(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】調理器
(51)【国際特許分類】
A47J 43/046 20060101AFI20240828BHJP
【FI】
A47J43/046
(21)【出願番号】P 2021062915
(22)【出願日】2021-04-01
【審査請求日】2023-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003702
【氏名又は名称】タイガー魔法瓶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001438
【氏名又は名称】弁理士法人 丸山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小幡 享史
【審査官】根本 徳子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/036824(WO,A1)
【文献】特開2016-209225(JP,A)
【文献】中国実用新案第208435391(CN,U)
【文献】中国実用新案第210354431(CN,U)
【文献】特開2002-360452(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0342409(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02708169(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0236421(US,A1)
【文献】中国実用新案第205181160(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 42/00-44/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理具を具えるカッターダイと、前記カッターダイに着脱可能なカップとを有する調理容器と、
前記調理容器が装着され、前記調理具を回転させる本体と、
を具える調理器であって、
前記カップは、二条以上の多条ネジが形成されたカップ側噛合部を有し、
前記本体には、前記カッターダイに向けて突出した本体側係合部を有し、
前記カッターダイは、前記カップ側噛合部の前記多条ネジと相補形をなして噛合可能な二条以上の多条ネジが形成されたカッターダイ側噛合部
と、前記本体側係合部に係合可能なカッターダイ側係合部を有しており、
前記本体側係合部は、前記本体に揺動可能に配備され、
前記カッターダイ側係合部が前記本体側係合部に対してずれている場合に、前記カッターダイ側係合部が前記本体側係合部に当たって前記本体側係合部が回転することで、前記本体側係合部に係合する、
調理器。
【請求項2】
前記カッターダイは、外面又は外底面側にユーザーが指を掛けて前記カッターダイを前記カップに対して相対的に回転させることのできる指掛け部を有する、
請求項
1に記載の調理器。
【請求項3】
前記カッターダイは、前記調理具の回転中心が非鉛直方向に傾斜しており、
前記本体は、前記調理具を非鉛直軸中心に回転させる、
請求項1
又は請求項
2に記載の調理器。
【請求項4】
前記調理容器は、上縁側が鉛直方向に延びている、
請求項1乃至請求項
3の何れかに記載の調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミキサーやジューサー、フードプロセッサーのように回転する調理具を具えた調理器に関するものであり、より具体的には、調理容器を構成するカップとカッターダイとの着脱を容易に行なうことのできる調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ミキサーやジューサー、フードプロセッサーのような調理器では、ブレードを有する調理具を調理容器内で回転させて、食材の粉砕、みじん切り、おろし、つぶし、刻み、或いは、撹拌などの調理を行なっている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
調理容器は、カップと、カップ底を構成し、調理具が装着されるカッターダイから構成される。カップとカッターダイはネジ構造で回し嵌める構造が採用されている。そして、カップとカッターダイとの間にはシール性を高めるためにパッキンが配備され、カッターダイにカップを回し嵌めたときにパッキンが押し潰されて水密性を確保する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
カッターダイに対してカップは180度以上、機種によっては360度以上相対回転させないとカップの着脱を行なうことができない。一方で、カップは、パッキンを押し潰すようにカッターダイに螺合させる必要があり、カッターダイにカップを押し付けた状態で回し嵌めなければならいから、作業性が十分ではなかった。
【0006】
本発明の目的は、カップとカッターダイの装着時の相対回転角度を180度未満としつつ確実にカップとカッターダイを水密にシールできる調理器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る調理器は、
調理具を具えるカッターダイと、前記カッターダイに着脱可能なカップとを有する調理容器と、
前記調理容器が装着され、前記調理具を回転させる本体と、
を具える調理器であって、
前記カップは、二条以上の多条ネジが形成されたカップ側噛合部を有し、
前記カッターダイは、前記カップ側噛合部の前記多条ネジと相補形をなして噛合可能な二条以上の多条ネジが形成されたカッターダイ側噛合部を有する。
【0008】
前記本体には、前記カッターダイに向けて突出した本体側係合部を有し、
前記カッターダイには、前記本体側係合部に係合可能なカッターダイ側係合部を有することができる。
【0009】
前記本体側係合部は、前記本体に揺動可能に配備されており、
前記カッターダイ側係合部が前記本体側係合部に対してずれている場合に、前記カッターダイ側係合部が前記本体側係合部に当たって前記本体側係合部が回転することで、前記本体側係合部に係合することができる。
【0010】
前記カッターダイは、外面又は外底面側にユーザーが指を掛けて前記カッターダイを前記カップに対して相対的に回転させることのできる指掛け部を有することができる。
【0011】
前記カッターダイは、前記調理具の回転中心が非鉛直方向に傾斜しており、
前記本体は、前記調理具を非鉛直軸中心に回転させることができる。
【0012】
前記調理容器は、上縁側が鉛直方向に延びた構成とすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の調理器によれば、相補形をなす二条以上の多条ネジからなるカップ側噛合部とカッターダイ側噛合部により、180度未満の回転角度でカッターダイをカップに装着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る調理器であるミキサーの外観を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、調理容器を本体から取り外した状態を示す斜視図である。
【
図11】
図11は、カップからカッターダイを取り外した調理容器の斜視図である。
【
図12】
図12は、カップからカッターダイを取り外した調理容器の背面図である。
【
図17】
図17は、カップとカッターダイの着脱状態を示す図であって、(a)はカッターダイが着脱可能状態、(b)は着脱途中状態、(c)は取付状態を示している。
【
図18】
図18は、調理具を本体に装着する途中状態を示す断面図である。
【
図19】
図19は、本体とカッターダイが係合部により相対回転不能に係合している状態を示す説明図である。
【
図20】
図20は、カッターダイが本体への係合の際に、係合部どうしが5度ずれた状態を示す説明図である。
【
図21】
図21は、
図20の状態からカッターダイ側係合部が回動して、係合部どうしが係合した状態を示すミキサーの説明図である。
【
図22】
図22は、蓋体なしで調理容器を本体に装着した状態を示すミキサーの断面図である。
【
図23】
図23は、(a)本発明の傾斜したカッター軸により調理した際の食材の移動方向を示す説明図、(b)鉛直方向のカッター軸により調理した際の食材の移動方向を示す説明図である。
【
図24】
図24は、傾いて一部が設置面から離れた状態を示すミキサーの断面図である。
【
図25】
図25は、指掛け部の変形例を示すカッターダイの底面側斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の調理器について図面を参照しながら説明を行なう。なお、以下では、調理器としてミキサー10を例示して説明するが、調理具を回転させて食材の調理を行なう調理器であれば、ミキサー10に限らず、たとえばフードプロセッサー、ジューサー、ミル、ブレンダーなどであってもよい。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態によるミキサー10の全体構成を示す斜視図、
図2は右側面図、
図3は正面図、
図4は
図3の線A-Aに沿う断面図である。また、
図5は、調理容器40を本体20から取り外した状態を示す斜視図、
図6は同断面図である。
【0017】
ミキサー10は、
図1等に示すように、本体20と、本体20の上部に装着される調理容器40を具える。なお、本実施形態では、ミキサー10は、
図2の右側面図において、図中右側(背面側)に本体20、左上側(正面上側)に調理容器40が配置された形態としている。調理容器40は、
図5、
図6に矢印Bで示すように、非鉛直方向(図示では略水平方向)に接近、離間させることで本体20に着脱可能となっている。調理容器40を着脱する非鉛直方向は、水平方向に対して0°~75°が好適であり、0°~60°が望ましい。
【0018】
本体20は、調理容器40とほぼ同じ高さまで延びる垂直部27と、調理容器40の直下に形成されて設置面80と略平行に延びる水平部28、垂直部27と水平部28を繋ぐ傾斜部29を有する。図示では傾斜部29の傾斜角は約45度としているが、これに限定されるものではない。また、本体20は、水平部28を無くして、垂直部27と傾斜部29から構成しても構わない。
【0019】
傾斜部29は、
図5、
図6に示すように上端側が垂直部27に侵入するよう凹んだ形状に形成することができる。傾斜部29には、
図4乃至
図6に示すように、後述する調理具60が連繋される本体側カップリング23が臨出している。本体側カップリング23は、
図4及び
図6に示すモーター21の出力軸22に連繋され、モーター21の駆動により回転可能となっている。なお、図示の実施形態では、モーター21の出力軸22を本体側カップリング23に直接連結したダイレクトドライブ構造を採用しているが、本体側カップリング23は、モーター21とギアやベルト等の減速機構を介して連繋する構成としても構わない。
【0020】
傾斜部29には、また、上縁側にカッターダイ50のカッターダイ側係合部54と係合する本体側係合部36が形成されている。本体側係合部36については後述する。
【0021】
水平部28の上面28aは、調理容器40の底面44aを案内可能となるように
図4の右側、すなわち背面側に向けて5度傾いた形態としている。また、水平部28の下面側には、
図4に示すようにミキサー10の傾きや浮き上がりを検知する設置検知手段34が配置され、上面28a側には、調理容器40の脱落を防止するロック機構35が配置されている。
【0022】
設置検知手段34は、たとえば、操作子34aが出没式のスイッチであり、操作子34aがバネ等の付勢により本体20の下面から出没する(
図4及び後述する
図24参照)。設置検知手段34は、赤外線センサー等であってもよい。
【0023】
ロック機構35は、たとえば、ソレノイド等により水平部28から上向きに出没可能な爪片35aである。もちろん、ロック機構35は、カムやバネ、リンク等から構成することもできる。図示の実施形態では、ロック機構35は爪片35aが水平部28から突出し、後述する調理容器40の受け部46に嵌まって、調理容器40を本体20に係合させることで、その脱落や位置ずれを防止する。
【0024】
また、垂直部27の上端側には、調理容器40の蓋体49を検出する蓋体検知手段31(
図4、
図6参照)を具える。蓋体検知手段31は、調理容器40の蓋体49が垂直部27の所定位置に正しく配置されていることを検知する。これにより、調理容器40が本体20に正しく配置されており、さらに、蓋体49が調理容器40に正しく装着されていることを判別する。たとえば、蓋体検知手段31は、操作子31aが出没式のスイッチや、赤外線センサーを例示できる。出没式スイッチの場合、
図4、
図6に示すように、操作子31aの出没移行路が蓋体49の高さとなるように設置する。蓋体検知手段31を調理容器40ではなく、本体20側に設けたことで、調理容器40の重量化を防止できる利点がある。
【0025】
その他、垂直部27には、上記した蓋体検知手段31よりも下側に、ゴムやウレタン、スポンジなどからなる緩衝部材32が配置されている。緩衝部材32は、本体20に調理容器40を載置する際に、調理容器40が過度に押し込まれたときに、垂直部27と調理容器40の胴部が強く当たることを防止し、また、その衝撃を和らげる。なお、緩衝部材32は、調理容器40に配置することもできる。
【0026】
また、垂直部27自体は、上端が前方側、すなわち調理容器40側に向けて突出したガイド部33を有する。ガイド部33は、調理容器40の蓋体49の上面が当たって、調理容器40が正しい取付角度で本体20に設置されるよう案内する。これにより、調理容器40を誤った角度、たとえば上方向や下方向に傾いた状態で本体20に取り付けしようとしても、蓋体49がガイド部33に当たって進入角度が規制され、調理容器40を正しい取付角度で装着できる。図示では、ガイド部33に案内され易いように、蓋体49の先端を凹んだ形状とし、蓋体49の取付向きを間違った場合には、蓋体49がガイド部33に当たって、調理容器40が装着できない構成としている。
【0027】
上記した機構のうち、モーター21、設置検知手段34、ロック機構35及び蓋体検知手段31は、本体20内の適所に収容された制御部25(
図4等参照)に電気的に接続される。制御部25には、本体20の外装に設けられたスイッチ(図示せず)が連繋されており、スイッチ操作によりミキサー10の種々の機能が作動する。
【0028】
ミキサー10の基本的な動作として、制御部25は、蓋体検知手段31により調理容器40が本体20に装着されたことが検知され、設置検知手段34によりミキサー10が正しく設置面80に載置されたことが検知された状態で、スイッチ操作することにより、ロック機構35が機能して調理容器40の脱落や位置ずれを防止すると共に、モーター21が駆動して、調理具60を回転させる。そして、調理容器40内の食材を切削等調理する。
【0029】
調理容器40は、
図1乃至
図12に示すように、食材が投入されるカップ41と蓋体49を有し、カップ41の前方側には持ち手43が形成されている。カップ41は、略中央より上側が鉛直方向に延びる筒状体であって、下方が本体20の傾斜部29側、すなわち、後斜め下向きに屈曲した屈曲部44を有する。
図9に示すように、屈曲部44の下方には、カップ41の鉛直方向に対して直交する底面44aが形成されている。また、調理容器40の底面44aから前方側にはブリッジ部45が突出されており、持ち手43に繋がって持ち手43を補強している。本実施形態では、ブリッジ部45は、カップ41の底面44aに対して5度、すなわち、カップ41の鉛直方向に対して85度傾いて側方に向けて延びた構成としており、ブリッジ部45の下面には、上記した本体20のロック機構35の爪片35aが嵌まる受け部46が凹設されている。
【0030】
カップ41の屈曲部44は、
図11、
図12に示すように斜め下方向きに円形に貫通したカッターダイ取付開口42ており、断面円形のカッターダイ50が着脱可能となっている。
図11の矢印Eは、カッターダイ50の取付方向を示している。カッターダイ50には、
図13乃至
図16に示すように、調理具60が回転可能に配備される。調理具60は、たとえば、調理内容に合わせたブレードやカッター61を有し、カッター61から下方に向けてカッター軸62が延びている。カッター軸62は、カッターダイ50をベアリング等により回動自在に貫通し、その基端には、調理具側カップリング63が配置されている。調理具側カップリング63は、上記した本体側カップリング23に係合可能となっている。
【0031】
カップ41のカッターダイ取付開口42には、
図9に示すように、調理具60がカップ41内に配置されるようにカッターダイ50が装着される。カップ41は、
図11、
図12に示すようにカッターダイ取付開口42の内面にフランジ48が突設されており、フランジ48よりも外側に二条以上の多条ネジからなるカップ側噛合部47を具える。図示では、カップ側噛合部47は三条ネジである。
【0032】
また、カッターダイ50は、
図13乃至
図16に示すように、カッターダイ取付開口42のフランジ48との対向面にシール部材51が配置された有底円筒状の部材である。カッターダイ50の周面にはカップ側噛合部47の多条ネジと相補形をなして噛合可能な二条以上の多条ネジからなるカッターダイ側噛合部52が形成されている。図示では、カッターダイ側噛合部52は三条ネジである。
【0033】
カップ側噛合部47とカッターダイ側噛合部52は、夫々多条ネジとしているから、
図17(a)に示すように、カップ41とカッターダイ50の多条ネジの雄ねじと雌ねじの先端を位置合わせしてから、
図17(b)、
図17(c)に矢印Gで示すように、カップ41に対してカッターダイ50を60度相対的に回転、具体的にはカッターダイ50を時計回りに回転させることで、互いに噛合させることができる。
図17(c)は、カップ41にカッターダイ50が装着された状態を示す。また、カップ41に装着されたカッターダイ50は、三条ネジの場合、カッターダイ50を相対的に60度逆回転、具体的にはカッターダイ50を反時計回りに回転させることで取り外しすることができる。二条ネジの場合は、相対回転角度は90度以下である。二条ネジの場合、相対的な回転角度が三条ネジに比べて大きくなるので、ユーザーは捻り辛い可能性がある。しかしながら、三条ネジであれば、相対的な捻り角度は60度で済むから、ユーザーは抵抗感なく回し動作を行なうことができる。また、二条ネジの場合にはネジ間が長くなるから噛合部47,52の接圧が弱くなりシール性が三条ネジに比べて劣る。さらに、四条ネジ以上とすると、成形上のアンダーカットが増えるため、三条ネジに比べて金型費用が高くなる。このため、本発明では三条ネジを採用している。
【0034】
従って、先行技術のように、カッターダイに対してカップを180度以上相対回転させる必要はなく、180度未満の相対回転角度で容易にカップ41とカッターダイ50を着脱できる。
【0035】
また、カップ41とカッターダイ50は、それぞれ二条以上の多条ネジであり、各雄ねじと雌ねじは周方向に等間隔に形成されているから、カッターダイ50をカップ41に螺合させる際に、カッターダイ50が傾いたり、捻られたりすることがない。従って、カップ41のフランジ48に対してカッターダイ50を平行に取り付けることができ、シール部材51が圧縮されて水密にカップ41をシールできる。
【0036】
なお、本実施形態では、カッターダイ50は、カップ41への取付けの際に、外面又は外底面側にユーザーが指を掛けて、カッターダイ50を相対的にカップ41に対して回転させて着脱し易くできるように指掛け部53を形成している。指掛け部53は、図示の実施形態では、カッターダイ側係合部54の内面に形成された複数のリブである。リブとリブの間にユーザーは指を挿入することで、滑ることなくカッターダイ50を回転させて、カップ41に着脱できる。
【0037】
カッターダイ50の周面には、
図11、
図12、
図13、
図15等に示すようにカッターダイ側噛合部52の下側にカッターダイ側係合部54が形成されている。一方、
図5に示すように本体20の傾斜部29には、本体側係合部36が設けられている。本体側係合部36は、傾斜部29に対して所定角度の範囲で回動可能としている。そして、カッターダイ側係合部54と本体側係合部36は、本体20に調理容器40を載置することで、
図19に示すように係合可能となっている。
【0038】
具体的には、カッターダイ側係合部54と本体側係合部36は、それぞれ先端の尖ったギア形状とすることができる。カッターダイ側係合部54は、カッターダイ側噛合部52と同様、60度間隔で3カ所に形成され、複数(図示では7山)のギア部54aを有する。
【0039】
他方、本体側係合部36は、
図4乃至
図6に示すように、傾斜部29の上側のみに形成されており、ギア部54aよりも歯数の少ないギア部36a(図示では4山)を有する。ギア部36aは、傾斜部29の上側から前方側斜め下方に向けて突設されており、本体側係合部36自体は、傾斜部29の本体側カップリング23を中心に揺動可能である。
【0040】
本体側係合部36は、上記のとおり本体20に対して揺動可能であり、カッターダイ側係合部54は、カッターダイ50がカップ41に対して相対回転可能であるから、ギア部36a,54aは若干の角度調整が可能である。従って、調理容器40を本体20に載置させる際に、
図20の丸囲み部Hに示すように、カッターダイ側係合部54と本体側係合部36のギア部54a,36aの角度が一致せずにぶつかった場合であっても、カッターダイ側係合部54のギア部54aが、本体側係合部36のギア部36aに当たり、
図21に矢印Iで示すように本体側係合部36が揺動してカッターダイ側係合部54と係合する。
【0041】
カッターダイ側係合部54が本体側係合部36と係合することで(
図19、
図21)、調理中にカッターダイ50が振動してカップ41から緩んでしまうことを防止できる。
【0042】
図示の実施形態では、本体側係合部36のギア部36aと、カッターダイ側係合部54のギア部54aは、夫々10度間隔の山型ギアであり、本体側係合部36は、本体20に対して可動範囲が左右に5度ずつとなるように設定している。従って、カップ41に対してカッターダイ50の締付けが緩い状態(回転不足)や、締付けが強い状態(過回転)で、本体20にカップ41を装着しても、本体側係合部36の揺動により、本体側係合部36でカッターダイ側係合部54をロックできる。
【0043】
なお、上記角度でギア部36a,54aを構成すると、カップ41とカッターダイ50が5度緩んだ場合に、カップ41のフランジ48とカッターダイ50は約0.05mmの隙間が開く。しかしながら、カッターダイ50に装着されているシール部材51の凸形状によりシール性を確保することができる。シール部材51は、カップ41にカッターダイ50を装着することで押し潰されてシール性を具備するが、フランジ58とカッターダイ50に生じる上記隙間を十分シールできる高さ(たとえば、凸形状が0.5mm等)に形成することが好適である。
【0044】
然して、上記構成のミキサー10を使用するに際し、まず、
図11、
図12に示すように、カップ41にカッターダイ50が取り外された状態から、カッターダイ50を装着する。カッターダイ50は、
図11の矢印Eに示す方向でカップ41に接近させ、カップ41のカッターダイ取付開口42に面合わせし、指掛け部53間に指を挿入して、
図17に示すようにカップ41に対して相対回転(矢印G)させればよい。これにより、カッターダイ50の多条ネジからなるカッターダイ側噛合部52は、カップ41のカップ側噛合部47に螺合し、カッターダイ50は
図8、
図9等に示すようにカップ41に装着される。カッターダイ50は、カップ41とカッターダイ50の噛合部47,52は、二条以上の多条ネジとしているから、雄ねじと雌ねじの先端を位置合わせしてから(
図17(a))、カップ41に対してカッターダイ50を所定角度相対的に回転させることで(
図17(b))、互いに噛合させることができる(
図17(c))。指掛け部53により、滑ることなく好適にカッターダイ50をカップ41に取付けできる。噛合部47,52が三条ネジの場合、相対回転角度は60度以下である。
【0045】
カッターダイ取付開口42は、カップ41の屈曲部44に形成されており、鉛直方向に対して傾斜している。傾斜角度は、本体20の傾斜部29と同じく45度である。従って、
図9に示すように、カップ41に取り付けられたカッターダイ50も、カッター軸62の回転中心が非鉛直軸となるように、非鉛直方向に傾斜した状態で配置される。
【0046】
なお、
図9に示すように、カップ41の底面44aは、カップ41の鉛直方向に対して直交しており、ブリッジ部45は底面44aに対して5度傾いた形状に形成している。故に、
図7、
図9に示すようにカップ41はそのままテーブルなどに立てて置くことができる。
図9は、底面44aが設置面80に接地するよう立てて置いた状態である。なお、ブリッジ部45が設置面80に接地するよう立てて置いた場合には、カップ41は5度傾いた状態になる。
【0047】
この状態で、調理容器40は、蓋体49を取り外し、カップ41内に食材(図示せず)を投入し、蓋体49を閉じる。
【0048】
そして、
図5、
図6に示すように、本体20に調理容器40を向かい合わせる。このとき、
図4に示すように本体20が設置面80に正しく載置されていると、設置検知手段34は、設置面80を検出して操作子34aが本体20側に後退する。
【0049】
次に、
図5、
図6及び
図18に矢印Bで示すように、調理容器40を本体20に接近させる。これにより、調理容器40は屈曲部44が本体20の傾斜部29に嵌まるように侵入し、また、蓋体49が本体20の垂直部27のガイド部33の下面に当たって所望の取付角度に規制されて本体20に装着される(
図1乃至
図4)。同時に、本体側カップリング23は調理具側カップリング63と係合し、モーター21がカッター軸62と連繋される(
図4参照)。本発明では、調理容器40は、従来のように上方向に持ち上げて本体20に装着する必要はなく、横方向(矢印B)にスライドさせるだけでよいので、食材によって調理容器40が重量化していても、調理容器40の取付作業を容易に行なうことができる。
【0050】
調理容器40を本体20に接近させることで、
図19に示すように、カッターダイ50は、カッターダイ側係合部54が本体20の本体側係合部36と係合する。
図20に示すように、カッターダイ側係合部54と本体側係合部36のギア部54a,36aの角度が一致しない場合であっても(
図20の丸囲み部H)、そのまま調理容器40を押し込むことで、ギア部54a,36aどうしが当たることで、
図21に示すように本体側係合部36が若干回転し(矢印I)、カッターダイ側係合部54と本体側係合部36は係合する。
【0051】
このとき、調理容器40を強く押し込んでも、本体20の垂直部27には緩衝部材32(
図5、
図6参照)が配置されているから、
図4に示すように調理容器40に緩衝部材32が当たって、その衝撃は緩和される。
【0052】
調理容器40が本体20に正しく装着されると、蓋体検知手段31は蓋体49を検出する。しかしながら、調理容器40に蓋体49を付け忘れていると、
図22に示すように蓋体検知手段31は蓋体49によって操作子31aが押し込まれないから、蓋体49が未装着、或いは、調理容器40が正しく装着されていないことが検知される。蓋体検知手段31の検知情報は、制御部25に送られる。制御部25は、蓋体検知手段31が蓋体49を検知していない間はモーター21を回転させないようにすることで、安全性を高める構成を達成できる。
【0053】
そして、図示しないスイッチを操作して、ミキサー10を駆動する。制御部25は、スイッチ操作を受け付けると、まず、調理容器40が本体20に正しく装着されたことが蓋体検知手段31により検知され、また、本体20が設置面80に接地していることが設置検知手段34により検知されているかを判別する。何れか又は両方の検知が不能であれば、当該事象をLEDやブザー音などで報知することができる。
【0054】
上記が何れも検知された状態で制御部25がスイッチ操作を受け付けると、まず、ロック機構35を作動させ、
図4に示すようにロック機構35の爪片35aを調理容器40の受け部46に挿入させて、調理容器40を本体20に係合する。これにより調理容器40は、本体20からの脱落やカップ41の位置ずれが阻止される。カップ41の位置ずれを防止できることで、カップリング23,63の嵌合状態を良好に維持できるから、調理中に生ずる騒音、振動、破損などを低減できる。
【0055】
この状態で、制御部25は、モーター21を駆動させ、カップリング23,63を介してカッター軸62、カッター61を回転させる。これにより、カップ41内の食材は、カッター61によって粉砕等の調理を受ける。本実施形態では、本体20は、水平部28の上面28aを背面側に向けて5度傾けている。従って、カップ41を本体20に装着して通電したときに、カップ41と本体20が振動しても、カップ41は水平部28の上面28aの傾斜に沿って垂直部27側に下るから、カップ41は本体20から離れてしまうことを防止でき、カップリング23,63の嵌合状態を良好に維持できる。
【0056】
図23(a)は、本発明の屈曲部44を有するカップ41に、傾斜したカッター軸62により傾斜した面内で回転するカッター61を具えたミキサー10で食材を調理したときに、食材の移動を流体解析し、その移動方向を線Jで示した説明図である。一方、
図23(b)は、従来の鉛直方向のカッター軸72により水平面内で回転するカッター71により食材を調理したときの食材の移動方向を線Kで示した説明図である。図を参照すると、
図23(a)では、食材は矢印Jに示すように、カッターダイ50と平行に傾斜した面内でカッター61と多数接触しながら大きく旋回し、緩やかに上方に向かう流れを呈している。また、上方の食材は、傾斜したカッター61の回転により下方に引き戻されて再度カッター61と接触して旋回していることがわかる。一方、
図23(b)では、矢印Kで示すように食材は上下方向に大きく移動しており、また、丸囲み部Lで示すカップ41の底周縁部分では、滞留が生じていることがわかる。これらの比較から、本発明のミキサー10は、カッター61に食材が接触する回数が増え、切削等の調理性能が向上できていると判断できる。また、本発明のミキサー10は、食材の上下動が緩やかな分、空気との接触の機会を低減でき、気泡の混入を抑えることができる。これにより、食材の酸化の進行を抑えることができ、さらには食材の摩擦による熱発生を抑え、食材の劣化を防ぐことができる。
【0057】
図24に矢印Mで示すように、調理中にミキサー10が傾いて、設置面80から浮き上がった場合には、設置検知手段34が本体20傾きや浮きを検知する。本実施形態では、操作子34aが突出する。これにより、制御部25がモーター21を停止させるよう制御することで、調理容器40から食材が零れ出ることを防止でき、また、安全性を高めることができる。
【0058】
調理が完了すると、スイッチを切操作する。これにより、制御部25は、モーター21の駆動を停止させると共に、ロック機構35を作動させて爪片35aを受け部46から後退させ、調理容器40を本体20から取り外し可能にすることができる。この状態で調理容器40を本体20から取り外す場合には、調理容器40の持ち手43を掴んで横方向(
図5等の矢印Bとは逆方向)にスライドさせればよい。調理容器40は、取付時と同様、上方向に持ち上げる必要はないから、食材により調理容器40が重量化していても、取外し作業を容易に行なうことができる利点がある。
【0059】
そして、調理容器40は、蓋体49を開けて、調理された食材を注ぎ出す。手入れの際には、
図11、
図12に示すように、カッターダイ50に形成されたリブ状の指掛け部53にユーザーの指を掛けて、カッターダイ50をカップ41に対して相対的に捻ればよい。これにより、カッターダイ50は滑ることなく容易に取り外しできる。
図25は、指掛け部53を円柱のボスの形態とした変形例である。この形態であっても同様にユーザーの指を掛けてカッターダイ50の着脱を容易に行なうことができる。
【0060】
上記説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或いは範囲を限縮するように解すべきではない。また、本発明の各部構成は、上記実施例に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0061】
10 ミキサー(調理器)
20 本体
21 モーター
31 蓋検知手段
32 緩衝部材
33 ガイド部
34 設置検知手段
35 ロック機構
36 本体側係合部
41 カップ
47 カップ側噛合部
49 蓋体
50 カッターダイ
52 カッターダイ側噛合部
53 指掛け部
54 カッターダイ側係合部
60 調理具