(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】ガラス合糸ロービング、熱可塑性複合材料形成用ランダムマット、及び、ガラス繊維強化熱可塑性樹脂シート
(51)【国際特許分類】
C03C 25/24 20180101AFI20240828BHJP
B29C 70/18 20060101ALI20240828BHJP
B29B 11/16 20060101ALI20240828BHJP
【FI】
C03C25/24
B29C70/18
B29B11/16
(21)【出願番号】P 2021554307
(86)(22)【出願日】2020-10-13
(86)【国際出願番号】 JP2020038583
(87)【国際公開番号】W WO2021085115
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】P 2019196229
(32)【優先日】2019-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003975
【氏名又は名称】日東紡績株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】貫井 洋佑
(72)【発明者】
【氏名】門馬 秀明
【審査官】酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-206787(JP,A)
【文献】特開2019-112286(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 25/00-25/70,
D06M 13/00-15/715
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本のガラスストランドから構成されるガラス合糸ロービングであって、
前記ガラスストランドの重量Sが、64~210texの範囲にあり、
前記ガラスストランドの繊維径Dが、9.0~18.0μmの範囲にあり、
前記ガラス合糸ロービングの重量が、1800~3400texの範囲にあり、
前記ガラス合糸ロービングの強熱減量Lが、0.55~0.94%の範囲にあり、
前記S、D及びLが下記式(1)を満たすことを特徴とする、ガラス合糸ロービング。
4.10≦1000×S
1/2/(D
3×L
3)≦7.10 ・・・(1)
【請求項2】
請求項1記載のガラス合糸ロービングにおいて、前記S、D及びLが下記式(2)を満たすことを特徴とする、ガラス合糸ロービング。
4.15≦1000×S
1/2/(D
3×L
3)≦6.89 ・・・(2)
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のガラス合糸ロービングにおいて、前記繊維径Dが、13.5~17.5μmの範囲にあることを特徴とする、ガラス合糸ロービング。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか1項記載のガラス合糸ロービングにおいて、1~150mmの範囲の長さを備え、熱可塑性樹脂を含む熱可塑性複合材料形成用ランダムマット製造用に用いられることを特徴とする、ガラス合糸ロービング。
【請求項5】
請求項1~請求項4のいずれか1項記載のガラス合糸ロービングと、熱可塑性樹脂とを含む、熱可塑性複合材料形成用ランダムマット。
【請求項6】
請求項1~請求項4のいずれか1項記載のガラス合糸ロービングと、熱可塑性樹脂とを含む、ガラス繊維強化熱可塑性樹脂シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス合糸ロービング、熱可塑性複合材料形成用ランダムマット、及び、ガラス繊維強化熱可塑性樹脂シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱硬化樹脂成形品の強化に用いられるガラス合糸ロービングが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1記載のガラス合糸ロービングは、例えば、所定形状を有する成形型の上に、ガラス繊維と液状合成樹脂を同時に吹き付けて成形するスプレーアップ成形法に用いられる。前記スプレーアップ成形法には、液状合成樹脂を吹き付けることが可能なスプレーガンにカッターが取り付けられており、そこにガラス合糸ロービングを供給すると、ガラス合糸ロービングが所定長に切断され、液状合成樹脂の噴流の中に混合されて、前記成形型の上に吹き付けられるようになっている。
【0003】
一方、所定の長さに切断した前記ガラス合糸ロービングをランダム分散させた等方性ランダムマットと、粉粒体状又は短繊維状の熱可塑性樹脂からなる熱可塑性樹脂層とが、少なくともそれぞれ一層以上積層された熱可塑性複合材料形成用ランダムマットが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
前記熱可塑性複合材料形成用ランダムマットは、熱可塑性樹脂を含浸させることにより、熱可塑性複合材料が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平10-1331号公報
【文献】特開2017-177522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のガラス合糸ロービングは、前記ランダムマットを形成し、該ランダムマットに熱可塑性樹脂を含浸させることにより熱可塑性複合材料(ガラス繊維強化熱可塑性樹脂シート)を形成する際に、該熱可塑性樹脂が該ランダムマットに十分に含浸しないという不都合がある。
【0007】
本発明は、かかる不都合を解消して、所定の長さに切断され、分散されてランダムマットを形成した後、該ランダムマットに熱可塑性樹脂を含浸させることにより熱可塑性複合材料を形成する際に、該熱可塑性樹脂の優れた含浸性を確保することができるガラス合糸ロービングを提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、前記ランダムマット製造時の加工性に優れ、該ランダムマットに熱可塑性樹脂を含浸させることにより形成される熱可塑性複合材料に優れた強度を付与することができるガラス合糸ロービングを提供することを目的とする。
【0009】
さらに、本発明の目的は、本発明のガラス合糸ロービングを用いる熱可塑性複合材料形成用ランダムマット、及び、ガラス繊維強化熱可塑性樹脂シートを提供することにもある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる目的を達成するために、本発明のガラス合糸ロービングは、複数本のガラスストランドから構成されるガラス合糸ロービングであって、前記ガラスストランドの重量Sが、64~210texの範囲にあり、前記ガラスストランドの繊維径Dが、9.0~18.0μmの範囲にあり、前記ガラス合糸ロービングの重量が、1800~3400texの範囲にあり、前記ガラス合糸ロービングの強熱減量Lが、0.55~0.94%の範囲にあり、前記S、D及びLが下記式(1)を満たすことを特徴とする。
【0011】
4.10≦1000×S1/2/(D3×L3)≦7.10 ・・・(1)
本発明のガラス合糸ロービングは、前記S、D及びLが式(1)を満たすことにより、所定の長さに切断され、分散されてランダムマットを形成した後、該ランダムマットに熱可塑性樹脂を含浸させることにより熱可塑性複合材料を形成する際に、該熱可塑性樹脂の優れた含浸性を確保することができ、前記ランダムマット製造時の加工性に優れ、該ランダムマットに熱可塑性樹脂を含浸させることにより形成される熱可塑性複合材料に優れた強度を付与することができる。ここで、前記熱可塑性複合材料用ランダムマットを製造する際の加工性に優れるとは、前記範囲の長さに切断した後、ベルトコンベア上に堆積させる際の分散性に優れることを意味する。また、前記熱可塑性複合材料に優れた強度を付与するとは、前記熱可塑性複合材料中のガラス含有率が60.0%以上である場合に、前記熱可塑性複合材料に12.5GPa以上の曲げ弾性率と、365MPa以上の曲げ強度とを付与することを意味する。
【0012】
また、本発明のガラス合糸ロービングは、前記S、D及びLが下記式(2)を満たすことが好ましい。
【0013】
4.15≦1000×S1/2/(D3×L3)≦6.89 ・・・(2)
また、本発明のガラス合糸ロービングは、前記繊維径Dが、13.5~17.5μmの範囲にあることが好ましい。
【0014】
また、本発明のガラス合糸ロービングは、1~150mmの範囲の長さを備え、熱可塑性樹脂を含む熱可塑性複合材料形成用ランダムマット製造用に用いられることが好ましい。
【0015】
また、本発明の熱可塑性複合材料形成用ランダムマットは、前記本発明のガラス合糸ロービングと、熱可塑性樹脂とを含むことを特徴とする。
【0016】
また、本発明のガラス繊維強化熱可塑性樹脂シートは、前記本発明のガラス合糸ロービングと、熱可塑性樹脂とを含むことを特徴とする。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
【0018】
本実施形態のガラス合糸ロービングは、複数本のガラスストランドから構成されるガラス合糸ロービングであって、前記ガラスストランドの重量Sが、64~210tex(g/km)の範囲にあり、前記ガラスストランドの繊維径Dが、9.0~18.0μmの範囲にあり、前記ガラス合糸ロービングの重量が、1800~3400texの範囲にあり、前記ガラス合糸ロービングの強熱減量Lが、0.55~0.94%の範囲にあり、前記S、D及びLが下記式(1)を満たす。
【0019】
4.10≦1000×S1/2/(D3×L3)≦7.10 ・・・(1)
本実施形態のガラス合糸ロービングは、例えば、次のようにして製造することができる。
【0020】
まず、ガラス原料となる鉱石に含まれる成分と各成分の含有率、及び、溶融過程における各成分の揮発量に基づき、所定のガラス組成となるように調合されたガラス原料(ガラスバッチ)を溶融炉に供給し、例えば、1450~1550℃の範囲の温度で溶融する。
次に、溶融されたガラスバッチ(溶融ガラス)を所定の温度に制御された、ブッシングの50~4000個のノズルチップから引き出し、急冷して、ガラスフィラメントを形成し、ガラスフィラメントにバインダーを塗布し、ガラスフィラメント50~4000本を集束させて、チューブに巻き取ることでガラスストランドを得て、チューブから解舒しながら、このガラスストランド2~40本を引き揃えることで、ガラス合糸ロービングが得られる。ここで、前記ノズルチップを、非円形形状を有し、溶融ガラスを急冷する突起部や切欠部を有するものとし、温度条件を制御することで、扁平な断面形状を有するガラスフィラメントを得ることもできる。
【0021】
本実施形態のガラス合糸ロービングが取り得る前記ガラス組成としては、最も汎用的であるEガラス組成(ガラス繊維の全量に対し、酸化物換算で、52.0~56.0wt%の範囲のSiO2と、12.0~16.0wt%の範囲のAl2O3と、合計で20.0~25.0wt%の範囲のMgO及びCaOと、5.0~10.0wt%の範囲のB2O3とを含む組成)、高強度高弾性率ガラス組成(ガラス繊維の全量に対し64.0~66.0wt%の範囲のSiO2と、24.0~26.0wt%の範囲のAl2O3と、9.0~11.0wt%の範囲のMgOとを含む組成)、高弾性率易製造性ガラス組成(ガラス繊維の全量に対し、57.0~60.0wt%の範囲のSiO2と、17.5~20.0wt%の範囲のAl2O3と、8.5~12.0wt%の範囲のMgOと、10.0~13.0wt%の範囲のCaOと、0.5~1.5wt%の範囲のB2O3とを含み、かつ、SiO2、Al2O3、MgO及びCaOの合計量が98.0wt%以上である組成)、及び、低誘電率低誘電正接ガラス組成(ガラス繊維全量に対し、48.0~62.0wt%の範囲のSiO2と、17.0~26.0wt%の範囲のB2O3と、9.0~18.0wt%の範囲のAl2O3と、0.1~9.0wt%の範囲のCaOと、0~6.0wt%の範囲のMgOと、合計0.05~0.5wt%の範囲のNa2O、K2O及びLi2Oと、0~5.0wt%の範囲のTiO2と、0~6.0wt%の範囲のSrOと、合計0~3.0wt%の範囲のF2及びCl2と、0~6.0wt%の範囲のP2O5とを含む組成)を挙げることができる。
【0022】
なお、本実施形態のガラス繊維強化樹脂成形品に含まれるガラス繊維において、前述した各成分の含有量の測定は、軽元素であるLiについてはICP発光分光分析装置を用いて、その他の元素は波長分散型蛍光X線分析装置を用いて行うことができる。
【0023】
測定方法としては、初めにガラスバッチ(ガラス原料を混合して調合したもの)、又は、ガラス繊維(ガラス繊維表面に有機物が付着している場合、又は、ガラス繊維が有機物(樹脂)中に主に強化材として含まれている場合には、例えば、300~650℃のマッフル炉で0.5~24時間程度加熱する等して、有機物を除去してから用いる)を白金ルツボに入れ、電気炉中で1600℃の温度に6時間保持して撹拌を加えながら溶融させることにより、均質な溶融ガラスを得る。次に、得られた溶融ガラスをカーボン板上に流し出してガラスカレットを作製した後、粉砕し粉末化する。軽元素であるLiについてはガラス粉末を酸で加熱分解した後、ICP発光分光分析装置を用いて定量分析する。その他の元素はガラス粉末をプレス機で円盤状に成形した後、波長分散型蛍光X線分析装置を用いて定量分析する。これらの定量分析結果を酸化物換算して各成分の含有量及び全量を計算し、これらの数値から前述した各成分の含有量(質量%)を求めることができる。
【0024】
本実施形態のガラス合糸ロービングにおいて、前記ガラスストランドの繊維径Dは、9.0~18.0μmの範囲にある。前記ガラスストランドの繊維径Dは、ガラス合糸ロービングの生産性に優れることから、13.5~17.5μmの範囲にあることが好ましく、14.5~16.5μmの範囲にあることがより好ましい。なお、前記ガラスストランドの繊維径Dとは、前記ガラスストランドを構成する前記ガラスフィラメントの直径を意味する。ここで、前記ガラスフィラメントの断面形状は、通常、真円形状であるが、真円形状又は略真円形状以外(例えば、楕円形状、長円形状等)であってもよい。前記ガラスフィラメントの断面形状が真円形状又は略真円形状以外である場合に、前記ガラスストランドの繊維径Dは、当該断面形状の面積と同一の面積をもつ真円の直径(換算繊維径という)を意味する。
【0025】
前記ガラスフィラメントの直径は、例えば、ガラスストランドをエポキシ樹脂等の樹脂に埋めて該樹脂を硬化させ、その断面を研磨し、次いで、電子顕微鏡を用いて、ガラスフィラメント100本以上につき、当該ガラスフィラメントの断面形状が真円形状又は略真円形状である場合には、その直径を測定し、当該ガラスフィラメントの断面形状が真円形状又は略真円形状以外である場合には、その断面積を算出した上で、当該断面積に基づいて換算繊維径を算出し、次いで、測定又は算出された直径又は換算繊維径の平均値を求めることで算出することができる。また、電子顕微鏡から得た画像を自動解析装置で画像処理する事でも測定する事が出来る。一方、本実施形態のガラス合糸ロービング又はその切断物がガラス繊維強化樹脂成形品中に含まれる場合には、前記ガラスフィラメントの直径は、例えば、まず、ガラス繊維強化樹脂成形品の断面を研磨し、次いで、電子顕微鏡を用いて、ガラスフィラメント100本以上につき、当該ガラスフィラメントの断面形状が真円形状又は略真円形状である場合には、その直径を測定し、当該ガラスフィラメントの断面形状が真円形状又は略真円形状以外である場合には、その断面積を算出した上で、当該断面積に基づいて換算繊維径を算出し、次いで、測定又は算出された直径又は換算繊維径の平均値を求めることで算出することができる。
【0026】
本実施形態のガラス合糸ロービングにおいて、前記ガラスストランドは、前記ガラスフィラメントが50~4000本の範囲で集束されて構成されており、好ましくは、75~800本の範囲で集束されて構成されており、より好ましくは、100~600本の範囲で集束されて構成されている。
【0027】
本実施形態のガラス合糸ロービングにおいて、前記ガラスストランドの重量Sは、64~210texの範囲にあり、好ましくは、70~180texの範囲にあり、より好ましくは、75~160texの範囲にあり、さらに好ましくは、81~143texの範囲にある。
【0028】
前記ガラスストランドの重量Sは、例えば、合糸ロービングから分割された1本のガラスストランドを取り出し、JIS R 3420:2013に準拠して測定することができる。 本実施形態のガラス合糸ロービングは、例えば、2~300本の前記ガラスストランドから構成され、好ましくは、4~100本の前記ガラスストランドから構成され、より好ましくは、6~50本、さらに好ましくは、12~36本の前記ガラスストランドから構成される。本実施形態のガラス合糸ロービングにおいて、前記本数のガラスストランドは、撚り合されていても、引き揃えられてもよいが、ベルトコンベア上に堆積させる際の分散性の観点からは、引き揃えられていることが好ましい。
【0029】
本実施形態のガラス合糸ロービングの重量は、1800~3400texの範囲にある。ここで、ガラス合糸ロービングの重量は、JIS R 3420:2013に準拠して測定することができる。
【0030】
本実施形態のガラス合糸ロービングの強熱減量Lは、0.55~0.94%の範囲にあり、好ましくは、0.60~0.93%の範囲にあり、より好ましくは、0.65~0.92%の範囲にあり、さらに好ましくは、0.70~0.91%の範囲にあり、特に好ましくは、0.75~0.90%の範囲にある。ここで、本実施形態のガラス合糸ロービングの強熱減量Lは、JIS R 3420:2013に準拠して測定することができる。
【0031】
前記ガラス合糸ロービングの強熱減量Lは、前記ガラス合糸ロービングにおける前記バインダーの付着量を意味する。バインダーは、ガラス繊維と樹脂との接着性の向上、ガラス繊維と樹脂又は無機材料中との混合物中におけるガラス繊維の均一分散性の向上等を目的として、ガラス繊維に付与される。本実施形態のガラス合糸ロービングに用いられるバインダーの成分としては、例えば、シランカップリング剤、フィルムフォーマーを挙げることができる。
【0032】
フィルムフォーマーは、ガラス繊維の表面を被覆する有機物であり、このような有機物としては、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、変性ポリプロピレン(特にカルボン酸変性ポリプロピレン)、(ポリ)カルボン酸(特にマレイン酸)と不飽和単量体との共重合体等を挙げることができる。
【0033】
シランカップリング剤としては、例えば、アミノシラン(γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-N’-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アニリノプロピルトリメトキシシラン等)、クロルシラン(γ-クロロプロピルトリメトキシシラン等)、エポキシシラン(γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等)、メルカプトシラン(γ-メルカプトトリメトキシシラン等)、ビニルシラン(ビニルトリメトキシシラン、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等)、アクリルシラン(γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等)、カチオニックシラン(N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩等)、メタクリルシラン(3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等)を挙げることができる。前記シランカップリング剤は、これらの化合物を単独で使用することもでき、又は、2種類以上を併用することもできる。
【0034】
本実施形態のガラス合糸ロービングに用いられるバインダーは、シランカップリング剤及びフィルムフォーマー以外に、潤滑剤、界面活性剤、帯電防止剤等を含むことができる。
【0035】
潤滑剤としては、変性シリコーンオイル、動物油(牛脂等)及びこの水素添加物、植物油(大豆油、ヤシ油、ナタネ油、パーム油、ひまし油等)及びこの水素添加物、動物性ワックス(蜜蝋、ラノリン等)、植物性ワックス(キャンデリラワックス、カルナバワックス等)、鉱物系ワックス(パラフィンワックス、モンタンワックス等)、高級飽和脂肪酸と高級飽和アルコールとの縮合物(ラウリルステアレート等のステアリン酸エステル等)、ポリエチレンイミン、ポリアルキルポリアミンアルキルアマイド誘導体、脂肪酸アミド(例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等のポリエチレンポリアミンと、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の脂肪酸との脱水縮合物等)、第4級アンモニウム塩(ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等のアルキルトリメチルアンモニウム塩等)が挙げられる。前記潤滑剤は、これらを単独で使用することもでき、又は、2種類以上を併用することもできる。
【0036】
界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられる。前記界面活性剤は、これらを単独で使用することもでき、又は、2種類以上を併用することもできる。
【0037】
ノニオン系界面活性剤としては、エチレンオキサイドプロピレンオキサイドアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックコポリマー、アルキルポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックコポリマーエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸モノエステル、ポリオキシエチレン脂肪酸ジエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセロール脂肪酸エステルエチレンオキサイド付加物、ポリオキシエチレンキャスターオイルエーテル、硬化ヒマシ油エチレンオキサイド付加物、アルキルアミンエチレンオキサイド付加物、脂肪酸アミドエチレンオキサイド付加物、グリセロール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ソルビトール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、多価アルコールアルキルエーテル、脂肪酸アルカノールアミド、アセチレングリコール、アセチレンアルコール、アセチレングリコールのエチレンオキサイド付加物、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0038】
カチオン系界面活性剤としては、塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、アルキルジメチルエチルアンモニウムエチルサルフェート、高級アルキルアミン塩(酢酸塩や塩酸塩等)、高級アルキルアミンへのエチレンオキサイド付加物、高級脂肪酸とポリアルキレンポリアミンとの縮合物、高級脂肪酸とアルカノールアミンとのエステルの塩、高級脂肪酸アミドの塩、イミダゾリン型カチオン性界面活性剤、アルキルピリジニウム塩等が挙げられる。
【0039】
アニオン系界面活性剤としては、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルキルエーテル硫酸エステル塩、α-オレフィン硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、脂肪酸ハライドとN-メチルタウリンとの反応生成物、スルホコハク酸ジアルキルエステル塩、高級アルコールリン酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加物のリン酸エステル塩等が挙げられる。
【0040】
両性界面活性剤としては、アルキルアミノプロピオン酸アルカリ金属塩等のアミノ酸型両性界面活性剤、アルキルジメチルベタイン等のベタイン型、イミダゾリン型両性界面活性剤等が挙げられる。
【0041】
本実施形態のガラス合糸ロービングに用いられるバインダーは、固形分換算で、フィルムフォーマーを30~90wt%、シランカップリング剤を5~50wt%、その他の成分を5~50wt%の範囲で含むことができる。なお、本実施形態のガラス合糸ロービングに用いられるバインダーの成分及び構成比は、GC-MSにより分析することができる。
【0042】
本実施形態のガラス合糸ロービングにおいて、前記S、D及びLは、下記式(1)を満たし、下記式(2)を満たすことが好ましく、下記式(3)を満たすことがより好ましく、下記式(4)を満たすことがさらに好ましい。
【0043】
4.10≦1000×S1/2/(D3×L3)≦7.10 ・・・(1)
4.15≦1000×S1/2/(D3×L3)≦6.89 ・・・(2)
4.17≦1000×S1/2/(D3×L3)≦6.20 ・・・(3)
4.50≦1000×S1/2/(D3×L3)≦6.10 ・・・(4)
本実施形態のガラス合糸ロービングは、上記式(2)を満たすことで、ガラス合糸ロービングを切断した後、ベルトコンベア上に堆積させる際の分散性が特に優れる。また、本実施形態のガラス合糸ロービングは、上記式(2)を満たすことで、熱可塑性複合材料用ランダムマットに熱可塑性樹脂を含浸させることにより熱可塑性複合材料を形成する際に、該熱可塑性樹脂の特に優れた含浸性を確保することができる。さらに、本実施形態のガラス合糸ロービングは、上記式(2)を満たすことで、該熱可塑性複合材料中のガラス含有率が60.0%以上である場合に、該熱可塑性複合材料に、13.3GPa以上の曲げ弾性率と、400MPa以上の曲げ強度を付与することができる。
【0044】
また、本実施形態のガラス合糸ロービングは、上記式(3)を満たすことで、ガラス合糸ロービングを切断した後、ベルトコンベア上に堆積させる際の分散性が特に優れる。また、本実施形態のガラス合糸ロービングは、上記式(3)を満たすことで、熱可塑性複合材料用ランダムマットに熱可塑性樹脂を含浸させることにより熱可塑性複合材料を形成する際に、該熱可塑性樹脂の特に優れた含浸性を確保することができる。さらに、本実施形態のガラス合糸ロービングは、上記式(3)を満たすことで、該熱可塑性複合材料中のガラス含有率が60.0%以上である場合に、該熱可塑性複合材料に、13.5GPa以上の曲げ弾性率と、410MPa以上の曲げ強度を付与することができる。
【0045】
また、本実施形態のガラス合糸ロービングは、上記式(4)を満たすことで、ガラス合糸ロービングを切断した後、ベルトコンベア上に堆積させる際の分散性が特に優れる。また、本実施形態のガラス合糸ロービングは、上記式(4)を満たすことで、熱可塑性複合材料用ランダムマットに熱可塑性樹脂を含浸させることにより熱可塑性複合材料を形成する際に、該熱可塑性樹脂の特に優れた含浸性を確保することができる。さらに、本実施形態のガラス合糸ロービングは、上記式(4)を満たすことで、該熱可塑性複合材料中のガラス含有率が60.0%以上である場合に、該熱可塑性複合材料に、13.5GPa以上の曲げ弾性率と、415MPa以上の曲げ強度を付与することができる。
【0046】
また、本実施形態のガラス合糸ロービングは、公知の方法で切断されることで、1~150mmの範囲の長さを備え、熱可塑性樹脂を含む熱可塑性複合材料形成用ランダムマット製造用に用いられる。
【0047】
本実施形態のガラス合糸ロービングは、例えば、1~150mmの範囲の長さに切断した後、ベルトコンベア上に堆積させて等方性ランダムマットとし、その上に粉粒体状又は短繊維状の熱可塑性樹脂を散布して熱可塑性樹脂層とすることを繰り返すことにより、前記等方性ランダムマットと前記熱可塑性樹脂層とを少なくともそれぞれ一層以上備える熱可塑性複合材料用ランダムマットを製造することができる。前記熱可塑性複合材料用ランダムマット1枚又は熱可塑性複合材料用ランダムマットを複数枚積層したものを、プレス成形し、熱可塑性樹脂を含浸させることで、熱可塑性複合材料(ガラス繊維強化熱可塑性樹脂シート)を製造することができる。
【0048】
本実施形態のガラス合糸ロービングによれば、前記熱可塑性複合材料用ランダムマットを製造する際の加工性に優れ、該熱可塑性複合材料用ランダムマットに熱可塑性樹脂を含浸させることにより熱可塑性複合材料を形成する際に、該熱可塑性樹脂の優れた含浸性を確保することができ、さらに、該熱可塑性複合材料に優れた強度を付与することができる。
【0049】
また、本実施形態のガラス合糸ロービングによれば、例えば、複数本のガラス合糸ロービングを一方向に引き揃えながら熱可塑性樹脂を含浸させて一体化することでも、ガラス繊維強化熱可塑性樹脂シートを製造することができる。
【0050】
本実施形態のガラス繊維強化熱可塑性樹脂シートにおいて、ガラス含有率(ガラス繊維強化熱可塑性樹脂シートの重量に対する、ガラス繊維の重量の割合)は、例えば、45.0~80.0質量%の範囲を取り得る。
【0051】
次に、本発明のガラス合糸ロービングの実施例及び比較例を示す。
【実施例】
【0052】
〔実施例1〕
本実施例では、まず、Eガラス組成となるように調合されたガラス原料(ガラスバッチ)を溶融炉に供給して溶融し、溶融されたガラスバッチ(溶融ガラス)を所定の温度に制御された、ブッシングのノズルチップから引き出し、急冷して、ガラスフィラメントを形成し、ガラスフィラメントに、フィルムフォーマー、シランカップリング剤、潤滑剤及び界面活性剤を含むバインダーを塗布し、ガラスフィラメント210本を集束させて、チューブに巻き取ることで、重量Sが93tex、繊維径Dが15.0μmのガラスストランドを得た。次に、前記チューブから解舒しながら、このガラスストランド24本を引き揃えることで、強熱減量Lが0.80%、重量が2240texのガラス合糸ロービングを得た。
【0053】
本実施例で得られたガラス合糸ロービングを形成するガラスストランドの重量S、ガラスストランドの繊維径D、ガラス合糸ロービングの強熱減量L、1000×S1/2/(D3×L3)の値、ガラス合糸ロービングの重量を表1に示す。
【0054】
次に、本実施例で得られたガラス合糸ロービングを長さ50mmに切断し、ランダムに分散させながら、ポリアミド樹脂粉体(東レ株式会社製、商品名:1001P)を均一に散布し、熱可塑性複合材料用ランダムマットを得た。得られた熱可塑性複合材料用ランダムマットを13枚積層し、高温プレス機で温度250℃、加圧時間10分の条件でプレスを行い、実施例1の積層板(ガラス繊維強化熱可塑性樹脂シート)を得た。得られた実施例1の積層板において、ガラス含有率は60.0質量%であった。本実施例で得られたガラス合糸ロービングを前記範囲の長さに切断した後ベルトコンベア上に堆積させる際の分散性、前記積層板を製造する際の樹脂の含浸性、前記積層板の曲げ弾性率、前記積層板の曲げ強度、及び、ガラス合糸ロービングの生産性を次のようにして、評価又は測定した。結果を表1に示す。
【0055】
〔ガラス合糸ロービング切断時の分散性〕
ガラス合糸ロービング切断時の分散性は、50mm長さに切断後のガラス合糸ロービングを平面に分散させた際に目視で評価し、切断されたガラスが絡み合わず分散されており、風綿状の毛羽も発生していない場合を「A」、切断されたガラスが絡み合ってはいないが、風綿状の毛羽が発生している場合を「B」、切断されたガラスが絡み合い、ガラスの塊が発生した場合を「C」とした。
【0056】
〔積層板を製造する際の樹脂の含浸性〕
各実施例及び各比較例で得られた積層板(ガラス繊維強化熱可塑性樹脂シート)中に、樹脂が含浸せずガラスの透明な状態の部分が残っていない場合を「A」、樹脂が含浸せずガラスの透明な状態の部分が全体の10%未満である場合を「B」、樹脂が含浸せずガラスの透明な状態の部分が全体の10%以上残っている場合を「C」とした。
【0057】
〔積層板の曲げ強度、弾性率〕
積層板の曲げ強度及び弾性率は、JIS K 7017:1999(A法・クラスII試験片)に準拠し、精密万能試験機(株式会社島津製作所製、商品名:オートグラフAG-5000B)によって測定した。
【0058】
〔ガラス合糸ロービングの生産性〕
ガラス合糸ロービングの生産性は、チューブからガラスストランドを引き揃える際の糸止まりを評価し、18kgのロービングを巻き取る際に糸止まりが起こらなかった場合を「A」、糸止まりが起こった場合を「B」とした。
【0059】
〔参考例1〕
本参考例では、ガラスフィラメントを200本集束し、ガラスストランドの重量Sを100tex、繊維径Dを16.0μmとし、ガラスストランドを48本引き揃えた以外は実施例1と全く同一にして、強熱減量Lが0.80%、重量が4800texのガラス合糸ロービングを得た。
【0060】
本参考例で得られたガラス合糸ロービングを形成するガラスストランドの重量S、ガラスストランドの繊維径D、ガラス合糸ロービングの強熱減量L、1000×S1/2/(D3×L3)の値、ガラス合糸ロービングの重量を表1に示す。
【0061】
次に、本参考例で得られたガラス合糸ロービングを用いた以外は実施例1と全く同一にして積層板(ガラス繊維強化熱可塑性樹脂シート)を製造し、ガラス合糸ロービングを前記範囲の長さに切断した後ベルトコンベア上に堆積させる際の分散性、前記積層板を製造する際の樹脂の含浸性、前記積層板の曲げ弾性率、前記積層板の曲げ強度、及び、ガラス合糸ロービングの生産性を、実施例1と全く同一にして、評価又は測定した。結果を表1に示す。
【0062】
〔実施例2〕
本実施例では、強熱減量Lを0.88%とした以外、実施例1と全く同一にして、重量が2240texのガラス合糸ロービングを得た。
【0063】
本実施例で得られたガラス合糸ロービングを形成するガラスストランドの重量S、ガラスストランドの繊維径D、ガラス合糸ロービングの強熱減量L、1000×S1/2/(D3×L3)の値、ガラス合糸ロービングの重量を表1に示す。
【0064】
次に、本実施例で得られたガラス合糸ロービングを用いた以外は実施例1と全く同一にして積層板(ガラス繊維強化熱可塑性樹脂シート)を製造し、ガラス合糸ロービングを前記範囲の長さに切断した後ベルトコンベア上に堆積させる際の分散性、前記積層板を製造する際の樹脂の含浸性、前記積層板の曲げ弾性率、前記積層板の曲げ強度、及び、ガラス合糸ロービングの生産性を、実施例1と全く同一にして、評価又は測定した。結果を表1に示す。
【0065】
〔実施例3〕
本実施例では、ガラスフィラメントを310本集束し、ガラスストランドの重量Sを140texとし、ガラスストランドを16本引き揃えた以外は実施例1と全く同一にして、強熱減量Lが0.80%、重量が2240texのガラス合糸ロービングを得た。
【0066】
本実施例で得られたガラス合糸ロービングを形成するガラスストランドの重量S、ガラスストランドの繊維径D、ガラス合糸ロービングの強熱減量L、1000×S1/2/(D3×L3)の値、ガラス合糸ロービングの重量を表1に示す。
【0067】
次に、本実施例で得られたガラス合糸ロービングを用いた以外は実施例1と全く同一にして積層板(ガラス繊維強化熱可塑性樹脂シート)を製造し、ガラス合糸ロービングを前記範囲の長さに切断した後ベルトコンベア上に堆積させる際の分散性、前記積層板を製造する際の樹脂の含浸性、前記積層板の曲げ弾性率、前記積層板の曲げ強度、及び、ガラス合糸ロービングの生産性を、実施例1と全く同一にして、評価又は測定した。結果を表1に示す。
【0068】
〔実施例4〕
本実施例では、強熱減量Lを0.74%とした以外、実施例1と全く同一にして、重量が2240texのガラス合糸ロービングを得た。
【0069】
本実施例で得られたガラス合糸ロービングを形成するガラスストランドの重量S、ガラスストランドの繊維径D、ガラス合糸ロービングの強熱減量L、1000×S1/2/(D3×L3)の値、ガラス合糸ロービングの重量を表1に示す。
【0070】
次に、本実施例で得られたガラス合糸ロービングを用いた以外は実施例1と全く同一にして積層板(ガラス繊維強化熱可塑性樹脂シート)を製造し、ガラス合糸ロービングを前記範囲の長さに切断した後ベルトコンベア上に堆積させる際の分散性、前記積層板を製造する際の樹脂の含浸性、前記積層板の曲げ弾性率、前記積層板の曲げ強度、及び、ガラス合糸ロービングの生産性を、実施例1と全く同一にして、評価又は測定した。結果を表1に示す。
【0071】
〔実施例5〕
本実施例では、ガラスフィラメントを320本集束し、繊維径Dを12.0μmとし、強熱減量Lを0.93%とした以外は実施例1と全く同一にして、重量が2240texのガラス合糸ロービングを得た。
【0072】
本実施例で得られたガラス合糸ロービングを形成するガラスストランドの重量S、ガラスストランドの繊維径D、ガラス合糸ロービングの強熱減量L、1000×S1/2/(D3×L3)の値、ガラス合糸ロービングの重量を表1に示す。
【0073】
次に、本実施例で得られたガラス合糸ロービングを用いた以外は実施例1と全く同一にして積層板(ガラス繊維強化熱可塑性樹脂シート)を製造し、ガラス合糸ロービングを前記範囲の長さに切断した後ベルトコンベア上に堆積させる際の分散性、前記積層板を製造する際の樹脂の含浸性、前記積層板の曲げ弾性率、前記積層板の曲げ強度、及び、ガラス合糸ロービングの生産性を、実施例1と全く同一にして、評価又は測定した。結果を表1に示す。
【0074】
〔比較例1〕
本比較例では、ガラスフィラメントを630本集束し、ガラスストランドの重量Sを280texとし、ガラスストランドを8本引き揃えた以外は実施例1と全く同一にして、強熱減量Lが0.80%、重量が2240texのガラス合糸ロービングを得た。
【0075】
本比較例で得られたガラス合糸ロービングを形成するガラスストランドの重量S、ガラスストランドの繊維径D、ガラス合糸ロービングの強熱減量L、1000×S1/2/(D3×L3)の値、ガラス合糸ロービングの重量を表1に示す。
【0076】
次に、本比較例で得られたガラス合糸ロービングを用いた以外は実施例1と全く同一にして積層板(ガラス繊維強化熱可塑性樹脂シート)を製造し、ガラス合糸ロービングを前記範囲の長さに切断した後ベルトコンベア上に堆積させる際の分散性、前記積層板を製造する際の樹脂の含浸性、前記積層板の曲げ弾性率、前記積層板の曲げ強度、及び、ガラス合糸ロービングの生産性を、実施例1と全く同一にして、評価又は測定した。結果を表1に示す。
【0077】
〔比較例2〕
本比較例では、ガラスフィラメントを80本集束し、ガラスストランドの重量Sを34texとし、ガラスストランドを66本引き揃えた以外は実施例1と全く同一にして、強熱減量Lが0.80%、重量が2240texのガラス合糸ロービングを得た。
【0078】
本比較例で得られたガラス合糸ロービングを形成するガラスストランドの重量S、ガラスストランドの繊維径D、ガラス合糸ロービングの強熱減量L、1000×S1/2/(D3×L3)の値、ガラス合糸ロービングの重量を表1に示す。
【0079】
次に、本比較例で得られたガラス合糸ロービングを用いた以外は実施例1と全く同一にして積層板(ガラス繊維強化熱可塑性樹脂シート)を製造し、ガラス合糸ロービングを前記範囲の長さに切断した後ベルトコンベア上に堆積させる際の分散性、前記積層板を製造する際の樹脂の含浸性、前記積層板の曲げ弾性率、前記積層板の曲げ強度、及び、ガラス合糸ロービングの生産性を、実施例1と全く同一にして、評価又は測定した。結果を表1に示す。
【0080】
〔比較例3〕
本比較例では、強熱減量Lを0.15%とした以外は実施例4と全く同一にして、重量が2240texのガラス合糸ロービングを得た。
【0081】
本比較例で得られたガラス合糸ロービングを形成するガラスストランドの重量S、ガラスストランドの繊維径D、ガラス合糸ロービングの強熱減量L、1000×S1/2/(D3×L3)の値、ガラス合糸ロービングの重量を表1に示す。
【0082】
次に、本比較例で得られたガラス合糸ロービングを用いた以外は実施例1と全く同一にして積層板(ガラス繊維強化熱可塑性樹脂シート)を製造し、ガラス合糸ロービングを前記範囲の長さに切断した後ベルトコンベア上に堆積させる際の分散性、前記積層板を製造する際の樹脂の含浸性、前記積層板の曲げ弾性率、前記積層板の曲げ強度、及び、ガラス合糸ロービングの生産性を、実施例1と全く同一にして、評価又は測定した。結果を表1に示す。
【0083】
〔比較例4〕
本比較例では、強熱減量Lを1.30%とした以外は実施例4と全く同一にして、重量が2240texのガラス合糸ロービングを得た。
【0084】
本比較例で得られたガラス合糸ロービングを形成するガラスストランドの重量S、ガラスストランドの繊維径D、ガラス合糸ロービングの強熱減量L、1000×S1/2/(D3×L3)の値、ガラス合糸ロービングの重量を表1に示す。
【0085】
次に、本比較例で得られたガラス合糸ロービングを用いた以外は実施例1と全く同一にして積層板(ガラス繊維強化熱可塑性樹脂シート)を製造し、ガラス合糸ロービングを前記範囲の長さに切断した後ベルトコンベア上に堆積させる際の分散性、前記積層板を製造する際の樹脂の含浸性、前記積層板の曲げ弾性率、前記積層板の曲げ強度、及び、ガラス合糸ロービングの生産性を、実施例1と全く同一にして、評価又は測定した。結果を表1に示す。
【0086】
【表1】
表1から明らかなように、ガラスストランドの重量Sが、64~210texの範囲にあり、前記ガラスストランドの繊維径Dが、9.0~18.0μmの範囲にあり、前記ガラス合糸ロービングの強熱減量Lが、0.55~0.94%の範囲にあり、前記S、D及びLが下記式(1)を満たす実施例1~
5のガラス合糸ロービングによれば、前記熱可塑性複合材料用ランダムマットを製造する際の加工性に優れ、該熱可塑性複合材料用ランダムマットに熱可塑性樹脂を含浸させることにより熱可塑性複合材料(ガラス繊維強化熱可塑性樹脂シート)を形成する際に、該熱可塑性樹脂の優れた含浸性を確保することができ、さらに、該熱可塑性複合材料に優れた強度を付与することができることが明らかである。
【0087】
4.10≦1000×S1/2/(D3×L3)≦7.10 ・・・(1)
これに対し、前記ガラスストランドの重量Sが210texを超える280texであり、1000×S1/2/(D3×L3)の値が7.10超の9.68である比較例1のガラス合糸ロービング、及び、前記ガラスストランドの重量Sが64tex未満の34texであり、1000×S1/2/(D3×L3)の値が4.10未満の3.37である比較例2のガラス合糸ロービングによれば、熱可塑性複合材料用ランダムマットに熱可塑性樹脂を含浸させることにより熱可塑性複合材料を形成する際に、該熱可塑性樹脂の含浸性を十分に得ることができないことが明らかである。
【0088】
また、前記強熱減量Lが0.55%未満の0.15%であり、1000×S1/2/(D3×L3)の値が7.10超の1038.76である比較例3のガラス合糸ロービングによれば、ガラス合糸ロービングを前記範囲の長さに切断した後ベルトコンベア上に堆積させる際の分散性が低く、前記熱可塑性複合材料用ランダムマットを製造する際の加工性が低いことが明らかであり、また、熱可塑性複合材料用ランダムマットに熱可塑性樹脂を含浸させることにより熱可塑性複合材料を形成する際に、該熱可塑性樹脂の含浸性を十分に得ることができないことが明らかである。
【0089】
また、前記強熱減量Lが0.94%超の1.30%であり、1000×S1/2/(D3×L3)の値が4.10未満の1.60である比較例4のガラス合糸ロービングによれば、熱可塑性複合材料用ランダムマットに熱可塑性樹脂を含浸させることにより熱可塑性複合材料を形成する際に、該熱可塑性樹脂の含浸性を十分に得ることができないことが明らかである。