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特許7545023重合性組成物並びにそれから得られる光学材料及び色調変化材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】重合性組成物並びにそれから得られる光学材料及び色調変化材料
(51)【国際特許分類】
   C08F 220/06 20060101AFI20240828BHJP
   C08F 12/14 20060101ALI20240828BHJP
   C08F 22/02 20060101ALI20240828BHJP
   C09K 9/02 20060101ALI20240828BHJP
   G02B 1/04 20060101ALI20240828BHJP
【FI】
C08F220/06
C08F12/14
C08F22/02
C09K9/02 C
G02B1/04
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020080529
(22)【出願日】2020-04-30
(65)【公開番号】P2021172797
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100110663
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 共永
(74)【代理人】
【識別番号】100178685
【弁理士】
【氏名又は名称】田浦 弘達
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】松村 吉将
(72)【発明者】
【氏名】菊田 航平
(72)【発明者】
【氏名】落合 文吾
(72)【発明者】
【氏名】古川 喜久夫
(72)【発明者】
【氏名】宮本 美幸
【審査官】藤原 研司
(56)【参考文献】
【文献】特開昭55-057200(JP,A)
【文献】特表2017-516691(JP,A)
【文献】国際公開第2019/177084(WO,A1)
【文献】米国特許第03109851(US,A)
【文献】特表2017-516991(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0012793(US,A1)
【文献】米国特許第08007989(US,B1)
【文献】中国特許出願公開第101572129(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F
C09K
G02B
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光重合性組成物を、硬化触媒の存在下で重合硬化して得られた樹脂を含む光学材料であって、
前記光重合性組成物は下記(1)式で表される化合物(a)を含み、
【化1】

(式中、mは0または1の整数を表し、nは0~3の整数を表し、pは0から2の整数を表し、qは1から3の整数を表し、p+q=3である。また、Rは同一または異なって炭素数1~6のアルキレン基を表し、Rは同一または異なって水素原子またはメチル基を表し、Zは同一または異なって水素原子またはビニル基を表す。)
前記化合物(a)が下記(3)式で表される化合物であり、
【化2】

(式中、pは0から2の整数を表し、qは1から3の整数を表し、p+q=3である。Zは同一または異なって水素原子またはビニル基を表す。Rは同一または異なって水素原子またはメチル基を示す。)
さらに、前記光重合性組成物は(c)アクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基、およびビニル基からなる群より選択される少なくとも1つの基を有する化合物を含有し、
前記(c)アクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基、およびビニル基からなる群より選択される少なくとも1つの基を有する化合物が、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、およびジメチル(メタ)アクリルアミドからなる群より選ばれる化合物を含む(但し、下記式〔I〕(式中、Rは炭素数1~4の飽和アルキル基を表す)で表されるメタクリレートおよびスチレンを含まない)、光学材料。
【化3】
【請求項2】
下記(1)式で表される化合物(a)を含み、
【化4】

(式中、mは0または1の整数を表し、nは0~3の整数を表し、pは0から2の整数を表し、qは1から3の整数を表し、p+q=3である。また、Rは同一または異なって炭素数1~6のアルキレン基を表し、Rは同一または異なって水素原子またはメチル基を表し、Zは同一または異なって水素原子またはビニル基を表す。)
前記化合物(a)が下記(2)、(4)式で表される化合物の少なくとも一つである、光重合性組成物。
【化5】

(式中、pは0から2の整数を表し、qは1から3の整数を表し、p+q=3である。Zは同一または異なって水素原子またはビニル基を表す。)
【化6】

(式中、pは0から2の整数を表し、qは1から3の整数を表し、p+q=3である。Zは同一または異なって水素原子またはビニル基を表す。Rは同一または異なって水素原子またはメチル基を示す。)
【請求項3】
さらに、(c)アクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基、およびビニル基からなる群より選択される少なくとも1つの基を有する化合物を含有する、請求項2に記載の光重合性組成物。
【請求項4】
前記(c)アクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基、およびビニル基からなる群より選択される少なくとも1つの基を有する化合物が、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、2-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、ジメチル(メタ)アクリルアミド、フェニルビニルスルフィド、フェニルビニルスルホキシド、4-メチル-5-ビニルイミダゾール、および1-ビニルイミダゾールからなる群より選ばれる少なくとも1種以上の化合物である、請求項3に記載の光重合性組成物。
【請求項5】
請求項2~4のいずれかに記載の光重合性組成物を、硬化触媒の存在下で重合硬化して得られた樹脂。
【請求項6】
請求項5に記載の樹脂を含む光学材料。
【請求項7】
樹脂を含む色調変化材料であって、
前記樹脂は、メタクリル酸ビスマス及びN,N-ジメチルアクリルアミドを含む光重合性組成物を、硬化触媒の存在下で重合硬化して得られた樹脂と、
30wt%のフェニルビスマスジメタクリレート及び70wt%のN,N-ジメチルアクリルアミドを含む光重合性組成物を、硬化触媒の存在下で重合硬化して得られた樹脂と、
ビスマスカルボキシエチルアクリレートを含むとともに、2-カルボキシエチルアクリレートを任意に含む光重合性組成物を、硬化触媒の存在下で重合硬化して得られた樹脂と、
のいずれかである、色調変化材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビスマスを含む重合性組成物に関し、更には、該重合性組成物から得られる、プラスチックレンズ、プリズム、光ファイバー、情報記録基盤、フィルター等の光学材料、中でもプラスチックレンズ、色調変化材料に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック材料は軽量かつ靭性に富み、また加工が容易であることから、各種光学材料、特にレンズに近年多用されている。光学材料、中でもレンズに特に要求される性能は屈折率が高いことであり、レンズの薄肉化、軽量化を可能とする。
【0003】
これまでの屈折率向上検討は、主として硫黄原子の導入による熱硬化性樹脂を中心に行われている。これらの検討の中で最も優れた方法は、特許文献1に示されるエピスルフィド化合物を使用する方法であり、屈折率1.7以上を達成している。
【0004】
しかしながら、硫黄を用いた化合物は臭気に難点があるため、硫黄以外の原子を用いた高屈折率材料が求められていた。また熱硬化では重合に時間がかかるため、短時間で成型できる光硬化可能な材料が求められていた。
【0005】
硫黄以外の原子を用いて光学物性の改善を図る手法として金属原子の導入があるが、合成が困難なこと、および毒性の観点から問題があった。また、安全性が高いとされるビスマスを用いた手法は特許文献2および3において提案されているが、いずれも合成が困難であり実用的でなかった。さらに、特許文献2および3に記載のこれらの樹脂は熱硬化性樹脂であり、重合硬化に時間がかかっていた。ビスマスを用いた光硬化性樹脂の実用例はこれまでになかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許3491660号公報
【文献】特許4890516号公報
【文献】特許5357156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、臭気が低減され、かつ短時間成型が可能な光硬化性の高屈折率材料を提供することを課題とする。更に、本発明は、ビスマスを用いた、高い屈折率を有する光硬化性樹脂を簡便に得る方法、およびその方法により得られる光硬化性樹脂を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、このような状況に鑑み、鋭意研究を重ねた結果、上記課題を解決し、本発明に至った。
【0009】
具体的には、本発明は以下の態様を含む。
【0010】
[1] 下記(1)式で表される化合物(a)を含む、重合性組成物。
【化1】
(式中、mは0または1の整数を表し、nは0~3の整数を表し、pは0から2の整数を表し、qは1から3の整数を表し、p+q=3である。また、Rは同一または異なって炭素数1~6のアルキレン基を表し、Rは同一または異なって水素原子またはメチル基を表し、Zは同一または異なって水素原子またはビニル基を表す。)
【0011】
[2]さらに、(b)チオール基を1分子中に2個以上有する化合物を含有する、[1]に記載の重合性組成物。
【0012】
[3]さらに、(c)アクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基、およびビニル基からなる群より選択される少なくとも1つの基を有する化合物を含有する、[1]又は[2]のいずれかに記載の重合性組成物。
【0013】
[4]前記化合物(a)が下記(2)~(4)式で表される化合物の少なくとも一つである、[1]~[3]のいずれかに記載の重合性組成物。
【化2】
(式中、pは0から2の整数を表し、qは1から3の整数を表し、p+q=3である。Zは同一または異なって水素原子またはビニル基を表す。)
【化3】
(式中、pは0から2の整数を表し、qは1から3の整数を表し、p+q=3である。Zは同一または異なって水素原子またはビニル基を表す。Rは同一または異なって水素原子またはメチル基を示す。)
【化4】
(式中、pは0から2の整数を表し、qは1から3の整数を表し、p+q=3である。Zは同一または異なって水素原子またはビニル基を表す。Rは同一または異なって水素原子またはメチル基を示す。)
【0014】
[5]前記(b)チオール基を1分子中に2個以上有する化合物が、ビス(2-メルカプトエチル)スルフィド、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、1,2-ビス(2-メルカプトエチルチオ)-3-メルカプトプロパン、および1,3-ビス(メルカプトメチル)ベンゼンからなる群より選択される1種以上である、[2]~[4]のいずれかに記載の重合性組成物。
【0015】
[6]前記(c)アクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基、およびビニル基からなる群より選択される少なくとも1つの基を有する化合物が、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、2-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、ジメチル(メタ)アクリルアミド、フェニルビニルスルフィド、フェニルビニルスルホキシド、4-メチル-5-ビニルイミダゾール、および1-ビニルイミダゾールからなる群より選ばれる少なくとも1種以上の化合物である、[3]~[5]のいずれかに記載の重合性組成物。
【0016】
[7]上記[1]~[6]のいずれかに記載の重合性組成物を、硬化触媒の存在下で重合硬化して得られる樹脂。
【0017】
[8]上記[7]に記載の樹脂を含む光学材料。
【0018】
[9]上記[7]に記載の樹脂を含む色調変化材料。
【発明の効果】
【0019】
本発明の重合性組成物を用いることにより、ビスマスを用いた光学材料が提供可能となった。すなわち、臭気が低減され、かつ短時間成型が可能な光硬化性の高屈折率材料を得ることが可能となった。また、色調変化性を有しており、色調変化デバイス等の用途へ提供可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明について製造例や実施例等を例示して詳細に説明するが、本発明は例示される製造例や実施例等に限定されるものではなく、本発明の内容を大きく逸脱しない範囲であれば任意の態様に変更して行うこともできる。
本発明の一実施形態において、(1)式で表される化合物(a)を含む、重合性組成物が提供される。この重合性組成物は、さらに、(b)チオール基を1分子中に2個以上有する化合物、及び/または(c)アクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基、およびビニル基からなる群より選択される少なくとも1つの基を有する化合物を含有してもよい。
【化5】
式中、mは0または1の整数を表し、nは0~3の整数を表し、pは0から2の整数を表し、qは1から3の整数を表し、p+q=3である。また、Rは同一または異なって炭素数1~6のアルキル基を表し、Rは同一または異なって水素原子またはメチル基を表し、Zは同一または異なって水素原子またはビニル基を表す。
【0021】
以下、各構成成分について説明する。
【0022】
(a)(1)式で表される化合物(a)(以下、「(a)化合物」とも称する)は、下記の条件を満たすすべての化合物を包含する。これらは単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。
【化6】
式中、mは0または1の整数を表し、nは0~3の整数を表し、pは0から2の整数を表し、qは1から3の整数を表し、p+q=3である。また、Rは同一または異なって炭素数1~6のアルキレン基を表し、Rは同一または異なって水素原子またはメチル基を表し、Zは同一または異なって水素原子またはビニル基を表す。
【0023】
より好ましい化合物は(2)~(4)式で示される化合物である。
【化7】
式中、pは0から2の整数を表し、qは1から3の整数を表し、p+q=3である。Zは同一または異なって水素原子またはビニル基を表す。
【化8】
式中、pは0から2の整数を表し、qは1から3の整数を表し、p+q=3である。Zは同一または異なって水素原子またはビニル基を表す。Rは同一または異なって水素原子またはメチル基を示す。
【化9】
式中、pは0から2の整数を表し、qは1から3の整数を表し、p+q=3である。Zは同一または異なって水素原子またはビニル基を表す。Rは同一または異なって水素原子またはメチル基を示す。
【0024】
上記(a)化合物は、下記に示すように、トリフェニルビスムチン化合物と、カルボン酸化合物とを反応させることにより得ることができる。
【0025】
【化10】
式中、mは0または1の整数を表し、nは0~3の整数を表し、pは0から2の整数を表し、qは1から3の整数を表し、p+q=3である。また、Rは同一または異なって炭素数1~6のアルキレン基を表し、Rは同一または異なって水素原子またはメチル基を表し、Zは同一または異なって水素原子またはビニル基を表す。
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【0026】
(1)式で表される化合物(a)を含む重合性組成物は、さらに、(b)チオール基を1分子中に2個以上有する化合物、及び/または(c)アクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基、およびビニル基からなる群より選択される少なくとも1つの基を有する化合物を含有してもよい。
【0027】
(b)チオール基を1分子中に2個以上有する化合物(以下、「(b)化合物」とも称する)は、この条件を満たすすべての化合物を包含する。
【0028】
(b)化合物としては、o-ジメルカプトベンゼン、m-ジメルカプトベンゼン、p-ジメルカプトベンゼン、1,3,5-トリメルカプトベンゼン、メタンジチオール、1,2-ジメルカプトエタン、2,2-ジメルカプトプロパン、1,3-ジメルカプトプロパン、1,2,3-トリメルカプトプロパン、1,4-ジメルカプトブタン、1,6-ジメルカプトヘキサン、ビス(2-メルカプトエチル)スルフィド、1,2-ビス(2-メルカプトエチルチオ)エタン、1,5-ジメルカプト-3-オキサペンタン、1,8-ジメルカプト-3,6-ジオキサオクタン、2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジチオール、3,4-ジメトキシブタン-1,2-ジチオール、2-メルカプトメチル-1,3-ジメルカプトプロパン、2-メルカプトメチル-1,4-ジメルカプトプロパン、2-(2-メルカプトエチルチオ)-1,3-ジメルカプトプロパン、1,2-ビス(2-メルカプトエチルチオ)-3-メルカプトプロパン、1,1,1-トリス(メルカプトメチル)プロパン、テトラキス(メルカプトメチル)メタン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、1,1,3,3-テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,2,6,7-テトラメルカプト-4-チアペンタン、エチレングリコールビス(2-メルカプトアセテート)、エチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、1,4-ブタンジオールビス(2-メルカプトアセテート)、1,4-ブタンジオールビス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(2-メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリチオール、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、1,1-ジメルカプトシクロヘキサン、1,2-ジメルカプトシクロヘキサン、1,3-ジメルカプトシクロヘキサン、1,4-ジメルカプトシクロヘキサン、1,3-ビス(メルカプトメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(メルカプトメチル)シクロヘキサン、2,5-ビス(メルカプトメチル)-1,4-ジチアン、2,5-ビス(メルカプトエチル)-1,4-ジチアン、1,2-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,4-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、ビス(4-メルカプトフェニル)スルフィド、ビス(4-メルカプトフェニル)エーテル、2,2-ビス(4-メルカプトフェニル)プロパン、ビス(4-メルカプトメチルフェニル)スルフィド、ビス(4-メルカプトメチルフェニル)エーテル、2,2-ビス(4-メルカプトメチルフェニル)プロパン等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0029】
また、これらは単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。
【0030】
(b)化合物として好ましい化合物は、ビス(2-メルカプトエチル)スルフィド、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、2,5-ビス(メルカプトメチル)-1,4-ジチアン、1,2-ビス(2-メルカプトエチルチオ)-3-メルカプトプロパン、1,2,6,7-テトラメルカプト-4-チアペンタン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、1,1,3,3-テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,3-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、および1,4-ビス(メルカプトメチル)ベンゼンが挙げられる。さらに好ましい化合物の具体例としては、ビス(2-メルカプトエチル)スルフィド、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、1,2-ビス(2-メルカプトエチルチオ)-3-メルカプトプロパン、および1,3-ビス(メルカプトメチル)ベンゼンが挙げられる。
【0031】
(a)化合物と、(b)化合物との割合は任意であるが、好ましい組成の範囲は、(a)化合物中の二重結合の数/(b)化合物中のSH基の数の比が0.5~10.0であり、より好ましくは0.8~5.0であり、最も好ましくは0.9~1.2である。上記の比が0.5未満であるか、または10.0を超えた場合、十分に重合せず耐熱性が低下する場合がある。
【0032】
(c)アクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基、およびビニル基からなる群より選択される少なくとも1つの基を有する化合物(以下、「(c)化合物」とも称する)は、この条件を満たすすべての化合物を包含する。
【0033】
(c)化合物としては、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、2-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、ジメチル(メタ)アクリルアミド、フェニルビニルスルフィド、フェニルビニルスルホキシド、4-メチル-5-ビニルイミダゾール、1-ビニルイミダゾール等を挙げることができるが、これらに限定されない。
(c)化合物として好ましい化合物は、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ジメチル(メタ)アクリルアミド、及び2-カルボキシエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0034】
また、これらは単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。
【0035】
(a)化合物と、(c)化合物との割合は任意である。(c)化合物を混合することにより、重合性組成物の粘度をハンドリングしやすい範囲に調整したり、溶液の均一性を向上させたり、硬化後に均質な硬化物を作製することができる。例えば、メタクリル酸ビスマス(BiMA)やビスマスカルボキシエチルアクリレート(BiCEA)は、(メタ)アクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、ジメチル(メタ)アクリルアミドなどと相溶性が高く、混合することでハンドリング性が向上する。また混合することで、硬化後の樹脂の機械強度、屈折率などの光学特性を調整することができる。
【0036】
(a)化合物と、(b)化合物と、(c)化合物との割合は任意である。好ましい組成の範囲は、((a)化合物中の二重結合の数+(c)化合物中の二重結合の数)/(b)化合物中のSH基の数の比が0.5~10.0であり、より好ましくは0.8~5.0であり、最も好ましくは0.9~1.2である。上記の比が0.5未満であるか、または10.0を超えた場合、十分に重合せず耐熱性が低下する場合がある。
【0037】
本発明の別の実施形態において、上記(a)化合物を、重合硬化して得られる樹脂が提供される。
【0038】
本発明の重合性組成物および(a)化合物は不飽和二重結合を含む重合性基を有するため、重合反応により硬化し、樹脂が得られる。重合反応としては、光による重合硬化反応や熱による重合硬化反応などが挙げられるが、本発明の好ましい実施形態において、短時間で重合可能である光重合硬化反応の方が好ましい。本発明の別の実施形態において、熱重合硬化反応が選択され得る。本発明の実施形態において、熱硬化反応と光硬化反応とを組み合わせてもよい。
【0039】
本発明の重合性組成物を重合反応させて光学材料を得るに際して、重合反応を促進するため重合触媒を添加することが好ましい。すなわち、本発明の重合性組成物は、重合触媒を含むことが好ましい。したがって、本発明の一実施形態において、本発明の重合性組成物を、硬化触媒の存在下重合硬化して得られる樹脂、ならびにその樹脂から得られる光学材料が提供される。また、本発明の一実施形態において、重合触媒を含む重合性組成物を、紫外線または可視光の照射により硬化させることを特徴とする硬化物、好ましくは光学材料の製造方法が提供される。
【0040】
本発明の(a)化合物を重合反応させる反応は、重合硬化触媒の存在下または非存在下で実施することができる。本発明の一実施形態において、(a)化合物を重合反応させる反応は、重合硬化触媒の存在下で行われてよい。本発明の別の実施形態において、(a)化合物を重合反応させる反応は、重合硬化触媒の非存在下で行われてよい。
【0041】
光重合反応の場合、本発明の重合性組成物または(a)化合物を、光線(活性エネルギー線)の照射により硬化させることにより、硬化物としての樹脂が製造される。光線としては、組成物の硬化が可能であれば特に制限されないが、通常、紫外線、可視光線、放射線、電子線であり、好ましくは紫外線または可視光であり、より好ましくは重合速度が速いことから紫外線である。光線の照射強度は特に制限されないが、通常10~100000mW/cmである。照射時間は特に制限されないが、通常1分間~数時間、例えば1~60分間である。照射温度は特に制限されず、室温付近で重合可能である。重合性組成物または(a)化合物が室温で固体の場合は、融点以上の温度まで加熱しながら光硬化を行う場合もある。
【0042】
重合触媒としては、特に制限はなく、反応物の種類、重合条件等に合わせて、適宜選択すればよい。光重合の場合、光(好ましくは活性エネルギー線)の照射によりラジカルを発生する化合物(光分解型ラジカル重合開始剤)が好ましく、具体例としては、ベンゾイン誘導体、ベンジル誘導体、ベンゾフェノン誘導体、アセトフェノン誘導体等が挙げられるが、これらに限定されない。その中でも市販品として、ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトン(チバ・スペシャルティケミカルズの商品名イルガキュア(Irgacure)(登録商標)184)、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(イルガキュア(Irgacure)(登録商標)651)、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン(イルガキュア(Irgacure)(登録商標)2959)、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキシド(イルガキュア(Irgacure)(登録商標)TPO)などが好ましく使用される。
【0043】
あるいは、光重合反応に用いる重合触媒として、酸化剤と還元剤との共存でラジカル(遊離基)を発生する化合物(レドックス系重合開始剤)を使用することも好ましい。具体例としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;過酸化水素、t-ブチルパーオキシド、メチルエチルケトンパーオキシド等の過酸化物等から選択される酸化物と、L-アスコルビン酸、亜硫酸水素ナトリウム等から選択される還元性化合物とを組み合わせた系が挙げられる。
【0044】
あるいは、光重合反応に用いる重合触媒として、可視光などの光の照射によりラジカルを発生する光レドックス触媒も好ましく使用される。具体例としては、ルテニウム(II)ポリピリジル錯体(例えば、Ru(bpz)-(PF触媒など)、イリジウム(III)フェニルピリジル錯体などの遷移金属錯体が挙げられる。
【0045】
熱重合反応の場合、本発明の重合性組成物または(a)化合物を、加熱によって重合(硬化)させることで硬化物としての樹脂が製造される。
【0046】
熱重合反応に用いる重合触媒として、加熱によりラジカルを発生する化合物(熱分解型ラジカル重合開始剤)が好ましい。具体例としては、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムなどの過硫酸塩;過酸化水素;t-ブチルハイドロパーオキサイドなどの有機過酸化物;2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-2(-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)などのアゾ化合物が挙げられる。
【0047】
硬化触媒は、過酸化物、アゾ化合物、レドックス系重合開始剤、および遷移金属錯体の中から選ばれる少なくとも1種以上の化合物であってよい。重合触媒一種を単独でまたは複数種を混合して使用することができる。
【0048】
重合触媒の添加量は、重合性組成物の成分または(a)化合物、混合比及び重合硬化方法によって変化するため一概には決められないが、通常は重合性組成物または(a)化合物の合計100質量%に対して、0.0001質量%~10質量%、好ましくは、0.001質量%~5質量%、より好ましくは、0.01質量%~1質量%、最も好ましくは、0.01質量%~0.5質量%である。添加量が10質量%より多いと急速に重合する場合がある。添加量が0.0001質量%より少ないと十分に硬化せず耐熱性が不良となる場合がある。したがって、本発明の好ましい一実施形態において、樹脂の製造方法は重合触媒を前記重合性組成物または(a)化合物の総量に対して0.0001~10質量%添加し、重合硬化させる工程を含む。
【0049】
本発明の重合性組成物または(a)化合物の加熱による重合(硬化)は通常、以下のようにして行われる。即ち、硬化時間は通常1~100時間であり、硬化温度は通常-10℃~140℃である。重合は所定の重合温度で所定時間保持する工程、0.1℃~100℃/hの昇温を行う工程、0.1℃~100℃/hの降温を行う工程によって、あるいはこれらの工程を組み合わせて行う。なお、硬化時間とは昇温過程等を含めた重合硬化時間をいい、所定の重合(硬化)温度で保持する工程に加えて、所定の重合(硬化)温度へと昇温・冷却する工程を含む。
【0050】
重合硬化工程(光重合及び熱重合)は特に限定されないが、金属、セラミック、ガラス、樹脂製等の金型を用いた硬化工程であることが好適である。具体的には、重合性組成物または(a)化合物の各成分(光学材料組成物の各成分または(a)化合物、重合触媒等)を混合する。これらは、全て同一容器内で同時に撹拌下に混合しても、各原料を段階的に添加混合しても、数成分を別々に混合後さらに同一容器内で再混合してもよい。また、各原料及び副原料はいかなる順序で混合してもよい。混合にあたり、設定温度、これに要する時間等は基本的には各成分が十分に混合される条件であればよい。このようにして得られた重合性組成物または(a)化合物はモールド等の型に注型し、加熱や紫外線などの光線の照射によって重合硬化反応が進められた後、型から外される。このようにして、本発明の重合性組成物または(a)化合物を硬化した樹脂が得られる。重合反応(硬化工程)は、空気中、又は、窒素等の不活性ガス雰囲気下、減圧下又は加圧下のいずれの雰囲気下でも行うことができる。
【0051】
硬化終了後、得られた樹脂を50~150℃の温度で10分~5時間程度アニール処理を行うことは、歪を除くために好ましい処理である。さらに得られた樹脂に対して、必要に応じてハードコート、反射防止、等の表面処理を行ってもよい。
【0052】
本発明の樹脂を製造する際、重合性組成物または(a)化合物に紫外線吸収剤、酸化防止剤、密着性改善剤、離型剤等の添加剤を加え、得られる樹脂の実用性をより向上させることもできる。
【0053】
本発明の重合性組成物または(a)化合物は、上述のようにして高い屈折率、光重合硬化性、熱重合硬化性などの少なくとも一つの特性に優れた樹脂を与えることができる。このように、上記重合性組成物または(a)化合物を硬化させて得られる樹脂(硬化物)もまた、本発明の一実施形態である。
【0054】
本発明の一実施形態は、本発明の重合性組成物または(a)化合物を重合硬化して得られる樹脂を用いて作製される成形体を提供する。成形体は、例えば、光学材料(部材)、機械部品材料、電気・電子部品材料、自動車部品材料、土木建築材料、成形材料等の他、塗料や接着剤の材料等の各種用途に有用である。中でも、光学材料、例えば、眼鏡レンズ、(デジタル)カメラ用撮像レンズ、光ビーム集光レンズ、光拡散用レンズ等のレンズ、LED用封止材、光学用接着剤、光伝送用接合材料、プリズム、フィルター、回折格子、ウォッチガラス、表示装置用のカバーガラス等の透明ガラスやカバーガラス等の光学用途;LCDや有機ELやPDP等の表示素子用基板、カラーフィルター用基板、タッチパネル用基板、ディスプレイバックライト、導光板、ディスプレイ保護膜、反射防止フィルム、防曇フィルム等のコーティング剤(コーティング膜)などの表示デバイス用途;光メモリ、電子ペーパーなどの記録媒体、紫外線チェッカーなどのセンサー材料、窓ガラス、サングラス、自動車用ウィンドウガラスなどの調光材料、繊維製品、化粧品素材、フォトクロミック材料、その他プリント材等の色調変化材料等が好適である。上記光学材料としては、特に、光学用接着剤、プリズム、コーティング剤であることが好適である。
【実施例
【0055】
以下の実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、得られたモノマー及びレンズの評価は以下の方法で行った。
NMR:日本電子株式会社製(ECX-400)を用い測定した。
IR:日本分光株式会社製Jasco FT-IR460Plusを用いて測定した。
屈折率:アタゴ社製アッベ屈折計NAR-4Tを用い、d線での屈折率を25℃で測定した。
【0056】
合成例1
アクリル酸ビスマス(BiA)の合成
試験管に下記構造式で表されるトリフェニルビスムチン(東京化成工業株式会社製:440mg,1.00mmol)とアクリル酸(238mg,3.30mmol)を加えた後、エタノール(6.0mL)を加え、24時間還流した。
【化15】
反応後、濾過により不溶部を回収し、これをエタノールで洗浄することで、下記構造式で表されるBiAを収率65%(274mg,0.650mmol)で白色固体として得た。なお、本化合物には硫黄化合物のような臭気は無かった。
【化16】
【0057】
アクリル酸ビスマス(BiA)のNMR、IR測定結果を以下に示す。
H NMR(400MHz,DO,δ);5.99(dd,J=0.91,10.7Hz,1H,-CH=H),6.15(dd,J=10.8,17.4Hz,1H,-C=CH),6.42(dd,J=0.91,17.2Hz,1H,-CH=CH).
IR(KBr,cm-1);537,658,832,896,987,1062,1270,1361,1428,1516,1635,1707,3435.
【0058】
合成例2
メタクリル酸ビスマス(BiMA)の合成
試験管にトリフェニルビスムチン(440 mg,1.00 mmol)と溶媒量のメタクリル酸(1.00mL)を加え、75℃で4時間撹拌した。反応後、室温まで十分に冷却した。生成した固体を濾過により回収し、さらにジエチルエーテルで洗浄することでBiMAを白色固体として収率80%(370mg,0.797mmol)で得た。なお、本化合物には硫黄化合物のような臭気は無かった。
【0059】
メタクリル酸ビスマス(BiMA)のNMR、IR測定結果を以下に示す。
H NMR(400MHz,DMSO-d,δ);1.61-1.91(3H,CH=C-C ),5.29-5.53(1H,C=CH),5.76-5.98 1H,C=CH).
13C NMR(100MHz,DMSO-d,δ);19.3(CH=C-),123.7(=C-CH),141.0(CH-CH),173.1(-(O)OBi).
IR(ATR,cm-1);622,661,829,866,880,944,1004,1226,1367,1455,1515,1642,1698,2925,2962,3090.
【0060】
合成例3
BiMAとN,N-ジメチルアクリルアミド(DMAA)の光ラジカル共重合によるフィルムの作製(典型例)
サンプル瓶に上記で得られたBiMA(212mg,0.458mmol)、光ラジカル開始剤としてIrgacure(登録商標)651(14.0mg,54.6μmol)、およびDMAA(496mg,5.00mmol)を加え、均一に溶解させモノマー溶液を調製した。その後、ポリイミドフィルムで表面を覆ったステンレス基板上にテフロン(登録商標)製の型枠(3.5x1.5x0.2cm)を載せ、その型に調製したモノマー溶液を流し込んだ。その後、インキュベーター中で窒素ガスを供給しながら水銀ランプで10分間UV光を照射して硬化物を得た。
IR(ATR,cm-1);716,761,828,937,1057,1115,1231,1359,1450,1534,1635,1715,2925.
【0061】
【化17】
【0062】
合成例4
ビスマスカルボキシエチルアクリレート(BiCEA)の合成と光硬化(典型例)
ナスフラスコにトリフェニルビスムチン(440mg,1.00mmol)と2-カルボキシエチルアクリレート(2-CEA)(709mg,4.86mmol)を加え、75℃で4時間撹拌した。反応後、BiCEAと2-CEAの混合物が得られた後に、室温まで十分に冷却し、撹拌しながら60℃で6時間減圧した。そこに光ラジカル開始剤として、Irgacure(登録商標)TPO(2wt%,20.0mg)を加え、加熱撹拌しながら溶解させた。その後、スペーサー(250μm)、ガラス板を用いて(モノマー+開始剤)液を挟み込み、LED(365nm)を用いて10分UV光を照射して硬化物を得た。
【0063】
【化18】
【0064】
合成例5
フェニルビスマスジメタクリレート(PhBiDMA)の合成
ナスフラスコにトリフェニルビスマス(1.32g,3.00mmol)、メタクリル酸(1.03g,12.0mmol)、アセトニトリル(20mL)を加え、原料を完全に溶解させ、48時間撹拌した。生成した固体を濾過により回収し、PhBiDMAを白色結晶として収率66%で得た(897mg,1.97mmol)。
【0065】
フェニルビスマスジメタクリレート(PhBiDMA)のNMR、IR測定結果を以下に示す。
H NMR(400MHz,d-DMSO,δ):1.61-1.91(6H,CH=C-C ),5.38-5.44(2H,C=CH),5.81-5.92 (2H,C=CH),7.29-7.35(1H),7.79-7.85(2H),8.58-8.62(2H)
IR(ATR,cm-1):423,445,551,624,652,694,739,828,864,950,952,996,998,1054,1232,1372,1406,1451,1510,1516,1638,1905,2922,2955,2977,3056,3092
【0066】
実施例
上記の合成例3または合成例4に従い、モノマーの種類、硬化剤の種類、比率(質量%またはモル比)、硬化方法(光硬化または熱硬化)を変更して、それぞれ重合硬化反応を行い、樹脂フィルムを得た。得られた樹脂フィルムについて、屈折率、色調変化性を評価した。その結果を表1~2に示した。
【0067】
実施例1~13の結果より、得られた樹脂の屈折率は1.518以上と比較例1~4より高かった。
【0068】
また、実施例4~8、11~13の樹脂は、光照射によって樹脂が黄色~茶色に着色した。着色した樹脂を暗所に保管していたところ退色して無色になった。光照射による着色および暗所での静置による退色の操作を、複数回実施したが、同様の現象が繰り返し観測された。一方、比較例1~4の樹脂として、無色透明のフィルムが得られたものの、光照射による着色や暗所静置による退色は観測されなかった。
【0069】
【表1】
【0070】
【表2】