(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】チェーンガイド
(51)【国際特許分類】
F16H 7/18 20060101AFI20240828BHJP
F02F 7/00 20060101ALI20240828BHJP
F02B 67/06 20060101ALI20240828BHJP
【FI】
F16H7/18 B
F02F7/00 Z
F02B67/06 C
(21)【出願番号】P 2021002836
(22)【出願日】2021-01-12
【審査請求日】2023-10-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003355
【氏名又は名称】株式会社椿本チエイン
(74)【代理人】
【識別番号】100153497
【氏名又は名称】藤本 信男
(72)【発明者】
【氏名】村井 宏輔
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 将成
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0321786(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0292037(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 7/18
F02F 7/00
F02B 67/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行するチェーンを摺動案内する案内シューを支持するシュー支持部をガイド高さ方向の上方側に有したガイド本体と、前記ガイド本体にブッシュ部材を取り付けた少なくとも1箇所のブッシュ構造部とを備えたチェーンガイドであって、
前記ブッシュ部材は、ボルト挿通孔が形成されたブッシュ筒状部と、前記ブッシュ筒状部の一端において前記ブッシュ筒状部の外周側に張り出したフランジ部とを有し、
前記ガイド本体は、ガイド幅方向に貫通して形成され前記ブッシュ筒状部をガイド幅方向の表側から裏側に向けて挿入させる筒状部挿入孔と、前記フランジ部のガイド幅方向の裏側への移動を規制する裏側規制部とを有し、
前記ガイド本体には、前記ブッシュ構造部毎に、ガイド幅方向に見た場合の前記筒状部挿入孔の外周側の一箇所のみにおいて、前記フランジ部のガイド幅方向の表側に位置して前記フランジ部のガイド幅方向の表側への移動を規制する表側規制部が設けられ、
前記ガイド本体は、前記シュー支持部を下方側から支持する支持壁と、前記支持壁のガイド幅方向の裏側に形成された裏側ボス部とを有し、
前記筒状部挿入孔は、前記支持壁および前記裏側ボス部をガイド幅方向に貫通して形成され、
前記ガイド本体は、前記裏側ボス部からガイド幅方向の表側に向けて延びる延出部を有し、
前記延出部の表側先端部に、前記表側規制部が形成され
、
前記延出部は、前記裏側ボス部の下端部から前記ガイド本体の下側を通って、ガイド幅方向の表側に向けて延びるように形成され、
前記延出部は、前記ガイド本体から下側に所定距離離れた位置に配置され、可撓性を有して前記筒状部挿入孔の中心に対して接近および離間する方向に移動可能に形成されていることを特徴とするチェーンガイド。
【請求項2】
前記ガイド本体は、前記ガイド本体の一部からガイド幅方向の裏側から表側に向けて延びる延出部を有し、
前記延出部の表側先端部に、前記表側規制部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のチェーンガイド。
【請求項3】
前記ガイド本体は、前記ガイド本体の一部からガイド幅方向の裏側から表側に向けて延びる延出部を有し、
前記延出部は、可撓性を有して、前記筒状部挿入孔の中心に対して接近および離間する方向に移動可能に形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のチェーンガイド。
【請求項4】
前記表側規制部は、ガイド高さ方向における前記筒状部挿入孔の下方側位置に形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のチェーンガイド。
【請求項5】
前記ガイド本体は、合成樹脂から形成され、
前記ガイド本体は、前記ガイド本体の一部からガイド幅方向の裏側から表側に向けて延びる延出部を有し、
前記延出部の表側先端部には、前記表側規制部が前記筒状部挿入孔の中心側に向けて凸状に突出形成され、
前記ガイド本体は、ガイド幅方向に見た場合に前記表側規制部に重なる位置に、ガイド幅方向に貫通するガイド貫通部を有していることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のチェーンガイド。
【請求項6】
走行するチェーンを摺動案内する案内シューを支持するシュー支持部をガイド高さ方向の上方側に有したガイド本体と、前記ガイド本体にブッシュ部材を取り付けた少なくとも1箇所のブッシュ構造部とを備えたチェーンガイドであって、
前記ブッシュ部材は、ボルト挿通孔が形成されたブッシュ筒状部と、前記ブッシュ筒状部の一端において前記ブッシュ筒状部の外周側に張り出したフランジ部とを有し、
前記ガイド本体は、ガイド幅方向に貫通して形成され前記ブッシュ筒状部をガイド幅方向の表側から裏側に向けて挿入させる筒状部挿入孔と、前記フランジ部のガイド幅方向の裏側への移動を規制する裏側規制部とを有し、
前記ガイド本体には、前記ブッシュ構造部毎に、ガイド幅方向に見た場合の前記筒状部挿入孔の外周側の一箇所のみにおいて、前記フランジ部のガイド幅方向の表側に位置して前記フランジ部のガイド幅方向の表側への移動を規制する表側規制部が設けられ、
前記フランジ部は、前記表側規制部によってガイド幅方向の表側への移動を規制されるフランジ被規制部と、前記ブッシュ筒状部の中心からの前記フランジ部の外縁までの径寸法が前記フランジ被規制部よりも小さいフランジ小径部とを有していることを特徴とするチェーンガイド。
【請求項7】
前記ガイド本体は、前記表側規制部によって前記フランジ被規制部のガイド幅方向の表側への移動を規制した状態で、前記フランジ部の回転を規制する回転規制部を有していることを特徴とする請求項6に記載のチェーンガイド。
【請求項8】
前記ガイド本体は、前記シュー支持部を下方側から支持する支持壁と、前記支持壁の側面からガイド幅方向に突出して形成された補強リブとを有し、
前記補強リブは、前記ガイド本体に前記ブッシュ部材を取り付けた状態で、前記フランジ部の外周側を囲むように形成された周辺リブを有することを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載のチェーンガイド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンのタイミングシステム等において、走行するチェーンを摺動案内するチェーンガイドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンのタイミングシステム等では、スプロケット間を走行するチェーンを安定させ張力を適正に保持するために、走行するチェーンを摺動案内するチェーンガイドを用いることが慣用されている。
【0003】
このようなチェーンガイドは、ガイド本体に形成されたボルト挿通孔に挿通される取付ボルトを利用して、エンジンブロック等の取付対象に対して取り付けられており(例えば特許文献1~3を参照)、この場合、ガイド本体が合成樹脂製であるのに対して取付ボルトが金属製であるため、エンジン駆動時に熱によって合成樹脂製のガイド本体と金属製の取付ボルトとの間に熱収縮差が生じ、当該熱収縮差に起因してボルト挿通孔と取付ボルトとの間に緩みが発生してチェーンガイドの取付状態に緩みが出てしまう、という問題がある。
【0004】
そのため、このようなチェーンガイドでは、このような熱収縮差に起因するチェーンガイドの取付け状態の緩みの問題を軽減することを目的の1つとして、ガイド本体のボルト挿通孔の内周に金属製のブッシュ部材を介装させることが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-078486公報
【文献】特開2011-127741公報
【文献】特開平10-238604公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、このようなチェーンガイドをエンジンブロック等に対して取り付ける時には、ガイド本体のボルト挿通孔内にブッシュ部材を差し込んだ状態を維持しつつ、ブッシュ部材内に挿入した取付ボルトをエンジンブロック等に対して締結するといった作業が要求されることから、作業効率が低下するという問題があり、また、チェーンガイドの輸送時にもブッシュ部材の脱落が生じるおそれがあった。
【0007】
そこで、本発明は、これらの問題点を解決するものであり、簡素な構成で、取り付け時の作業性および輸送性を向上するチェーンガイドを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、走行するチェーンを摺動案内する案内シューを支持するシュー支持部をガイド高さ方向の上方側に有したガイド本体と、前記ガイド本体にブッシュ部材を取り付けた少なくとも1箇所のブッシュ構造部とを備えたチェーンガイドであって、前記ブッシュ部材は、ボルト挿通孔が形成されたブッシュ筒状部と、前記ブッシュ筒状部の一端において前記ブッシュ筒状部の外周側に張り出したフランジ部とを有し、前記ガイド本体は、ガイド幅方向に貫通して形成され前記ブッシュ筒状部をガイド幅方向の表側から裏側に向けて挿入させる筒状部挿入孔と、前記フランジ部のガイド幅方向の裏側への移動を規制する裏側規制部とを有し、前記ガイド本体には、前記ブッシュ構造部毎に、ガイド幅方向に見た場合の前記筒状部挿入孔の外周側の一箇所のみにおいて、前記フランジ部のガイド幅方向の表側に位置して前記フランジ部のガイド幅方向の表側への移動を規制する表側規制部が設けられ、前記ガイド本体は、前記シュー支持部を下方側から支持する支持壁と、前記支持壁のガイド幅方向の裏側に形成された裏側ボス部とを有し、前記筒状部挿入孔は、前記支持壁および前記裏側ボス部をガイド幅方向に貫通して形成され、前記ガイド本体は、前記裏側ボス部からガイド幅方向の表側に向けて延びる延出部を有し、前記延出部の表側先端部に、前記表側規制部が形成され、前記延出部は、前記裏側ボス部の下端部から前記ガイド本体の下側を通って、ガイド幅方向の表側に向けて延びるように形成され、前記延出部は、前記ガイド本体から下側に所定距離離れた位置に配置され、可撓性を有して前記筒状部挿入孔の中心に対して接近および離間する方向に移動可能に形成されていることにより、前記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0009】
本請求項1に係る発明によれば、ガイド本体が、ガイド幅方向に貫通して形成されブッシュ筒状部をガイド幅方向の表側から裏側に向けて挿入させる筒状部挿入孔と、フランジ部のガイド幅方向の裏側への移動を規制する裏側規制部とを有し、ガイド本体に、ブッシュ構造部毎に、ガイド幅方向に見た場合の筒状部挿入孔の外周側の一箇所のみにおいて、フランジ部のガイド幅方向の表側に位置してフランジ部のガイド幅方向の表側への移動を規制する表側規制部が設けられている。これにより、ガイド本体からのブッシュ部材の脱落を防止することが可能であるため、チェーンガイドの輸送性を向上することができるとともに、エンジンブロック等の取付対象へのチェーンガイドの取り付けに関する作業性を向上することができる。また、表側規制部がブッシュ構造部毎に一箇所のみ設けられていることにより、ガイド本体に対するブッシュ部材の取り付けの容易性を向上することができる。
また、表側規制部を表側先端部に有した延出部が、支持壁のガイド幅方向の裏側に形成された裏側ボス部からガイド幅方向の表側に向けて延びるように形成され、延出部は、裏側ボス部の下端部からガイド本体の下側を通って、ガイド幅方向の表側に向けて延びるように形成され、延出部は、ガイド本体から下側に所定距離離れた位置に配置され、可撓性を有して筒状部挿入孔の中心に対して接近および離間する方向に移動可能に形成されていることにより、ガイド幅方向における延出部の長さを充分に確保して、延出部に良好な可撓性を容易に持たせることが可能であるため、ガイド本体に対するブッシュ部材の取り付けを容易に達成することができる。
【0010】
本請求項2、3に係る発明によれば、ガイド本体が、ガイド幅方向の裏側から表側に向けて延びる延出部を有し、延出部の表側先端部に、表側規制部が形成されていることにより、延出部に可撓性を持たせることが可能であるため、ガイド本体に対するブッシュ部材の取り付けを容易に達成することができる。
本請求項4に係る発明によれば、表側規制部が、ガイド高さ方向における筒状部挿入孔の下方側位置に形成されていることにより、設計に制約が多いシュー支持部側を避けて表側規制部を形成することが可能であるため、表側規制部の周辺構成の設計自由度を確保することができる。
本請求項5に係る発明によれば、延出部の表側先端部に、表側規制部が筒状部挿入孔の中心側に向けて凸状に突出形成され、ガイド本体が、ガイド幅方向に見た場合に表側規制部に重なる位置に、ガイド幅方向に貫通するガイド貫通部を有している。これにより、当該ガイド貫通部を、ガイド幅方向の表側および裏側の間でオイルを移動させる油路として機能させることが可能であるため、ブッシュ構造部、特に、ガイド本体の筒状部挿入孔とブッシュ筒状部との間隙や表側規制部を有した延出部にオイルを良好に行き渡らせることができるばかりでなく、合成樹脂製のガイド本体を射出形成する場合に、金型の型抜きを容易にする、すなわち、当該ガイド貫通部を、凸状の表側規制部のガイド幅方向の裏側形状を形成するための金型を配置する部位としても利用することが可能であるため、凸状の表側規制部を容易かつ良好に成形することができ、更には、延出部の可撓性を向上させることができる。
本請求項6に係る発明によれば、ガイド本体が、ガイド幅方向に貫通して形成されブッシュ筒状部をガイド幅方向の表側から裏側に向けて挿入させる筒状部挿入孔と、フランジ部のガイド幅方向の裏側への移動を規制する裏側規制部とを有し、ガイド本体に、ブッシュ構造部毎に、ガイド幅方向に見た場合の筒状部挿入孔の外周側の一箇所のみにおいて、フランジ部のガイド幅方向の表側に位置してフランジ部のガイド幅方向の表側への移動を規制する表側規制部が設けられている。これにより、ガイド本体からのブッシュ部材の脱落を防止することが可能であるため、チェーンガイドの輸送性を向上することができるとともに、エンジンブロック等の取付対象へのチェーンガイドの取り付けに関する作業性を向上することができる。また、表側規制部がブッシュ構造部毎に一箇所のみ設けられていることにより、ガイド本体に対するブッシュ部材の取り付けの容易性を向上することができる。
また、フランジ部が、表側規制部によってガイド幅方向の表側への移動を規制されるフランジ被規制部と、ブッシュ筒状部の中心からのフランジ部の外縁までの径寸法がフランジ被規制部よりも小さいフランジ小径部とを有している。
これにより、ガイド本体にブッシュ部材の取り付ける時に、表側規制部とフランジ小径部との周方向位置を合わせた状態でガイド本体の筒状部挿入孔に対してブッシュ筒状部を挿入した後、ブッシュ部材を回転させて、表側規制部とフランジ被規制部との周方向位置を合わせて表側規制部によってフランジ部のガイド幅方向の表側への移動が規制された状態とすることが可能であるため、延出部に可撓性を持たせなくとも、ガイド本体に対するブッシュ部材の取り付け時における表側規制部に対するフランジ部の干渉を回避することもできる等、延出部および表側規制部の設計自由度を向上させることができる。
本請求項7に係る発明によれば、ガイド本体が、表側規制部によってフランジ被規制部のガイド幅方向の表側への移動を規制した状態で、フランジ部の回転を規制する回転規制部を有していることにより、ガイド本体に対してブッシュ部材を取り付けた後に、不測にブッシュ部材が回転しまうことによる、ブッシュ部材の不測の脱落を抑制することができる。
本請求項8に係る発明によれば、ガイド本体の補強リブが、ガイド本体にブッシュ部材を取り付けた状態で、フランジ部の外周側を囲むように形成された周辺リブを有することにより、周辺リブを含む補強リブによってガイド本体を補強することができるばかりでなく、ガイド本体に取り付けられたブッシュ部材のフランジ部に対して工具等が当たってしまうことを防止することが可能であるため、ガイド本体からブッシュ部材が不測に外れてしまうことを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るチェーンガイドの使用態様を示す説明図。
【
図3】ブッシュ部材を取り付けたブッシュ構造部付近を示す説明図。
【
図5】ブッシュ部材を取り外した状態を示す説明図。
【
図6】ブッシュ部材を取り外した状態を反対側から見て示す説明図。
【
図7】ブッシュ構造部付近を断面視して示す説明図。
【
図8】取付対象にチェーンガイドを取り付けた状態を示す断面図。
【
図9】第2実施形態においてブッシュ構造部付近を示す説明図。
【
図13】第3実施形態においてブッシュ構造部付近を示す説明図。
【
図15】ブッシュ部材を取り外した状態を反対側から見て示す説明図。
【
図16】ブッシュ構造部付近を断面視して示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の第1実施形態に係るチェーンガイド10について、図面に基づいて説明する。
【0013】
本発明の第1実施形態に係るチェーンガイド10は、
図1や
図8に示すように、エンジンルーム内に設置されるタイミングシステムに組み込まれて用いられるものであり、取付対象としてのエンジンブロックEに取付ボルトBによって固定され、クランク軸とカム軸の夫々に設けたスプロケットS1~3間に懸回されたチェーンCHを摺動案内するものである。なお、
図1に示すタイミングシステムでは、チェーンガイド10の他にも、走行するチェーンCHを摺動案内するガイドとして、エンジンルーム内で揺動可能に軸支され、テンショナTによってチェーンCH側に向けて押される揺動ガイドGが設置されている。
【0014】
チェーンガイド10は、
図2や
図3に示すように、エンジンブロックEに固定され、走行するチェーンCHを摺動案内する案内シュー(図示しない)を支持するシュー支持部21をガイド高さ方向の上方側に有したガイド本体20と、ガイド本体20にブッシュ部材30を取り付けた少なくとも1箇所(本実施形態では2箇所)のブッシュ構造部50とを備えている。
【0015】
ガイド本体20は、合成樹脂等から射出成形等の手法によって形成され、
図2~
図4に示すように、案内シュー(図示しない)を支持するシュー支持部21と、シュー支持部21を下方側から支持する支持壁22と、支持壁22の側面からガイド幅方向に突出して形成された補強リブ23と、支持壁22のガイド幅方向の裏側に形成された裏側ボス部24と、ガイド幅方向に貫通して形成されブッシュ部材30のブッシュ筒状部31をガイド幅方向の表側から裏側に向けて挿入させる筒状部挿入孔25と、裏側規制部26と、表側規制部27aを有した延出部27と、ガイド幅方向に貫通するガイド貫通部28とを有している。
【0016】
シュー支持部21は、ガイド本体20に取り付けられた案内シュー(図示しない)をその上面で支持する部位であり、
図7や
図8に示すように、そのガイド幅方向における両側部は、支持壁22よりもガイド幅方向の外側に突出している。
【0017】
支持壁22は、
図2や
図7に示すように、シュー支持部21の下面から下方に向けて形成された平板状の部位であり、ガイド幅方向に直交するように配置された部位である。
【0018】
補強リブ23は、
図2や
図4に示すように、支持壁22の下端縁(の一部)に沿って形成された底部リブ23aと、シュー支持部21および底部リブ23aをガイド高さ方向に連結する連結リブ23bとを有している。
一部の連結リブ23bは、
図3や
図4に示すように、ガイド本体20にブッシュ部材30を取り付けた状態で、フランジ部32の外周側の一部領域を囲むように形成された周辺リブ23cとして機能する。
【0019】
裏側ボス部24は、
図6に示すように、支持壁22のガイド幅方向の裏側に形成された部位であり、本実施形態では、支持壁22および補強リブ23(底部リブ23a)からガイド幅方向の裏側に向けて突出して形成されている。
【0020】
筒状部挿入孔25は、
図4や
図6に示すように、ガイド本体20をガイド幅方向に貫通して形成され、本実施形態では、支持壁22および裏側ボス部24をガイド幅方向に貫通して形成されている。
【0021】
裏側規制部26は、
図4や
図7に示すように、ガイド本体20にブッシュ部材30を取り付けた状態で、フランジ部32のガイド幅方向の裏側に位置し、フランジ部32のガイド幅方向の裏側への移動を規制するものであり、本実施形態では、支持壁22の一部が裏側規制部26として機能する。
【0022】
延出部27は、
図5や
図6に示すように、ガイド本体20の一部からガイド幅方向の裏側から表側に向けて延びるように形成され、本実施形態では、裏側ボス部24の下端部からガイド本体20(支持壁22および底部リブ23a)の下側を通ってガイド幅方向の表側に向けて延びように形成されている。
延出部27は、ガイド本体20(支持壁22および底部リブ23a)から下側に所定距離離れた位置に配置され、可撓性を有して、筒状部挿入孔25の中心に対して接近および離間する方向(本実施形態ではガイド高さ方向)に移動可能に形成されている。
【0023】
ガイド本体20には、
図3に示すように、ブッシュ構造部50毎に、ガイド幅方向に見た場合の筒状部挿入孔25の外周側の一箇所のみにおいて、フランジ部32のガイド幅方向の表側に位置(係合)して、フランジ部32のガイド幅方向の表側への移動を規制する表側規制部27aが設けられている。
言い換えると、ブッシュ構造部50毎に表側規制部27aが1つのみ設けられ、本実施形態の場合、ブッシュ構造部50が2箇所設けられているため、チェーンガイド10には、計2つの表側規制部27aが設けられている。
本実施形態では、
図4に示すように、延出部27の表側先端部に、筒状部挿入孔25の中心側(本実施形態では上方側)に向けて凸状に突出するように、凸状の表側規制部27aが形成されている。
表側規制部27aは、
図4に示すように、筒状部挿入孔25の中心側(本実施形態では上方側)の側面に、ガイド幅方向の裏側に向かうに従って筒状部挿入孔25の中心側(本実施形態では上方側)に近づくように傾斜した傾斜部を有している。
表側規制部27a(および延出部27)は、
図4に示すように、ガイド高さ方向における筒状部挿入孔25の下方側位置に形成されている。
【0024】
ガイド貫通部28は、
図4や
図6や
図7に示すように、ガイド幅方向に見た場合に表側規制部27aに重なる位置、言い換えると、延出部27の上方側(筒状部挿入孔25の中心側)において、ガイド本体20をガイド幅方向に貫通する部位である。
更に言い換えると、ガイド幅方向の裏側から見た場合に、ガイド貫通部28を通じて凸状の表側規制部27aの全体が見えるように、ガイド貫通部28は形成されている。
本実施形態では、裏側ボス部24をガイド幅方向に貫通する貫通孔と、支持壁22および底部リブ23aの下端部に形成されたガイド幅方向に貫通する貫通溝とが、ガイド貫通部28を構成している。
【0025】
ブッシュ部材30は、鉄等の金属から形成され、
図4に示すように、円筒状のブッシュ筒状部31と、ブッシュ筒状部31の一端において、ブッシュ筒状部31の外周側に向けて張り出した円環板状のフランジ部32とを有している。
【0026】
ブッシュ筒状部31は、
図7や
図8に示すように、その一部が筒状部挿入孔25内に配置され、取付ボルトB(の軸部)を挿通させるためのボルト挿通孔31aを有している。
【0027】
フランジ部32の外周側の一部は、
図3や
図7に示すように、ガイド本体20にブッシュ部材30を取り付けた状態で、表側規制部27aによってガイド幅方向の表側への移動を規制されるフランジ被規制部32aとして機能する。
フランジ部32は、
図3に示すように、ガイド本体20にブッシュ部材30を取り付けた状態で、ガイド高さ方向の下方側を除いて、シュー支持部21および周辺リブ23cによって、その外周側が囲まれている。言い換えると、フランジ部32の下方側には、底部リブ23aが形成されていない。
また、
図7や
図8に示すように、ガイド本体20にブッシュ部材30を取り付けた状態では、フランジ部32は、ガイド幅方向において周辺リブ23c(のガイド幅方向の外縁)よりも外側に位置している。
【0028】
上述したような第1実施形態では、
図3や
図4から分かるように、ガイド本体20に対してブッシュ部材30を取り付ける時に、ガイド本体20に対して接近させたブッシュ部材30のフランジ部32によって、表側規制部27aが形成された延出部27を筒状部挿入孔25の中心から離間する方向(ガイド高さ方向の下方側)に押して撓ませて移動させつつ、ガイド幅方向の裏側に向けてガイド本体20の筒状部挿入孔25に対してブッシュ部材30のブッシュ筒状部31を挿入する。
【0029】
また、チェーンガイド10は、
図8に示すように、取付対象であるエンジンブロックEに対してガイド本体20のガイド幅方向の裏側を向けるとともに、エンジンブロックEに対してブッシュ部材30のブッシュ筒状部31を当接させた状態で配置され、ブッシュ部材30のボルト挿通孔31aに挿入された取付ボルトBによって、エンジンブロックEに固定される。このチェーンガイド10がエンジンブロックEに固定された状態では、
図8に示すように、フランジ部32に対して取付ボルトBの頭部が接触した状態になる。
【0030】
次に、本発明の第2実施形態に係るチェーンガイド10について、
図9~
図12に基づいて説明する。ここで、第2実施形態では、一部構成以外については、前述した第1実施形態と全く同じであるため、相違点以外の構成については、その説明を省略する。
【0031】
まず、上述した第1実施形態においては、
図4等に示すように、ブッシュ部材30のフランジ部32が円環板状(中央に孔を有した円板状)に形成されているものとして説明したが、第2実施形態においては、
図9や
図10に示されるように、円環板の一部を切り欠いた形状でフランジ部32が形成されている。
【0032】
これにより、第2実施形態のフランジ部32には、
図9や
図10に示す用事、表側規制部27aによってガイド幅方向の表側への移動を規制されるフランジ被規制部32aと、ブッシュ筒状部31の中心からのフランジ部32の外縁までの径寸法がフランジ被規制部32aよりも小さいフランジ小径部32bとが形成されている。
【0033】
上述したような第2実施形態では、ガイド本体20に対してブッシュ部材30を取り付ける時に、
図10に示すように、ガイド本体20の表側規制部27aとフランジ部32のフランジ小径部32bとの周方向位置を合わせた状態で、ガイド幅方向の裏側に向けてガイド本体20の筒状部挿入孔25に対してブッシュ部材30のブッシュ筒状部31を挿入する。この時、延出部27を撓ませて表側規制部27aを移動させなくても、フランジ部32が表側規制部27aに干渉しない形状で、フランジ部32(のフランジ小径部32b)が形成されている。
その後、ブッシュ筒状部31を中心としてブッシュ部材30を回転させて
図9に示す状態にすることにより、ガイド本体20の表側規制部27aとブッシュ部材30のフランジ被規制部32aとの周方向位置を合わせて、表側規制部27aによってフランジ部32のガイド幅方向の表側への移動が規制された状態とする。
【0034】
このような第2実施形態においては、変形例として、
図11や
図12に示すように、表側規制部27aによってフランジ被規制部32aのガイド幅方向の表側への移動を規制した状態で、(ブッシュ筒状部31の中心を回転中心とした)フランジ部32の回転を規制する回転規制部29を、ガイド本体20に設けてもよい。
図11や
図12に示す例では、回転規制部29が、支持壁22のガイド幅方向の側面に形成された凸状の部位として設けられ、回転規制部29は、ガイド本体20にブッシュ部材30を取り付けた状態で、フランジ小径部32bの外縁部に面して配置される位置に形成されている。
【0035】
次に、本発明の第3実施形態に係るチェーンガイド10について、
図13~
図16に基づいて説明する。ここで、第3実施形態では、一部構成以外については、前述した第1実施形態と全く同じであるため、相違点以外の構成については、その説明を省略する。
【0036】
まず、上述した第1実施形態においては、
図4に示すように、ガイド本体20の表側規制部27a(および延出部27)が、ガイド高さ方向における筒状部挿入孔25の下方側位置に形成されているものとして説明したが、第2実施形態においては、
図13~
図16に示されるように、表側規制部27a(および延出部27)が、ガイド高さ方向における筒状部挿入孔25の上方側位置に形成されている。
【0037】
具体的に説明すると、第3実施形態では、
図13や
図14に示すように、ガイド高さ方向における筒状部挿入孔25の上方側位置において、支持壁22の側面からガイド幅方向の表側に向けて延びるように、延出部27が突出して形成されている。
また、表側規制部27aは、延出部27の表側先端部において、筒状部挿入孔25の中心側(本実施形態では下方側)に向けて凸状に突出するように形成されている。
【0038】
また、第3実施形態では、
図13や
図14に示すように、ガイド貫通部28についても、筒状部挿入孔25の上方側位置に形成されており、具体的には、ガイド幅方向に見た場合に表側規制部27aに重なる位置、言い換えると、延出部27の下方側(筒状部挿入孔25の中心側)において、ガイド本体20をガイド幅方向に貫通して形成されている。
【0039】
なお、ガイド本体20の表側規制部27a(および延出部27)やガイド貫通部28の具体的な形成位置については、第1実施形態の筒状部挿入孔25の下方側位置や第3実施形態の筒状部挿入孔25の上方側位置に限定されず、筒状部挿入孔25の外周側の如何なる位置でもよい。
【0040】
以上、本発明の実施形態を詳述したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行なうことが可能である。
【0041】
例えば、上述した複数の実施形態や変形例の各構成を、任意に組み合わせてチェーンガイド10を構成してもよい。
また、上述した実施形態では、チェーンガイド10が、タイミングシステムを有するエンジン内に設けられるものとして説明したが、これに限定されず様々な機器類に適用可能である。
また、チェーンガイド10は、チェーンCHによる伝動機構に限らず、ベルト、ロープ等の類似の伝動機構に適用されてもよく、種々の産業分野において利用可能である。
また、上述した実施形態では、案内シュー(図示しない)とガイド本体20とが別体に設けられ、案内シュー(図示しない)がガイド本体20に取り付けられるものとして説明したが、案内シュー(図示しない)をガイド本体20に一体に設けてもよい。
また、ガイド本体20や案内シュー(図示しない)の材質は、弾性、摩擦抵抗、剛性、耐久性、成形性、コスト等に諸条件に応じて公知の適宜のものを選択すればよく、特に、合成樹脂材料が好適である。
また、ブッシュ部材30の材質は、剛性、耐久性、成形性、コスト等の諸条件に応じて適宜の金属材料等を選択すればよいが、取付ボルトBと同じ金属材料からブッシュ部材30を形成するのが望ましい。
また、上述した実施形態では、
図2に示すように、チェーンガイド10が、ガイド長手方向に離れた2箇所に、ガイド本体20にブッシュ部材30を取り付けたブッシュ構造部50を備えているものとして説明したが、ブッシュ構造部50の数量はこれに限定されず、1箇所以上にブッシュ構造部50を設ければよい。なお、
図2に示す符号25aは、ガイド本体20をガイド幅方向に貫通して形成され取付ボルトBを挿通させるボルト孔である。また、
図2においては、2箇所のブッシュ構造部50のうち左側のブッシュ構造部50については、ブッシュ部材30を取り外して図示している。
また、上述した実施形態においては、チェーンガイド10が、エンジンブロックEに固定される固定ガイドとして構成されているが、チェーンガイド10を、エンジンルーム内で揺動可能に軸支される揺動ガイドGとして構成してもよい。なお、チェーンガイド10を揺動ガイドGとして構成する場合、取付軸(揺動軸)を挿入させるためのボルト挿通孔31aを有したブッシュ部材30をガイド本体20に取り付けたブッシュ構造部50を1箇所設ければよい。
【符号の説明】
【0042】
10 ・・・ チェーンガイド
20 ・・・ ガイド本体
21 ・・・ シュー支持部
22 ・・・ 支持壁
23 ・・・ 補強リブ
23a ・・・ 底部リブ
23b ・・・ 連結リブ
23c ・・・ 周辺リブ
24 ・・・ 裏側ボス部
25 ・・・ 筒状部挿入孔
25a ・・・ ボルト孔
26 ・・・ 裏側規制部
27 ・・・ 延出部
27a ・・・ 表側規制部
28 ・・・ 貫通部
29 ・・・ 回転規制部
30 ・・・ ブッシュ部材
31 ・・・ ブッシュ筒状部
31a ・・・ ボルト挿通孔
32 ・・・ フランジ部
32a ・・・ フランジ被規制部
32b ・・・ フランジ小径部
40 ・・・ ブッシュ構造部
CH ・・・ チェーン
T ・・・ テンショナ
G ・・・ 揺動ガイド
E ・・・ エンジンブロック(取付対象)
B ・・・ 取付ボルト
S1~3 ・・・ スプロケット