mmである場合、流路111の内径R111は0.3mm、0.6mm、0.9mmのいずれかを選択することができる。また、例えば、基端側副空間72の内径R72(フィルター80のろ過面積)は、注出孔64の内径R64の5倍以上20倍以下が好ましく、注出孔64の内径R64の7倍以上18倍以下であることが望ましい。注出孔64の内径R64が0.21mm又は0.27mmである場合、基端側副空間72の内径R72は、2.1mm及び3.6mmから選択することができる。基端側副空間72及び先端側副空間71の内径R72、R71がこの範囲であれば、薬剤を投与する際のろ過面積を確保しつつ注出抵抗を抑えることができる。
【0273】
なお、本実施形態のシリンジ2に対しては、γ線等の放射線により滅菌が行われる。この滅菌は、エチレンオキサイドガス等のガスにより行ってもよいし、オートクレーブであってもよい。
【0274】
ピストン3は、バレル6内の薬剤を注出する際に操作される部材である。本実施形態のピストン3は、軸状のロッド部30と、該ロッド部30の長手方向における一端に取り付けられるとともに、バレル6の筒状部62の内周面全周に亘って密接するガスケット31と、ロッド部30の長手方向における他端に取り付けられた操作部32とを有する。
【0275】
本実施形態のピストン3では、先端面33は、ガスケット31の先端面で構成されている。具体的に、薬剤の投与時に、先端面33は、少なくとも保持部材10の基端側部分110の基端側当接面201と当接し、より具体的には、基端側当接面201に加えて接続当接面203にも当接する。
【0276】
また、ピストン3は、バレル6の内周面に密着する密着部34と、密着部34の先端面から突設する突設部35と、を有する。密着部34の先端面が基端側当接面201に当接し、突設部35の先端面が先端側当接面802に当接する。また、突設部35の外周面は、接続当接面203に密着する。
【0277】
注射針4は、バレル6内の薬剤を患者に投与するための部材である。注射針4の先端は、キャップ5により覆われている。
以上のシリンジ2によれば、バレル6に収容された薬剤内に粒子が存在していたとしても、薬剤の投与時に、フィルター80により粒子を捕捉することができ、さらに、薬剤は、注出孔64よりも面積(例えば、内径)が大きい流路111、基端側副空間72、先端側副空間71を流通して注出孔64から注出されるため、流路111、基端側副空間72、先端側副空間71を流通する際の抵抗を抑制することができる結果、薬剤の注出抵抗を抑制できる。
【0278】
本実施形態のシリンジ2では、流路111の面積(例えば、内径)を小さくし、基端側副空間72の面積(例えば、内径)を大きくしたので、フィルター80における薬剤が接する面積(フィルター80によるろ過面積)を確保しつつ流路111に残る薬剤の量を少なくすることができ、注出抵抗を抑制しつつも残液の量を抑制することができる。
【0279】
また、本実施形態のシリンジ2では、薬剤の投与時に、ピストン3の先端面33が保持部材10の当接面200に周方向全周で面接触するまで移動することにより、ピストン3と保持部材10との間の残液を抑制することができ、バレル6内の薬剤の残液の量を抑制することができる。
【0280】
尚、本発明のシリンジは、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を追加することができ、また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることができる。さらに、ある実施形態の構成の一部を削除することができる。
【0281】
保持部材10の構成は、上述の構成と異なってもよい。例えば、基端側部分80の当接面200は、ピストン3の当接面33にあわせた形状であれば、異なる形状であってもよい。
【0282】
具体的に、上記実施形態の接続当接面203は、軸心方向に沿って延びていたが、軸心方向に対して傾斜する方向に延びる部位を含んでいてもよい。より具体的に、図18及び図19に示すように、接続当接面203は、軸心方向と略垂直な面である第一接続当接面203aと、第一接続当接面203aの両端縁から軸心方向に沿って延びる一対の面である第二接続当接面203b、203cと、を含んでもよい。
【0283】
具体的に、上記実施形態の基端側当接面201は、軸心方向に対して略垂直な面であったが、軸心方向に対して垂直以外の角度で傾斜した部位を含んでもよい。より具体的に、図20及び図21に示すように、基端側当接面201は、軸心方向に対して略垂直な面である第一基端側当接面201aと、第一基端側当接面201aの径内方向における端縁からさらに径内方向に延び、且つ、径内方向側の部位ほど先端側に位置するよう傾斜した面である第二基端側当接面201bと、を含んでもよい。
【0284】
このような構成であっても、ピストン3の先端面33が保持部材10の当接面200に周方向全周で面接触するまで移動することにより、ピストン3と保持部材10との間の残液を抑制することができ、バレル6内の薬剤の残液の量を抑制することができる。
【0285】
上記実施形態の保持部材10は、基端側部分110で構成されていたが、フィルター80よりも先端側に配置される先端側部分を、基端側部分110と一体または別体に含んで構成されてもよい。
【0286】
また、上記実施形態の保持部材10では、流路111の内径が、基端側副空間72の内径よりも小さかったが、基端側副空間72の内径と略一致していてもよい。
上記実施形態の保持部材10では、基端側部分110の当接面200は、当接面200は、ピストン3の先端面33がバレル6の周方向全周に亘って面接触するように構成されていたが、ピストン3の先端面33の周方向における一部において面接触するように構成されてもよい。例えば、基端側部分110の当接面200の基端側当接面201に対して、周方向において間欠的に凹部や凸部を設けることが考えられる。
【0287】
上記実施形態のシリンジ2では、先端側副空間71は、先端側ほど内径が小さいテーパ形状であったが、内径が均一な形状等の他の形状であってもよい。この場合、基端側端面600は、例えば、軸心方向に垂直な方向に延びることが考えられる。
【0288】
基端側副空間72は、先端側ほど内径が小さいテーパ形状であったが、内径が均一な形状等の他の形状であってもよい。
また、流路111の軸心方向における寸法は、基端側副空間72の軸心方向における寸法以下であってもよい。
【0289】
さらに、先端側副空間71の軸心方向における寸法は、基端側副空間72の軸心方向における寸法以下であってもよい。この場合、例えば、バレル6の先端部60の基端側端面600の筒軸に対する傾斜角度を小さくした上で、保持部材10の基端側部分110を基端側端面600に当接する位置に配置する、又は、保持部材10の基端側部分110の軸心方向における寸法を大きくすることが考えられる。
【0290】
仕切手段7又は保持部材10は、前記バレル6の先端側空間の体積が150mm以下、110mm以下、40mm以下、場合により20mm以下、好ましくは18mm以下となるように配置される。バレル6の先端側空間(S2)の体積は、バレル6全体の体積の15体積%以下、7体積%以下、5体積%以下、2体積%以下、好ましくは1.8体積%以下である。
【0291】
本明細書において、シリンジの摺動抵抗とは、バレル内のピストンを摺動させる際の抵抗であり、摺動荷重で表される。本明細書において、注出抵抗の語も摺動抵抗と同様の意味で用いられる。
(2)フィルター
フィルター80は、例えば、メンブレンであってもメッシュ、焼結体、発泡体であってもよい。フィルター80の材質は、樹脂、セラミック、金属、紙等である。本実施形態では、フィルター80は、例えば、メンブレンフィルターである。なお、フィルター80は、プレフィルターであってもよい。
【0292】
一つの側面において、フィルター80のろ過面積は、基端側副空間(72、S22)の先端側端縁の面積、及び、先端側副空間(71、S21)の基端側端縁の面積である。基端側副空間(72、S22)の先端側端縁の面積は、例えば、先端側副空間(71、S21)の基端側端縁の面積と等しい。
【0293】
一つの側面において、フィルターは、100μm~400μm、125μm~350μm、150μm~310μmの膜厚を有する。
一つの側面において、フィルターは乾燥時又は湿潤時に1000Psi以上、2000Psi以上、3000Psi以上の引張り強さを有し、好ましくは3500Psi以上の引張り強さを有する。さらに好ましくは、フィルターは乾燥時に3700Psi以上、湿潤時に3900Psi以上の引張り強さを有する。
【0294】
一つの側面において、フィルターは乾燥時又は湿潤時に10%以上、20%以上、30%以上、40%以上の破断伸びを有し、好ましくは45%以上の破断伸びを有する。さらに好ましくは、フィルターは乾燥時に50%以上、湿潤時に60%以上の破断伸びを有する。
【0295】
一つの側面において、フィルターの材質はポリエーテルスルホン(PES)、ポリフッ化ビリニデン(PVDF)、ポリスルホン(PS)及びアクリル共重合体から選択される1以上を含む。
【0296】
ポリエーテルスルホン(PES)は、下記式:
【0297】
【化1】
【0298】
の繰返し単位を含む構造を有する。一つの側面において、ポリエーテルスルホンとして、Supor(登録商標)(日本ポール株式会社)、ミリポアエクスプレス(メルク株式会社)、Sartopore(登録商標)(ザルトリウス)が好ましく、特にSuporが好ましい。
【0299】
ポリフッ化ビニリデン(PVDF)は、下記式:
【0300】
【化2】
【0301】
の繰返し単位を含む。一つの側面において、ポリフッ化ビニリデンとして、Durapore(登録商標)(メルク株式会社)、フロロダイン(登録商標)II(日本ポール株式会社)が好ましく、特にDuraporeが好ましい。
【0302】
ポリスルホン(PS)は、下記式:
【0303】
【化3】
【0304】
の繰返し単位を含む構造を有する。一つの側面において、ポリスルホンとしてAsymmetric Super Micron Polysulfone(日本ポール株式会社)が好ましい。
【0305】
一つの側面において、アクリル共重合体は、不織ナイロン支持体上に形成されていてもよい。また、アクリル共重合体は、親水性又は疎水性のコーティングで被覆されていてもよい。一つの側面において、アクリル共重合体のフィルターとして疎水性アクリル共重合体のフィルターが好ましく、特に、VERSAPOR(登録商標)(日本ポール株式会社)が好ましい。
親水性のフィルターは、溶液で湿潤した後に空気が入り込むことで、メンブレンの厚みの内部に空気溜まりが生ずるエアロックという現象が起こることがある。プレフィルドシリンジは一定量の空隙を内部に有しており、使用する向きによって、溶液通過後に空隙に含まれる空気が通過し、エアロックが発生する可能性を否定できない。エアロックが発生した場合はろ過性能が大幅に低下してしまうが、疎水性のフィルターではそのような事象は一般的に起こらないことが知られている。従って、疎水性フィルターであることで、上記リスクを回避可能である。
【0306】
一つの側面において、フィルターは5μm以下、好ましくは5μmの孔径を有する。
本明細書において、フィルターの孔径とは、高い効率で捕捉されることが明確に期待できる粒子の直径によって定格付けられるフィルターの性質である。定格ろ過精度として、「公称ろ過精度」と「絶対ろ過精度」が利用される。公称ろ過精度とは、フィルターメーカーがある率の混入物除去率を保証することができる微粒子の大きさを範囲で表したものである。絶対ろ過精度とは、そのフィルターが完全に除去可能な最も小さい微粒子の大きさを表す値である。公称ろ過精度の測定方法として、ACFTD(AC Fine Test Dust)が挙げられ、この方法において、設定した粒子除去率を満たす粒子サイズをろ過精度とする。絶対ろ過精度の測定方法として、ACFTDまたはグラスビーズをフィルターに一回通過させて下流側に流れ出たACFTDまたはビーズの最大径を測定する方法が挙げられる。本明細書において、孔径は絶対ろ過精度で表される。
【0307】
本明細書において、フィルターの完全性とは、フィルターの品質に関する基準であり、無菌性保証が求められる重要工程において、フィルターが期待されたろ過性能を有しているかを示すものである。フィルターの完全性試験としては、フォワードフロー試験及びバブルポイント試験が挙げられる。フォワードフロー試験は、完全に濡れた膜に対して、膜の二次側が大気圧の状態時に、フィルターの一次側に一定の試験圧力を加えることにより、フィルター一次側と二次側の圧力差により、液膜を透過する拡散流量を測定する定量的な試験である。また、バブルポイント試験とは、完全に濡れた膜に対して、膜の二次側が大気圧の状態時に、フィルターの一次側に一定の試験圧力を加えることにより、フィルター一次側と二次側の圧力差により、液膜を透過する拡散流量を測定する定量的な試験である。
【0308】
本明細書において、「溶液は使用される前はフィルターと非接触の状態で保たれる」とは、溶液がバレル内のフィルターと接触しないようにバレル内に充填され、使用されるまで、通常予想されるレベルのストレスが負荷されても、接触しない状態で維持されることを指す。この場合において、注射用製剤の使用される前とは、注射用製剤の製造時及び製造後を含む。通常予想されるレベルのストレスとは、製造時又は製造後の輸送等の作業で加えられる落下ストレス、振動ストレス、及び回転ストレスを含むメカニカルストレスを指すが、これに限定されない。一つの側面において、注射用製剤は、通常予想されるレベルのストレスとして、1回、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、11回、12回、13回、14回、15回、16回、17回、18回、19回、20回、21回、22回、23回、24回、25回、25回以上、30回以上、又は40回以上の落下ストレスにさらされる。落下時にプレフィルドシリンジに加わるストレスは、落下回数以外に高さ、向きなどによって変化する。落下高さは、例えばAmerican Society for Testing and Materials(ASTM) D4169に記載されている38.1cmであるが、これに限定されない。一つの側面において、溶液とフィルターとの非接触の状態は、仕切手段によってバレル内を仕切り、基端側空間に医薬製剤を収容し、仕切手段の先端側にフィルターを配置することによって実現される。「溶液は使用される前にフィルターと接触した状態におかれる」とは、注射用製剤の製造時または製造後の保存、輸送等の間の一定期間又は全期間、溶液がフィルターと接触した状態におかれることを指す。
【0309】
本明細書において、「溶液が前記フィルターを介してフィルターの基端側から先端側に流入する」とは、シリンジのバレル内のフィルターよりも基端側に充填された溶液が、ピストン又は重量を含む押圧によって、バレル内のフィルターより先端側に移動することを指す。バレル内のフィルターより先端側に移動した溶液は注出孔を通って外部に注出される。
【0310】
(3)医薬製剤
本発明の一つの側面において、医薬製剤は、低分子化合物、天然物、ポリヌクレオチド、ペプチドを含む中分子化合物またはタンパク質を有効成分として含有する溶液である。本明細書において、低分子化合物は分子量500未満の化合物を指し、中分子化合物は分子量500~1500の化合物を指す。本発明の一つの側面において、中分子化合物は分子量500~2000の天然物、分子量3000~15000のポリヌクレオチド、分子量600~6000のペプチドを含む。ペプチドは、環状ペプチドを含む。また、ポリヌクレオチドは、リボザイム、アンチセンス分子、阻害剤オリゴヌクレオチド、アプタマー、マイクロRNA、および低分子干渉RNA(siRNA)を含む。医薬製剤は、注射用製剤であってよい。
【0311】
本発明の一つの側面において、注射用製剤とは、注射によって投与されるために注射用の容器に充填された、溶液中にタンパク質を有効成分として含有する医薬製剤である。本発明の一つの側面において、注射用製剤は、シリンジなどの注射用の容器を構成要素として包含する。
【0312】
本発明の一つの側面において、医薬製剤の溶液は、95cP以下、90cP以下、85cP以下、80cP以下、75cP以下、70cP以下、65cP以下、60cP以下、55cP以下、50cP以下、45cP以下、40cP以下、35cP以下、30cP以下、25cP以下、20cP以下、15cP以下、10cP以下、または1cP~95cPの粘度を有する。粘度は、例えば電磁スピニング(Electro-Magnetically Spinning; EMS)法を用いて計測することが出来る。本測定法では導電体であるプローブに遠隔操作でトルクを印加し、その回転を光学的に読み取ることで粘度を計測する。
【0313】
本発明の一つの側面において、医薬製剤は、容器内の溶液を凍結させずに-30℃~40℃、-30℃~25℃、好ましくは溶液の凍結点~25℃、より好ましくは1℃~10℃、より好ましくは2℃~8℃、さらに好ましくは5℃で保存される。保存は1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、7時間、8時間、9時間、10時間、11時間、12時間、13時間、14時間、15時間、16時間、17時間、18時間、19時間、20時間、21時間、22時間、23時間、24時間、25時間、26時間、27時間、28時間、29時間、30時間、31時間、32時間、33時間、34時間、35時間、36時間、48時間、60時間、72時間、84時間、96時間行われる。保存は、少なくとも24時間、少なくとも2日間、少なくとも3日間、少なくとも4日間、少なくとも10日、少なくとも20日、少なくとも30日、少なくとも40日、少なくとも50日、少なくとも60日、少なくとも1カ月、少なくとも2カ月、少なくとも3カ月、少なくとも4カ月、少なくとも5カ月、少なくとも6カ月、少なくとも7カ月、少なくとも8カ月、少なくとも9カ月、少なくとも10カ月、少なくとも11カ月、少なくとも12カ月行われる。
【0314】
本発明の一つの側面において、溶液製剤で使用するタンパク質は、抗体、融合タンパク質、酵素、ホルモン、サイトカイン、ワクチンを含むが、これらに限定されない。より具体的には、モノクローナル抗体、顆粒状コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒状マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、エリスロポエチン(EPO)、インターフェロン、IL-1やIL-6等のインターロイキン、組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA)、トロンボポエチン、ウロキナーゼ、血清アルブミン、血液凝固第VIII因子、レプチン、幹細胞成長因子(SCF)等を含む。
【0315】
本発明の一つの側面において、医薬製剤に使用するタンパク質は、哺乳動物、特にヒトの生理活性タンパク質と実質的に同じ生物学的活性を有するものであり、天然由来のもの、及び遺伝子組換え法によって得られたものを含む。遺伝子組換え法によって得られるタンパク質には天然タンパク質とアミノ酸配列が同じであるもの、或いは該アミノ酸配列の1又は複数を欠失、置換、付加したもので前記生物学的活性を有するものを含む。
【0316】
本発明の一つの側面において、溶液中のタンパク質の濃度は、0.1mg/mL以上、0.1~300mg/mLの範囲、1~200mg/mLの範囲、50~200mg/mL又は80~200mg/mLであってよい。
【0317】
本発明の一つの側面において、使用される抗体は、所望の抗原と結合する限り特に制限はなく、ポリクローナル抗体であってもモノクローナル抗体であってもよいが、均質な抗体を安定に生産できる点でモノクローナル抗体が好ましい。また、本発明の一つの側面において、使用される抗体は、モノスペシフィック抗体であってもバイスペシフィック抗体であっても、又は分子内に3つ以上の抗原認識部位を有する多重特異性を有する抗体であってもよい。
【0318】
本発明の一つの側面において、使用されるモノクローナル抗体としては、ヒト、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、ヒツジ、ラクダ、サル等の動物由来のモノクローナル抗体だけでなく、キメラ抗体、ヒト化抗体、バイスペシフィック抗体など人為的に改変した遺伝子組み換え型抗体も含まれる。さらに、血中滞留性や体内動態の改善を目的とした抗体分子の物性の改変(具体的には、等電点(p1)改変、Fc受容体の親和性改変等)を行うために抗体の定常領域等を人為的に改変した遺伝子組み換え型抗体も含まれる。
【0319】
また、本発明の一つの側面において、使用される抗体の免疫グロブリンクラスは特に限定されるものではなく、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4などのIgG、IgA、IgD、IgE、IgMなどいずれのクラスでもよいが、IgGが好ましく、IgG1、IgG2及びIgG4が特に好ましい。
【0320】
さらに本発明の一つの側面において、使用される抗体には、定常領域と可変領域を有する抗体(全長抗体)だけでなく、Fv、Fab、F(ab)などの抗体の結合断片や、抗体の可変領域をペプチドリンカー等のリンカーで結合させた1か又は2会場の一本鎖Fv(scFv、sc(Fv))やscFvダイマーなどの二重特異性抗体等の低分子化抗体なども含まれるが、全長抗体が好ましい。
【0321】
本発明の一つの側面において、使用される抗体は、公知の方法により作製することができる。モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、基本的には公知技術を使用し、以下のようにして作製できる。すなわち、所望の抗原や所望の抗原を発現する細胞を感作抗原として使用して、これを通常の免疫方法にしたがって免疫し、得られる免疫細胞を通常の細胞融合法によって公知の親細胞と融合させ、通常のスクリーニング法により、モノクローナルな抗体産生細胞(ハイブリドーマ)をスクリーニングすることによって作製できる。ハイブリドーマの作製は、たとえば、ミルステインらの方法(Kohler. G. and Milstein, C., Methods Enzymol. (1981) 73: 3-46)等に準じて行うことができる。抗原の免疫原性が低い場合には、アルブミン等の免疫原性を有する巨大分子と結合させ、免疫を行えばよい。
【0322】
また、抗体遺伝子をハイブリドーマからクローニングし、適当なベクターに組み込んで、これを宿主に導入し、遺伝子組換え技術を用いて産生させた遺伝子組換え型抗体を用いることができる(例えば、Carl, A. K. Borrebaeck, James, W. Larrick, THERAPEUTIC MONOCLONAL ANTIBODIES, Published in the United Kingdom by MACMILLAN PUBLISHERS LTD, 1990 参照)。具体的には、ハイブリドーマのmRNAから逆転写酵素を用いて抗体の可変領域(V領域)のcDNAを合成する。目的とする抗体のV領域をコードするDNAを得たら、これを所望の抗体定常領域(C領域)をコードするDNAと連結し、これを発現ベクターへ組み込む。又は、抗体のV領域をコードするDNAを、抗体C領域のDNAを含む発現ベクターへ組み込んでもよい。発現制御領域、例えば、エンハンサー、プロモーターの制御のもとで発現するよう発現ベクターに組み込む。次に、この発現ベクターにより宿主細胞を形質転換し、抗体を発現させることができる。
【0323】
本発明の一つの側面では、ヒトに対する異種抗原性を低下させること等を目的として人為的に改変した遺伝子組換え型抗体、例えば、キメラ抗体、ヒト化抗体などを使用できる。これらの改変抗体は、既知の方法を用いて製造することができる。キメラ抗体は、ヒト以外の哺乳動物、例えば、マウス抗体の重鎖、軽鎖の可変領域とヒト抗体の重鎖、軽鎖の定常領域からなる抗体であり、マウス抗体の可変領域をコードするDNAをヒト抗体の定常領域をコードするDNAと連結し、これを発現ベクターに組見込んで宿主に導入し産生させることにより得ることができる。
【0324】
ヒト化抗体は、再構成(reshaped)ヒト抗体とも称され、ヒト以外の哺乳動物、例えばマウス抗体の相補性決定領域(CDR; complementarity determining region)をヒト抗体の相補性決定領域へ移植したものであり、その一般的な遺伝子組換え手法も知られている。具体的には、マウス抗体のCDRとヒト抗体のフレームワーク領域(framework region; FR)を連結するように設計したDNA配列を、末端部にオーバーラップする部分を有するように作製した数個のオリゴヌクレオチドからPCR法により合成する。得られたDNAをヒト抗体定常領域をコードするDNAと連結し、次いで発現ベクターに組み込んで、これを宿主に導入し産生させることにより得られる(欧州特許出願公開第239400号、WO 96/02576 参照)。CDRを介して連結されるヒト抗体のFRは、相補性決定領域が良好な抗原結合部位を形成するものが選択される。必要に応じ、再構成ヒト抗体の相補性決定領域が適切な抗原結合部位を形成するように抗体の可変領域のフレームワーク領域のアミノ酸を置換してもよい(Sato, K.et al., Cancer Res. (1993) 53, 851-856)。
【0325】
抗体の活性、物性、薬物動態、安全性等を改善するために抗体のアミノ酸を置換する技術としては、例えば以下に述べる技術も知られており、本発明の一つの側面において、使用される抗体には、このようなアミノ酸の置換(欠損や付加も含む)を施された抗体も含まれる。
【0326】
IgG抗体の可変領域にアミノ酸置換を施す技術は、ヒト化(Tsurushita N, Hinton PR、 Kumar S. , Design of humanized antibodies: from anti-Tac to Zenapax., Methods. 2005 May;36(1):69-83.)をはじめとして、結合活性を増強させるための相補性決定領域(CDR)のアミノ酸置換によるaffinity maturation(Rajpal A, Beyaz N, Haber L, Cappuccilli G, Yee H, Bhatt RR, Takeuchi T, Lerner RA, Crea R. , A general method for greatly improving the affinity of antibodies by using combinatorial libraries., Proc Natl Acad Sci U S A. 2005 Jun 14;102(24):8466-71.)、フレームワーク(FR)のアミノ酸置換による物理化学的安定性の向上(Ewert S, Honegger A, Pluckthun A. , Stability improvement of antibodies for extracellular and intracellular applications: CDR grafting to stable frameworks and structure-based framework engineering. , Methods. 2004 Oct;34(2):184-99. Review)が報告されている。また、IgG抗体のFc領域のアミノ酸置換を施す技術として、抗体依存性細胞障害活性(ADCC)活性や補体依存性細胞障害活性(CDC)活性を増強させる技術が知られている(Kim SJ, Park Y, Hong HJ., Antibody engineering for the development of therapeutic antibodies., Mol Cells. 2005 Aug 31;20(1):17-29. Review.)。さらに、このようなエフェクター機能を増強させるだけではなく、抗体の血中半減期を向上させるFcのアミノ酸置換の技術が報告されている(Hinton PR, Xiong JM, Johlfs MG, Tang MT, Keller S, Tsurushita N., An engineered human IgG1 antibody with longer serum half-life.、 J Immunol. 2006 Jan 1;176(1):346-56.,Ghetie V, Popov S, Borvak J, Radu C, Matesoi D, Medesan C, Ober RJ, Ward ES., Increasing the serum persistence of an IgG fragment by random mutagenesis., Nat Biotechnol. 1997 Jul;15(7):637-40.)。さらには抗体の物性改善を目的とした定常領域の種々のアミノ酸置換技術も知られている(WO 09/41613)。
【0327】
また、ヒト抗体の取得方法も知られている。例えば、ヒトリンパ球をin vitroで所望の抗原又は所望の抗原を発現する細胞で感作し、感作リンパ球をヒトミエローマ細胞、例えばU266と融合させ、抗原への結合活性を有する所望のヒト抗体を得ることもできる(特公第平1-59878号公報参照)。また、ヒト抗体遺伝子の全てのレパートリーを有するトランスジェニック動物を抗原で免疫することで所望のヒト抗体を取得することができる(WO 93/12227、WO 92/03918、WO 94/02602、WO 94/25585、WO 96/34096、WO 96/33735参照)。さらに、ヒト抗体ライブラリを用いて、パンニングによりヒト抗体を取得する技術も知られている。例えば、ヒト抗体の可変領域を一本鎖抗体(scFv)としてファージディスプレイ法によりファージの表面に発現させ、抗原に結合するファージを選択することができる。選択されたファージの遺伝子を解析すれば、抗原に結合するヒト抗体の可変領域をコードするDNA配列を決定することができる。抗原に結合するscFvのDNA配列が明らかになれば、当該配列を含む適当な発現ベクターを作製し、ヒト抗体を取得することができる。これらの方法は既に周知であり、WO 92/01047、WO 92/20791、WO 93/06213、WO 93/11236、WO 93/19172、WO 95/01438、WO 95/15388を参考にすることができる。本発明の一つの側面において、使用される抗体には、このようなヒト抗体も含まれる。
【0328】
抗体遺伝子を一旦単離し、適当な宿主に導入して抗体を作製する場合には、適当な宿主と発現ベクターの組み合わせを使用することができる。真核細胞を宿主として使用する場合、動物細胞、植物細胞、真菌細胞を用いることができる。動物細胞としては、(1)哺乳類細胞、例えば、CHO、COS、ミエローマ、BHK (baby hamster kidney)、HeLa、Vero、(2)両生類細胞、例えば、アフリカツメガエル卵母細胞、あるいは(3) 虫細胞、例えば、sf9、sf21、Tn5などが知られている。植物細胞としては、ニコティアナ(Nicotiana)属、例えばニコティアナ・タバカム(Nicotiana tabacum)由来の細胞が知られており、これをカルス培養すればよい。真菌細胞としては、酵母、例えば、サッカロミセス(Saccharomyces)属、例えばサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces serevisiae)、糸状菌、例えば、アスペルギルス(Aspergillus)属、例えばアスペスギルス・ニガー(Aspergillus niger)などが知られている。原核細胞を使用する場合、細菌細胞を用いる産生系がある。細菌細胞としては、大腸菌(E. coli)、枯草菌が知られている。これらの細胞に、目的とする抗体遺伝子を形質転換により導入し、形質転換された細胞をin vitroで培養することにより抗体が得られる。
【0329】
さらに、医薬製剤において使用される抗体には、抗体修飾物が含まれる。例えば、ポリエチレングリコール(PEG)や細胞障害性薬剤等の各種分子と結合した抗体を使用することもできる(Farmaco. 1999 Aug 30;54(8): 497-516.、Cancer J. 2008 May-Jun;14(3):154-69)。このような抗体修飾物は、抗体に化学的な修飾を施すことによって得ることができる。これらの方法はこの分野において既に確立されている。
【0330】
本発明の一つの側面では、本開示における抗体はキメラ抗体であってもよい。キメラ抗体は、例えばUS Patent No. 4,816,567や Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851-6855 (1984)に記載されている。キメラ抗体は非ヒト可変領域(例えば、サルのような非ヒト霊長類、又は、マウス、ラット、ハムスター、若しくはウサギ等に由来する可変領域)とヒトの定常領域を含んでもよい。
【0331】
本発明の一つの側面では、本開示における抗体はヒト化抗体であってよい。典型的には、非ヒト抗体は、親の非ヒト抗体の特異性と親和性を維持しつつ、ヒトでの免疫原性を減少させるためにヒト化される。典型的には、ヒト化抗体は一つ以上の可変領域を含み、その中にはHVR、例えば非ヒト抗体に由来するCDR(又はその一部)と、ヒト抗体配列に由来するFR(又はその一部)とが存在する。ヒト化抗体は、任意に、ヒト定常領域の少なくとも一部を含むことができる。一実施態様において、ヒト化抗体内のFRのアミノ酸残基は、例えば、抗体の特異性や親和性を維持又は改善させるために、非ヒト抗体(例えばHVR残基の由来となった抗体)の対応するアミノ酸残基と置換されていてもよい。
【0332】
ヒト化抗体及びその作製方法は、例えば以下で総説されており(Almagro and Fransson, Front. Biosci. 13:1619-1633 (2008))、更に例えば以下に記載されている:Riechmann et al., Nature 332:323-329 (1988); Queen et al., Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 86:10029-10033 (1989); US Patent Nos. 5, 821,337, 7,527,791, 6,982,321, and 7,087,409; Kashmiri et al., Methods 36:25-34 (2005) (describing specificity determining region (SDR) grafting); Padlan, Mol. Immunol. 28:489-498 (1991) (describing "resurfacing"); Dall'Acqua et al., Methods 36:43-60 (2005) (describing "FR shuffling"); and Osbourn et al., Methods 36:61-68 (2005) and Klimka et al., Br. J. Cancer, 83:252-260 (2000) (describing the "guided selection" approach to FR shuffling)。
【0333】
本発明の一つの側面では、ヒト化に使われるであろうヒトフレームワークは、例えば、「ベストフィット」法(Sims et al. J. Immunol. 151:2296 (1993))を用いて選択されたフレームワーク、重鎖又は軽鎖の可変領域のある特定のサブグループのヒト抗体のコンセンサス配列に由来するフレームワーク(Carter et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:4285 (1992) and Presta et al. J. Immunol., 151:2623 (1993))、FRライブラリのスクリーニングに由来するフレームワーク領域を含んでいてもよい(Baca et al., J. Biol. Chem. 272:10678-10684 (1997) と Rosok et al., J. Biol. Chem. 271:22611-22618 (1996))。
【0334】
本発明の一つの側面では、本開示における抗体はヒト抗体であってもよい。ヒト抗体は様々な技術で作製することができる。ヒト抗体は例えばvan Dijk and van de Winkel, Curr. Opin. Pharmacol. 5: 368-374 (2001) や Lonberg, Curr. Opin. Immunol. 20:450-459 (2008)に概説される。ヒト抗体は抗原へ応答して完全ヒト抗体又はヒト可変領域を伴う完全抗体を産生するように改変されたトランスジェニック動物へ免疫原を投与することにより調製されてもよい。そのような動物は、典型的にはヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部若しくは一部分を含み、ヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部若しくは一部分は、内因性の免疫グロブリン遺伝子座を置き換えるか、又は、染色体外に若しくは当該動物の染色体内にランダムに取り込まれた状態で存在する。そのようなトランスジェニックマウスにおいて、内因性の免疫グロブリン遺伝子座は、通常不活性化されている。トランスジェニック動物からヒト抗体を得る方法の総説として、Lonberg, Nat. Biotech. 23:1117-1125 (2005) を参照。また、例えば、XENOMOUSE(商標)技術を記載したUS Patent No. 6,075,181、6,150,584号;HUMAB(登録商標)技術を記載したUS Patent No. 5,770,429;K-M MOUSE(登録商標)技術を記載したUS Patent No. 7,041,870;並びに、VELOCIMOUSE(登録商標)技術を記載したUS2007/0061900を参照。このような動物によって生成される完全抗体からのヒト可変領域は、例えば、異なるヒト定常領域と組み合わせるなどして、さらに修飾されてもよい。
【0335】
本発明の別の側面では、ヒト抗体はハイブリドーマに基づいた方法でも作製できる。ヒトモノクローナル抗体の産生のための、ヒトミエローマ細胞及びマウス‐ヒトヘテロミエローマ細胞株は以下に記述される(例えば、Kozbor J. Immunol., 133: 3001 (1984);Brodeur et al., Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, pp.51-63 (Marcel Dekker, Inc., New York, 1987);及びBoerner et al., J. Immunol., 147: 86 (1991))。ヒトB細胞ハイブリドーマ技術を介して生成されるヒト抗体はLi et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 103:3557-3562 (2006) に記述される。その他の方法としては、例えばUS Patent No. 7,189,826(ハイブリドーマ細胞株からのモノクローナルヒトIgM抗体の製造を記載)、及び、Ni, Xiandai Mianyixue, 26(4):265-268 (2006)(ヒト-ヒトハイブリドーマを記載)が挙げられてよい。ヒトハイブリドーマ技術(トリオーマ技術)は、Vollmers and Brandlein, Histology and Histopathology, 20(3):927-937 (2005) 及びVollmers and Brandlein, Methods and Findings in Experimental and Clinical Pharmacology, 27(3):185-91 (2005)に記載される。
【0336】
本発明の別の側面では、ヒト抗体は、ヒト由来ファージディスプレイライブラリから選択されるFvクローン可変ドメイン配列を単離することでも生成できる。このような可変領域配列は、次に所望のヒト定常領域と組み合わせることができる。抗体ライブラリからヒト抗体を選択する手法は以下を参照。
【0337】
本発明の一つの側面では、本開示における抗体は、所望の1つ又は複数の活性を有する抗体についてコンビナトリアルライブラリをスクリーニングすることによって単離してもよい。例えば、ファージディスプレイライブラリの作製方法や、所望の結合特性を有する抗体についてそのようなライブラリをスクリーニングする方法等が当該技術分野において知られている。そのような方法は、Hoogenboom et al. in Methods in Molecular Biology 178:1-37 (O'Brien et al., ed., Human Press, Totowa, NJ, 2001) で総説されており、さらに例えば、McCafferty et al., Nature 348:552-554;Clackson et al., Nature 352: 624-628 (1991); Marks et al., J. Mol. Biol. 222: 581-597 (1992); Marks and Bradbury, Molecular Biology 248:161-175 (Lo, ed., Human Press, Totowa, NJ, 2003); Sidhu et al., J. Mol. Biol. 338(2): 299-310 (2004); Lee et al., J. Mol. Biol. 340(5): 1073-1093 (2004); Fellouse, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101(34):12467-12472 (2004);Lee et al., J. Immunol. Methods 284(1-2): 119-132(2004) に記載される。
【0338】
本発明の一つの側面における特定のファージディスプレイ法において、VH及びVLのレパートリーは、ポリメラーゼ連鎖反応 (polymerase chain reaction: PCR) により別々にクローニングでき、無作為にファージライブラリ中で再結合され、当該ファージライブラリは、Winter et al., Ann. Rev. Immunol., 12: 433-455 (1994) で記載されるようにして、抗原結合ファージについてスクリーニングされてよい。ファージは、例えばscFvやFab といった抗体の結合断片を提示する。免疫化された供給源からのライブラリは、ハイブリドーマを構築することを要さずに免疫原に対する高親和性抗体を提供できる。別の実施態様において、Griffiths et al., EMBO J, 12: 725-734 (1993) に記載されるように、免疫化することなしに、ナイーブレパートリーを(例えば、ヒトから)クローニングして、広範な非自己又は自己抗原への単一由来の抗体を提供することもできる。さらなる別の実施態様において、ナイーブライブラリは、Hoogenboom and Winter, J. Mol. Biol., 227: 381-388 (1992) に記載されるように、幹細胞から再編成前のV-遺伝子セグメントをクローニングし、超可変領域CDR3をコードしかつin vitroで再構成を達成するための無作為配列を含んだPCRプライマーを用いることにより、合成的に作ることもできる。ヒト抗体ファージライブラリを記載した特許文献は、例えばUS Patent No. 5,750,373、US2005/0079574、US2005/0119455、US2005/0266000、US2007/0117126、US2007/0160598、US2007/0237764、US2007/0292936、US2009/0002360が挙げられる。
【0339】
ヒト抗体ライブラリから単離される抗体又はそれの結合断片は、本明細書においてヒト抗体又はヒト抗体の結合断片とみなす。
本発明の一つの側面では、本開示における抗体は、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)である。多重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる部位に結合特異性を有する抗体(例えばモノクローナル抗体)である。一実施態様において、結合特異性の一つは抗原に対するものであり、他はそれ以外の抗原に対するものである。別の実施態様において、二重特異性抗体は、抗原の異なった2つのエピトープに結合してもよい。二重特異性抗体は、抗原を発現する細胞に細胞傷害剤を局在化するために使用されてもよい。二重特異性抗体は、全長抗体として又は抗体の結合断片として調製されてよい。
【0340】
多重特異性抗体の作製手法としては、限定はされないが、異なる特異性を有する2つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖ペアの組換え共発現(例えばMilstein and Cuello, Nature 305: 537 (1983)、WO93/08829、及びTraunecker et al., EMBO J. 10: 3655 (1991))、及びknob-in-hole技術(例えばUS Patent No. 5,731,168)が挙げられる。多重特異性抗体は、Fcヘテロ二量体分子を作製するために静電ステアリング効果 (electrostatic steering effects) を操作すること (例えばWO2009/089004A1);2つ以上の抗体又はそれの結合断片を架橋すること(例えばUS Patent No. 4,676,980及びBrennan et al., Science, 229: 81(1985));ロイシンジッパーを用いて2つの特異性を有する抗体を作成すること(例えばKostelny et al., J. Immunol., 148(5):1547-1553 (1992));「ダイアボディ」技術を用いて二重特異性結合断片を作製すること(例えばHollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:6444-6448 (1993));scFvダイマーを用いること(例えばGruber et al., J. Immunol., 152:5368 (1994));三重特異性抗体を調製すること(例えばTutt et al. J. Immunol. 147: 60 (1991))によって作製してもよい。さらに、「オクトパス抗体」を含む、3つ以上の機能的抗原結合部位を有するように操作された抗体であってもよい(例えばUS2006/0025576)。
【0341】
本発明の一つの側面では、本開示における抗体又はそれの結合断片は、抗原と別の異なる抗原とに結合する1つの抗原結合部位を含む、「デュアルアクティングFab」又は「DAF」であってもよい(例えばUS2008/0069820)。
【0342】
本発明の一つの側面では、本開示における抗体のアミノ酸配列の改変体(変異体)は、抗体の分子をコードする核酸に適当な修飾を導入したり、又は、ペプチドを合成することで調製し得る。このような修飾は、アミノ酸配列中への、任意のアミノ酸(残基)の任意の欠失、挿入、置換を一又は複数、適宜組み合わせて行ってよい。最終構築物が所望の特徴(例えば、抗原結合性)を有する限り、欠失、挿入、置換の任意の組合せが利用できる。
【0343】
本発明の一つの側面では、一又は複数のアミノ酸置換を行った抗体改変体(変異体)が提供される場合には、置換的変異導入の目的部位は、HVR及びFRを含み得る。
医薬製剤において使用される抗体としては、抗組織因子抗体、抗IL-6レセプター抗体、抗IL-6抗体、抗グリピカン-3抗体、抗CD3抗体、抗CD20抗体、抗GPIIb/IIIa抗体、抗TNF抗体、抗CD25抗体、抗EGFR抗体、抗Her2/neu抗体、抗RSV抗体、抗CD33抗体、抗CD52抗体、抗IgE抗体、抗CD11a抗体、抗VEGF抗体、抗VLA4抗体、抗HM1.24抗原抗体、抗副甲状腺ホルモン関連ペプチド抗体(抗PTHrP抗体)、抗ガングリオシドGM3抗体、抗TPO受容体アゴニスト抗体、凝固第VIII因子代替抗体、抗IL31レセプター抗体、抗HLA抗体、抗AXL抗体、抗CXCR4抗体、抗NR10抗体、ファクターIXとファクターXとのバイスペシフィック抗体などを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0344】
医薬製剤において使用する好ましい再構成ヒト化抗体としては、ヒト化抗インターロイキン6(IL-6)レセプター抗体(トシリズマブ、hPM-1あるいはMRA、WO92/19759参照)、ヒト化抗HM1.24抗原モノクローナル抗体(WO98/14580参照)、ヒト化抗副甲状腺ホルモン関連ペプチド抗体(抗PTHrP抗体)(WO98/13388を参照)、ヒト化抗組織因子抗体(WO99/51743参照)、抗グリピカン-3 ヒト化IgG1κ抗体(codrituzumab、GC33、WO2006/006693参照)、抗NR10ヒト化抗体(WO2009/072604参照)、ファクターIXとファクターXとのバイスペシフィックヒト化抗体(ACE910、WO2012/067176を参照)などが挙げられる。
本発明の一つの側面において、シリンジに充填される溶液に含まれる有効成分は、エミシズマブ、トシリズマブ、サトラリズマブから選択される抗体である。エミシズマブ、トシリズマブ、およびサトラリズマブは、例えば、それぞれヘムライブラ(登録商標)、アクテムラ(登録商標)およびエンスプリング(登録商標)に有効成分として含まれる抗体であり、それぞれのアミノ酸配列は公知である。本明細書において、エミシズマブ、トシリズマブ、およびサトラリズマブとの用語により特定される抗体は、これらの抗体とアミノ酸配列が実質的に同一であり、同質の薬効を有する抗体を包含する。
【0345】
本発明の一つの側面において、医薬製剤は、必要に応じて、適当な薬学的に許容される担体、媒体等と混和して調製し、溶液製剤とすることができる。溶液製剤の溶媒は、水又は薬学的に許容される有機溶媒である。そのような有機溶媒としては、例えば、プロピレングリコール(1,2-プロパンジオール)、ポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400、エタノール、グリセロール、酢酸などが挙げられる。適当な薬学的に許容される担体、媒体としては、例えば、滅菌水や生理食塩水、安定化剤、酸化防止剤(アスコルビン酸等)、緩衝剤(リン酸、クエン酸、ヒスチジン、他の有機酸等)、防腐剤、界面活性剤(PEG、Tween等)、キレート剤(EDTA等)、結合剤等を挙げることができる。また、その他の低分子量のポリペプチド、血清アルブミン、ゼラチンや免疫グロブリン等の蛋白質、グリシン、グルタミン、アスパラギン、グルタミン酸、アスパラギン酸、メチオニン、アルギニン及びリシン等のアミノ酸、多糖及び単糖等の糖類や炭水化物、マンニトールやソルビトール等の糖アルコールを含んでいてもよい。注射用の溶液とする場合には、例えば生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液、例えば、D-ソルビトール、D-マンノース、D-マンニトール、塩化ナトリウムが挙げられ、適当な溶解補助剤、例えばアルコール(エタノール等)、ポリアルコール(プロピレングリコール、PEG等)、非イオン性界面活性剤(ポリソルベート80、ポリソルベート20、ポロキサマー188、HCO-50)等と併用してもよい。
【0346】
本発明の一つの側面において、溶液製剤において使用する緩衝剤は、溶液のpHを維持するための物質を使用して調製する。本発明の一つの側面において、高濃度抗体含有溶液製剤においては、溶液のpHが4.5~7.5であることが好ましく、5.0~7.0であることがより好ましく、5.5~6.5であることがさらに好ましい。本発明の一つの側面において、使用可能な緩衝剤は、この範囲のpHを調整でき、且つ医薬的に許容可能なものである。このような緩衝剤は溶液製剤の分野で当業者に公知であり、例えば、リン酸塩(ナトリウム又はカリウム)、炭酸水素ナトリウムなどの無機塩;クエン酸塩(ナトリウム又はカリウム)、酢酸ナトリウム、コハク酸ナトリウムなどの有機酸塩;又は、リン酸、炭酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、グルコン酸などの酸類を使用できる。さらに、Tris類及びMES、MOPS、HEPESのようなグッド緩衝剤、ヒスチジン(例えばヒスチジン塩酸塩)、グリシンなどを使用してもよい。
【0347】
緩衝剤の濃度は、一般には1~500mmol/Lであり、好ましくは5~100mmol/Lであり、さらに好ましくは10~20mmol/Lである。ヒスチジン緩衝剤を使用する場合、緩衝剤は好ましくは5~25mmol/Lのヒスチジン、さらに好ましくは10~20mmol/Lのヒスチジンを含有する。
【0348】
本発明の一つの側面において、高濃度抗体含有溶液製剤は、有効成分である抗体にとって適切な安定化剤を添加することによって、安定化されることが好ましい。本発明の一つの側面において、「安定な」高濃度抗体含有溶液製剤は、冷蔵温度(2~8℃)で少なくとも12ヶ月、好ましくは2年間、さらに好ましくは3年間;又は室温(22~28℃)で少なくとも3ヶ月、好ましくは6ヶ月、さらに好ましくは1年間、有意な変化が観察されない。例えば、5℃で2年間保存後の二量体量及び分解物量の合計が5.0%以下、好ましくは2%以下、さらに好ましくは1.5%以下、あるいは25℃で6ヶ月保存後の二量体量及び分解物量の合計が5.0%以下、好ましくは2%以下、さらに好ましくは1.5%以下である。
【0349】
本発明の一つの側面において、界面活性剤としては、非イオン界面活性剤、例えばソルビタンモノカプリレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート等のソルビタン脂肪酸エステル;グリセリンモノカプリレート、グリセリンモノミリステート、グリセリンモノステアレート等のグリセリン脂肪酸エステル;デカグリセリルモノステアレート、デカグリセリルジステアレート、デカグリセリルモノリノレート等のポリグリセリン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンソルビットテトラステアレート、ポリオキシエチレンソルビットテトラオレエート等のポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル;ポリオキシエチレングリセリルモノステアレート等のポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル;ポリエチレングリコールジステアレート等のポリエチレングリコール脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンプロピルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル等のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル;ポリオキシエチエレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル;ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(ポリオキシエチレン水素ヒマシ油)等のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油;ポリオキシエチレンソルビットミツロウ等のポリオキシエチレンミツロウ誘導体;ポリオキシエチレンラノリン等のポリオキシエチレンラノリン誘導体;ポリオキシエチレンステアリン酸アミド等のポリオキシエチレン脂肪酸アミド等のHLB6~18を有するもの;陰イオン界面活性剤、例えばセチル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、オレイル硫酸ナトリウム等の炭素原子数10~18のアルキル基を有するアルキル硫酸塩;ポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム等の、エチレンオキシドの平均付加モル数が2~4でアルキル基の炭素原子数が10~18であるポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩;ラウリルスルホコハク酸エステルナトリウム等の、アルキル基の炭素原子数が8~18のアルキルスルホコハク酸エステル塩;天然系の界面活性剤、例えばレシチン、グリセロリン脂質;スフィンゴミエリン等のフィンゴリン脂質;炭素原子数12~18の脂肪酸のショ糖脂肪酸エステル等を典型的例として挙げることができる。本発明の一つの側面において、製剤には、これらの界面活性剤の1種又は2種以上を組み合わせて添加することができる。
【0350】
好ましい界面活性剤はポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルであり、特に好ましいのはポリソルベート20、21、40、60、65、80、81、85並びにプルロニック(登録商標)型界面活性剤であり、最も好ましいのはポリソルベート20、80及びプルロニックF-68(ポロキサマー188)である。
【0351】
本発明の一つの側面において、抗体製剤に添加する界面活性剤の添加量は、一般には0.0001~10%(mg/mL)であり、好ましくは0.001~5%であり、さらに好ましくは0.005~3%である。
【0352】
また本発明の製剤には、必要に応じて、凍結保護剤、懸濁剤、溶解補助剤、等張化剤、保存剤、吸着防止剤、希釈剤、賦形剤、pH調整剤、無痛化剤、含硫還元剤、酸化防止剤等を適宜添加することができる。
【0353】
凍結保護剤として例えば、トレハロース、ショ糖、ソルビトール等の糖類を挙げることができる。
溶解補助剤として例えば、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリソルベート80、ニコチン酸アミド、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、マグロゴール、ヒマシ油脂肪酸エチルエステル等を挙げることができる。
【0354】
等張化剤として例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム等を挙げることができる。
保存剤として例えば、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、ソルビン酸、フェノール、クレゾール、クロロクレゾール等を挙げることができる。
【0355】
吸着防止剤として例えば、ヒト血清アルブミン、レシチン、デキストラン、エチレンオキサイド・プロピレンオキサイド共重合体、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリエチレングリコール等を挙げることができる。
【0356】
含硫還元剤として例えば、N-アセチルシステイン、N-アセチルホモシステイン、チオクト酸、チオジグリコール、チオエタノールアミン、チオグリセロール、チオソルビトール、チオグリコール酸及びその塩、チオ硫酸ナトリウム、グルタチオン、炭素原子数1~7のチオアルカン酸等のスルフヒドリル基を有するもの等が挙げられる。
【0357】
酸化防止剤として例えば、エリソルビン酸、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、α-トコフェロール、酢酸トコフェロール、L-アスコルビン酸及びその塩、L-アスコルビン酸パルミテート、L-アスコルビン酸ステアレート、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、没食子酸トリアミル、没食子酸プロピルあるいはエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(EDTA)、ピロリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム等のキレート剤が挙げられる。
【0358】
本発明の一つの側面において、医薬製剤は、自己免疫疾患、免疫疾患、感染症、炎症性疾患、神経系疾患、ならびに癌を含む腫瘍疾患及び新生物疾患の治療用である。特定の実施形態では、医薬の使用は、うっ血性心不全(CHF)、虚血誘発性重症不整脈、高コレステロール血症、脈管炎、しゅさ、ざ瘡、湿疹、心筋炎及び心筋の他の状態、川崎病、全身性エリテマトーデス、糖尿病、脊椎症、滑膜線維芽細胞、ならびに骨髄間質;骨量減少;パジェット病、骨巨細胞腫;乳癌;廃用性骨減少;栄養失調、歯周疾患、ゴーシェ病、ランゲルハンス細胞組織球増殖症、脊髄損傷、急性化膿性関節炎、骨軟化症、クッシング症候群、単骨性線維性骨異形成、多骨性線維性骨異形成、歯根膜再構築、及び骨折;サルコイドーシス;黒色腫、前立腺癌、膵臓癌、溶骨性骨癌、乳癌、肺癌、胃癌、腎癌、及び直腸癌;骨転移、骨痛管理、及び体液性悪性高カルシウム血症、強直性脊椎炎、ならびに他の脊椎関節症;移植拒絶反応、ウイルス感染症、血液新生物、及び新生物様の状態、例えばホジキンリンパ腫;非ホジキンリンパ腫(バーキットリンパ腫、小リンパ球性リンパ腫/慢性リンパ性白血病、菌状息肉腫、マントル細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、辺縁層リンパ腫、ヘアリーセル白血病、及びリンパ形質細胞性白血病)、B細胞急性リンパ芽球性白血病/リンパ腫及びT細胞急性リンパ芽球性白血病/リンパ腫を含む、リンパ球前駆細胞の腫瘍、胸腺腫、末梢T細胞白血病、成人T細胞白血病/T細胞リンパ腫、及び大顆粒リンパ球性白血病を含む、成熟T細胞及び成熟NK細胞の腫瘍、ランゲルハンス細胞組織球増加症、成熟を伴うAML、分化を伴わないAML、急性前骨髄球性白血病、急性骨髄単球性白血病、及び急性単球性白血病を含む急性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、ならびに慢性骨髄性白血病を含む慢性骨髄増殖性疾患などのような骨髄新生物、中枢神経系の腫瘍、例えば脳腫瘍(神経膠腫、神経芽細胞腫、星状細胞腫、髄芽細胞腫、脳室上衣腫、及び網膜芽細胞腫)、固形腫瘍(鼻咽腔癌、基底細胞癌、膵癌、胆管癌、カポジ肉腫、精巣癌、子宮癌、膣癌、もしくは子宮頸癌、卵巣癌、原発性肝癌、又は子宮内膜癌、ならびに血管系の腫瘍(血管肉腫及び血管外皮細胞腫)、骨粗鬆症、肝炎、HIV、AIDS、脊椎関節炎、関節リウマチ、炎症性腸疾患(IBD)、敗血症及び敗血症性ショック、クローン病、乾癬、強皮症、移植片対宿主病(GVHD)、同種異系島移植片拒絶、多発性骨髄腫(MM)、骨髄異形成症候群(MDS)、及び急性骨髄性白血病(AML)などのような血液悪性疾患、腫瘍と関連する炎症、末梢神経損傷、又は脱髄疾患の治療用である。特定の実施形態では、医薬の使用は、尋常性乾癬、膵臓炎、潰瘍性大腸炎、非ホジキンリンパ腫、乳癌、結腸直腸癌、中皮腫、軟部肉腫、若年性特発性関節炎、黄斑変性、呼吸器合胞体ウイルス、クローン病、関節リウマチ、乾癬性関節炎、キャッスルマン病、強直性脊椎炎、骨粗鬆症、治療誘発性の骨量減少、骨転移、多発性骨髄腫、アルツハイマー病、緑内障、シェーグレン病、スティル病、多発性硬化症、高免疫グロブリン血症、貧血、メサンギュウム増殖性腎炎、及び喘息の治療用である。
【0359】
本発明の一つの側面において、抗体が特異的結合性を有する抗原は、膜貫通分子(例えば、受容体)又は増殖因子などのリガンドであり得る。例示的な抗原としては、分子、例えばレニン;ヒト成長ホルモン及びウシ成長ホルモンを含む成長ホルモン;成長ホルモン放出因子;副甲状腺ホルモン;甲状腺刺激ホルモン;リポタンパク質;α-1-抗トリプシン;インスリンA鎖;インスリンB鎖;プロインスリン;卵胞刺激ホルモン;カルシトニン;黄体形成ホルモン;グルカゴン;因子VIIIC、因子IX、組織因子(TF)及びフォンヴィレブランド因子などの凝固因子;プロテインCなどの抗凝固因子;心房性ナトリウム利尿因子;肺界面活性剤;ウロキナーゼ又はヒト尿又は組織型プラスミノーゲン活性化因子(t-PA)などのプラスミノーゲン活性化因子;ボンベシン;トロンビン;造血性増殖因子;腫瘍壊死因子-α及び-β;エンケファリナーゼ;RANTES(regulated on activation normally T-cell expressed and secreted);ヒトマクロファージ炎症性タンパク質(MIP-1-α);ヒト血清アルブミンなどの血清アルブミン;ミュラー管阻害物質;リラキシンA鎖;リラキシンB鎖;プロリラキシン;マウス性腺刺激ホルモン関連ペプチド;βラクタマーゼなどの微生物タンパク質;DNAse;IgE;CTLA-4などの細胞傷害性T-リンパ球関連抗原(CTLA);インヒビン;アクチビン;血管内皮細胞増殖因子(VEGF);ホルモン又は増殖因子の受容体;プロテインA又はD;リウマチ因子;神経栄養因子、例えば骨由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン-3、-4、-5、又は-6(NT-3、NT-4、NT-5、又はNT-6)、又は神経増殖因子、例えばNGF-b;血小板由来増殖因子(PDGF);aFGF及びbFGFなどの繊維芽細胞増殖因子;上皮増殖因子(EGF);TGF-α及びTGF-b1、TGF-b2、TGF-b3、TGF-b4、又はTGF-b5を含むTGF-βなどのトランスフォーミング増殖因子(TGF);TNF-α又はTNF-βなどの腫瘍壊死因子(TNF);インスリン様増殖因子-I及び-II(IGF-I及びIGF-II);des(1-3)-IGF-I(脳IGF-I)、インスリン様増殖因子結合タンパク質;CD3、CD4、CD8、CD19、CD20、CD22及びCD40などのCDタンパク質;エリスロポエチン;骨誘導因子;抗毒素;骨形成タンパク質(BMP);インターフェロン-α、-β及び-γなどのインターフェロン;例えば、M-CSF、GM-CSF、G-CSFなどのコロニー刺激因子(CSF);例えば、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9及びIL-10などのインターロイキン(IL);スーパーオキシドジスムターゼ;T細胞受容体;表面膜タンパク質;崩壊促進因子;例えば、AIDSエンベロープの一部などのウイルス抗原;輸送タンパク質;ホーミング受容体;アドレシン;制御タンパク質;CD11a、CD11b、CD11c、CD18、ICAM、VLA-4及びVCAMなどのインテグリン;HER2、HER3又はHER4受容体などの腫瘍関連抗原;並びに上記列挙されたポリペプチドの何れかの断片が挙げられる。
【0360】
本発明の一つの側面において、包含される抗体の例示的な分子標的としては、CDタンパク質、例えばCD3、CD4、CD8、CD19、CD20、CD22、CD34及びCD40;EGF受容体、HER2、HER3又はHER4受容体などのErbB受容体ファミリーのメンバー;B細胞表面抗原、例えばCD20又はBR3;DR5を含む腫瘍壊死受容体スーパーファミリーのメンバー;前立腺幹細胞抗原(PSCA);LFA-1、Mac1、p150.95、VLA-4、ICAM-1、VCAM、α4/β7インテグリン、及びそのα又はβサブユニットの何れかを含むαv/β3インテグリン(例えば、抗CD11a、抗CD18又は抗CD11b抗体)などの細胞接着分子;増殖因子、例えばVEGF及びその受容体;組織因子(TF);腫瘍壊死因子(TNF)、例えばTNF-α又はTNF-β、αインターフェロン(α-IFN);IL-8などのインターロイキン;IgE;血液型抗原;flk2/flk3受容体;肥満(OB)受容体;mp1受容体;CTLA-4;プロテインCなどが挙げられる。
【0361】
(4)粒子
本発明の一つの側面において、「目視により検出可能な粒子を除去する」とは、所定の条件において目視により検出可能な粒子が発生する医薬製剤の溶液において、シリンジから溶液を注出する際にバレル内に設けられたフィルターを介して注出することによって、注出された溶液から目視により検出可能な粒子を除去することを指す。本発明の一つの側面において、注出された溶液において目視により検出可能な粒子は0となる。粒子のサイズや数は、光遮蔽粒子計数法、顕微鏡粒子計数法、フローサイト粒子画像解析法、目視検査、粒子を単離した後に顕微赤外分光(infrared spectroscopy;IR)測定や顕微ラマン分光測定することで測定可能であり、好ましくは目視検査と顕微赤外分光又は顕微ラマン分光測定の組み合わせで測定する。
【0362】
(5)目視により検出可能な粒子
本明細書において、目視により検出可能な粒子とは、高照度で目視により検出可能な粒子であり、40μm以上の粒径を有する。このうち、薬局方に規定されている標準照度(2,000-3,000lx程度)で目視により検出可能な粒子を「可視粒子」又は「不溶性可視性粒子」と呼ぶ。可視粒子は一般的に100μmより大きい粒径を有する(非特許文献1)。可視粒子よりも小さいサイズで、薬局方に規定されている標準照度(2,000-3,000lx程度)では目で見えないが照度を上げたり、観察時間を長くすることで目視により検出可能な粒子は「高照度でのみ目視により検出可能な粒子」であり、40μm~100μmの粒径を有する。可視粒子は、照明下、標準照度(2,000-3,000lx程度)において、黒色背景又は白色背景の前で容器を緩やかに旋回又は転倒させて5秒以上、肉眼で目視検査することにより確認される。高照度でのみ目視により検出可能な粒子は、照明下、高照度(6,000lx以上)において、黒色背景の前で容器を緩やかに旋回又は転倒させて30秒以上、肉眼で目視検査することにより確認される。高照度における検査では可視粒子も確認可能である。
【0363】
本明細書において「タンパク質由来粒子」又は「溶液の成分由来の粒子」とは、タンパク質のみからなる粒子並びにタンパク質とポリジメチルシロキサン(PDMS)の複合体からなる粒子を含む、タンパク質から生成された目視により検出可能な粒子を指す。粒子がタンパク質分子によるものであることは、顕微ラマン分光測定によって確認することができる。溶液中にタンパク質として含まれるのは医薬有効成分(API)のみであり、目視により検出可能な粒子はAPIから生じたものである。目視により検出可能な粒子の数は、光遮蔽粒子計数法、顕微鏡粒子計数法、フローサイト粒子画像解析法、目視検査、粒子を単離した後に顕微赤外分光(infrared spectroscopy;IR)測定や顕微ラマン分光測定することで測定可能であり、好ましくは目視検査と顕微赤外分光又は顕微ラマン分光測定の組み合わせにより測定される。
【0364】
本明細書において「外来性粒子」又は「溶液の成分以外に由来する粒子」とは、上記以外の目視により検出可能な粒子を指す。
本明細書において「凝集体」とは、変性したタンパク質が多数集まることにより生じた比較的高分子量のタンパク質種で、「高分子種」及び「HMWS」という用語と互換的に使用される。タンパク質凝集体は、概して以下の点で異なり得る:サイズ(小型(2量体)~大型(顕微鏡で確認可能な粒子またはさらに可視粒子)の集合体であり、直径はナノメートル~マイクロメートルの範囲)、形態(概ね球状~繊維状)、タンパク質構造(ナイーブ対非ネイティブ/変性)、分子間結合のタイプ(共有対非共有)、可逆性、及び可溶性。可溶性の凝集体はおよそ1~100nmのサイズ範囲を網羅し、タンパク質粒子は顕微鏡で確認可能な(約0.1~100μm)範囲及び可視(>100μm)範囲を網羅する。前述のタイプのタンパク質凝集体全てが、概して当該用語に包含される。したがって、「(タンパク質)凝集体」という用語は、2つ以上のタンパク質モノマーが物理的に会合したまたは化学的に結合したあらゆる種類の非ネイティブ種を指す。
【0365】
本発明の一つの側面において、「プレフィルドシリンジ」とは、容器としてのシリンジに、液体組成物が充填されているシリンジを意味する。ある態様において、プレフィルドシリンジは、患者に投与するための医薬組成物がシリンジ内に充填されている。ここで、シリンジはシリンジクロージャー、例えば、限定はされないもののストッパーによって蓋がされていてもよい。ある態様において、組成物は製造用充填施設においてシリンジ内に入れられる。ある態様において、シリンジは、シリンジ内に組成物を入れる前に滅菌される。ある態様において、プレフィルドシリンジは、患者に対する組成物の投与の前に、1日、又は少なくとも7日、又は少なくとも14日、又は少なくとも1ヶ月、又は少なくとも6ヶ月、又は少なくとも1年、又は少なくとも2年の保存期間を有する。ある態様において、プレフィルドシリンジは、製造時、または流通時において通常予想されるレベルのストレスが負荷されてもシリンジ内の溶液がフィルターと非接触に保たれる。
【実施例
【0366】
実施例1 微粒子除去能の高いフィルター材質の選定
抗体溶液(サトラリズマブ(mAb1):120mg/mL、緩衝剤:20mmol/Lのヒスチジン、安定化剤:150mmol/Lのアルギニン及び162mmol/Lのアスパラギン酸、界面活性剤:0.50mg/mLのポロキサマー188、pH6.0)を通常の27G針付COP製シリンジ(1mL規格)及びそれぞれ異なる材質(ポリエーテルスルホン(PES)(Supor(登録商標);日本ポール株式会社)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)(Durapore(登録商標);メルク株式会社)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン、ポリスルホン(Asymmetric Super Micron Polysulfone;日本ポール株式会社)、疎水性アクリル共重合体(VERSAPOR(登録商標);日本ポール株式会社))の孔径5μmのフィルターをそれぞれ内蔵した計6種の27G針付COP製シリンジ(1mL規格)のそれぞれの内部に、1.0mLの溶液を充填してストッパーで打栓した。抗体溶液は、25℃及び40℃で保存することで、製剤中の微粒子量を意図的に増加させた上で試験に供した。抗体溶液はフィルターと接触していた。充填・打栓したサンプルについて、シリンジ内の抗体溶液を、オートグラフ(型番:AG-1、島津製作所製)を用いて、速度210mm/分または100mm/分にて洗浄滅菌済みの清浄なガラスバイアルに排出した。本排出溶液または原液に適当な倍率でリン酸緩衝生理食塩水を加えて、その後20回転倒混和し、2時間静置した。測定直前にゆっくり3回転倒混和した。試行1、2はマイクロフローイメージング装置(型番:DPA4100、Bright WELL社製)、試行3はマイクロフローイメージング装置(型番:MFI5200、protein simple社製)を用いて、溶液中の微粒子数を測定した。
【0367】
[評価結果]
通常の27G針付COP製シリンジ及び各種フィルターをそれぞれ内蔵した27G針付COP製シリンジ排出後における溶液中の10μm以上、25μm以上の微粒子数を表1に示す。
【0368】
その結果、抗体溶液をPES、PVDF、ポリスルホン、疎水性アクリル共重合体製のフィルターを内蔵したシリンジから排出した場合、溶液中の微粒子量が大きく低減可能な一方、PETまたはナイロン製のフィルターを内蔵したシリンジから排出した場合には、溶液中の微粒子量の低減が不十分であることが分かった。これらの違いは、PES、PVDF、ポリスルホン、疎水性アクリル共重合体製のフィルターはいずれもメンブレンフィルターであるのに対して、PET、ナイロン製のフィルターはデプスフィルターの一種であるネットフィルターであることが原因として考えられた。
【0369】
【表1】
【0370】
実施例2 最適なフィルター孔径の選定
抗体溶液(サトラリズマブ(mAb1):120mg/mL、緩衝剤:20mmol/Lのヒスチジン、安定化剤:150mmol/Lのアルギニン及び162mmol/Lのアスパラギン酸、界面活性剤:0.50mg/mLのポロキサマー188、pH6.0)を直径47mmの円形に打ち抜いたPESの孔径1.2μmまたは孔径5μmフィルターを配置したステンレス製のフィルターユニットを通してろ過し、清浄なプラスチック容器に回収した。回収された本溶液または原液に適当な倍率でリン酸緩衝生理食塩水を加えて、その後20回、転倒混和し、2時間静置した。測定直前にゆっくり3回、転倒混和し、マイクロフローイメージング装置(型番:MFI5200、protein simple社製)を用いて、溶液中の微粒子数を測定した。なお、抗体溶液は、実施例1と同様に、25℃及び40℃で保存することで、製剤中の微粒子量を意図的に増加させた上で試験に供した。
【0371】
[評価結果]
原液及び孔径1.2μmまたは孔径5μmのフィルターでろ過したサンプル溶液中の25μm以上、70μm以上の粒子数を表2に示す。
【0372】
その結果、孔径1.2μmと孔径5μmのフィルターでろ過した場合、溶液中の粒子量低減能は大差がなく、孔径は5μm程度のサイズであれば十分であることが明らかになった。また、圧力70kPaにおける水流量は、孔径1.2μmの場合は315mL/分/cmであり、孔径5μmの場合は778mL/分/cmである。そのため、フィルター導入に伴う注出抵抗は孔径5μmの場合と比較して孔径1.2μmでは約2.5倍となる。達成すべき粒子低減能と注出抵抗上昇のバランスを鑑みて、孔径5μmが最適であると判断した。
【0373】
また、スクロース溶液(粘度7cP)を疎水性アクリル共重合体(孔径5μm)フィルターを内蔵した27G針付COP製シリンジ(1mL規格)内に、1.0mL充填してストッパーで打栓した。スクロース溶液はフィルターと非接触の状態で維持された。充填・打栓したサンプルについて、シリンジ内のスクロース溶液をオートグラフ(型番:AG-1、島津製作所製)を用いて、速度100mm/分または210/分にて適当な容器に排出した。10mm~25mmの平均摺動抵抗値を表3に示す。平均摺動抵抗値はオートグラフで取得されたデータを基に、計算によって求めた。
【0374】
その結果、フィルター内蔵シリンジの平均摺動抵抗値は通常のシリンジの1.3倍以内となり、フィルターが存在しているにも関わらず、十分低値に抑えられていることが分かった。
【0375】
【表2】

【0376】
【表3】
【0377】
実施例3 フィルター耐久性の評価
3種類のスクロース溶液(粘度10cP、15cP、20cP)を疎水性アクリル共重合体(孔径5μm)フィルターを内蔵した27G針付COP製シリンジ(1mL規格)内に、1.0mL充填してストッパーで打栓した。また、シムジア(登録商標):皮下注200mgオートクリックスから薬液を排出し、疎水性アクリル共重合体(孔径5μm)フィルターを内蔵した27G針付COP製シリンジ(1mL規格)内に、1.0mL充填してストッパーで打栓した。シムジア溶液の粘度をEMS粘度計(型式:EMS-1000、京都電子工業社製)で測定したところ,25℃において96.4cPであった。スクロース溶液及び、シムジア溶液はフィルターと非接触の状態で維持された。充填・打栓したサンプルについて、シリンジ内のスクロース溶液をオートグラフ(型番:AG-1、島津製作所製)を用いて、速度1000mm/分にて適当な容器に排出した。また、シリンジ内のシムジア溶液をマニュアルで排出した(N=10)。ストップウオッチで排出時間を計測し、速度を算出した。排出後のシリンジからフィルターユニットを取り出して、フィルターの破損有無を確認した。
【0378】
[評価結果]
速度1000mm/分で粘度10-20cPのスクロース溶液を排出した際の最大荷重、及び排出後のフィルターの破損有無を表4に示す。マニュアルで粘度96.4cPのシムジア溶液を排出した際の排出速度、及び排出後のフィルターの破損有無を表5に示す。また、正常なフィルターと破損したフィルターの例を図22に示す。評価の結果、全てのサンプルにおいてフィルターの破損は認められず、十分な耐久性を有しており、幅広い薬剤に対して使用可能であることが分かった。
【0379】
【表4】
【0380】
【表5】

【0381】
実施例4 タンパク性異物除去能の評価
以下の3種類の医薬製剤を評価に使用した:
[製剤1]アクテムラ(登録商標)(有効成分:トシリズマブ):皮下注162mg;
[製剤2]ヘムライブラ(登録商標)(有効成分:エミシズマブ):皮下注150mg;
[製剤3]エンスプリング(登録商標)(有効成分:サトラリズマブ):皮下注120mg。
【0382】
各製剤をプラスチック容器に排出した後に、疎水性アクリル共重合体(孔径5μm)フィルターを内蔵した27G針付COP製シリンジ(1mL規格)内に、それぞれ1.0mL充填してストッパーで打栓した。なお、製剤1については製剤2と製剤3と同一のバッファー成分(緩衝剤:20mmol/Lのヒスチジン、安定化剤:150mmol/Lのアルギニン及び162mmol/Lのアスパラギン酸、界面活性剤:0.50mg/mLのポロキサマー188、pH6.0)にバッファー置換した後のサンプルを用いた。本サンプルを40℃にて保存することで、シリンジ内部で意図的にタンパク性の異物を生成させた。タンパク性異物を含有したサンプル(N=5)を各製剤について作成し、溶液排出前に白色光源の直下の約10,000lxの明るさの位置で、黒色の背景の前でシリンジを緩やかに旋回又は転倒させ、肉眼で約30秒目視検査を実施することによってシリンジに充填された溶液中の異物存在有無及び存在する場合はその個数を確認した。また、照度3,000lx程度においても、黒色及び白色の背景の前でシリンジを緩やかに旋回又は転倒させ、肉眼で約30秒目視検査を実施することによってシリンジに充填された溶液中の異物存在有無及び存在する場合はその個数を確認した。シリンジ内部のタンパク異物の個数は照度約10,000lxで少ないサンプルで1個、多いサンプルで10個以上確認された。また、照度約3,000lxでは0個~4個であった。充填・打栓したサンプルについて、手動で洗浄滅菌済みの清浄なガラスバイアルに排出した。排出後に照度約10,000lx及び3,000lx程度でバイアル内部の異物存在有無及び存在する場合はその個数を確認した。
【0383】
[評価結果]
疎水性アクリル共重合体(孔径5μm)フィルターを内蔵した27G針付COP製シリンジ排出後におけるタンパク性異物存在率、タンパク性異物個数を表6及び7に示す。その結果、孔径5μmの疎水性アクリル共重合体製のフィルターを内蔵したシリンジで排出すると、10種類すべてのタンパク性異物を適切に除去できることを確認した。
【0384】
【表6】
【0385】
【表7】
【0386】
上記3種類の製剤以外の上市済みの5種類のプレフィルドシリンジ製剤またはバイアル製剤についても同様の試験を行った。そのうち、3剤は皮下注、2剤は点滴静注であった。本サンプルを容器から排出後、プラスチックチューブ中で40℃にて保存することで、意図的にタンパク性の異物を生成させた。本溶液を疎水性アクリル共重合体(孔径5μm)フィルターを内蔵した27G針付COP製シリンジ(1mL規格)内に、それぞれ1.0mL充填してストッパーで打栓した。それら5種類の製剤の試験結果として、観察照度10,000lxで13~31個のタンパク性異物が除去可能であり、観察照度3,000lxで4~7個のタンパク性異物が除去可能であることが確認された。
【0387】
実施例5 外来異物除去能の評価
粘度7cPのスクロース溶液を疎水性アクリル共重合体(孔径5μm)フィルターを内蔵した27G針付COP製シリンジ(1mL規格)内に、1.0mL充填した。ピンセットを用いて5種類の外来性異物(サイズ:700μm~6000μm程度、材質:ガラス、SUS、ゴム栓、プラスチック、繊維)をそれぞれ5個ずつそれぞれ異なるシリンジに加えた後にストッパーで打栓した。それぞれの外来性異物を含有したサンプルをN=3ずつ作成し、シリンジから溶液を排出する前に照度3,000lx程度でシリンジ内部に異物が存在することを確認した。プランジャロッドを組付けて、Rigid Needle Shield(RNS)を外したのちに、シリンジ内の溶液を手動で洗浄滅菌済みの清浄なガラスバイアルに排出した。バイアルに排出された溶液について、照度3,000lx程度で異物の有無を確認した。
【0388】
[評価結果]
疎水性アクリル共重合体(孔径5μm)フィルターを内蔵した27G針付COP製シリンジから排出された溶液中の外来性異物の有無を表に示す。この試験の結果、5種類すべての外来性異物について、外来性異物を含む溶液を孔径5μmの疎水性アクリル共重合体製のフィルターを内蔵したシリンジから排出することで、外来性異物を適切に除去できることが確認された。
【0389】
【表8】

【0390】
実施例6 薬液と安定性
製剤2を通常の27G針付COP製シリンジ(1mL規格)及び疎水性アクリル共重合体(孔径5μm)フィルターを内蔵した27G針付COP製シリンジ(1mL規格)内に、1.0mL充填してストッパーで打栓した。充填・打栓したサンプルについて、5℃で12か月間、または25℃で6か月間保存した後、以下の条件でサイズ排除クロマトグラフィー(SE-HPLC)測定、UV測定(型番:UV-2700i、島津製作所製)、PX188濃度測定を実施した。サイズ排除クロマトグラフィー測定では、検出された主ピークをMain Peak、Main Peakより前に検出されるピークの合計をHigh Molecular Weight(HMW)、Main Peakより後ろに検出されるピークの合計をLow Molecular Weight(LMW)と定義した。結果を表9に示す。5℃で12か月、または25℃で6か月の間、通常のCOP製シリンジ、フィルター内蔵COP製シリンジ中で保存後において、いずれのサンプルでも物性の変化はほとんど認められなかった。以上より、本フィルター内蔵COP製シリンジは薬液との適合性が高いことが確認された。
【0391】
【表9】

【0392】
・サイズ排除クロマトグラフィー
-サイズ排除クロマトグラフィー装置:Waters製「2695またはe2695」
-検出器:紫外吸光光度計
-測定波長:280nm
-カラム:TSKgel G3000SWXL(東ソー製)
-カラム温度:25℃
-移動相:リン酸緩衝液(pH7.0)
-流量:0.5mL/分
-注入量:60μL
・PX188濃度測定
-PX188濃度測定装置:Waters製「2690、2695、e2795またはe2695」
-検出器:示差屈折計(2414 Refractive Index Detector)
-カラム:TSKgel SuperSW2000(東ソー製)
-カラム温度:25℃
-移動相:30mmol/L 塩化ナトリウム含有40%アセトニトリル溶液
-流量:0.3mL/分
-注入量:20μL
【符号の説明】
【0393】
1…プレフィルドシリンジ、2…シリンジ、3…ピストン、4…注射針、5…キャップ、6…バレル、7…仕切手段、8…ハウジング、9…中栓部、30…ロッド部、31…ガスケット、32…操作部、33…先端面、60…先端部、61…基端部、62…筒状部、63…フランジ部、64…注出孔、80…フィルター、81…閉時係合部、82…内周面、83…取付部位、84…本体部位、85…延出部位、86…フィルター部材、90…閉時被係合部、91…規制手段、92…蓋部位、93…段係合部、94…脚部位、95…突出部位、96…環状部位、97…蓋凹部、98…当接面、600…基端側端面、800…外周面、801…基端外周面部、802…先端外周面部、810…段付面、821…基端内周面部、822…先端内周面部、830…先端面、901…基端側閉時被係合部、902…先端側閉時被係合部、920…外周部、921…内周部、922…蓋脚部、S…空間、S1…基端側空間、S2…先端側空間、S21先端側空間、S22…第二先端側空間、S3…第三先端側空間、S4…第四先端側空間、C8…液流路、C9…栓流路、C91…軸流路、C92…連通流路、ML…液剤、MS…固形剤、MM…混合薬剤80…フィルター、10…保持部材、、34…密着部、35…突設部、、65…内周面、71…先端側副空間、72…基端側副空間、110…基端側部分、111…流路、112…取付部位、113…脚部位、600…基端側端面、601…基端側端縁、200…当接面(基端側端面)、201…基端側当接面、201a…第一基端側当接面、201b…第二基端側当接面、202…先端側当接面、203…接続当接面、203a…第一接続当接面、203b…第二接続当接面、203c…第二接続当接面、204…先端面、220…取付外周部、221…取付内周部、222…外周先端面、223…内周先端面、224…肩部、225…突出部、226…取付内周面、230…基端面
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