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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】包装袋
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/34 20060101AFI20240828BHJP
   B65D 33/02 20060101ALI20240828BHJP
【FI】
B65D81/34 U
B65D33/02
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020130945
(22)【出願日】2020-07-31
(65)【公開番号】P2022027132
(43)【公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-05-10
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】森岡 舜
(72)【発明者】
【氏名】末岡 正章
【審査官】宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-033026(JP,A)
【文献】特開2019-001550(JP,A)
【文献】特開2007-119076(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/34
B65D 30/00-33/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有するフィルムが袋状に形成された自立式の電子レンジ用の包装袋であって、
前記包装袋は、底面部と、前記底面部から立ち上げるように設けられた周面部を備え、
前記周面部の内面には、前記周面部の剛性を補強するための補強部材が、前記周面部の周囲に亘って取り付けられており、
前記包装袋の下端から前記包装袋を開封するための開封部までの長さをH2とし、前記補強部材の上下方向の長さをHとすると、H/H2≧0.3であり、
前記補強部材の下端部と前記周面部の内面とは、前記周面部の周囲に亘って溶着されており、
前記補強部材は、上端部及び下端部が前記周面部の内面と溶着されており、その間は未溶着である、包装袋。
【請求項2】
請求項1に記載の包装袋であって、
前記補強部材が、筒状であり、前記底面部には設けられず、
前記包装袋の下端から前記包装袋を開封するための開封部までの長さをH2とし、前記補強部材の上下方向の長さをHとすると、0.7≧H/H2≧0.3である、包装袋。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の包装袋であって、
前記周面部は、互いに対向する前面部及び背面部を備え、且つ上方に開口した開口部を備え、
前記周面部には、前記開口部を開閉可能に構成された開閉部材と、前記包装袋を開封するための複数の開封部が設けられ、
前記開封部は、前記開閉部材よりも前記底面部に近い位置と、前記開閉部材よりも前記底面部から離れた位置とに、1つずつ設けられている、包装袋。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の包装袋であって、
前記補強部材は、断熱材を備えており、耐熱プラスチックで構成される、包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子レンジ用包装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
レトルト食品等の内容物を充填した包装袋であって、電子レンジ等で自立させた状態で加熱することができる包装袋が知られている。例えば、特許文献1の包装袋は、自立安定性を有していることから、店頭での陳列効果に優れている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-306426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方で、開封部よりも上側の切り取り部を除くことによって得られる容器状の本体部を、内容物を食べる際の食器として利用することが考えられる。このような場合に、特に内容物が液状物であるときに、利用者の利便性の点で改善の余地があった。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、液状物を収容し、食器として利用される際に利用者の利便性が高い電子レンジ用包装袋を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、可撓性を有するフィルムが袋状に形成された自立式の電子レンジ用の包装袋であって、前記包装袋は、底面部と、前記底面部から立ち上げるように設けられた周面部を備え、前記周面部の内面には、前記周面部の剛性を補強するための補強部材が、前記周面部の周囲に亘って取り付けられている、包装袋が提供される。
【0007】
このような構成とすることにより、周面部に取り付けられた補強部によって、包装袋の自立安定性および把持性が向上する。これにより、液状物を食するための食器として利用される際の利用者の利便性が向上する。
【0008】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
好ましくは、前記周面部は、互いに対向する前面部及び背面部を備え、且つ上方に開口した開口部を備え、前記周面部には、前記開口部を開閉可能に構成された開閉部材と、前記包装袋を開封するための複数の開封部が設けられ、前記開封部は、前記開閉部材よりも前記底面部に近い位置と、前記開閉部材よりも前記底面部から離れた位置とに、1つずつ設けられている。
好ましくは、前記補強部材の下端部と前記周面部の内面とは、前記周面部の周囲に亘って溶着されている。
好ましくは、前記包装袋の下端から前記開封部までの長さをH2とし、前記補強部材の上下方向の長さをHとすると、H/H2≧0.3である。
好ましくは、前記補強部材は、断熱材を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1実施形態の包装袋1内に内容物が収容された状態の斜視図である。
図2】包装袋1を平面視で示す図である。
図3図2中のIII-III断面図である。
図4図4Aは、包装袋1を第1開封部24で開封した状態を示す斜視図である。図4Bは、図4AにおけるIVb-IVb断面図である。図4Cは、補強部材26の斜視図である。
図5】底面部2を構成する底部フィルム20aの斜視図である。
図6図6Aは、周壁フィルム20bの側面図である。図6Bは、周壁フィルム20bの一部を切断し、切断箇所に底部フィルム20aを挿入した状態を示す図である。
図7図7Aは、周壁フィルム20bおよび底部フィルム20aを溶着して包装袋1を製造する様子を示す図である。図7Bは、前面部3と背面部4の間に開閉部材32および補強部材26を挿入した状態の図である。
図8図8Aは、包装袋1の中央部下端を前後方向に大きく開いた状態での底面部2の拡大図である。図8Bは、図2の包装袋1の下端近傍の詳細図である。
図9】第2実施形態の包装袋1の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。
【0011】
1.第1実施形態
1-1.包装袋1の構成
図1および図2に示すように、本発明の実施形態における包装袋1は、可撓性を有するフィルムが袋状に形成された自立式の電子レンジ用の包装袋である。本実施形態における包装袋1は、内部に固形物が収容された状態で販売されており、購入した使用者が水などの液体を注ぎ込んで加熱する使用態様を想定して構成されている。
【0012】
包装袋1は、底面部2と、底面部2から立ち上げるように設けられた周面部21を備える。周面部21は、互いに対向する前面部3および背面部4を備える。前面部3および背面部4は、その左右方向の端部(以下、側端ともいう)において互いに溶着されている。底面部2は、前面部3および背面部4と溶着(ヒートシール)されている。このように、底面部2と、前面部3と、背面部4が互いに溶着されることによって、フィルムが袋状となっている。
【0013】
本開示では、図2の上下左右を包装袋1の上下左右として説明する。具体的には、底面部2側を下側、前面部3(および背面部4)側を上側とする。また、前面部3を手前に配置したときの左右を、包装袋1の左右とする。さらに、前面部3側を前側、背面部4側を後側とする。
【0014】
前面部3は、前面下部3aと前面上部3bを備える。前面下部3aは、底面部2に溶着されている。前面下部3aと前面上部3bは、互いに折り返された状態で、前面下部3aと前面上部3bの内面同士を重ね合わされて形成された合掌部10において溶着されている。
【0015】
包装袋1の周面部21には、開閉部材32と、第1開封部24および第2開封部25が設けられている。図3に示すように、開閉部材32は、互いに係合可能な前面側係合部材32aと背面側係合部材32bを備える。前面側係合部材32aは、前面部3の内面側に固定される。背面側係合部材32bは、背面部4の内面側に固定される。係合部材32a,32bは、それぞれ、前面部3及び背面部4に溶着することによって固定することが好ましい。
【0016】
前面側係合部材32aは、基部32a1と、基部32a1から突出するフック部32a2を備える。背面側係合部材32bは、基部32b1と、基部32b1から突出するフック部32b2を備える。基部32a1,32b1がそれぞれ前面部3及び背面部4に固定される。フック部32a2,32b2は、互いの係合及び係合解除が可能になっている。
【0017】
基部32a1は、その全面が前面部3に溶着されていてもよいが、基部32a1のうちの下側の一部に、前面部3に溶着されていない未溶着部が設けられていることが好ましい。この場合、包装袋1が加熱されて包装袋1の内圧が上昇して包装袋1が膨らんだときに開閉部材32を開く方向の力が開閉部材32に加わりにくくなり、開閉部材32からの蒸気漏れが抑制される。未溶着部は、基部32a1の下端からフック部32a2に上端にまで延在するように設けることが好ましい。言い換えると、基部32a1は、フック部32a2よりも上側の部位のみにおいて前面部3に溶着されることが好ましい。なお、未溶着部は、基部32a1に設ける代わりに、基部32b1に設けてもよく、基部32a1,32b1の両方に設けてもよい。
【0018】
第1開封部24および第2開封部25は、包装袋1を開封するための部位である。第1開封部24は、前面下部3aに設けられており、第2開封部25は、前面上部3bの開閉部材32よりも上側(すなわち、底面部2から離れた位置)に設けられている。
【0019】
本実施形態では、第1開封部24は、周面部21を引き裂く際の起点となる第1引裂開始部24aと、開封箇所を切り取る部位を示す線が印刷された第1切り取り線24bを備える。包装袋1は、第1引裂開始部24aを起点にして周面部21を引き裂くことによって開封してもよく、ハサミなどの切断具を用いて第1切り取り線24bに沿って周面部21を切断することによって開封してもよい。
【0020】
第1引裂開始部24aは、周面部21の引き裂きを容易にする部位であり、例えば切り欠きや切り込みによって構成される。第1引裂開始部24aと第1切り取り線24bの一方は省略可能である。また、第1開封部24は、包装袋1の開封を可能にする別の構成であってもよい。例えば、第1切り取り線24bの代わりに、周面部21の周方向に延びるハーフカットのラインを設けたり、周面部21の周方向に延びるように帯状フィルムを配置したりしてもよい。帯状フィルムは、周面部21に溶着され、帯状フィルムの端部を把持して引っ張ることによって周面部21を帯状フィルムに沿って切り裂くことを可能にするものである。
【0021】
包装袋1は、第1開封部24を境界にして、上下方向における上側の切り取り部5と、下側の本体部6を備える。第1開封部24において周面部21を周方向に裂いて第1開封部24よりも上側の切り取り部5を取り除くことによって容器状の本体部6が得られる。本体部6は、包装袋1内の内容物を食べる際に使用する食器として利用される。
【0022】
第1開封部24は、合掌部10よりも底面部2に近い位置に設けられる。つまり、合掌部10は、切り取り部5に設けられる。このため、開封の際に切り取り部5を除くと、合掌部10も一緒に除かれる。従って、内容物を食べる際に合掌部10が邪魔になることがない。
【0023】
第2開封部25は、第1開封部24と同様に構成されており、第2引裂開始部25aと第2切り取り線25bを備える。第2開封部25において包装袋1を開封することにより、使用者が内部に水などの液体を注入することが可能となる。その後、開閉部材32を閉め、電子レンジで加熱することにより、内容物を調理することができる。
【0024】
周面部21の内面には、周面部21の剛性を補強するための補強部材26が、周面部21の周囲に亘って取り付けられている。補強部材26の詳細については後述する。
【0025】
図2は、包装袋1を平面視において示す図である。平面視とは、包装袋1内に内容物が含まれていない状態、かつ、包装袋1を平たくし、その状態で包装袋1の前面部3に垂直な方向から見ることを意味する。図2に示すように、包装袋1は、左右方向の中心線を基準として線対称となるように形成されている。
【0026】
包装袋1には、蒸気抜きシール部11が形成されている。蒸気抜きシール部11は、合掌部10に設けられている。蒸気抜きシール部11は、他の溶着部よりも溶着強度が低い溶着部である。蒸気抜きシール部11では、包装袋1を加熱することにより内部に発生した蒸気によって包装袋1内の内圧が上昇すると、それに伴って蒸気流路が形成される。包装袋1内の蒸気は、蒸気抜きシール部11から外部へ排出される。
【0027】
切り取り部5の上下方向の長さH1は、たとえば6~10cmとすることができる。本体部6の上下方向の長さH2は、たとえば6~14cmであり、12cm以下が好ましく、10cm以下がさらに好ましい。これよりも大きくしすぎると、内容物を取り出すのが難しくなる。H1は、具体的には例えば、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10cmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。H2は、具体的には例えば、6、7、8、9、10、11、12、13、14cmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0028】
さらに、長さH2は、底部フィルム20aの中央線Eから下端までの長さH3よりも長いことが好ましく、H3より2cm以上長いことがさらに好ましい。(H2-H3)の値は、例えば2~8cmであり、具体的には例えば、2、3、4、5、6、7、8cmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0029】
包装袋1の側端には、前面部3と背面部4を溶着する側端溶着部12が設けられている。これにより、前面部3と背面部4は、前後方向に固定されている。さらに、包装袋1の下端には、底面部2と前面部3、および底面部2と背面部4を溶着する下端溶着部13が設けられている。なお、図1Aに示すように、包装袋1に内容物が収容された際には、包装袋1の上端には、前面部3と背面部4を溶着する上端溶着部22が設けられる。
【0030】
下端溶着部13は、中央線Eより下側の領域であって、包装袋1の側端および下端(図2において、1点鎖線で囲まれた領域)において、底面部2と前面部3、および底面部2と背面部4を溶着している。
【0031】
補強部材26は、本体部6に相当する周面部21の内面に取り付けられている。本実施形態では、補強部材26は、上端部26aおよび下端部26bを周面部21の内面と溶着されている。このようにすることで、包装袋1内に注入された液体が、補強部材26と周面部21との隙間に入るのを防ぐことができる。なお、補強部材26は、下端部26bにおいてのみ周面部の内面と溶着されていてもよいが、上端部26aも溶着することにより、使用者が液体を注入する際に補強部材26と周面部21との隙間に入ることをより確実に防ぐことができる。
【0032】
補強部材26の上下方向の長さHは、本体部6の上下方向の長さH2に対して、H/H2≧0.3であることが望ましい。好ましくは、0.7≧H/H2≧0.3であり、より具体的にはH/H2の値は、0.20、0.25、0.30、0.35、0.40、0.45、0.50、0.55、0.60、0.65、0.70のいずれかの値であり、また、ここで例示した数値のいずれか2つの間の範囲内であってもよい。長さHの値は、2~9cmであり、具体的には例えば、2、3、4、5、6、7、8、9cmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0033】
図4A図4Cを参照し、補強部材26についてさらに詳述する。図4Aおよび図4Bに示すように、補強部材26の外寸と本体部6の内寸とは一致している。図4Cに示す例では、補強部材26は円筒状に形成されている。補強部材26は、厚紙などの耐水紙やプラスチックなどで構成することができる。このように、周面部21の内面に補強部材26を取り付けることにより、周面部21が補強され、包装袋1の自立安定性および把持性が向上する。言い換えると、包装袋1における補強部材26は、周面部21の自立安定性および把持性を目的としているため、補強部材26を底面部2に設ける必要はない。
【0034】
好ましくは、補強部材26を断熱材としての耐熱プラスチックで構成することができる。このようにすることで、加熱後の包装袋1を把持する際の利便性がより向上する。なお、補強部材26の溶着は、補強部材26の表面にLL(低密度ポリエチレン)など、フィルムのシーラント層と同一の樹脂をラミネートして行うことができる。
【0035】
図5図7に示すように、包装袋1は、中央線EにおいてV字形に折り曲げられた底部フィルム20aが、前面部3と背面部4との間に挿入されて製造されている。ここで、底部フィルム20aの中央線Eから下端までの長さH3は、3~6cmが好ましく、より具体的には、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6(単位:cm)のいずれかの値であり、また、ここで例示した数値のいずれか2つの間の範囲内であってもよく、たとえば4.5cmとすることができる。上述したように、本体部6は、食器としても使用するため、この程度の大きさがあるのが好ましい。底部フィルム20aの両端には、切り欠けRが形成されている。
【0036】
底部フィルム20aの中央線Eから切り欠けRの中心までの長さr1は、1~3cmが好ましく、より具体的には、1、1.5、2、2.5、3(単位:cm)のいずれかの値であり、また、ここで例示した数値のいずれか2つの間の範囲内であってもよく、たとえば2.5cmとすることができる。
【0037】
切り欠けRの直径は、1~4cmが好ましく、より具体的には、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4(単位:cm)のいずれかの値であり、また、ここで例示した数値のいずれか2つの間の範囲内であってもよく、たとえば2cmとすることができる。
【0038】
以下、図6図7を参照し、包装袋1の製造手順を簡潔に説明する。
【0039】
まず、図6Aに示すように、1枚の周壁フィルム20bの端部の内面同士を重ね合わせて重ね合わせ部10aを形成し、図6Bに示すように、重ね合わせ部10aを溶着することで合掌部10を形成し、残りの部分で楕円状の環Cを形成する。
【0040】
続いて、図6Bに示すように、環Cの一端C1を切断し、V字形に折り曲げられた底部フィルム20aを挿入する。続いて、図6B図7Aに示すように、底部フィルム20aおよび周壁フィルム20bを溶着すると共に、環Cの他端C2を切除することによって、底面部2、前面部3、及び背面部4を形成する。
【0041】
続いて、図7Bに示すように、環Cの他端C2近傍(前面部3及び背面部4の上端近傍)において、前面部3と背面部4の間に開閉部材32および補強部材26を挿入し、開閉部材32および補強部材26を前面部3と背面部4のそれぞれの内面に溶着することにより、包装袋1が製造される。
【0042】
ここで、底部フィルム20aおよび周壁フィルム20bは、基材層とシーラント層を有する積層フィルムであることが好ましく、基材層とシーラント層の間に接着層、印刷層を備えることがさらに好ましい。
【0043】
基材層は、包装袋1の外表面に露出するように配置され、シーラント層は、包装袋1の内表面に露出するように配置される。シーラント層同士が溶着(ヒートシール)されることによって、溶着部が形成される。
【0044】
基材層は、強度に優れて高い耐衝撃性を有する素材により形成されている。基材層としては、例えば、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリエステル等が用いられる。より具体的には、延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、シリカ蒸着延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、アルミナ蒸着延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、延伸ナイロンフィルム、延伸ポリプロピレンフィルム、またはポリプロピレン/エチレンービニルアルコール共重合体共押共延伸フィルム等を用いることができる。基材層を構成するフィルムとしては、MD方向(製造時においてフィルムが流れる方向)の直線カット性を有するものが好ましい。
【0045】
接着層は、基材層とシーラント層を互いに積層するように接着するための層である。接着方法として例えばポリエチレン等を接着層として用いた押し出しラミネートでもいいし、接着材としてポリ酢酸ビニル系接着剤、ポリアクリル酸エステル系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、エチレン共重合体系接着剤、セルロース系接着剤、ポリエステル系接 着剤、ポリアミド系接着剤、アミノ樹脂系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリウレタン系接着剤等を用いたドライラミネートでもよい。
【0046】
シーラント層は、溶着性に優れた樹脂で形成可能である。シーラント層としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-プロピレンブロック共重合体などのポリオレフィン系樹脂で形成することができ、より具体的には、無延伸ポリプロピレンや直鎖状低密度ポリエチレンを用いることができる。シーラント層を構成するフィルムとしては、MD方向の直線カット性を有するものが好ましい。
【0047】
なお、基材層とシーラント層との間には、中間層を設けてもよい。中間層としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、エチレンープロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物等のフィルム、あるいはこれらにポリ塩化ビニリデンを塗工したフィルムないしは酸化珪素、酸化アルミニウム等の無機物の蒸着を施したフィルム、あるいはポリ塩化ビニリデン等のフィルムなどを用いることができる。
【0048】
図8Aに示すように、包装袋1は、左右方向における中央部の下端(以下、中央部下端ともいう)では、左右方向における側部の下端(以下、側部下端ともいう)よりも前後方向に大きく開くように構成されている。これは、底部フィルム20aに形成された切り欠けR(図5参照)において、前面部3と背面部4が直接溶着されることとなり、前面部3と背面部4を前後方向に固定する固定部15が構成されているためである。なお、中央部下端が前後方向に開くことにより、底面部2の中央線Eは包装袋1の下側に引っ張られる。
【0049】
図8Bに示すように、下端溶着部13は、1対の勾配部13aと、中央部13bを備える。勾配部13aは、包装袋1の側端から中央部下端に向けて、勾配をつけて(斜めに)溶着されている箇所である。このように、勾配部13aを設けることにより、中央線Eからの下端溶着部13までの距離が、側端から左右方向中央部に向かうにつれて徐々に大きくなる(W1<W2)。このような構成とすることにより、側部下端においてピンホールが発生することを防ぐことができる。
【0050】
中央部13bは、1対の勾配部13aの間に設けられ、直線状に形成されている。中央部13bを直線状に設けることにより、本体部6を食器として使用しやすくなる。
【0051】
勾配部13aの外側には、エアポケット14が設けられている。エアポケット14は三角形状に形成され、下端溶着部13における溶着で外部に排出しきれなかった空気が残留する空間である。エアポケット14を設けることにより、下端溶着部13内の残留空気がエアポケット14に集まることとなり、溶着の強度が向上する。
【0052】
包装袋1の下端での左右方向の長さL1は、15~25cmが好ましく、より具体的には、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25(単位:cm)のいずれかの値であり、また、ここで例示した数値のいずれか2つの間の範囲内であってもよく、たとえば20cmとすることができる。25cmより大きくしすぎると、電子レンジのターンテーブルに収まらなくなる可能性がある。ただし、フラットタイプの電子レンジ向けの包装袋であれば、この限りではない。
【0053】
勾配部13aの左右方向の長さL2は、3~6cmが好ましく、より具体的には、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6(単位:cm)のいずれかの値であり、また、ここで例示した数値のいずれか2つの間の範囲内であってもよく、たとえば4cmとすることができる。これよりも小さくしすぎると、中央部下端を前後方向に完全に開くのが難しくなる。
【0054】
中央部13bの左右方向の長さL3は、5~15cmが好ましく、より具体的には、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15(単位:cm)のいずれかの値であり、また、ここで例示した数値のいずれか2つの間の範囲内であってもよく、たとえば10cmとすることができる。
【0055】
包装袋1の内側における左右方向の長さL4は、10~23cmが好ましく、より具体的には、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23(単位:cm)のいずれかの値であり、また、ここで例示した数値のいずれか2つの間の範囲内であってもよく、例えば18cmとすることができる。
【0056】
中央線Eから中央部13bの上端までの長さW2は、3~6cmが好ましく、より具体的には、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6(単位:cm)のいずれかの値であり、また、ここで例示した数値のいずれか2つの間の範囲内であってもよく、たとえば4cmとすることができる。なお、長さW2は、勾配部13aの左右方向の長さL2と同じ長さとするのがより好ましい。
【0057】
中央線Eから固定部15の上端までの高さH4は、中央線Eから下端までの長さH3に対して、H4/H3≧0.2であることが望ましい。好ましくは、0.5≧H4/H3≧0.2であることが望ましく、より具体的にはH4/H3の値は、0.20、0.25、0.30、0.35、0.40、0.45、0.50のいずれかの値であり、また、ここで例示した数値のいずれか2つの間の範囲内であってもよい。このように、中央線Eから固定部15までの高さH4を確保することにより、開口7を前後方向に確実に開きつづけておくことが可能となる。
【0058】
中央部13bの上端に対する勾配部13aの角度θの値は、30度~60度とすることが好ましく、より具体的には、30、35、40、45、50、55、60(単位:度)のいずれかの値であり、またここで例示した数値のいずれか2つの間の範囲内であってもよく、より好ましくは45度とすることができる。このように、勾配部13aの角度θを30度よりも大きくすることにより、包装袋1の側端の近傍領域N2間における前後方向の幅Wnを確保することができ、包装袋1の自立安定性が向上する(図8A参照)。
【0059】
なお、底部フィルム20aは、温度上昇に伴って引張弾性率が低下するものが好ましい。この場合、包装袋1を加熱した際にフィルムが軟化して包装袋1の中央部下端が前後方向に開きやすい。ここで、底面部2を構成するフィルムの23.5℃及び100℃でのTD方向(包装袋1の前後方向に対応)の引張弾性率をそれぞれM1,M2とする。引張弾性率は、JIS K 7127に準拠して引張試験を行うことによって求めることができる。引張の試験速度は、50mm/minとし、試験用のダンベル形状は5号形とする。
【0060】
M1は、600~1400MPaが好ましく、800~1200MPaがさらに好ましい。M1は、具体的には例えば、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400MPaであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0061】
M2は、200~600MPaが好ましく、300~500MPaがさらに好ましい。M2は、具体的には例えば、200、250、300、350、400、450、500、550、600MPaであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0062】
M1/M2の値は、例えば、1.2~4であり、1.5~3が好ましい。この値は、具体的には例えば、1.2、1.5、2、2.5、3、3.5、4であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0063】
周壁フィルム20bは、底部フィルム20aと同じ物性を有するものを用いてもよく、異なる物性を有するものを用いてもよい。
【0064】
2.第2実施形態
図9を参照し、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態の包装袋1は、第2開封部25および開閉部材32を備えていない点が第1実施形態と異なる。以下、相違点を中心に説明する。
【0065】
本実施形態の包装袋1は、内部に液状物が収容された状態で販売されており、購入した使用者がそのまま加熱する使用態様を想定している。そのため、第2開封部25および開閉部材32を必要としていない。このような形態の包装袋1においても、上記実施形態と同様に利用者の利便性を向上することが可能となる。
【0066】
3.他の実施形態
以上、実施形態について説明してきたが、本開示における技術的思想は、以下の態様においても採用することができる。
・補強部材26の一部に断熱材を取り付けるような構成としてもよい。たとえば、補強部材26上下方向の中央部に断熱材を取り付けてもよい。この場合、補強部材26と周面部21の間に断熱材を取り付けることが好ましい。
・周面部21は、前面部3と背面部4の間に一対の側面部を備えてもよい。この場合、前面部3と背面部4がそれぞれ一対の側面部に溶着されることによって略四角形状の周面部21が構成される。この場合、上記実施形態と異なり、補強部材26は四角筒状とすればよい。
・上記実施形態では、固定部15は、底面部2に形成された半円状の切り欠きRで構成されているが、この形態に限定されることはない。たとえば、接着剤を用いて底部フィルムの対向する面同士を接着することや、ステープラー等の係止手段によって前面部3と背面部4とを前後方向に固定してもよい。
・上記実施形態では、底面部2はV字形に折り曲げられたフィルムで構成されているが、この形態に限定されることはなく、たとえばW字形に折り曲げられたフィルムで構成されていてもよい。
・包装袋1は、蒸気抜きシール部11を備えていてなくてもよい。その場合は、例えば袋を少しだけ開封して加熱の際に発生した蒸気を排出することができる。
・包装袋1は、合掌部10を備えていなくてもよい。
・蒸気抜きシール部11は、合掌部10以外の部分に設けられていてもよい。
・包装袋1の製造方法は、上記実施形態で説明した方法に限定されることはない。
・包装袋1の形態は、上記実施形態に限定されることはない。たとえば、自立式でなく加熱時に横臥させる必要のある平袋形状であってもよいし、箱形状の包装袋であってもよい。
・上記実施形態では、補強部材26は平面視において矩形状に形成されていたが、この態様に限定されることはない。例えば、平面視において左右方向の中央部で下側に突出しているような凸形状に形成してもよい。
・補強部材26に、上下方向に延びる折り目をつけていてもよい。このようにすることで、開封後に開口7の開きを維持することが容易となる。
【符号の説明】
【0067】
1 :包装袋
2 :底面部
3 :前面部
3a :前面下部
3b :前面上部
4 :背面部
5 :切り取り部
6 :本体部
7 :開口
10 :合掌部
10a :重ね合わせ部
11 :蒸気抜きシール部
12 :側端溶着部
13 :下端溶着部
13a :勾配部
13b :中央部
14 :エアポケット
15 :固定部
20a :底部フィルム
20b :周壁フィルム
21 :周面部
22 :上端溶着部
24 :第1開封部
24a :第1引裂開始部
24b :第1切り取り線
25 :第2開封部
25a :第2引裂開始部
25b :第2切り取り線
26 :補強部材
26a :上端部
26b :下端部
32 :開閉部材
32a :前面側係合部材
32b :背面側係合部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9