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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】グリース組成物
(51)【国際特許分類】
   C10M 169/02 20060101AFI20240827BHJP
   C10M 107/08 20060101ALI20240827BHJP
   C10M 117/02 20060101ALN20240827BHJP
   C10M 143/06 20060101ALN20240827BHJP
   C10N 20/00 20060101ALN20240827BHJP
   C10N 20/02 20060101ALN20240827BHJP
   C10N 30/02 20060101ALN20240827BHJP
   C10N 40/02 20060101ALN20240827BHJP
   C10N 40/04 20060101ALN20240827BHJP
   C10N 50/10 20060101ALN20240827BHJP
【FI】
C10M169/02
C10M107/08
C10M117/02
C10M143/06
C10N20:00 Z
C10N20:02
C10N30:02
C10N40:02
C10N40:04
C10N50:10
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2024005814
(22)【出願日】2024-01-18
【審査請求日】2024-02-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】391021031
【氏名又は名称】株式会社ダイゾー
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】弁理士法人市澤・川田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松原 祐有
(72)【発明者】
【氏名】米田 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】小沢 博幸
【審査官】齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-213330(JP,A)
【文献】特開2013-216810(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M 101/00-177/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基油と、増ちょう剤と、組成物中5~25質量%の重量平均分子量50000以上であるポリイソブチレンと、を含み、組成物中において前記基油と前記ポリイソブチレンとの質量比率(基油:ポリイソブチレン)が90:10~75:25の範囲内であり、組成物のJIS K2220に基づき-40℃における起動トルクを測定した低温トルクが300mN・m以下であり、前記基油と前記ポリイソブチレンとの混合基油の40℃における動粘度が1500mm/s以上である、グリース組成物(但し、増ちょう剤と基油を含むグリース組成物において、(a)炭化水素系ポリマー、(b)有機モリブデン化合物、及び(c)ジチオリン酸亜鉛を含有するグリース組成物を除く)
【請求項2】
記基油と前記ポリイソブチレンとの混合基油の粘度指数が200以上である請求項1に記載のグリース組成物。
【請求項3】
前記増ちょう剤が組成物中15質量%以下のリチウム石けんである請求項2に記載のグリース組成物。
【請求項4】
前記混合基油の流動点が-30℃以下である請求項3に記載のグリース組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械部品、特に自動車部品などの低温環境下において使用される機械部品に好適な、高粘度基油を使用したグリース組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ギア、軸受等の機械部品には、動きを滑らかにし、腐食や摩耗を防ぐため、グリースが塗布されていることが多い。例えば、防錆性、耐摩耗性に優れたグリース組成物として、基油に、耐摩耗剤、増ちょう剤、防錆剤及びポリイソブチレンを含有したグリース組成物が開発されている(下記特許文献1参照)。
【0003】
一方、近年では、地球環境保護及びSDGsの観点から、COを減らすために様々な努力がなされている。その一つとして、自動車業界では、HEV車やEV車を普及させる傾向にある。HEV車やEV車は、従来のガソリン車に較べると、エンジン音が極めて小さい、或いは、全く発生せず、極めて静かな車である。さらなる静音化をなすため、エンジン音以外から発生する音の静音化も必要になると予想される。よって、このような車両において、従来はあまり問題視されなかった様々な音の静音化の向上が図られることが予想され、自動車部品に用いるグリースにも部品が滑らかに作動させる特性が要求されると考えられる。
【0004】
グリースは一般的に低温では硬くなり、抵抗が大きくなるため、機械部品の作動を妨げるおそれがある。自動車部品などは低温環境下においても使用されるため、それに用いるグリースは低温域においても作動性が良好であることが要求される。低温環境下における作動性を良好にするため、基油をコール・ツー・リキッド、或いは、米国石油協会分類におけるグループIII基油から選択し、その基油の動粘度が、100℃において、3mm/s以上40mm/s以下であり、-40℃での起動トルク値が400mN・m以下であるグリース組成物が開発されている(下記特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-247888号公報
【文献】特開2022-22576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
自動車部品などの機械部品に用いるグリースには、幅広い温度域での作動性が要求され、例えば、-40℃以下などの低温環境下でも確実に機械部品を作動させる潤滑性が求められるとともに、常温においてもその部分に留まる高粘度(例えば、40℃における動粘度が800mm/s以上)であることも求められる。しかしながら、この点を両立させることは困難であるという課題があった。
【0007】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、特定のポリイソブチレンをグリースに含有させることにより、低温環境下での機械部品の作動性が良好になり、上記の課題が解決できることを見出した。
【0008】
そこで、本発明の目的は、-40℃以下などの低温環境下でも機械部品の作動性を良好にすることができるグリース組成物を提供することにある。さらには、このグリース組成物は、常温において高粘度(例えば、40℃における動粘度が800mm/s以上)なものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様のグリース組成物は、基油と、増ちょう剤と、組成物中5~25質量%の重量平均分子量50000以上であるポリイソブチレンと、を含み、JIS K2220に基づき-40℃における起動トルクを測定した低温トルクが300mN・m以下である、グリース組成物(但し、増ちょう剤と基油を含むグリース組成物において、(a)炭化水素系ポリマー、(b)有機モリブデン化合物、及び(c)ジチオリン酸亜鉛を含有するグリース組成物を除く)
【0010】
上記の一態様のグリース組成物は、前記基油と前記ポリイソブチレンとの質量比率(基油:ポリイソブチレン)が90:10~75:25の範囲内で、前記基油と前記ポリイソブチレンとの混合基油の粘度指数が200以上である
【0011】
上記の一態様のグリース組成物は、前記増ちょう剤が組成物中15質量%以下のリチウム石けんであることが好ましい。
【0012】
上記の一態様のグリース組成物は、前記基油と前記ポリイソブチレンとの混合基油の40℃における動粘度が1500mm/s以上である
【0013】
上記の一態様のグリース組成物は、前記混合基油の流動点が-30℃以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様のグリース組成物は、特定のポリイソブチレンを含有させることにより、低温環境下における機械部品の作動性を良好にすることができるものである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を一実施形態に基づいて説明する。但し、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
【0016】
<グリース組成物>
本発明の一実施形態のグリース組成物(以下、本グリース組成物ともいう。)は、基油と、増ちょう剤と、特定のポリイソブチレンと、を含み、-40℃における低温トルクが300mN・m以下である。
【0017】
(基油)
本グリース組成物の基油は、特に限定するものではなく、従来からグリースに使用されるものを用いることができ、例えば、鉱油又は合成油を用いることができる。
合成油としては、エーテル油系合成油、エステル系合成油、及び、炭化水素系合成油等が挙げられる。エステル油系合成油としては、ポリオールエステル油、リン酸エステル油、ポリマーエステル油、芳香族エステル油、炭酸エステル油、ジエステル油、ポリグリコール油等が挙げられる。なかでも、炭化水素系合成油が好ましく、PAO(ポリαオレフィン)油等が挙げられる。より具体的な例としては炭化水素系合成油であるPAO4(100℃における動粘度が約4mm/s)又はPAO6(100℃における動粘度が約6mm/s)などが挙げられ、PAO6としては、商品名「Synfluid PAO6 cSt」(シェブロンフィリップス化学社製)、商品名「SpectraSyn Plus6」(Exxon Mobil社製)、PAO4としては、商品名「Synfluid PAO4 cSt」(シェブロンフィリップス化学社製)、商品名「SpectraSyn 4」(Exxon Mobil社製)、商品名「SpectraSyn MaX3.5」(Exxon Mobil社製)などが挙げられる。
【0018】
基油としては、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。例えば、粘度の異なる2種類以上を併用して基油を構成するようにしてもよい。
【0019】
基油の40℃における動粘度は、特に限定するものではないが、5~50mm/sが好ましく、10~40mm/sがより好ましく、15~35mm/sが特に好ましい。
【0020】
基油の100℃における動粘度は、特に限定するものではないが、1~10mm/sが好ましく、2~8mm/sがより好ましく、3.5~6.5mm/sが特に好ましい。
【0021】
基油の粘度指数は、特に限定するものではないが、100~150が好ましく、110~140がより好ましく、120~135が特に好ましい。
【0022】
基油の流動点は、特に限定するものではないが、-50℃以下が好ましく、-55℃以下がより好ましく、-60℃以下が特に好ましい。
【0023】
基油の引火点は、特に限定するものではないが、220℃以上が好ましく、230℃以上がより好ましく、240℃以上が特に好ましい。
【0024】
基油は、特に限定するものではないが、本グリース組成物中に50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上含有させることができる。上限値は90質量%以下であることが好ましい。
【0025】
(増ちょう剤)
本グリ-ス組成物の増ちょう剤は、特に限定するものではなく、従来からグリースに使用されているものを用いることができ、例えば、石けん系又は非石けん系を用いることができる。
石けん系としては、例えば、リチウム石けん、リチウム複合石けん、カルシウム石けん、カルシウム複合石けん、アルミニウム石けん、アルミニウム複合石けん等が挙げられる。なかでも、リチウム石けんが好ましく、例えば、ステアリン酸リチウム、12ヒドロキシステアリン酸リチウムのいずれか或いはこれらの混合物が特に好ましい。
非石けん系としては、例えば、ウレア、ナトリウムテレフタラート、フッ素樹脂、ベントナイト、シリカゲル等が挙げられる。
増ちょう剤としては、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
増ちょう剤は、特に限定するものではないが、本グリース組成物中に15質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下含有させることができる。下限値は0.1質量%以上であることが好ましい。
【0027】
(ポリイソブチレン)
本グリース組成物のポリイソブチレンは、イソブテンの重合体であり、重量平均分子量50000以上であるものを用いることができる。また、重量平均分子量は、200000以下が好ましく、150000以下がより好ましく、110000以下が特に好ましい。
このようなポリイソブチレンとしては、市販のものを用いることができ、例えば、商品名「Oppanol B10N」(BASF社製:重量平均分子量53000)、商品名「Oppanol B15N」(BASF社製:重量平均分子量108000)などを用いることができる。
【0028】
本グリース組成物に用いるポリイソブチレンの粘度指数は、200~400の範囲内が好ましく、200~350の範囲内がより好ましい。
【0029】
ポリイソブチレンは、特に限定するものではないが、本グリース組成物中に5質量%以上40質量%以下、好ましくは10質量%以上30質量%以下、より好ましくは10質量%以上25質量%以下の割合で含有させることができる。
【0030】
ポリイソブチレンは、本グリ-ス組成物中において基油との質量比率(基油:ポリイソブチレン)が90:10~70:30の範囲内であるのが好ましく、88:12~73:27がより好ましく、86:14~75:25が特に好ましい。
【0031】
(添加剤)
本グリース組成物は、上記以外のその他の成分として添加剤を含有させてもよい。
添加剤としては、例えば、アミン系やフェノール系等の酸化防止剤、金属スルフォネートやコハク酸系等の錆び止め剤、S-P系やZnDTP、有機モリブデン等の極圧添加剤、MoSやグラファイト、PTFEやMCA等の固体潤滑剤が挙げられる。
【0032】
添加剤を含有させる場合は、特に限定するものではないが、本グリース組成物中に3質量%以下、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下含有させることができる。
【0033】
(-40℃における低温トルク)
本グリース組成物は、-40℃における低温トルクが300mN・m以下である。より好ましくは250mN・m以下、特に好ましくは200mN・m以下である。
-40℃における低温トルクは、JIS K 2220に準じて測定することができ、例えば、ポリイソブチレンの含有割合を変えることなどにより調整することができる。
【0034】
基油とポリイソブチレンの混合溶液を「混合基油」とし、混合基油の物性値は以下のとおりが好ましい。
【0035】
(混合基油の40℃における動粘度)
本グリース組成物は、混合基油の40℃における動粘度が800mm/s以上であることが好ましい。より好ましくは1500mm/s以上、特に好ましくは2000mm/s以上である。
混合基油の40℃における動粘度は、JIS K 2283に準じて測定することができ、例えば、ポリイソブチレンの含有割合を変えることなどにより調整することができる。
【0036】
(混合基油の100℃における動粘度)
本グリース組成物は、混合基油の100℃における動粘度が100mm/s以上であることが好ましい。より好ましくは110mm/s以上、特に好ましくは120mm/s以上である。
混合基油の100℃における動粘度は、JIS K 2283に準じて測定することができ、例えば、ポリイソブチレンの含有割合を変えることなどにより調整することができる。
【0037】
(流動点)
本グリース組成物は、混合基油の流動点が-30℃以下であるのが好ましい。より好ましくは-35℃以下、特に好ましくは-40℃以下である。
流動点は、JIS K 2269に準じて測定することができ、例えば、ポリイソブチレンの含有割合を変えることなどにより調整することができる。
【0038】
(粘度指数)
本グリース組成物は、混合基油の粘度指数が200以上であるのが好ましい。より好ましくは225以上、特に好ましくは250以上である。
粘度指数は、JIS K 2283に準じて測定することができ、例えば、ポリイソブチレンの含有割合を変えることなどにより調整することができる。
【0039】
(製造方法)
本グリース組成物は、基油と、増ちょう剤と、ポリイソブチレンと、必要に応じて、添加剤と、を上記した含有割合で配合してミリングすることにより製造することができる。
ミリングは、特に限定するものではないが、三本ロール、ホモジナイザー、コロイドミルなどのミリング分散処理装置を用いて行うことができる。
【0040】
混合は加熱して溶解させながら行うのが好ましい。加熱は、リチウム石けんが溶解する温度、例えば、好ましくは200℃以上、より好ましくは220℃以上、特に好ましくは240℃以上に保持して行うことができる。
本グリース組成物に用いる重量平均分子量50000以上であるポリイソブチレンは、粘度が高いため、混合しにくいものである。そのため、予め基油とポリイソブチレンとを混合して加熱し、溶解させておくのが好ましい。
【0041】
(用途)
本グリース組成物は、自動車部品、精密機械部品などの機械部品に好適に用いることができる。なかでも、低温トルクに優れるため、自動車部品に適する。
自動車部品としては、例えば、ドアロック、ギアシフトレバー、ウィンドレギュレーター、ファンコントロールレバー、ドアミラー等が挙げられる。
自動車部品以外には、例えば、エアコンなどの家電製品、ゲーム機器のコントローラー、電子ピアノなどの電子楽器や介護ベッド昇降装置等の福祉機器が挙げられる。
【実施例
【0042】
以下、本発明を一実施例に基づいて説明する。但し、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0043】
実施例及び比較例を作製するにあたり、以下の材料を用いた。
【0044】
<基油>
1-A:PAO6(商品名「Synfluid PAO6 cSt」(シェブロンフィリップス化学社製))
40℃における動粘度:30.7mm/s
100℃における動粘度:5.8mm/s
粘度指数:135
流動点:-63℃
【0045】
1-B:PAO4(商品名「Synfluid PAO4 cSt」(シェブロンフィリップス化学社製))
40℃における動粘度:17.4mm/s
100℃における動粘度:3.9mm/s
粘度指数:124
流動点:-68℃
【0046】
<増ちょう剤>
2-A:12ヒドロキシステアリン酸リチウム(勝田化工社製)
2-B:ステアリン酸リチウム(勝田化工社製)
【0047】
<ポリイソブチレン>
3-A:ポリイソブチレン(商品名「Oppanol B15N」(BASF社製))
重量平均分子量:108000
【0048】
<粘度調整剤>
4-A:エチレンαオレフィンオリゴマー(商品名「ルーカントHC2000」(三井化学社製))
数平均分子量:3400
4-B:ポリブテン(商品名「日石ポリブテン グレードHV1900」(ENEOS社製))
数平均分子量:2900
【0049】
参考例1及び実施例~3)
ステンレスカップに、PAO6(1-A)を168g、12ヒドロキシステアリン酸リチウム(2-A)を37.8g、ステアリン酸リチウム(2-B)を4.2g投入し、撹拌しながら徐々に加熱し、12ヒドロキシステアリン酸リチウム(2-A)及びステアリン酸リチウム(2-B)が完全に溶解したことを確認した。
そして、加熱を止め、PAO6(1-A)90gを滴下しながら撹拌をして150℃になるまで冷却した。その後、放置して室温になるまで冷却し、3本ロールでミリングしてベースグリースとした。
【0050】
一方、別のステンレスカップに、PAO6(1-A)を241.53g、ポリイソブチレン(3-A)を158.47g投入し、撹拌しながら200℃まで加熱して溶解させ、溶解液を作製した。
【0051】
ベースグリース100gに対し、上記溶解液及びPAO6(1-A)を適宜量で配合し、3本ロールで加熱しながら撹拌して、下記表1に示された配合割合の参考例1及び実施例~3のグリース組成物を作製した。
【0052】
参考例4及び実施例~6)
上記参考例1及び実施例~3において、PAO6(1-A)をPAO4(1-B)に変更した以外は、同様にして参考例4及び実施例~6のグリース組成物を作製した。
【0053】
(比較例1)
上記ベースグリースに、下記表1の配合割合になるようにエチレンαオレフィンオリゴマー(4-A)及びPAO6(1-A)を配合して3本ロールで混合し、比較例2のグリース組成物を作製した。
【0054】
(比較例2)
上記ベースグリースに、下記表1の配合割合になるようにポリブテン(4-B)及びPAO6(1-A)を配合して3本ロールで混合し、比較例1のグリース組成物を作製した。
【0055】
【表1】
【0056】
(試験)
参考例1,4、実施例2~3,5~6及び比較例1~2のグリース組成物について、以下の試験を行った。これら試験の結果を上記表1に示す。
【0057】
<混和ちょう度>
混和ちょう度は、JIS K 2220 5.3に準じて測定した。なお、混和ちょう度は280±15のNo.2グレードの範囲に収まるように調製した。
【0058】
<低温トルク>
-40℃における低温トルクは、JIS K 2220 5.14に準じて起動トルクを測定した。
【0059】
<滴点>
滴点は、JIS K 2220 5.4に準じて測定した。
【0060】
(混合基油)
参考例1,4、実施例2~3,5~6及び比較例1~2と同じ配合割合で基油及びポリイソブチレンのみを混合して混合基油を作製し、以下の物性値を測定した。測定した結果を上記表1に示す。
【0061】
<動粘度>
40℃及び100℃における動粘度は、JIS K 2283に準じて測定した。
【0062】
<粘度指数>
粘度指数は、JIS K 2283に準じて算出した。
【0063】
<流動点>
流動点は、JIS K 2269に準じて測定した。なお、流動点は0.5℃毎に測定した。
【0064】
(結果)
実施例2~3,5~6のグリース組成物は比較例1~2のグリース組成物と比較して、40℃及び100℃における動粘度が高いにもかかわらず、-40℃における低温トルク及び流動点が低く、低温における作動性を良好にできることが確認された。
また、実施例2~3,5~6のグリース組成物は比較例1~2のグリース組成物と比較して、粘度指数が高く、温度による粘度変化が少ないことが確認された。
【0065】
(考察)
実施例2~3,5~6が低温域において低トルクである要因として、ベアリングに詰められたグリースの動きが推定される。ベアリングの中でグリース全体が攪拌される現象、所謂チャーニング現象に対して、ベアリング内のグリースがベアリングから押し出され、ベアリングの潤滑に必要な量だけが必要な個所に再配置する、いわゆるチャンネリング性が著しく向上した結果、トルクが下がったと考えられる。そのため、比較例1~2と比較すると実施例2~3,5~6は低温で低トルクである、と考察される。
【要約】
【課題】低温環境下での機械部品の作動性が良好なグリース組成物を提供する。
【解決手段】本発明のグリース組成物は、基油と、増ちょう剤と、組成物中5~40質量%の重量平均分子量50000以上であるポリイソブチレンと、を含み、-40℃における低温トルクが300mN・m以下である、ことを特徴とし、基油とポリイソブチレンとの質量比率(基油:ポリイソブチレン)が90:10~70:30の範囲内で、基油とポリイソブチレンとの混合基油の粘度指数が200以上であることが好ましい。
【選択図】なし