(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】熱処理装置
(51)【国際特許分類】
F27D 9/00 20060101AFI20240827BHJP
F27B 9/28 20060101ALI20240827BHJP
F27B 9/30 20060101ALI20240827BHJP
F27D 1/12 20060101ALI20240827BHJP
F27D 7/06 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
F27D9/00
F27B9/28
F27B9/30
F27D1/12 F
F27D7/06 C
(21)【出願番号】P 2024002838
(22)【出願日】2024-01-11
【審査請求日】2024-01-31
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004293
【氏名又は名称】ノリタケ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【氏名又は名称】山根 広昭
(72)【発明者】
【氏名】中村 英紀
(72)【発明者】
【氏名】大威 英晃
(72)【発明者】
【氏名】飯田 雅己
【審査官】山内 隆平
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第219507816(CN,U)
【文献】特開2003-142241(JP,A)
【文献】特開2020-050545(JP,A)
【文献】特開平07-280211(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27D 9/00
F27B 9/28
F27B 9/30
F27D 1/12
F27D 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物が加熱処理される処理空間を内部に有する炉体と、
前記炉体内の前記処理空間を冷却する冷却装置と
を備え、
前記炉体には、第1開口と、第2開口とが形成されており、
前記冷却装置は、
前記炉体の外部に設けられ、前記第1開口と前記第2開口を繋ぐ内管と、
前記内管の周囲の少なくとも一部を囲う外管と、
前記内管と前記外管の間に冷媒を供給する冷媒供給装置と、
前記内管内を前記第1開口から前記第2開口に向かってエアを送るエア供給装置と
を備え
、
前記冷媒供給装置は、前記内管内にエアが送られる方向とは反対方向に向かって前記内管と前記外管の間に冷媒を供給する、
熱処理装置。
【請求項2】
被処理物が加熱処理される処理空間を内部に有する炉体と、
前記炉体内の前記処理空間を冷却する冷却装置と
を備え、
前記炉体には、第1開口と、第2開口とが形成されており、
前記冷却装置は、
前記炉体の外部に設けられ、前記第1開口と前記第2開口を繋ぐ内管と、
前記内管の周囲の少なくとも一部を囲う外管と、
前記内管と前記外管の間に冷媒を供給する冷媒供給装置と、
前記内管内を前記第1開口から前記第2開口に向かってエアを送るエア供給装置と
を備え
、
前記内管と前記外管の間には、らせん状に冷媒が流れる流路が形成されている、
熱処理装置。
【請求項3】
被処理物が加熱処理される処理空間を内部に有する炉体と、
前記炉体内の前記処理空間を冷却する冷却装置と
を備え、
前記炉体には、第1開口と、第2開口とが形成されており、
前記冷却装置は、
前記炉体の外部に設けられ、前記第1開口と前記第2開口を繋ぐ内管と、
前記内管の周囲の少なくとも一部を囲う外管と、
前記内管と前記外管の間に冷媒を供給する冷媒供給装置と、
前記内管内を前記第1開口から前記第2開口に向かってエアを送るエア供給装置と
を備え
、
前記第1開口および前記第2開口は、前記炉体の天井部に形成されている、
熱処理装置。
【請求項4】
被処理物が加熱処理される処理空間を内部に有する炉体と、
前記炉体内の前記処理空間を冷却する冷却装置と
を備え、
前記炉体には、第1開口と、第2開口とが形成されており、
前記冷却装置は、
前記炉体の外部に設けられ、前記第1開口と前記第2開口を繋ぐ内管と、
前記内管の周囲の少なくとも一部を囲う外管と、
前記内管と前記外管の間に冷媒を供給する冷媒供給装置と、
前記内管内を前記第1開口から前記第2開口に向かってエアを送るエア供給装置と
を備え
、
前記内管の内部には、エアの流路を調整する板が設けられている、
熱処理装置。
【請求項5】
前記炉体内の前記処理空間を減圧する真空ポンプをさらに備え、
前記炉体には、前記処理空間を大気開放する大気開放バルブが接続されている、請求項
1~4のいずれか一項に記載された熱処理装置。
【請求項6】
前記外管には、冷媒が供給される供給口と、冷媒が排出される排出口とが設けられており、
前記排出口は、前記供給口よりも高い位置に設けられている、請求項
1~4のいずれか一項に記載された熱処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許第7285360号公報には、巻出部と、加熱処理部と、冷却部と、巻取部とを備えた熱処理装置が開示されている。加熱処理部では、巻出部に設けられた巻出しロールから巻出された帯状の被処理物が搬送されつつ加熱処理される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、被処理物を加熱処理した後の炉体内の冷却効率を向上させたいと考えている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ここで開示される熱処理装置は、熱処理装置は、炉体と、冷却装置とを備えている。炉体は、被処理物が加熱処理される処理空間を内部に有している。冷却装置は、炉体内の処理空間を冷却する。炉体には、第1開口と、第2開口とが形成されている。冷却装置は、内管と、外管と、冷媒供給装置と、エア供給装置とを備えている。内管は、炉体の外部に設けられている。内管は、第1開口と第2開口を繋いでいる。外管は、内管の周囲の少なくとも一部を囲っている。冷媒供給装置は、内管と外管の間に冷媒を供給する。エア供給装置は、内管内を第1開口から第2開口に向かってエアを送る。かかる熱処理装置では、被処理物を加熱処理した後の炉体内の冷却効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、熱処理装置10を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本開示における実施形態の1つについて、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の図面においては、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明している。また、各図における寸法関係(長さ、幅、厚み等)は実際の寸法関係を反映するものではない。上、下、左、右、前、後の向きは、図中、U、D、L、R、F、Rrの矢印でそれぞれ表されている。ここで、上、下、左、右、前、後の向きは、説明の便宜上、定められているに過ぎず、特に言及されない限りにおいて本願発明を限定しない。
【0008】
〈熱処理装置10〉
図1は、熱処理装置10を示す模式図である。熱処理装置10は、帯状(シート状)の被処理物Aを加熱処理するための設備である。この実施形態では、熱処理装置10は、いわゆるロールtoロール方式で帯状の被処理物を搬送しつつ連続的に乾燥させるための装置である。被処理物Aは、例えば、シート基材の両面にそれぞれ電極材料が塗工された二次電池の電極シート、フレキシブル銅張積層板FCCL(Flexible Cupper Clad Laminate)、ポリイミドシートなど帯状のものであれば特に限定されない。熱処理装置10は、帯状(シート状)の種々の被処理物の処理に用いられうる。
【0009】
なお、ここで開示される熱処理装置は、帯状の被処理物Aを加熱処理するロールtoロール方式の装置に限られず、種々の熱処理装置に適用可能である。ここで開示される熱処理装置の構成は、例えば、搬送方向に沿って並べられた複数の搬送ローラによって被処理物を搬送する、いわゆるローラハースキルンにも適用可能である。ここで開示される熱処理装置の構成は、ロールtoロール方式の熱処理装置、ローラハースキルン等の連続式の加熱処理装置に限られない。ここで開示される熱処理装置の構成は、被処理物を炉内で静置した状態で加熱処理する、いわゆるバッチ式の熱処理装置にも適用可能である。
【0010】
図1に示されているように、熱処理装置10は、巻出部30と、加熱処理部40と、冷却部50と、巻取部60とを備えている。帯状の被処理物Aは、巻出部30、加熱処理部40、冷却部50、巻取部60の順で搬送されつつ処理される。被処理物Aは、巻出部30に設けられた巻出ロールA1から巻出され、加熱処理部40で加熱処理され、冷却部50で冷却された後、巻取部60に設けられた巻取ロールA2に巻取られる。
【0011】
〈搬送装置20,22〉
搬送装置20,22は、被処理物Aを搬送する装置である。被処理物Aは、予め定められた搬送経路に沿って搬送される。搬送装置20,22は、それぞれ巻出部30の巻出ロールA1が取り付けられている巻出軸32、および、巻取部60の巻取ロールA2が取り付けられている巻取軸62をそれぞれ回転駆動する装置である。搬送装置20,22は、被処理物Aの搬送を制御する装置から構成されうる。搬送装置20,22としては、例えば、モータとインバータが用いられていてもよく、サーボモータ等が用いられていてもよい。また、搬送装置20,22は、被処理物Aにかかる張力を制御する装置を含んでいてもよい。張力を制御する装置としては、例えば、パウダクラッチが用いられうる。搬送装置20,22は、搬送速度を制御する装置および張力を制御する装置が協働する一式の装置によって実現されていてもよい。
【0012】
巻出軸32は、搬送装置20に接続されている。搬送装置20によって巻出軸32が回転駆動され、巻出ロールA1から被処理物Aが巻出される。巻取軸62は、搬送装置22に接続されている。搬送装置22によって巻取軸62が回転駆動され、巻取ロールA2に被処理物Aが巻取られる。搬送装置20,22は、それぞれ外壁31,61に囲まれた空間内に設けられた大気ボックスに設置されていてもよい。搬送装置20,22は、それぞれ外壁31,61の外に設けられていてもよい。
【0013】
熱処理装置10は、被処理物Aの処理効率を向上させるために、被処理物Aを速い速度で搬送可能に構成されうる。特に限定されないが、被処理物Aの搬送速度は、1m/分~200m/分程度に設定されうる。この実施形態では、被処理物Aの搬送速度は、100m/分程度に設定されている。熱処理装置10では、被処理物Aの搬送速度は、図示しない制御装置によって制御されている。
【0014】
制御装置は、予め定められた搬送条件に応じて被処理物Aが搬送されるように、被処理物Aの搬送速度、被処理物Aにかかる張力等を制御する。制御装置は、被処理物Aを巻出す時の巻出し張力と、処理されている被処理物Aにかかる炉内張力と、処理された被処理物Aを巻取る時の巻取り張力とをそれぞれ制御する。制御装置は、搬送装置20,22に接続されている。また、制御装置は、張力検出ローラ35b、フィードローラ35c、ダンサーローラ35d、張力検出ローラ65c等と接続されていてもよい。制御装置は、張力検出ローラ35bが検出する巻出し張力を搬送装置20にフィードバックし、巻出軸32のトルクを制御する。これによって、巻出し張力が調整される。また、制御装置は、処理されている被処理物Aが掛けられた張力検出ローラ35bが検出する炉内張力をダンサーローラ35dにフィードバックする。検出された炉内張力に応じてダンサーローラ35dが移動する。これによって、炉内張力が調整される。なお、炉内張力が一定の状態でダンサーローラ35dの位置が基準の位置に戻るように、フィードローラ35cの回転速度が制御される。また、制御装置は、張力検出ローラ65cが検出する巻取り張力を搬送装置22にフィードバックし、巻取軸62のトルクを制御する。これによって、巻取り張力が調整される。
【0015】
〈巻出部30〉
巻出部30は、被処理物Aを巻出す設備である。巻出部30は、加熱処理前の被処理物Aが巻付けられた状態の巻出ロールA1を収容している。巻出部30は、内部の設備および巻出ロールA1を囲う外壁31を有している。巻出部30には、巻出軸32と、複数のローラ35とが内部に設けられている。巻出軸32は、加熱処理前の被処理物Aが巻かれた巻出ロールA1が取り付けられる軸である。この実施形態では、巻出軸32が回転駆動されることによって、巻出軸32に取り付けられた巻出ロールA1から被処理物Aが巻出される。
【0016】
巻出部30の外壁31で囲まれた空間内には、被処理物Aの搬送経路を設定する複数のローラ35が設けられている。巻出ロールA1から巻出された被処理物Aは、複数のローラ35に予め定められた順番で掛け廻され、加熱処理部40に向けて搬送される。複数のローラ35は、ガイドローラ35aと、張力検出ローラ35bと、フィードローラ35cと、ダンサーローラ35dとを含んでいる。張力検出ローラ35bは、被処理物Aにかかる張力を検出するためのローラである。張力検出ローラ35bには、図示しない張力検出器が取り付けられている。ダンサーローラ35dは、予め定められた範囲を移動可能に構成されている。ダンサーローラ35dが移動することによって、被処理物Aの張力が調整される。フィードローラ35cは、図示しない駆動装置によって回転駆動される。フィードローラ35cの回転が制御されることによって、ダンサーローラ35dの位置が調整される。
【0017】
〈加熱処理部40〉
加熱処理部40は、帯状の被処理物Aが搬送されつつ加熱処理される設備である。加熱処理部40は、連結部70を介して巻出部30と接続されている。連結部70には、巻出部30の出口と、加熱処理部40の入口とが設けられている。連結部70には、被処理物Aが通る通り道が形成されている。被処理物Aは、連結部70を通って巻出部30から加熱処理部40に搬送される。連結部70に形成された、被処理物Aの通り道は、被処理物Aの幅と厚みよりもわずかに大きい寸法に設定されている。これによって、加熱処理部40の雰囲気と巻出部30の雰囲気は、互いに干渉しにくくなっている。
【0018】
加熱処理部40は、外壁41(炉体41)と、ヒータ42と、ガイドローラ45(45a~45d)とを備えている。外壁41は、被処理物Aが搬送されつつ処理される処理空間40aを内部に有している。外壁41は、ヒータ42と、ガイドローラ45とが配置された処理空間40aを囲っている。
【0019】
〈ガイドローラ45〉
ガイドローラ45は、処理空間40a内に設けられている。ガイドローラ45は、被処理物Aを案内するローラである。被処理物Aが搬送される搬送経路は、ガイドローラ45によって設定される。ガイドローラ45は、被処理物Aの搬送に伴い、従動的に回転するように構成されている。この実施形態では、ガイドローラ45は、略円筒状のローラである。ガイドローラ45aは、加熱処理部40の入口(連結部70)付近に設けられている。複数のガイドローラ45bは、加熱処理部40の下方において入口から出口に向かって予め定められたピッチで並べられている。複数のガイドローラ45cは、加熱処理部40の上方において、複数のガイドローラ45bとは半ピッチずれて並べられている。ガイドローラ45dは、加熱処理部40の出口(連結部72)付近に設けられている。
【0020】
被処理物Aは、加熱処理部40の入口付近のガイドローラ45aに掛けられ下方に搬送される。その後、被処理物Aは、入口から出口に向かって、上下のガイドローラ45b,45cに順に交互に掛け廻される。これにより、加熱処理部40において被処理物Aは、入口から出口に向かって上下に行ったり来たりしつつ進む。
【0021】
〈ヒータ42〉
ヒータ42は、被処理物Aを加熱するための設備である。この実施形態では、ヒータ42は、上下に折り返されつつ、入口から出口に向かって進む被処理物Aの周りに設けられている。ヒータ42は、ガイドローラ45b,45cに掛けられて、上下に折り返される被処理物Aの間隙にも配置されている。ヒータ42は、被処理物Aに対向するように配置されている。ヒータ42は、例えば、ヒータホルダおよび支柱によって固定されてもよい。
【0022】
この実施形態では、ヒータ42として、遠赤外線加熱式の板状のプレートヒータが用いられている。ヒータ42としては、加熱温度や加熱雰囲気等に応じて種々のヒータが用いられうる。ヒータ42としては、例えば、板状のプレートヒータの他に、例えば、筒状のヒータが用いされてもよい。ヒータ42の材質は特に限定されず、金属シースヒータ、セラミックヒータ、ランプヒータ等が用いられてもよい。また、ヒータ42は、遠赤外線加熱式のヒータに限られない。雰囲気炉の場合は、ヒータ42としては、例えば、被処理物に熱風が吹き付けられる熱風加熱式のヒータや赤外線加熱式のランプヒータが用いられてもよい。加熱処理された被処理物Aは、出口付近に設けられたガイドローラ45dを通して、冷却部50に向けて搬出される。
【0023】
〈冷却部50〉
冷却部50は、加熱処理部40で加熱処理された被処理物Aが搬送されつつ冷却される設備である。冷却部50は、連結部72を介して加熱処理部40と接続されている。連結部72には、加熱処理部40の出口と、冷却部50の入口とが設けられている。
【0024】
詳細な図示は省略するが、冷却部50は、冷却ローラと、複数のガイドローラと、外壁51とを備えていてもよい。冷却部50には、複数の冷却ローラが設けられていてもよい。外壁51は、複数の冷却ローラと、複数のガイドローラとが配置された処理空間を囲っている。複数の冷却ローラと複数のガイドローラは、冷却部50において被処理物Aが搬送される搬送経路を設定している。
【0025】
冷却ローラは、内部に冷媒が流通するように構成されたローラである。被処理物Aは、冷却ローラの表面に接することによって冷却される。冷却ローラには、図示しない駆動装置が接続されていてもよい。冷却ローラは、搬送方向に沿って、設定された搬送速度に合わせて回転しうる。
【0026】
この実施形態では、被処理物Aは、冷却部50において、室温程度まで冷却される。冷却される被処理物Aの温度は、特に限定されない。なお、ガイドローラ、冷却ローラ等の冷却部50の構成は、特に限定されない。
【0027】
冷却された被処理物Aは、連結部74を通って巻取部60に搬送される。なお、冷却部50は、熱処理装置10において、必ずしも設けられていなくてもよい。
【0028】
冷却部50は、連結部74を介して巻取部60と接続されている。連結部74は、冷却部50の出口と、巻取部60の入口とを備えている。冷却された被処理物Aは、連結部74を通って巻取部60に搬送される。
【0029】
〈巻取部60〉
巻取部60は、被処理物Aを巻き取る設備である。巻取部60は、冷却部50を通じて冷却された被処理物Aを巻取るための巻取ロールA2を収容している。巻取部60は、内部の設備および巻取ロールA2を囲う外壁61を有している。巻取部60には、巻取軸62と、複数のローラ65とが設けられている。巻取軸62には、加熱処理部40で加熱処理され、冷却部50で冷却された被処理物Aが巻き取られた巻取ロールA2が取り付けられている。巻取軸62が回転駆動されることによって、巻取ロールA2に被処理物Aが巻取られる。
【0030】
巻取部60の外壁61で囲まれた空間内には、被処理物Aの搬送経路を設定する複数のローラ65が設けられている。複数のローラ65は、巻取部60において被処理物Aが搬送される搬送経路を設定する。冷却部50から搬送された被処理物Aは、巻取部60の入口(連結部74)付近のローラ65に掛けられた後に、複数のローラ65に予め定められた順番に掛け廻され、巻取ロールA2に巻取られる。複数のローラ65は、ガイドローラ65aと、ダンサーローラ65bと、張力検出ローラ65cと、フィードローラ65dとを含んでいる。ダンサーローラ65bは、予め定められた範囲を移動可能に構成されている。ダンサーローラ65bは、例えば、巻取ロールA2が交換される際に、被処理物Aの必要な余長を確保するために移動されうる。張力検出ローラ65cには、図示しない張力検出器が取り付けられている。フィードローラ65dは、巻取ロールA2を交換するときに交換後の巻取ロールA2に被処理物Aを貼り付ける際、貼り付けに必要な余長を送り出す。
【0031】
〈真空ポンプ80〉
熱処理装置10は、真空ポンプ80を備えている。上述した巻出部30、加熱処理部40、冷却部50および巻取部60の内部の空間は、それぞれ外壁31,41,51,61によって囲まれている。巻出部30、加熱処理部40、冷却部50および巻取部60の各部は、外壁31,41,51,61によってそれぞれ外部空間と隔離された空間を有している。外壁31,41,51,61の内部の空間は、被処理物Aの処理時には、連通している。各部の外壁31,41,51,61にはそれぞれ真空ポンプ80が接続されている。真空ポンプ80は、巻出部30、加熱処理部40、冷却部50および巻取部60の内部の空間(加熱処理部40においては処理空間40a)を減圧する。この実施形態では、被処理物Aは、大気圧よりも低い予め定められた真空雰囲気下で処理される。
【0032】
なお、真空ポンプ80の接続形態は、特に限定されない。真空ポンプ80が複数設けられており、複数の真空ポンプ80は、巻出部30、加熱処理部40、冷却部50および巻取部60の各部にそれぞれ接続されていてもよい。ひとつの真空ポンプ80から配管が分岐しており、巻出部30、加熱処理部40、冷却部50および巻取部60のうち複数の部の内部が減圧されてもよい。
【0033】
真空ポンプ80の配管には、各部の真空度を調整するための真空バルブ81~84が設けられている。炉体41には、処理空間40aを大気開放する大気開放バルブ85が接続されている。真空バルブ81~84は、各部と真空ポンプ80の接続および各部と真空ポンプ80の切断を切り替え可能に構成されている。各部の真空度を調整しない場合には、真空バルブ81~84の替わりに開閉バルブが用いられていてもよい。
【0034】
加熱処理部40の入口(この実施形態では、連結部70)には、扉70aが設けられている。扉70aは、巻出ロールA1を取り替える時等に閉じられる。巻出ロールA1を取り替える時等に扉70aが閉じられることによって、加熱処理部40の雰囲気(この実施形態では、減圧状態)を保つことができる。扉70aは、巻出ロールA1を取り替える時等、被処理物Aが連結部70を通っている時に閉じられてもよい。巻出ロールA1に巻かれた被処理物Aの残りが少なくなってきたとき、巻出ロールA1は、新しいものに交換される。交換後の巻出ロールA1の被処理物Aの端部と、交換前の被処理物Aの端部とは、繋ぎ合わせられる。被処理物Aを処理空間40aに残した状態で、加熱処理部40の雰囲気を保ったまま巻出ロールA1を交換することができ、巻出ロールA1交換後の装置の復旧が早くなる。
【0035】
また、冷却部50の出口(この実施形態では、連結部74)には、扉74aが設けられている。扉74aは、扉70aと同様、巻取ロールA2を取り替える時等に扉74aが閉じられることによって、冷却部50の雰囲気(この実施形態では、減圧状態)を保つことができる。扉74aは、巻取ロールA2を取り替える時等、被処理物Aが連結部74を通っている時に閉じられてもよい。巻取ロールA2に巻かれた被処理物Aが多くなってきたとき、巻取ロールA2は、新しいものに交換される。交換後の巻取ロールA2の端部と、被処理物Aの端部とは、繋ぎ合わされる。被処理物Aを処理空間に残した状態で、冷却部50の雰囲気を保ったまま巻取ロールA2を交換することができ、巻取ロールA2交換後の装置の復旧が早くなる。
【0036】
ところで、熱処理装置は、被処理物の加熱処理後に立ち下げられる。立ち下げの際、炉体内の温度は下げられる。炉体内の温度が高い状態が長時間続くと、炉体内の設備が劣化する場合がある。また、炉体内の温度が高い状態が長時間続くことによって、炉体内の雰囲気を保つための部材(例えば、炉体の扉に設けられるシール材等)の劣化も進行しやすい。以下、ここで開示される熱処理装置について、上述した熱処理装置10の加熱処理部40の構成を例にして説明する。
【0037】
図2は、加熱処理部40の断面図である。
図2では、前方から後方に向かって見た加熱処理部40の上部の断面が模式的に示されている。
図3は、加熱処理部40の模式図である。
図3では、上方から見た加熱処理部40の平面が模式的に示されている。
図2および
図3では、冷媒が流れる方向は矢印で示されており、エアが流れる方向は白抜き矢印で示されている。
【0038】
熱処理装置10は、炉体41と、冷却装置90とを備えている。この実施形態では、炉体41と、冷却装置90とは、加熱処理部40に設けられている。炉体41は、略直方体状である。炉体41は、被処理物Aが加熱処理される処理空間40aを内部に有している。炉体41の内部の処理空間40aには、ヒータ42、ガイドローラ45等が設けられている。処理空間40aには、ヒータ42、ガイドローラ45等を支持する部材が設けられていてもよい。炉体41は、内部の雰囲気を遮断できる限りにおいて、特に限定されない。炉体41は、所要の厚みを有する金属板(ステンレス板等)から構成されていてもよい。炉体41は、断熱材を含んでいてもよい。炉体41は、内側面が断熱材によって構成され、外側面が金属板によって構成されていてもよい。炉体41の材質、厚み等の構成は、目的とする被処理物Aの処理温度等に応じて適宜設定される。
【0039】
図2に示されているように、炉体41には、第1開口41aと、第2開口41bとが形成されている。この実施形態では、第1開口41aおよび第2開口41bは、炉体41の天井部41cに形成されている。第1開口41aおよび第2開口41bは、炉体41の天井部41cを貫通している。第1開口41aは、炉体41の左側の端部に形成されている。第2開口41bは、炉体41の右側の端部に形成されている。なお、第1開口41aおよび第2開口41bが形成される位置は、特に限定されない。第1開口41aおよび第2開口41bは、天井部41cの中央部に接続されていてもよい。第1開口41aおよび第2開口41bは、炉体41の側面部等、天井部41c以外に形成されていてもよい。第1開口41aおよび第2開口41bには、冷却装置90が接続されている。
【0040】
〈冷却装置90〉
冷却装置90は、炉体41内の処理空間40aを冷却する。冷却装置90は、被処理物Aの加熱処理後等、装置の立ち下げ時に作動し、炉体41内の温度を低下させる。特に限定されないが、炉体41内の温度は、常温程度まで下げられうる。冷却装置90は、被処理物Aの加熱処理後、ヒータ42が切られた後に作動しうる。冷却装置90は、内管91と、外管92と、冷媒供給装置93(
図3参照)と、エア供給装置94とを備えている。この実施形態では、炉体41には、前後方向に置いて2つの冷却装置90が設けられている(
図3参照)。なお、炉体41の寸法、冷却装置90の冷却能力等に応じて冷却装置90の必要数は異なるため、冷却装置90の数は、特に限定されない。
【0041】
〈内管91〉
内管91は、炉体41の外部に設けられている配管である。この実施形態では、内管91は、略コの字状の配管である。内管91の断面は、略円形である。内管91は、第1部91aと、第2部91bと、第3部91cとを有している。第1部91aは、炉体41の左側において高さ方向に沿って延びる部位である。第3部91cは、炉体41の右側において高さ方向に沿って延びる部位である。第2部91bは、第1部91aと、第3部91cとを繋ぐ部位である。第1部91aと、第3部91cとは、略同じ長さである。第1部91aおよび第3部91cは、第2部91bと比較して短い。なお、内管91の形状、寸法等は、特に限定されない。
【0042】
この実施形態では、第1部91aの上部は、第1部91aの下部よりも径が大きい。第1部91aの上端は、第2部91bの左端と略L字状に繋がっている。第2部91bは、炉体41の幅方向に沿って延びる部位である。第2部91bの右端には、略円形状の開口91b1が形成されている。当該開口している第2部91bの右端には、外径方向に広がったフランジ部91b2が設けられている。フランジ部91b2には、右側から蓋91eが取り付けられている。開口91b1は、蓋91eによって閉じられている。第2部91bのフランジ部91b2近傍の側面からは、下方に向かって第3部91cが延びている。第3部91cの径は、第2部91bの径よりも小さい。第1部91a~第3部91cの径は、エア供給装置94の位置および寸法、開口41a,41bの径等に応じて設計されうる。
【0043】
内管91は、第1開口41aから上方に延びる配管41a1および第2開口41bから上方に延びる配管41b1を介して炉体41と接続されている。第1部91aの下端は、配管41a1の上端と接続されている。第3部91cの下端は、配管41a1の上端と接続されている。内管91は、第1開口41aと第2開口41bを繋いでいる。ここでは、内管91は、配管41a1,41b1を介して第1開口41aと第2開口41bを繋いでいる。内管91の内部空間91dは、第1開口41a、第2開口41bおよび配管41a1,41b1を介して炉体41内の処理空間40aと繋がっている。内管91は、外管92に囲われている。
【0044】
〈外管92〉
外管92は、内管91の周囲の少なくとも一部を囲う配管である。外管92は、周方向において、内管91の第2部91bの周囲を囲っている。外管92の径は、内管91の第2部91bの径よりも大きい。この実施形態では、外管92と、内管91の第2部91bとは、二重管を構成している。外管92の外径は、内管91のフランジ部91b2の外形よりも小さい。外管92の右端部92aは、内管91のフランジ部91b2に接続されている。外管92は、内管91のフランジ部91b2の内側面から炉体41の幅方向に沿って延びている。外管92は、内管91よりも長い。外管92の左端部92bは、略円形状である。外管92の左端部92bは、内管91の第1部91aよりも外側に位置している。
【0045】
外管92の下部には、内管91が貫通している。ここでは、外管92の左側の下部92cと、右側の下部92dとからは、それぞれ内管91の第1部91aおよび第3部91cが貫通している。外管92の左側の下部92cは、第1部91aの側周面と接続されている。外管92の右側の下部92dは、第3部91cの側周面と接続されている。外管92と、内管91との間には、内部空間93aが形成されている。内部空間93aは、内管91の内部空間91d、炉体41内の処理空間40aから隔離されている。
【0046】
図3に示されているように、外管92には、供給口92eと、排出口92fとが設けられている。外管92には、脱気口92gが形成されていてもよい。脱気口92gは、外管92の軸方向中央部に形成されている。脱気口92gは、上方に向かって開口する位置に形成されている。供給口92eは、外管92の右側の外周側面に設けられている。供給口92eは、前後方向において、外管92の端部に設けられている。供給口92eは、高さ方向において、外管92の略中央部に設けられている。排出口92fは、外管92の左端部92bに設けられている。排出口92fは、左端部92bの上部に設けられている(
図2参照)。排出口92fは、供給口92eよりも高い位置に設けられている。この実施形態では、供給口92eおよび排出口92fは、冷媒供給装置93に接続されている。内部空間93aには、冷媒供給装置93(
図3参照)によって冷媒が供給される。
【0047】
〈冷媒供給装置93〉
冷媒供給装置93は、内管91と外管92の間に冷媒を供給する装置である。冷媒供給装置93としては、内管91と外管92の間の空間(内部空間93a)に冷媒を供給できる装置であれば、特に限定されない。この実施形態では、冷媒供給装置93として、チラーとも称される、予め設定された温度の冷媒を循環させる装置が用いられている。内部空間93aに供給される冷媒の温度は、例えば、常温、常温よりも低い温度等、処理空間40aの雰囲気温度よりも低い温度である。特に限定されないが、冷媒としては、水等を用いることができる。冷媒供給装置93は、炉体41の外部に配置されている。
【0048】
冷媒供給装置93は、ポンプによって冷媒を循環させる。冷媒供給装置93は、ホース、継手等を介して外管92の供給口92eおよび排出口92fと接続されている。冷媒供給装置93は、ポンプによって、供給口92eに冷媒を供給し、排出口92fから冷媒を排出する。冷媒供給装置93は、外管92の右側から左側に向かって冷媒を供給する。冷媒は、冷媒供給装置93内での熱交換によって設定温度に冷却され、冷媒供給装置93と、内管91と外管92の間の空間を循環する。内管91の外周側面は、冷媒によって冷やされる。これによって内管91の内部空間91dは、冷やされる。内管91の内部空間91dには、エア供給装置94によってエアが送られる。
【0049】
〈エア供給装置94〉
エア供給装置94は、内管91内を第1開口41aから第2開口41bに向かってエアを送る装置である。エア供給装置94としては、内管91内にエアを供給できる装置であれば、特に限定されない。この実施形態では、エア供給装置94は、内管91の内部空間91dに設けられている。エア供給装置94は、第2開口41bの上部に設けられている。エア供給装置94として、シロッコファンが用いられている。エア供給装置94としてシロッコファンを用いることによって、コンパクトな装置で大量のエアを内管91内に供給することができる。なお、エア供給装置94は、シロッコファンに限られず、プロペラファン、ターボファン等が用いられてもよい。エア供給装置94は、第1開口41aから第2開口41bに向かってエアを送ることによって、炉体41の処理空間40aと、内管91の内部空間91dとにエアを循環させる。
【0050】
エア供給装置94は、電動機94aによって駆動される。電動機94aとしては、例えば、サーボモータが用いられうる。エア供給装置94は、シャフト94b,94f、プーリー94c,94eおよびベルト94dを介して電動機94aに駆動される。電動機94aからは、シャフト94bが延びている。シャフト94bには、プーリー94cが接続されている。プーリー94cは、ベルト94dを介してプーリー94eに接続されている。プーリー94cおよびベルト94dは、カバー94gに収容されていてもよい。プーリー94eは、プーリー94eの回転軸と、エア供給装置94の回転軸とが一致する位置に配置されている。プーリー94eは、シャフト94fを介してエア供給装置94と接続されている。なお、エア供給装置94の駆動機構は、上述した形態に限定されない。例えば、エア供給装置94には、電動機94a(モータ)がベルト等を介さずに直接接続されていてもよい。
【0051】
図2に示されているように、シャフト94fの一端には、プーリー94eが接続されており、他端には、エア供給装置94が接続されている。シャフト94fは、蓋91eに形成された貫通孔91e1に挿通されている。蓋91eの外側面には、磁気シール91e2が設けられている。磁気シール91e2によって、内管91の内部空間91dと、外部とが遮断されている。蓋91eの内側面には、シャフト94fを支持する支持部材91e3が取り付けられている。支持部材91e3は、軸受を有している。シャフト94fは、軸受を介して回転可能に支持されている。電動機94aによってエア供給装置94(この実施形態では、シロッコファン)の羽根が回転駆動される。これによって、内部空間91dにおいてエアの流れが形成される。
【0052】
上述した実施形態では、熱処理装置10は、炉体41と、冷却装置90とを備えている。炉体41は、被処理物Aが加熱処理される処理空間40aを内部に有している。冷却装置90は、炉体41内の処理空間40aを冷却する。炉体41には、第1開口41aと、第2開口41bとが形成されている。冷却装置90は、内管91と、外管92と、冷媒供給装置93と、エア供給装置94とを備えている。内管91は、炉体41の外部に設けられている。内管91は、第1開口41aと第2開口41bを繋いでいる。外管92は、内管91の周囲の少なくとも一部を囲っている。冷媒供給装置93は、内管91と外管92の間に冷媒を供給する。エア供給装置94は、内管91内を第1開口41aから第2開口41bに向かってエアを送る。
【0053】
熱処理装置10では、装置の立ち下げ時、内管91の内側の空間には、エア供給装置94によって、第1開口41aから第2開口41bに向かってエアが送られる。これによって、内管91の内側の空間と、炉体41の処理空間40aの雰囲気は、循環する。熱処理装置10では、冷媒供給装置93によって内管91と外管92の間に冷媒が供給される。これによって、内管91が冷却される。処理空間40a内の雰囲気は、第1開口41aから内管91内に供給される。内管91が冷却されることによって、内管91内を通るエアは、冷却される。内管91内で冷却されたエアは、第2開口41bから炉体41の処理空間40aに供給される。炉体41の処理空間と、内管91内の空間(内部空間91d)とでは、雰囲気が内管91内において冷却されつつ循環する。これによって、熱処理装置10の立ち下げ後、炉体41の処理空間40aが早く冷却される。換言すると、熱処理装置10では、炉体41の処理空間40aの冷却効率が向上されている。炉体41内の温度が早く下げられることによって、炉体41内の雰囲気を保つための部材(例えば、炉体の扉に設けられるシール材等)等の劣化が低減されうる。
【0054】
熱処理装置10は、炉体41内の処理空間40aを減圧する真空ポンプ80を備えている。真空状態では、処理空間40a内に対流が生じず、炉体41の冷却には長時間がかかりうる。この実施形態では、炉体41には、処理空間40aを大気開放する大気開放バルブ85が接続されている。熱処理装置10の立ち下げ時には、大気開放バルブ85が開かれうる。大気開放バルブ85が開かれた後、上述したように、冷媒によって冷却されたエアを炉体41の処理空間40aに循環させることができる。このため、真空ポンプ80を備えた熱処理装置10においても、処理空間40aの冷却効率が向上されうる。
【0055】
上述した実施形態では、第1開口41aおよび第2開口41bは、炉体41の天井部41cに形成されている。処理空間40aにおいて、天井部41cに近い程、温度が高いエアが集まりやすい。炉体41の天井部41cに第1開口41aおよび第2開口41bが形成されていることによって、エアの冷却効率が向上しうる。
【0056】
図2に示されているように、エア供給装置94は、内管91の第1開口41aから第2開口41bに向かってエアを送っている。これによって、内管91では、左から右に向かってエアが流れる。これに対し、冷媒供給装置93は、供給口92e(
図3参照)から排出口92fに向かって冷媒を供給する。これによって、内管91と外管92の間では、右から左に向かって冷媒が流れる。換言すると、冷媒供給装置93は、内管91内にエアが送られる方向とは反対方向に向かって内管91と外管92の間に冷媒を供給する。エアが送られる方向と、冷媒が供給される方向とが反対方向に設定されていることによって、内管91の冷却効率が向上する。
【0057】
ここで、冷媒を供給する方向は、供給口92eから排出口92fに向かう方向によって定められる。なお、エアが送られる方向と、冷媒が供給される方向とは、必ずしも反対方向でなくてもよく、同じ方向であってもよい。
【0058】
上述した実施形態では、排出口92fは、供給口92eよりも高い位置に設けられている。これによって、内管91と外管92の間の空間が、冷媒で満たされやすくなる。その結果、内管91内の空間と、処理空間40aとを循環するエアの冷却効率が向上しうる。さらに、排出口92fは、内管91の上端よりも高い位置に設けられていてもよい。
【0059】
なお、冷媒の流路は、内管91を冷却できる限りにおいて、特に限定されない。
【0060】
この実施形態では、
図2および
図3に示されているように、内管91と外管92の間には、スクリュー羽根92hが設けられている。スクリュー羽根92hは、内管91の外周側面および外管92の内周側面に沿って、らせん状に巻かれている。これによって。内管91と外管92の間には、らせん状に冷媒が流れる流路が形成されている。かかる構成によって、内管91と外管92の間を流れる冷媒の流通経路が長くなり、内管91の冷却効率が向上しうる。その結果、内管91の内部を通るエアの冷却効率が向上しうる。
【0061】
また、内管91の内部には、エア供給装置94によって供給されるエアの流路を調整する板が設けられていてもよい。内管91の内部には、エアが内管91に沿って直線的に流れることを阻害する板が設けられていてもよい。例えば、内管91の内周面には、らせん状の板が設けられていてもよい。これによって、エアの流路は、らせん状の板に沿って形成されうる。らせん状の板は、第2部91bの内周面に設けられうる。内管91の内周面にらせん状の板が設けられていることによって、エア供給装置94によって供給されるエアの流れが乱されうる。これによって、内管91内のエアの滞留時間が延ばされ、エアの冷却効率が向上されうる。また、エアが内管91の内周面に当たりやすくなることによって、冷媒からの伝熱面積が大きくなりうる。その結果、エアの冷却効率が向上されうる。
【0062】
以上、具体的な実施形態を挙げて詳細な説明を行ったが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。このように、請求の範囲に記載の技術には、以上に記載した実施形態を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0063】
なお、本明細書は以下の項1~7を含んでいる。以下の項1~7は、上記した実施形態には限定されない。
【0064】
項1:
被処理物が加熱処理される処理空間を内部に有する炉体と、
前記炉体内の前記処理空間を冷却する冷却装置と
を備え、
前記炉体には、第1開口と、第2開口とが形成されており、
前記冷却装置は、
前記炉体の外部に設けられ、前記第1開口と前記第2開口を繋ぐ内管と、
前記内管の周囲の少なくとも一部を囲う外管と、
前記内管と前記外管の間に冷媒を供給する冷媒供給装置と、
前記内管内を前記第1開口から前記第2開口に向かってエアを送るエア供給装置と
を備える、
熱処理装置。
【0065】
項2:
前記冷媒供給装置は、前記内管内にエアが送られる方向とは反対方向に向かって前記内管と前記外管の間に冷媒を供給する、項1に記載された熱処理装置。
【0066】
項3:
前記内管と前記外管の間には、らせん状に冷媒が流れる流路が形成されている、項1または2に記載された熱処理装置。
【0067】
項4:
前記第1開口および前記第2開口は、前記炉体の天井部に形成されている、項1~3のいずれか一項に記載された熱処理装置。
【0068】
項5:
前記炉体内の前記処理空間を減圧する真空ポンプをさらに備え、
前記炉体には、前記処理空間を大気開放する大気開放バルブが接続されている、項1~4のいずれか一項に記載された熱処理装置。
【0069】
項6:
前記外管には、冷媒が供給される供給口と、冷媒が排出される排出口とが設けられており、
前記排出口は、前記供給口よりも高い位置に設けられている、項1~5のいずれか一項に記載された熱処理装置。
【0070】
項7:
前記内管の内部には、エアの流路を調整する板が設けられている、項1~6のいずれか一項に記載された熱処理装置。
【符号の説明】
【0071】
A 被処理物
A1 巻出ロール
A2 巻取ロール
10 熱処理装置
20,22 搬送装置
30 巻出部
31,41,51,61 外壁
32 巻出軸
35 ローラ
40 加熱処理部
40a 処理空間
41 炉体
41a 第1開口
41a1,41b1 配管
41b 第2開口
41c 天井部
42 ヒータ
45 ガイドローラ
50 冷却部
60 巻取部
62 巻取軸
65 ローラ
70,72,74 連結部
70a,74a 扉
80 真空ポンプ
81~84 真空バルブ
85 大気開放バルブ
90 冷却装置
91 内管
91a 第1部
91b 第2部
91b1 開口
91b2 フランジ部
91c 第3部
91d 内部空間
91e 蓋
91e1 貫通孔
91e2 磁気シール
91e3 支持部材
92 外管
92a 右端部
92b 左端部
92c,92d 下部
92e 供給口
92f 排出口
92g 脱気口
92h スクリュー羽根
93 冷媒供給装置
93a 内部空間
94 エア供給装置
94a 電動機
94b,94f シャフト
94c,94e プーリー
94d ベルト
94g カバー
【要約】
【課題】炉体内の冷却効率の向上。
【解決手段】熱処理装置10は、炉体41と、冷却装置90とを備えている。炉体41は、被処理物Aが加熱処理される処理空間40aを内部に有している。冷却装置90は、炉体41内の処理空間40aを冷却する。炉体41には、第1開口41aと、第2開口41bとが形成されている。冷却装置90は、内管91と、外管92と、冷媒供給装置93と、エア供給装置94とを備えている。内管91は、炉体41の外部に設けられている。内管91は、第1開口41aと第2開口41bを繋いでいる。外管92は、内管91の周囲の少なくとも一部を囲っている。冷媒供給装置93は、内管91と外管92の間に冷媒を供給する。エア供給装置94は、内管91内を第1開口41aから第2開口41bに向かってエアを送る。
【選択図】
図2