(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】ヒートポンプのデフロストサイクルを実施するための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
F24H 15/136 20220101AFI20240827BHJP
F24H 15/152 20220101ALI20240827BHJP
F24H 15/172 20220101ALI20240827BHJP
F24H 15/176 20220101ALI20240827BHJP
F24H 4/02 20220101ALI20240827BHJP
F24H 4/04 20060101ALI20240827BHJP
F24D 3/08 20060101ALI20240827BHJP
F24D 3/18 20060101ALI20240827BHJP
F24D 11/02 20060101ALI20240827BHJP
F24D 17/00 20220101ALI20240827BHJP
F24D 17/02 20060101ALI20240827BHJP
F24H 15/414 20220101ALI20240827BHJP
F24H 15/262 20220101ALI20240827BHJP
F24H 15/269 20220101ALI20240827BHJP
F24H 15/281 20220101ALI20240827BHJP
F24H 15/37 20220101ALI20240827BHJP
F24H 15/265 20220101ALI20240827BHJP
F24H 15/375 20220101ALI20240827BHJP
【FI】
F24H15/136
F24H15/152
F24H15/172
F24H15/176
F24H4/02 B
F24H4/04
F24D3/08 K
F24D3/18
F24D11/02 A
F24D17/00 B
F24D17/02
F24H15/414
F24H15/262
F24H15/269
F24H15/281
F24H15/37
F24H15/265
F24H15/375
(21)【出願番号】P 2023547561
(86)(22)【出願日】2022-02-07
(86)【国際出願番号】 IB2022051079
(87)【国際公開番号】W WO2022168047
(87)【国際公開日】2022-08-11
【審査請求日】2023-12-21
(32)【優先日】2021-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2021-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2021-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2021-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2021-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2021-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2021-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2021-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2021-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523293529
【氏名又は名称】オクトパス エナジー ヒーティング リミテッド
【氏名又は名称原語表記】OCTOPUS ENERGY HEATING LIMITED
【住所又は居所原語表記】UK House, 164-182 Oxford Street, London, W1D 1NN, UNITED KINGDOM
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(74)【代理人】
【識別番号】100151987
【氏名又は名称】谷口 信行
(72)【発明者】
【氏名】コノヴァルチク ピーター
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-134003(JP,A)
【文献】中国実用新案第205037567(CN,U)
【文献】特開2019-007692(JP,A)
【文献】特開2010-249333(JP,A)
【文献】特開平11-142027(JP,A)
【文献】国際公開第2014/087701(WO,A1)
【文献】特開2004-278987(JP,A)
【文献】特開2004-101021(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 15/136
F24H 15/152
F24H 15/172
F24H 15/176
F24H 4/02
F24H 4/04
F24D 3/08
F24D 3/18
F24D 11/02
F24D 17/00
F24D 17/02
F24H 15/414
F24H 15/262
F24H 15/269
F24H 15/281
F24H 15/37
F24H 15/265
F24H 15/375
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物内に設置された水供給システムのヒートポンプをデフロストするコンピュータ実装方法であって、
前記水供給システムは、前記建物の外部から前記建物の内部の熱エネルギ蓄積媒体に熱エネルギを伝達するように構成されたヒートポンプと、前記ヒートポンプの動作を制御するように構成された制御モジュールとを含み、
前記水供給システムは、前記熱エネルギ蓄積媒体によって加熱された水を、1つまたは複数の水出口において前記建物の在居者に供給するように構成されており、
前記ヒートポンプからの熱エネルギは、前記熱エネルギ蓄積媒体を介して間接的にのみ前記水を加熱するために用いられ、
前記方法は、前記制御モジュールによって実施され、以下のこと、すなわち、
前記ヒートポンプの性能に基づいて、次回のデフロストサイクルの予期される開始時間を特定することと、
前記次回のデフロストサイクルの前記予期される開始時間の前に前記ヒートポンプを動作させて、前記予期される開始時間の前に前記熱エネルギ蓄積媒体が、その通常の動作温度よりも高い第1の温度に到達するように、前記熱エネルギ蓄積媒体に熱エネルギを蓄積するために前記熱エネルギ蓄積媒体を事前充熱することにより、前記次回のデフロストサイクルの前記予期される開始時間の前に前記水供給システムを準備することと
を含
み、
前記熱エネルギ蓄積媒体を事前充熱すること、および/または前記建物の屋内温度を上昇させることは、ユーティリティの使用パターンから特定された、加熱水に対する予期される需要に基づいて実施され、
前記ユーティリティの使用パターンは、前記水供給システムから取得されたセンサデータに基づいて、前記水供給システムのための第2のMLAによって確立され、
前記方法は、前記ユーティリティの使用パターンに基づいて、前記次回のデフロストサイクルの前記予期される開始時間の付近の、前記加熱水に対する予期される需要が少なくなっている低需要時間を特定することをさらに含む、方法。
【請求項2】
前記ユーティリティの使用パターンは、
時刻、曜日、および/または日付に関する予測される冷水の使用、
時刻、曜日、および/または日付に関する予測される加熱水の使用、
時刻、曜日、および/または日付に関する予測されるエネルギの使用、または
それらの組み合わせ
を含む、請求項
1記載の方法。
【請求項3】
建物内に設置された水供給システムのヒートポンプをデフロストするコンピュータ実装方法であって、
前記水供給システムは、前記建物の外部から前記建物の内部の熱エネルギ蓄積媒体に熱エネルギを伝達するように構成されたヒートポンプと、前記ヒートポンプの動作を制御するように構成された制御モジュールとを含み、
前記水供給システムは、前記熱エネルギ蓄積媒体によって加熱された水を、1つまたは複数の水出口において前記建物の在居者に供給するように構成されており、
前記ヒートポンプからの熱エネルギは、前記熱エネルギ蓄積媒体を介して間接的にのみ前記水を加熱するために用いられ、
前記方法は、前記制御モジュールによって実施され、以下のこと、すなわち、
前記ヒートポンプの性能に基づいて、次回のデフロストサイクルの予期される開始時間を特定することと、
前記次回のデフロストサイクルの前記予期される開始時間の前に前記ヒートポンプを動作させて、前記予期される開始時間の前に前記熱エネルギ蓄積媒体が、その通常の動作温度よりも高い第1の温度に到達するように、前記熱エネルギ蓄積媒体に熱エネルギを蓄積するために前記熱エネルギ蓄積媒体を事前充熱することにより、前記次回のデフロストサイクルの前記予期される開始時間の前に前記水供給システムを準備することと
を含
み、
前記熱エネルギ蓄積媒体を事前充熱すること、および/または前記建物の屋内温度を上昇させることは、前記建物の予期される在居率に基づいて実施され、
前記建物の前記予期される在居率は、前記水供給システムから取得されたセンサデータに基づいて、前記水供給システムのための第3のMLAによって特定される、方法。
【請求項4】
前記熱エネルギ蓄積媒体を事前充熱すること、および/または前記建物の屋内温度を上昇させることは、ユーティリティの使用パターンから特定された、加熱水に対する予期される需要に基づいて実施され、
前記ユーティリティの使用パターンは、前記水供給システムから取得されたセンサデータに基づいて、前記水供給システムのための第2のMLAによって確立される、
請求項
3記載の方法。
【請求項5】
前記ユーティリティの使用パターンは、
時刻、曜日、および/または日付に関する予測される冷水の使用、
時刻、曜日、および/または日付に関する予測される加熱水の使用、
時刻、曜日、および/または日付に関する予測されるエネルギの使用、または
それらの組み合わせ
を含む、請求項
4記載の方法。
【請求項6】
前記方法は、前記ユーティリティの使用パターンに基づいて、前記次回のデフロストサイクルの前記予期される開始時間の付近の、前記加熱水に対する予期される需要が少なくなっている低需要時間を特定することをさらに含む、請求項
4または
5記載の方法。
【請求項7】
前記方法は、前記予期される在居率に基づいて、前記デフロストサイクルの前記予期される開始時間の付近の、前記建物の前記予期される在居率が低くなっている低在居率時間を特定することをさらに含む、請求項
3から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記方法は、前記制御モジュールで実行される第1の機械学習アルゴリズムMLAによって少なくとも部分的に実施され、
前記第1のMLAは、次回のデフロストサイクルを予測するように訓練されている、
請求項1
から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記ヒートポンプの性能は、前記ヒートポンプの平均熱エネルギ出力、前記ヒートポンプの効率、前記ヒートポンプに関する成績係数、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1
から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記方法は、気象データを受信することをさらに含み、
前記次回のデフロストサイクルの前記予期される開始時間は、前記気象データにさらに基づいて特定される、
請求項1から
9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記気象データは、気象予報、現在の気象条件、前記建物の屋内温度、またはそれらの組み合わせのうちの1つまたは複数を含む、請求項
10記載の方法。
【請求項12】
前記方法は、前記ヒートポンプの1つまたは複数の以前のデフロストサイクルに関するデータを収集することをさらに含み、
前記次回のデフロストサイクルの前記予期される開始時間は、収集された前記データにさらに基づいて特定される、
請求項1から
11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
前記水供給システムは、前記建物の屋内温度を上昇させるための中央暖房システムを含み、
前記水供給システムを準備することは、前記中央暖房システムに加熱水を供給するように前記ヒートポンプを動作させることにより、前記予期される開始時間の前に前記建物の前記屋内温度を上昇させることを含む、
請求項1から
12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記水供給システムは、1つまたは複数の電気抵抗式の加熱要素を含み、
前記建物の前記屋内温度を上昇させることは、前記中央暖房システムに加熱水を供給するように前記1つまたは複数の電気抵抗式の加熱要素を動作させることを含む、
請求項
13記載の方法。
【請求項15】
前記建物の前記屋内温度を上昇させることは、前記建物の前記屋内温度を現在の温度から第2の温度まで上昇させることを含む、請求項
13または
14記載の方法。
【請求項16】
前記第2の温度は、前記在居者によって設定された事前設定された屋内温度よりも高い、請求項
15記載の方法。
【請求項17】
前記センサデータは、時刻、曜日、日付、1つまたは複数の水出口における水の流量および/または圧力、水出口が開栓されてからの経過時間、水道の水温、前記1つまたは複数の水出口における水温、エネルギ消費量および/または消費率、ユーザの現在の位置、またはそれらの組み合わせを含む、請求項
1から
16までのいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
前記方法は、前記デフロストサイクルの前記予期される開始時間を、前記低需要時間および/または低在居率時間に基づいて、調節された開始時間へと調節することをさらに含む、請求項
1から17までのいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
前記方法は、前記調節された開始時間に前記次回のデフロストサイクルを開始するように前記ヒートポンプを動作させること
をさらに含む、請求項
18記載の方法。
【請求項20】
プロセッサによって実行された場合に請求項1から
19までのいずれか1項記載の方法を前記プロセッサに実施させる機械可読コードを含む、コンピュータ可読媒体。
【請求項21】
水供給システムを制御するように構成された制御モジュールであって、
前記制御モジュールは、プロセッサを含み、
前記プロセッサは、請求項1から
19までのいずれか1項記載の方法を実施するように訓練された、前記プロセッサで実行される機械学習アルゴリズムを有する、
制御モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、ユーティリティの管理に関する。特に、本開示は、ユーザの温水の使用習慣を変えることを助けるために使用することができる方法およびシステムに関する。
【0002】
背景
商業用設定であるか、または家庭用設定であるかにかかわらず、加熱水は、1年中必要とされている。加熱水を供給するためには浄水および熱源の両方が必要であることは言うまでもない。加熱水を供給するために、例えばユーザによって設定された所定の温度まで水を加熱するための中央集中型であることが多い水供給システムには加熱システムが設けられており、使用される熱源は、従来、1つまたは複数の電気的な加熱要素であるか、または天然ガスの燃焼である。一般的に、高エネルギ(例えば、ガスまたは電気)需要の期間中、ユーティリティ供給業者は、一部には顧客に供給するためにより多くのエネルギを購入しなければならない追加的なコストを補償する目的で、また一部には不必要なエネルギの使用を思いとどまらせる目的で、エネルギの単価を高めるピーク料金方式を実施する。その場合、エネルギ需要が少なくなっている期間中には、ユーティリティ供給業者は、ピーク期間の代わりにこれらのオフピーク期間中にエネルギを使用するように切り替えることを顧客に動機付けて、時間の経過と共に全体的によりバランスのとれたエネルギ消費を達成する目的で、エネルギの単価を下げるオフピーク料金方式を実施する。しかしながら、このような戦略が有効なのは、顧客が料金方式の変化を常に意識していて、さらに、顧客が自身のエネルギ消費の習慣を変えるための意識的な努力を行う場合のみである。
【0003】
浄水は、ユーティリティとして現在、多くの注目を集めている。浄水の不足が進むにつれて、浄水の節約に関して人々を啓発するためにも、また、水の流れを削減するためのエアレーション式のシャワーおよび蛇口や、動きが検出されない場合に水の流れを止めるモーションセンサを備えたシャワーおよび蛇口等のような、水の消費を削減するシステムおよび装置の開発のためにも大きな努力が払われてきた。しかしながら、これらのシステムおよび装置は、単一の特定の使用に限定されており、問題のある水消費習慣に対して限定的な影響力しか有さない。
【0004】
エネルギ消費の環境的影響力に関する懸念が高まるにつれて、近年、家庭用加熱水を供給する手法としてヒートポンプ技術を使用することに対する関心が高まっている。ヒートポンプとは、熱エネルギを熱源から熱リザーバに伝達する装置である。ヒートポンプは、熱エネルギを熱源から熱リザーバに伝達する仕事を達成するために電気を必要とするが、一般的に、電気抵抗式のヒータ(電気的な加熱要素)よりも効率的である。なぜなら、ヒートポンプは、典型的には少なくとも3または4の成績係数を有するからである。このことはつまり、電力使用量が等しい場合には、ヒートポンプを介すると、電気抵抗式のヒータと比較して3倍または4倍の量の熱をユーザに供給することができるということを意味する。
【0005】
熱エネルギを搬送する熱伝達媒体は、冷媒として知られている。空気(例えば、外気、または住宅内の暖かい部屋からの空気)または地中熱源(例えば、グランドループまたは水で満たされたボアホール)からの熱エネルギは、受け取った熱交換器によって抽出されて、収容されている冷媒に伝達される。今やより高エネルギになった冷媒が圧縮され、これによって冷媒の温度が著しく上昇させられ、この場合、この今や高温となった冷媒が、熱交換器を介して熱エネルギを加熱水ループに交換する。加熱水の供給の文脈では、ヒートポンプによって抽出された熱を、熱エネルギ蓄積器として機能する断熱されたタンク内の水に伝達することができ、加熱水を、必要に応じて後々の時点に使用することができる。加熱水を、必要に応じて1つまたは複数の水出口、例えば蛇口、シャワー、ラジエータに送ることができる。しかしながら、ヒートポンプは、一般的に、水を所望の温度まで上昇させるために、電気抵抗式のヒータと比較してより多くの時間を必要とする。その理由の1つとして、ヒートポンプは、典型的には始動が遅いからである。
【0006】
それぞれ異なる家庭、職場、および商業空間は、加熱水の使用に関するそれぞれ異なる要件および嗜好を有するので、ヒートポンプを電気ヒータに代わる実用的な代替手段とすることを可能にするために、加熱水を供給する新しい手法が望まれている。さらに、エネルギおよび水を節約するために、エネルギおよび浄水の消費を調整することが望ましいだろう。しかしながら、ユーティリティの消費を調整することを、単純に、使用に対して一律の上限を定めること、とすることはできない。
【0007】
したがって、加熱水を供給するための改善された方法およびシステムを提供することが望ましい。
【0008】
概要
本技術の1つの態様は、建物内に設置された水供給システムのヒートポンプをデフロストするコンピュータ実装方法であって、水供給システムは、建物の外部から建物の内部の熱エネルギ蓄積媒体に熱エネルギを伝達するように構成されたヒートポンプと、ヒートポンプの動作を制御するように構成された制御モジュールとを含み、水供給システムは、熱エネルギ蓄積媒体によって加熱された水を、1つまたは複数の水出口において建物の在居者に供給するように構成されており、本方法は、制御モジュールによって実施され、以下のこと、すなわち、ヒートポンプの性能に基づいて、次回のデフロストサイクルの予期される開始時間を特定することと、次回のデフロストサイクルの予期される開始時間の前にヒートポンプを所定の期間にわたって動作させて、予期される開始時間の前に熱エネルギ蓄積媒体が第1の温度に到達するように、熱エネルギ蓄積媒体に熱エネルギを蓄積するために熱エネルギ蓄積媒体を事前充熱することにより、次回のデフロストサイクルの予期される開始時間の前に水供給システムを準備することとを含む、方法を提供する。
【0009】
本実施形態によれば、ヒートポンプの性能に基づいてヒートポンプのための次回のデフロストサイクルの予期される開始時間が特定され、次いで、制御モジュールは、そのデフロストサイクルが開始される前に水供給システムを予測的に準備する。そうすることで、本実施形態は、加熱水の供給をさほど妨げない手法でヒートポンプの所要のデフロストサイクルを実施することを可能にし、これにより、加熱水を供給する有効な手法としてヒートポンプを利用することを可能にする。ヒートポンプの動作が妨げられる次回のデフロストサイクルの予期される開始時間の前に、熱エネルギ蓄積媒体が所望の温度に到達するように、熱エネルギ蓄積媒体を事前充熱することによって、加熱水の供給に対する妨げを軽減するために、十分な量の熱エネルギが蓄積されることを保証することが可能となる。
【0010】
いくつかの実施形態では、本方法は、制御モジュールで実行される第1の機械学習アルゴリズムMLAによって少なくとも部分的に実施可能であり、第1のMLAは、気象データに基づいて次回のデフロストサイクルを予測するように訓練されている。
【0011】
いくつかの実施形態では、ヒートポンプの性能は、ヒートポンプの平均熱エネルギ出力、ヒートポンプの効率、ヒートポンプに関する成績係数、またはそれらの組み合わせを含むことができる。
【0012】
ヒートポンプがいつデフロストサイクルを必要とするかは、例えば屋外の温度および湿度のような外的要因によって影響を受ける可能性がある。したがって、いくつかの実施形態では、本方法は、気象データを受信することをさらに含むことができ、次回のデフロストサイクルの予期される開始時間は、気象データにさらに基づいて特定される。
【0013】
いくつかの実施形態では、気象データは、気象予報、現在の気象条件、建物の屋内温度、またはそれらの組み合わせのうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0014】
いくつかの実施形態では、本方法は、ヒートポンプの1つまたは複数の以前のデフロストサイクルに関するデータを収集することをさらに含むことができ、次回のデフロストサイクルの予期される開始時間は、収集されたデータにさらに基づいて特定される。種々の気象条件または種々の屋内温度における連続するデフロストサイクル間の時間間隔、それぞれのデフロストサイクルを完了するために必要とされる時間等のような、以前のデフロストサイクルから収集されたデータを使用して、制御モジュールまたは第1のMLAは、次回のデフロストサイクルの予期される開始時間をより正確に特定することができる。
【0015】
いくつかの実施形態では、所定の期間は、第1の温度と、ヒートポンプの性能および/または気象データとに基づいて設定可能である。
【0016】
いくつかの実施形態では、第1の温度は、在居者によって設定された事前設定された動作温度よりも高くてよい。熱蓄積媒体を、通常の動作温度よりも高い温度まで事前充熱することによって、次回のデフロストサイクル中に、より多くの蓄積された熱エネルギを利用することが可能となり、したがって、次回のデフロストサイクルによって引き起こされる加熱水の供給に対する妨げがさらに軽減される。
【0017】
デフロストサイクル中には、ヒートポンプの動作が妨げられ、建物に加熱を提供することが不可能となる。したがって、いくつかの実施形態では、水供給システムは、建物の屋内温度を上昇させるための中央暖房システムを含むことができ、水供給システムを準備することは、中央暖房システムに加熱水を供給するようにヒートポンプを動作させることにより、予期される開始時間の前に建物の屋内温度を上昇させることを含むことができる。
【0018】
いくつかの実施形態では、水供給システムは、1つまたは複数の電気抵抗式の加熱要素を含むことができ、建物の屋内温度を上昇させることは、中央暖房システムに加熱水を供給するように1つまたは複数の電気抵抗式の加熱要素を動作させることを含むことができる。
【0019】
いくつかの実施形態では、建物の屋内温度を上昇させることは、建物の屋内温度を現在の温度から第2の温度まで上昇させることを含むことができる。
【0020】
いくつかの実施形態では、第2の温度は、在居者によって設定された事前設定された屋内温度よりも高くてよい。次回のデフロストサイクルの予期される開始時間より前に、建物の屋内温度を、在居者によって設定された事前設定された温度よりも(例えば、1度または2度だけ)高い温度まで上昇させることにより、ヒートポンプが次回のデフロストサイクルで動作している間、建物の屋内温度が快適な範囲内に維持されることを保証することが可能となる。
【0021】
いくつかの実施形態では、熱エネルギ蓄積媒体を事前充熱すること、および/または建物の屋内温度を上昇させることは、ユーティリティの使用パターンから特定された、加熱水に対する予期される需要に基づいて実施可能であり、ユーティリティの使用パターンは、水供給システムから取得されたセンサデータに基づいて、水供給システムのための第2のMLAによって確立される。
【0022】
いくつかの実施形態では、第1の温度は、ユーティリティの使用パターンに基づいて第2のMLAによって決定可能である。
【0023】
いくつかの実施形態では、ユーティリティの使用パターンは、時刻、曜日、および/または日付に関する予測される冷水の使用、時刻、曜日、および/または日付に関する予測される加熱水の使用、時刻、曜日、および/または日付に関する予測されるエネルギの使用、またはそれらの組み合わせを含むことができる。
【0024】
いくつかの実施形態では、本方法は、ユーティリティの使用パターンに基づいて、次回のデフロストサイクルの予期される開始時間の付近の、加熱水に対する予期される需要が少なくなっている低需要時間を特定することをさらに含むことができる。
【0025】
いくつかの実施形態では、熱エネルギ蓄積媒体を事前充熱すること、および/または建物の屋内温度を上昇させることは、建物の予期される在居率に基づいて実施可能であり、建物の予期される在居率は、水供給システムから取得されたセンサデータに基づいて、水供給システムのための第3のMLAによって特定される。
【0026】
いくつかの実施形態では、本方法は、予期される在居率に基づいて、デフロストサイクルの予期される開始時間の付近の、建物の予期される在居率が低くなっている低在居率時間を特定することをさらに含むことができる。
【0027】
いくつかの実施形態では、センサデータは、時刻、曜日、日付、1つまたは複数の水出口における水の流量および/または圧力、水出口が開栓されてからの経過時間、水道の水温、1つまたは複数の水出口における水温、エネルギ消費量および/または消費率、ユーザの現在の位置、またはそれらの組み合わせを含むことができる。
【0028】
場合によっては、次回のデフロストサイクルの予期される開始時間が、水供給システムによる通常の加熱水の供給を特に妨げる可能性がある。例えば、予期される開始時間が、例えば夕方早くなど、加熱水またはエネルギの需要が高まることが予期される時間にある可能性がある。したがって、いくつかの実施形態では、本方法は、デフロストサイクルの予期される開始時間を、低需要時間および/または低在居率時間に基づいて、調節された開始時間へと調節することをさらに含むことができる。こうすることで、次回のデフロストサイクルによって引き起こされる妨げを軽減することが可能となる。
【0029】
いくつかの実施形態では、本方法は、調節された開始時間に次回のデフロストサイクルを開始するようにヒートポンプを動作させることをさらに含むことができる。
【0030】
本技術の別の態様は、プロセッサによって実行された場合に上記の方法をプロセッサに実施させる機械可読コードを含む、コンピュータ可読媒体を提供する。
【0031】
本技術のさらなる態様は、水供給システムを制御するように構成された制御モジュールであって、制御モジュールは、プロセッサを含み、プロセッサは、上記の方法を実施するように訓練された、プロセッサで実行される機械学習アルゴリズムを有する、制御モジュールを提供する。
【0032】
本技術の実装形態は、それぞれ上記の目的および/または態様のうちの少なくとも1つを有するが、必ずしもそれらの全てを有するわけではない。上述の目的を達成することを試みた結果として生じる本技術のいくつかの態様は、この目的を満たさないことがあり、かつ/または本明細書には具体的に列挙されていない他の目的を満たすことがあることを理解すべきである。
【0033】
本技術の実装形態の追加的および/または代替的な特徴、態様、および利点は、以下の説明、添付の図面、および添付の特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【0034】
以下では、本開示の実施形態について添付の図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】例示的な水供給システムの概略的なシステム概要図である。
【
図2】使用パターンを確立するためのMLAの例示的な訓練フェーズを概略的に示す図である。
【
図3】在居率の予測を出力するためのMLAによる例示的なデータ処理を概略的に示す図である。
【
図4】熱蓄積器を事前充熱するためのMLAによる例示的なデータ処理を概略的に示す図である。
【
図5】ヒートポンプを作動させるためのMLAによる例示的なデータ処理を概略的に示す図である。
【
図6】ヒートポンプのデフロストサイクルを開始するためのMLAによる例示的なデータ処理を概略的に示す図である。
【
図7】1つの実施形態による、ユーザの水の使用習慣を変える例示的な方法のフロー図である。
【
図8】1つの実施形態による、水の使用を調整する例示的な方法のフロー図である。
【
図9】1つの実施形態による、水の使用を調整する別の例示的な方法のフロー図である。
【
図10】漏れ警告を出力するためのMLAによる例示的なデータ処理を概略的に示す図である。
【0036】
詳細な説明
上記を考慮して、本開示は、ヒートポンプを使用するまたはヒートポンプによって支援される加熱水の供給のための種々のアプローチを提供し、またいくつかのケースでは、水およびエネルギの浪費を低減するために、水およびエネルギを含むユーティリティの使用を調整するための種々のアプローチを提供する。本アプローチは、水供給システムから受信したセンサデータに基づいて、制御モジュールを介して、水供給システムに関する水供給を制御および調整するように訓練された1つまたは複数の機械学習アルゴリズム(MLA)を使用することによって実現可能である。例えば、訓練フェーズ中、MLAは、家庭用設定における所帯の加熱水の使用を監視し、通常の利用パターンを確立することができる。時刻、曜日、日付、気象等のような複数の異なる入力に基づいて、それぞれ異なる種類の水の使用(例えば、シャワー、手洗い、暖房等)を認識するように、MLAを訓練することができる。いくつかの実施形態では、MLAは、例えばシステムの水出口が開栓および閉栓された時間と、使用の持続時間と、ユーザによって設定された水温と、加熱水がユーザに供給されたときの実際の水温とに関する追加的なデータを収集することができる。使用中、MLAは、ヒートポンプを使用するまたはヒートポンプによって支援される加熱水の供給の効率および有効性を改善するために、学習した使用パターンを種々の手法で使用することができる。
【0037】
いくつかの実施形態では、水出口が開栓された場合または開栓される前に1つまたは複数の省エネルギ戦略を実施するように、MLAを訓練することができ、オプションとして、水およびエネルギの使用習慣を変えることを支援するための、例えば水および/またはエネルギの使用量を徐々に削減するための1つまたは複数の対話的戦略を実施するように、MLAを訓練することができる。
【0038】
下記は、1つまたは複数のMLAが使用される実施形態についての複数の異なる種類の機械学習アルゴリズムの簡単な概要を提供する。しかしながら、通常の使用パターンを確立するためにMLAを使用することは、本技術を実現する1つの手法に過ぎず、必須ではないことに留意すべきであり、いくつかの実施形態では、加熱水の特定の使用、例えば過剰な水の流れを標的として、所定の形式で応答するための適切なソフトウェア機能を有するように、制御モジュールをプログラミングすることができる。
【0039】
MLAの概要
当技術分野では、多くの異なる種類のMLAが知られている。大まかに言えば3つの種類のMLA、すなわち教師あり学習ベースのMLAと、教師なし学習ベースのMLAと、強化学習ベースのMLAとが存在する。
【0040】
教師あり学習MLAプロセスは、予測子の所与の集合(独立変数)から予測されるべき目標変数-結果変数(または従属変数)に基づいている。これらの変数の集合を使用して、MLAは、(訓練中に)入力を所望の出力に写像する関数を生成する。訓練プロセスは、MLAが検証データに対する所望のレベルの精度を達成するまで継続される。教師あり学習ベースのMLAの例には、回帰、デシジョンツリー、ランダムフォレスト、ロジスティック回帰等が含まれる。
【0041】
教師なし学習MLAは、目標変数または結果変数それ自体を予測することを含まない。このようなMLAは、値の母集団を複数の異なるグループにクラスタリングするために使用され、このことは、特定の介入のために顧客を複数の異なるグループにセグメント化するために広く使用されている。教師なし学習MLAの例には、アプリオリアルゴリズム、K平均法が含まれる。
【0042】
強化学習MLAは、特定の判断を下すように訓練される。訓練中、MLAは、試行錯誤を使用して自身を絶えず訓練するような訓練環境に曝される。MLAは、過去の経験から学習し、正確な判断を下すために可能な限り最良の知識を獲得することを試みる。強化学習MLAの一例は、マルコフ決定過程である。
【0043】
種々のタスクのために、それぞれ異なる構造またはトポロジーを有する複数の異なる種類のMLAを使用してもよいことを理解すべきである。1つの特定の種類のMLAには、ニューラルネットワーク(NN)としても知られる人工ニューラルネットワーク(ANN)が含まれる。
【0044】
ニューラルネットワーク(NN)
一般的に言えば、所与のNNは、計算のためにコネクショニストアプローチを利用して情報を処理する人工的な「ニューロン」の相互接続されたグループから成る。NNは、入力と出力との間の複雑な関係を(実際にその関係を把握することなく)モデル化するために、またはデータ内のパターンを発見するために使用される。NNは、まず始めに訓練フェーズにおいて条件付けされ、この訓練フェーズでは、(モデル化することが試みられている所与の状況に対する)適切な出力を生成するために、NNを適合させるための「入力」および情報の既知の集合がNNに供給される。この訓練フェーズ中、所与のNNは、(学習したことに基づいて)新たな状況における所与の入力に対する妥当な予測される出力を提供することができるように、学習している状況に適合して、自身の構造を変化させる。したがって、所与のNNは、所与の状況に対する複雑な統計的配置または数学的アルゴリズムを特定することを試みるのではなく、状況に対する「感覚」に基づいて「直感的な」回答を提供することを目的としている。したがって、所与のNNは、訓練済みの「ブラックボックス」であると見なされ、この訓練済みの「ブラックボックス」を使用すると、「ボックス」内で何が行われるかは重要でない状況において、所与の入力の集合に対する妥当な回答を決定することができる。
【0045】
NNは、所定の入力に基づいて出力を把握することだけが重要であって、その出力がどのように導出されるかについてはさほど重要でないか、または重要ではないという多くの状況において、一般的に使用されている。例えば、NNは、サーバ間のウェブトラフィックの分散を最適化するために、また、フィルタリング、クラスタリング、信号分離、圧縮、ベクトル生成、およびそれらに類するものが含まれるデータ処理において、一般的に使用されている。
【0046】
ディープニューラルネットワーク
本技術のいくつかの非限定的な実施形態では、NNを、ディープニューラルネットワークとして実装することができる。NNは、NNの種々のクラスに分類可能であり、これらのクラスの1つにリカレントニューラルネットワーク(RNN)が含まれるということを理解すべきである。
【0047】
リカレントニューラルネットワーク(RNN)
RNNは、各自の「内部状態」(保存されたメモリ)を使用して、入力シーケンスを処理するように適合されている。これにより、RNNは、例えば、セグメント化されていない手跡認識および音声認識のようなタスクにとって良好に適したものとなる。RNNのこうした内部状態は、制御可能であり、「ゲート付き」状態または「ゲート付き」メモリと称される。
【0048】
RNN自体も、RNNの種々のサブクラスに分類可能であるということにも留意すべきである。例えば、RNNには、長短期記憶(LSTM)ネットワーク、ゲート付き回帰型ユニット(GRU)、双方向RNN(BRNN)、およびそれらに類するものが含まれる。
【0049】
LSTMネットワークは、以前の非常に短期の離散した時間ステップ中に発生したイベントの「記憶」をある意味で必要とするタスクを学習することができるディープラーニングシステムである。LSTMネットワークのトポロジーは、LSTMネットワークが「学習」して実施する特定のタスクに基づいて変化することができる。例えば、LSTMネットワークは、イベント同士の間に比較的長期の遅延が発生するようなタスク、またはイベント同士が低頻度および高頻度で一緒に発生するようなタスクを実施することを学習することができる。特定のゲート機構を有するRNNは、GRUと称される。LSTMネットワークとは異なり、GRUは、「出力ゲート」を欠いており、したがって、LSTMネットワークよりもパラメータが少ない。BRNNは、それぞれ反対の方向に接続されたニューロンの「隠れ層」を有することができ、これにより、過去の状態および未来の状態からの情報を使用することが可能になる。
【0050】
残差ニューラルネットワーク(ResNet)
本技術の非限定的な実施形態を実装するために使用することができるNNの別の例は、残差ニューラルネットワーク(ResNet)である。
【0051】
ディープネットワークは、低/中/高レベルの特徴と分類器とをエンドツーエンドの多層式で自然に統合し、特徴の「レベル」を、積層される層の数(深さ)によって強化することができる。
【0052】
要約すると、本技術の文脈における1つまたは複数のMLAの少なくとも一部の実装は、大まかに2つのフェーズに、すなわち訓練フェーズと使用時フェーズとに分類可能である。まず始めに、所与のMLAが、訓練フェーズにおいて1つまたは複数の適切な訓練データの集合を使用して訓練される。次いで、どのようなデータを入力として予期すべきであるかと、どのようなデータを出力として提供すべきであるかとをこの所与のMLAが一旦学習すると、この所与のMLAが、使用時フェーズにおいて使用時データを使用して実行される。
【0053】
水供給システム
本技術の実施形態では、冷水および加熱水は、中央集中型の水供給システムによって、家庭用設定または商業用設定において建物のための蛇口、シャワー、ラジエータ等が含まれる複数の水出口へと供給される。
図1には、1つの実施形態による例示的な水供給システムが示されている。本実施形態では、水供給システム100は、制御モジュール110を含む。制御モジュール110は、水供給システムの種々の要素に通信可能に接続されており、かつこれらの要素を制御するように構成されており、このような水供給システムの種々の要素には、例えばシステムの内部および外部の水の流れを制御するように配置された1つまたは複数のバルブの形態の流れ制御部130と、周囲から熱を抽出して、水を加熱するために使用される熱エネルギ蓄積器150にこの抽出した熱を蓄積するように構成された(地中熱源または空気熱源)ヒートポンプ140と、電気的な加熱要素160に供給されるエネルギの量を制御することによって冷水を所望の温度まで直接的に加熱するように構成された1つまたは複数の電気的な加熱要素160とが含まれる。次いで、加熱水は、熱エネルギ蓄積器150によって加熱されたか、または電気的な加熱要素160によって加熱されたかにかかわらず、必要に応じて必要なときに1つまたは複数の水出口へと送られる。本実施形態では、ヒートポンプ140は、環境から(例えば、空気熱源ヒートポンプの場合には周囲空気から、地中熱源ヒートポンプの場合には地熱エネルギから、または水熱源ヒートポンプの場合には水塊から)熱を抽出し、この熱は、冷媒によって吸収され、次いで、冷媒から作動液に伝達され、今度はこの作動液が、熱エネルギ蓄積器150の内部の熱エネルギ蓄積媒体に熱を伝達し、この熱エネルギ蓄積媒体において、好ましくは潜熱として熱が蓄積される。次いで、熱エネルギ蓄積媒体からのエネルギを使用して冷却水を、例えば給水部からの、場合によっては水道給水部からの冷水を、所望の温度まで加熱することができる。次いで、この加熱水を、システム内の種々の水出口へと供給することができる。
【0054】
本実施形態では、制御モジュール110は、複数のセンサ170-1,170-2,170-3,・・・,170-nからの入力を受信するように構成されている。複数のセンサ170-1,170-2,170-3,・・・,170-nは、例えば、屋内および/または屋外に配置された1つまたは複数の空気温度センサ、1つまたは複数の水温センサ、1つまたは複数の水圧センサ、1つまたは複数のタイマ、1つまたは複数のモーションセンサを含むことができ、また、例えば在居者によって携帯されるスマートフォン上のGPS信号受信機、カレンダー、気象予報アプリのような、水供給システム100に直接的には連結されておらず、通信チャネルを介して制御モジュールと通信する他のセンサを含むことができる。本実施形態における制御モジュール110は、受信した入力を使用して、例えば、流れ制御部130を通って熱エネルギ蓄積器150に至る、または水を加熱するための電気的な加熱要素160に至る水の流れを制御するなどの、種々の制御機能を実施するように構成されている。本実施形態では、機械学習アルゴリズム(MLA)120が使用され、この機械学習アルゴリズム(MLA)120は、制御モジュール110のプロセッサ(図示せず)で実行されてもよいし、または通信チャネルを介して制御モジュール110のプロセッサと通信するサーバで実行されてもよい。MLA120は、制御モジュール110によって受信された入力センサデータを使用して、例えば時刻、曜日、日付(例えば、季節的な変化、公休日)、在居率等に基づいて、ベースラインとなる水およびエネルギの使用パターンを確立するように訓練される。次いで、学習した使用パターンを使用して、制御モジュール110によって実施される種々の制御機能を決定することができ、またいくつかのケースでは、これを改善することができる。
【0055】
ヒートポンプは、一般的に、水を加熱するために電気抵抗式のヒータと比較してよりエネルギ効率的であるが、ヒートポンプを始動させるためには時間がかかる。なぜなら、ヒートポンプは、フルパワーになる前にチェック/サイクルを経なければならず、また、十分な量の熱エネルギが熱エネルギ蓄積媒体へと伝達され、この蓄積媒体が水を加熱するために使用可能となる前に所望の動作温度に到達するためにも時間がかかるからであり、したがって、ヒートポンプは、初期の開始時点から、電気抵抗式のヒータと比較して、同量の水を同じ温度まで加熱するために典型的にはより長時間かかることとなる。さらに、いくつかの実施形態では、ヒートポンプ140は、熱エネルギ蓄積媒体として、例えば加熱されると固体から液体に変化する相変化材料(PCM)を使用することができる。このケースでは、PCMが固化するまで放置された場合には、ヒートポンプによって抽出された熱エネルギが、熱蓄積媒体の温度を上昇させる効果を発揮する前に(それまではエネルギが潜熱として蓄積される)、PCMを固体から液体に変えるための追加的な時間が必要となる場合がある。水を加熱するためのこのアプローチは、緩慢ではあるが、水を加熱するために消費されるエネルギが、電気的な加熱要素と比較してより少なく、したがって、全体としてエネルギが節約され、加熱水を供給するためのコストが削減される。
【0056】
相変化材料
本実施形態では、ヒートポンプのための熱蓄積媒体として相変化材料を使用することができる。相変化材料の1つの適切なクラスは、家庭用温水を供給するための、かつヒートポンプと組み合わせて使用するための関心のある温度において固相-液相の変化を有するパラフィンワックスである。特に関心が持たれているのは、摂氏40~60度(℃)の範囲内の温度で溶融するパラフィンワックスであり、この範囲内において、特定の用途に適するように種々の温度で溶融するワックスを発見することができる。典型的な潜熱容量は、約180kJ/kg~230kJ/kgの間であり、液相での比熱容量は、約2.27Jg-1K-1であり、固相での比熱容量は、約2.1Jg-1K-1である。融解の潜熱を利用すると、非常に大量のエネルギを蓄積することができることが分かる。相変化液体をその融点よりも高い温度まで加熱することにより、より多くのエネルギを蓄積することもできる。例えば、オフピーク期間中の電力コストが比較的低くなっている場合には、熱エネルギ蓄積器を通常よりも高い温度まで「充熱」して、熱エネルギ蓄積器を「過熱」するように、ヒートポンプを動作させることができる。
【0057】
ワックスの適切な選択は、n-トリコサンC23またはパラフィンC20-C33のような約48℃の融点を有するワックスであってよく、これらのワックスは、ヒートポンプが約51℃の温度で動作することを必要とし、例えば台所用の蛇口、シャワー/バスルーム用の蛇口にとって十分である一般的な家庭用温水のための約45℃という申し分ない温度まで水を加熱することが可能である。必要に応じて水温を低下させるために、流れに冷水を加えてもよい。ヒートポンプの温度性能が考慮される。一般的に、ヒートポンプによって加熱される流体の入力温度と出力温度との間の最大差は、好ましくは5℃~7℃の範囲内に維持されるが、最高10℃であってもよい。
【0058】
パラフィンワックスは、熱エネルギ蓄積媒体として使用するための好ましい材料であるが、他の適切な材料を使用することもできる。例えば、塩水和物も、本例のような潜熱エネルギ蓄積システムのために適している。この文脈における塩水和物は、無機塩と水との混合物であり、その相変化には、塩水和物の水の全てまたは大部分の損失が伴う。水和物結晶は、相転移時に無水(または水分量の少ない)塩と水とに分けられる。塩水和物の利点は、パラフィンワックスよりも熱伝導率がはるかに(2~5倍)高く、相転移に伴う体積変化がはるかに小さいことである。本願に適した塩水和物は、48℃~49℃付近の融点と、200~220kJ/kgの潜熱とを有するNa2S2O3・5H2Oである。
【0059】
使用パターン
図2は、1つの実施形態による、ベースラインとなるユーティリティの使用パターンを確立するためのMLA120のようなMLA2200の訓練フェーズを示す。
【0060】
本実施形態では、MLA2200は、例えば住宅の在居者の使用パターンを学習するために、一定の期間にわたって複数のセンサおよびその他のソースからの入力を受信する。例えば、MLA2200が実行される制御モジュール、例えば制御モジュール110は、時計を含むことができ、MLA2200は、この時計から時刻2101と、日付および曜日2102とを受信することができる。住宅には、複数のモーションセンサを設置することができ、MLA2200は、これらのモーションセンサから在居率データ2103を受信することができる。後述する別の実施形態では、在居率を、複数の要因に基づいて予測することもできる。制御モジュールは、MLA2200のための1つまたは複数の屋外温度センサと通信して、現在の気象2104の入力を受信することができる。制御モジュールは、MLA2200のための1つまたは複数の屋内温度センサと通信して、屋内温度2105を受信することもできる。水供給システムの種々の位置に、例えば水道水入口に複数の水温センサ、圧力センサ、および流れセンサを配置して、水道水入口の温度2106、水道の流量2107、および水道の流圧2108を測定することができ、これらをMLA2200に入力することができる。1つまたは複数またはそれぞれの水出口(または水出口への水の流れを制御する弁)にセンサを配置して、それぞれの水出口がいつ開栓および閉栓されたかと、水出口における水温とを検出することができ、温水/冷水の使用時間および温度2109と、温水/冷水の使用体積2110とに関するデータを、MLA2200に入力することができる。MLA2200は、水供給システムによるエネルギの使用2111に関するデータ、例えば、使用時間、使用されるエネルギの量、および制御モジュールがエネルギ供給業者と通信する場合には現在の料金方式に関するデータを収集することもできる。MLA2200は、使用時間、使用範囲等のような、ヒートポンプの使用に関するデータを収集することもできる。本明細書に記載された全ての入力センサデータをMLAが受信、収集、および/または使用することは必須ではなく、本明細書に記載された入力センサデータのリストは網羅的なものではなく、必要に応じてその他の入力データをMLAが受信、収集、および/または使用することもできるということに留意すべきである。特に、制御モジュールが、例えば1人または複数人の在居者の1つまたは複数のスマートデバイス(例えば、スマートフォン)またはパーソナルコンピュータと通信する実施形態では、MLAは、これらのデバイスから取得される他の個人データまたは公共データを受信および使用することができる。
【0061】
訓練フェーズ中、MLA2200は、受信した入力データに基づいて、在居者に関する水およびエネルギの使用パターンを確立する。例えば、使用パターン2300には、例えば時刻、曜日、日付、在居率のレベル等に基づいて予期される使用のベースラインを提供する、加熱水の使用パターン、冷水の使用パターン、エネルギの使用パターン、ヒートポンプの使用パターン、在居率のパターンを含めることができる。
【0062】
在居率の予測
図3は、例えば住宅に関する在居率の予測を出力するために入力データの集合を処理する制御モジュール(例えば、制御モジュール110)で実行されるMLA3200の1つの実施形態を概略的に示す。MLA3200は、MLA2200と同じMLAであってもよいし、または異なるMLAであってもよい。例えば、年間を通じた在居率のレベルと、在居者が住宅に到着するスケジューリングとに基づいて、適切な訓練データの集合を使用して、MLA3200を訓練することができる。
【0063】
MLA3200は、住宅および住宅の在居者に特有の入力データを、複数のソースから制御モジュールを介して受信し、これらのソースには、住宅周辺に配置された1つまたは複数のセンサ、1つまたは複数のユーザインターフェース(例えば、制御モジュールと通信する住宅周辺の制御パネル、スマートデバイス、パーソナルコンピュータ等)、1つまたは複数のソフトウェアプログラム、1つまたは複数の公共および個人データベース等が含まれる。本実施形態では、MLA3200は、現在の時刻3101、日付3102、および曜日3103の入力を、例えば、制御モジュールで実行されるか、または通信ネットワークを介してリモートで実行される時計およびカレンダー機能から受信する。MLA3200は、例えば、ユーザインターフェースを介して住宅の在居者から取得されるか、在居者のスマートデバイス上のカレンダーアプリから自動的に取得されるか、または通信ネットワークを介してパブリックドメインから取得される、任意の特別なイベントまたは公休日3104の入力をさらに受信する。次いで、MLA3200は、入力データに基づいて予期される在居率のレベルを特定し、在居率の予測3300を出力する。建物の予期される在居率を特定することによって、可能性のあるユーティリティ(例えば、エネルギおよび水)の需要を推定または予測することが可能である。
【0064】
さらなる実施形態では、MLA3200は、在居者が住宅内にいないことが判定された場合に、1人または複数人の在居者の現在の位置3105の入力を受信する。例えば、在居者は、GPS機能を備えた1つまたは複数のスマートデバイス(例えば、スマートフォン)を制御モジュールに、または制御モジュールと通信するサーバに登録することができ、次いで、MLA3200は、通信ネットワークを介して、それぞれの在居者に対応する登録済みのスマートデバイスで受信されたGPS信号を取得することによって、それぞれの在居者の現在の位置を受信することができる。次いで、在居者の現在の位置3105と、オプションとしてパブリックドメインから取得される交通状況のような他の情報とに基づいて、MLA3200は、それぞれの在居者ごとの住宅への予期される到着時間3106を特定する。それぞれの在居者の予期される到着時間3106も、現在の時刻3101、日付3102、曜日3103、およびイベント日3104のような他の入力に基づいて特定することができる。次いで、MLA3200は、予期される到着時間3106を使用して、住宅に関する在居率の予測3300(現在の在居率のレベルではなく、将来の在居率のレベル)を出力することができる。
【0065】
在居率の予測3300は、水供給システムのための種々の制御機能を実行する際の、制御モジュールのための有用な指標である。例えば、在居者が到着することが予期される前に、住宅内に設置された中央暖房システムのラジエータに加熱水を送ることができる。別の例は、在居者が到着することが予期される前に、熱エネルギ蓄積器への熱エネルギの蓄積を開始するためにヒートポンプを作動させることであり、さらに、在居者が到着することが予期される前に、熱エネルギ蓄積器が「完全に充熱される」(ある程度の液化に到達する)ように、在居者の予期される到着時間3106に基づいてヒートポンプを一度に作動させることができる。
【0066】
熱エネルギ蓄積器の事前充熱
従来のアプローチでは、ヒートポンプによって環境(例えば、外気)から抽出された熱、および冷媒の圧縮から抽出された熱は、ヒートポンプの作動液から、例えば断熱された蓄積タンクに蓄積されている(例えば、水道からの)水に直接的に伝達され、次いで、この蓄積タンクからの加熱水が、必要に応じて種々の水出口へと供給される。このような従来のアプローチの1つの欠点は、水が所望の温度に到達するために十分な量の熱を、ヒートポンプがタンク内の水に伝達するために必要とされる時間である。したがって、ヒートポンプ給湯器は、一般的に、ヒートポンプによって水が十分に加熱されていない場合に水を所望の温度まで上昇させる従来の電気抵抗式の給湯器と組み合わせられて設置されている。
【0067】
本技術の実施形態によれば、熱エネルギ蓄積器150内の熱エネルギ蓄積媒体は、ヒートポンプ140によって抽出された熱を蓄積するために設けられており、この蓄積された熱を、必要に応じて水を加熱するために使用することができる。本実施形態では、加熱水に対する需要が生じる前に、熱エネルギ蓄積器に熱を伝達するようにヒートポンプを動作させることによって、熱エネルギ蓄積媒体を事前充熱することができる。加熱水に対する需要および/または電気に対する需要が一日を通して変動する場合には、このことが望ましい場合があり、したがって、例えば、加熱水に対する需要が高まっているときにヒートポンプおよび/または電気抵抗式の給湯器を動作させることは、コスト的に非効率である場合があり、高需要時のエネルギネットワークに対して追加的な負荷をかける場合がある。
【0068】
図4は、熱エネルギ蓄積媒体の温度を所望の動作温度まで上昇させるために熱エネルギ蓄積媒体を事前充熱するという決定を出力するために入力データの集合を処理する制御モジュール(例えば、制御モジュール110)で実行されるMLA4200の1つの実施形態を概略的に示す。MLA4200は、MLA2200および/またはMLA3200と同じMLAであってもよいし、または異なるMLAであってもよい。例えば住宅の加熱水の需要に基づいて、適切な訓練データの集合を使用して、MLA4200を訓練することができる。
【0069】
MLA4200は、住宅および住宅の在居者に特有の入力データを、複数のソースから制御モジュールを介して受信し、これらのソースには、住宅周辺に配置された1つまたは複数のセンサ、1つまたは複数のユーザインターフェース(例えば、制御モジュールと通信する住宅周辺の制御パネル、スマートデバイス、パーソナルコンピュータ等)、1つまたは複数のソフトウェアプログラム、1つまたは複数の公共および個人データベース等が含まれる。本実施形態では、MLA4200は、例えば制御モジュール上の時計および/またはカレンダーから取得される、現在の時刻および日付4101の入力と、例えば住宅にエネルギを供給するエネルギ供給業者から取得される、エネルギの単価を指定する現在の料金方式4102のようなエネルギ需要データとを受信する。エネルギの単価が低くなっているオフピーク期間中に
【0070】
代替的または追加的に、MLA4200は、上記のように確立されたユーティリティの使用パターン2300と、在居率の予測3300とからエネルギ需要データを導出することができる。例えば、住宅の現在のエネルギ使用量が、例えば1日の期間にわたって平均レベルよりも少ない場合に、現在のエネルギ使用量を少ないと見なすことができ、対照的に、住宅の現在のエネルギ使用量が平均よりも多い場合に、現在のエネルギ使用量を多いと見なすことができる。
【0071】
次いで、エネルギ供給業者から取得される、受信した料金方式の情報4102(および任意の他のエネルギ需要データ)に基づいて、MLA4200は、現在のエネルギ需要のレベルを特定し、そして、現在のエネルギ需要が少ないと考えられる場合には、加熱水に対する需要が生じる前に、例えば、在居者が住宅に到着することが予期される場合、かつ/または夕方に加熱水に対する需要が高まることが予期される場合に、加熱水を供給するための準備として、熱エネルギ蓄積器を事前充熱するようにヒートポンプを作動させる4300。
【0072】
さらに、受信した時刻/日付4101を、ユーティリティの使用パターン2300および在居率の予測3300と一緒に使用することにより、MLA4200は、加熱水の使用の予期されるレベルおよびエネルギの使用の予期されるレベルのような1つまたは複数のパラメータを予測することができる。次いで、予測されたパラメータに基づいて、MLA4200は、熱エネルギ蓄積媒体に蓄積されるべき熱エネルギの量を決定することができる。例えば、加熱水の使用の予期されるレベルが高く、長期間にわたって高いままであることが予期される場合には、MLA4200は、例えば、持続的な加熱水の使用のために十分な量のエネルギを蓄積するために、設置者の在居者によって設定された通常の動作温度よりも高い温度まで熱エネルギ蓄積媒体を事前充熱する目的で、予期される需要の増加の前に、十分な長期間にわたってヒートポンプを動作させることができる。
【0073】
本実施形態によれば、需要の増加に先立って蓄積熱源を準備するために、水供給システムが加熱水に対して予期される需要を予想することを可能にすることにより、そうしなければ、すなわちヒートポンプが需要時にのみ作動させられていれば、ヒートポンプが十分な応答性を示さなかった可能性がある場合にも、ヒートポンプを利用することが可能となる。さらに、現在の料金方式を入力として使用することにより、エネルギの単価が低くなっている低エネルギ需要期間中に、熱エネルギ蓄積器を事前充熱するようにヒートポンプを動作させることが可能となり、エネルギの使用を高需要時間から低需要時間へとシフトさせることにより、エネルギネットワークに対する負荷を緩和することが可能となる。本実施形態は、加熱水に対する需要と電気に対する需要とが1日を通して並行に上下することが多いという点で、自給自足型の家にも同様に適用可能である。したがって、ヒートポンプを動作させるための電力の使用を低電力需要時間へとシフトさせることにより、自給自足型の家をより円滑に稼働させることができる。全体として、本実施形態は、所望の温度まで水を加熱することが遅れることの結果としての欠点をほとんど有することなく、比較的低コストで、加熱水の供給、すなわちヒートポンプのより効率的な形態を使用することを可能にする。
【0074】
温水需要予測
図5は、冷水の使用に基づいてヒートポンプを作動させるかどうかを判定するように訓練された制御モジュール(例えば、制御モジュール110)で実行されるMLA5200の1つの実施形態を概略的に示す。MLA5200は、MLA2200および/またはMLA3200および/またはMLA4200と同じMLAであってもよいし、または異なるMLAであってもよい。
【0075】
MLA5200は、住宅に特有の入力データを、複数の入力から制御モジュールを介して受信し、これらの入力には、住宅周辺に配置された1つまたは複数のセンサ、1つまたは複数のユーザインターフェース(例えば、制御モジュールと通信する住宅周辺の制御パネル、スマートデバイス、パーソナルコンピュータ等)、1つまたは複数のソフトウェアプログラム、1つまたは複数の公共および個人データベース等が含まれる。訓練フェーズ中、冷水の使用と、それに続く加熱水の使用との間の相関を認識するように、MLA5200を訓練することができる。例えば、バスルームでの冷水の使用(例えば、トイレの水タンクを満たすため)と、それに続くバスルームの蛇口からの加熱水に対する需要(例えば、手洗いのため)との間の相関を認識するように、MLA5200を訓練することができる。したがって、訓練フェーズ中、MLA5200は、冷水の使用に続く加熱水の使用に関するセンサデータを使用して、これら2つのイベントの間の相関の程度を確立することができる。センサデータは、例えば、第1のセンサデータの受信と第2のセンサデータの受信との間の経過時間、第1の水出口に対して相対的な第2の水出口の位置、第1のセンサデータを受信した後に続いて第2のセンサデータを受信する頻度、時刻、曜日を含むことができるが、このリストは網羅的なものではない。
【0076】
本実施形態では、MLA5200は、冷水出口が作動させられたとの入力5101を受信し、確立されたユーティリティの使用パターン2300と、在居率の予測3300とに関連する現在の冷水の使用に基づいて、MLA5200は、現在の冷水の使用に関する相関の程度に従って、現在の冷水の使用から続く可能性のある加熱水に対する需要の確率を決定することができる。加熱水に対する予期される需要が特定されると、MLA5200は、この需要を見越してヒートポンプを作動させるように制御モジュールに命令することができる5300。
【0077】
現在の冷水の使用から続く可能性のある加熱水に対する需要の確率が、熱エネルギ蓄積媒体を事前充熱するようにヒートポンプを動作させるためにエネルギを消費する価値があるほど十分に高いものであるかどうかを判定するために、MLA5200は、ヒートポンプを作動させる価値がある確率を示す閾値を、訓練フェーズ中に確立することができる。1つの実施形態では、ヒートポンプをそのように予測的に作動させることが望ましい事例を手動で入力する在居者または設置者によって、閾値を手動で確立することができる。別の実施形態では、ユーティリティの使用パターン2300および/または在居率の予測3300に基づいて、MLA5200によって閾値を確立することができる。
【0078】
さらなる実施形態では、MLA5200によるヒートポンプを作動させるかどうかの判定は、例えばエネルギ供給業者から取得される、現在の料金方式5102の入力にさらに基づくことができる。本実施形態では、訓練フェーズ中、エネルギ供給業者から取得した料金方式の情報に基づいて、閾値を決定することができる。代替的または追加的に、現在の料金方式に基づいて実行中に閾値を修正することができる。例えば、電気的な加熱要素160を低コストで動作させることができることを意味するオフピーク料金方式であることを現在の料金方式5102が示している場合であって、かつ現在の冷水の使用と加熱水に対する予期される需要との間の相関が弱いことをMLA5200が判定した場合には、MLA5200は、加熱水に対する需要が存在する可能性が低いので、熱エネルギ蓄積器を事前充熱するようにヒートポンプを作動させる必要がないことを判定することができ、加熱水に対する需要が存在する場合には、水を加熱するために電気的な加熱要素160を使用することができる。他方で、電気的な加熱要素160を使用して水を加熱することが高コストであることを意味する、エネルギの単価が高くなっているピーク料金方式であることを現在の料金方式5102が示している場合であって、かつ現在の冷水の使用と加熱水に対する予期される需要との間の相関が弱いものに過ぎないことをMLA5200が判定した場合には、MLA5200は、加熱水を供給するために電気的な加熱要素160を使用するという比較的高コストの選択肢を回避するために、相関が弱いにもかかわらず、加熱水に対する需要のための準備として熱エネルギ蓄積器を事前充熱するようにヒートポンプを作動させたほうが、コスト的により高効率であるということを判定することができる。後者の例では、MLA5200は、前者の例における閾値よりも閾値が低くなるように閾値を修正することができ、したがって、たとえ両者のケースにおける確率が同じであっても、後者の例ではヒートポンプを作動させることができる。
【0079】
加熱水が必要とされる前に水供給システムを準備しておくことにより、加熱水の供給の遅延を低減することが可能となり、これにより、水が加熱されるまで在居者が待機している間の、水出口が開栓されている時間を短縮することにより、浄水の浪費を削減することが可能となる。さらに、加熱水に対する予期される需要を予想し、加熱水が必要とされる前にヒートポンプを動作させることで蓄積熱源を予測的に準備することにより、遅延が低減された、またはそれどころか生来の遅延のない信頼できる形態の加熱水の供給として、ヒートポンプを利用することが可能となる。
【0080】
予測的なデフロスト
上記のように、ヒートポンプ140のようなヒートポンプは、熱交換器コイルを備えた屋外ユニットを含み、これらの熱交換器コイルは、外部の空気または地面から熱を抽出し、この熱を屋内ユニットに伝達し、すなわち、建物を暖めるために建物の内部に直接的に伝達するか、またはこの熱を後々の使用に備えて蓄積するために熱エネルギ蓄積媒体に伝達する。外気から熱エネルギを抽出するプロセスによって屋外ユニット内の熱交換器コイルが冷却され、空気からの水分が、冷たい屋外コイル上で凝縮する。例えば、外気が5℃である冷たい屋外状況では、屋外コイルが氷点下まで冷却される可能性があり、屋外コイル上に霜が形成される可能性がある。屋外コイル上に霜が積もると、ヒートポンプの効率が悪化し、霜のないコイルと比較して、同量の電力を出力するために外気とのより大きな温度差が必要となる。したがって、ヒートポンプの屋外ユニット内の熱交換器コイルから霜を除去するために、定期的に、かつ霜が積もった場合に、ヒートポンプをデフロストサイクルで動作させることが望ましい。
【0081】
ヒートポンプがデフロストサイクルを必要とする場合には、例えば屋外温度および屋外湿度、ヒートポンプの出力、およびヒートポンプの状況に対して多くの要因が影響を及ぼす可能性がある(例えば、比較的旧型のシステムは、効率が悪く、より頻繁なデフロストを必要とする場合がある)。一般的に、ヒートポンプは、屋外の熱交換器コイル上に霜が形成されるたびにデフロストサイクルを動作させる。
【0082】
デフロストサイクル中には、熱交換器コイルを解凍するために温かい冷媒が屋外ユニットに送られるという点で、ヒートポンプが逆方向に動作させられる。ヒートポンプは、例えばコイルが約15℃に到達するまでデフロストサイクルを動作させることができる。熱交換器コイルが一旦解凍されると、ヒートポンプは、通常の加熱サイクルを再開することができる。明らかに、ヒートポンプがデフロストサイクルを動作させている間、ヒートポンプは、デフロストサイクルが完了するまで屋内ユニットに(例えば、熱エネルギ蓄積器150に)熱を伝達するという自身の通常の機能を実施することは不可能である。したがって、ヒートポンプのデフロストサイクルが開始される前に、水供給システムおよび/または建物を準備しておくことが望ましいだろう。
【0083】
図6は、ヒートポンプ(例えば、ヒートポンプ140)の次回のデフロストサイクルを予測するために入力データの集合を処理する制御モジュール(例えば、制御モジュール110)で実行されるMLA6200の1つの実施形態を概略的に示す。MLA6200は、MLA2200および/またはMLA3200および/またはMLA4200および/またはMLA5200と同じMLAであってもよいし、または異なるMLAであってもよい。
【0084】
MLA6200は、住宅に特有の入力データを、複数の入力から制御モジュールを介して受信し、これらの入力には、住宅周辺に配置された1つまたは複数のセンサ、1つまたは複数のユーザインターフェース(例えば、制御モジュールと通信する住宅周辺の制御パネル、スマートデバイス、パーソナルコンピュータ等)、1つまたは複数のソフトウェアプログラム、1つまたは複数の公共および個人データベース等が含まれる。訓練フェーズ中、デフロストサイクルがいつ必要とされるかを認識するように、かつ例えば、気象予報、現在の気象条件、屋内温度、および以前のデフロストサイクルから収集されたデータに基づいて、ヒートポンプの性能(例えば、ヒートポンプの平均熱エネルギ出力、ヒートポンプ効率または成績係数、およびヒートポンプの性能に関する任意の他の情報または量)を把握した上で、ヒートポンプをデフロストサイクルで動作させるための時間尺度および平均エネルギ所要量を確立するように、MLA6200を訓練することができる。
【0085】
本実施形態では、MLA6200は、例えばパブリックドメインから取得されるか、または制御モジュールに登録されたスマートデバイス上の気象アプリから取得される気象予報6101と、例えばパブリックドメインから取得されるか、または住宅周辺に配置された1つまたは複数のセンサから取得される温度および湿度のような現在の気象条件6102と、例えば住宅の内側に配置された1つまたは複数の温度センサから取得される屋内温度6103と、ヒートポンプが最後にデフロストされたときのデフロストサイクル6104に関連するデータとの入力を受信する。気象予報と、現在の気象条件と、屋内温度とに基づいて、MLA6200は、いつ次回のデフロストサイクルが予期される可能性があるかを予測することができ6301、例えば、長期間の低温および高湿度が存在する場合には、デフロストサイクルがより早期に必要とされる可能性があることを予測することができ、ヒートポンプをデフロストするために必要とされる時間の長さを推定することができる。さらに、確立されたユーティリティの使用パターン2300と、在居率の予測3300とを使用して、MLA6200は、デフロストサイクルが予測されている時間中の、エネルギおよび加熱水の予期される需要を推定することができ、例えば、追加的な熱エネルギを熱エネルギ蓄積器に蓄積する(PCM内の潜熱に加えて顕熱としてエネルギを蓄積する)ことや、事前設定された温度よりも高い温度まで住宅を加熱することなどによって、予測されるデフロストサイクルを見越して水供給システムを準備する6302。特に、制御モジュールは、MLA6200の予測に基づいて、次回のデフロストサイクルの予期される開始時間の前の、熱エネルギ蓄積器を完全に充熱する(所定または最適な動作温度に到達する)ために十分な時点に、熱エネルギを熱エネルギ蓄積器に蓄積して熱エネルギ蓄積器を事前充熱するように、ヒートポンプを動作させることを開始することができる。さらに、MLA6200は、ヒートポンプをデフロストするために必要とされる時間の長さを推定することができるので、デフロストサイクルの持続時間の間、加熱水の供給のために十分な量の熱エネルギが蓄積されることを保証するために、熱エネルギ蓄積器を事前充熱することによって水供給システムを準備することができる。
【0086】
追加的または代替的に、MLA6200はさらに、(例えば、蛇口、シャワー、および/または中央暖房のための)エネルギおよび加熱水に対する需要が少なくなっている時間を予想し、ヒートポンプをデフロストするために、例えば在居者への加熱水の供給をさほど妨げない適切なタイミングを決定することができる。これらの入力を使用して、MLA6200は、水およびエネルギの需要が少なくなっている期間(例えば、夜間)および/または在居率が低くなっている期間(例えば、学校に行っている間および勤務時間中)を特定し、次回のデフロストサイクルの予期される開始時間を、その特定された低需要時間および/または低在居率時間へと調節することができる。次いで、MLA6200は、調節された開始時間にデフロストサイクル6301を開始するようにヒートポンプを動作させることを、制御モジュールに命令することができる。例えば、エネルギおよび加熱水の需要が高まることが予期される夕方早くにデフロストサイクルが必要とされる可能性があることをMLA6200が予測した場合には、MLA6200は、より多くの熱を蓄積するようにヒートポンプを動作させることによって、例えば予測されるデフロストサイクルの前に、熱エネルギ蓄積媒体の温度をより高い動作温度まで上昇させると共に、建物を暖めるための熱の一部を転用することによって、熱エネルギ蓄積媒体を事前充熱することができ、かつ/またはMLA6200は、需要が少ないことが予期される夕方遅くへとデフロストサイクルの開始時間を調節することができる。別の例では、日中にデフロストサイクルが予期される場合、MLA6200は、在居率の予測および/または使用パターンに基づいて、エネルギおよび加熱水の需要が低くなっている期間中、例えば、在居率が低くなっているか、またはゼロであることが予測される期間中に、次回のデフロストサイクルがあることを判定することができ、準備または調節が必要ないということを判定することができる。
【0087】
例えば、ヒートポンプの性能と、気象予報と、現在の気象条件と、現在の屋内温度と、予期される在居率と、加熱水に対する需要とに基づいてヒートポンプのための次回のデフロストサイクルを予測し、そのデフロストサイクルが開始される前に水供給システムを予測的に準備することにより、本実施形態は、加熱水の供給をさほど妨げない手法でヒートポンプの所要のデフロストサイクルを実施することを可能にし、これにより、加熱水を供給する有効な手法としてヒートポンプを利用することを可能にする。
【0088】
冷水の提案
1つの実施形態では、在居者の水の使用習慣を監視して対話的に変えるための方法およびシステムが提供される。本方法は、MLA7200によって実装可能である。MLA7200は、MLA2200および/またはMLA3200および/またはMLA4200および/またはMLA5200および/またはMLA6200と同じMLAであってもよいし、または異なるMLAであってもよい。訓練フェーズ中、MLA7200には、上記のように通常の水の使用パターンを確立するために、例えば住宅の在居者による水の使用に関するデータが供給される。さらに、在居者によって設定された温度T1の加熱水を供給するために水出口が開栓されるが、続いて、水がT1に加熱される前に水出口が閉栓されるという、通常の使用パターンにおける事例を認識または識別するように、MLA7200を訓練することができる。このことは、加熱水を供給するためにヒートポンプが使用される場合には特に重要である。なぜなら、ヒートポンプを作動させると、このヒートポンプによって抽出されたエネルギは、熱エネルギ蓄積媒体によって水を十分に加熱することができるようになる前にまず始めに熱エネルギ蓄積媒体を所望の動作温度まで加熱しなければならない、という事例が存在する可能性があるからである。加熱水に対する需要に応答してヒートポンプが作動させられたが、水が所望の温度まで加熱される前に水出口が閉栓されたというケースでは、在居者は、実際には加熱水を受け取ることがないので、ヒートポンプを動作させるために使用されたエネルギ(電気)が無駄になる。上記に鑑みて、1つのそのような短時間事例が特定された場合には1つまたは複数のエネルギ削減戦略を採用するように、MLA7200を訓練することができる。
【0089】
図7を参照すると、S7001において、在居者は、水出口における水温をT1に設定して、水出口を開放する。S7002において、制御モジュールは、例えば1つまたは複数のセンサを使用して、水供給システムに供給する水源における水の圧力または流れの変化を検出することによって水出口が開栓されたことを判定し、S7003において、制御モジュールは、水出口における水温の変化を監視するためにMLA7200を実行する。続いて、S7004において、制御モジュールは、水出口が閉栓されたことを判定し、S7005において、MLA7200は、水出口が開栓されていた期間中に水温がユーザによって設定されたT1に到達したかどうかを判定する。そうである場合には、本方法は、さらなる行動なしに終了する。
【0090】
S7005において、水出口が開栓されていた期間中に水温がT1に到達していないことが判定された場合には、MLA7200は、1つまたは複数のエネルギ削減戦略を採用することができる。1つの実施形態では、MLA7200は、S7006において、水出口が閉栓される前に水が事前設定された温度に到達しなかったことを在居者に通知するための通知を生成するためのソフトウェア機能を開始する。S7007において、MLA7200は、オプションとしてイベントのログを記録することができる。
【0091】
その後の時間に、在居者が、同じ水出口における水温を再びT1に設定して、水出口を開栓することがある。水出口が開放されたことが判定される前または判定されると、本実施形態では、MLA7200は、この水の使用事例を、ユーザが水出口を閉栓する前に水温がT1に到達しそうにない短時間事例であると識別し、次いで、水温をより低い温度T2に設定するか、または加熱水の代わりに冷水を使用するようにユーザに促すためのプロンプト信号を生成するためのソフトフェア機能を開始する。プロンプト信号は、例えば、水出口または水出口の付近でライトを点滅させること、所定のサウンドまたはトーンを生成すること、言葉および/または視覚によるプロンプト(例えば、メッセージまたはイメージを再生すること)等であってよい。MLA7200は、そのような短時間事例を、確立された使用パターンに基づいて判定してもよいし、またはそのような短時間事例を識別するために、1つまたは複数の指標を使用してもよい。例えば、MLA7200は、指標として水出口の位置、または加熱水が要求された時間を使用することができる。別の例として、MLA7200は、トイレが流されてからまた貯水される際のように、このような短時間の加熱水の使用事例に先行する冷水の使用事例と、それに続く手洗いのための加熱水の需要との間の相関を事前に特定することができ、このような冷水の使用を指標として使用することができる。
【0092】
したがって、本実施形態によれば、在居者は、自分自身は加熱水を要求したが、水が所定の温度まで加熱されるために十分な長時間にわたって使用してはいなかったという事例に気づかされる。さらに、ユーザは、短時間になりそうな次回の事例では、より低い温度を使用するか、または加熱水の代わりに冷水を使用するように促され、これにより、ユーザは、水供給システムからの加熱水を、それが必要でない可能性がある場合にも要求することによってエネルギを浪費することを、回避するための選択肢を得る。したがって、本実施形態は、エネルギ使用量を削減するために在居者の加熱水の使用習慣を対話的に変えることを可能にする。
【0093】
図8に示されている別の相補的または代替的な実施形態では、在居者は、この場合にもS8001において水温をT1に設定して、水出口を開栓する。S8002において水出口が開栓されたことを制御モジュールが判定する前または判定すると、MLA7200は、この水の使用事例を短時間事例であると識別し、制御モジュールに、水出口の温度設定をT1からより低い温度T2に変更させることによって追加的または代替的なエネルギ削減戦略を採用する。温度T2は、T1よりも低いが依然として加熱された温度であってもよいし、または温度T2は、水道からの加熱されていない冷水を表してもよい。制御モジュールの制御下で、水供給システムは、S8003において温度T2の水を水出口に出力する。
【0094】
したがって、本実施形態によれば、制御モジュールは、MLA7200が短時間事例を識別すると、先を見越して水温を低下させる。水温を低下させることにより、水を加熱するために必要とされるエネルギが少なくなる。そうすることで、本実施形態は、加熱水が必要でない場合におけるエネルギ消費を削減する。
【0095】
図9に示されているさらに別の相補的または代替的な実施形態では、在居者は、この場合にもS9001において水温をT1に設定して、水出口を開栓する。S9002において水出口が開栓されたことを制御モジュールが判定する前または判定すると、MLA7200は、この水の使用事例を短時間事例であると識別し、制御モジュールに、水出口の流量をより少ない流量へと調節させることによって追加的または代替的なエネルギ削減戦略を採用する。制御モジュールの制御下で、水供給システムは、S9003においてより少ない流量の水を水出口に出力する。
【0096】
したがって、本実施形態によれば、制御モジュールは、MLAが短時間事例を識別すると、先を見越して水の流れを減少させる。本実施形態は、例えば電気的な加熱要素によって水が加熱される場合には特に重要であり、したがって、水の流れを減少させることにより、加熱されるべき水がより少なくなり、使用される水の量を加熱するために必要とされるエネルギがより少なくなる。そうすることで、本実施形態は、水およびエネルギの両方の消費を削減する。
【0097】
漏れ警告
図10は、所与の建物に関する漏れ警告を出力するためにセンサデータの集合を処理する制御モジュール(例えば、制御モジュール110)で実行されるMLA1200の1つの実施形態を概略的に示す。MLA1200は、MLA2200および/またはMLA3200および/またはMLA4200および/またはMLA5200および/またはMLA6200および/またはMLA7200と同じMLAであってもよいし、または異なるMLAであってもよい。
【0098】
MLA1200は、住宅に特有の入力データを、複数の入力から制御モジュールを介して受信し、これらの入力には、住宅周辺に配置された1つまたは複数のセンサ、1つまたは複数のユーザインターフェース(例えば、制御モジュールと通信する住宅周辺の制御パネル、スマートデバイス、パーソナルコンピュータ等)、1つまたは複数のソフトウェアプログラム、1つまたは複数の公共および個人データベース等が含まれる。本実施形態では、MLA1200は、例えば、制御モジュールで実行されている時計およびカレンダー機能から、または通信ネットワークを介してリモートで、現在の時刻および日付1101を受信し、次いで、MLA1200は、確立されたユーティリティの使用パターン2300と、在居率の予測3300とを使用して、現在の時刻および日付に関して予測される水の使用を推定することができる。さらに、MLA1200は、例えば住宅への水道水入口に設けられた適切なセンサによって測定される水道水入口の温度1102と、水道水の流量1103と、水道水の水圧1104との入力を受信し、リアルタイムの水の使用量を特定する。次いで、MLA1200は、予期される使用量およびリアルタイムの使用量に基づいて、現在の水の使用量が予期される通りであるかどうかを判定することができ、現在の水の使用量が予期される使用量を超えている場合には、水漏れ警告1300を出力する。現在の水の使用量が予期される使用量を超えている事例が、システム内の水漏れに相関しているかどうか、または予想外の需要の増加、例えば気象の変化または在居率の増加に相関しているかどうかを認識するように、MLA1200を事前に訓練することができる。いくつかの実施形態では、この値を上回れば予期される使用量を超える水の使用量のレベルが漏れであると見なされるような閾値を、MLA1200に設けることができる。代替的に、MLA1200は、訓練フェーズ中にそのような閾値を確立してもよいし、または例えばユーザのフィードバックに基づいて使用中に閾値を調節してもよい。
【0099】
ユーティリティの使用パターンを確立し、このパターンに対して現在の水の使用量を監視することによって、システム内の潜在的な水漏れを検出し、漏れがより深刻になる前に救済措置または是正措置を取るように在居者に早期に警告することが可能となる。
【0100】
上記の種々のMLAは、同じまたは異なるMLAを指すことができる。複数のMLAが実装される場合には、それらのMLAの1つまたは一部または全てを、制御モジュール110で実行してもよく、また、それらのMLAの1つまたは一部または全てを、適切な通信チャネルを介して制御モジュール110と通信するサーバ(例えば、クラウドサーバ)で実行してもよい。上記の複数の実施形態を、所望の通りに任意の組み合わせで、並行して、または代替的な戦略として実装してよいことは、当業者には理解されるであろう。
【0101】
当業者によって理解されるように、本技術は、システム、方法、またはコンピュータプログラム製品として具現化可能である。したがって、本技術は、完全にハードウェアによる実施形態、完全にソフトウェアによる実施形態、またはソフトウェアとハードウェアとを組み合わせた実施形態の形態をとることができる。
【0102】
さらに、本技術は、コンピュータ可読プログラムコードが具現化されたコンピュータ可読媒体に具現化されたコンピュータプログラム製品の形態をとることができる。コンピュータ可読媒体は、コンピュータ可読信号媒体、またはコンピュータ可読記憶媒体であってよい。コンピュータ可読媒体は、例えば、限定するわけではないが、電子的、磁気的、光学的、電磁的、赤外線、もしくは半導体のシステム、装置、またはデバイス、または前述したものの任意の適切な組み合わせであってよい。
【0103】
本技術の動作を実行するためのコンピュータプログラムコードは、オブジェクト指向プログラミング言語と、従来の手続き型プログラミング言語とが含まれる1つまたは複数のプログラミング言語の任意の組み合わせで記述可能である。
【0104】
例えば、本技術の動作を実行するためのプログラムコードは、従来のプログラミング言語(インタプリトまたはコンパイルされた)でのソースコード、オブジェクトコード、または実行可能コードを含むことができ、従来のプログラミング言語としては、C、またはアセンブリコード、ASIC(特定用途向け集積回路)またはFPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)を設定または制御するためのコード、またはVerilog(商標)またはVHDL(Very high-speed integrated circuit Hardware Description Language)のようなハードウェア記述言語のためのコードなどがある。
【0105】
全てのプログラムコードをユーザのコンピュータで実行してもよいし、一部のプログラムコードをユーザのコンピュータで、一部のプログラムコードをリモートコンピュータで実行してもよいし、または全てのプログラムコードをリモートコンピュータ上またはサーバで実行してもよい。後者のシナリオでは、リモートコンピュータは、任意の種類のネットワークを介してユーザのコンピュータに接続可能である。コードコンポーネントは、手順、方法、またはそれらに類するものとして具現化可能であり、また、ネイティブ命令集合の直接的な機械命令から高レベルのコンパイルまたはインタプリトされた言語構造に至るまでの任意の抽象レベルにおける命令または命令シーケンスの形態をとることができるサブコンポーネントを含むことができる。
【0106】
本技術の好ましい実施形態による論理方法の全てまたは一部が、本方法のステップを実行するための論理要素が含まれる論理装置において適切に具現化可能であること、また、そのような論理要素が、例えばプログラマブル論理アレイまたは特定用途向け集積回路において論理ゲートのようなコンポーネントを含むことができることも、当業者には明らかであろう。このような論理装置は、例えば仮想ハードウェア記述子言語を用いて、このようなアレイ内または回路内に論理構造を一時的または永続的に確立するためのイネーブリング要素においてさらに具現化可能であり、こうした仮想ハードウェア記述子言語は、固定されたまたは伝送可能な搬送媒体を用いて保存可能および伝送可能である。
【0107】
本明細書に列挙された例および条件付き言語は、本技術の原理を読み手が理解するのを助けることを意図しており、本技術の範囲を具体的に列挙されたそのような例および条件に限定することを意図しているわけではない。本明細書に明示的に記載または図示されていなくても、添付の特許請求の範囲によって規定される本技術の範囲内に含まれる、本技術の原理を具現化する種々の構成が、当業者によって案出されてもよいことが理解されるであろう。
【0108】
さらに、理解を助けるために、上記の説明は、本技術の比較的簡略化された実装形態を説明していることがある。当業者が理解するように、本技術の種々の実装形態は、より複雑なものであってよい。
【0109】
いくつかのケースでは、本技術に対する修正の有用な例であると考えられるものが説明されていることもある。このことは、単に理解を助けるために行われているに過ぎず、この場合にも、本技術の範囲を制限するために、または本技術の境界を記載するために行われているわけではない。これらの修正は、網羅的な列挙ではなく、当業者であればその他の修正を加えることができるが、このような修正は、それでもなお本技術の範囲内に留められる。さらに、修正の例が何ら記載されていない場合にも、修正することが不可能であると解釈されるべきではなく、かつ/または記載されているものだけが本技術のその要素を実装する唯一の手法であると解釈されるべきではない。
【0110】
さらに、本技術の原理、態様、および実装形態、ならびにそれらの特定の例を列挙している本明細書の全ての記載は、それらが現在公知であるか将来開発されるかにかかわらず、それらの構造的な均等物および機能的な均等物の両方を包含することを意図している。したがって、例えば本明細書の任意のブロック図が、本技術の原理を具現化する例示的な回路の概観を表現しているということが、当業者には明らかであろう。同様に、任意のフローチャート、フロー図、状態遷移図、擬似コード、およびそれらに類するものが、種々のプロセスを表現しており、こうした種々のプロセスを、コンピュータ可読媒体において実質的に表現することができ、コンピュータまたはプロセッサにより、そのようなコンピュータまたはプロセッサが明示的に示されているかどうかにかかわらず実行可能であるということが理解されるであろう。
【0111】
「プロセッサ」とラベル付けされた任意の機能ブロックが含まれる、図面に示されている種々の要素の機能は、専用のハードウェアと、適切なソフトウェアに関連するソフトウェアを実行可能なハードウェアとを使用することによって提供可能である。プロセッサによって提供される場合、これらの機能は、単一の専用のプロセッサによって提供されてもよいし、単一の共有されるプロセッサによって提供されてもよいし、または複数の個々のプロセッサであって、これらのうちのいくつかが共有可能である複数の個々のプロセッサによって提供されてもよい。さらに、「プロセッサ」または「コントローラ」という用語の明示的な使用は、もっぱらソフトウェアを実行可能なハードウェアのみを指すと解釈されるべきではなく、限定するわけではないが暗示的に、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)ハードウェア、ネットワークプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、ソフトウェアを保存するための読み取り専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、および不揮発性ストレージを含むことができる。他のハードウェア、従来のハードウェア、および/またはカスタムのハードウェアを含むこともできる。
【0112】
本明細書におけるソフトウェアモジュール、または単にソフトウェアであることが示唆されているモジュールは、プロセスステップの実行および/またはテキスト記述を示すフローチャート要素または他の要素の任意の組み合わせとして表現可能である。このようなモジュールは、明示的または暗示的に示されているハードウェアによって実行可能である。
【0113】
本技術の範囲から逸脱することなく、前述した例示的な実施形態に対して多くの改善および修正を加えてもよいことは、当業者には明らかであろう。