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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】空気調和装置
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/86 20180101AFI20240828BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20240828BHJP
   F25B 5/04 20060101ALI20240828BHJP
   F25B 5/00 20060101ALI20240828BHJP
【FI】
F24F11/86
F25B1/00 351J
F25B5/04 Z
F25B5/00 102
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021159768
(22)【出願日】2021-09-29
(65)【公開番号】P2023049799
(43)【公開日】2023-04-10
【審査請求日】2023-01-18
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】原口 優
(72)【発明者】
【氏名】大沼 洋一
(72)【発明者】
【氏名】守谷 聡乃
【審査官】安島 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-098386(JP,A)
【文献】特開2015-114010(JP,A)
【文献】特開2020-034140(JP,A)
【文献】実開昭58-183462(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/00 - 11/89
F25B 1/00
F25B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機(21)、四路切換弁(22)、第1熱交換器(23)および第1弁(24)を含む熱源ユニット(2)と、
第1熱交換部(31)と第2熱交換部(32)とを有する第2熱交換器(30)、および第2弁(34)を含み、前記熱源ユニット(2)に接続されることによって冷媒回路(10)を構成する利用ユニット(3)と、
前記第1弁(24)および前記第2弁(34)の開度を調整する制御部(50)と、
を備え、
前記冷媒回路(10)において、前記第1弁(24)は前記第1熱交換器(23)と前記第2熱交換器(30)との間に配置され、前記第2弁(34)は前記第1熱交換部(31)と前記第2熱交換部(32)との間に配置され、
前記制御部(50)は、除湿運転の後に前記圧縮機(21)を停止させ又は所定値以下の低周波数で回転させ、前記第2弁(34)の開度を除湿運転時の開度よりも大きい第1開度にした後、前記四路切換弁(22)の流路を除湿運転用の流路から暖房運転用の流路へ切り換え、その後に前記第1開度よりも大きい第2開度にする、
空気調和装置(1)。
【請求項2】
前記制御部(50)が前記第2弁(34)の開度を前記第1開度に維持する時間は、60秒以上である、
請求項1に記載の空気調和装置(1)。
【請求項3】
前記制御部(50)は、前記第2弁(34)の開度を前記第2開度にした後に、前記四路切換弁(22)の流路を暖房運転用の流路から冷房運転用の流路へ切り換える、
請求項に記載の空気調和装置(1)。
【請求項4】
前記制御部(50)は、前記圧縮機(21)を停止させ又は所定値以下の低周波数で回転させた後に、3分以内に、前記四路切換弁(22)の流路を暖房運転用の流路から冷房運転用の流路へ切り換える、
請求項に記載の空気調和装置(1)。
【請求項5】
前記第2弁(34)は、電気入力を駆動力に変換して開度を調整する電動弁であって、
前記第2弁(34)の開度範囲は、所定駆動力で開度調整が可能な第1範囲と、開度調整に前記所定駆動力よりも大きな駆動力が必要な第2範囲とを含む、
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の空気調和装置(1)。
【請求項6】
前記第2弁(34)は、
最大で第1流量を流す第1流路を開閉する第1機構と、
前記第1流量よりも大きい第2流量を流す第2流路を開閉する第2機構と、
を有し、
前記制御部(50)は、前記第2弁(34)の前記第1流路を前記第1開度にした後に、前記第2流路を前記第2開度にする、
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の空気調和装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
除湿運転をすることができる空気調和装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、室内の温度を下げずに除湿運転をすることができる空気調和装置が広く普及している。例えば、特許文献1(特開2006-177599号公報)に開示されている空気調和装置では、第1室内熱交換器を凝縮器として、第2室内熱交換器を蒸発器として機能させるために、第1室内熱交換器と第2室内熱交換器との間に除湿弁としての電磁弁が設けられている。
【0003】
このような空気調和装置では、除湿運転から冷房運転に切り換える場合に、先ず、圧縮機を停止させ、除湿弁を介して高圧側と低圧側の圧力差を小さくした後、四路切換弁を逆流路に切り換える。除湿弁にはバネ力により開方向の力が常にかかっているので、高圧側と低圧側の圧力差が所定値以内になると、開の作動パルスの有無に関わらず、除湿弁は開く。これにより、高圧側と低圧側の冷媒の圧力差は一層速く接近し、圧縮機の始動可能圧力差まで小さくなるので、圧縮機を始動し冷房運転を開始する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、四路切換弁を逆流路に切り換えると均圧は瞬時に行われるが、電磁弁が一挙に開くので動作音が発生する。そのため、ユーザーに不快感を与える可能性がある。
【0005】
それゆえ、四路切換弁を逆流路に切り換えたときに、除湿弁で発生する動作音を抑制する、という課題が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1観点の空気調和装置は、熱源ユニットと、利用ユニットと、制御部とを備えている。熱源ユニットは、圧縮機、四路切換弁、第1熱交換器および第1弁を含む。利用ユニットは、第2熱交換器および第2弁を含み、熱源ユニットに接続されることによって冷凍サイクルを構成する。制御部は、第2弁の開度を調整する。また、制御部は、除湿運転の後に圧縮機を停止させ又は所定値以下の低周波数で回転させ、第2弁の開度を除湿運転時の開度よりも大きい第1開度にし、その後に第1開度よりも大きい第2開度にする。
【0007】
この空気調和装置では、圧縮機の停止後に、第2弁の開度を除湿運転時の開度よりも大きい第1開度にした後に、第1開度よりも大きい第2開度にするので、「第2弁前後の圧力差」の低下が促進される。それゆえ除湿運転後、一挙に第2開度まで開ける場合に比べて第2弁からの音の発生を抑制することができる。
【0008】
第2観点の空気調和装置は、第1観点の空気調和装置であって、制御部が第2弁の開度を第1開度に維持する時間が、60秒以上である。
【0009】
この空気調和装置では、第2弁の開度を、所定時間(60秒)以上、第1開度に維持することによって「第2弁前後の圧力差」の低下が促進される。それゆえ除湿運転後、一挙に第2開度まで開ける場合に比べて第2弁からの音の発生を抑制することができる。
【0010】
また、当該圧力差の低下が促進されることによって、四路切換弁を逆流路に切り換えるタイミングを早めることもできる。
【0011】
第3観点の空気調和装置は、第1観点または第2観点の空気調和装置であって、制御部が、圧縮機を停止させ又は所定値以下の低周波数で回転させ、四路切換弁の流路を除湿運転用の流路から暖房運転用の流路へ切り換える。
【0012】
第4観点の空気調和装置は、第3観点の空気調和装置であって、制御部が、第2弁の開度を第1開度にした後、四路切換弁の流路を除湿運転用の流路から暖房運転用の流路へ切り換え、その後に第2弁の開度を前記第2開度にする。
【0013】
この空気調和装置では、圧縮機を停止させ又は所定値以下の低周波数で回転させた後に、第2弁の開度を除湿運転時の開度よりも大きい第1開度にし、四路切換弁で流路を切り換え、その後に、第1開度よりも大きい第2開度にするので、圧縮機の停止後に除湿弁の開度を除湿運転時の開度のまま維持する従来タイプに比べて、「第2弁前後の圧力差」の低下が早くなる。その結果、四路切換弁の流路を切り換えるタイミングも早くすることができる。
【0014】
第5観点の空気調和装置は、第4観点の空気調和装置であって、制御部が、第2弁の開度を第2開度にした後に、四路切換弁の流路を暖房運転用の流路から冷房運転用の流路へ切り換える。
【0015】
この空気調和装置では、「第2弁前後の圧力差」が十分に小さくなってから、四路切換弁の流路を冷房運転用の流路へ切り換えるので、第2弁の開動作が当該圧力差によって阻害されることはない。
【0016】
第6観点の空気調和装置は、第4観点の空気調和装置であって、制御部が、圧縮機を停止させ又は所定値以下の低周波数で回転させた後に、3分以内に、前記四路切換弁の流路を暖房運転用の流路から冷房運転用の流路へ切り換える。
【0017】
この空気調和装置では、第2弁の開度を除湿運転時の開度よりも大きい第1開度にして、その後に第1開度よりも大きい第2開度にするので、圧縮機停止後3分以内という短時間で、「第2弁前後の圧力」を均圧化することができる。
【0018】
第7観点の空気調和装置は、第1観点から第6観点のいずれか1つの空気調和装置であって、第2弁が、電気入力を駆動力に変換して開度を調整する電動弁である。第2弁の開度範囲は、所定駆動力で開度調整が可能な第1範囲と、開度調整に前記所定駆動力よりも大きな駆動力が必要な第2範囲とを含む。
【0019】
第8観点の空気調和装置は、第1観点から第7観点のいずれか1つの空気調和装置であって、第2弁が第1機構と第2機構とを有する。第1機構は、最大で第1流量を流す第1流路を開閉する。第2機構は、第1流量よりも大きい第2流量を流す第2流路を開閉する。制御部は、第2弁の第1流路を第1開度にした後に、第2流路を第2開度にする。
【0020】
一般に、1つの流路を開閉して流量を制御する構成の電動弁では、小流量から大流量へ段階的に切り換えることができない。これに対して、流量が異なる2つの流路を切り換える構成の電動弁は、2つの流量特性を有しており、流れの特性を小流量特性から大流量特性へ段階的に切り換えることができる。
【0021】
したがって、圧縮機停止後の「第2弁前後の圧力差」が大きいときに第1機構を適用すれば、「第2弁前後の圧力差」に関係なく開度調整を可能とすることができる。一方、当該圧力差が所定値以下になれば一挙に冷媒を流して「第2弁前後の圧力差」をさらに小さくすればよいので、第2機構を適用すればよい。
【0022】
それゆえ、1つの流路を開閉して流量を制御する構成の電動弁に比べて、「第2弁前後の圧力差」に関係なく開度調整が可能な範囲を小さく設計することができる。その結果、駆動部定格を小さく、弁駆動ストロークを短くすることができるので、第2弁の小型化、低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本開示の一実施形態に係る空気調和装置の外観図である。
図2】空気調和装置の冷媒回路図である。
図3】空気調和機の構成を示すブロック図である。
図4】第2膨張弁の内部構造を示す断面図である。
図5A】第2膨張弁の第1機構によって流量調整しているときの第1弁体の位置を示す、当該第2膨張弁の部分断面図である。
図5B】第1弁ポートが全開となるまで、第1弁体の先端部が第1弁ポートから離間したときの第1弁体の位置を示す、当該第2膨張弁の部分断面図である。
図5C】第2弁ポートが全開となるまで、第2弁体のテーパ部が第2弁ポートから離間したときの第1弁体の位置を示す、当該第2膨張弁の部分断面図である。
図6】第2膨張弁への入力パルス数と流量との関係を示すグラフである。
図7】第3除湿運転(再熱除湿運転)から冷房運転に切り換えるまでのタイムチャートである。
図8】第3除湿運転(再熱除湿運転)から冷房運転に切り換えるまでの制御を示すフローチャートである。
図9】変形例に係る空気調和装置の第3除湿運転(再熱除湿運転)から冷房運転に切り換えるまでのタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(1)空気調和装置1の構成
図1は、本開示の一実施形態に係る空気調和装置1の外観図である。本実施形態に係る空気調和装置1は、図1に示すように、室外機2と室内機3とに分かれて構成されたセパレートタイプの空気調和装置である。室外機2および室内機3は、冷媒配管6、7によって接続されている。このような空気調和装置1は、冷房運転、暖房運転および除湿運転を行うことができる。空気調和装置1がどの種類の運転を行うかは、リモートコントローラ55を介してユーザーにより指示される。
【0025】
図2は、空気調和装置1の冷媒回路図である。図2において、空気調和装置1では、制御部50が、四路切換弁22を制御して冷媒回路10内の冷媒の循環方向を切り換える。
【0026】
(2)詳細構成
以下、図1および図2を参照しながら、空気調和装置1の主要な構成要素について説明する。
【0027】
(2-1)室外機2
室外機2は、室内機3に熱エネルギーを供給する熱源ユニットとして機能する。図2に示されているように、室外機2は、圧縮機21、四路切換弁22、室外熱交換器23、第1膨張弁24、アキュムレータ27、室外ファン28およびケーシング29(図1参照)を含む。
【0028】
(2-1-1)圧縮機21
圧縮機21は、ガス冷媒を吸入して圧縮して吐出する。圧縮機21は、モータの運転周波数をインバータにより調整することで運転容量を変更することができる。運転周波数が大きいほど圧縮機21の運転容量が大きくなる。
【0029】
(2-1-2)四路切換弁22
四路切換弁22は、冷媒回路10内の冷媒の循環方向を切り換える。四路切換弁22は、4つのポートを有している。
【0030】
四路切換弁22の第1ポートP1は、圧縮機21の吐出口に接続されている。四路切換弁22の第2ポートP2は、室外熱交換器23の第1出入口23xに接続されている。四路切換弁22の第3ポートP3は、アキュムレータ27に接続されている。四路切換弁22の第4ポートP4は、室内熱交換器30の第2出入口30yに接続されている。
【0031】
(2-1-3)室外熱交換器23
室外熱交換器23は、一方向に積層された複数のフィンと、該フィンを貫通する複数の伝熱管とにより構成されている。
【0032】
室外熱交換器23は、第2出入口23yを第1膨張弁24の第1出入口24xに接続している。室外熱交換器23は、第1出入口23xまたは第2出入口23yから内部に流入した冷媒と、室外の空気との間で熱交換を行う。
【0033】
(2-1-4)第1膨張弁24
第1膨張弁24は、「電動弁」とも呼ばれる電子膨張弁である。第1膨張弁24の第2出入口24yは、室内熱交換器30の第1出入口30xに接続されている。
【0034】
(2-1-5)アキュムレータ27
アキュムレータ27は、四路切換弁22の第3ポートP3と圧縮機21の吸入口との間に接続されている。アキュムレータ27では、圧縮機21に吸入される冷媒の気液分離が行われる。
【0035】
(2-1-6)室外ファン28
室外ファン28は、例えばプロペラファンである。室外ファン28はモータによって駆動される。室外ファン28の回転数は、インバータ装置によって可変である。
【0036】
(2-1-7)第1制御部52
図3は、空気調和装置1の構成を示すブロック図である。図3において、室外機2の内部には、制御部50の構成要素である第1制御部52が配置されている。
【0037】
第1制御部52は、プロセッサおよびメモリを含む。プロセッサは、メモリに記憶されている各運転の制御プログラムを読み取り、各機器に必要な指令を出力する。メモリは、各運転の制御プログラムの他、第2制御部53からの指示値を随時記憶する。プロセッサは、メモリに記憶されたデータまたは要求値を読み取り、必要な制御値を演算する。さらに、プロセッサは、内部にタイマを有している。プロセッサとして、CPUまたはGPUが採用される。上記の記載は、一例であって、上記記載内容に限定されるものではない。
【0038】
第1制御部52は、具体的には、圧縮機21のモータの運転周波数、四路切換弁22の切り換え、第1膨張弁24の開度および室外ファン28の回転数を制御する。
【0039】
(2-1-8)ケーシング29
ケーシング29は、室外の空気を吸い込む吸込口(図示せず)と、熱交換後の空気を吹き出す吹出口29bとを有している。
【0040】
圧縮機21、四路切換弁22、室外熱交換器23、第1膨張弁24、アキュムレータ27、室外ファン28および第1制御部52は、ケーシング29の中に収容されている。
【0041】
(2-2)室内機3
図2に示すように、室内機3は、室内熱交換器30、第2膨張弁34、室内ファン38およびケーシング39(図1参照)を含む。
【0042】
(2-2-1)室内熱交換器30
室内熱交換器30は、室内機3内部に取り込まれた室内空気と、冷媒回路10内を循環する冷媒との間で熱交換を行う。室内熱交換器30は、第1熱交換部31および第2熱交換部32を有している。
【0043】
第1熱交換部31の一端は室内熱交換器30の第1出入口30xであり、第1膨張弁24に接続されている。第1熱交換部31は、冷房運転時には蒸発器として機能し、暖房運転時および再熱除湿運転時には凝縮器として機能する。
【0044】
第2熱交換部32の一端は室内熱交換器30の第2出入口30yであり、四路切換弁22の第4ポートP4に接続されている。第2熱交換部32は、冷房運転時および再熱除湿運転時には蒸発器として機能し、暖房運転時には凝縮器として機能する。
【0045】
第1熱交換部31および第2熱交換部32それぞれは、室外熱交換器23と同様、一方向に積層された複数のフィンと、該フィンを貫通する複数の伝熱管とにより構成されている。
【0046】
室内熱交換器30の下には、ドレンパン(図示せず)が配置されており、室内熱交換器30で発生した結露は、ドレンパンで受け止められる。
【0047】
(2-2-2)第2膨張弁34
第2膨張弁34は、「電動弁」と呼ばれる電子膨張弁である。第2膨張弁34は、室内熱交換器30の第1熱交換部31と第2熱交換部32とを接続する。
【0048】
第2膨張弁34は、冷房運転、暖房運転、および通常の除湿運転時には全開となり減圧することなく冷媒を流す。第2膨張弁34は、再熱除湿時には弁開度を絞ることによって第1熱交換部31から第2熱交換部32へ流れる冷媒を減圧する。第2膨張弁34の構成は、後半で説明する。
【0049】
(2-2-3)室内ファン38
室内ファン38は、例えば、クロスフローファンである。吸込口39aから吹出口39bに向う空気流路において、室内熱交換器30の下流に配置されている。
【0050】
(2-2-4)第2制御部53
図3に示すように、室内機3の内部には、制御部50の構成要素である第2制御部53が配置されている。
【0051】
第1制御部52と同様に、第2制御部53は、プロセッサおよびメモリを含む。プロセッサは、メモリに記憶されている各運転の制御プログラムを読み取り、各機器に必要な指令を出力する。メモリは、各運転の制御プログラムの他、第1制御部52からの指示値を随時記憶する。プロセッサは、メモリに記憶されたデータまたは要求値を読み取り、必要な制御値を演算する。さらに、プロセッサは、内部にタイマを有している。プロセッサとして、CPUまたはGPUが採用される。上記の記載は、一例であって、上記記載内容に限定されるものではない。
【0052】
第2制御部53は、具体的には、室内ファン38の回転数および第2膨張弁34の開度を制御する。
【0053】
(2-2-5)ケーシング39
ケーシング39は、上部に吸込口39aを有し、下部に吹出口39bを有している。室内熱交換器30、第2膨張弁34、室内ファン38および第2制御部53は、ケーシング39の中に収容されている。
【0054】
(3)空気調和装置1の動作
(3-1)冷房運転
冷房運転の開始前に、制御部50には、例えば、リモートコントローラ55から冷房運転が指示されるとともに目標温度が指示される。冷房運転時には、制御部50は、第2膨張弁34を全開にし、四路切換弁22を、図2において実線で示されている状態に切り換える。
【0055】
冷房運転時には、四路切換弁22は、第1ポートP1と第2ポートP2の間で冷媒を流し、第3ポートP3と第4ポートP4の間で冷媒を流す。冷房運転時の四路切換弁22は、圧縮機21から吐出される高温高圧のガス冷媒を室外熱交換器23に流す。
【0056】
室外熱交換器23では、冷媒と、室外ファン28により供給される室外の空気との間で熱交換が行われる。室外熱交換器23で放熱した冷媒は、第1膨張弁24で減圧されて室内熱交換器30に流れ込む。
【0057】
室内熱交換器30では、冷媒と室内ファン38により供給される室内の空気との間で熱交換が行われる。室内熱交換器30での熱交換により吸熱した冷媒は、四路切換弁22およびアキュムレータ27を経由して、圧縮機21に吸入される。
【0058】
室内熱交換器30で冷やされた空気が室内機3から吹出されることで、室内の冷房が行われる。
【0059】
この空気調和装置1では、冷房運転においては、室内熱交換器30が冷媒の蒸発器として機能し、室外熱交換器23が冷媒の凝縮器として機能する。
【0060】
(3-2)暖房運転
暖房運転の開始前に、制御部50には、例えば、リモートコントローラ55から暖房運転が指示されるとともに目標温度が指示される。暖房運転時には、制御部50は、第2膨張弁34を全開にし、四路切換弁22を、図2において破線で示されている状態に切り換える。
【0061】
暖房運転時に、四路切換弁22は、第1ポートP1と第4ポートP4の間で冷媒を流し、第2ポートP2と第3ポートP3の間で冷媒を流す。暖房運転時の四路切換弁22は、圧縮機21から吐出される高温高圧のガス冷媒を室内熱交換器30に流す。
【0062】
室内熱交換器30では、冷媒と、室内ファン38により供給される室内の空気との間で熱交換が行われる。室内熱交換器30で放熱した冷媒は、第1膨張弁24で減圧されて室外熱交換器23に流れ込む。
【0063】
室外熱交換器23では、冷媒と室外ファン28により供給される室外の空気との間で熱交換が行われる。室外熱交換器23での熱交換により吸熱した冷媒は、四路切換弁22およびアキュムレータ27を経由して、圧縮機21に吸入される。
【0064】
室内熱交換器30で温められた空気が室内機3から室内に吹出されることで、室内の暖房が行われる。
【0065】
この空気調和装置1では、暖房運転においては、室内熱交換器30が冷媒の凝縮器として機能し、室外熱交換器23が冷媒の蒸発器として機能する。
【0066】
(3-3)除湿運転
除湿運転の開始前に、制御部50には、例えば、リモートコントローラ55から除湿運転が指示される。除湿運転時には、制御部50は、四路切換弁22を、図2において実線で示されている状態に切り換える。
【0067】
除湿運転時には、四路切換弁22は、第1ポートP1と第2ポートP2の間で冷媒を流し、第3ポートP3と第4ポートP4の間で冷媒を流す。そのため、除湿運転時と冷房運転時とでは、冷媒回路10の冷媒の流れる向きは同じになる。
【0068】
除湿運転には第1除湿運転、第2除湿運転および第3除湿運転があり、制御部50には、リモートコントローラ55から、第1除湿運転、第2除湿運転および第3除湿運転の中のどのモードを選択したかの情報が送信される。
【0069】
(3-3-1)第1除湿運転
第1除湿運転では、制御部50は、第2膨張弁34を全開にし、圧縮機21の運転周波数と第1膨張弁24の開度とを調整する。第1除湿運転では、室内熱交換器30の実質的に全部を蒸発域とする。
【0070】
これにより、第1除湿運転は、室内温度を変化させるための能力である顕熱能力が高くなる。
【0071】
ここで、室内熱交換器30の実質的に全部を蒸発域にするとは、室内熱交換器30の全部を蒸発域にするときだけでなく、室内熱交換器30において一部を除いた部分だけを蒸発域にするときも含む。
【0072】
この一部(例えば、室内熱交換器30の全容積の1/3以下の部分)だけが蒸発域とならないときとしては、例えば、室内環境などによって、室内熱交換器30の冷媒出口近傍の部分が過熱域となるときなどがある。
【0073】
(3-3-2)第2除湿運転
第2除湿運転では、制御部50は、第2膨張弁34を全開にし、圧縮機21の運転周波数と第1膨張弁24の開度とを調整する。
【0074】
第2除湿運転では、第1熱交換部31の風上側の少なくとも一部を蒸発域にする一方、第1熱交換部31の残りの部分および第2熱交換部32を過熱域にする。
【0075】
制御部50は、第2除湿運転中、蒸発域が所定容積(例えば、室内熱交換器30の全容積の2/3)以下となるように、圧縮機21および第1膨張弁24を制御する。このとき、第1膨張弁24の開度は、通常、第1除湿運転中の第1膨張弁24の開度よりも小さくなる。
【0076】
第2除湿運転は、第1除湿運転によりも顕熱能力が低くなるので、室内の熱負荷が高くも低くもないとき、室温の低下を抑制しつつ、室内の除湿を行える。
【0077】
(3-3-3)第3除湿運転(再熱除湿運転)
第3除湿運転では、制御部50は、第2膨張弁34の開度を調整し、圧縮機21の運転周波数を調整すると共に、第1膨張弁24の開度を全開にする。
【0078】
第3除湿運転では、第2膨張弁34によって減圧するので、第1熱交換部31は凝縮器として機能し、第2熱交換部32は蒸発器として機能する。それゆえ、第2除湿運転よりも、室温の低下を抑制しつつ、室内の除湿を行うことができるので、「再熱除湿運転」とも呼ばれる。
【0079】
具体的には、制御部50は、第2熱交換部32内を流れる冷媒の温度が所定範囲内に保たれるように、第2膨張弁34の開度を調整する。ここで、所定範囲としては、第2熱交換部32の表面温度が露点温度以下となるような温度が挙げられる。
【0080】
第3除湿運転時の四路切換弁22は、圧縮機21から吐出される高温高圧のガス冷媒を室外熱交換器23および第1熱交換部31に流す。
【0081】
室外熱交換器23では、冷媒と、室外ファン28により供給される室外の空気との間で熱交換が行われる。第1熱交換部31では、冷媒と、室内ファン38により供給される室内の空気との間で熱交換が行われる。
【0082】
第1熱交換部31に流入してきた冷媒は、室内空気に放熱しながら凝縮した後、第2膨張弁34に流入し減圧される。第2膨張弁34で減圧された冷媒は、第2熱交換部32に流入する。
【0083】
第2熱交換部32は、蒸発器として機能しているため、冷媒は室内空気の熱を吸収しながら蒸発する。第2熱交換部32の表面温度が露点温度以下となる範囲を満たすような値となっており、室内空気は、第1熱交換部31において温められた後、第2熱交換部32によって除湿される。
【0084】
第2熱交換部32での熱交換により吸熱した冷媒は、四路切換弁22およびアキュムレータ27を経由して、圧縮機21に吸入される。
【0085】
室内熱交換器30で加温除湿された空気が室内機3から吹出されることで、室内の除湿が行われる。
【0086】
(4)第2膨張弁34の構成
図4は、第2膨張弁34の内部構造を示す断面図である。図4において、第2膨張弁34は、弁の開閉機構である第1機構41および第2機構42、それらの機構を駆動する駆動部44、およびそれらの機構を収容するハウジング45を含む。
【0087】
(4-1)第1機構41
第1機構41は、第1弁座41aおよび第1弁体41bを含む。第1弁座41aは、直径d1の第1の貫通孔である第1弁ポート411を有している。
【0088】
第1弁体41bは、円柱状の部材であり、三角錐または半球体を成す先端部412を有している。
【0089】
第1弁体41bの先端部412が、第1弁座41aの第1弁ポート411を開閉する。第1弁体41bには、先端部412から離れる方向の所定位置に、他の部位の外径よりも大きい外径を有するフランジ413が設けられている。また、第1弁体41bは、フランジ413よりもさらに先端部412から離れる方向の所定領域に、雄ネジ部414が設けられている。
【0090】
(4-2)第2機構42
第2機構42は、第2弁座42aおよび第2弁体42bを含む。第2弁座42aは、直径d2の第2の貫通孔である第2弁ポート421を有している。第2弁ポート421は、冷媒の出入口であり、銅管CT2が接続されている。
【0091】
第2弁体42bは、中空円筒状の部材であり、2つの底面壁の一方の底面壁が第1機構41の第1弁座41aを兼ねている。
【0092】
また、第1機構41の第1弁座41aと第2弁体42bの側壁とを繋ぐ角にはテーパ部422が設けられている。第2弁体42bのテーパ部422が、第2弁座42aの第2弁ポート421を開閉する。
【0093】
また、第2弁体42bは、第1弁座41aが設けられている底面壁と対向するもう一つの底面壁には、第3貫通孔423が設けられている。第3貫通孔423は第1弁体41bを挿入させて、第1弁体41bの外周面を支持する軸受けとして機能する。
【0094】
さらに、第2弁体42bの側壁には第4貫通孔424が設けられている。冷媒は、第1弁ポート411または第4貫通孔424を介して第2弁体42bの内部に流入し、または第1弁ポート411または第4貫通孔424を介して第2弁体42bの内部から流出する。
【0095】
(4-3)ガイド43
ガイド43は、内部が中空で、一端が開放端である筒状の部材であり、第2弁体42bの上部外周面を所定のクリアランスを保って覆う。第2弁体42bがガイド43の内面に沿って摺動しながらガイド43の内部を移動することもできる。
【0096】
ガイド43の開放端と対向する端部には、第1弁体41bの雄ネジ部414と螺合する雌ネジ部431が設けられている。
【0097】
それゆえ、本実施形態では、図4において、第1弁体41bがR方向に回転することによって、先端部412が第1弁ポート411を閉じる方向に進む。
【0098】
(4-4)駆動部44
駆動部44は、棒状の第1弁体41bと同軸で繋がるロータ44aと、励磁されることによってロータ44aを回転させるコイル44bとによってステッピングモータを構成している。
【0099】
ロータ44aはハウジング45の内部に配置され、コイル44bはハウジング45の外側でロータ44aと対向するように配置されている。ロータ44aが回転することによって、ロータ44aに連結された第1弁体41bも回転する。
【0100】
(4-5)ハウジング45
ハウジング45は、中空円筒状の容器であり、第1機構41、第2機構42、ガイド43、および駆動部44のロータ44aを収容する。
【0101】
図4に示すように、ハウジング45の2つの底面壁の一方の底面壁は、第2機構42の第2弁座42aを兼ねている。
【0102】
また、ハウジング45の側壁には、銅管CT1が貫通しており、銅管CT1を介してハウジング45内に冷媒を導く、或いはハウジング45内の冷媒を外部へ導く。
【0103】
(4-6)押えバネ46
押えバネ46は、ガイド43内にその内周面に沿うように配置されている。押えバネ46は、ガイド43の内部端面と第2弁体42bの端面とによって挟まれ、圧縮されている。それゆえ、第2弁体42bは、テーパ部422が第2弁ポート421を閉じる方向に押されている。
【0104】
(5)第2膨張弁34の開度調整
本実施形態では、第1膨張弁24には、1つの流路を開閉して流量を制御する一般的な電子膨張弁を採用している。
【0105】
一方、第2膨張弁34には、小流量から大流量へ段階的に切り換えることができるように、流量特性を小流量特性から大流量特性へ段階的に切り換えることができる電子膨張弁を採用している。
【0106】
例えば、圧縮機21が停止した後の第2膨張弁34前後の圧力差が大きいときには、小流量特性を適用して、第2膨張弁34前後の圧力差に関係なく開度調整を可能とすることができる。
【0107】
「第2膨張弁34前後の圧力差」とは、第2膨張弁34からみて第1熱交換部31側の圧力と、第2膨張弁34からみて第2熱交換部32側の圧力との差を意味する。
【0108】
一方、当該圧力差が所定値以下になれば大流量特性を適用して一挙に冷媒を流し、第2膨張弁34前後の圧力差をさらに小さくすることができる。
【0109】
以下、図5A図5Bおよび図5Cを参照しながら第2膨張弁34の流量特性について説明する。
【0110】
図5Aは、第2膨張弁34の第1機構41によって流量調整しているときの第1弁体41bの位置を示す、当該第2膨張弁34の部分断面図である。
【0111】
図5Aにおいて、第2弁座42aの第2弁ポート421は、第2弁体42bのテーパ部422によって完全に閉じられている。
【0112】
第1弁座41aの第1弁ポート411は、第1弁体41bの先端部412との間に隙間があり、第1熱交換部31から第2熱交換部32に向かう冷媒がその隙間を通過する際に、第2熱交換部32で蒸発することができる圧力にまで減圧される。
【0113】
図5Bは、第1弁ポート411が全開となるまで、第1弁体41bの先端部412が第1弁ポート411から離間したときの第1弁体41bの位置を示す、当該第2膨張弁34の部分断面図である。
【0114】
図5Bにおいて、第1弁体41bは、フランジ413が第2弁体42bに当たる直前の位置で停止している。第1熱交換部31から第2熱交換部32に向かう冷媒は、第1弁体41bの先端部412が第1弁ポート411にまったく入り込んでいないので、第1熱交換部31から第2熱交換部32に向かう冷媒が第1弁ポート411を通過する際に減圧される程度は、図5Aの状態に比べて少ない。
【0115】
本実施形態では、第1弁体41bの先端部412が第1弁ポート411を閉塞した位置を原点位置として、駆動部44のコイル44bに所定パルス(例えば、150パルス程度)を入力すれば、図5Bにおける位置まで移動することができる。
【0116】
図5Cは、第2弁ポート421が全開となるまで、第2弁体42bのテーパ部422が第2弁ポート421から離間したときの第1弁体41bおよび第2弁体42bの位置を示す、当該第2膨張弁34の部分断面図である。
【0117】
第2膨張弁34を図5Cの状態にするには、第1弁体41bを図5Bの状態からL方向にさらに回転させて、フランジ413によって第2弁体42bを第2弁ポート421から離れる方向に移動させれば、実現できる。
【0118】
例えば、銅管CT1側が高圧である場合、第2弁体42bには押えバネ46によるバネ力に加えて、高低圧差による力が第2弁ポート421を閉じる方向に作用しているので、第2弁体42bを第2弁ポート421から離れる方向に移動させる力は、第1弁体41bを第1弁ポート411から離れる方向に移動させる力よりも大きくなる。
【0119】
逆に、銅管CT2側を高圧にすると、押えバネ46によるバネ力よりも高低圧差による力が大きいので、銅管CT1が高圧である場合に比べて、小さい力で第2弁体42bを第2弁ポート421から離れる方向に移動させることができる。
【0120】
図6は、第2膨張弁34への入力パルス数と流量との関係を示すグラフである。図6において、パルス数0の位置は第1弁ポート411および第2弁ポート421が閉塞されている状態である。
【0121】
図6に記載の「第1範囲」は、第2膨張弁34が第1弁ポート411の開度を調整して流量を制御する範囲である。「第2範囲」は、第2膨張弁34が第2弁ポート421の開度を調整して流量を制御する範囲である。
【0122】
図6に示すように、第2範囲では、第1範囲よりも大きな流量を制御することができるので、制御部50は、第2膨張弁34の流量特性を小流量特性から大流量特性へ段階的に切り換えることができる。
【0123】
(6)均圧制御
空気調和装置の技術分野における均圧制御とは、一般的には、暖房運転サイクルから冷房運転サイクルへ切り換える前に、或いは冷房運転サイクルから暖房運転サイクルに切り換える前に、圧縮機を停止させて、所定時間の待機を行い、この間に冷媒回路内の高低差圧を「0」に近い状態まで低減する制御である。
【0124】
しかしながら、本実施形態に係る空気調和装置1では、同じ冷房運転サイクルである第3除湿運転(再熱除湿運転)から冷房運転へ切り換える前にも均圧制御を行っている。
【0125】
第3除湿運転では、室外熱交換器23と室内熱交換器30の第1熱交換部31とが凝縮器として機能し、室内熱交換器30の第2熱交換部32が蒸発器として機能するので、第2膨張弁34の前後で高低圧差が生じる。
【0126】
一方、冷房運転では、室外熱交換器23が凝縮器として機能し、室内熱交換器30の第1熱交換部31および第2熱交換部32がともに蒸発器として機能する必要があるので、第3除湿運転から冷房運転へ切り換える前に、冷媒回路10内の高低圧差を解消するため、暖房運転サイクルに切り換えた上で、第2膨張弁34を全開にする必要がある。但し、一挙に第2膨張弁34を全開にすると、第2膨張弁34から異音が発生することが、出願人により確認されている。
【0127】
そこで、本実施形態に係る空気調和装置1では、第3除湿運転サイクルから暖房運転サイクルに切り換える前の第2膨張弁の開度と、暖房サイクルから冷房運転サイクルに切り換える前の第2膨張弁34の開度を異ならせる制御を行っている。
【0128】
図7は、第3除湿運転(再熱除湿運転)から冷房運転に切り換えるまでのタイムチャートである。
【0129】
図8は、第3除湿運転(再熱除湿運転)から冷房運転に切り換えるまでの制御を示すフローチャートである。
【0130】
図7において、第3除湿運転(再熱除湿運転)中、圧縮機21は運転周波数f1で運転され、第1膨張弁24は全開状態である。第1膨張弁24は、全閉状態から第1膨張弁24のコイルに500パルスを入力することによって全開状態となるように構成されている。第2膨張弁34では、第1弁ポート411の開度が、図5Aに示すような開度であって、全閉状態からコイル44bにxパルスが入力されたときの開度が維持されている。xパルスは、150パルス未満である。
【0131】
(ステップS1)
図8のステップS1において、制御部50は、運転モードを冷房運転へ切り換える指令の有無を判定する。切換指令の有無は、ユーザーがリモートコントローラ55を介して運転モードを冷房運転に切り換えたか否かで判断する。制御部50は、冷房運転への切換指令が有ると判断したときは、ステップS2へ進む。
【0132】
(ステップS2)
制御部50は、図7に示すように、圧縮機21を停止して計時を開始し、第1膨張弁24は全開状態のまま維持し、第2膨張弁34の第1弁ポート411を全開にする。第2膨張弁34の第1弁ポート411は、全閉状態からコイル44bに150パルスが入力されると全開状態となるので、制御部50は、コイル44bに「150-x」パルスを入力すればよい。
【0133】
第1弁ポート411の全開状態は、圧縮機21が停止してからt1以上維持されなければならない。これは、第2膨張弁34前後の圧力差を圧縮機21が停止した直後よりも小さくするためである。t1は60秒以上が望ましい。
【0134】
(ステップS3)
制御部50は、圧縮機21が停止してからの経過時間tがt1に到達したか否かを判定する。制御部50は、経過時間tがt1に到達したと判断したとき、ステップS4へ進む。
【0135】
(ステップS4)
制御部50は、四路切換弁22の状態を図2の点線で示された状態に切り換えて、暖房運転サイクルとする。この動作によって、第2膨張弁34から第2熱交換部32を経て圧縮機21に到る区間の圧力が、四路切換弁22の第2ポートP2から室外熱交換器23、第1膨張弁24および第1熱交換部31を経て第2膨張弁34に到る区間の圧力とほぼ同じになる。
【0136】
(ステップS5)
制御部50は、圧縮機21が停止してからの経過時間tがt2に到達したか否かを判定する。制御部50は、経過時間tがt2に到達したと判断したとき、ステップS6へ進む。
【0137】
(ステップS6)
制御部50は、図7に示すように、第2膨張弁34の第2弁ポート421を全開にする。四路切換弁22が切り換えられる前に、第1弁ポート411の開度を全開にしていたので、第2膨張弁34前後の圧力差は、圧縮機21が停止した直後よりも小さくなっており、第2弁ポート421を閉塞していた第2弁体42bは第2膨張弁34前後の圧力差によって動作が阻害されることはなく、押えバネ46の力に抗して移動する。
【0138】
第2膨張弁34の第2弁ポート421は、全閉状態からコイル44bに500パルスが入力されると全開状態となるので、制御部50は、コイル44bに対して、500パルスから150パルスを差し引いた350パルスを入力すればよい。
【0139】
(ステップS7)
制御部50は、圧縮機21が停止してからの経過時間tがt3に到達したか否かを判定する。制御部50は、経過時間tがt3に到達したと判断したとき、ステップS8へ進む。
【0140】
(ステップS8)
制御部50は、第1膨張弁24の開度を全閉にした後、開度を初期開度にする。第1膨張弁24は、直前まで全閉状態からコイルに500パルス入力した全開状態にあったので、全閉状態にするためにコイルへは逆方向に500パルス以上入力されればよい。
【0141】
そして、第1膨張弁24の開度を全閉にした後、コイルにyパルスが入力されれば初期開度となる。
【0142】
(ステップS9)
制御部50は、圧縮機21が停止してからの経過時間tがt4に到達したか否かを判定する。制御部50は、経過時間tがt4に到達したと判断したとき、ステップS10へ進む。t4は、3分を超えない。
【0143】
(ステップS10)
制御部50は、四路切換弁22の状態を図2の実線で示された状態に切り換えて、冷房運転サイクルとする。それと同時に、圧縮機21を起動する。
【0144】
既に、第2膨張弁34から第2熱交換部32を経て圧縮機21に到る区間の圧力が、四路切換弁22の第2ポートP2から室外熱交換器23、第1膨張弁24および第1熱交換部31を経て第2膨張弁34に到る区間の圧力とほぼ同じになっているので、圧縮機21は安全に起動することができる。
【0145】
(7)特徴
(7-1)
空気調和装置1では、圧縮機21の停止後に、第1弁ポート411を全開にして第2膨張弁34の開度を第3除湿運転(再熱除湿運転)時の開度よりも大きい開度にした後に、第1弁ポート411よりも大きい第2弁ポート421を全開にするので、第2膨張弁34前後の圧力差の低下が促進される。それゆえ第3除湿運転後、一挙に第2弁ポート421を全開まで開ける場合に比べて第2膨張弁34からの音の発生を抑制することができる。
【0146】
(7-2)
空気調和装置1では、第2膨張弁34の第1弁ポート411を、所定時間(60秒)以上、全開状態に維持することによって、第2膨張弁34前後の圧力差の低下が促進される。それゆえ第3除湿運転後、一挙に第2弁ポート421を全開にする場合に比べて第2膨張弁34からの音の発生を抑制することができる。
【0147】
また、当該圧力差の低下が促進されることによって、四路切換弁22を暖房サイクルの流路に切り換えるタイミングを早めることもできる。
【0148】
(7-3)
空気調和装置1では、制御部50が、圧縮機21を停止させ又は所定値以下の低周波数で回転させ、四路切換弁22の流路を除湿運転サイクル用(冷房運転サイクル用)の流路から暖房運転サイクル用の流路へ切り換える。
【0149】
(7-4)
空気調和装置1では、圧縮機21を停止させ又は所定値以下の低周波数で回転させた後に、第2膨張弁34の第1弁ポート411を全開にして第3除湿運転時の開度よりも大きくした後に、第1弁ポート411よりも大きい第2弁ポート421を全開にするので、圧縮機21の停止後に第2膨張弁34の開度を第3除湿運転時の開度のまま維持するタイプに比べて、第2膨張弁34前後の圧力差の低下が早くなる。その結果、四路切換弁22の流路を暖房運転サイクル用の流路へ切り換えるタイミングも早くすることができる。
【0150】
(7-5)
空気調和装置1では、第2膨張弁34前後の圧力差が十分に小さくなってから、四路切換弁22の流路を暖房運転サイクル用の流路から冷房運転サイクル用の流路へ切り換えるので、第2膨張弁34の開動作が当該圧力差によって阻害されることはない。
【0151】
(7-6)
空気調和装置1では、第2膨張弁34の第1弁ポート411を全開にして第3除湿運転時の開度よりも大きくして、その後に第1弁ポート411よりも大きい第2弁ポート421を全開にするので、圧縮機21が停止した後3分以内という短時間で、第2膨張弁34前後の圧力を均圧化することができる。
【0152】
(7-7)
空気調和装置1では、第2膨張弁34が、電気入力を駆動力に変換して第1弁ポート411および第2弁ポート421の開度を調整する電子膨張弁である。第2膨張弁34の開度範囲は、所定駆動力以下で開度調整が可能な第1範囲と、開度調整に前記所定駆動力よりも大きな駆動力が必要な第2範囲とを含む。
【0153】
(7-8)
空気調和装置1では、第2膨張弁34が第1機構41と第2機構42とを有する。第1機構41は、第1弁ポート411を開閉する。第2機構42は、第1弁ポート411よりも大きい第2弁ポート421を開閉する。制御部50は、第2膨張弁34の第1弁ポート411を全開にした後に、第2弁ポート421を全開にする。
【0154】
圧縮機21が停止した後の「第2膨張弁34前後の圧力差」が大きいときに第1機構41によって第1弁ポート411の開度を、「第2膨張弁34前後の圧力差」に関係なく調整することができる。当該圧力差が所定値以下になれば一挙に冷媒を流して「第2膨張弁34前後の圧力差」をさらに小さくすればよいので、第2機構42を適用することができる。
【0155】
それゆえ、1つの流路を開閉して流量を制御する構成の電子電膨張弁に比べて、「第2膨張弁34前後の圧力差」に関係なく開度調整が可能な範囲を小さく設計することができる。その結果、駆動部定格を小さく、弁駆動ストロークを短くすることができるので、第2膨張弁34の小型化、低コスト化を図ることができる。
【0156】
(8)変形例
図9は、変形例に係る空気調和装置1の第3除湿運転(再熱除湿運転)から冷房運転に切り換えるまでのタイムチャートである。
【0157】
上記実施形態では、第3除湿運転(再熱除湿運転)から冷房運転に切り換える前の均圧制御において、圧縮機21を停止させている。
【0158】
しかし、図9に示すように、圧縮機21を停止させるのではなく、運転周波数f0まで下げて運転を継続させても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0159】
以上、本開示の実施形態を説明したが、特許請求の範囲に記載された本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0160】
1 空気調和装置
2 室外機(熱源ユニット)
3 室内機(利用ユニット)
21 圧縮機
22 四路切換弁
23 室外熱交換器(第1熱交換器)
24 第1膨張弁(第1弁)
30 室内熱交換器(第2熱交換器)
31 第1熱交換部(第2熱交換器)
32 第2熱交換部(第2熱交換器)
34 第2膨張弁(第2弁)
41 第1機構
42 第2機構
50 制御部
52 第1制御部(制御部)
53 第2制御部(制御部)
411 第1弁ポート(第1流路)
421 第2弁ポート(第2流路)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0161】
【文献】特開2006-177599号公報
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7
図8
図9