(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】太陽光集光発電ユニット
(51)【国際特許分類】
H02S 10/00 20140101AFI20240828BHJP
H02S 40/42 20140101ALI20240828BHJP
H02S 40/22 20140101ALI20240828BHJP
【FI】
H02S10/00
H02S40/42
H02S40/22
(21)【出願番号】P 2023019497
(22)【出願日】2023-01-25
【審査請求日】2023-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】501206507
【氏名又は名称】株式会社ライラック研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100096703
【氏名又は名称】横井 俊之
(74)【代理人】
【識別番号】100205866
【氏名又は名称】山本 卓
(72)【発明者】
【氏名】平岩 節
【審査官】佐竹 政彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-093383(JP,A)
【文献】特開2012-256525(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0118505(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第109392859(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0062782(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0343852(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/04-31/078
H02S 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光集光発電ユニットにおいて、
該太陽光集光発電ユニットを回転させるための回転軸と、
上記回転軸に固定されたガク状取付け板と、
花びら状に配置した複数
の太陽電池モジュールと、
上記回転軸を回転させる駆動装置を備え、
上記複数の太陽電池モジュールが上記ガク状取付け板に花状に配置され、
上記複数の太陽電池モジュールは、内側の太陽電池モジュールと外側の太陽電池モジュールに背中合わせに組み合わせて配置され、
上記回転軸を上記駆動装置で回転させながら集光発電する太陽光集光発電ユニット。
【請求項2】
上記複数の太陽電池モジュールは、上記ガク状取付け板に同心円状に等間隔に配置される請求項1に記載の太陽光集光発電ユニット。
【請求項3】
上記太陽光集光発電ユニットにより発電された直流電流を回転コネクターによりパワーコンディショナーおよび蓄電池に伝達する為のスリップリングをさらに備え、
該スリップリングを上記太陽光集光発電ユニットの上記回転軸に装着固定した請求項1に記載の太陽光発電ユニット。
【請求項4】
太陽光集光発電ユニットにおいて、
該太陽光集光発電ユニットを回転させるための回転軸と、
上記回転軸に固定されたガク状取付け板と、
花びら状に配置した複数の太陽電池モジュールと、
上記回転軸を回転させる駆動装置を備え、
上記複数の太陽電池モジュールが上記ガク状取付け板に花状に配置され、
上記回転軸を上記駆動装置で回転させながら集光発電するように構成され、
上記太陽光集光発電ユニットが光学的に透明な筒状構造物に収納され、
該筒状構造物と該太陽光集光発電ユニットとが軸流空気搬送構造として機能す
る太陽光集光発電ユニット。
【請求項5】
上記ガク状取付け板の外周、又は上記回転軸の下部に太陽光反射板を設けた請求項1に記載の太陽光集光発電ユニット。
【請求項6】
上記回転軸の上端、又は下端は、もう1つの太陽光集光発電ユニットの回転軸の下端、又は上端と嵌合固定可能な構造を有し、
複数の太陽光集光発電ユニットを上下に連結して使用することが可能な請求項1に記載の太陽光集光発電ユニット。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、花のつくりの意匠性を含む機能性を応用した空間配置型太陽光集光発電ユニットに関する。
【0002】
公理ではないが、花の種類に関わらず花のつくりは、太陽光との関係性から一定高度な構造合理性をもつと考えられ、受光器でもある花弁・花びらは、見立上の太陽電池モジュールであり、向日性を高めるため花全体が微風でも揺れるように花の支持体で中心軸となる花柄は、花の大きさに比べ不釣合いに細くしなやかに観えるが、構造上曲げ応力に強い管状に形成されており、回転運動の変形とした向日性の捻りと揺らぎ運動で受光面を最大化する工夫がされている。
【0003】
一方、強風や嵐には花全体を保護するために花弁を窄め、雨風の強さを低減する繊細巧みな工夫がなされており、花の自然界におけるこのような動的事象を太陽光集光方法に応用した結果、本発明の太陽光集光発電ユニット(以下、発電ユニットと記す)に到達したものである。
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これまでの家庭用太陽光発電装置は、主に太陽光パネルを家屋屋根の傾斜面に取付け金具で平行に付設されているが、各種各様の屋根に付設する太陽光パネル取付け作業は、複雑面倒でコストもかかり、屋根本体を傷め、雨漏り、耐震性低下、作業者の落下事故にも繋がる危険な作業をともなう。
【0005】
加えて上記家庭用太陽光発電システムは隣接する建造物や立ち木等の障害物で日陰が生じ発電量が著しく低下するなどの課題もある。
【0006】
そして、戸建固有の受光時間に左右されるから太陽光パネルは標準化し難く、パネルの汚染管理、保守点検作業、夏期温度上昇(約35~80℃)による発電効率の低下もあり対費用効果において課題があった。
【0007】
また従来型の屋根付設型発電装置の据付け面積は、発電容量3~5kW太陽光パネルを設置する場合でも、約18~30m2の設置面積を必要とした。後述するが、本発明の発電ユニットなら約1.5m2の場所があれば設置できる。
【0008】
中山間地域の多い我国では、設置に適した広い場所が少なく、実情は放置に近い山谷を開墾し、日当りの良い南傾斜地に雛壇状に並べ設置されている。一方で景観上・環境保護・土砂災害等の課題もあり、災害時に堅牢安全、復興拠点の役割を担う公共施設、大型商業施設に相応しい景観上違和感のない産業用中規模太陽光発電装置が求められている。
【0009】
太陽光パネルを太陽光速度・照射角度に合わせて回転追尾する効率的な大規模太陽光集光発電システムは公知であるが、平坦で広大な面積があってこそ機構的・機能的に有利な運営システムであるが、現状では個別分散型を余儀なくされ、ポータブル仕様など小規模用途に限定されている。
【課題を解決する手段と効果】
【0010】
本実施形態の発電ユニットの特徴は、花の様に構成する為に花びら状の太陽電池モジュール単体を、花の構成要素であるガク状の支持体に同心円状等間隔に配置固定し、該支持体中心を貫通固定した中心軸は、支持体の上部短管を花柱状上端軸、下部短管を花柄状下端軸と呼び、独立構造体とした発電ユニットである。
【0011】
該発電ユニットの上部短管にジョイント軸を接続固定し、さらに中心軸を延ばして日の当たる空間に位置決めする。下部短管もジョイント軸を介して回転コネクターと中心軸を回転駆動する小型トルクモータに接続している。
上部短管に、二段ないしは多段に装着し組み合わせ太陽光を集光し発電するシステムであるから設置面積が少なくて済む。
【0012】
該発電ユニットは、着脱自在の構造体であるから、運搬、組み立て据付けが容易で、故障の際は、発電ユニットごと釣上げて着脱交換できるのでメンテナンスも頗る簡単で、且つ標準化できる。
【0013】
本発明の発電ユニットによる発電装置を産業用及び中規模発電装置に適用するには、高度の安全性が要求されるので全体が発電システム構造物として機能させる必要がある。
筒状の透明タワーに該発電ユニットが多段に組み付けられ、蓄電池、パワーコンディショナー等の重量物は地上又は地上近くに設置した格納庫で管理される。
【0014】
筒内空気輸送原理は該発電ユニットの回転によって起る軸流で生じる静圧で、筒下部の外気導入口から上昇気流となり該発電ユニットを外気温と熱交換させて冷却し、高温の空気は上部排出口から放出される。夏期は、水のスプレーによる気化熱を利用した冷却効果を併用した筒内空調管理システムとなる。
【0015】
上記スプレー装置は水を太陽電池モジュールに向けて噴射し、太陽電池モジュールの冷却洗浄を間欠的に行い、発電効率を安定化させる。この管理システムはメンテナンスの上で自動化が容易であるから、公共施設や大型商業施設の入口や中庭、屋上等の限られた場所に、雨風に堅牢で景観上好ましい空間配置型太陽光発電装置と言える。
【0016】
太陽電池モジュール単体の角度を約30~50度の角度に設定すれば、該モジュール単体の角度調整は、ほとんど必要ないが、必要なら該モジュール下部はヒンジ・ブラケット等の回転支持体で構成するので可変が容易にできる。
【0017】
該モジュール上端を支持固定するには、該モジュールの背面樹脂固定板に沿って上方向にフラットバーで背骨を形成し、そのフラットバーに固定する。
【0018】
該モジュールの角度調整は、一つは、花状に並べられた該モジュール上端近傍の外側から該モジュールを包摂して支える帯状リング方式で、ネジ式ホースバンド状に広げたり窄めたりして角度調整ができる。二つ目は,該モジュールの背骨を形成するフラットバーを上下、180度の角度範囲で可動調整すれば良い。
三つ目は、回転軸に摺動自在のブラケットと、該モジュール先端をステンレス細線で結び、該摺動ブラケットを上下スライドさせ傘状に開閉して角度調整ができる。何れの方式も自動化が容易にできる。
【0019】
太陽電池モジュール単体の僅かな左右角度調整で、発電ユニットが扇風機として作用し上昇気流・下降気流を起こすことができる。小規模家庭用発電装置なら角度調整用回転機構を特に設けなくても、薄型フレキシブルに構成された該モジュール固定板は曲げ強度の高い強化樹脂製であり、曲げや捻りにある程度融通性がある。
【0020】
使用される太陽電池モジュールは、目的とするデザインに応じ、予め各種花びら状に計画設計されたモジュール単体を組み合わせ形成するのが好ましいが、薄型軽量で適度に柔軟性があれば市販品でも組み合わせて利用できる。無論ペロブスカイト太陽電池にも対応できる。
【0021】
回転する該発電ユニットの上面部内側と側面部の洗浄と冷却に関する課題に言及すれば、水配管を外部補強支柱として利用できる。回転軸上端頭部にコロ軸受けを嵌合し,該軸受け中心に支えを兼ねた止水配管先端を嵌合し、該配管にノズルを適宜、電磁弁と共に装着し利用できる。
【0022】
他の付設方法として、回転軸中心にコロ軸受けを介し、その中心を静止水配管と支柱を兼ねた一体型構造支柱として下部より水が導入され、前記同様に該太陽光パネル回転軸の頭部からノズル配管を突きだし適宜配置することで洗浄・冷却が自動でできる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の発電ユニットの破断面から見た斜示図。
【
図2】発電ユニットを結合するジョイント軸を示す。
【
図3】本発明の発電ユニットを筒状透明構造物に多段に構成したシステム発電装置の外観図で概略断面図である。
【本発明の実施の形態】
【0024】
以下に本発明の実施の形態に係る太陽光集光発電ユニットについて
図1―
図3に基づいて詳述する。
【0025】
図1は本発明の実施の形態に係る発電ユニットの斜視図で、前面破断図である。
花びら状に太陽電池モジュール単体を内側6枚、外側6枚を、ガク状の取付け板3に同心円状等間隔に配置固定し花状の発電ユニットを形成する。
内側の太陽電池モジュール―1、1-1、1-2、1-3を、外側の太陽電池モジュール2、2-1、2-2を背中合わせに組み合わせ、その下端はガク状取付け板3に同心円状等間隔にヒンジ等のブラケット7で固着されている。
【0026】
該モジュールの各単体は取付け板3を支点に上下約180度、左右0~15度程度に回転可能な構造である。ガク状取付け板3の周辺には反射板18が太陽電池モジュールの横幅に合わせた幅に、且つ外側モジュールの枚数だけ付設され上下に角度調整可能にヒンジ・ブラケット7で固定されている。上下180度の理由は、該発電ユニットが鈴蘭状に逆向きでも、反射板との構成で機能するからである。
【0027】
該反射板が、ガク状取付け板3の形状構造上から無理がある場合、取付け板3の真下近傍の回転軸16に円盤状反射板(参考図として第3図、21)として付設固定される。取付け板3の中心を貫通固定した回転軸16を回転駆動させて発電ユニットとなす。
【0028】
上記の発電ユニットの花柄状回転軸16の下部には、ジョイント軸13を介在固定し回転軸主軸に結合する構造で、該回転軸主軸には、直流電流を蓄電池、パワーコンディショナーに伝達する為の回転コネクター・スリップリングが固定装着された発電ユニットである。
【0029】
次に本発明の発電ユニットを産業用中規模発電装置に応用した実施例を第3図の概略断面外観図をもとに説明する。
該発電ユニットCは、三段構成で回転軸23取付け板兼反射板21に装着され筒状透明構造物Aにシステム構造物として構築されている。太陽電池モジュール20が内側上面と外側外面が背中合わせに構成され取付け板21に固着された構成で、該取付け板の中心軸孔の周囲にはφ200mmの通気口(第1
図19参照)が50個開孔し、通気口と冷却水ドレン排水口として作用する。回転軸23の下部にはスリップリング22が装着され,固定ブラシ33により蓄電池27、パワーコンディショナー28に接続している。
【0030】
該発電ユニットCの回転軸23は軸受29と30に固定され、小型トルク電動機26によりチェーン等で回転駆動する。発電ユニットCの冷却・洗浄は外部配管25からノズル24、24-2が筒内に導入された構成である。
【0031】
気象上、且つメンテナンス上からも、光学的に透明な筒状構造物Aに発電ユニットを格納するのが構造上安全であり、且つ筒内空気搬送が、発電ユニットCを軸流ファンとし、筒状の構造物Aが軸流送風機のケーシングをなす構造とした空調構造物であるから、全体としてシステム構造物として機能する。
【実施例1】
【0032】
第2図に基づいて、発電量1.2kw発電ユニットを用いた発電装置を以下に詳述する。
【0033】
太陽電池モジュールの仕様は、幅450mm、長さ1080mm、厚さ2.9mm、発電量100Wのシリコン半導体モジュール1、2を内側6枚、外側6枚を同心円状に、該モジュールは扇風機状に0.5度の捻りを入れて取付け板3に等間隔に配置し、取付け板3の板厚5mm×φ900のアルミ製円盤(回転軸中心孔の周辺にはφ120の空気対流孔兼排水孔が4個開孔)に、モジュール支持フラットバー8とヒンジ・ブラケット7で固定し、回転軸16、17として貫通して固定する。取付け板3から太陽電池モジュールの先端までの高さは約1mで、包摂リングの直径は約1.8m、回転軸外径50mm、内径40mm、長さ1.5mのアルミ製パイプで構成した。回転軸16の下部には円盤状の反射板、直径1200×厚さ3mm(図省略)を付設固定した構成で、発電ユニット重量は約25kgである。
【0034】
下部の回転軸16は格納庫で、長さ1000mm×幅500mm×高さ900mmの格納庫上部には外形50mm×長さ200mm×厚さ5mmの回転軸が突き出た構造で、該回転軸にはスリップリングと、その下部に駆動装置が、そして200mAリン酸鉄リチウムイオン蓄電池2台とインバーターを含むパワーコンディショナー、分電盤を装着したキャスター付き移動格納庫とした。その設置面積は0.8m2以下でしかない。発電ユニットの運転試験結果は以下の通りである。
【0035】
1.発電量は、快晴6時間平均1.25Kwh、直流電流は13Aで蓄電池を充電した。
2.回転冷却効果試験:各太陽電池モジュールの平均温度は35℃、発電ユニットを回転させて約20分経過後の太陽電池モジュール表面の平均温度を測定した。回転速度1rpmで2℃、回転速度21rpmで6℃パネル温度が低下した。
外気温35℃・相対湿度70% 回転軸駆動トルクモータの消費電力は約10Wであった。
※回転速度速定は、非接触型赤外線自動カメラCPA検知器で測定。
3.発電ユニットの直流電圧波形は1~12rpmの回転数で電圧波形は実用上問題なく平滑化するのでインバーターで変換された交流電圧も極めて安定した状態で使用できる。
4.発電ユニットから出る回転騒音は、1~8rpm時の騒音速定値の平均は、45dbで、発電ユニット21rpm時の騒音測定値の平均は65dbであった。速定場所の騒音は30dbである。騒音発生場所から1.5m離れた地点で騒音計測定を行った。
※騒音計は、CEデジタル騒音計で測定した。
【実施例2】
【0036】
総発電量35kwの太陽光集光発電装置を第3図に基づいて詳述する。
太陽光集光発電装置の上部最大直径Uは3.6m、筒状構造物の直径Dは約4m、高さHは14mの筒状構造物Aとなす。太陽電池モジュール20を内側、外側前面に構成し最大35kwの電力を発生するシステム発電装置として構築した。
【0037】
発電ユニットの各部詳細を以下に記す。取付け板兼反射板21は板厚5mm・直径3.6mで、空気対流孔と冷却水・ドレン排水孔が中心軸孔の周辺に等間隔にあける。取付け板21の下面に3mm×100mmの補強アングルを羽根車状に固定する。太陽電池モジュールを取付け板21とフラットバーとヒンジ・ブラケットで該太陽電池モジュール支持体(図省略)を形成し、該支持体の内側と外側前面に太陽電池モジュールをパラボラ状に配置固定して発電ユニットを構成する。
発電ユニットは上段から下へ約2m間隔で回転軸23に装着されている。
【0038】
発電ユニットの高さは約2mで、最大直径は3.6m.アルミ製回転軸は外径200mm、内径130mm、長さ2mのアルミパイプを組み合わせて使用した。各発電ユニット重量は約150kgである。
【0039】
回転軸16の最下部構造は、スリップリングと回転駆動装置及び蓄電池とパワーコンディショナー、配電盤等の格納室となる。
【0040】
筒状構造物Aは耐光性・光透過性の高いポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、或いは強化ガラスで構成された筒状構造物とする。