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特許7545018咀嚼促進及び唾液分泌促進高蛋白食品組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】咀嚼促進及び唾液分泌促進高蛋白食品組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/00 20160101AFI20240828BHJP
   A23G 3/34 20060101ALI20240828BHJP
   A23L 29/281 20160101ALI20240828BHJP
【FI】
A23L33/00
A23G3/34 101
A23L29/281
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019193014
(22)【出願日】2019-10-23
(65)【公開番号】P2021065154
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-07-22
(73)【特許権者】
【識別番号】390020189
【氏名又は名称】ユーハ味覚糖株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100177264
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 嘉秀
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100163577
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 正人
(72)【発明者】
【氏名】加藤 梨那
(72)【発明者】
【氏名】安田 琢和
(72)【発明者】
【氏名】毛利 謙太郎
(72)【発明者】
【氏名】松川 泰治
(72)【発明者】
【氏名】長田 健二
(72)【発明者】
【氏名】山田 泰正
【審査官】中島 芳人
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-130935(JP,A)
【文献】特開平11-276081(JP,A)
【文献】特開平06-113748(JP,A)
【文献】特開平08-098663(JP,A)
【文献】特表2009-504188(JP,A)
【文献】ジャパンフードサイエンス:食品加工と包装技術,2015年,54(11),pp45-49
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A23G
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
摂食したときの咀嚼回数及び/又は唾液分泌量を増加させることが可能である咀嚼誘発用及び/又は唾液分泌促進用食品組成物であって、
ホエイ蛋白質、ゼラチン、糖質及び水の組成比率が次の範囲にあり、
(a)ホエイ蛋白質:全重量に対し10.0~28.0重量%、
(b)ゼラチン:全重量に対し7.0~12.0重量%、
(d)糖質:全重量に対し40.0~58.0重量%、
(e)水:全重量に対し18.0~22.0重量%、かつ
不溶解蛋白質率が7.5~15.0%であり、
前記不溶解蛋白質率は、咀嚼誘発用及び/又は唾液分泌促進用食品組成物を細断後、50℃の温水中に浸漬し当該温水を500rpmの回転数で5分間撹拌したときに溶け残っている残渣重量を計測し、浸漬前の咀嚼誘発用及び/又は唾液分泌促進用食品組成物の重量に対する残渣重量の割合を、以下の計算式:
不溶解蛋白質率(%)=(溶け残った残渣重量(g)÷細断前の重量(g))×100
により求められる数値であることを特徴とする咀嚼誘発用及び/又は唾液分泌用促進食品組成物。
【請求項2】
前記糖質が、砂糖、水飴、ブドウ糖、果糖ブドウ糖液糖、還元麦芽糖、還元水飴、マルチトール、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、トレハロース、パラチノース、還元パラチノースから成る群から選択される少なくとも一つである、請求項1に記載の咀嚼誘発用及び/又は唾液分泌促進用食品組成物。
【請求項3】
前記食品組成物が、ゲル状食品である請求項1又は2に記載の咀嚼誘発用及び/又は唾液分泌促進用食品組成物。
【請求項4】
前記食品組成物が、ゲル状食品がグミである請求項3に記載の咀嚼誘発用及び/又は唾液分泌促進用食品組成物。
【請求項5】
前記食品組成物の形状が棒板状である、請求項1~4のいずれかに記載の咀嚼誘発用及び/又は唾液分泌促進用食品組成物。
【請求項6】
前記食品組成物の一口分の摂取サイズが、縦5mm~30mm、横5mm~30mm、高さ5mm~30mmである、請求項1~4のいずれかに記載の咀嚼誘発用及び/又は唾液分泌促進用食品組成物。
【請求項7】
前記食品組成物が、その一口分に目標咀嚼回数が印字されたものであることを特徴とする、請求項6に記載の咀嚼誘発用及び/又は唾液分泌促進用食品組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載の咀嚼誘発用及び/又は唾液分泌促進用食品組成物を摂取させることを含む、咀嚼回数を増加及び/又は唾液分泌を促進させる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、咀嚼促進及び唾液分泌促進高蛋白食品組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
咀嚼とは、簡潔には、咬む動作の繰り返しをいうが、生理学的には「食物を口唇で捕捉し、前歯で咬断し、臼歯部で粉砕・臼磨し、唾液と混和して食塊を作り嚥下しやすくする過程」と定義されている(非特許文献1)。咀嚼動作は歯、歯周組織、咀嚼筋、顎関節、舌筋など、多くの器官からの情報入力が中枢神経系により制御され、咀嚼が複雑・巧妙に実行される。その意義としては、(1)食べ物を嚥下しやすくする、(2)唾液分泌を盛んにし消化を助ける、(3)食べ物の性質を判別する、(4)味覚を楽しむ、(5)異物の発見と除去、(6)嘔吐による生体の保護、(7)口腔の衛生状態を保つ、(8)顎の成長を促す、(9)知能の発達を促す、(10)発癌物質の解毒などが挙げられる(非特許文献2)。
【0003】
そして、唾液には、(1)歯の保護及び再石灰化促進作用、(2)緩衝作用、(3)口腔粘膜の保護・修復作用、(4)抗炎症作用、(5)食塊形成作用、(6)消化作用、(7)洗浄作用、(8)味物質の溶解及び分解を通しての味覚形成作用、(9)抗菌作用などがある(非特許文献3)。よって、唾液分泌が減少すると、う蝕や歯周病などの口腔感染症が増え、歯の喪失や口臭の原因となるばかりでなく、口腔内の痛み、会話困難、食物誤嚥の増加、味覚障害、逆流性食道炎などの上部消化器障害の誘発など、生活の質(QOL)は多面的に低下することとなる。ドライマウス(口腔乾燥症)に罹患している潜在患者数は日本国内で約800万人から3000万人と推定される(非特許文献4)。
【0004】
また、近年、先進国での人口の高齢化、寿命の延長があり、要介護状態になることなく、できるだけ長く自立した生活を続けるという健康寿命の重要度が高まる中で、将来の身体機能障害との関連が強いフレイルティとサルコペニアの予防の重要性が注目されている。その場合、予防のターゲット臓器とゴールは骨格筋とその機能維持であり、骨格筋量、筋力、身体機能は栄養素としては蛋白質摂取量に強い関連があるため、蛋白質の重要性が注目されている。実際、高齢者では健康維持のために必要な十分な蛋白質摂取ができていないとの報告もされている(非特許文献5)。
【0005】
地域在住の70歳代の高齢者を3年間観察したところ、3年間の除脂肪体重の減少が、登録時の総エネルギー摂取量当たりの蛋白質摂取量に依存し、五分位で最もエネルギー摂取量当たりの蛋白質摂取量が多い群(平均91.0g/日、1.2 g/kg体重/日)では、最も低い群(平均56.0g/日、0.8 g/kg 体重/日)に比較し、交絡因子の調整後においても、除脂肪体重の減少が40%抑制されていたことが報告されている(非特許文献6)。
【0006】
また、最近のコホート調査でも、蛋白質摂取量が少ないことは3年後の筋力の低下と関連し(非特許文献7)、さらに高齢女性の3年間の観察で、蛋白質摂取量が少ないとフレイルティの出現のリスクが増加することが確認されている(非特許文献8)。日本人の高齢女性の横断研究でもフレイルティの存在と蛋白質摂取量との関連が明らかにされている(非特許文献9)。
【0007】
また、高齢者では同化抵抗性(anabolic resistance)が存在しており、アミノ酸が筋肉に供給されたとしても筋肉蛋白質同化作用が成人に比較し弱い可能性がある。しかし、高齢者の筋肉細胞もアミノ酸供給を増やすことにより、蛋白同化作用は十分惹起される。このことは骨格筋で蛋白質合成を誘導するには高齢者では成人以上にアミノ酸の血中濃度を上げる必要があり、そのためには十分な蛋白質の摂取が必要となることを示唆する。実際十分量の蛋白質摂取やアミノ酸投与により高齢者においても成人と同等の筋肉蛋白の合成が起こることが報告されている(非特許文献10、11)。
【0008】
このような社会情勢を背景として、咀嚼を促進する食品として、例えば、特許文献1には、グルコマンナン又はグルコマンナンに栄養物質を添加したものをアルカリ性物質で処理し、これに調味料を加えた後乾燥することにより得られた咀嚼機能強化用の口中で弾力性を有する健康食品が記載されている。しかし、当該健康食品は、咀嚼した時に容易に噛み切れず、少なくとも10分以上の咀嚼運動に耐え、これを1日数回食することによって自然に咀嚼機能を強化するものであり、咀嚼機能強化のために特許文献1に記載の健康食品を使用した場合、咀嚼することに疲れてしまい、特に咀嚼力が弱っている高齢者の場合には継続して必要な咀嚼運動を行うことが困難になる可能性がある。
【0009】
また、唾液分泌を促進する食品としては、フラボノイドやカレーリーフ抽出物を含有する食品(特許文献2)、炭素数9~20の有機モノカルボン酸を含有する食品(特許文献3)、ソーマチンとテアニンとを含有する食品(特許文献4)などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開昭64-10961号公報
【文献】特開2018-80150号公報
【文献】特開2017-85943号公報
【文献】特許第5620628号
【非特許文献】
【0011】
【文献】河村洋二郎、「口腔生理学」、永末書店、1979年発行、p.159
【文献】鈴木隆、岩手医科大学歯学雑誌、第20巻、第1~10頁、1995年
【文献】Mishima K, Dental Medicine Research,32(3):146-153(2012)
【文献】安藤陽子、顎咬合誌、第31巻、第1・2合併号、第114-118頁、2011年
【文献】Kerstetter JE et al.,J Nutr,133(3):855S-861S(2003)
【文献】Houston DK et al.,Am J Clin Nutr,87(1):150-155(2008)
【文献】Bartali B et al.,J Am Geriatr Soc,60(3):480-484(2012)
【文献】Beasley JM et al.,J Am Geriatr Soc,58(6):1063-1071(2010)
【文献】Kobayashi S et al.,Nutr J,12:164(2013)
【文献】Symons TB et al.,Am J Clin Nutr,86(2):451-456(2007)
【文献】Drummond MJ et al.,J Appl Physiol 104(5):1452-1461(2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、独特のテクスチャーを有することで咀嚼が促され、唾液分泌促進作用も高くなる新規な食品組成物を提供することを目的とする。
また、本発明は、前記食品組成物を摂取させることを含む、咀嚼回数を増加及び/又は唾液分泌を促進させる方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意努力した結果、驚くべきことに、最終的に得られる高蛋白質食品組成物が独特のテクスチャーを有することによって、咀嚼及び/又は唾液分泌が促される新規な高蛋白質食品組成物を開発することに成功し、本発明を完成するに至った。
【0014】
本発明の要旨は、
〔1〕 摂食したときの咀嚼回数及び/又は唾液分泌量を増加させることが可能である咀嚼誘発用及び/又は唾液分泌促進用食品組成物であって、テクスチャーアナライザーを用いた測定結果において弾力および硬度が以下の範囲を満たすことを特徴とする咀嚼誘発用及び/又は唾液分泌用促進食品組成物、
(a)弾力:4000~8000g
(b)硬度:8000~14000g
〔2〕 ホエイ蛋白質、ゼラチン、糖質及び水の組成比率が次の範囲にある前記〔1〕記載の咀嚼誘発用及び/又は唾液分泌促進用食品組成物、
(a)ホエイ蛋白質:全重量に対し6.0~35.0重量%
(b)ゼラチン:全重量に対し5.0~25.0重量%
(d)糖質:全重量に対し30.0~65.0重量%
(e)水:全重量に対し9.0~30.0重量%
〔3〕 不溶解蛋白質率が5~17.5%である前記〔1〕又は〔2〕記載の咀嚼誘発用及び/又は唾液分泌促進用食品組成物、
〔4〕 前記糖質が、砂糖、水飴、ブドウ糖、果糖ブドウ糖液糖、還元麦芽糖、還元水飴、マルチトール、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、トレハロース、パラチノース、還元パラチノースから成る群から選択される少なくとも一つである、前記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の咀嚼誘発用及び/又は唾液分泌促進用食品組成物、
〔5〕 前記食品組成物が、ゲル状食品である前記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の咀嚼誘発用及び/又は唾液分泌促進用食品組成物、
〔6〕 前記食品組成物が、ゲル状食品がグミである前記〔5〕に記載の咀嚼誘発用及び/又は唾液分泌促進用食品組成物、
〔7〕前記食品組成物の形状が棒板状である、前記〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の咀嚼誘発用及び/又は唾液分泌促進用食品組成物、
〔8〕 前記食品組成物の一口分の摂取サイズが、縦5mm~30mm、横5mm~30mm、高さ5mm~30mmである、前記〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の咀嚼誘発用及び/又は唾液分泌促進用食品組成物、
〔9〕 前記食品組成物が、その一口分に目標咀嚼回数が印字されたものである、前記〔8〕に記載の咀嚼誘発用及び/又は唾液分泌促進用食品組成物、
〔10〕 前記〔1〕~〔9〕のいずれかに記載の咀嚼誘発用及び/又は唾液分泌促進用食品組成物を摂取させることを含む、咀嚼回数を増加及び/又は唾液分泌を促進させる方法
に関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の咀嚼誘発用及び/又は唾液分泌促進用食品組成物(以下、本発明の食品組成物ともいう)は、独特のテクスチャーを有し、これにより咀嚼が促され、唾液分泌促進作用も高くなるために、本発明の食品組成物を摂取することで、ドライマウスの改善を図れるだけでなく、咀嚼効果(例えば、食べ物を嚥下しやすくする、唾液分泌を盛んにし消化を助ける、食べ物の性質を判別する、味覚を楽しむ、異物の発見と除去、嘔吐による生体の保護、口腔の衛生状態を保つ、顎の成長を促す、知能の発達を促す、発癌物質の解毒など)を奏し、また、唾液分泌を促進させることで、唾液分泌効果(例えば、歯の保護及び再石灰化促進作用、緩衝作用、口腔粘膜の保護・修復作用、抗炎症作用、食塊形成作用、消化作用、洗浄作用、味物質の溶解及び分解を通しての味覚形成作用、抗菌作用など)を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、実施例及び比較例において製造したそれぞれの食品組成物の形状を示した図である。
図2図2は、実施例及び比較例において製造したそれぞれの食品組成物について、硬度を縦軸に、弾力を横軸にプロットしたグラフを示した図である。
図3図3は、実施例及び比較例において製造したそれぞれの食品組成物の不溶性蛋白質率を計測するために、当該食品組成物を細断するための切断部を点線で示した図である。
図4図4は、実施例及び比較例において製造したそれぞれの食品組成物について、不溶性蛋白質の割合を縦軸に、弾力を横軸にプロットしたグラフを示した図である。
図5図5は、本発明の棒板状の食品組成物を示した図である。
図6図6は、本発明の二分割用の溝が設置された棒板状の食品組成物を示した図である。
図7図7は、本発明の四分割用の溝が設置された棒板状の食品組成物を示した図である。
図8図8は、本発明の十二分割用の溝が設置された棒板状の食品組成物を示した図である。
図9図9は、図1の食品組成物に、咀嚼目標回数が印字されたものの一例を示した図である。
図10図10は、図8の食品組成物に、咀嚼目標回数が印字されたものを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合があるが、本発明を限定するものではない。
【0018】
本発明の食品組成物は、摂食したときの咀嚼回数及び/又は唾液分泌量を増加させることが可能である咀嚼誘発用及び/又は唾液分泌促進用食品組成物であって、テクスチャーアナライザーを用いた測定結果において弾力および硬度が以下の範囲を満たすことを特徴とする。
(a)弾力:4000~8000g
(b)硬度:8000~14000g
【0019】
本発明において、摂食したときの咀嚼回数を増加させるとは、通常の食品と同量の本発明の食品組成物を摂取したときの咀嚼回数を増加させることをいう。
また、本発明において、摂食したときの唾液分泌量を増加させるとは、通常の食品と同量の本発明の食品組成物を摂取したときの唾液分泌量を増加させることをいう。
【0020】
本発明の食品組成物では、前記のような特徴的なテクスチャーを有することにより、本発明の食品組成物を摂食した場合に、咀嚼を促進及び/又は唾液分泌を促すことができる。
本発明の食品組成物のテクスチャーは、当該技術分野において通常用いられるTexture Analyzer TA.XT.plus(Stable Micro Systems社製)等のテクスチャーアナライザーを用い、弾力(g)及び硬度(g)を計測することにより数値的に表すことができる。
本発明の食品組成物の弾力は、4000~8000gであり、好ましくは5000~8000gである。また、本発明の食品組成物の硬度は、8000~14000gであり、好ましくは9000~14000gである。
【0021】
本発明の食品組成物の形態としては、弾力と硬度を有するゲル状食品、例えば、グミが挙げられる。
なお、一般的なグミなどのゲル状食品は、例えば、後述の比較例1に示すように弾力2000g未満、かつ硬度12000g未満のものであり、噛みやすくする観点から弾力が低くなっている。
これに対して、本発明の食品組成物では、上記のように弾力を4000~8000gに調整することで、一般的なグミなどのゲル状食品と比べて、目的とする咀嚼の促進及び/又は唾液分泌を促すことを可能にしている。
【0022】
本発明の食品組成物は、蛋白質を一定の範囲に高配合することによって、原料液調製段階で液中に十分溶け切っていない蛋白質不溶物を存在させ、これによって最終的に得られる高蛋白質食品組成物が独特のテクスチャーを有し、このテクスチャーによって咀嚼及び唾液分泌が促される新規な高蛋白質食品組成物である。
本発明の食品組成物に用いられる原料及び製造方法について、以下に記載する。
【0023】
本発明の食品組成物において、主要蛋白質原料としては、ホエイ蛋白質を用いることができる。本発明で使用されるホエイ蛋白質とは、ウシ、ヒツジ、ヒトなどの生乳から、カゼインと乳脂肪を取り除いた乳清(ホエイ)に含まれる蛋白質の総称を意味し、例えば、ホエイ蛋白質濃縮物(Whey Protein Concentrate、WPCともいう)、ホエイ蛋白質分離物(Whey Protein Isolate、WPIともいう)、さらにはホエイ蛋白質からβ-ラクトグロブリンなどの特定の蛋白質を取り出したもの、その他、ホエイの原液(甘性ホエイ、酸ホエイなど)、その乾燥物(ホエイ粉など)、その凍結物などが挙げられる。ホエイ蛋白質は、自ら調製して用いてもよいし、市販品を入手して用いてもよい。市販品のホエイ蛋白質としては、例えば、チーズホエイ由来のWPC素材の「エンラクトHUS」(日本新薬株式会社)、「エンラクトALC」(日本新薬株式会社)、酸ホエイ由来のWPC素材の「PROGEL800」(日本新薬株式会社)、WPI素材の「エンラクトSAT」(日本新薬株式会社)、「エンラクトYYY」(日本新薬株式会社)、「ラクトクリスタル」(日本新薬株式会社)などを挙げることができる。本発明の食品組成物におけるホエイ蛋白質の含有量は、本発明の優れた効果を損なわない範囲で特に限定されないが、例えば食品組成物全量の6.0~35.0重量%、好ましくは7.0~32.0重量%、より好ましくは8.0~30.0重量%、さらに好ましくは10.0~28.0重量%であることが望ましい。
【0024】
さらに、本発明の食品組成物において、ゲル化剤及び蛋白質原料として、ゼラチンが用いられる。ゼラチンは、例えば、コラーゲンを含むゼラチン原料を酸処理又はアルカリ処理した後、水洗、抽出及び精製することにより製造することができる。コラーゲンを含むゼラチン原料としては特に限定されず、例えば、牛骨、牛皮、豚骨、豚皮、鶏骨、鶏皮等の獣や鳥由来の原料、魚、魚皮、魚鱗等の水生生物由来の原料等が挙げられる。一般にゼラチンはブルーム(Bloom)で規定されて市販されている。ブルームとはゼリー強度を表す値であり、ブルームが大きいほど硬いゲルをつくることができる。本発明では100ブルームから300ブルームまで、好ましくは120ブルームから250ブルームまで、各種ゼラチンを使用することができる。ゼラチンは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。本発明の食品組成物におけるゼラチンの含有量は、本発明の優れた効果を損なわない範囲で特に限定されないが、例えば食品組成物全量の5.0~25.0重量%、好ましくは6.0~18.0重量%、より好ましくは7.0~15.0重量%、さらに好ましくは7.0~12.0重量%であることが望ましい。
【0025】
本発明の一態様において、本発明の優れた効果を損なわない範囲で、ゼラチン以外のゲル化剤を、ゼラチンと組み合わせて、あるいはゼラチンの代わりに使用することができる。ゼラチン以外のゲル化剤としては、例えば、寒天、ファーセレラン、カラギーナン、グアガム、ローカストビーンガム、サイリウムシードガム、タマリンドシードガム、タラガム、ペクチン、トラガントガム、カラヤガム、キサンタンガム、カードラン、ジェランガム、大豆多糖類、アルギン酸、カルボキシメチルセルロース等の天然物由来の増粘多糖類が挙げられる。増粘多糖類は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0026】
本発明の食品組成物は、蛋白質量を一定の範囲に高配合させることにより、原料液調製段階で液中に十分溶け切っていない蛋白質不溶物を存在させ、これによって最終的に得られる高蛋白質食品組成物が独特のテクスチャーを有し、このテクスチャーによって咀嚼及び唾液分泌が促される新規な高蛋白質食品組成物である。最終の食品組成物中の蛋白質の含有量は、10~40重量%、好ましくは12~40重量%、さらに好ましくは14~40重量%、最も好ましくは16~40重量%であることが望ましい。
なお、蛋白質含有量の測定方法は、栄養表示基準(平成8年5月20日厚生省告示第146号)別表第2の第3欄記載の方法、すなわち、窒素定量換算法に準ずる。
【0027】
前記蛋白質不溶物は、本発明の食品組成物を細断後、温水中に浸漬し当該温水を所定時間、撹拌したときに溶け残っている残渣重量を計測し、浸漬前の食品組成物の重量に対する残渣重量の割合(本発明において、「不溶解蛋白質率(%)」ともいう)を求めることにより表すことができる。本発明の食品組成物の不溶解蛋白質率は、好ましくは5~17.5%、より好ましくは6.5~16.0%、さらに好ましくは7.0~16.0%、さらに好ましくは7.5~15.0%、最も好ましくは8.0~14.0%である。
前記不溶解蛋白率は、具体的には、後述の実施例8に記載の方法に基づいて測定することができる。
【0028】
本発明の食品組成物において、原料として糖質が用いられる。糖質としては、従来から食品分野で用いられているものを特に限定なく使用することができ、例えば、ブドウ糖、果糖等の単糖類、ショ糖、乳糖、トレハロース等の二糖類、マルチトール、キシリトール、エリスリトール、ラクチトール、ソルビトール、マンニトール、グリセリン、還元澱粉加水分解物(還元澱粉糖化物)、パラチニット(商標名)、パラチノース(商標名)、還元パラチノース(商標名)等の糖アルコール類、ラフィノース、スタキオース、還元キシロオリゴ糖、還元分岐オリゴ糖、フラクトオリゴ糖、イヌロオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、マルトオリゴ糖、ラクトスクロース、キシロオリゴ糖、大豆オリゴ糖、パラチノースオリゴ糖等のオリゴ糖類、水飴、還元水飴、酵素水飴、果糖ブドウ糖液糖、ブドウ糖液糖等の液糖類等が挙げられる。なお、含有させる糖質として、マルチトール、キシリトール、エリスリトール等の糖アルコールのみに制限することで「糖類ゼロ」を謳うことができる。糖質は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。本発明の食品組成物における糖質の含有量は、本発明の優れた効果を損なわない範囲で特に限定されないが、例えば食品組成物全量の30.0~65.0重量%、好ましくは35.0~62.0重量%、さらに好ましくは40.0~60.0重量%、最も好ましくは40.0~58.0重量%であることが望ましい。
【0029】
また、本発明の食品組成物において、原料として水が用いられる。水としては、食品に利用可能な水であればよく、特に限定はない。本発明の食品組成物における水の含有量は、本発明の優れた効果を損なわない範囲で特に限定されないが、例えば食品組成物全量の9.0~30.0重量%、好ましくは14.0~26.0重量%、より好ましくは16.0~24.0重量%、さらに好ましくは18.0~22.0重量%であることが望ましい。
なお、前記水の含有量は、水分値ともいう。
【0030】
さらに、本発明の食品組成物において、原料として酸味料が用いられる。酸味料としては、従来から食品分野で用いられているものを特に限定なく使用することができ、例えば、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、酢酸、フィチン酸の他、発酵乳を用いることができる。また、前記酸味料を含有する果汁等を酸味料として用いてもよい。酸味料は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。本発明の食品組成物における酸味料の含有量は、食品組成物本体のpHが4.5以下、好ましくは1.9~4.5になる量であればよい。食品組成物本体のpHが4.5を超えると、酸性条件によるカビや酵母等の微生物の繁殖を抑制する効果が低下し、食品組成物本体が高水分含有に起因して自由水を十分に有しているため、常温流通ではカビや酵母等の微生物が繁殖するおそれがある。
【0031】
前記果汁等の例としては、りんご、ぶどう、いちご、キウイ、もも、みかん等の果汁、にんじん、ほうれん草、セロリ、ピーマン、ケール、キャベツ、クレソン等の野菜汁、またはそれらの混合物などが挙げられる。
【0032】
本発明の一態様において、副次的な蛋白質原料として、ロイシンまたはHMB(3-ヒドロキシ-3-メチルブチレート)を添加することもできる。ロイシンとは、アミノ酸の一種であり、L-ロイシン又はその生理学的に許容可能な塩のことを意味する。HMBはロイシンの体内における代謝産物であり、筋肉における蛋白質合成を誘導する重要な働きをすることが知られている。HMBは、例えば、HMBカルシウムのような塩であってもよい。本発明において適用可能なロイシン及びHMBとしては、天然由来のもの、化学合成されたもの、又はこれらを組み合わせたものなどが挙げられる。
ロイシン及びHMBは、筋蛋白質合成を刺激し得るアミノ酸であり、ロンシン及び/又はHMBを添加することで、本発明の食品組成物の筋蛋白合成力をさらに高めることができる。
本発明の食品組成物におけるロイシンの含有量は、本発明の優れた効果を損なわない範囲で特に限定されないが、例えば食品組成物全量の1.0~10.0重量%、好ましくは2.0~38.0重量%、より好ましくは3.0~7.0重量%、さらに好ましくは4.0~6.0重量%であることが望ましい。
本発明の食品組成物におけるHMBの含有量は、本発明の優れた効果を損なわない範囲で特に限定されないが、例えば食品組成物全量の0.5~7.5重量%が好ましく、2.0~4.5重量%がより好ましい。
【0033】
上記以外にも必要に応じて、調味料、香料、乾燥果実、着色料等を用いることができる。
【0034】
本発明の食品組成物は、例えば次のようにして製造することができる。仕込水に糖質を加え加熱溶解し、煮詰めを行い煮飴を得る。そこに予め温水に投入し膨潤させたゼラチンを加え、さらに必要に応じて酸味料、調味料、香料、果汁等の副原料を添加し、十分に混合したところに、ホエイ蛋白質等の主要蛋白質原料を加え、十分混合することで生地を得る。混合した生地中では、添加されたホエイ蛋白質等の主要蛋白質原料が生地中に溶解されながら、その一部が固形状で残ることで不溶解蛋白質となる。得られた生地は、スターチモールド等の通常の成型方法を用い、例えば常圧で静置することで水分値を調整しながら所望の形状となるよう成型する。成型後はデモールドすることで所望の形状を有する食品組成物を得ることができる。また、水分値の確認は、減圧乾燥法などにより行うことができる。
得られた食品組成物に、必要に応じて表面に油脂や光沢剤、グラニュー糖、酸味料、粉末オブラート等を塗布することもできる。
【0035】
本発明の一態様において、本発明の食品組成物を図5~8に示すような棒板状の形態にすることができる。
棒板状とは、図5に示すように、表面が平面の板状のもの、図6~8に示すように、表面に溝を形成して棒状に割ることが可能な板状のものなどが含まれる。
前記のように棒板状の形態にすることで、一口で食べにくくなり必然的に端から複数回食いちぎることになるために、同じ量で一口でほおばれるように調整されている形態と比べて食べる際の咀嚼回数が増え、唾液分泌量もより促進することが可能になる。
棒板状のような形態は当該技術分野において周知のスターチモールドを使った方法により成形加工することにより行うことができる。なお、図5に示した棒板状の食品組成物は、食品組成物に溝が入るように加工したモールド(型)を使うことにより、一口分を所定の大きさに分断して、摂取することが容易な形に仕上げることができる。
前記棒板状のサイズとしては、縦方向よりも横方向の長さが長い形状であればよく、特に限定はないが、例えば、縦方向および高さ方向の長さが一口サイズといわれる30mm以下であり、かつ、横方向の長さが一口サイズである30mmを超えるサイズに調整されていることが挙げられる。
また、図1に示すように、一口分のサイズに予め調整されていてもよい。この場合、咀嚼促進及び唾液分泌促進及び口腔内に入る最大サイズ(一般的に30mm辺)の観点から、一口分の摂取サイズは、好ましくは縦5mm~30mm、横5mm~30mm、高さ5mm~30mm、より好ましくは縦10mm~30mm、横10mm~30mm、高さ10mm~30mm、さらに好ましくは縦13mm~30mm、横13mm~30mm、高さ13mm~30mmである。
【0036】
本発明の一態様において、本発明の食品組成物を図9図10に示すような咀嚼目標回数を印字したものとすることができる。印字は、食品用のインクジェットプリンタ、又は予め数字を彫り込んだシリコンモールド又はスターチモールドを用いることにより行うことができる。インクジェットプリンタによる印字技術とは、インクジェットプリンタの技術を食品に応用したもので、グミなどの固形食品の表面に可食インクにて文字や絵柄等を非接触で印刷する技術である。このように咀嚼目標回数を印字することで、無意識に本発明の食品組成物を食する場合よりも、咀嚼回数を増やすことができ、且つ唾液分泌を更に増やすことが可能となる。
【0037】
以上のような構成を有する本発明の食品組成物は、独特のテクスチャーを有し、これにより咀嚼が促され、唾液分泌促進作用も高くなり、また、前記テクスチャーを実現するために蛋白質配合率を高くしているために、効率的に蛋白質栄養素を摂取することができる。
また、本発明の食品組成物を摂取することで、摂取者の咀嚼回数を増加させて、ドライマウスの改善を図れるだけでなく、咀嚼効果(例えば、食べ物を嚥下しやすくする、唾液分泌を盛んにし消化を助ける、食べ物の性質を判別する、味覚を楽しむ、異物の発見と除去、嘔吐による生体の保護、口腔の衛生状態を保つ、顎の成長を促す、知能の発達を促す、発癌物質の解毒など)を奏し、また、唾液分泌を促進させることで、唾液分泌効果(例えば、歯の保護及び再石灰化促進作用、緩衝作用、口腔粘膜の保護・修復作用、抗炎症作用、食塊形成作用、消化作用、洗浄作用、味物質の溶解及び分解を通しての味覚形成作用、抗菌作用など)を奏することができる。
したがって、本発明は、本発明の食品組成物を摂取させることを含む、咀嚼回数を増加及び/又は唾液分泌を促進させる方法に関する。
【0038】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例
【0039】
〔実施例1〕
砂糖10重量部、水飴36重量部、パラチノース15重量部を、水13重量部に投入し、約60℃で5~10分間の加熱溶解を行った。そこに予め水で膨潤させた豚皮由来酸処理ゼラチン9重量部(150ブルーム)を加え、さらに酸味料1重量部、調味料3重量部、少々の香料及び少々の甘味料を投入し、最後に、ホエイ蛋白質13重量部を投入した。ホエイ蛋白質投入後、約60℃で5分間(ホールド時間5分)の加熱溶解を行った。得られたグミ生地の一部をスターチモールドに充填し、放置後、デモールドして図1に示したような個重約3.5~4.5g、縦13~17mm×横17~20mm×高さ12~15mmの高蛋白含有グミを作製した。また、減圧乾燥法による測定で水分値20%であることを確認した。
【0040】
〔実施例2〕
砂糖10重量部、水飴36重量部、パラチノース15重量部を、水13重量部に投入し、約60℃で5~10分間の加熱溶解を行った。そこに予め水で膨潤させた豚皮由来酸処理ゼラチン9重量部(150ブルーム)を加え、さらに酸味料1重量部、調味料3重量部、少々の香料及び少々の甘味料を投入し、最後に、ホエイ蛋白質13重量部を投入した。ホエイ蛋白質投入後、約60℃で30分間(ホールド時間30分)の加熱溶解を行った。得られたグミ生地の一部をスターチモールドに充填し、放置後、デモールドして、図1に示したような個重約3.5~4.5g、縦13~17mm×横17~20mm×高さ12~15mmの高蛋白含有グミを作製した。また、減圧乾燥法による測定で水分値20%であることを確認した。
【0041】
〔実施例3〕
砂糖10重量部、水飴36重量部、パラチノース15重量部を、水13重量部に投入し、約60℃で5~10分間の加熱溶解を行った。そこに予め水で膨潤させた豚皮由来酸処理ゼラチン9重量部(150ブルーム)を加え、さらに酸味料1重量部、調味料3重量部、少々の香料及び少々の甘味料を投入し、最後に、ホエイ蛋白質13重量部を投入した。ホエイ蛋白質投入後、約60℃で60分間(ホールド時間60分)の加熱溶解を行った。得られたグミ生地の一部をスターチモールドに充填し、放置後、デモールドして、図1に示したような個重約3.5~4.5g、縦13~17mm×横17~20mm×高さ12~15mmの高蛋白含有グミを作製した。また、減圧乾燥法による測定で水分値20%であることを確認した。
【0042】
〔実施例4〕
砂糖10重量部、水飴36重量部、パラチノース12重量部を、水13重量部に投入し、約60℃で5~10分間の加熱溶解を行った。そこに予め水で膨潤させた豚皮由来酸処理ゼラチン9重量部(150ブルーム)を加え、さらに酸味料1重量部、調味料3重量部、少々の香料及び少々の甘味料を投入し、最後に、ホエイ蛋白質16重量部を投入した。ホエイ蛋白質投入後、約60℃で5分間(ホールド時間5分)の加熱溶解を行った。得られたグミ生地の一部をスターチモールドに充填し、放置後、デモールドして、図1に示したような個重約3.5~4.5g、縦13~17mm×横17~20mm×高さ12~15mmの高蛋白含有グミを作製した。また、減圧乾燥法による測定で水分値20%であることを確認した。
【0043】
〔実施例5〕
砂糖10重量部、水飴36重量部、パラチノース8重量部を、水13重量部に投入し、約60℃で5~10分間の加熱溶解を行った。そこに予め水で膨潤させた豚皮由来酸処理ゼラチン9重量部(150ブルーム)を加え、さらに酸味料1重量部、調味料3重量部、少々の香料及び少々の甘味料を投入し、最後に、ホエイ蛋白質20重量部を投入した。ホエイ蛋白質投入後、約60℃で5分間(ホールド時間5分)の加熱溶解を行った。得られたグミ生地の一部をスターチモールドに充填し、放置後、デモールドして、図1に示したような個重約3.5~4.5g、縦13~17mm×横17~20mm×高さ12~15mmの高蛋白含有グミを作製した。また、減圧乾燥法による測定で水分値20%であることを確認した。
【0044】
〔実施例6〕
砂糖10重量部、水飴36重量部、パラチノース2重量部を、水13重量部に投入し、約60℃で5~10分間の加熱溶解を行った。そこに予め水で膨潤させた豚皮由来酸処理ゼラチン9重量部(150ブルーム)を加え、さらに酸味料1重量部、調味料3重量部、少々の香料及び少々の甘味料を投入し、最後に、ホエイ蛋白質26重量部を投入した。ホエイ蛋白質投入後、約60℃で5分間(ホールド時間5分)の加熱溶解を行った。得られたグミ生地の一部をスターチモールドに充填し、放置後、デモールドして、図1に示したような個重約3.5~4.5g、縦13~17mm×横17~20mm×高さ12~15mmの高蛋白含有グミを作製した。また、減圧乾燥法による測定で水分値20%であることを確認した。
【0045】
〔比較例1〕
砂糖10重量部、水飴36重量部、パラチノース28重量部を、水13重量部に投入し、約60℃で5~10分間の加熱溶解を行った。そこに予め水で膨潤させた豚皮由来酸処理ゼラチン9重量部(150ブルーム)を加え、さらに酸味料1重量部、調味料3重量部、少々の香料及び少々の甘味料を投入し、約60℃で5分間(ホールド時間5分)の加熱溶解を行った。得られたグミ生地の一部をスターチモールドに充填し、放置後、デモールドして、図1に示したような個重約3.5~4.5g、縦13~17mm×横17~20mm×高さ12~15mmのグミを作製した。また、減圧乾燥法による測定で水分値20%であることを確認した。
【0046】
〔比較例2〕
水飴35重量部を、水13重量部に投入し、約60℃で5~10分間の加熱溶解を行った。そこに予め水で膨潤させた豚皮由来酸処理ゼラチン9重量部(150ブルーム)を加え、さらに酸味料1重量部、調味料3重量部、少々の香料及び少々の甘味料を投入し、最後に、ホエイ蛋白質39重量部を投入した。ホエイ蛋白質投入後、約60℃で5分間(ホールド時間5分)の加熱溶解を行った。得られたグミ生地の一部をスターチモールドに充填し、放置後、デモールドして、図1に示したような個重約3.5~4.5g、縦13~17mm×横17~20mm×高さ12~15mmの高蛋白含有グミを作製した。また、減圧乾燥法による測定で水分値20%であることを確認した。
【0047】
表1は、上記実施例1~6及び比較例1~2の各原料の配合率及びホエイ蛋白質投入後の溶解時間(ホールド時間)をまとめた表である。
【0048】
【表1】
【0049】
表2は、上記実施例1~6及び比較例1~2において製造した各グミの主成分組成を示した表である。
【0050】
【表2】
【0051】
〔実施例7〕
前記の実施例1~6および比較例1~2において製造したそれぞれのグミについて、テクスチャーアナライザ(商品名:Texture Analyzer TA.XT.plus、Stable Micro Systems社製)を用いて、硬度および弾力を計測した。ここで、弾力は測定速度1mm/secで圧縮率60%のときの力(単位:g)と定義した。また、硬度は測定速度3mm/secで圧縮率100%(裁断時)のときの力(単位:g)と定義した。具体的な測定については添付のマニュアルに準じた。結果を図2に示した。
【0052】
〔実施例8〕
前記の実施例1~6および比較例1~2において製造したそれぞれのグミについて、温水に一定時間浸漬後の溶け残った部分を重量測定し当該重量と弾力との関係について調べた。具体的には、まず、実施例1~6および比較例1~2において製造したグミを、図3に示したように、破線部で切断することで32分割した。次いで、得られた細断物を50℃の温水200mLに投入し、500rpmの回転数で5分間スターラーで撹拌した。溶け残った残渣を濾過後、遠心エバポレーターにて水分を蒸発させた後、得られた乾燥残渣物((これを「不溶解蛋白質」とした))の重量を測定した。不溶解蛋白質率(%)=(溶け残った残渣重量(g)÷細断前の重量(g))×100の計算式により、不溶解蛋白質率(%)を求めた。結果を図4に示した。
【0053】
〔実施例9〕
実施例1~6において製造したグミについて、その機能性として咀嚼促進作用と唾液分泌促進作用を評価するため、比較例1~2において製造したグミを比較対照として、以下の試験を行った。すなわち、3名のパネラーがグミ1個を摂食し嚥下閾(飲み込むことができるレベル)に到達するまでの咀嚼回数を測定し比較した。また、同時に、唾液分泌量については以下のようにして測定した。
(1)グミ1個をシャーレに置き、グミ及びシャーレの重量(「グミ+シャーレ」重量)を測定する。
(2)そのグミを口に含み、嚥下域に到達するまで咀嚼する。
(3)嚥下域に到達直後に、シャーレの上に唾液と共に咀嚼したグミを吐き出し、唾液、咀嚼したグミ及びシャーレの重量(「唾液+咀嚼したグミ+シャーレ」重量)を測定する。
(4)(「唾液+咀嚼したグミ+シャーレ」重量)-(「グミ+シャーレ」重量)の計算式により唾液分泌量を算出する。
【0054】
咀嚼回数の結果を表3に、唾液分泌量の結果を表4に示した。実施例1~6に示したグミは、咀嚼回数および唾液分泌量共に、比較例に比べて増加していた。すなわち、比較例1で製造したグミは、いわゆる従来の一般的なグミで、大きな力を要せずとも噛めば窪み、噛むのを止めれば元に戻るという通常の弾力性のあるテクスチャーのグミであり、嚥下閾に到達するまでの咀嚼回数はグミ1個あたり平均で約82.3回であった。比較例2で製造したグミは、ホエイ蛋白質が約38.2重量%含まれているためか、非常に硬く、口に含み噛み始めた段階では、噛み潰すのに困難を極めたが、一旦軟化すると比較例1のグミと同程度のグミ1個あたり平均で約86.3回の咀嚼回数で嚥下閾に到達した。
【0055】
一方、実施例1~6で得られたグミは、それらに比べて、口に含み噛み始めると、比較例1や比較例2のグミとは異なり、口の中で容易に溶けず、また嚥下できるレベルまで砕くにも咀嚼を繰り返すことが必要という特徴的なテクスチャーを示すとともに、表3に示したように、実施例1~6のグミの咀嚼回数は、比較例1に比べて1.29~1.85倍に、比較例2に比べて1.23~1.76倍に増加していた。同様に、表4に示したように、実施例1~6のグミの唾液分泌量は、比較例1に比べて2.15~3.71倍に、比較例2に比べて1.85~3.21倍に増加していた。
また、実施例1~6で得られたグミは、一定範囲の力で咀嚼が可能であり、咀嚼を続けることによる疲れが感じ難いことから、消費者にとって咀嚼に伴う無理がなく、心地のよい咀嚼を行うことができるものであった。
【0056】
【表3】
【0057】
【表4】
【0058】
以上の結果より、図2に示したような弾力が4000~8000g、硬度が8000~14000gのグミでは、口中で噛んだ場合に、咀嚼が促され、また、唾液の分泌が促進される、高蛋白質含量のグミであることが判明した。
【0059】
〔実施例10〕
L-ロイシン4.1部、砂糖13.4部、水飴7.6部、還元水飴41部、パラチノース20部を仕込み水12部に混合し、減圧加熱しながら溶解させBx.83まで煮詰めた。その後、ゼラチン(150ブルーム)12部を温水に膨潤させた後、添加し、次いで、クエン酸1.5部を温水に溶解させた後、添加した。この溶液にホエイ蛋白質17.6部を攪拌しながら添加・混合してグミ生地を作製した。
次に得られたグミ生地をスターチモールドに充填し12時間乾燥室に放置した。このグミをデモールドし、重量22.5g、縦26mm×横80mm×高さ10mmの、図5に示すような形状を有するグミを作製した。また、水分値は約19.3重量%であることを確認した。
得られたグミは、実施例1と同様の弾力および硬度を有しており、不溶解蛋白質率も5~17.5%の範囲であることを確認した。
また、得られたグミは、端から徐々に食べ進めることで、一口サイズのものよりも咀嚼回数が多くなり、唾液分泌もより促進するものであった。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10