(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-26
(45)【発行日】2024-09-03
(54)【発明の名称】ボタンおよびゲーム用コントローラ
(51)【国際特許分類】
H01H 13/14 20060101AFI20240827BHJP
A63F 13/24 20140101ALI20240827BHJP
G06F 3/02 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
H01H13/14 Z
H01H13/14 B
A63F13/24
G06F3/02 400
G06F3/02 460
(21)【出願番号】P 2024007540
(22)【出願日】2024-01-22
【審査請求日】2024-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】393010318
【氏名又は名称】エレコム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000844
【氏名又は名称】弁理士法人クレイア特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平田 清隆
(72)【発明者】
【氏名】多部田 敦己
【審査官】石井 茂
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-125439(JP,A)
【文献】登録実用新案第3217372(JP,U)
【文献】特開2020-13773(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 13/14
A63F 13/24
G06F 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲーム用のコントローラに使用されるボタンであって、
前記コントローラの筐体に内蔵されたプッシュスイッチと、前記プッシュスイッチに接続されるボタン部材と、前記ボタン部材を支持する固定リングと、を備え、
前記固定リングは、前記筐体に対して脱着可能であり、
前記固定リングを交換することにより、前記ボタン部材のストローク幅を調整することができる、ボタン。
【請求項2】
前記ボタン部材は、押下操作がされた場合に前記筐体に固定された基板と接触する脚部を有し、
前記固定リングは、前記ボタン部材が押下操作から解放された場合に前記脚部と接触するスカート部を有し、
前記スカート部の長さが異なる固定リングに交換することにより、前記ボタン部材のストローク幅を調整することができる、請求項1に記載のボタン。
【請求項3】
前記プッシュスイッチは、深さセンサであって、反応点の深さを調整することができる、請求項1に記載のボタン。
【請求項4】
前記固定リングは、前記スカート部に連設されたテーパ部を有し、
前記テーパ部は、前記固定リングが嵌合される前記筐体の取付孔の縁部に当接する、請求項2に記載のボタン。
【請求項5】
前記ボタン部材の脚部は、4個である、請求項1に記載のボタン。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のボタンを備えた、ゲーム用コントローラ。
【請求項7】
前記ボタンを複数備え、前記ボタンごとに反応点の深さが異なるように設定可能である、請求項6に記載のゲーム用コントローラ。
【請求項8】
前記筐体の天板は、交換可能である、請求項7記載のゲーム用コントローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テレビゲーム等で使用されるゲーム用コントローラのボタンおよびゲーム用コントローラに関する。
【背景技術】
【0002】
ゲーム用コントローラに使用されるボタンとして、以下のようなものが提案されている。
例えば、特許文献1(特開2018-160343号公報)には、近接スイッチを備えた近接スイッチ部と近接スイッチを動作させる操作部とからなる操作スイッチにおいて、近接スイッチの部品交換あるいは操作部の交換を容易かつ低コストで行うことができる操作スイッチが提案されている。
【0003】
特許文献1に記載の操作スイッチは、1以上の操作部は、近接スイッチ部の受け側着脱機構に対応する共通の挿入側着脱機構を有して近接スイッチ部に対して分離可能であり、近接スイッチ部の近接スイッチは、1以上の操作部によるスイッチング操作に対して共通のスイッチング動作を行うことができるものである。
【0004】
特許文献2(特開2020-047386号公報)には、部品点数を削減すると共に配線側端子の接続作業の工数を減らした押しボタン式スイッチ装置が提案されている。
【0005】
プッシュスイッチを、スイッチケースの下端部側に一体に設けられた接続用ケース部と、この接続用ケース部内に垂設された複数の雄型のスイッチ側端子と、前記接続用ケース部に挿脱可能に挿入される挿入部と、外部配線に接続され前記挿入部に設けたところの当該挿入部を前記接続用ケース部に挿入した際に前記複数のスイッチ側端子を着脱可能に受け入れる複数の雌型の配線側端子と、この配線側端子を前記スイッチ側端子に取り付けた際に両者をロックするロック手段とから成り、このロック手段を前記接続用ケース側に設けた固定係止突起部と、前記挿入部側に揺動可能に設けられたところの当該挿入部を前記接続用ケース部へ挿入した際に前記固定係止突起部と係合する可動係止部材とで構成したものである。
【0006】
特許文献3(特開2019-125439号公報)には、簡単な構成で押しボタン部材が押し下げられた際と押し下げが解除されて押しボタン部材が元位置に復帰した際との両方で発生する衝撃音を抑制できる押しボタン式スイッチが提案されている。
【0007】
特許文献3に記載の押しボタン式スイッチは、筒状のケース本体と、このケース本体の底板に取り付けられる自動復帰式のスイッチノブを有するプッシュスイッチと、このプッシュスイッチのスイッチノブに取り付けられ前記ケース本体に対し上下方向へスライド可能に設けられた押しボタン部材と、を有する。前記押しボタン部材をエラストマー樹脂などの緩衝性と弾力性を有するもので構成すると共に、押し操作部と、この押し操作部の下面側に設けた前記スイッチノブを圧入する構成の取付穴を設けた取付筒部と、この取付筒部の外側に位置して設けた前記押しボタン部材の下降幅を規制する当接部と、で構成したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2018-160343号公報
【文献】特開2020-047386号公報
【文献】特開2019-125439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
近年、家庭用テレビゲーム機が広く普及しており、格闘ゲームまたはシューティングゲーム等を遊ぶ際に、ゲームセンターのコントローラを家庭用テレビゲーム機で使用できるようにしたコントローラが使用されている。
格闘ゲームまたはシューティングゲームにおいて、よりすばやく正確にボタン入力を行う必要があるため、ユーザは自分に適したボタンのストローク幅に調整する場合がある。
従来のコントローラにおいて、ボタンのストローク幅を調整する場合には、ボタン部材および/またはスイッチ部品を分解し改造する、またはボタン部材および/またはスイッチ部品の交換が必要とされており、コストと分解作業が困難であるという問題があった。
【0010】
特許文献1の操作スイッチは、近接スイッチの部品交換あるいは操作部の交換を容易かつ低コストで行うことができるものであるが、ボタンのストローク幅の調整は容易にできないという問題がある。
【0011】
また、特許文献2の押しボタン式スイッチは、配線側端子をスイッチ側端子に取り付けた際のロック手段を、接続用ケース側に設けた固定係止突起部と、挿入部を前記固定係止突起部と係合する可動係止部材とで構成するものである。
これにより、部品点数の削減と接続作業の工数を減らすものであるが、ボタンのストローク幅の調整は容易にできないという問題がある。
【0012】
また、特許文献3の押しボタン式スイッチは、押しボタン部材の材料をエラストマに変更することで、押しボタン部材の当接部が、ケース本体の底板に設けた段差部へ当たって発生する衝撃音や連打音を抑制できるものであるが、ボタンのストローク幅は容易に調整できないという問題がある。
【0013】
そこで、本発明の目的は、固定リングを交換することにより、ボタン部材のストローク幅を容易に調整することができる、ボタンおよびゲーム用コントローラを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(1)
一局面に従うボタンは、ゲーム用のコントローラに使用されるボタンであって、コントローラの筐体に内蔵されたプッシュスイッチと、プッシュスイッチに接続されるボタン部材と、ボタン部材を支持する固定リングと、を備え、固定リングは、筐体に対して脱着可能であり、固定リングを交換することにより、ボタン部材のストローク幅を調整することができるものである。
【0015】
これにより、固定リングは筐体に対して脱着可能であるので、固定リングを交換することで、ボタンのストローク幅を調整することができる。その結果、ボタンのストローク幅の調整のためのボタンまたはスイッチ部品の改造または分解作業が不要となる。
したがって、固定リングを変更することで、ユーザの嗜好に応じたスイッチのストローク幅を容易に調整することができる。
【0016】
(2)
第2の発明に係るボタンは、一局面に係るボタンであって、押下操作がされた場合に筐体に固定された基板と接触する脚部を有し、固定リングは、ボタン部材が押下操作から解放された場合に脚部と接触するスカート部を有し、スカート部の長さが異なる固定リングに交換することにより、ボタン部材のストローク幅を調整することができるものである。
【0017】
押下操作がされた場合に、ボタン部材の脚部が筐体に固定された基板と接触することで、スイッチの押下量が制限されるため、スイッチの故障を防ぐことができる。
一方、ボタン部材が押下操作から解放された場合に、スカート部が脚部と接触することで、ボタン部材の最上位置が制限される。よって、固定リングのスカート部の長さが異なると、ボタン部材のストローク幅が変わることになる。
これにより、スカート部の長さが長い固定リングとスカート部が短い固定リングとを交換することで、ボタン部材のストローク幅を調整することができる。したがって、スカート部の長さが異なる固定リングに変えることで、容易にユーザの嗜好に応じたボタン部材のストローク幅を調整することができる。
【0018】
(3)
第3の発明に係るボタンは、一局面から第2のいずれかの発明に係るボタンであって、プッシュスイッチは、深さセンサであって、反応点の深さを調整することができるものでもよい。
【0019】
固定リングによってボタン部材の解放の高さが制限されるので、ストローク幅の小さい固定リング(スカート部の長さが長い固定リング)を使用し、かつ、プッシュスイッチの反応点が浅い位置で固定されていると、スイッチとして機能しない場合が生じる。第3の発明に係るボタンは、反応点の深さが調整できるので、そのような不具合が生じない。
【0020】
(4)
第4の発明に係るボタンは、一局面から第3のいずれかの発明に係るボタンであって、固定リングは、スカート部に連設されたテーパ部を有し、テーパ部は、固定リングが嵌合される筐体の取付孔の縁部に当接するものでもよい。
【0021】
これにより、固定リングのスカート部に連設されたたテーパ部は、筐体の取付孔に対して、正確に位置決めをすることができる。そして、固定リングは取付孔に対して正確に位置決めされるため、ボタン部材と固定リングとのクリアランスを最小限に設計することができる。したがって、押下操作がされたときにボタン部材のぐらつきを抑えることができる。
一方で、固定リングがテーパ部により位置決めされて、スカート部の外径は取付孔の内径よりも小さく設計されるため、筐体の取付孔と固定リングのスカート部との間に空間を設けることができる。したがって、固定リングを容易に交換することができるボタンにすることができる。
【0022】
(5)
第5の発明に係るボタンは、一局面から第4のいずれかの発明に係るボタンであって、ボタン部材の脚部は、4個であってもよい。
【0023】
これにより、押下操作がされた場合に筐体に固定された基板に対して4個の脚部が接触するので、ボタンを激しく操作して強く押し込んだ場合でも、押下操作の不安定さを防止することができる。
【0024】
(6)
他の局面に従うゲーム用コントローラは、一局面から第5のいずれかの発明に係るボタンを備えたゲーム用コントローラであってもよい。
【0025】
これにより、固定リングを交換することでストローク幅の調整をすることができるゲーム用コントローラにすることができる。
【0026】
(7)
第7の発明に係るゲーム用コントローラは、第6の発明に係るゲーム用コントローラであって、ボタンを複数備え、ボタンごとに反応点の深さが異なるように設定可能であってもよい。
【0027】
これにより、ゲーム用コントローラに、ストローク幅の異なるボタンが複数配置された場合でも、反応点の深さをボタンごとに設定することができる。
【0028】
(8)
第8の発明に係るゲーム用コントローラは、第6または7の発明に係るゲーム用コントローラであって、筐体の天板は交換可能であってよい。
【0029】
これにより、天板を交換することでユーザの嗜好に応じたコントローラにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本実施形態のゲーム用コントローラの一例を示す斜視図である。
【
図2】本実施形態のボタンの各部材の配置関係を説明するための模式的分解図である。
【
図3】本実施形態の固定リングの形状を説明するための模式図である。
【
図4】本実施形態のボタン部材を説明するための模式的斜視図である。
【
図5】
図2の各部材を組み合わせた状態を説明するための模式的断面図である。
【
図6】ボタン部材が押下操作から解放された場合と押下操作された場合とを説明するための模式図である。
【
図7】スカート部の長さとストローク幅との関係を説明するための模式図である。
【
図8】ボタンの位置とプッシュスイッチ出力との関係の一例を示す模式的グラフである。
【
図9】ボタンの反応点の深さを調整するプログラムのフローの一例を示す模式的フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は、本実施形態のゲーム用コントローラ10の一例を示す斜視図である。
図1に示すように、ゲーム用コントローラ10は、ボタン100、USBケーブル400、操作レバー200、その他操作スイッチ300が筐体900に備えられており、筐体900には、筐体の天板910を備えられている。
筐体900は、略直方体の形状をしており、筐体900の表面には人の指に対応するように湾曲状に複数のボタン100が取り付けられている。なお、筐体900の形状、材質は特に限定されない。
ゲーム用コントローラ10を使用する際は、筐体900が有するUSBケーブル400のUSBプラグをゲーム専用の装置またはパーソナルコンピュータのUSB端子に接続する。
また、本実施形態の筐体900は、任意の方向に傾斜可能な操作レバー200が備えつけられている。また、筐体900には、ボタン100毎に装飾性を有するLED等を備えていてもよい。
ユーザは、筐体900に配置された複数のボタン100と操作レバー200とを操作することでゲームをプレイすることができる。
筐体900の表面には脱着可能な天板910が取り付けられており、天板910を取り外して好きなデザインの天板910を取り付けることで、ユーザの嗜好に応じたデザインのコントローラにすることができる。
【0032】
(ボタン100)
図2は、本実施形態のボタン100の各部材の配置関係を説明するための模式的分解図である。ボタン100は、ボタン部材120と、固定リング110と、プッシュスイッチ130と、を含む。
基板500上にはプッシュスイッチ130が固定されており、基板500と筐体900とは螺子により一体に固定されている。
そして、ボタン部材120は、筐体900に設けられた取付孔920を介して、プッシュスイッチ130の軸部131に装着される。
さらに、固定リング110は、筐体900に設けられた取付孔920に挿入され、右方向に回転されることで筐体900に係合されて、ボタン部材120が筐体900から外れないように固定される。
以下、ボタン部材120、固定リング110の詳細について説明する。その後、本実施の形態に係る構造について説明する。
【0033】
(固定リング110)
図3は、本実施形態の固定リングの形状を説明するための模式図であり、
図3(A)は、本実施形態の固定リングの形状を説明するための模式的斜視図であり、
図3(B)は本実施形態の固定リングの形状を説明するための模式的側面図である。
図3に示すように、固定リング110は、後述のボタン部材120を筐体900に固定するための部品であり、ドーナツ状のフランジ部111と、フランジ部111に隣接して漏斗状に設けられたテーパ部116と、テーパ部116から延出し円柱形状のスカート部112と、スカート部112にスリットを介して設けられた突起部115と、を有する。
【0034】
突起部115は、延出部113と突出部114からなり、突起部115の突出部114は、筐体900に嵌合することにより、脱着可能に固定することができる。
固定リング110のフランジ部111は、筐体900に取り付けられた場合に、筐体の天板910に向かって緩やかに傾斜する形状をしている。また、フランジ部111は、筐体900の上面に配置され、筐体900の取付孔920の縁に接触する。
【0035】
また、固定リング110のテーパ部116は、フランジ部111およびスカート部112の間に設けられ、フランジ部111からスカート部112へ傾斜して連設されている。
固定リング110のスカート部112は、テーパ部116から連設された円柱形状からなり、所定の長さLを有している。本実施形態のボタン100は、複数種類の交換可能な固定リング110が用意されており、各固定リング110はスカート部112の長さLが異なるよう設計されている。固定リング110は、スカート部の長さLが、2mm以上であることが好ましく、10mm以下であることが好ましい。
固定リングの突起部115は、スカート部112から2カ所対向した位置においてそれぞれ周外側に張り出す形状をしている。
なお、固定リング110は、中央に円筒状の孔部を有しており、孔部に対してボタン部材120が挿入される。
【0036】
また、本実施形態の固定リングは、樹脂製である。なお、本実施の形態においては、樹脂製であることとしたが、金属製、PET、PP、POM、ABS等の任意の素材の1または複数を用いてもよい。
【0037】
(ボタン部材120)
図4は、本実施形態のボタン部材を説明するための模式的斜視図である。
図4に示すように、ボタン部材120は、主に円柱形状からなり、ユーザが指で押し操作を行う押下操作部121と、押下操作部121に隣接した筒状の円柱部122と、円柱部122から延出した脚部125と、を有する。脚部125は、延出部123と、周外側に張り出す突出部124と、を備える。
【0038】
押下操作部121は、下面にプッシュスイッチ130の軸部131に装着するための結合部を有し、ユーザの押し操作をプッシュスイッチ130に伝えることができる。
脚部125は、押下操作された場合に基板500と接触することにより、ユーザが激しく押下操作をした場合も、プッシュスイッチ130を保護し、プッシュスイッチの安定性を向上することができる。
本実施形態のボタン部材120は、主に樹脂製である。また、樹脂の中でも、摩擦防止または静音性のためにPBT、PP、PCなどを使用することが好ましく、シリコン、フッ素樹脂を使用しすることがより好ましい。これにより、家庭内または夜間にボタンを連打しても衝撃音を抑え、騒音を防止することができる。
【0039】
ボタン部材120の押下操作部121は、円形状のものに限定されず、四角形のもの、楕円形のもの、また十字形のものであってもよい。
本実施形態のボタン部材120の円柱部122は、押下操作部121に隣接して円柱形状をしている。円柱部122の内径は、押下操作がされた際にプッシュスイッチ130と干渉せず、円柱部122の外径は固定リング110の内径よりも小さければよい。
また、本実施形態のボタン部材120の脚部125は、円柱部122から周外側に4カ所張り出す形状をしている。なお、ボタン部材120の脚部125は、3個、5個など、2以上の複数の数とすることができ、3個または4個とすることが好ましい。これにより、押下操作をしたときの安定性を向上できるとともに、筐体900内の構造が圧迫されるのを防止することができる。
ボタン部材120の押下操作部121の直径は、10mm以上40mm以下の範囲であることが好ましく、15mm以上25mm以下の範囲であることがより好ましい。
【0040】
(各部材の組み合わせ)
図5は、
図2の各部材を組み合わせた状態を説明するための模式的断面図であり、
図5(A)は、ボタン100を説明するための模式的部分断面図であり、
図5(B)は、筐体900を説明するための模式的部分断面図である。なお、
図5(A)は、ボタン部材120が押下操作から解放された場合に相当する。
図5(A)に示すように、固定リング110の円筒形状のテーパ部116は、外周全体が筐体900の取付孔920の角部と当接するため、固定リング110の中心と筐体900の取付孔920の中心とが一致し、正確に位置決めすることができる。これにより、固定リング110とボタン部材120とのクリアランスを最小限にすることができる。
さらに、固定リング110はテーパ部116が設けられているため、筐体900の取付孔920と固定リング110のスカート部112との間に空間600を設けることができる。したがって、固定リング110を脱着する際に筐体900との摩擦が生じにくいため、固定リング110を容易に交換することができる。
【0041】
また、固定リング110の突起部115は、筐体900の取付孔920の内部に設けられた水平溝922に嵌合されることにより、固定リング110は筐体900に対して固定することができる。
図5(B)に示すように、筐体900の取付孔920には、鉛直方向に形成された挿入溝921と、筐体900の底面側に水平方向に設けられた水平溝922とが形成されている。固定リング110の突起部115は、挿入溝921を通じて鉛直方向に案内され、さらに、固定リング110を回転することによって、突起部115が水平溝922に係合する。
本実施形態の水平溝922には、出っ張り923が形成されており、固定リング110を回転させることで、固定リング110の突起部115が出っ張り923に接触することにより摩擦力を生じさせている。これにより、ボタン100を激しく操作した場合も、固定リング110が筐体900から不用意に外れることを防止している。
【0042】
(押下操作とストローク幅M)
図6は、ボタン部材が押下操作から解放された場合と押下操作された場合とを説明するための模式図である。
図6(A)は、押下操作から解放された場合の模式図であり、
図6(B)は押下操作された場合の模式図である。
図6(A)に示すように、ボタン部材120が押下操作から解放された場合は、ボタン部材120の脚部125が、プッシュスイッチ130のバネ力によって固定リング110のスカート部112に接触する。
図6(B)に示すように、ボタン部材120が押下操作された場合は、ボタン部材120の脚部125は筐体900に固定された基板500に接触する。
したがって、固定リング110のスカート部112の最下点と、基板500の上面と間の距離から、ボタン部材120の突出部124の厚みを除いた距離が、ストローク幅Mとなる。すなわち、
図6(A)に示すように、突出部124の最下点から基板500の上面までの距離が、ボタン部材120が押下操作された場合に押し込まれる量、すなわちストローク幅Mとなる。
【0043】
(スカート部112の長さLとストローク幅M)
本実施形態のボタン100は、固定リング110を交換することにより、ストローク幅Mを任意に調整することができる。
図7は、スカート部112の長さLとストローク幅Mとの関係を説明するための模式図である。
図7では、スカート部112の長さが異なる固定リング110が装着されたボタン(A)(B)(C)を列挙したものであり、ボタン(A)(B)(C)のスカート部112の長さをそれぞれL1、L2、L3として示し、ボタン(A)(B)(C)のストローク幅MをそれぞれM1、M2、M3として示した。
スカート部112の長さL1が短い固定リング110が装着されたボタン100は、ストローク幅M1が長くなる。一方、スカート部112の長さL3が長い固定リング110が装着されたボタン100は、ストローク幅M3が短くなる。
したがって、スカート部112の長さLが異なる固定リング110に交換することで、ボタン100のストローク幅を容易に調整することができる。なお、各固定リング110において、スカート部112の上端から突出部113までの距離は同一である。
【0044】
(ボタン100の反応点の深さの調整)
本実施形態のゲーム用コントローラ10を使用する場合、ボタン100を押下したときのストロークだけでなく、ボタン100を押下したときの反応点の深さ、すなわち、デジタル出力が変化するボタン100の押下深さを調整したい場合がある。
特に、本実施形態のゲーム用コントローラ10では、固定リング110を交換することによってストローク幅が変更されるので、ストローク幅の中点に反応点を設定していると、ストローク幅の大きい固定リング110(スカート部の長さが短い固定リング110)をストローク幅の小さい固定リング110に交換した場合、ボタンを解放しても反応点に到達せずスイッチとして機能しない場合が生じる。
【0045】
図8にボタン100の位置(より正確には突出部124下端と基板500との距離)とプッシュスイッチ出力との関係の一例を示した。
図8において、ストローク幅M1のボタンの場合は、ボタン100は0からM1の間を移動し、M2の場合は0からM2の間を移動し、M3の場合は0からM3の間を移動する。なお、
図8ではストロークの選択肢を3種類としているが、2種類であっても、3種類より多くてもよい。また、
図8には、ストローク幅がM1の場合のストロークの中点でのプッシュスイッチの出力をVth1、ストローク幅がM2の場合のストロークの中点での出力をVth2、ストローク幅がM3の場合のストロークの中点での出力をVth3として示した。
ボタン100のストローク幅を変更した場合の反応点の深さでの出力の設定方法については、3つの選択肢が可能である。
第1の設定方法は、ボタン100のストローク幅を変更してもボタン100の反応点の深さは一定のままとする方法である。この場合は、例えば、プッシュスイッチ130の出力がVth1となる点を反応点とすることにより、ストローク幅をM1~M3の間で変化させても安定してデジタル出力を切替えることができる。ただし、この場合はストロークの幅をM3とした場合、ボタン100をかなり深く押下しないとデジタル出力が切り替わらない。
第2の設定方法は、ボタン100のストローク幅を変更した場合に、常にストロークの中点付近を反応点とする方法である。この場合は、ストローク幅がM1の場合は
図8のVth1を反応点とし、M2の場合はVth2を、M3の場合はVth3を反応点とする必要がある。第2の設定方法の具体的な内容については後述する。
第3の設定方法は、ストロークのどの位置を反応点とするかを利用者が選択する方法である。この場合は、ゲーム用コントローラ10単独では設定が困難であるが、パーソナルコンピュータまたはゲーム専用の装置に接続した状態で、反応点の深さを調整するためのプログラムをパーソナルコンピュータまたはゲーム専用の装置にインストールすることによって、利用者が選択できるようにすることができる。例えば、各ボタン100毎に利用者がストロークの1/4、1/2、3/4から選択することなどが考えられる。
【0046】
(第2の設定方法の具体例)
図8には、ボタン100の位置がM1の場合のプッシュスイッチの出力をV1、ボタン100の位置がM2の場合のプッシュスイッチの出力をV2、ボタン100の位置がM3の場合のプッシュスイッチの出力をV3として示した。
また、
図9には第2の設定方法の場合の反応点の深さ調整プログラムのフローチャートの一例を示した。このプログラムは、例えば、固定リングの交換をUSBコネクタを外してから行う場合はUSB電源ON直後、あるいは、固定リングの交換をUSBコネクタを接続した状態で行う場合はプッシュスイッチ130に対する押下力が完全になくなり、出力が
図8のV3より小さいV4以下になった場合、すなわち、押下力が完全になくなった時のプッシュスイッチ130の出力相当になった場合に起動される。また、ユーザが固定リングを交換した後にボタンを長押しすることによりプログラムを起動してもよい。
【0047】
以下、
図9のフローチャートに沿って、反応点の深さ調整プログラムのフローを説明する。
(ステップS1)電源OFFからONになった状態かどうかを判断し、ONになった状態の場合はステップ4のスイッチ出力連続測定を開始する。
(ステップS2、S3)電源OFFからONになった状態でない場合はプッシュスイッチ130の出力を測定し、出力が
図8のV4以上になるまで、すなわちいずれかの固定リング110にボタン部材120が固定されるまで待機する。
(ステップS4)所定時間連続してプッシュスイッチ130の出力を測定し、記録する。なお、この記録は出力の最大値と最小値だけでもよい。なお、この所定時間としては例えば10秒である。また、例えば、ステップS4で記録された電圧の平均値を、固定リング110が装着されたボタン100の解放高さの値と判断することができる。
(ステップS5)出力の変化、すなわち、最大値と最小値との差が所定値以下かどうかを確認し、所定値以下でない場合(ステップS4の間にユーザが押し操作をした場合)は再度ステップS4に戻る。ステップS5では、例えば10秒間連続してボタン100が押されることはないことを前提として、最大値と最小値との差が所定値以下(測定誤差の範囲)であれば、ボタン100が押されていないときのプッシュスイッチ130の出力が測定されているとの考え方に基づいている。
(ステップS6)出力の変化が所定値以下の場合は、出力値が
図8のV1、V2、V3のうちのどの値に最も近いかを調べる。
(ステップS7)出力がV1に近ければVth1を、V2に近ければVth2を、V3に近ければVth3をデジタル出力のための閾値として設定する。
【0048】
本発明においては、ゲーム用コントローラ10が「コントローラ」に相当し、筐体900が「筐体」に相当し、プッシュスイッチ130が「プッシュスイッチ」に相当し、ボタン部材120が「ボタン部材」に相当し、固定リング110が「固定リング」に相当し、基板500が「基板」に相当し、脚部125が「脚部」に相当し、スカート部112が「スカート部」に相当し、テーパ部116が「テーパ部」に相当し、取付孔920が「取付孔」に相当し、天板910が「天板」に相当する。
【0049】
本発明の好ましい一実施の形態は上記の通りであるが、本発明はそれだけに制限されない。本発明の精神と範囲から逸脱することのない様々な実施形態が他になされることは理解されよう。さらに、本実施形態において、本発明の構成による作用および効果を述べているが、これら作用および効果は、一例であり、本発明を限定するものではない。
【符号の説明】
【0050】
10 ゲーム用コントローラ
100 ボタン
110 固定リング
111 フランジ部
112 スカート部
113、123 延出部
114、124 突出部
115 突起部
116 テーパ部
120 ボタン部材
121 押下操作部
122 円柱部
125 脚部
130 プッシュスイッチ
131 軸部
200 操作レバー
300 その他操作スイッチ
400 USBケーブル
500 基板
600 空間
900 筐体
910 天板
920 取付孔
921 挿入溝
922 水平溝
923 出っ張り
【要約】
【課題】固定リングを交換することにより、ボタン部材のストローク幅を容易に調整することができる、ボタンおよびゲーム用コントローラを提供する。
【解決手段】ゲーム用のコントローラ10に使用されるボタン100であって、コントローラ10の筐体900に内蔵されたプッシュスイッチ130と、プッシュスイッチ130に接続されるボタン部材120と、ボタン部材120を支持する固定リング110と、を備え、固定リング110は、筐体900に対して脱着可能であり、固定リング110を交換することにより、ボタン部材120のストローク幅を調整することができるものである。
【選択図】
図1