(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】アクリル酸誘導体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 67/30 20060101AFI20240828BHJP
C07C 69/653 20060101ALI20240828BHJP
【FI】
C07C67/30
C07C69/653
(21)【出願番号】P 2022548345
(86)(22)【出願日】2021-09-10
(86)【国際出願番号】 JP2021033245
(87)【国際公開番号】W WO2022054894
(87)【国際公開日】2022-03-17
【審査請求日】2023-03-03
(31)【優先権主張番号】P 2020153119
(32)【優先日】2020-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松浦 誠
(72)【発明者】
【氏名】富岡 真帆
(72)【発明者】
【氏名】岡田 倫明
(72)【発明者】
【氏名】白井 淳
(72)【発明者】
【氏名】石原 寿美
(72)【発明者】
【氏名】岸川 洋介
【審査官】澤田 浩平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第1998/033760(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第104478715(CN,A)
【文献】特表2001-506643(JP,A)
【文献】特開平05-201921(JP,A)
【文献】特開昭55-147258(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 67/30
C07C 69/653
CAplus/REGISTRY/CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1):
【化1】
[式中、
R
1は、水素原子、アルキル基、フルオロアルキル基、1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、又はハロゲン原子を表し、
R
3は、水素原子、アルキル基、フルオロアルキル基、又は1個以上の置換基を有していてもよいアリール基を表し、及び
Xは
、ハロゲン原子
又はフルオロアルキル基を表す。]
で表されるアクリル酸誘導体の製造方法であって;
式(A1):X-CH
2
-CO-O-R
3
[式中の記号は、前記と同意義を表す。]で表される化合物を、塩基の存在下で、式(A2):(CO
2
R
2
)
2
[式中、R
2
は、各出現において同一又は異なって、水素原子、アルキル基、又はアリール基を表す。]で表されるシュウ酸化合物と反応させて、
式(A3A):
【化2】
[式中、
R
2は、
前記と同意義を表し、
R
3は、前記と同意義を表し、
Xは、前記と同意義を表し、及び
Mは、水素原子又は金属を表す。]
で表される化合物、又は
式(A3B):
【化3】
[式中の記号は前記と同意義を表す。]
で表される化合物、或いは
これらの組合せを
得る工程A、及び
式(A3A)で表される化合物、又は式(A3B)で表される化合物、或いはこれらの組合せを、プロトン供与体、及びアルデヒド化合物と接触させて、前記式(1)で表される化合物を得る工程B
を含み、前記プロトン供与体が水であ
り、前記プロトン供与体が前記式(A1)で表される化合物1モルに対して0.01~0.3モルの範囲内の量で用いられる、製造方法。
【請求項2】
R
1が、水素原子、直鎖状若しくは分枝鎖状C1-6アルキル基、又はアリール基である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
R
1が、水素原子、又は直鎖状若しくは分枝鎖状C1-6アルキル基である請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
R
3が、C1-6アルキル基、又はC1-6フルオロアルキル基である請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
R
3が、C1-4アルキル基、又はC1-4フルオロアルキル基である請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
Xが、ハロゲン原子である請求項
1~5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
Xが、フッ素原子である請求項
1~5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記塩基が、
(1)アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物;
(2)アルカリ金属又はアルカリ土類金属のアルコキシド;
(3)アルキルリチウム;
(4)アルキルナトリウム;及び
(5)アルキル金属ハライド
からなる群より選択される一種以上の塩基である請求項
1~7のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記塩基が、式:ROM
(当該式中、
Rは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、tert-ペンチル、ネオペンチル、イソペンチル、sec-ペンチル、3-ペンチル、n-ヘキシル、3級炭素含有ヘキシル、4級炭素含有ヘキシル、n-ヘプチル、又はイソヘプチルであり;及び
Mは、ナトリウム、カリウム、又はリチウムである。)
で表されるアルコキシドである請求項
8に記載の製造方法。
【請求項10】
R
2が、各出現において独立してアルキル基である請求項
1~
9のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項11】
工程Aの反応後、式(A3A)又は式(A3B)で表される化合物を固体として分離しない、請求項
1~
10のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アクリル酸誘導体の製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル酸誘導体は、吸水性ポリマーの原料、無機ガラスの代用品として建築や乗物の窓材、照明器具のカバー、提灯看板、道路標識、日用品、事務用品、工芸品、腕時計の風防などに利用されるアクリル樹脂の原料、アクリル樹脂塗料の原料としても広く使用されている。また、含フッ素アクリル誘導体は医薬(例えば、抗生物質)の合成中間体、光学繊維のさや材料用の合成中間体、塗料用材料の合成中間体、半導体レジスト材料の合成中間体、及び機能性高分子の単量体等として有用である。
α-フルオロアクリル酸エステルの製造方法として、特許文献1には、ナトリウムメトキシドに代表される強塩基の存在下で、等モル量のCH2FCOOR[当該式中、Rは低級アルキル基を表す。]とアルデヒドとを反応させて、α-フルオロアクリル酸エステルを製造する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、今なお、アクリル酸誘導体を製造できる新たな製造方法の提供が求められている。本発明者らは、特許文献1に記載の方法においては、いかに反応条件を最適化しても、実際上、高い転化率、及び/又は高い収率でアクリル酸誘導体を製造することができないことを見出した。
【0005】
従って、本開示は、アクリル酸誘導体の、新たな製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討の結果、
式(1):
【化1】
[式中、
R
1は、水素原子、アルキル基、フルオロアルキル基、1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、又はハロゲン原子を表し、
R
3は、水素原子、アルキル基、フルオロアルキル基、又は1個以上の置換基を有していてもよいアリール基を表し、及び
Xは、水素原子、フルオロアルキル基、アルキル基、又はハロゲン原子を表す。]
で表されるアクリル酸誘導体の製造方法であって;
式(A3A):
【化2】
[式中、
R
2は、水素原子、アルキル基、又はアリール基を表し、
R
3は、前記と同意義を表し、
Xは、前記と同意義を表し、及び
Mは、水素原子又は金属を表す。]
で表される化合物、又は
式(A3B):
【化3】
[式中の記号は前記と同意義を表す。]
で表される化合物
或いはこれらの組合せを、プロトン供与体、及びアルデヒド化合物と接触させて、前記式(1)で表される化合物を得る工程B
を含む製造方法
によって、前記課題が解決できることを見出した。
【0007】
本開示は、次の態様を含む。
【0008】
項1.
式(1):
【化4】
[式中、
R
1は、水素原子、アルキル基、フルオロアルキル基、1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、又はハロゲン原子を表し、
R
3は、水素原子、アルキル基、フルオロアルキル基、1個以上の置換基を有していてもよいアリール基を表し、及び
Xは、水素原子、フルオロアルキル基、アルキル基、又ハロゲン原子を表す。]
で表されるアクリル酸誘導体の製造方法であって;
式(A3A):
【化5】
[式中、
R
2は、水素原子、アルキル基、又はアリール基を表し、
R
3は、前記と同意義を表し、
Xは、前記と同意義を表し、及び
Mは、水素原子又は金属を表す。]
で表される化合物、又は
式(A3B):
【化6】
[式中の記号は前記と同意義を表す。]
で表される化合物、或いは
これらの組合せを、プロトン供与体、及びアルデヒド化合物と接触させて、前記式(1)で表される化合物を得る工程B
を含む製造方法。
項2.
R
1が、水素原子、直鎖状若しくは分枝鎖状C1-6アルキル基、又はアリール基である項1に記載の製造方法。
項3.
R
1が、水素原子、又は直鎖状若しくは分枝鎖状C1-6アルキル基である項2に記載の製造方法。
項4.
R
3が、C1-6アルキル基、又はC1-6フルオロアルキル基である項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
項5.
R
3が、C1-4アルキル基、又はC1-4フルオロアルキル基である項4に記載の製造方法。
項6.
Xが、ハロゲン原子又はフルオロアルキル基である項1~5のいずれか一項に記載の製造方法。
項7.
Xが、ハロゲン原子である項6に記載の製造方法。
項8.
Xが、フッ素原子である項6に記載の製造方法。
項9.
式(A1):X-CH
2-CO-O-R
3[式中の記号は、前記と同意義を表す。]で表される化合物を、塩基の存在下で、式(A2):(CO
2R
2)
2[式中、R
2は、各出現において同一又は異なって、水素原子、アルキル基、又はアリール基を表す。]で表されるシュウ酸化合物と反応させて、前記式(A3A)で表される化合物、又は前記式(A3B)で表される化合物或いはこれらの組合せを得る工程Aを更に含む項1~8のいずれか一項に記載の製造方法。
項10.
前記塩基が、
(1)アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物;
(2)アルカリ金属又はアルカリ土類金属のアルコキシド;
(3)アルキルリチウム;
(4)アルキルナトリウム;及び
(5)アルキル金属ハライド
からなる群より選択される一種以上の塩基である項9に記載の製造方法。
項11.
前記塩基が、式:ROM
(当該式中、
Rは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、tert-ペンチル、ネオペンチル、イソペンチル、sec-ペンチル、3-ペンチル、n-ヘキシル、3級炭素含有ヘキシル、4級炭素含有ヘキシル、n-ヘプチル、又はイソヘプチルであり;及び
Mは、ナトリウム、カリウム、又はリチウムである。)
で表されるアルコキシドである項10に記載の製造方法。
項12.
R
2が、各出現において独立してアルキル基である項9~11のいずれか一項に記載の製造方法。
項13.
前記プロトン供与体が、水、及び/又は有機酸、無機酸、若しくは固体酸である項1~12のいずれか一項に記載の製造方法。
項14.
前記プロトン供与体が、水、及び/又は有機酸である項13に記載の製造方法。
項15.
工程Aの反応後、式(A3A)又は式(A3B)で表される化合物を固体として分離しない、項9~14のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本開示の製造方法によれば、高い転化率、及び/又は高い収率でアクリル酸誘導体を製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
用語
本明細書中の記号及び略号は、特に限定のない限り、本明細書の文脈に沿い、本開示が属する技術分野において通常用いられる意味に理解できる。
本明細書中、語句「含有する」は、語句「から本質的になる」、及び語句「からなる」を包含することを意図して用いられる。
【0011】
本明細書中、「反応生成物」は、反応生成化合物、又は反応生成組成物であることができる。当該「反応生成組成物」は、1種以上の反応生成化合物に加えて、例えば、1種以上の未反応の反応物等を含有することができる。
【0012】
特に限定されない限り、本明細書中に記載されている工程、処理、又は操作は、室温で実施され得る。
本明細書中、室温は、10~40℃の範囲内の温度を意味する。
【0013】
当業者が通常理解する通り、置換基等に併記される表記「Cn-m」(ここで、n、及びmは数である。)は、当該置換基等の炭素数がn以上m以下であることを意味する。
【0014】
本明細書中、「アルキル基」(当該用語「アルキル基」は、「フルオロアルキル基」等における「アルキル基」の部分を包含する。)は、環状、直鎖状、又は分枝鎖状、或いはこれらのアルキル基であることができる。すなわち、本明細書中、用語「アルキル基」は、広義に、(非環式の)アルキル基に加えて、シクロアルキル基を包含することを意図して用いられる。
【0015】
本明細書中、「アルキル基」は、例えば、炭素数1~20、炭素数1~12、炭素数1~6、炭素数1~4、又は炭素数1~3のアルキル基であることができる。
【0016】
本明細書中、「アルキル基」として、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、及びヘキシル基等の直鎖状、又は分枝鎖状のアルキル基が挙げられる。
【0017】
本明細書中、「アルキル基」として、具体的には、また、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、及びシクロヘキシル等の炭素数3~6の環状のアルキル基(シクロアルキル基)が挙げられる。
【0018】
本明細書中、「フルオロアルキル基」は、少なくとも1個の水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基である。
【0019】
本明細書中、「フルオロアルキル基」が有するフッ素原子の数は、1個以上(例:1~3個、1~6個、1~12個、1個から置換可能な最大数)であることができる。
【0020】
「フルオロアルキル基」は、パーフルオロアルキル基を包含する。「パーフルオロアルキル基」は、全ての水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基である。
【0021】
本明細書中、「フルオロアルキル基」は、例えば、炭素数1~20、炭素数1~12、炭素数1~6、炭素数1~4、又は炭素数1~3のフルオロアルキル基であることができる。
【0022】
本明細書中、「フルオロアルキル基」は、直鎖状、又は分枝鎖状のフルオロアルキル基であることができる。
【0023】
本明細書中、「フルオロアルキル基」として、具体的には、例えば、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、テトラフルオロプロピル基(例:HCF2CF2CH2-)、ヘキサフルオロプロピル基(例:(CF3)2CH-)、ノナフルオロブチル基、オクタフルオロペンチル基(例:HCF2CF2CF2CF2CH2-)、及びトリデカフルオロヘキシル基等が挙げられる。
【0024】
本明細書中、「アリール基」としては、例えば、フェニル基、及びナフチル基等が挙げられる。
【0025】
本明細書中、「ハロゲン原子」としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子等が挙げられる。
【0026】
[製造方法]
本開示の製造方法は、
式(1):
【化7】
[式中、
R
1は、水素原子、アルキル基、フルオロアルキル基、1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、又はハロゲン原子を表し、
R
3は、水素原子、アルキル基、フルオロアルキル基、又は1個以上の置換基を有していてもよいアリール基を表し、及び
Xは、フルオロアルキル基、アルキル基、ハロゲン原子、又は水素原子を表す。]
で表されるアクリル酸誘導体[本明細書中、アクリル酸誘導体(1)と称する場合がある。]の製造方法であって;
式(A3A):
【化8】
[式中、
R
2は、水素原子、アルキル基、又はアリール基を表し、
R
3は、前記と同意義を表し、
Xは、前記と同意義を表し、及び
Mは、水素原子又は金属を表す。]
で表される化合物[本明細書中、化合物(A3A)と称する場合がある。]、又は
式(A3B):
【化9】
[式中の記号は前記と同意義を表す。]
で表される有機金属化合物[本明細書中、化合物(A3B)と称する場合がある。]、或いはこれらの組合せ(本明細書中、当該化合物、及びその組合せを包括的に、物質Aと略称する場合がある。)を、
プロトン供与体、及びアルデヒド化合物と接触させて、前記式(1)で表される化合物を得る工程B
を含む。
【0027】
当業者が通常理解する通り、
式(1)は、
【化10】
、及び
【化11】
、並びにこれらの組み合わせ(又は、混合物)を包含する。
【0028】
R1は、好ましくは水素原子、直鎖状若しくは分枝鎖状C1-6アルキル基、又はアリール基であり、より好ましくは水素原子、又は直鎖状若しくは分枝鎖状C1-6アルキル基である。
【0029】
R1は、好ましくは水素原子である。
【0030】
R3は、好ましくはC1-6アルキル基、又はC1-6フルオロアルキル基である。
【0031】
R3は、好ましくはC1-4アルキル基、又はC1-4フルオロアルキル基である。R3は好ましくはメチル基である。
Xは、好ましくはハロゲン原子又はフルオロアルキル基である。
Xは、好ましくはハロゲン原子である。
Xは、好ましくはフッ素原子である。
Mは、好ましくは、アルカリ金属(例:Li、Na、K)又はアルカリ土類金属(例:Ca、Sr、Ba)である。
【0032】
前記物質Aは、例えば、
式(A1):X-CH2-CO-O-R3[式中の記号は、前記と同意義を表す。]で表される化合物[本明細書中、化合物(A1)と称する場合がある。]を、
塩基の存在下で、
式(A2):(CO2R2)2[式中、R2は、各出現において同一又は異なって、水素原子、アルキル基、又はアリール基を表す。]で表されるシュウ酸化合物[本明細書中、化合物(A2)と称する場合がある。]と反応させる工程A
を含む方法により得ることができる。
【0033】
前記塩基は、好ましくは
(1)アルカリ金属、アルカリ土類金属、又は遷移金属の水酸化物;
(2)アルカリ金属、アルカリ土類金属、又は遷移金属の(モノー、又はジー)ヒドロカルボキシド(例:アルコキシド、及びアリールオキシド);
(3)ヒドロカルビル(例:アリール、及びアルキル)リチウム;
(4)ヒドロカルビル(例:アリール、及びアルキル)ナトリウム;及び
(5)ヒドロカルビル(例:アリール、及びアルキル)金属ハライド
からなる群より選択される塩基である。
前記した、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又は遷移金属の例は、亜鉛、鉄、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、マグネシウム、スズ、シラン、及びバナジウムを包含する。
前記アルコキシドの具体例は、Al(O-i-C3H7)3、Ba(OC2H5)2、Bi(O-t-C5H11)3、Ca(OC2H5)2、Fe(O-i-C3H7)3、Ga(O-i-C3H7)3、Ge(OC2H5)4、Hf(O-i-C3H7)4、In(O-i-C3H7)3、KOC2H5、La(O-i-C3H7)3、LiOCH3、Mg(OC2H5)2、Mo(OC2H5)5、NaOC2H5、Nb(OC2H5)5、Pb(O-i-C3H7)2、Sb(OC2H5)3、Sn(O-i-C3H7)4、Sr(O-i-C3H7)2、Ta(OC2H5)5、Ti(O-i-C3H7)4、VO(C2H5)3、W(OC2H5)5、Y(O-i-C3H7)3、Zn(OC2H5)2、Zr(O-i-C3H7)4、Zr(O-t-C4H9)4、及びZr(O-n-C4H9)4を包含する。
【0034】
前記塩基は、好ましくは、強塩基である。
【0035】
当該塩基の例は、
(1)アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物(例:水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム);
(2)アルカリ金属又はアルカリ土類金属のアルコキシド;
[例:式ROM
(当該式中、
Rは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、tert-ペンチル、ネオペンチル、イソペンチル、sec-ペンチル、3-ペンチル、n-ヘキシル、3級炭素含有ヘキシル、4級炭素含有ヘキシル、n-ヘプチル、又はイソヘプチルであり;及び
Mは、ナトリウム、カリウム、又はリチウムである。)
で表されるアルコキシド];
(3)アルキルリチウム(例:n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム);
(4)アルキルナトリウム(例:n-ブチルナトリウム、sec-ブチルナトリウム、tert-ブチルナトリウム);及び
(5)アルキルマグネシウムハライド[例:グリニャール試薬]
を包含する。
【0036】
前記塩基は、好ましくは、式:ROM
(当該式中、
Rは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、イソアミル、ヘキシル、又はイソヘプチルであり;及び
Mは、ナトリウム、カリウム、又はリチウムである。)
で表されるアルコキシドである。
【0037】
前記塩基は、1種を単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
前記塩基は、1モルの化合物(A1)に対して、通常0.9~1.7モルの範囲内、好ましくは1.0~1.5モルの範囲内、さらに好ましくは1.1~1.3モルの範囲内の量で用いることができる。
【0039】
前記シュウ酸化合物において、R2は、好ましくは各出現において独立してアルキル基である。前記シュウ酸化合物の例は、シュウ酸ジメチル、シュウ酸メチルエチル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジプロピル、及びシュウ酸ジブチルを包含する。
【0040】
前記シュウ酸化合物は、1種を単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
前記シュウ酸化合物は、1モルの化合物(A1)に対して、等量以上(好ましくは過剰)、例えば、0.9~1.7モルの範囲内、好ましくは1.0~1.5モルの範囲内、さらに好ましくは1.1~1.2モルの範囲内の量で用いることができる。
前記シュウ酸ジメチルと前記塩基(好適な例:ナトリウムメトキシド)のモル比は、通常、1:10~10:1、好ましくは1:5~5:1、及びより好ましくは1:3~3:1の範囲内であることができる。
当該比率は、本開示の一態様では、好適に、
1:3~1:1の範囲内、1:2.5~1:1の範囲内、1:2~1:1.01の範囲内、1:1.5~1:1.05の範囲内、1:1.3~1:1.07の範囲内、又は1:1.2~1:1.1の範囲内
であることができる。
当該比率は、本開示の別の一態様では、好適に、
3:1~1:1の範囲内、2.5:1~1:1の範囲内、2:1~1:1の範囲内、1.5:1~1.01:1の範囲内、1.3:1~1.05:1の範囲内、又は1.2:1~1.07:1の範囲内
であることができる。
【0042】
前記シュウ酸化合物は、R2とR3が同一の化合物同士を接触させることが好ましい。一方、汎用性の観点からシュウ酸ジフェニル、シュウ酸ジプロピル、シュウ酸ジメチル、シュウ酸ジエチルが好ましく、さらに好ましくはシュウ酸ジメチル、シュウ酸ジエチルである。
【0043】
前記プロトン供与体の例は、水、及び/又は有機酸、無機酸、若しくは固体酸を包含する。
当該有機酸、当該無機酸、若しくは当該固体酸は水と共に利用されることができ、及びその水性液(例:水溶液、水懸濁液、水浸漬物)が使用され得る。
【0044】
前記プロトン供与体は、液体であってもよく、又は固体であってもよい。
【0045】
当該有機酸の例は、酢酸、モノメチル酢酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、フェノール、安息香酸、クエン酸、コハク酸、及びシュウ酸を包含する。
当該無機酸の例は、硫酸、塩酸、硝酸、ヨウ化水素酸、及び臭化水素酸を包含する。
当該固体酸の例は、シリカアルミナ、シリカマグネシア、及び酸基(例:スルホン酸基、カルボン酸基)をそれぞれ有するイオン交換樹脂又はイオン交換膜を包含する。
【0046】
前記プロトン供与体は、1種を単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
例えば、前記プロトン供与体は、酸(例:有機酸、無機酸)の水溶液の形態で用いられてもよい。
【0048】
前記プロトン供与体は、好ましくは水及び/又は有機酸であり、より好ましくは水(例:イオン交換水、純水)、又は有機酸水溶液である。
【0049】
当該有機酸は、1モルの化合物(A1)に対して、通常0.01~0.3モルの範囲内、好ましくは0.02~0.25モルの範囲内の量で用いることができる。
【0050】
前記プロトン供与体は、好適に、前記塩基との関係において、ブレンステッド酸であることができる。
【0051】
前記プロトン供与体は、1モルの化合物(A1)に対して、通常0.01~0.3モルの範囲内、好ましくは0.02~0.25モルの範囲内の量で用いることができる。
【0052】
R1は、アルデヒド化合物に由来し得る。
アルデヒド化合物は、
[1]ガス状ホルムアルデヒド、
[2]高濃度(例:90質量%以上)ホルムアルデヒド水溶液、及び
[3]脂肪族アルデヒド、及び1個以上の置換基で置換されていてもよい芳香族アルデヒドからなる群より選択される1種以上の化合物、
[4]パラホルムアルデヒド、並びに
これらの2種以上の組み合わせの形態
であることができる。
【0053】
当該「脂肪族アルデヒド」は、直鎖状、又は分枝鎖状の脂肪族アルデヒドであることができ、及び飽和、又は不飽和の脂肪族アルデヒドであることができる。
【0054】
当該アルデヒドは、好ましくは炭素数1~20(好ましくは炭素数1~12、より好ましくは炭素数1~6、更に好ましくは炭素数1~4、より更に好ましくは炭素数1~3、特に好ましくは炭素数1、又は2)の直鎖状飽和アルデヒドである。
【0055】
本明細書中、「脂肪族アルデヒド」は、例えば、式:R-CHO(当該式中、Rは、脂肪族炭化水素基を表す。)で表される化合物である。ここで、Rで表される脂肪族炭化水素基は、好ましくは、脂肪族炭化水素基である。
本明細書中、「芳香族アルデヒド」は、例えば、式:R-CHO(当該式中、Rは、1個以上の置換基で置換されていてもよいアリール基を表す。)で表される化合物である。
Rは、R1に対応し得る。
前記アルデヒド化合物の好適な具体的は
ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ノルマルプロピルアルデヒド、イソプロピルアルデヒド、ノルマルブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、ピバルアルデヒド、ノルマルペンチルアルデヒド、ノルマルヘキシルアルデヒド、ノルマルヘプチルアルデヒド、ノルマルオクチルアルデヒド、ノニルアルデヒド、デシルアルデヒド、ウンデシルアルデヒド、ドデシルアルデヒド、トリデシルアルデヒド、ベンズアルデヒド、o-アニスアルデヒド、m-アニスアルデヒド、p-アニスアルデヒド、o-トリルアルデヒド、m-トリルアルデヒド、及びp-トリルアルデヒドからなる群より選択される1種以上
であることができる。
【0056】
前記パラホルムアルデヒド化合物は、2分子以上のホルムアルデヒド化合物(例:ホルムアルデヒド)からなる重合体であることができ、及び鎖状であっても、環状であってもよい。その例としては、例えば、ポリオキシメチレン、及び1,3,5-トリオキサンが挙げられる。
前記パラホルムアルデヒド化合物(例:ポリオキシメチレン)の数平均重合度は、好ましくは2~100であることができる。
【0057】
前記ホルムアルデヒド化合物は、1モルの化合物(A1)に対して、通常1.0~1.5モルの範囲内、好ましくは1.0~1.2モルの範囲内の量で用いることができる。
【0058】
工程Aの反応時間は、好ましくは0.1~72時間の範囲内、より好ましくは0.1~48時間の範囲内、及び更に好ましくは0.1~24時間の範囲内である。
【0059】
工程Aの反応温度の下限は、-78℃、-50℃、-40℃、-30℃、-20℃、-10℃、又は0℃であることができる。
工程Aの反応温度の上限は、200℃、180℃、150℃、120℃、100℃、80℃、60℃、40℃、又は25℃であることができる。
【0060】
前記工程Bでは、工程Aで得られた前記反応生成物を、プロトン供与体、及びアルデヒド化合物と接触させて、前記式(1)で表される化合物を得る。
当該接触の、手段、及び順序は特に制限されない。
工程Aで得られた前記反応生成物の当該プロトン供与体との接触、及び工程Aで得られた前記反応生成物の前記アルデヒド化合物との接触は、同時に行われてもよく、逐次的に行われてもよく、及び交互に繰り返されてもよい。
【0061】
前記反応生成物は、反応生成化合物、又は反応生成組成物であることができる。当該「反応生成組成物」は、1種以上の反応生成化合物に加えて、例えば、化合物(A1)、塩基、及びシュウ酸化合物(A2)を含有してもよい。
【0062】
当該工程Bでは、工程Aで得られた前記反応生成物の前記アルデヒド化合物との反応により、前記式(1)で表される化合物が生じる。
【0063】
前記工程Bは、具体的には、例えば、工程Aで得られた前記反応生成物を含有する反応系に、プロトン供与体、及び前記アルデヒド化合物を導入することによって実施できる。
【0064】
具体的には、例えば、工程Aで得られた前記反応生成物を、プロトン供与体、及び前記アルデヒド化合物と混合することによって実施できる。
工程Aの実施操作については、本明細書の後方でも、また述べる。
【0065】
前記工程A、及び当該工程Bは、並行して進行してよい。言い換えれば、前記工程Aの反応の完了前に、当該工程Bが開始されてもよい。しかし、好ましくは、高い転化率、及び/又は高い収率の点で、工程Aの反応が、完全に、又はほぼ完全に完了した後に開始されることが好ましい。
【0066】
工程Bは、工程Aの反応開始の所定時間経過後(例:1時間以上後、又は2時間以上後)に開始されてもよい。
【0067】
工程Aの反応後、所望により、精製、又は不要物の一部又は全部の除去、を実施してもよい。
【0068】
当該除去は、留去、精留、ろ過、抽出等の公知の方法を採用して実施すればよい。
【0069】
減圧留去を行うことで除外する対象化合物に応じて適切な温度を選定でき、当該減圧留去の温度は、100℃以下であることができ、好適に50℃以下であることができる。当該減圧留去の温度の下限は、例えば、0℃であることができる。
【0070】
前記不要物の例は、
アルコール付加体:目的物の二重結合部位にアルコールが付加した生成物、
プロトン付加体:目的物の二重結合部位にプロトン供与体が付加した生成物、
炭酸ジエステル:R´-O-CO-O-R´、
モノフルオロ酢酸エステル、
シュウ酸ジエステル、及び
ギ酸又はギ酸エステル:H-CO-O-R´
(これらの式中、R´は、各出現において同一又は異なって、水素原子、アルキル基、又はアリール基を表す。)
を包含する。
当該除去は、当該不要物の含有率を、例えば、10wt%以下、5wt%以下、3wt%以下、又は1wt%以下にすることであることができる。
当該除去は、当該不要物を必ずしも完全に除去することは必要とされず、例えば、その含有率の下限が1ppmであってもよい。
【0071】
本開示の好適な一態様では、工程Aの反応後、精製(又は、不要物の一部又は全部の除去)を実施しないことが、好ましい。
本開示の特に好適な一態様では、工程Aの反応後、式(A3A)又は式(A3B)で表される化合物を固体として分離しないことが、好ましい。
当該分離には、前記化合物の、濾別、乾燥粉体化、及び再結晶等を含む。
一般的な技術常識に基づく場合、しばしば、反応系から中間体又は生成物を分離することにより、反応収率、及び選択率の向上が図られる。
しかし、当該態様では、当該分離を実施しないことで、固体として取り出したときに生じる、式(A3A)又は式(A3B)で表される化合物の乾燥による分解を抑制できる。
また、当該態様では、当該分離を実施しないことで、このような分離のために必要になる工程Aの反応溶媒の制限もなくなるという利点がある。
当該態様では、式(A3A)または式(A3B)で表される化合物の分離又は乾燥工程を行う必要がなく、これにより生産性を向上でき、かつ目的物の高い収率を実現できるので、製造コストの低減もまた実現できる。
すなわち、本開示では、一般的な技術常識とは相違し、反応系から中間体又は生成物を分離しなくても、高い反応収率、及び高い選択率の実現が可能である。更に言えば、本開示では、むしろ、反応系から中間体又は生成物を分離しないことで、反応収率、及び選択率を向上させることができ、及び製造コストを低減できる。
【0072】
工程Bの反応時間(又は実施時間)は、好ましくは0.1~72時間の範囲内、より好ましくは0.1~48時間の範囲内、及び更に好ましくは0.1~24時間の範囲内である。
【0073】
工程Bの反応温度(又は反応系の温度)の下限は、-78℃、-50℃、-40℃、-30℃、-20℃、-10℃、又は0℃であることができる。
工程Bの反応温度の上限は、200℃、180℃、150℃、120℃、100℃、80℃、60℃、40℃、又は25℃であることができる。
【0074】
工程Bの反応温度は、工程Aの反応温度と同じであってもよく、異なっていてもよい。 操作上の簡便性の点では、工程Bの反応温度(又は反応系の温度)は、工程Aの反応温度と同じ、又は実質的に同じであることが、好ましい。
【0075】
工程A、及び工程Bは、フロー式で連続して実施してもよく、バッチ式で実施してもよく、又はワンポットで実施してもよい。
【0076】
工程A、及び工程Bは、反応溶媒の存在下で好適に実施できる。
【0077】
当該反応溶媒の例は、
メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、及びt-ブチルアルコール等のアルコール;
アセトン、及びメチルエチルケトン(MEK)等のケトン;
ジエチルエーテル、及びテトラヒドロフラン(THF)等のエーテル;
酢酸、プロピオン酸等のカルボン酸類、ジメチルスルホキシド(DMSO)、及びスルホラン等のスルホキシド系溶媒、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、1-メチル-2-ピロリドン(NMP)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアセトアセトアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、及びN,N-ジエチルアセトアミド等のアミド溶媒;及び
水
並びにこれらの2種以上の組合せ等
の水溶性溶媒(又は親水性溶媒、若しくは高極性溶媒)を包含する。
工程Aに用いられる溶媒、及び工程Bで用いられる溶媒は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
工程Aに用いられる溶媒がプロトン供与体を含有する場合、当該プロトン供与体の一部又は全部が、前記で説明した工程Aに用いられるプロトン供与体を兼ね得る。
【0078】
当該溶媒としては、例えば、
ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、n-デカン、イソドデカン、及びトリデカン等の非芳香族炭化水素溶媒;
ベンゼン、トルエン、キシレン、テトラリン、ベラトロール、ジエチルベンゼン、メチルナフタレン、ニトロベンゼン、o-ニトロトルエン、メシチレン、インデン、及びジフェニルスルフィド等の芳香族炭化水素溶媒;
アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン、プロピオフェノン、ジイソブチルケトン、及びイソホロン等のケトン;
ジクロロメタン、クロロホルム、及びクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素溶媒;
ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、メチル t-ブチルエーテル、ジオキサン、ジメトキシエタン、ジグライム、フェネトール、1,1-ジメトキシシクロヘキサン、ジイソアミルエーテル、及びシクロペンチルメチルエーテル等のエーテル溶媒;
酢酸エチル、酢酸イソプロピル、マロン酸ジエチル、3-メトキシ-3-メチルブチルアセテート、γ-ブチロラクトン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、炭酸ジメチル、α-アセチル-γ-ブチロラクトン等のエステル溶媒;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル溶媒;ジメチルスルホキシド、及びスルホラン等のスルホキシド系溶媒;及び
N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、1-メチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアセトアセトアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、及びN,N-ジエチルアセトアミド等のアミド溶媒等が挙げられる。
【0079】
当該溶媒は、好ましくは、例えば、
ヘプタン、オクタン、及びシクロヘキサン等の非芳香族炭化水素;
トルエン、及びキシレン等の芳香族炭化水素溶媒;
ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジイソプロピルエーテル、メチル t-ブチルエーテル、ジオキサン、ジメトキシエタン、ジグライム、フェネトール、1,1-ジメトキシシクロヘキサン、ジイソアミルエーテル、及びシクロペンチルメチルエーテル等のエーテル溶媒;又は
N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、1-メチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアセトアセトアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、及びN,N-ジエチルアセトアミド等のアミド溶媒
である。
当該反応溶媒として好ましくは、メタノール、エタノール、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、メチル t-ブチルエーテル又は1-メチル-2-ピロリドンである。
【0080】
当該反応溶媒の量は、化合物(A1)の1重量部に対して、通常1~10重量部の範囲内、好ましくは2~8重量部の範囲内、より好ましくは3~5重量部の範囲内である。
【0081】
当該溶媒は、1種を単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0082】
工程A、及び工程Bにおいて、反応溶媒は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0083】
本開示の製造方法では、好適に安定化剤を用いることができる。
【0084】
本明細書中、「安定化剤」は、「重合禁止剤」、「分解防止剤」、又は「重合禁止剤」且つ「分解防止剤」であることができる。安定化剤は、工程Bの反応前、及び反応中の任意の時点で反応系に添加できる。更に、当該「工程Bの反応前」は、工程Bの前に実施される、工程Aの反応前、及び反応中の任意の時点であってもよい。
【0085】
工程Bを、安定化剤の存在下で実施することにより、工程Bの生成物である、式(1)で表されるアクリル酸誘導体の安定性を向上させることができる。
【0086】
当該安定化剤の例は、
炭素数1~6のアミド[例:N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)、1-メチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアセトアセトアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、及びN,N-ジエチルアセトアミド]
を包含する。
【0087】
当該安定化剤の別の例は、
炭素数1~6のアルコール[例:メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール、ペンタノール、及びヘキサノール]
を包含する。
【0088】
当該安定化剤の別の例は、アルデヒドを包含する。
当該アルデヒドの好適な例は、脂肪族アルデヒド、及び1個以上の置換基で置換されていてもよい芳香族アルデヒドからなる群より選択される1種以上であることができる。
【0089】
当該脂肪族アルデヒドは、直鎖状、又は分枝鎖状の脂肪族アルデヒドであることができ、及び飽和、又は不飽和の脂肪族アルデヒドであることができる。
【0090】
当該アルデヒドは、好ましくは炭素数1~20(好ましくは炭素数1~12、より好ましくは炭素数1~6、更に好ましくは炭素数1~4、より更に好ましくは炭素数1~3、特に好ましくは炭素数1、又は2)の直鎖状飽和アルデヒドであることができる。
【0091】
前記脂肪族アルデヒドは、例えば、式:R´-CHO(当該式中、R´は、脂肪族炭化水素基を表す。)で表される化合物である。ここで、R´で表される脂肪族炭化水素基は、好ましくは、脂肪族炭化水素基である。
前記芳香族アルデヒドは、例えば、式:R´-CHO(当該式中、R´は、1個以上の置換基で置換されていてもよいアリール基を表す。)で表される化合物である。
当該アルデヒドは、具体的には、好ましくは、
ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ノルマルプロピルアルデヒド、イソプロピルアルデヒド、ノルマルブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、ピバルアルデヒド、ノルマルペンチルアルデヒド、ノルマルヘキシルアルデヒド、ノルマルヘプチルアルデヒド、ノルマルオクチルアルデヒド、ノニルアルデヒド、デシルアルデヒド、ウンデシルアルデヒド、ドデシルアルデヒド、トリデシルアルデヒド、ベンズアルデヒド、o-アニスアルデヒド、m-アニスアルデヒド、p-アニスアルデヒド、o-トリルアルデヒド、m-トリルアルデヒド、p-トリルアルデヒドなどからなる群より選択される1種以上(好ましくは1種)であり、及び
より好ましくはノルマルブチルアルデヒドである。
当該アルデヒドの量は、アクリル酸誘導体(1)の1モルに対して、好ましくは0.1モル以下、より好ましくは0.05モル以下、及び更に好ましくは0.02モル以下である。
当該アルデヒドは、微量であっても、アクリル酸誘導体(1)を安定化できるが、アクリル酸誘導体(1)アルデヒド(B)の量は、アクリル酸誘導体(1)の1モルに対して、例えば、0.0005モル以上である。
アクリル酸誘導体(1)及び当該アルデヒドのモル比は、好ましくは1:0.1以下、より好ましくは1:0.0005~1:0.05の範囲内、更に好ましくは1:0.0005~1:0.02の範囲内である。
【0092】
当該安定化剤としては、また、好ましくは、例えば、脂肪族第一級アミン、脂肪族第二級アミン、脂肪族第三級アミン、脂環式第二級アミン、脂環式第三級アミン、芳香族アミン、複素環式アミン、及びポリマー担持アミン化合物等のアミン化合物等が挙げられる。
【0093】
脂肪族第一級アミンとしては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、及びエチレンジアミンが挙げられる。
【0094】
脂肪族第二級アミンとしては、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、及びジシクロヘキシルアミンが挙げられる。
【0095】
脂肪族第三級アミンとしては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリブチルアミン、及びN,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミンが挙げられる。
【0096】
脂環式第二級アミンとしては、例えば、ピペリジン、ピペラジン、ピロリジン、及びモルホリンが挙げられる。
【0097】
脂環式第三級アミンとしては、例えば、N-メチルピペラジン、N-メチルピロリジン、5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノナン-5-エン、及び1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンが挙げられる。
【0098】
芳香族アミンとしては、例えば、アニリン、メチルアニリン、ジメチルアニリン、N,N-ジメチルアニリン、ハロアニリン、及びニトロアニリンが挙げられる。
【0099】
複素環式アミンとしては、例えば、ピリジン、メラミン、ピリミジン、ピペラジン、キノリン、及びイミダゾールが挙げられる。
【0100】
ポリマー担持アミン化合物としては、例えば、ポリアリルアミン、及びポリビニルピリジンが挙げられる。
【0101】
また、前記以外の安定化剤(すなわち、アミン化合物以外の安定化剤)としては、
(1)水酸基を有する化合物、
(2)スルフィド結合を有する化合物、
(3)チオフェノール性若しくはチオール性の硫黄原子を有する化合物、
(4)亜硫酸化合物、及び
(5)亜硝酸化合物
からなる群(本明細書中、当該群は化合物群(C)と称され得る。)より選択される1種以上の化合物(本明細書中、当該化合物を化合物(C)と称する場合がある。)が挙げられる。
【0102】
当該化合物(C)は、1種を単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0103】
前記「(1)水酸基を有する化合物」としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、及びt-ブタノール等の式:R´-OH(当該式中、R´は、例えば、炭素数1~6のアルキル基を表す。)で表されるアルコール;並びに、フェノールヒドロキノン、4-メトキシフェノール、2,5-ジ-tert-ブチルヒドロキノン、メチルヒドロキノン、tert-ブチルヒドロキノン(TBH)、p-ベンゾキノン、メチル-p-ベンゾキノン、tert-ブチル-p-ベンゾキノン、2,5-ジフェニル-p-ベンゾキノン、及び2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)等の、1個以上の水酸基で置換されたベンゼン環である部分構造を有する化合物(ここで、当該水酸基は、互変異性によりオキソ基(O=)になっていてもよい。当該化合物の炭素数は、好ましくは、6~20である。)(以下、当該化合物を単にフェノール化合物と称する場合がある。)が挙げられる。
【0104】
前記「(2)スルフィド結合を有する化合物」としては、例えば、ジアルキルスルフィド(当該2個の「アルキル」の炭素数は、同一又は異なって、好ましくは1~6である。)、及びジフェニルスルフィド構造を有する化合物(例:ジフェニルスルフィド、及びフェノチアジン等の、フェニルスルフィド構造を有する、炭素数6~20の、スルフィド結合を有する化合物)が挙げられる。
【0105】
前記「(3)チオフェノール性若しくはチオール性の硫黄原子を有する化合物」としては、例えば、チオフェノール、ベンゼンジチオール、1,2-エタンジチオール、及び1,3-プロパンジチオール等のR(-SH)n[当該式中、Rは、例えば、炭素数1~6のアルカン、又は炭素数6~12の芳香族炭素環(例:ベンゼン、ジフェニル)を表し;及びnは、例えば、1、又は2の整数を表す。]で表される化合物が挙げられる。
【0106】
前記「(4)亜硫酸化合物」としては、例えば、亜硫酸カリウム、亜硫酸カルシウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸バリウム、亜硫酸マグネシウム、亜硫酸ジメチル、亜硫酸ジエチル、亜硫酸ジアミル、亜硫酸ジプロピル、及び亜硫酸ジイソプロピルが挙げられる。
【0107】
前記「(5)亜硝酸化合物」としては、例えば、亜硝酸カリウム、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸メチル、亜硝酸エチル、亜硝酸アミル、亜硝酸プロピル、及び亜硝酸イソプロピルが挙げられる。
【0108】
前記した、安定化剤としての化合物(C)は、
好ましくは、前記「(1)水酸基を有する化合物」であり、
より好ましくはフェノール化合物である。
【0109】
前記安定化剤として好ましくは、例えば、ジイソプロピルエチルアミン、トリブチルアミン、トリエチルアミン、4-メトキシフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)、ピリジン、メラミン、及びフェノチアジン等が挙げられる。
【0110】
当該安定化剤は、1種を単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0111】
本開示の好適な一態様においては、工程Bは、それぞれ安定化剤として機能できる、(1)1種以上のアミン化合物、及び(2)1種以上の化合物(C)の存在下で実施される。
【0112】
工程Bに安定化剤を用いる場合、その総量は、式(1)で表されるアクリル酸誘導体に対して、好ましくは、100~50000ppm(w/w)の範囲内、より好ましくは、100~10000ppm(w/w)の範囲内、更に好ましくは、100~5000ppm(w/w)、より更に好ましくは、100~3000ppm(w/w)の範囲内、特に好ましくは、500~2000ppm(w/w)の範囲内、より特に好ましくは、500~1500ppm(w/w)の範囲内である。
【0113】
工程A、及び工程Bの反応は、例えば、大気の存在下で実施できる。
【0114】
本開示の製造方法で得られたアクリル酸誘導体は、その用途に応じて、所望により、溶媒抽出、水洗浄及び脱水、乾燥、濾過、蒸留、濃縮、並びにこれらの組み合わせ等の公知の精製方法によって精製されてもよい。
【0115】
本開示によれば、工程A、及び工程Bを、ワンポットで実施した場合でも、高い転化率、及び/又は高い収率で、前記式(1)で表される化合物を得ることができる。これは、本開示に於いて、前記工程Aで得られた前記反応生成物を、プロトン供与体の存在下で、前記ホルムアルデヒド化合物と反応させることに関係する。
【0116】
本開示の製造方法では、前記式(1)で表される化合物を、好ましくは80~98%の範囲内、より好ましくは85~95%の範囲内の転化率で得ることができる。
【0117】
本開示の製造方法では、前記式(1)で表される化合物を、好ましくは80~98%の範囲内、より好ましくは85~95%の範囲内の収率で得ることができる。
【0118】
工程Aの反応系には、
化合物(A2)、次いで塩基、次いで化合物(A1)の順、
化合物(A2)、次いで化合物(A1)、次いで塩基の順、
塩基、次いで化合物(A2)、次いで化合物(A1)の順、
塩基、次いで化合物(A1)、次いで化合物(A2)の順、
化合物(A1)、次いで塩基、次いで化合物(A2)の順、又は
化合物(A1)、次いで化合物(A2)、次いで塩基の順、
で投入され得る。
【0119】
これらを工程Aの反応系に添加するやり方は、任意であり、例えば、
そのまま直接添加してもよく、或いは溶媒に溶解又は分散させて添加してもよく;
一括で添加してもよく、或いは複数の部分に分割(例:2分割、3分割、4分割、5分割、6分割、7分割、8分割、9分割、10分割、15分割、20分割、25分割、30分割、35分割、40分割、45分割、50分割、55分割、60分割、65分割、70分割、75分割、80分割、85分割、90分割、95分割、100分割)して添加してもよく;
これらの複数種の材料のうちの2種の分割部分を交互に添加してもよく;
同種の材料の分割部分を2回以上繰り返して入れてもよく;及び
これらの方法の任意の組合せを採用してもよい。
【0120】
工程Bの反応系には、
プロトン供与体、次いで化合物(A3A)及び/又は(A3B)、次いでホルムアルデヒド化合物の順、
プロトン供与体、次いでホルムアルデヒド化合物、次いで化合物(A3A)及び/又は(A3B)の順、
化合物(A3A)及び/又は(A3B)、次いでプロトン供与体、次いでホルムアルデヒド化合物の順、
ホルムアルデヒド化合物、次いで化合物(A3A)及び/又は(A3B)、次いでプロトン供与体の順、
化合物(A3A)及び/又は(A3B)、次いでホルムアルデヒド化合物、次いでプロトン供与体の順、又は
ホルムアルデヒド化合物、次いでプロトン供与体、次いで化合物(A3A)及び/又は(A3B)の順、
で投入され得る。
【0121】
これらを工程Bの反応系に添加するやり方は、任意であり、例えば、
そのまま直接添加してもよく、或いは溶媒に溶解又は分散させて添加してもよく;
一括で添加してもよく、或いは複数の部分に分割(例:2分割、3分割、4分割、5分割、6分割、7分割、8分割、9分割、10分割、15分割、20分割、25分割、30分割、35分割、40分割、45分割、50分割、55分割、60分割、65分割、70分割、75分割、80分割、85分割、90分割、95分割、100分割)して添加してもよく;
これらの複数種の材料のうちの2種の分割部分を交互に添加してもよく;
同種の材料の分割部分を2回以上繰り返して入れてもよく;及び
これらの方法の任意の組合せを採用してもよい。
【0122】
また、工程A又はその一部の操作、工程B又はその一部の操作の順序もまた、本開示の効果を著しく損なわない限りにおいて、任意の回数を繰り返して、及び任意に組み合わせて、実施し得る。
【実施例】
【0123】
以下、実施例によって本開示を更に詳細に説明するが、本開示はこれに限定されるものではない。
【0124】
実施例中の記号及び略号の、意味及び構造式を、以下に示す。
DMF:N,N-ジメチルホルムアミド
DMSO:ジメチルスルホキシド
NMP:1-メチル-2-ピロリドン
【0125】
A4A:構造式
【化12】
A4B:構造式
【化13】
A5A:構造式
【化14】
A5B:構造式
【化15】
A6A:構造式
【化16】
A6B:構造式
【化17】
【0126】
実施例A-1
3口ナスフラスコにNMPを92g仕込んだ。当該フラスコの窒素置換を実施し、及び当該フラスコを水浴して内温20℃以下にした。
シュウ酸ジメチル177gを秤量し、前記フラスコに投入した。次に、ナトリウムメトキシド70gを秤量し、前記フラスコに投入した。次に、フルオロ酢酸メチル92gを秤量し、前記フラスコに投入した。24時間室温で撹拌し、及び反応を熟成させて、前記基質に対応する構造を有する物質である物質A(当該実施例では、A4A及びA4B)の溶液を定量的に得た。
【0127】
実施例A-2
3口ナスフラスコにNMPを92g仕込んだ。当該フラスコの窒素置換を実施し、及び当該フラスコを水浴して内温20℃以下にした。
シュウ酸ジメチル119gを秤量し、前記フラスコに投入した。次に、ナトリウムメトキシド54gを秤量し、前記フラスコに投入した。次に、フルオロ酢酸メチル92gを秤量し、前記フラスコに投入した。24時間室温で撹拌し、及び反応を熟成させて、前記基質に対応する構造を有する物質である物質A(当該実施例では、A4A及びA4B)の溶液を収率97%で得た。その後、50℃、及び10kPaの条件で、減圧を行った。ガスクロマトグラフィーにて除去後のメタノールのGC面積値が前記処理前後を比較して30%であることを確認した。上記処理後の反応溶液重量が312gであることを確認した。
【0128】
実施例A-3
3口ナスフラスコにNMPを106g仕込んだ。当該フラスコの窒素置換を実施し、及び当該フラスコを水浴して内温20℃以下にした。
シュウ酸ジエチル219gを秤量し、前記フラスコに投入した。次に、ナトリウムエトキシド116gを秤量し、前記フラスコに投入した。次に、フルオロ酢酸エチル106gを秤量し、前記フラスコに投入した。24時間室温で撹拌し、及び反応を熟成させて、前記基質に対応する構造を有する物質である物質A(当該実施例では、A5A及びA5B)の溶液を定量的に得た。
【0129】
実施例A-4
3口ナスフラスコにNMPを92g仕込んだ。当該フラスコの窒素置換を実施し、及び当該フラスコを水浴して内温20℃以下にした。
シュウ酸ジメチル119gを秤量し、前記フラスコに投入した。次に、カリウムメトキシド105gを秤量し、前記フラスコに投入した。次に、フルオロ酢酸メチル92gを秤量し、前記フラスコに投入した。24時間室温で撹拌し、及び反応を熟成させて、前記基質に対応する構造を有する物質である物質A(当該実施例では、A6A及びA6B)の溶液を定量的に得た。
【0130】
実施例A-5
3口ナスフラスコにDMSOを92g仕込んだ。当該フラスコの窒素置換を実施し、及び当該フラスコを水浴して内温30℃以下にした。
シュウ酸ジメチル177gを秤量し、前記フラスコに投入した。次に、ナトリウムメトキシド70gを秤量し、前記フラスコに投入した。次に、フルオロ酢酸メチル92gを秤量し、前記フラスコに投入した。24時間室温で撹拌し、及び反応を熟成させて、前記基質に対応する構造を有する物質である物質A(当該実施例では、A4A及びA4B)の溶液を定量的に得た。
【0131】
実施例A-6
3口ナスフラスコにDMFを92g仕込んだ。当該フラスコの窒素置換を実施し、及び当該フラスコを水浴して内温20℃以下にした。
シュウ酸ジメチル177gを秤量し、前記フラスコに投入した。次に、ナトリウムメトキシド70gを秤量し、前記フラスコに投入した。次に、フルオロ酢酸メチル92gを秤量し、前記フラスコに投入した。24時間室温で撹拌し、及び反応を熟成させて、前記基質に対応する構造を有する物質である物質A(当該実施例では、A4A及びA4B)の溶液を定量的に得た。
【0132】
工程B
実施例A-1~6で得られた反応液を用いて、以下実施例B-1~B-12、および比較例1を行った。
【0133】
実施例B-1
3口ナスフラスコに実施例A-1の溶液431gに431gのNMP、及び1gの水を投入し、次いでパラホルムアルデヒド30gを3分割で投入した後、室温で24時間、反応を熟成し、前記基質に対応する構造を有する目的の化合物(1)(すなわち、2-フルオロアクリル酸メチルエステル)を収率89%で得た。
上記工程で得られた反応後の溶液をガスクロマトグラフィーにて、化合物(1)以外の副生成物および未反応原料を確認した。
結果、目的化合物89.0%、ギ酸エステル0.2%(ただし、エステル部位は目的物のエステル部位と同じである)、炭酸ジエステル0.5%(ただし、エステル部位は目的物のエステル部位と同じである)、フルオロ酢酸エステル1.0%(ただし、エステル部位は目的物のエステル部位と同じである)、化合物(1)のアルコール付加生成物4.5%、化合物(1)のプロトン供与体付加生成物4.8%であることを確認した。
ただし、アルコール付加生成物とは目的物の二重結合部位に当該エステル基に対応するアルコールが付加した生成物であり、プロトン供与体付加生成物とは目的物の二重結合部位にプロトン供与体が付加した生成物である。
【0134】
実施例B-2
3口ナスフラスコに実施例A-1の溶液431gに1155gのNMP、及び1gの水を投入し、次いでパラホルムアルデヒド30gを30回に分割し投入した後、室温で24時間、反応を熟成し、前記基質に対応する構造を有する目的の化合物(1)(すなわち、2-フルオロアクリル酸メチルエステル)を収率93%で得た。
【0135】
実施例B-3
3口ナスフラスコに実施例A-1の溶液431gに431gのNMP、及び4gの水を投入し、次いでパラホルムアルデヒド30gを3分割で投入した後、室温で24時間、反応を熟成し、前記基質に対応する構造を有する目的の化合物(1)(すなわち、2-フルオロアクリル酸メチルエステル)を収率87%で得た。
【0136】
実施例B-4
3口ナスフラスコに実施例A-1の溶液431gにNMP431gを加えた。次いで、パラホルムアルデヒド30gに水1gを加えたパラホルムアルデヒドを3分割で投入した。室温で24時間、反応を熟成し、前記基質に対応する構造を有する目的の化合物(1)(すなわち、2-フルオロアクリル酸メチルエステル)を収率90%で得た。
【0137】
実施例B-5
3口ナスフラスコに実施例A-1の溶液431gとNMP431gを加えた。次いで、パラホルムアルデヒド10gおよび水0.3gを同時に投入した。繰り返しパラホルム10gおよび水0.3gの同時添加を行い、パラホルムアルデヒドを計30g、水を計0.9g加えた。室温で24時間、反応を熟成し、前記基質に対応する構造を有する目的の化合物(1)(すなわち、2-フルオロアクリル酸メチルエステル)を収率89%で得た。
【0138】
実施例B-6
3口ナスフラスコにNMP431gを加えた。次いで、パラホルムアルデヒド30gおよび水1gを加えた。上記フラスコに実施例A-1の溶液431gを滴下した。室温で24時間、反応を熟成し、前記基質に対応する構造を有する目的の化合物(1)(すなわち、2-フルオロアクリル酸メチルエステル)を収率90%で得た。
【0139】
実施例B-7
3口ナスフラスコに実施例A-2の溶液312gに312gのNMP、及び1gの水を投入し、次いでパラホルムアルデヒド30gを3分割で投入した。室温で24時間、反応を熟成し、前記基質に対応する構造を有する目的の化合物(1)(すなわち、2-フルオロアクリル酸メチルエステル)を収率88%で得た。
【0140】
実施例B-8
3口ナスフラスコに実施例A-3の溶液547gに547gのNMP、及び1gの水を投入し、次いでパラホルムアルデヒド30gを3分割で投入した。室温で24時間、反応を熟成し、前記基質に対応する構造を有する目的の化合物(1)(すなわち、2-フルオロアクリル酸エチルエステル)を収率89%で得た。
【0141】
実施例B-9
3口ナスフラスコに実施例A-4の溶液408gに408gのNMP、及び1gの水を投入し、及びパラホルムアルデヒド30gを3分割で投入した。室温で24時間、反応を熟成し、前記基質に対応する構造を有する目的の化合物(1)(すなわち、2-フルオロアクリル酸メチルエステル)を収率88%で得た。
【0142】
実施例B-10
3口ナスフラスコに実施例A-5の溶液385gに385gのDMSO、及び1gの水を投入し、次いでパラホルムアルデヒド30gを3分割で投入した。室温で24時間、反応を熟成し、前記基質に対応する構造を有する目的の化合物(1)(すなわち、2-フルオロアクリル酸メチルエステル)を収率90%で得た。
【0143】
実施例B-11
3口ナスフラスコに実施例A-6の溶液431gに431gのDMF、及び1gの水を投入し、次いでパラホルムアルデヒド30gを3分割で投入した。室温で24時間、反応を熟成し、前記基質に対応する構造を有する目的の化合物(1)(すなわち、2-フルオロアクリル酸メチルエステル)を収率91%で得た。
【0144】
比較例1
3口ナスフラスコに実施例A-1の溶液431gに431gのNMPを添加し、次いでパラホルムアルデヒド30gを3分割で投入した後、室温で24時間、反応を熟成し、前記基質に対応する構造を有する目的の化合物(1)(すなわち、2-フルオロアクリル酸メチルエステル)を収率30%で得た。