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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】空調室内機
(51)【国際特許分類】
   F24F 1/0068 20190101AFI20240828BHJP
   F28D 1/047 20060101ALI20240828BHJP
【FI】
F24F1/0068
F28D1/047 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021162280
(22)【出願日】2021-09-30
(65)【公開番号】P2023051523
(43)【公開日】2023-04-11
【審査請求日】2022-07-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】谷口 真一
(72)【発明者】
【氏名】中野 寛之
【審査官】石田 佳久
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-140998(JP,A)
【文献】特開平05-164349(JP,A)
【文献】特開2013-108719(JP,A)
【文献】特開2012-042169(JP,A)
【文献】特開2019-124440(JP,A)
【文献】特開平06-003075(JP,A)
【文献】韓国登録実用新案第20-0337544(KR,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 1/0068
F28D 1/047
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム製の伝熱管(21)を有する熱交換器(20)と、
前記伝熱管に接続され、前記熱交換器で熱交換される冷媒が流れる、アルミニウム製の冷媒配管(30)と、
前記冷媒配管の表面に沿って延びる、アルミニウム合金からなる第1部材と、
を備え、
前記冷媒配管は、前記伝熱管に接続されている第1部分(Pa1)と、前記第1部分に接続されて曲がっている第2部分(Pa2)と、前記第2部分に接続され前記冷媒配管の端部まで延びている第3部分(Pa3)とを有し、
前記第1部材は、前記第2部分の周囲を覆っている、空調室内機(10)。
【請求項2】
前記第1部材は、前記第2部分に配置されているリング部(51)を含み、前記リング部がリング形状を保持しつつ伸縮可能な伸縮構造を有する、
請求項1に記載の空調室内機(10)。
【請求項3】
前記第1部材は、アルミニウムよりも貴な電位の金属で構成され、
前記第1部材または前記第2部分は、電蝕防止塗装または絶縁部材で被覆されている、
請求項1または請求項2に記載の空調室内機(10)。
【請求項4】
前記冷媒配管は、液管(32)と前記液管を流れる冷媒よりも多くのガス成分を含む冷媒が流れるガス管(31)とを含み、
前記第1部材は、前記ガス管のみに配置されている、
請求項1からのいずれか一項に記載の空調室内機(10)。
【請求項5】
前記第1部材の内径と前記第2部分の外径との差が、0.1mm以上0.7mm以下である、
請求項1からのいずれか一項に記載の空調室内機(10)。
【請求項6】
前記冷媒配管の前記第3部分は、直管であり、
前記第1部材は、前記第3部分の長手方向の半分以上に渡って周囲を覆っている、
請求項1からのいずれか一項に記載の空調室内機(10)。
【請求項7】
室外に配置される室外機への連絡用の連絡配管に接続するための接続部(41,42)を備え、
前記第3部分は、前記接続部に直接または別部材(43,44)を介して間接的に結ばれている、
請求項1からのいずれか一項に記載の空調室内機(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
熱交換器にアルミニウム製の伝熱管を有する空調室内機に関する。
【背景技術】
【0002】
空調室内機は、冷媒の熱交換を行う熱交換器を備えている。空調室内機は、例えば、室外機と接続されて空気調和機を構成する。空調室内機と室外機との間で冷媒を循環させるために、空調室内機と室外機は、連絡配管で接続されている。空調室内機を据え付ける場合、連絡配管と空調室内機との接続作業を行い易くするため、空調室内機には、空調室内機内の熱交換器の伝熱管と連絡配管との接続を補助するための冷媒配管が設けられている。
【0003】
空調室内機の軽量化及び低コスト化を目的として、特許文献1(特開2015-140998号公報)に記載されているように、空調室内機の熱交換器の伝熱管及び冷媒配管の多くの部分または全体の材質がアルミニウムまたはアルミニウム合金に置き換えられてきている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
空調室内機の冷媒配管は、空調室内機の据え付け時に適切に冷媒配管と熱交換器の伝熱管とを接続するために、空調室内機の据え付け位置と連絡配管の設置位置との関係に合わせて曲げられる。空調室内機の据え付け時の適切な位置合せのために、冷媒配管が複数回曲げられることがある。アルミニウム製の冷媒配管は、曲げられる回数が多くなると、潰れて断面形状が円環から扁平な形状に変形し易くなる。
【0005】
このようなアルミニウム製の冷媒配管を備える空調室内機には、据え付け時の冷媒配管の曲げ作業により冷媒配管に生じる潰れを抑制するという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1観点の空調室内機は、アルミニウム製の伝熱管を有する熱交換器と、アルミニウム製の冷媒配管と、金属製の第1部材とを備えている。アルミニウム製の冷媒配管は、伝熱管に接続され、熱交換器で熱交換される冷媒が流れる。金属製の第1部材は、冷媒配管の表面に沿って延びる。冷媒配管は、伝熱管に接続されている第1部分と、第1部分に接続されて曲がっている第2部分と、第2部分に接続され冷媒配管の端部まで延びている第3部分とを有し、第1部材は、第2部分の周囲を覆っている。
【0007】
第1観点の空調室内機では、冷媒配管の第2部分が断面円形以外の形に変形するのを第1部材で防ぐことによって、空調室内機の現地据え付け時に行う冷媒配管を曲げる作業によって第2部分が潰れるのを防止することができる。
【0008】
第2観点の空調室内機は、第1観点の空調室内機であって、第1部材は、第2部分に配置されているリング部を含む。第1部材は、リング部がリング形状を保持しつつ伸縮可能な伸縮構造を有する。
【0009】
第2観点の空調室内機では、第1部材の伸縮後も複数のリング部がリング形状を保持することから、冷媒配管を曲げる作業時の第1部材及び冷媒配管の取り扱いが容易になり、空調室内機を据え付ける作業の作業性を向上させることができる。
【0010】
第3観点の空調室内機は、第1観点又は第2観点の空調室内機であって、第1部材が、アルミニウムよりも貴な電位の金属で構成されている。第1部材または第2部分は、電蝕防止塗装または絶縁部材で被覆されている。
【0011】
第3観点の空調室内機では、アルミニウムよりも貴な電位の金属で構成された第1部材とアルミニウム製の冷媒配管との電蝕を電蝕防止塗装または絶縁部材で防止することができる。
【0012】
第4観点の空調室内機は、第1観点から第3観点のいずれかの空調室内機であって、第1部材が、ステンレス製またはアルミニウム製である。
【0013】
第4観点の空調室内機では、第1部材がステンレス製またはアルミニウム製であることからアルミニウム製の冷媒配管と第1部材との間で電飾が生じにくく、冷媒配管が電蝕により腐食するのを抑制することができる。
【0014】
第5観点の空調室内機は、第1観点から第4観点のいずれかの空調室内機であって、冷媒配管が、液管と液管よりも多くのガス成分を含む冷媒が流れるガス管とを含む。第1部材は、ガス管のみに配置されている。
【0015】
第5観点の空調室内機では、液管はガス管よりも細いため潰れ難いことから、ガス管のみに第1部材を配置することで、冷媒配管の潰れ防止と部品点数の削減とを図ることができる。
【0016】
第6観点の空調室内機は、第1観点から第5観点のいずれかの空調室内機であって、第1部材の内径と第2部分の外径との差が、0.1mm以上0.7mm以下である。
【0017】
第6観点の空調室内機では、第1部材の内径と第2部分の外径の差を0.7mm以下とすることで、冷媒配管が曲げられるときの変形が小さくなるように規制でき、冷媒配管が潰れるのを効果的に防止できる。また、差を0.1mm以上とすることで、差が0.1mm未満の場合に比べて冷媒配管に第1部材を嵌め込み易くなる。
【0018】
第7観点の空調室内機は、第1観点から第6観点のいずれかの空調室内機であって、冷媒配管の第3部分が、直管である。第1部材は、第3部分の長手方向の半分以上に渡って周囲を覆っている。
【0019】
第7観点の空調室内機では、第3部分の長手方向の半分以上に渡って周囲を覆っていることから、据え付け時に第3部分を曲げる場合にも、第1部材に覆われている箇所を用いることができ、第3部分が潰れるのを防止することができる。
【0020】
第8観点の空調室内機は、第1観点から第7観点のいずれかの空調室内機であって、室外に配置される室外機への連絡用の連絡配管に接続するための接続部を備えている。第3部分は、接続部に直接または別部材を介して間接的に結ばれている。
【0021】
第8観点の空調室内機では、作業時などに第1部材が冷媒配管から抜け落ちるのを接続部により抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】空気調和機が備える空調室内機の模式的な断面図である。
図2】空調室内機の熱交換器の正面図である。
図3】空調室内機の背面側を示す斜視図である。
図4】空調室内機の背面図である。
図5】冷媒配管30及びドレンホース35を背面側に延ばした空調室内機の側面図である。
図6】コイルばねの側面図である。
図7】コイルばねの正面図である。
図8】蛇腹状の第1部材の側面図である。
図9】蛇腹状の第1部材の正面図である。
図10】網状の第1部材の斜視図である。
図11】切れ目を入れた第1部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(1)全体構成
図1に示されている空調室内機10は、室外機70と接続されて空気調和機100を構成している。空気調和機100の空調室内機10と室外機70の間では、蒸気圧縮式の冷凍サイクルにより、冷媒の相変化を利用して熱が運ばれる。空調室内機10は、冷媒と室内の空気との間で熱交換を行うための熱交換器20を備えている。室外機70は、外気から冷媒に熱を取り入れ、あるいは冷媒から外気に熱を放出するため、例えば、外気と冷媒との熱交換を行う室外熱交換器(図示せず)を備えている。室外機70は、例えば、屋外ODに設置される。
【0024】
空気調和機100が室内の冷房を行うときには、空調室内機10の熱交換器20では、熱交換により室内の空気の熱が冷媒に奪われ、室内の空気の温度が低下する。空調室内機10の熱交換器20で熱を奪って温度が上昇した冷媒は、室外機70に流れる。室外機70では、温度が上昇した冷媒の熱が外気に放出され、冷媒の温度が低下する。室外機70で温度が低下した冷媒は、空調室内機10の熱交換器20へと流れ、再び熱交換器20で室内の空気から熱を奪う。
【0025】
空気調和機100が室内の暖房を行うときには、空調室内機10の熱交換器20では、熱交換により室内の空気に熱を冷媒が与え、室内の空気の温度が上昇する。空調室内機10の熱交換器20で熱を与えて温度が低下した冷媒は、室外機70に流れる。室外機70では、温度が低下した冷媒が外気から熱を奪い、冷媒の温度が上昇する。室外機70で温度が上昇した冷媒は、空調室内機10の熱交換器20へと流れ、再び熱交換器20で室内の空気に熱を与える。
【0026】
空調室内機10と室外機70は、連絡用の連絡配管80により接続されている。連絡配管80は、空調室内機10と室外機70との間を循環する冷媒を流すために第1連絡管81と第2連絡管82とを含んでいる。第1連絡管81は、室外機70の接続部71と空調室内機10の第1接続部41との間を連絡して冷媒を流すための管である。第2連絡管82は、室外機70の接続部72と空調室内機10の第2接続部42との間を連絡して冷媒を流すための管である。第1接続部41と第2接続部42は、空調室内機10の接続部40に含まれる。連絡配管80は、例えば、第1連絡管81と第2連絡管82とを覆い、第1連絡管81と第2連絡管82の保護を行うためのカバーを有していてもよい。
【0027】
第1連絡管81には、第2連絡管82を流れる冷媒よりも多くのガス成分を含む冷媒が流れる。言い換えると、第2連絡管82には、第1連絡管81よりも比エンタルピが小さい冷媒が流れる。例えば、第1連絡管81には、ガス状態の冷媒または液体成分よりもガス成分が多い気液二相状態の冷媒が流れる。以下の説明では、液体成分よりもガス成分が多い冷媒を、ガス冷媒という。第2連絡管82には、液体状の冷媒またはガス成分よりも液体成分が多い気液二相状態の冷媒が流れる。以下の説明では、ガス成分よりも液体成分が多い冷媒を液冷媒という。第1連絡管81と第2連絡管82を使って冷凍サイクルで循環する冷媒が往復するので、体積の大きなガス状の冷媒が多く流れる第1連絡管81の管径が第2連絡管82の管径よりも大きくなっている。
【0028】
空調室内機10は、熱交換器20と第1連絡管81を繋ぐためのガス管31及び、熱交換器20と第2連絡管82を繋ぐための液管32を備えている。ガス管31には、液管を流れる冷媒よりも多くのガス成分を含むが多く流れる。管内を流れる冷媒の性状のこのような違いから、ガス管31の外径は、液管32の外径よりも大きい。これらガス管31と液管32は、熱交換器20の伝熱管21に接続され、熱交換器20で熱交換される冷媒が流れる冷媒配管30である。
【0029】
熱交換器20が有する複数の伝熱管21は、全てアルミニウム製である。本開示において、アルミニウム製のものという場合は、アルミニウムを材料に用いて製造されたものである場合だけでなく、アルミニウム合金を材料に用いて製造されたものも含まれる。アルミニウム製の伝熱管21に接続される冷媒配管30もアルミニウム製であり、ガス管31と液管32もアルミニウム製である。
【0030】
空調室内機10は、部屋RMの壁WLに取り付けられている。空調室内機10と室外機70とを接続するために、例えば、壁WLには貫通孔110が形成されて、貫通孔110に冷媒配管30が通される。冷媒配管30には、例えば、図1の斜線で示した箇所において、図2に示されている第1部材50が取り付けられている。第1部材50は、冷媒配管30の表面に沿って延びている。第1部材50が配置されるのは、図1の斜線で示した箇所の全体でだけでなく、一部分であってもよい。第1部材50は円筒形であって、第1部材50の断面形状は円環状である。
【0031】
図2に示されているように、冷媒配管30は、伝熱管21へ接続される第1部分Pa1と、第1部分Pa1に接続されて曲がっている第2部分Pa2と、第2部分Pa2に接続されている第3部分Pa3とを有している。第3部分Pa3は、接続部40と第2部分Pa2の間にある部分である。換言すると、第3部分Pa3は、第2部分Pa2から冷媒配管30の端部までの部分である。第1部分Pa1、第2部分Pa2及び第3部分Pa3は、ガス管31及び液管32のそれぞれに存在する。第1部分Pa1は、伝熱管21に直接接続されてもよく、間接的に接続されてもよい。
【0032】
第1部材50は、ガス管31(冷媒配管30)の第2部分Pa2を覆っている。図2に示されている第1部材50は、第1部分Pa1の一部と第3部分Pa3の一部も覆っている。しかし、第1部材50は、ガス管31(冷媒配管30)の第2部分Pa2のみを覆ってもよい。また、第1部材50は、第1部分Pa1の一部または全部と第2部分Pa2を覆ってもよい。また、第1部材50は、第3部分Pa3の一部または全部と第2部分Pa2を覆ってもよい。さらには、第1部材50は、第1部分Pa1、第2部分Pa2及び第3部分Pa3の全てを覆うように構成されてもよい。
【0033】
(2)詳細構成
(2-1)空調室内機10
空調室内機10は、部屋RMの空気(室内の空気)を取り込む吸込口12と、調和した空気を部屋RMに吹出す吹出口13とを有するケーシング11を備えている。クロスフローファン14は、ケーシング11の中に配置され、吸込口12から吹出口13に向かう気流を発生させる。熱交換器20は、側面から見て、クロスフローファン14を囲むようにC字形に構成されている。C字形の熱交換器20が開いている部分は、吹出口13に近い部分である。このような熱交換器20の構成により、吸込口12から吸い込まれた室内の空気は、実質的に全て、熱交換器20を通過する。吸込口12と熱交換器20の間には、エアフィルタ15が配置されている。熱交換器20を通過する空気は、前もってエアフィルタ15を通過するので、エアフィルタ15により塵埃を除去される。熱交換器20の下方には、ドレンパン17が配置されている。ドレンパン17に溜まった凝縮水を空調室内機10の外に排水するためにドレンホース35(図4図5参照)がドレンパン17に接続されている。
【0034】
吸込口12、エアフィルタ15、熱交換器20及びクロスフローファン14を順に通過した空気は、熱交換器20を通過することにより空気調和されており、吹出口13から部屋RMの中に吹出される。吹出口13には、風向板16が設けられている。風向板16は、鉛直方向の風向の変更のために設けられている。図1には示されていないが、水平方向の風向の変更のための風向板が設けられてもよい。
【0035】
(2-1-1)熱交換器20
図2に示されているX1-X2方向は、熱交換器20の長手方向である。熱交換器20の複数の伝熱管21は、長手方向に沿って配置されている。複数の伝熱管21の中を折り返しながら冷媒を流す場合には、2本の伝熱管21の端部にU字管22が接続されている。複数の伝熱管21は、アルミニウム製の複数のフィン23を貫通するように配置されている。室内の空気は、複数のフィン23の間を通過することで、効率良く熱交換を行うことができる。熱交換器20の金属部分は、アルミニウム製である。
【0036】
(2-1-2)冷媒配管30
冷媒配管30は、アルミニウム製のガス管31及びアルミニウム製の液管32を含んでいる。単位質量当たりの体積が大きなガス冷媒が流れるガス管31の内径は、単位質量当たりの体積が小さな液冷媒が流れる液管32の内径よりも大きい。そのため、ガス管31は、液管32よりも潰れ易くなっている。本開示において、ガス管31または液管32の潰れとは、断面円環状の管を曲げたときに、外形が円形から楕円形または他の扁平な形状に変形することをいう。
【0037】
ガス管31及び液管32は、通常、空調室内機10が壁WLに据え付けられた状態において、いずれも第1部分Pa1が鉛直方向に沿って真っ直ぐな直管である。ガス管31及び液管32の第3部分Pa3は、通常、空調室内機10が工場から据え付け場所に運ばれるまで(以下、出荷時という場合がある。)は、第1部分Pa1に対して直交する方向に沿って真っ直ぐに延びている直管である。ガス管31及び液管32の第2部分Pa2は、湾曲部である。第2部分Pa2は、いずれも出荷時においては、例えば、実質的に円を四等分した弧状に湾曲している。第3部分Pa3は、連結部材43,44を介して、接続部41,42に接続されている。連結部材43,44は、例えば、銅製である。連結部材43,44を銅製とすることで、第1連絡管81及び第2連絡管82が銅製でも電蝕が生じ難くなる。電蝕は、例えば、空調室内機10で生じる結露水または雨水などの水分が異種金属に接触することで生じる。
【0038】
図3には、ケーシング11の斜め後ろから見た状態が示されている。図5には、ケーシング11の後ろから見た状態が示されている。ケーシング11の背面には、据付板18が取り付けられている。据付板18は、据え付け作業の際に取り外すことができる構成になっている。ケーシング11の背面の外側には、信号線を外部に接続するためのハーネス19の端部が配置されている。
【0039】
(2-1-3)第1部材50
第1部材50は、ガス管31の第2部分Pa2の周囲を覆っている。第1部材50は、例えば、図6及び図7に示されているコイルばねである。第1部材50は、第2部分に配置されているリング部51を含んでいる。リング部51は、金属線を一周巻いた部分である。従って、コイルばねは、複数のリング部51を有している。第1部材50のコイルばねのリング部51は、コイルばねを伸張させてもリング形状を保持する。ここでリング形状を保持するとは、コイルばねが延ばされることで金属線が螺旋状に延ばされるが、コイルばねの軸方向に見て実質的にリング状になっているということである。言い換えると、リング形状を保持するとは、コイルばねの外形が、軸方向に見て、楕円形などの扁平な形状に変形していないということである。このように、コイルばねは、伸縮可能な伸縮構造を有している。第1部材50として用いられているコイルばねは、密着巻である。初張力は、例えば、約0.4Nである。コイルばねを密着巻にすることで、第2部分Pa2の周囲に多くのリング部51を配置することができ、潰れるのを抑制し易くなる。コイルばねのリング部51の内径D1は、第2部分Pa2の外径との差が、0.1mm以上0.7mm以下である。第1部材50が冷媒配管30の表面に沿って延びていることから、第1部材50であるコイルばねの中心軸と冷媒配管30の中心軸が一致しているとき、コイルばねと冷媒配管30との間にできる隙間は前述の差の半分になる。
【0040】
第1部材50は、アルミニウムよりも貴な電位の金属で構成されている。アルミニウムよりも貴な電位の金属として、例えば、鉄または銅がある。アルミニウムよりも貴な電位の金属からなる第1部材50が、アルミニウム製の冷媒配管30と接触し、それらの界面に結露水が付着すると電蝕の原因になる。そこで、第1部材50は、電蝕防止塗装または絶縁部材で被覆されている。電蝕防止塗装には、例えば、カチオンの電着塗装がある。また、絶縁部材には、例えば、熱収縮チューブがある。
【0041】
電蝕防止塗装または絶縁部材は、第1部材50ではなく、冷媒配管30に施されてもよい。少なくとも冷媒配管30の第2部分Pa2に電蝕防止塗装または絶縁部材が設けられていることで、電蝕防止塗装または絶縁部材により第2部分Pa2に電蝕が生じるのを抑制することができる。電蝕防止塗装または絶縁部材は、冷媒配管30の第1部材50が取り付けられる部分の全体に施されるのが好ましい。電蝕防止塗装または絶縁部材は、第1部材50及び冷媒配管30の両方に施されていてもよい。
【0042】
図3から図5に示されている空調室内機10では、第1部材50であるコイルばねは、ガス管31のみに配置されている。しかし、第1部材50は、液管32に配置されてもよい。また、コイルばねは、第2部分Pa2だけでなく、さらに第3部分Pa3の長手方向の半分以上に渡って周囲を覆っている。第3部分Pa3の長手方向の半分以上に渡って周囲を覆うことにより、図1に示されているように、2カ所で冷媒配管30を曲げる際に、第1部材50で覆われた第3部分Pa3を曲げることができる場合が多くなる。
【0043】
(3)変形例
(3-1)変形例A
上記実施形態では、壁WLに取り付けるタイプの空調室内機10について説明したが、本開示の対象となる空調室内機10は壁WLにだけには限られない。本開示の対象となる空調室内機10は、例えば、天井に設置されるものであってもよく、また床におかれるものであってもよい。
【0044】
(3-2)変形例B
上記実施形態では、リング部51がリング形状を保持しつつ伸縮可能な伸縮構造を有する第1部材50がコイルばねである場合について説明したが、このような構成の第1部材50は、コイルばねには限られない。第1部材50は、例えば、図8及び図9に示されているような、軸方向に伸縮できるように金属製の筒状体を蛇腹状に構成したものであってもよい。蛇腹状の金属製の第1部材50では、内径が大きい箇所と小さい箇所を持つような構造になっている。このような蛇腹状の金属製の第1部材50において、第1部材50の最も小さな部分の内径D1と第2部分Pa2の外径との差が、0.1mm以上0.7mm以下となるように構成されることが好ましい。また、蛇腹状の第1部材50のリング部51は、前述の内径D1を持つ短い円筒状であることが好ましい。リング部51が幅W1を持つ円筒状である方が、冷媒配管30に対向する部分の断面形状が曲線である場合よりも、冷媒配管30の外形の変形を抑制し易くなる。
【0045】
また第1部材50は、例えば、図10に示されているように、軸方向に伸縮できるように金属製の網を円筒状に形成したものであってもよい。図10に示されている網状の第1部材50は、リング部51である輪になった金属線または円環と、軸方向に沿って配置されてリング部51を繋ぐ金属線52とを備えている。図10に示されている網状の第1部材50の状態は、金属線52が伸びきった状態である。冷媒配管30に網状の第1部材50を取り付けるときは、金属線52が弛むように取り付ける。金属線52が弛んでいれば(曲がっていれば)、冷媒配管30を曲げるときに、網状の第1部材50を冷媒配管30に追従させることができる。冷媒配管30が潰れるのを防止するため、リング部51の金属線または円環の太さを軸方向に沿って配置された金属線52よりも太くして、リング部51の剛性を高めることが好ましい。網状の第1部材50の内径D1と第2部分Pa2の外径との差は、0.1mm以上0.7mm以下となるように構成されることが好ましい。
【0046】
(3-3)変形例C
上記実施形態では、第1部材50が、リング部51がリング形状を保持しつつ伸縮可能な伸縮構造を有する部材である場合について説明したが、第1部材50は、このような構成の部材には限られない。第1部材50は、例えば、図11に示されているように金属製の円筒体55に屈曲し易くなるように切れ目56を入れたものであってもよく、金属製の複数のリングを嵌め込んでもよく、金属製の円筒体であってもよい。切れ目56を入れるときに、リング部51を繋ぐ繋ぎ部57を残しておくことで、複数のリング部51が一体化した構造となるため、取り扱いが容易になる。繋ぎ部57は、例えば、軸方向に見て、所定の角度ずらして配置される。図11では、繋ぎ部57は軸方向に見て、45度ずつずらして配置される。繋ぎ部57は、湾曲させて曲げ易くする方が好ましい。円筒体55の内径D1と第2部分Pa2の外径との差は、0.1mm以上0.7mm以下となるように構成されることが好ましい。
【0047】
(3-4)変形例D
上記実施形態では、第1部材50の材料がアルミニウムよりも貴な電位の金属で構成され、第1部材50または冷媒配管30の第2部分Pa2が電蝕防止塗装または絶縁部材で被覆されている場合について説明した。しかし、第1部材50の材料は、ステンレスであり、電蝕防止塗装または絶縁部材で被覆されていなくてもよい。第1部材50をステンレス製にすると、ステンレスの表面に形成される不動態被膜によって、電飾が発生することを抑制することができる。
【0048】
(3-5)変形例E
第1部材50は、例えば、アルミニウム製としてもよい。第1部材50と冷媒配管30がアルミニウム製であれば、電蝕が発生し難くなる。第1部材50と冷媒配管30が同じ材質のアルミニウムで構成されていることがさらに好ましい。同じ材質のアルミニウムということは、例えば、両方がアルミニウム合金の場合には、両方の金属成分が一致するということである。
【0049】
(3-6)変形例F
上記実施形態では、冷媒配管30の第3部分Pa3が、連結部材43,44を介して、接続部41,42に間接的に接続される場合について説明した。しかし、冷媒配管30の第3部分Pa3は、接続部41,42に直接接続されてもよい。
【0050】
(4)特徴
(4-1)
上記実施形態の空調室内機10では、円筒形状の第1部材50が、アルミニウム製の冷媒配管30の第2部分Pa2の周囲を覆っている。本開示の円筒形状の概念にはコイル状も含まれる。アルミニウム製の第2部分が断面円形以外の形に変形するのを第1部材50で防ぐことによって、空調室内機10の現地据え付け時に行う冷媒配管30を曲げる作業によって、特にガス管31の第2部分Pa2が潰れるのを防止することができる。
【0051】
(4-2)
上記実施形態の空調室内機10では、第1部材50の伸縮後もコイルばねの複数のリング部51がリング形状を保持する。そのため、冷媒配管30を曲げる作業時の第1部材50及び冷媒配管30の取り扱いが容易になり、空調室内機10を据え付ける作業の作業性を向上させることができる。
【0052】
(4-3)
上記実施形態の空調室内機10では、アルミニウムよりも貴な電位の金属で構成された第1部材50とアルミニウム製の冷媒配管30との電蝕を電蝕防止塗装または絶縁部材で防止することができる。このような構成とすることで、第1部材50に、例えば鉄のように、安価でアルミニウムよりも引張強さが大きな材料を用いつつ、電蝕を抑制することができる。
【0053】
(4-4)
変形例Dで説明したように、空調室内機10の第1部材50は、ステンレス製としてもよい。第1部材50をステンレス製とすることで、アルミニウム製の冷媒配管30と第1部材50との間で電飾が生じ難くなり、冷媒配管30が電蝕により腐食するのを抑制することができる。
【0054】
また、変形例Eで説明したように、空調室内機10の第1部材50は、アルミニウム製としてもよい。第1部材50をアルミニウム製とすることで、アルミニウム製の冷媒配管30と第1部材50との間で異種金属間に生じる電飾を防ぐことができる。その結果、第1部材50に接触したアルミニウム製の冷媒配管30が電蝕により腐食するのを抑制することができる。
【0055】
(4-5)
上記実施形態の空調室内機10では、第1部材50がガス管31にのみに配置されている。液管32はガス管31よりも細いため、据え付け作業時に曲げられても潰れ難い。据え付け時に曲げられることで潰れ易いガス管31のみに第1部材50を配置し、液管32に第1部材50を配置しないことで、部品点数を削減することができる。
【0056】
(4-6)
上記実施形態の空調室内機10では、第1部材50の内径と第2部分Pa2の外径の差が0.1mm以上0.7mm以下になるように構成されている。このように構成された場合、前述の差を0.7mm以下とすることで、冷媒配管30が曲げられるときの変形が小さくなるように第1部材50で規制して、冷媒配管30が潰れるのを効果的に防止できる。また、前述の差を0.1mm以上とすることで、冷媒配管30に第1部材50を嵌め込み易くなる。
【0057】
(4-7)
上記実施形態の空調室内機10では、第1部材50が、第3部分Pa3の長手方向の半分以上に渡って第3部分Pa3の周囲を覆っている。このような第1部材50と第3部分Pa3との関係があると、据え付け時に第3部分Pa3を曲げる場合にも、第1部材50に覆われている箇所を用いることができ、第3部分Pa3が潰れるのを防止することができる。
【0058】
(4-8)
上記実施形態の空調室内機10は、第1連絡管81及び第2連絡管82に接続するための接続部41,42を備えている。第3部分Pa3は、接続部41,42に直接または別部材である連結部材43,44を介して間接的に結ばれている。このように構成された空調室内機10では、作業時などに第1部材50が冷媒配管30から抜け落ちるのを接続部41,42により抑制することができる。
【0059】
以上、本開示の実施形態を説明したが、特許請求の範囲に記載された本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0060】
10 空調室内機
20 熱交換器
21 伝熱管
30 冷媒配管
31 ガス管
32 液管
41,42 接続部
43,44 連結部材(別部材の例)
51 リング部
Pa1 第1部分
Pa2 第2部分
Pa3 第3部分
【先行技術文献】
【特許文献】
【0061】
【文献】特開2015-140998号公報
図1
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図3
図4
図5
図6
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図8
図9
図10
図11