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特許7545108収着剤担持部材の製造方法および収着剤担持部材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】収着剤担持部材の製造方法および収着剤担持部材
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/30 20060101AFI20240828BHJP
   B01J 20/26 20060101ALI20240828BHJP
   F25B 35/04 20060101ALI20240828BHJP
   F25B 17/08 20060101ALI20240828BHJP
   C08L 101/08 20060101ALI20240828BHJP
   C08F 8/12 20060101ALI20240828BHJP
   B01D 53/28 20060101ALI20240828BHJP
【FI】
B01J20/30
B01J20/26 A
F25B35/04
F25B17/08 Z
C08L101/08
C08F8/12
B01D53/28
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020171365
(22)【出願日】2020-10-09
(65)【公開番号】P2022063051
(43)【公開日】2022-04-21
【審査請求日】2023-04-18
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「未利用熱エネルギーの革新的活用技術研究開発」に係る委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000004053
【氏名又は名称】日本エクスラン工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小見山 拓三
【審査官】小久保 勝伊
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/069630(WO,A1)
【文献】特開2007-132614(JP,A)
【文献】特開2014-009408(JP,A)
【文献】特開2010-270972(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/26、20/30
F25B 35/04
F25B 17/08
C08L 101/08
C08F 8/12
B01D 53/26
B01D 53/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項2】
4~10mmol/gのカルボキシル基および架橋構造を有する有機高分子であって、前記カルボキシル基のうち、塩型カルボキシル基量が3.5mmol/g以下であり、残余が酸型カルボキシル基である有機高分子よりなる有機高分子系収着剤前駆体粒子、バインダー樹脂および水を含有する収着剤前駆体塗工液を基材に塗工してなる収着剤前駆体担持部材の有する酸型カルボキシル基の少なくとも一部を塩型カルボキシル基に変換してなる収着剤担持部材。
【請求項3】
請求項に記載の収着剤担持部材を構成部材として含む熱交換体または吸放湿性素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収着剤担持部材の製造方法および該製造方法により得られる収着剤担持部材に関する。また、本発明は、前記製造方法において使用することのできる収着剤前駆体塗工液、該収着剤前駆体塗工液を塗布してなる収着剤前駆体担持部材に関する。さらに、本発明は前記収着剤担持部材を構成部材として含む熱交換体および吸放湿性素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、吸着剤を担持させた部材の用途としては、吸着式冷凍機や吸着式空調機などの吸着式熱交換器、全熱交換素子、潜熱交換素子などが知られている。この種の吸着熱交換器は、例えば、特許文献1、2及び3に開示されている。
【0003】
上記吸着式熱交換器の基材に担持されている吸着剤として、特許文献1ではシリカゲルやゼオライト等の無機系吸着剤を用い、特許文献2、3、4では有機高分子系収着剤が用いられている。
【0004】
特許文献2、3、4で開示されている有機高分子系収着剤は、収着現象に基づき水蒸気を多量に収着する材料である。ここで、収着現象とは、気体と固体との系において、両者の界面で固相中の気体濃度が気相中よりも高くなる現象が吸着と呼ばれ、一方、吸着した気体分子が固体表面層を通り固体内部へ入り込んでいく現象が吸収と呼ばれるが、この吸着と吸収とが同時に起こる現象である。かかる有機高分子系収着剤は、吸放湿することで、膨潤、収縮する特性を持っている。この柔軟な構造のため、無機系材料にみられる吸放湿を繰り返すことでの構造破壊による吸湿性能の低下が引き起こされることがない。また、無機系吸着剤に比べ多量の水を吸収することができる。
【0005】
しかし、有機高分子系収着剤は水を含むことで膨潤する特性を持っているため、水を多く含む溶媒を用いて塗工液を調合し、基材に塗布して収着剤層を作製しようとすると、塗布後の乾燥時に膨潤した有機高分子系収着剤が収縮して収着剤層にひび割れが生じるという問題がある。また、基材との密着性も悪く、水没などの条件下では、収着剤層が脱落してしまうといった問題があった。前者の問題に対し、特許文献4では、アルコールを主溶媒に用い有機高分子系収着剤を収縮状態で熱交換器に担持する方法が開示されている。しかしながら、この方法においてはスラリー中の水分量を厳密にコントロールしなければならず、また後者の問題である担持する基材への密着性については議論されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平5-322364号公報
【文献】特開平8-225610号公報
【文献】特開2006-200850号公報
【文献】特開2010-270972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上のように、有機高分子系収着剤を収着剤担持部材に用いるに際しては、収着剤層のひび割れや脱落といった問題があった。本発明は、かかる従来技術の現状に鑑みて創案されたものであり、その目的はひび割れや脱落の問題の発生しない収着剤担持部材および、更には該収着剤担持部材を構成部材として含む熱交換体および吸放湿性素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討を進めた結果、吸水性の高い塩型カルボキシル基の量を下げた状態の有機高分子系収着剤(以下、収着剤前駆体ともいう)を塗工液にして基材に塗布することで収着剤前駆体担持部材を作製し、次いで収着剤前駆体中の酸型カルボキシル基を塩型カルボキシル基に変換することにより上記目的が達成されることを見出し、本発明に到達した。
【0009】
即ち、本発明は以下の手段により達成される。
(1) 4~10mmol/gのカルボキシル基および架橋構造を有する有機高分子であって、前記カルボキシル基のうち、塩型カルボキシル基量が3.5mmol/g以下であり、残余が酸型カルボキシル基である有機高分子よりなる有機高分子系収着剤前駆体粒子、バインダー樹脂および水を含有する収着剤前駆体塗工液を基材に塗工して収着剤前駆体担持部材を形成すること、および、前記収着剤前駆体担持部材にカチオンを作用させて酸型カルボキシル基の少なくとも一部を塩型カルボキシル基に変換することを含む収着剤担持部材の製造方法。
4~10mmol/gのカルボキシル基および架橋構造を有する有機高分子であって、前記カルボキシル基のうち、塩型カルボキシル基量が3.5mmol/g以下であり、残余が酸型カルボキシル基である有機高分子よりなる有機高分子系収着剤前駆体粒子、バインダー樹脂および水を含有する収着剤前駆体塗工液を基材に塗工してなる収着剤前駆体担持部材の有する酸型カルボキシル基の少なくとも一部を塩型カルボキシル基に変換してなる収着剤担持部材。
) ()に記載の収着剤担持部材を構成部材として含む熱交換体または吸放湿性素子。
【発明の効果】
【0010】
本発明の収着剤担持部材は、収着剤層の密着耐久性や耐水性に優れており、吸放湿の繰り返しによる収着剤層の脱落が大幅に抑制されたものである。このため、本発明の収着剤担持部材は、吸着式冷凍機や吸着式空調機などの吸着式熱交換器、全熱交換素子、潜熱交換素子、吸放湿性素子の部材として好適に使用することができる。また、本発明の収着剤担持部材は水溶媒系で製造することができるので、収着剤層のひび割れや脱落を抑制するために有機溶剤を使用していた従来法と比べて、溶剤回収の手間が省ける等、工程の簡略化が可能である。さらに、安全性や作業環境の改善にも繋がり環境にも優しい製造工程とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】両面に収着剤層を形成してなる波形金属板を有する熱交換体の模式図である。
図2】両面に収着剤層を形成してなるコルゲート加工した金属板とアルミコルゲートとを直交させた熱交換体の模式図である。
図3】伝熱チューブとこれに直角に交叉し、等間隔かつ並行に設けられた金属板よりなる熱交換体の模式図である。
図4】コルゲート加工より得られたコルゲート片段シート形状である本発明の収着剤担持部材を巻回して形成された吸放湿性ローターである。
図5】実施例1の収着剤担持部材の表面SEM画像である。
図6】比較例2の収着剤担持部材の表面SEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明を詳述する。本発明の収着剤担持部材は以下のような手順により製造することができる。
<手順1> 4~10mmol/gのカルボキシル基および架橋構造を有する有機高分子であって、前記カルボキシル基のうち、塩型カルボキシル基量が3.5mmol/g以下であり、残余が酸型カルボキシル基である有機高分子よりなる有機高分子系収着剤前駆体粒子を作製する。
<手順2> 有機高分子系収着剤前駆体粒子、バインダー樹脂および水を含有する収着剤前駆体塗工液を作製する。
<手順3> 収着剤前駆体塗工液を基材に塗布して収着剤前駆体担持部材を形成する。
<手順4> 収着剤前駆体担持部材にカチオンを作用させて酸型カルボキシル基の少なくとも一部を塩型カルボキシル基に変換する。
以下、各手順について詳述する。
【0013】
●手順1について
手順1における有機高分子系収着剤前駆体粒子は、分子中に4~10mmol/gのカルボキシル基を含み、かつ架橋構造を有する有機高分子であって、前記カルボキシル基のうち、塩型カルボキシル基量が3.5mmol/g以下であり、残余が酸型カルボキシル基(すなわち、カウンターイオンが水素イオンであるカルボキシル基)である有機高分子よりなるものである。かかる有機高分子系収着剤前駆体粒子は、手順4において、該前駆体粒子中の酸型カルボキシル基の少なくとも一部が塩型カルボキシル基に変換されることによって、より吸放湿性の高い有機高分子系収着剤粒子となるものである。
【0014】
かかる有機高分子系収着剤前駆体粒子の全カルボキシル基量は4~10mmol/gであり、好ましくは5~8mmol/gである。カルボキシル基量が4mmol/g未満の場合には、手順4を経ても、最終的に得られる収着剤担持部材として十分な吸放湿性能が得られないことがあり、10mmol/gを超える場合には有機高分子系収着剤前駆体粒子の吸水性が高くなりすぎて、大きく膨潤するようになるため、手順3において得られる収着剤前駆体層が、乾燥時に大きく収縮してひび割れ、最終的に得られる収着剤担持部材の収着剤層の耐久性が不十分となる。
【0015】
また、有機高分子系収着剤前駆体粒子の塩型カルボキシル基量としては、3.5mmol/g以下であり、好ましくは3.1mmol/g以下、より好ましくは2.9mmol/g以下であって、0mmol/gであることも許容される。塩型カルボキシル基量が3.5mmol/gを超える場合には有機高分子系収着剤前駆体粒子の吸水性が高くなりすぎて、大きく膨潤するようになるため、手順3において得られる収着剤前駆体層が、乾燥時に大きく収縮してひび割れ、最終的に得られる収着剤担持部材の収着剤層の耐久性が不十分となる。
【0016】
また、有機高分子系収着剤前駆体粒子が有する架橋構造は、吸湿、あるいは吸水した際におこる粒子の膨潤を低減するものである。かかる架橋構造としては、吸湿、放湿に伴い物理的、化学的に変性をうけない限りにおいては特に限定はなく、共有結合による架橋、イオン架橋、ポリマー分子間相互作用または結晶構造による架橋等いずれの構造のものでもよい。中でも、強固で安定という観点から共有結合による架橋構造がもっとも好ましい。
【0017】
有機高分子系収着剤前駆体粒子の架橋度については限定されるものではないが、有機高分子系収着剤前駆体粒子および手順4を経た後の有機高分子系収着剤粒子が吸水、あるいは吸湿する際の膨潤を抑えるため、後述する製造方法にあるように、架橋構造を架橋モノマーの共重合により導入する場合、下記式で算出される架橋度が8以上であることが好ましい。
架橋度 = 架橋モノマー(mol)/全モノマー(mol) × 100
【0018】
また、有機高分子系収着剤前駆体粒子の粒子径としては0.01~60μmであることが好ましい。なかでも、粒子径が0.05~50μmものが好ましい。粒子径が小さすぎると、それぞれの粒子を結合させるためのバインダー樹脂の量が増加してしまうことで、粒子をバインダー樹脂の被膜が覆ってしまうこととなり、結果として吸湿速度の低下を引き起こす。一方、粒子径が大きすぎると、塗工液中での溶媒に対する粒子の分散性が低下し、均質な塗工が困難となり、また、有機高分子系収着剤前駆体粒子の表面積低下による吸湿性能低下が生じてしまう。
【0019】
以上に述べてきた有機高分子系収着剤前駆体粒子の製造方法としては、以下のような方法を例示することができる。
(1)カルボキシル基を有するモノマーと架橋モノマーを共重合し、必要に応じ酸処理する方法
(2)カルボキシル基を誘導できるモノマーと架橋モノマーの共重合体を加水分解し、酸処理する方法
(3)カルボキシル基を有するポリマーを反応性架橋剤によって架橋し、必要に応じ酸処理する方法
(4)カルボキシル基を誘導できる官能基を持ったポリマーを反応性架橋剤によって架橋し、加水分解し、酸処理する方法
【0020】
(1)の方法において、カルボキシル基を有するモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ビニルプロピオン酸等のカルボン酸基を有する単量体や、これら単量体のカルボン酸塩等が挙げられる。
【0021】
(2)の方法において、カルボキシル基を誘導できるモノマーとしては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基を有する単量体;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ビニルプロピオン酸等のカルボン酸基を有する単量体の無水物やエステル誘導体、アミド誘導体等を挙げることができる。これらのモノマーの有する官能基は加水分解を受けることによりカルボキシル基に変換される。
【0022】
また、架橋モノマーについては、分子中に二重結合を2つ以上もったモノマーや二重結合と反応性官能基をもったモノマーであれば特に限定はなく、例えばグリシジルメタクリレート、N-メチロールアクリルアミド、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、ジビニルベンゼン、ヒドロキシエチルメタクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、メチレンビスアクリルアミド等の架橋性ビニル化合物を挙げることができる。なかでもトリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、ジビニルベンゼン、メチレンビスアクリルアミドによる架橋構造は、それらを含有してなる架橋共重合体に施すカルボキシル基を導入するための加水分解等の際にも化学的に安定であるため、加水分解工程を経てカルボキシル基を得る場合の使用では望ましい。
【0023】
また、加水分解については、共重合により得られた架橋共重合体を水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物やアンモニア等の塩基性水溶液中で加熱処理する方法などを採用することができる。ここで、加水分解により生成されるカルボキシル基は、加水分解に用いる薬剤に対応する陽イオンと塩を形成し、塩型カルボキシル基となるので、加水分解後に酸による処理を行うことによって、塩型カルボキシル基の少なくとも一部を酸型カルボキシル基に変換し、塩型カルボキシル基量を3.5mmol/g以下に調整する。
【0024】
また、(4)の方法において、カルボキシル基を誘導できる官能基を持ったポリマーは、例えば上述したカルボキシル基を誘導できるモノマーと反応性架橋剤と反応できる官能基を有するモノマーを共重合することによって得ることができる。反応性架橋剤と反応できる官能基を有するモノマーは、用いる反応性架橋剤の種類に応じて選択することになる。具体的な方法としては、例えば、ニトリル基を有するビニルモノマーの含有量が50重量%以上よりなるニトリル系重合体において、ニトリル基と、ヒドラジン系化合物、ポリアミンあるいはホルムアルデヒドなどを反応させて架橋し、架橋に関与しなかったニトリル基などを上記(2)の方法と同様に加水分解し、酸処理する方法などを挙げることができる。
【0025】
●手順2について
手順2における収着剤前駆体塗工液は上述してきた有機高分子系収着剤前駆体粒子、バインダー樹脂、水を必須成分としてなるものである。また、前記必須成分のほかに吸湿性能を阻害しない限りは、抗菌剤、防腐剤、架橋剤などが添加されていてもよい。収着剤前駆体塗工液の調合方法としては、水を分散媒に用いて有機高分子系収着剤前駆体粒子を分散させ、十分撹拌した後、バインダー樹脂を添加して調合する方法が挙げられる。その他添加剤を用いる場合は、前述の調合後などにこれらを添加することができる。
【0026】
上記バインダー樹脂としては、基材または基材が金属板である場合には金属板上に塗布されたプライマー層、および、有機高分子系収着剤前駆体粒子の両者に対して密着性を有するものであることが好ましい。更にこのバインダー樹脂は、手順4により形成される収着剤層中における有機高分子系収着剤粒子の乾燥時の収縮と湿潤時の膨潤に対する体積変化に追随できるものが好ましく、かかる観点からガラス転移点が50℃以下であるものが好ましい。このようなバインダー樹脂となりうる樹脂として、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられ、塗工液中で酸型カルボキシル基を多く有する有機高分子系収着剤前駆体粒子と凝集体を形成しにくいといった観点から、中性、あるいは弱アニオン性の樹脂が好ましい。中でも密着性、透湿性に優れ、塗工液中での分散性が良い水系ウレタン樹脂が特に好ましい。
【0027】
また、バインダー樹脂の割合は有機高分子系収着剤前駆体粒子100重量部に対し、10~100重量部であることが好ましく、20~50重量部であることがより好ましい。バインダー樹脂の割合が多すぎると有機高分子系収着剤前駆体粒子を覆うバインダー樹脂部分が多くなってしまい手順4により形成される収着剤層の吸湿速度の低下を引き起こす場合があり、少なすぎると該収着剤層の割れや密着性の低下を引き起こす場合がある。
【0028】
収着剤前駆体塗工液の塗布量を少なくすると均質な収着剤前駆体層形成が困難になるが、バインダー樹脂にポリビニルアルコールのような接着性、造膜性の良いポリマーを添加することで、収着剤前駆体塗工液の造膜性を向上させることができる。ポリビニルアルコールを用いる場合であれば、その添加量は有機高分子系収着剤前駆体粒子100重量部に対し1~10重量部であり、好ましくは2~8重量部である。添加量が多すぎると収着剤前駆体塗工液の粘度が高くなりすぎ塗布が困難となったり、収着剤層の吸湿速度が低下したりすることがあり、逆に少なすぎると造膜性向上の効果が十分に得られない場合がある。
【0029】
また、上記架橋剤としては、エチレングリコールジグリシジルエーテルなどのエポキシ系架橋剤やカルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、ブロックドイソシアネート系架橋剤等を使用することができる。架橋剤を使用することによって、収着剤層の割れや脱落をさらに抑制することができる。
【0030】
●手順3について
手順3における基材の材質は特に限定されるものではなく、アルミニウム、鉄、ステンレス、銅などの金属板やセルロース系繊維などの天然繊維、ガラス繊維や炭素繊維などの無機繊維、ポリエステル繊維やアクリル繊維などの合成繊維などを用いた紙が挙げられる。特に、前者の金属板としては、熱伝導率の高さや軽量で安価であることなどからアルミニウム板を用いることが好ましい。また、後者の紙としては、寸法安定性が高いことから少なくとも無機繊維を含んでいることが好ましい。また、基材の形状としては、平板状に限らず、円筒状、波状、コルゲート状などの立体形状のものや、一部に穴の開いた形状のなどであってもよい。
【0031】
かかる基材に上述した収着剤前駆体塗工液を塗布して収着剤前駆体部材を形成する方法としては、該塗工液に基材を浸漬した後に遠心分離や絞りローラーなどで液切りする方法、該塗工液をバーコーダー、ブレードなどを使用して基材に塗布する方法、あるいは、該塗工液を基材に噴霧する方法などが挙げられる。塗布量については特に限定されないが、塗布量が多すぎると収着剤前駆体層の割れが発生しやすくなることや、逆に少なすぎると均質な収着剤前駆体層形成が困難になるため、塗布量、すなわち乾燥後の担持量としては20~200g/mが好ましく、50~150g/mがより好ましい。
【0032】
また、基材として金属板を用いる場合にはアニオン性プライマー層を設けておくことが望ましい。かかるアニオン性プライマー層により、収着剤前駆体塗工液に対する金属板の濡れ性が向上し、より均一な塗布が行えるようになるため、収着剤前駆体層または最終的に得られる収着剤層の金属板への密着性を向上させることができる。
【0033】
金属板上にアニオン性プライマー層を形成させる方法としては、特に限定はなく、塗布などの方法を採用することができる。ここで、金属板に塗布するアニオン性プライマーは金属板表面全体を覆うように塗布されていることが望ましく、その塗布量としては、好ましくは1~15g/m、より好ましくは2~10g/mである。
【0034】
かかるアニオン性プライマー層を形成するアニオン性プライマーとしては、金属板への密着性と収着剤層との密着性を兼ね備え、さらに、耐水性、耐食性を持ち合わせていることが好ましい。具体的にはウレタン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂などを挙げることができる。
【0035】
●手順4について
上述した手順3までの手順によって収着剤前駆体担持部材が得られる。用途によっては手順3まで得られた収着剤前駆体担持部材のままで適用できる場合もあるが、該収着剤前駆体担持部材の収着剤前駆体層においては、塩型カルボキシル基が少ないままであるので、吸放湿性や熱交換性能はそれほど高くならない。そこで、手順4においては、収着剤前駆体層にカチオンを作用させ、酸型カルボキシル基の少なくとも一部を塩型カルボキシル基に変換することによって、塩型カルボキシル基量を増加させ、吸放湿性を高める。
【0036】
カチオンを作用させて塩型カルボキシル基に変換させる方法としては、例えば、収着剤前駆体担持部材に対して、所望のカチオンを発生させる金属塩水溶液を浸漬、噴霧、塗布などの方法で付与し、水洗後、乾燥させる方法などを挙げることができる。採用できるカチオンとしては、特に限定はなく、例えばLi、Na、K、Rb、Cs等のアルカリ金属、Mg、Ca、Sr、Ba等のアルカリ土類金属、Cu、Zn、Al、Mn、Ag、Fe、Co、Ni等のその他の金属、NH、アミン等の有機のカチオン等を挙げることかできる。なかでも吸放湿速度の観点からアルカリ金属やアルカリ土類金属のカチオンであることが好ましい。また、金属塩としては、これらのカチオンの炭酸塩、炭酸水素塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、ハロゲン化物などが挙げられ、水溶性であるものが好ましい。
【0037】
また、カチオンを作用させるときの処理条件については、室温~50℃で数分~数時間の範囲で設定すればよいが、高温あるいは長時間の条件ではバインダー樹脂の劣化等により、収着剤前駆体層が金属板から脱落しやすくなるので、室温で2時間程度までの条件にとどめておくことが望ましい。
【0038】
本発明の収着剤担持部材は、上述の製造方法によって得られるものであり、塩型カルボキシル基および架橋構造を有する有機高分子よりなる有機高分子系収着剤粒子を含有する収着剤層を基材に担持させたものであって、かつ、20℃、相対湿度65%の雰囲気下における飽和吸湿率が20重量%以上、好ましくは30重量%以上、より好ましくは35重量%以上であるものである。そして、基材が金属板の場合には、前記収着剤層がバインダー樹脂を含有しており、密着耐久性が85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上であるものである。また、基材が紙の場合には、収着剤層の水浸漬後の重量減少率が15%以下、好ましくは12%以下、より好ましくは10%以下であるものである。
【0039】
収着剤層の密着耐久性が85%に満たない場合や重量減少率が15%を超える場合には、収着剤層が水濡れした時に基材から脱落したり、吸放湿を繰り返した時にひび割れが発生して粉末化したりする恐れがある。また、収着剤層の20℃、相対湿度65%の雰囲気下における飽和吸湿率が20重量%に満たない場合には、熱交換体に適用しても十分な効果が得られない恐れがある。なお、密着耐久性の上限は100%であり、重量減少率の下限は0%であり、飽和吸湿率の上限は、吸湿時に収着剤層が粘着したり、脆化したりすることなどを防ぐ観点から、好ましくは80重量%以下、より好ましくは60%重量以下である。また、収着剤層の密着耐久性、重量減少率および飽和吸湿率は後述する方法によって測定されるものである。
【0040】
上述してきた本発明の収着剤担持部材は熱交換体や吸放湿性素子の部材として有用なものである。かかる熱交換体や吸放湿性素子としては、例えば、収着剤担持部材をフィンに加工し、これを他の部材とともに組み立てた熱交換体、あるいは、形状が完成された熱交換体に上記方法で収着剤層を担持させた熱交換体などを挙げることができる。かかる熱交換器の形状としては、特に限定がなく、例えば、コルゲート加工された部材を巻き取って得られるロータ型や積層して得られるブロック型、あるいは0.5~5.0mmの間隔で配列された多数のフィンに伝熱管を貫通させた構造などが挙げられる。より具体的な例としては、図1~4に示すようなものが挙げられる。なお、図2の例の形状については、紙基材を用いた収着剤担持部材で構成することもできる。
【実施例
【0041】
以下実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の部及び百分率は、断りのない限り重量基準で示す。まず、各特性の評価方法について説明する。
【0042】
[カルボキシル基量]
十分乾燥した試料1gを精秤し(X[g])、これに200mlの水を加えた後、50℃に加温しながら1N塩酸水溶液を添加してpH2とすることで、試料に含まれるカルボキシル基を全て酸型カルボキシル基とし、次いで0.1N水酸化ナトリウム水溶液で常法に従って滴定曲線を求める。該滴定曲線から酸型カルボキシル基に消費された水酸化ナトリウム水溶液消費量(Y[ml])を求め、次式によって試料中に含まれるカルボキシル基量(Aa[mmol/g])を算出する。
Aa[mmol/g]=0.1Y/X
【0043】
[塩型カルボキシル基量]
上述のカルボキシル基量測定操作中の1mol/l塩酸水溶液添加によるpH2への調製をすることなく同様に滴定曲線を求め、試料中に含まれる酸型カルボキシル基の量(Ab[mmol/g])を求める。これらの結果から次式により塩型カルボキシル基量を算出する。
塩型カルボキシル基量[mmol/g]=Aa-Ab
【0044】
[平均粒子径]
島津製作所製レーザー回折式粒度分布測定装置「SALD-200V」を使用して水を分散媒として測定し、体積基準で表した粒子径分布から、平均粒子径を求めた。また、粒子径が1μm未満の場合には、大塚電子製粒径測定システム「ELSZ-2」を使用して水を分散媒として測定した結果を散乱光強度分布で表し、そのメディアン径をもって平均粒子径とする。
【0045】
[収着剤層の飽和吸湿率]
収着剤層の飽和吸湿率とは、収着剤層の乾燥重量に対する吸湿した水分重量の割合のことであり、次の方法により得られた値をいう。各実施例、比較例で得られた収着剤担持金属板試料を熱風乾燥機で120℃、1時間乾燥し重量を測定する(Wds[g])。次に該試料を温度20℃で相対湿度65%RHに調整された恒温恒湿器に16時間放置し、吸湿した試料の重量を測定する(Wws[g])。以上の結果と予め測定しておいた収着剤前駆体塗工液を塗布する前のアルミニウム板(プライマー処理後)の重量(Wp[g])より、飽和吸湿率を次式により算出する。
飽和吸湿率[重量%]={(Wws-Wds)/(Wds―Wp)}×100
【0046】
[収着剤層の密着耐久性(収着剤層の残存率)]
収着剤層の密着耐久性とは、収着剤層の金属板への密着の強さを表す指標であって、吸水と乾燥を繰り返した後の収着剤層に粘着テープで剥離力を加えた後に金属板上に残存している収着剤層重量の当初重量に対する割合のことであり、次の通り測定する。各実施例、比較例で得られた収着剤担持金属板試料を120℃、1時間乾燥させ、重量を測定する(Wds1[g])。該収着剤担持金属板試料に対して、50℃水浴に5分間浸漬し、次いで120℃、30分間の条件で乾燥を行う操作を7回繰り返して行った後、粘着テープ(Nitto Denko製ポリエステル粘着テープ No.31B 厚み25μm)を浮いた部分が無いように全面に貼り付けた後に剥がした後の乾燥重量を測定する(Wds2[g])。以上の結果と予め測定しておいた収着剤前駆体塗工液を塗布する前のアルミニウム板(プライマー処理後)の重量(Wp1[g])より、残存率を次式により算出する。
残存率[重量%]= {(Wds2-Wp1)/(Wds1-Wp1)}×100
この残存率が大きいほうが、密着耐久性が高いと判断できる。
【0047】
[収着剤層の水浸漬後の重量減少率]
収着剤層の水浸漬後の重量減少率とは、紙基材に担持した収着剤層の耐久性を表す指標であって、水に浸漬したときの収着剤層の脱落重量の当初重量に対する割合のことであり、次の通り測定する。各実施例、比較例で得られた収着剤担持紙試料を120℃、1時間乾燥させ、重量を測定する(Wds3[g])。該収着剤担持紙試料を常温の水浴に10分間浸漬して引き上げ、120℃、30分間乾燥を行った後、重量を測定する(Wds4[g])。以上の結果と予め測定しておいた収着剤前駆体塗工液を塗布する前の紙の重量(Wp2[g])より、重量減少率を次式により算出する。
重量減少率[重量%]= {(Wds3-Wds4)/(Wds3-Wp2)}×100
この重量減少率が小さいほうが、耐久性が高いと判断できる。
【0048】
[収着剤層の表面状態]
上記の密着耐久性または重量減少率を評価した後の収着剤層の表面状態を下記の基準に従って目視で評価する。
◎:割れがない
○:割れがほとんどない
△:割れが少し存在する
×:割れが多い、または、大きく脱落している
割れが少ない方が長期間使用したときの収着剤層の脆化、剥離、脱落が起こりにくいと判断できる。
【0049】
[有機高分子系収着剤粒子Aの製造]
アクリロニトリル55部、アクリル酸メチル10部、ジビニルベンゼン35部からなるモノマー混合物を、0.5部の過硫酸アンモニウムを含む水溶液300部に添加し、次いでピロ亜硫酸ナトリウム0.6部を加え、攪拌機つきの重合槽で65℃、2時間重合した。得られた粒子15部を水85部中に分散し、これに水酸化ナトリウム10部を添加し、90℃で2時間加水分解反応を行った後、洗浄、脱水、乾燥を行い、有機高分子系収着剤粒子を得た。該粒子の架橋度は18.9、平均粒子径は30μm、カルボキシル基量は6.3mmol/gであった。
【0050】
[有機高分子系収着剤粒子B(水分散体)の製造]
反応槽にラウリル硫酸ナトリウム1部、過硫酸アンモニウム3部およびイオン交換水350部を仕込み、次にこの反応槽を温度70℃まで昇温し、70℃に保ち攪拌しながら反応槽内にアクリル酸メチル35部、アクリル酸ブチル40部、ジビニルベンゼン15部、メタクリル酸5部、p-スチレンスルホン酸ナトリウム5部、ポリエチレングリコール(23モル)モノアクリレート3部および脱イオン水50部を滴下して重合を開始した。これら単量体類の滴下は30分間で終了するように滴下速度を調整し、滴下終了後2時間同一条件に保って重合を行なった。得られた重合体エマルジョン480部に、水酸化カリウム45部を脱イオン水475部に溶解した溶液を添加し、95℃で48時間さらにリフラックス条件で8時間加水分解反応を行ない、有機高分子系収着剤粒子を得た。得られた粒子の架橋度は12.5、平均粒子径は0.04μm、カルボキシル基量は7.3mmol/gであった。
【0051】
[実施例1]
上記のように作成した有機高分子系収着剤粒子Aを硝酸でpH=2.0に調整した水溶液に浸漬後水洗、乾燥を行うことによって、有機高分子系収着剤前駆体粒子を得た。120℃で16時間以上乾燥させた該前駆体粒子100部に対し、水を373部加え撹拌する。この混合液にバインダーとして水分散型ウレタン樹脂、スーパーフレックスE-2000(固形分50%、ガラス転移点-38℃、第一工業製薬製)を72部添加し、十分に撹拌を行い、収着剤前駆体塗工液を得た。
【0052】
次に、5cm×8cmの大きさのアルミニウム板にアニオン性プライマーとしてアニオン性ウレタン樹脂であるスーパーフレックス170(第一工業製薬製)を担持量5g/mになるよう塗布を行った。該アルミニウム板上にバーコーダーを用いて上記収着剤前駆体塗工液を乾燥後の塗布量が50g/mになるように塗布を行った。塗布後、室温で予備乾燥を行った後、さらに120℃で1時間乾燥を行うことによって、収着剤前駆体担持金属板を得た。該収着剤前駆体担持金属板を0.25Mの炭酸水素ナトリウム200mlに室温で120分浸漬した後、水洗し、120℃で1時間乾燥させることにより、酸型カルボキシル基の少なくとも一部をナトリウム塩型カルボキシル基に変換した実施例1の収着剤担持金属板を得た。得られた収着剤担持金属板について、評価結果を表1に示す。また、密着耐久性の評価において、浸漬、乾燥を7回繰り返した後の収着剤担持金属板の表面をSEM観察した結果を図5に示す。表1及び図5からわかるように、得られた収着剤担持金属板においては、収着剤層の残存率が高く、浸漬、乾燥を繰り返した後でも割れのない良好な表面状態を有するものであった。
【0053】
[実施例2~5]
実施例1において有機高分子系収着剤粒子に対する硝酸でのpH調整を、実施例2ではpH=3.0、実施例3ではpH=4.0、実施例4ではpH=5.0、実施例5ではpH=6.0とすること以外は同様にして実施例2、3、4および5の収着剤担持金属板を得た。得られた収着剤担持金属板の評価結果を表1に示す。表1からわかるように、これらの収着剤担持金属板においては、収着剤層の割れがない、またはほぼなく、密着耐久性も良好であった。
【0054】
[実施例6、7]
実施例1においてバインダーの添加量を、実施例6では22部、実施例7では200部とすること以外は同様にして実施例6および7の収着剤担持金属板を得た。得られた収着剤担持金属板の評価結果を表1に示す。表1からわかるように、これらの収着剤担持金属板においては、収着剤層の割れがなく、密着耐久性も良好であった。
【0055】
[比較例1]
実施例1において有機高分子系収着剤粒子に対する硝酸でのpH調整をpH=8.0とすること以外は同様にして収着剤担持金属板を得た。得られた収着剤担持金属板の評価結果を表1に示す。表1からわかるように、かかる収着剤担持金属板においては、収着剤層の割れが存在しており、密着耐久性も不良であった。
【0056】
[比較例2]
実施例1において有機高分子系収着剤粒子に対する硝酸でのpH調整を行わないこと以外は同様にして収着剤担持金属板を得た。得られた収着剤担持金属板の評価結果を表1に示す。また、密着耐久性の評価において、浸漬、乾燥を7回繰り返した後の収着剤担持金属板の表面をSEM観察した結果を図6に示す。表1及び図6からわかるように、かかる収着剤担持金属板においては、収着剤層の割れが多く、密着耐久性も不良であった。
【0057】
【表1】
【0058】
[実施例8]
上記のように作成した有機高分子系収着剤粒子Bの水分散体を強イオン交換樹脂でpH5.0に調製することによって、有機高分子系収着剤前駆体粒子Bの水分散体を得た。該分散体23.15部に対し、架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル0.13部、バインダーとして水分散型ウレタン樹脂(スーパーフレックス500M(第一工業製薬製))1.76部および純水4.96部を添加し、十分に撹拌を行い、収着剤前駆体塗工液を得た。
【0059】
次に、5cm×7.5cmの大きさの紙基材(ガラス繊維とパルプの混抄紙、坪量25g/m、厚さ150μm)を上記収着剤前駆体塗工液に浸漬して引き上げ、絞りローラーを通した後、120℃で30分間乾燥を行うことによって、担持量30g/mの収着剤前駆体担持紙を得た。該収着剤前駆体担持紙を0.25Mの炭酸水素ナトリウム200mlに室温で120分浸漬した後、水洗し、120℃で1時間乾燥させることにより、酸型カルボキシル基の少なくとも一部をナトリウム塩型カルボキシル基に変換した実施例8の収着剤担持紙を得た。得られた収着剤担持紙の評価結果を表2に示す。表2からわかるように、かかる収着剤担持紙は、収着剤層の脱落が少なく、良好な表面状態を有するものであった。
【0060】
[比較例3]
実施例8において、強イオン交換樹脂によるイオン交換を行わないこと以外は同様にして収着剤塗工液を作製した。次に、実施例8の収着剤前駆体塗工液の代わりに前記収着剤塗工液を用いること以外は土同様にして、担持量31g/mの収着剤前駆体担持紙を得た。該収着剤前駆体担持紙にさらなる処理を施すことなく、そのまま比較例3の収着剤担持紙として評価を行った結果を表2に示す。表2からわかるように、かかる収着剤担持紙は、水浸漬により大部分の収着剤層が脱落するものであった。
【0061】
【表2】
【符号の説明】
【0062】
1 収着剤層を担持させた波型フィン
2 収着剤層
3 金属板
4 熱交換流体が流れるチューブ
5 顕熱交換用のコルゲート成型アルミ板層
6 収着剤層を担持させた潜熱交換、吸湿・放湿のためのコルゲート成型アルミ層
7 潜熱交換用の空気の流れ
8 顕熱交換用の空気の流れ
9 収着剤層を担持された伝熱銅チューブ
10 伝熱銅チューブ
11 収着剤層を担持させたアルミフィン
12 紙基材を用いた収着剤担持部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6