(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】二次電池用端子の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/566 20210101AFI20240828BHJP
B23K 20/12 20060101ALI20240828BHJP
C22C 19/05 20060101ALI20240828BHJP
H01M 50/562 20210101ALI20240828BHJP
【FI】
H01M50/566
B23K20/12 330
B23K20/12 344
B23K20/12 360
B23K20/12 364
C22C19/05 D
H01M50/562
(21)【出願番号】P 2020127073
(22)【出願日】2020-07-28
【審査請求日】2023-06-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
(74)【代理人】
【識別番号】100192614
【氏名又は名称】梅本 幸作
(74)【代理人】
【識別番号】100158355
【氏名又は名称】岡島 明子
(72)【発明者】
【氏名】船平 伸之
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 真紀
(72)【発明者】
【氏名】田嶋 良樹
【審査官】神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/103874(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/209168(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/543-50/567
B23K 20/12
C22C 19/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅または銅合金から成り、円筒形状の基体の一端面側に鍔部を備える端子部品にアルミニウムまたはアルミニウム合金から成る板状部材を重ね合わせた状態で、摩擦撹拌接合工具を回転しながら前記板状部材の内部に挿入する第1工程と、前記第1工程後に前記摩擦撹拌接合工具を回転しながら前記板状部材内を直線状に移動する第2工程と、前記第2工程後に前記摩擦撹拌接合工具を回転しながら前記板状部材内から抜き出す第3工程と、
前記第3工程後に、前記端子部品と接合した前記板状部材の一部を前記板状部材から分離する第4工程を有することで前記端子部品と前記板状部材を接合することを特徴とする二次電池用端子の製造方法。
【請求項2】
前記摩擦撹拌接合工具は、重量%で12~26%Cr、1~6%W、2~12%Mo、Ta,Nb,Tiの各元素の総和が0.1~4.0%、AlとCuの総和が2.0~8.0%であり、残部がNiおよび不可避不純物で規定されるニッケル合金製であることを特徴とする
請求項1に記載の二次電池用端子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2種類以上の異なる金属材料同士が接合されて形成される二次電池用端子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年ではリチウムイオン電池に代表される二次電池において、特に電気伝導性に優れた銅(銅合金)やアルミニウム(アルミニウム合金)で製作された電池用端子が多数使用されている。この端子の製造方法については、例えば特許文献1ないし3に開示されている。
【0003】
特許文献1では銅(銅合金)とアルミニウム(アルミニウム合金)のクラッド材が使用されており、特許文献2および3では銅(銅合金)とアルミニウム(アルミニウム合金)による摩擦撹拌接合により一体化した端子が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-85961号公報
【文献】特許第5426594号公報
【文献】特許第6014808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、クラッド圧延材から成型した端子は、端子以外の部分、すなわち銅板とアルミニウム合金板が共に廃棄されるので、製作工程として効率が悪かった。特に、銅(または銅合金)はアルミニウム合金よりも価格が高いので、銅合金を廃棄することで材料コストが上昇する一因となっていた。
【0006】
そこで、本発明は、銅合金とアルミニウム合金等から製作される二次電池用途の端子の製造方法について、効率的かつ製作コストが低減できる二次電池用端子の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の二次電池用端子の製造方法は、大きく分けて以下の第1ないし第3工程から構成されている。まず、第1工程として、銅または銅合金から成る端子部品にアルミニウムまたはアルミニウム合金から成る板状部材を重ね合わせた状態で、摩擦撹拌接合工具を回転しながら板状部材の内部に挿入する。次に、第2工程として第1工程後に摩擦撹拌接合工具を回転しながら板状部材内を直線状に移動する。最後に、第3工程として、第2工程後に摩擦撹拌接合工具を回転しながら板状部材内から抜き出す。これにより、端子部品と板状部材を接合する。
【0008】
また、第3工程後に、端子部品と接合した板状部材の一部を板状部材から分離する第4工程を更に追加することもできる。そして、使用する摩擦撹拌接合工具を、重量%で12~26%Cr、1~6%W、2~12%Mo、Ta,Nb,Tiの各元素の総和が0.1~4.0%、AlとCuの総和が2.0~8.0%であり、残部がNiおよび不可避不純物で規定されるニッケル合金製としても良い。
【発明の効果】
【0009】
本発明の二次電池用端子の製造方法では、予め製作した銅(または銅合金)製の端子部品上にアルミニウム合金製の板材を接触させた状態で両部品を接合できるので、銅合金製の部品を廃棄する必要は無い。そのため、最終的な端子を製作する際には、アルミニウム合金の部分だけを切削加工するので、製作に関するコストを必要最小限に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の製造方法に用いる端子部品1と板状部材2の斜視図
【
図2】本発明の製造方法における第1工程の準備段階を示す斜視図
【
図3】本発明の製造方法における第1工程を示す斜視図
【
図4】本発明の製造方法における第2および第3工程を示す斜視図
【
図5】本発明の製造方法により製造された二次電池用端子10の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の二次電池用端子の製造方法の実施形態について図面を用いて説明する。本発明の製造時に用いる端子部品と板状部材を示す斜視図を
図1に示す。銅(または銅合金)製の端子部品1(1A,1B,1C)は、
図1に示すように円筒状の基体の一端面側に鍔部を有した形状であり、全体的にキノコ型(断面形態はT型)を呈している。
【0012】
また、アルミニウム(またはアルミニウム合金)製の板状部材2は、端子部品1の厚み(高さ)に対して厚みの薄い板材を呈している。まず、複数の端子部品1(1A,1B,1C)を直線状に整列した状態で、上方から板状部材2を重ね合わせる形態で配置する。この場合、端子部品1(1A,1B,1C)の下方を固定した状態で板状部材2を上方側に設置する、もしくは板状部材2を固定した状態で、その下方から端子部品1(1A,1B,1C)を板状部材2の下面に近接させることで互いに接触させる形態のいずれでも構わない。
【0013】
端子部品1(1A,1B,1C)および板状部材2を互いに
図2に示す形態として、
図3に示すように摩擦撹拌接合工具3を所定の回転数で回転した後(
図3中の矢印Rtは摩擦撹拌工具3が回転する方向を示す)、摩擦撹拌接合工具3の先端部分を板状部材2の表面側(端子部品1の反対側)に所定の深さまで挿入する(矢印Dtは摩擦撹拌接合工具3が板状部材2内へ侵入する方向を示す:第1工程)。
【0014】
次に、第1工程後に摩擦撹拌接合工具3を回転しながら板状部材2内を
図3の手前側から奥側にむけて直線状に移動する(矢印Stは摩擦撹拌接合工具3が直進する方向を示す:第2工程)。この時に、摩擦撹拌接合工具3は、端子部品1(1A,1B,1C)の上方を移動することで端子部品1(1A,1B,1C)の先端部と板状部材2が互いに固着する。板状部材2における摩擦撹拌接合工具3の移動が完了した状態を
図4に示す。
【0015】
図4に示す第2工程後に摩擦撹拌接合工具3を回転しながら、板状部材2内から抜き出す(矢印Utは摩擦撹拌接合工具3が板状部材2から離間する方向を示す)ことで一連の接合工程が完了する(第3工程)。この後、端子部品1(1A,1B,1C)または(および)板状部品2の固定を解除して、板状部材2に固着した端子部品1(1A,1B,1C)の形状(円形)に沿って、板状部材2を切り離す(削り取る)。
【0016】
これによって
図5に示すように二次電池用端子10(10A,10B,10C)の製作が完成する。完成した二次電池用端子10(10A,10B,10C)の円筒部には、
図5に示すように板状部材2の一部が固着しているので、固着した板状部材2の厚み分(
図5中の灰色部分)が接合前の厚み(円筒部分の大きさ)に比べて増している。
【符号の説明】
【0017】
1(1A,1B,1C) 端子部品
2 板状部材
3 摩擦撹拌接合工具
10(10A,10B,10C) 二次電池用端子