(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】搬送室
(51)【国際特許分類】
H01L 21/677 20060101AFI20240828BHJP
【FI】
H01L21/68 A
(21)【出願番号】P 2022182477
(22)【出願日】2022-11-15
(62)【分割の表示】P 2020169584の分割
【原出願日】2015-02-27
【審査請求日】2022-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137486
【氏名又は名称】大西 雅直
(72)【発明者】
【氏名】河合 俊宏
(72)【発明者】
【氏名】重田 貴司
(72)【発明者】
【氏名】小宮 宗一
(72)【発明者】
【氏名】谷山 育志
【審査官】内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-038888(JP,A)
【文献】特開2005-283049(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2004-0064326(KR,A)
【文献】特開平10-340874(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に設けられる搬送ロボットを用いて処理装置側との間で被搬送物の受け渡しを行うための、内部が密閉された搬送室であって、
ロードポートが接続される前面壁と、
前記処理装置の一部を構成するロードロック室が接続される開口が形成された背面壁と、
搬送空間に下向きの空気流を形成する第1ファンと、
前記背面
壁側に設けられ、前記搬送空間を下方に向かって流れた空気流を前記第1ファンよりも上方に循環させるガス戻り空間とを有し、
前記ガス戻り空間は、前記搬送室内における前記開口の両側に設けられ
、
前記ガス戻り空間に上向きの空気流を形成する第2ファンを有することを特徴とする搬送室。
【請求項2】
前記ガス戻り空間は
、2つ設けられることを特徴とする請求項1に記載の搬送室。
【請求項3】
前記第2ファンは、前記ロードポート側の前面壁に設けた開口のウェハ搬出入部より下にあることを特徴とする請求項1または2に記載の搬送室。
【請求項4】
前記第2ファンは、複数設けられ、
前記複数の第2ファンは、前記ガス戻り空間に対してそれぞれ配置されることを特徴とする請求項
1~3いずれか一項に記載の搬送室。
【請求項5】
前記ガス戻り空間の吸い込み口は、前記搬送室の底面よりも上方に配置されることを特徴とする請求項1~4いずれか一項に記載の搬送室。
【請求項6】
前記搬送室内を循環するガスを浄化するガス処理ボックスをさらに有しており、
前記搬送空間のガスは、前記ガス戻り空間の吸い込み口から前記ガス戻り空間へ入り、前記第2ファンによって上昇気流となって前記ガス処理ボックスを通って、前記第1ファンにより下降気流となって前記搬送空間へ循環される請求項
1~4いずれか一項に記載の搬送室。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外気に晒すことなくクリーンな状態で被搬送物の搬送を行うことのできる搬送室に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体分野においては、ウエハに種々の処理工程が施されることにより半導体デバイスの製造が行われてきている。
【0003】
半導体デバイス製造工程では、パーティクルレス・ケミカル成分レスによるウエハの搬送環境が求められており、FOUP(Front-Opening Unified Pod)と呼ばれる密閉式の収容容器と、処理装置との間でウエハの受け渡しを行う一般にEFEM(Equipment Front End Module)と称される搬送室が用いられている(下記特許文献1参照)。搬送室では、通常、上部に設置されたFFU(Fun Filter Unit)にてクリーンルーム内のフレッシュな外気を吸込み、内部をダウンフローさせて床面より外部に排出する事で、一定のクリーンな雰囲気を安定的に得ることができる。
【0004】
さらに近年、半導体デバイス構造の微細化が進むにつれて、水分、酸素、ケミカル成分などより受ける影響がより問題視されるようになってきており、これらに対しては、搬送室内部を不活性ガスであるN2(窒素)ガスにより置換して、N2雰囲気下においてウエハの搬送を行うことが提案されている。その場合、N2ガスの消費量を少なくしてランニングコストの抑制を図るためには、フレッシュなN2ガスの供給量を少なくしながら内部での清浄を保つ必要性から、フィルタを通過させつつN2ガスを循環させることが考えられる。
【0005】
さらに、循環するN2ガス内よりケミカル成分を効率的に除去するためにケミカルフィルタを設けることも考えられる。搬送室内には、処理装置によってプロセス処理されたウエハによってケミカル成分が持ち込まれる場合があることから、ケミカルフィルタを用いてこうしたケミカル成分を効率的に除去し、一層清浄な雰囲気に保つことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように搬送室内部でガスを循環させる場合には、ガス戻り空間が重要になってくる。
【0008】
また、上述のように搬送室内部でガスを循環させる場合には、ファンが重要になってくる。
【0009】
本発明は、清浄な状態で被搬送物の搬送を行うことのできる搬送室を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、かかる目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0011】
すなわち、本発明の搬送室は、内部に設けられる搬送ロボットを用いて処理装置側との間で被搬送物の受け渡しを行うための、内部が密閉された搬送室であって、ロードポートが接続される前面壁と、前記処理装置の一部を構成するロードロック室が接続される開口が形成された背面壁と、搬送空間に下向きの空気流を形成する第1ファンと、前記背面壁側に設けられ、前記搬送空間を下方に向かって流れた空気流を前記第1ファンよりも上方に循環させるガス戻り空間とを有し、前記ガス戻り空間は、前記搬送室内における前記開口の両側に設けられ、前記ガス戻り空間に上向きの空気流を形成する第2ファンを有することを特徴とすることを特徴とする。
【0012】
前記ガス戻り空間は、2つ設けられることが好適である。
【0013】
また、前記第2ファンは、前記ロードポート側の前面壁に設けた開口のウェハ搬出入部より下にあることが好適である。
【0014】
前記第2ファンは、複数設けられ、前記複数の第2ファンは、前記ガス戻り空間に対してそれぞれ配置されることが好適である。
【0015】
前記ガス戻り空間の吸い込み口は、前記搬送室の底面よりも上方に配置されることが好適である。
【0016】
前記搬送室内を循環するガスを浄化するガス処理ボックスをさらに有しており、前記搬送空間のガスは、前記ガス戻り空間の吸い込み口から前記ガス戻り空間へ入り、前記第2ファンによって上昇気流となって前記ガス処理ボックスを通って、前記第1ファンにより下降気流となって前記搬送空間へ循環されることが好適である。
【発明の効果】
【0017】
以上説明した本発明によれば、循環路に沿って内部で清浄なガスを循環することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態に係る搬送室と処理装置との関係を模式的に示す平面図。
【
図3】
図1のA-A位置における同搬送室の断面図。
【
図4】
図3のB-B位置における同搬送室の断面図。
【
図5】同搬送室の内部雰囲気を制御するための構成を模式的に示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0020】
図1は、本発明の実施形態に係る搬送室1と、これに接続する処理装置6との関係を模式的に示した平面図である。この図に示すように、搬送室1は一般にEFEMと称されるモジュール機器として構成されている。具体的には、この搬送室1は、所定の受け渡し位置の間で被搬送物であるウエハWの搬送を行う搬送ロボット2と、この搬送ロボット2を囲むように設けられた箱型の筐体3と、筐体3の前面側の壁(前面壁31)の外側に接続される複数(図中では3つ)のロードポート4~4とから構成されている。
【0021】
ここで、本願においては筐体3より見てロードポート4~4が接続される側の向きを前方、前面壁31に対向する背面壁32側の向きを後方と定義し、さらに、前後方向及び垂直方向に直交する方向を側方と定義する。すなわち、3つのロードポート4~4は側方に並んで配置されている。
【0022】
また、搬送室1は、
図1に示すように、背面壁32の外側に隣接して、処理装置6の一部を構成するロードロック室61が接続できるようになっており、搬送室1とロードロック室61との間に設けられた扉1aを開放することで、搬送室1内とロードロック室61とを連通した状態にすることが可能となっている。処理装置6としては種々様々なものを使用できるが、一般には、ロードロック室61と隣接して中継室62が設けられ、さらに中継室62と隣接して、ウエハWに処理を行う複数(図中では3つ)の処理ユニット63~63が設けられる構成となっている。中継室62と、ロードロック室61や処理ユニット63~63との間には、それぞれ扉62a,63a~63aが設けられており、これらを開放することで各々の間を連通させることができ、中継室62内に設けられた搬送ロボット64を用いてロードロック室61及び処理ユニット63~63の間でウエハWを移動させることが可能となっている。
【0023】
図2は搬送室1をロードポート4側より見た斜視図であり、
図3は
図1のA-A位置における搬送室1の断面を示したものである。
【0024】
図2,3に示すように、搬送室1を構成する筐体3は、本体ボックス3Aと、ケミカルフィルタボックス3Bと、制御ボックス3Cとから構成されており、そして本体ボックス3Aは、内部の搬送ロボット2(
図1参照)と前面壁31に設けられたロードポート4~4とともに搬送室本体1Aを構成している。また、本体ボックス3Aと、ケミカルフィルタボックス3Bと、制御ボックス3Cとは互いに分離可能とされている。
【0025】
筐体3の前面壁31、後面壁32、左側面壁33,右側面壁34は、本体ボックス3A、ケミカルフィルタボックス3B、制御ボックス3Cの前面壁31A,31B,31C、後面壁32A,32B,32C、左側面壁33A,33B,33C,右側面壁34A,34B,34Cによってそれぞれ構成されている。そして、筐体3の上面壁35は制御ボックス3Cの上面壁35Cによって構成され、筐体3の底面壁36は本体ボックス3Aの底面壁36Aによって構成されている。また、本体ボックス3Aの上面壁35Aにケミカルフィルタボックス3Bの底面壁36Bが当接し、ケミカルフィルタボックス3Bの上面壁35Bに制御ボックス3Cの底面壁36Cが当接した状態で相互に固定されている。
【0026】
本体ボックス3Aの前面壁31Aに設けられた開口31aにはロードポート4が接続され、背面壁32Aに設けられた矩形状の開口32a(
図1参照)は一般にゲートバルブと称される扉1aによって閉止されている。さらに、本体ボックス3Aの上面壁35Aには2つの開口35A1,35A2が設けられ、これらに対応する位置にケミカルフィルタボックス3Bの底面壁36Bにも開口36B1,36B2が設けられることで、本体ボックス3A内の空間S1と、ケミカルフィルタボックス3B内の空間S2とが連通し、一つの略密閉空間CSが形成されている。
【0027】
本体ボックス3A内の空間S1に設けられた搬送ロボット2は、ウエハWを載置して搬送するピックを備えたアーム部2aとこのアーム部2aを下方より支持し、アーム部2aを動作させるための駆動機構及び昇降機構を有するベース部2bとから構成されており、ベース部2bは、本体ボックス3Aの前面壁31Aに支持部21及びガイドレール22を介して支持されている。そして、搬送ロボット2は本体ボックス3A内の幅方向に延在するガイドレール22に沿って移動できるようになっており、後述する制御手段5が搬送ロボット2の動作を制御することによって、各ロードポート4~4に載置されたFOUP41に収容されるウエハWのロードロック室61への搬送、及び、各処理ユニット63~63における処理後のウエハWをFOUP41内へ再び搬送することが可能となっている。
【0028】
ケミカルフィルタボックス3B内には、一般にいうケミカルフィルタとしてのケミカルフィルタユニット7が設けられている。ケミカルフィルタユニット7は、これを通過するガスに含まれるケミカル成分のうち有機物成分を除去するための有機物除去フィルタ71と、酸成分を除去するための酸除去フィルタ72と、アルカリ成分を除去するためのアルカリ除去フィルタ73より構成されており、各フィルタ71~73はそれぞれ独立して交換可能となっている。
【0029】
制御ボックス3Cの内部には、搬送室本体1A全体の制御を行うためのコントロールユニットである制御手段5が設けられている。制御手段5は、CPU、メモリ及びインターフェースを備えた通常のマイクロプロセッサ等により構成されるもので、メモリには予め処理に必要なプログラムが格納してあり、CPUは逐次必要なプログラムを取り出して実行し、周辺ハードリソースと協働して所期の機能を実現するものとなっている。制御手段5は、後述するように本体ボックス3A内の搬送ロボット2やロードポート4の動作、各扉1a,4aの開閉、及び、本体ボックス3Aやケミカルフィルタボックス3B内へのガスの供給などの制御を行う。
【0030】
本体ボックス3A内の空間S1は、
図3に示すように、底面壁36Aより上面壁35Aまで延びる内部壁37Aによって搬送ロボット2が動作する空間である搬送空間S11と、ガス帰還空間S12とに仕切られている。そして、内部壁37Aの下部には開口37A1が設けられ、この開口37A1を介して搬送空間S11とガス帰還空間S12とは下側で連通している。さらに、開口37A1と連続してガス帰還空間S12の下部にファン77が設けられており、このファン77を駆動させることで搬送空間S11内のガスをガス帰還空間S12に取込み、ガス帰還空間S12内で上向き気流を作り出すことができるようになっている。
【0031】
ここで、
図4は、
図3のB-B位置における断面図である。この図から分かるように、ガス帰還空間S12の中央部には、ロードロック室61(
図1参照)との間の扉1aを囲む壁部38Aが形成されており、扉1a周りの空間は搬送空間S11(
図3参照)と連続している。そのため、ガス帰還空間S12は下方から扉1aを避けるように二手に分かれ、上方で再び合流するように構成されている。
【0032】
図3に戻って、搬送空間S11及びガス帰還空間S12は、上述した上面壁35Aの開口35A1,35A2を介してそれぞれケミカルフィルタボックス3B内の空間S2と連通している。そのため、搬送空間S11とガス帰還空間S12とは、上側においてもケミカルフィルタボックス3B内の空間S2を介して連通している。
【0033】
搬送空間S11の上部、具体的には、上面壁35Aよりやや下方に離間した位置にはFFU76が設けられており、ケミカルフィルタボックス3B内の空間S2より取り込んだガスをFFU76によって下方に送り出し、搬送空間S11内でダウンフローを形成することができる。さらに、FFU76には、HEPA(High Efficiency Particulate Air)フィルタや、ULPA(Ultra Low Penetration Air)フィルタなどの高性能なフィルタが組み込まれており、通過するガスの内部に含まれる微小なパーティクルの捕集を行うことが可能となっている。
【0034】
一方、ケミカルフィルタボックス3Bには、上述した底面壁36Bの開口36B1とケミカルフィルタユニット7との間に吐出用ファン75が設けられ、開口36B2の上方に吸引用ファン76が設けられている。開口36B2及びこれと連続する開口35A2はケミカルフィルタユニット7に向けてガスを流入させるガス流入口として機能し、これら開口36B2,35A2を介して、吸引用ファン76はガス帰還空間S12よりケミカルフィルタボックス3B内にガスを流入させる。そして、開口36B1及びこれと連続する開口35A1はケミカルフィルタユニット7よりガスを吐出させるガス吐出口として機能し、吐出用ファン75はケミカルフィルタユニット7を通過したガスを、これら開口35B1,35A1を介して搬送空間S11に送り込むことができる。従って、2つのファン75,76によってケミカルフィルタユニット7による圧力損失分を補償して、ガスの流れを作り出すことが可能となっている。
【0035】
上記のように、本体ボックス3A及びケミカルフィルタボックス3B内で形成される略密閉空間CSでは、内部雰囲気を構成するガスが次のような循環路CLに沿って循環する。すなわち、循環路CLは、搬送空間S11の上部に設けられたFFU76より下方に向かって進み、そして内部壁37Aの下部に設けられた開口37A1及びファン77を通ってガス帰還空間S12を上方に進み、開口35A2,36B2通ってから吸引用ファン74を介してケミカルフィルタボックス3B内の空間S2に入り、ケミカルフィルタユニット7を通過して、吐出用ファン75及び開口36B1,35A1を通り搬送空間S11に戻るように形成される。従って、ケミカルフィルタユニット7は、循環路CLの途中に設けられているということができる。
【0036】
このように循環路CLが形成される略密閉空間CSにN2ガスを供給してパージするため、ケミカルフィルタボックス3Bの後面壁32Bにガス供給口91が設けられ、本体ボックス3Aの後面壁32Aにはガス排出口92が設けられている。
【0037】
これらガス供給口91及びガス排出口92には、
図5に示すように、ガス供給ラインGS、ガス排出ラインGEがそれぞれ接続されている。
【0038】
ガス供給ラインGSは、N2ガス供給源から導かれる配管にレギュレータ93、バルブ94、MFC(気体流量コントローラ)95、バルブ94が順に設けられることで構成されたガス供給手段NSを備えている。
【0039】
そしてガス排出ラインGEには、ガス排出口92Aに接続された配管に流量調整バルブ98、バルブ94が順に設けられ、その先にガスの排出先が接続されている。
【0040】
そのため、これらによってガス排出口92から排出を行いながら、ガス供給口91からN2ガスを供給することで、略密閉空間CS内の空気を排除してN2ガスで満たすことができる。
【0041】
そして、一定以上にN2ガスの濃度が高まったところで、ガス供給口91からのN2ガスの供給量を少なくしながら、ガス排出口92Aからの排出量を僅かにして、内部を陽圧に保つようにしている。この状態で、内部のガスを循環路CLに従って循環させることで、ガスに含まれるパーティクルやケミカル成分をFFU76やケミカルフィルタユニット7によって除去して、内部を清浄な状態に保つことが可能となっている。また、N2ガスはほとんど水分を含まない乾燥ガスであることから、内部の水分を少なくしてウエハW表面の腐食を防ぐこともできる。
【0042】
ところで、上記のように内部の雰囲気の置換に用いられるN2ガスを供給し続けることによって内部の水分が少なくなりすぎ、ケミカルフィルタユニット7によるケミカル成分の除去性能が低下する場合がある。
【0043】
図3に示すようにケミカルフィルタユニット7を構成する有機物除去フィルタ71、酸除去フィルタ72、アルカリ除去フィルタ73のうち、有機物除去フィルタ71は吸着により有機物成分を除去するのに対して、酸除去フィルタ72及びアルカリ除去フィルタ73は加水分解反応により酸成分やアルカリ成分を除去する。従って、酸成分やアルカリ成分の除去のためには一定以上の水分が必要であり、ガス中の湿度が低くなりすぎると除去性能が著しく低下する。
【0044】
そこで、本実施形態では、内部の湿度を一定に保つために、ガス供給手段NSから供給されるN2ガスに水分を含ませることができるように下記の水分供給手段HSを備えている。
【0045】
水分供給手段HSは、水供給源に接続された配管に接続されるバルブ94、流量制御部としてのLFC(液体流量コントローラ)99、バルブ94、一般にインジェクションと称される噴霧器96、気化器97、及び、気化器97に含まれるヒータ97aを動作させるヒータコントローラ97bとから構成されている。
【0046】
具体的には水供給源に接続された配管にバルブ94、LFC99、バルブ94が順に接続され、さらに、ガス供給ラインGSの途中に設けられた噴霧器96に接続されている。そのため、LFC99によって水の流量を調整することで与える水分量を決定することができ、噴霧器96によって水を微小な霧状にしてN2ガスに含ませることができる。そして噴霧器96の下流側には、コイル状に形成された配管と、この配管を加熱するためのヒータ97aとから構成される気化器97が設けられている。ヒータ97aはヒータコントローラ97bにより電力を供給されることで、配管を流れるガスを加熱して、内部に含まれる水粒子を気化させることができる。さらに、噴霧器96より、気化器97を介してガス供給口91に至るまでのガス供給ラインGSを構成する配管には、配管保温材と保温用ヒータからなる保温手段HIが設けられており、一旦気化した水分が結露し、水滴となってケミカルフィルタボックス3B内に流入することがないようにしている。
【0047】
また、上記のガス供給手段NSと水分供給手段HSとは、協働して略密閉空間CS内に水分を含んだN2ガスを供給するためのガス・水分供給手段NHSを構成している。
【0048】
こうしたガス・水分供給手段NHSの制御を行うために、本体ボックス3A内の空間S1と、ケミカルフィルタボックス3B内の空間S2には、湿度を検出する湿度検出手段としての湿度検出器HG1,HG2がそれぞれ設けられている。そしてさらに、本体ボックス3A内の空間S1と外部との圧力差を検出する圧力検出手段としての圧力検出器PGが設けられている。
【0049】
そして、これらからの検出値を基にしてガス供給手段NSの制御を行うため、上述した制御手段5は次のような構成を備えている。
【0050】
制御手段5は、ガス(N2)流量決定部51と、水(H2O)流量決定部52と、ヒータ動作指令部53と、圧力取得部54と、湿度取得部55と、記憶部56とを備えている。
【0051】
記憶部56には、あらかじめ定められた所定値である圧力目標値及び湿度目標値とが記憶されている。圧力取得部54は圧力検出器PGからの出力を取得し、圧力検出値として出力することができる。湿度取得部55は湿度検出器HG1,HG2からの出力を取得し、湿度検出値としてそれぞれ出力することができる。
【0052】
ガス流量決定部51は、圧力取得部54により得られる圧力検出値を基にして、ガス供給ラインGSより供給されるN2ガスの流量を決定し、対応するガス流量指令値をMFC95に出力するように構成されている。より具体的には、圧力検出値が圧力目標値を中心とする所定範囲内にある場合にはガス流量指令値をそのまま維持させ、圧力検出値が上記の所定範囲よりも小さい場合にはN2ガスの供給量を増やし、圧力検出値が上記の所定範囲よりも大きい場合にはN2ガスの供給量を減らすようにガス流量指令値を変化させる。
【0053】
水流量決定部52は、湿度取得部55を介して得られる湿度検出器HG2による湿度検出値を基にして、水供給手段HSより供給される水の流量を決定し、対応する水流量指令値をLFC99に出力するように構成されている。より具体的には、湿度検出値が湿度目標値を中心とする所定範囲内にある場合には水流量指令値をそのまま維持させ、湿度検出値が上記の所定範囲よりも小さい場合には水の供給量を増やし、湿度検出値が上記の所定範囲よりも大きい場合には水の供給量を減らすように水流量指令値を変化させる。なお、湿度検出値が湿度目標値よりも大きい場合には、水の供給量をゼロにしてN2ガスのみを供給させても良い。こうした湿度の制御について、PID制御を利用して、オーバシュートやハンチングを抑制することも好適である。なお、上記の制御を行う場合、湿度検出器HG1による湿度検出値はモニタ用に用いるが、湿度検出器HG2による湿度検出値をモニタ用にして湿度検出器HG1による湿度検出値を制御用に用いることもできる。
【0054】
ヒータ動作指令部53は、水流量決定部52により決定された水流量指令値に対応してヒータ97aを動作させるべく、ヒータコントローラ97bに命令を与えるように構成されている。
【0055】
上記のように搬送室1が構成されることによって、以下のように動作を行わせることができる。
【0056】
まず、搬送室1の動作を開始させる場合には、
図5に示すように、内部の略密閉空間CSに、ガス供給口91よりガス供給ラインGSを介してN2ガスを供給しながら、ガス排気口92よりガス排出ラインGEを介して空気を排除し、N2ガスによるパージを行う。この際、圧力検出器PGから得られる出力より圧力取得部54が圧力検出値を取得し、この圧力検出値を基にガス流量決定部51がガス流量指令値を決定してMFC95に出力する。そして、MFC95がガス流量指令値に合わせてガス流量を調整することで、略密閉空間CSに供給されるN2ガスの流量が変更される。こうすることで略密閉空間CSの内部を外部よりも圧力の高い陽圧に保ち、外部からのパーティクルの侵入を防止することができる。
【0057】
さらに、制御手段5によって、FFU76及びファン74,75,77の動作を行わせることで、循環路CLに沿って内部でガスを循環させることができ、ケミカルフィルタユニット7及びFFU76によって、ガス中に含まれるパーティクルやケミカル成分を除去して清浄な状態にすることができる。
【0058】
そしてさらに、制御手段5を構成する湿度取得部55が、湿度検出器HG2から得られる出力より湿度検出値を取得し、この湿度検出値を基に水流量決定部52が水流量指令値を決定してLFC99に出力する。LFC99は水流量指令値に合わせて水流量を調整することで、略密閉空間CSに供給されるN2ガスに含ませる水分量が調整される。また、水分は噴霧器96により微小粒子として与えられた後に、下流側の気化器97を用いて気化された状態でケミカルフィルタボックス3B内に与えられる。こうすることで、略密閉空間CS内では、ケミカルフィルタユニット7による加水分解反応を損なわない程度の僅かな湿度を保つことができ、ケミカル成分を効果的に除去するとともに、過度の湿度によるウエハWの腐食を防ぐこともできる。
【0059】
上記のように内部の雰囲気が清浄となることで、略密閉空間CS内の陽圧を保ちながら、N2ガスの供給量を減少させる通常状態に移行し、N2ガスの消費量を削減する。そして、制御手段5によって搬送ロボット2や、
図1に示すロードポート4~4及び各ドア1a,4a~4aを動作させることで、清浄な状態を保ちながら被搬送物であるウエハWの搬送を行うことができる。
【0060】
さらには、通常運転を行っている間でも、上記の湿度検出器HG2による湿度検出値に基づく湿度制御を継続して行うことで、ケミカルフィルタユニット7による除去性能を維持することができ、処理装置6側よりウエハWとともにケミカル成分が流入した場合でも、これを適切に除去して内部を清浄な状態に保つことができる。
【0061】
以上のように本実施形態における搬送室1は、内部に設けられる搬送ロボット2を用いて処理装置6側との間で被搬送物としてのウエハWの受け渡しを行うためのものであって、ガスを循環させるために内部に形成された循環路CLと、循環路CLの途中に設けられたケミカルフィルタとしてのケミカルフィルタユニット7と、内部の湿度を検出する湿度検出手段としての湿度検出器HG2と、内部にガスを供給するガス供給手段NSと、内部に水分を供給する水分供給手段HSと、を備えており、湿度検出手段による湿度検出値に基づいて水分供給手段HSを動作させるように構成したものである。
【0062】
搬送室内部でガスを循環させる場合には、処理装置側より持ち込まれたケミカル成分を外部に排出することがほとんど見込めなくなることから、ケミカルフィルタによる除去をより効率的に行うことが必要となってくる。ケミカルフィルタは、酸成分とアルカリ成分に関して加水分解反応を利用した除去メカ二ズムを伴うため、湿度を低くしすぎると酸成分やアルカリ成分の除去が困難になる。搬送室内に供給するN2ガスは通常水分をほとんど含んでいないことから、搬送室内が低湿度状態となって十分にケミカル成分の除去を行うことができなくなるおそれがあるが、上記実施例では湿度検出器HG2による湿度検出値に基づいて水分供給手段HSを動作させることで内部の湿度を適正に保つことができるため、ケミカルフィルタユニット7に適切に加水分解反応を行わせ、ケミカル成分を除去して内部を清浄な状態に保つことができる。そのため、清浄な状態を維持したままウエハWを搬送させることが可能となっており、ウエハWを用いて製造する半導体デバイスの歩留まりを向上させることができる。
【0063】
さらに、水分供給手段HSが、ガス供給手段NSからのガス供給ラインGSの途中においてガスに水分を含ませるように構成されていることから、より安定して水分を供給することが可能となっている。
【0064】
そして、水分供給手段HSを、水分供給源に接続された流量制御部としてのLFC99と、LFC99より供給された水をガス内に噴霧する噴霧器96と、ガス内に噴霧された水を気化させる気化器97とによって構成していることから、簡単且つ適切に供給する水分量を制御することが可能となっている。
【0065】
また、水分供給手段HSによる水分の供給より下流側のガス供給ラインGSにおいて、配管を保温する保温手段HIが設けられるように構成していることから、水分供給手段HSによる水分の供給後にガスの温度が露点以下にまで下がって結露することを防止できるため、内部の湿度を適正に保ちつつ余分な水分が侵入することを抑制することが可能となっている。
【0066】
なお、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではない。
【0067】
例えば、上述の実施形態では、内部を満たすガスとしてN2ガスを用いていたが、同じ不活性ガスであるAr(アルゴン)ガスも好適に利用することができる。さらには、水の気体すなわち水蒸気以外のものであれば、N2ガスやArガス以外のものを用いることもでき、被搬送物であるウエハWに対する処理の内容に応じて適宜変更することができる。
【0068】
また、この搬送室1は、ウエハW以外の被搬送物を搬送させるためにも用いることができる。
【0069】
さらに、上述の実施形態では、水分供給手段HSを、略密閉空間CSに供給するN2ガスに水分を供給するように構成していたが、略密閉空間CS内に直接水分を供給するように構成することもでき、その場合でも上記に準じた効果を得ることができる。
【0070】
そしてさらに、上述の実施形態では、湿度検出器HG2による検出値に基づいて水分供給手段HSを動作させることで、略密閉空間CS内を目的の湿度に維持するようにしていたが、湿度検出器HG2による検出値を用いることなく、所定時間経過毎に水分供給手段HSより所定量の水分を供給させるように構成してもよい。こうすることでも略密閉空間CS内を目的の湿度に維持することができ、上記に準じた効果を得ることが可能となる上に、湿度検出器HG2を不要とすることで、さらに製造コストを削減することも可能となる。
【0071】
その他の構成も、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0072】
1…搬送室
2…搬送ロボット
5…制御手段
6…処理装置
7…ケミカルフィルタユニット(ケミカルフィルタ)
96…噴霧器
97…気化器
99…LFC(流量制御部)
CL…循環路
GE…ガス排出ライン
GS…ガス供給ライン
HS…水分供給手段
HG1,HG2…湿度検出器(湿度検出手段)
HI…保温手段
NS…ガス供給手段
W…ウエハ(被搬送物)