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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】流体殺菌システム
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/32 20230101AFI20240828BHJP
【FI】
C02F1/32
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021003925
(22)【出願日】2021-01-14
(65)【公開番号】P2021171758
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-08-09
(31)【優先権主張番号】P 2020074026
(32)【優先日】2020-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003757
【氏名又は名称】東芝ライテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(72)【発明者】
【氏名】加藤 剛雄
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 純
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 公人
(72)【発明者】
【氏名】飯田 誠也
(72)【発明者】
【氏名】越智 貴則
(72)【発明者】
【氏名】中川 幸信
【審査官】石岡 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-044515(JP,A)
【文献】特開2018-118201(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F1/20-1/26、1/30-1/38
A61L2/00-2/28
A61L9/00-9/22
A61L11/00-12/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のカバーと;前記カバーの内部に設けられた筒部と;前記筒部の一方の端部に設けられた供給ヘッドと;前記筒部の他方の端部に設けられた排出ヘッドと;前記供給ヘッドおよび前記排出ヘッドの少なくともいずれかに設けられ、前記筒部の内部に紫外線を照射可能な少なくとも1つの発光素子と;前記カバーと前記筒部との間の空間の温度を制御可能な温度制御部と;を具備した流体殺菌装置と;
前記流体殺菌装置に設けられた温度制御部を制御可能なコントローラと;
を具備し、
前記コントローラは、前記流体殺菌装置に設けられたカバーと筒部との間の空間の温度と、前記流体殺菌装置に供給される液体の温度と、の差が小さくなるように前記温度制御部を制御する流体殺菌システム。
【請求項2】
前記排出ヘッドに設けられ、一方の面が、前記排出ヘッドに設けられた流路に露出する第1の窓と;
前記発光素子が設けられた第1の基板と;
前記第1の窓の他方の面と前記第1の基板との間の空間と、前記カバーと前記筒部との間の空間と、を連通する少なくとも1つの第1の連通部と;
をさらに具備した請求項1記載の流体殺菌システム
【請求項3】
前記第1の窓の他方の面と前記第1の基板との間の空間と、前記カバーと前記筒部との間の空間と、の間で気体の流れを生じさせる第1の送風部をさらに具備した請求項2記載の流体殺菌システム
【請求項4】
前記供給ヘッドに設けられ、一方の面が、前記供給ヘッドに設けられた流路に露出する第2の窓と;
前記発光素子が設けられた第2の基板と;
前記第2の窓の他方の面と前記第2の基板との間の空間と、前記カバーと前記筒部との間の空間と、を連通する少なくとも1つの第2の連通部と;
をさらに具備した請求項1~3のいずれか1つに記載の流体殺菌システム
【請求項5】
前記第2の窓の他方の面と前記第2の基板との間の空間と、前記カバーと前記筒部との間の空間と、の間で気体の流れを生じさせる第2の送風部をさらに具備した請求項4記載の流体殺菌システム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、流体殺菌装置、および流体殺菌システムに関する。
【背景技術】
【0002】
水などの流体に紫外線を照射して、流体を殺菌する流体殺菌装置がある。例えば、流体が流れる筒部と、筒部の端部に設けられ、筒部の内部に紫外線を照射する光源と、を備えた流体殺菌装置が提案されている。光源から照射された紫外線の一部は、筒部の内部を流れる流体に直接照射される。また、光源から照射され、筒部の内側面に入射した紫外線は、筒部の内部で反射を繰り返しながら伝搬していく。
【0003】
ここで、筒部の内部を流れる流体の温度が、流体殺菌装置が設けられている環境の温度よりも低くなる場合がある。一般的に、流体殺菌装置が設けられる環境には水蒸気を含む空気がある。そのため、流体の温度と環境の温度との差が大きくなると、筒部の外側面において結露が発生する場合がある。筒部の外側面において結露が発生し、筒部に水が付着すると、筒部の光学特性が変化するおそれがある。筒部の光学特性が変化すると、筒部の内部で反射を繰り返しながら伝搬する紫外線による殺菌効果が低下するおそれがある。
そこで、筒部の外側面において結露が発生するのを抑制することができる技術の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-118201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、筒部の外側面において結露が発生するのを抑制することができる流体殺菌装置、および流体殺菌システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る流体殺菌システムは、筒状のカバーと;前記カバーの内部に設けられた筒部と;前記筒部の一方の端部に設けられた供給ヘッドと;前記筒部の他方の端部に設けられた排出ヘッドと;前記供給ヘッドおよび前記排出ヘッドの少なくともいずれかに設けられ、前記筒部の内部に紫外線を照射可能な少なくとも1つの発光素子と;前記カバーと前記筒部との間の空間の温度を制御可能な温度制御部と;を具備した流体殺菌装置と;前記流体殺菌装置に設けられた温度制御部を制御可能なコントローラと;を具備している。前記コントローラは、前記流体殺菌装置に設けられたカバーと筒部との間の空間の温度と、前記流体殺菌装置に供給される液体の温度と、の差が小さくなるように前記温度制御部を制御する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の実施形態によれば、筒部の外側面において結露が発生するのを抑制することができる流体殺菌装置、および流体殺菌システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施の形態に係る流体殺菌装置を例示するための模式断面図である。
図2】他の実施形態に係る流体殺菌装置を例示するための模式断面図である。
図3】他の実施形態に係る流体殺菌装置を例示するための模式断面図である。
図4】本実施の形態に係る流体殺菌システムを例示するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について例示をする。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0010】
(流体殺菌装置)
本実施の形態に係る流体殺菌装置1は、例えば、外気温よりも低い温度の流体を殺菌するのに用いることができる。流体殺菌装置1は、例えば、夏などの気温の高い時期に井戸水や湧き水などを殺菌するのに用いることができる。ただし、流体殺菌装置1の用途は例示をしたものに限定されるわけではない。
【0011】
図1は、本実施の形態に係る流体殺菌装置1を例示するための模式断面図である。
図1に示すように、流体殺菌装置1には、筒部2、反射部3、供給ヘッド4、排出ヘッド5、光源6、窓7(第1の窓の一例に相当する)、カバー8、および温度制御部9を設けることができる。
【0012】
筒部2は、筒状を呈し、両側の端部が開口している。筒部2は、例えば、円筒管とすることができる。筒部2の材料は、紫外線および殺菌を行う流体301aに対する耐性があれば特に限定はない。筒部2の材料は、例えば、石英や、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフッ素樹脂とすることができる。
【0013】
反射部3は、筒部2の外側面に設けることができる。筒部2が、石英などのように紫外線を透過する材料から形成される場合がある。光源6から照射された紫外線の一部が筒部2を透過して外部に漏れると、流体殺菌装置1の処理能力が低下する。筒部2の外側面に反射部3が設けられていれば、筒部2の外部に向かう紫外線を筒部2の内部に向けて反射させることができる。そのため、光源6から照射された紫外線の利用効率を向上させることができるので、発光素子61の数を少なくすることが可能となる。発光素子61の数が少なくなれば、光源6の小型化や低コスト化を図ることができる。
【0014】
反射部3は、紫外線の反射率が高い材料から形成することができる。反射部3の材料は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、二酸化ケイ素、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などとすることができる。反射部3は、板状を呈し、筒部2の外側面に取り付けることができる。また、スパッタリング法や蒸着法などの成膜法を用いて、筒部2の外側面に膜状の反射部3を形成することもできる。
【0015】
また、反射部3が筒部2の外側面に設けられる場合を例示したが、反射部3が筒部2の内側面に設けられていてもよい。ただし、反射部3と殺菌前の流体301a(例えば、水)が接触することで腐食などが生じたり、反射部3の材料が溶け出したりする場合には、筒部2の外側面に反射部3を設けることが好ましい。
【0016】
また、反射部3は省くこともできる。例えば、筒部2が、紫外線を反射する材料(例えば、白色の無機材料や白色の樹脂)から形成される場合には、反射部3を省くことができる。
【0017】
供給ヘッド4は、筒部2の一方の端部に設けられている。供給ヘッド4と筒部2の端部との間には、Oリングなどのシール部材を設けることができる。シール部材は、供給ヘッド4と筒部2との間が液密となるように封止する。
【0018】
供給ヘッド4は、例えば、円柱状を呈し、一方の端面と他方の端面との間を貫通する孔4aを有する。孔4aの一方の開口は、筒部2の内部とつながっている。孔4aの他方の開口は、供給口4a1となる。供給口4a1には、配管を介して、流体301aの供給源を接続することができる(図4を参照)。また、フィルタや整流板などを孔4aの内部に設けることもできる。
【0019】
供給ヘッド4の材料は、流体301aと紫外線に対する耐性があれば特に限定がない。供給ヘッド4の材料は、例えば、ステンレスなどの金属とすることができる。
【0020】
排出ヘッド5は、筒部2の他方の端部に設けられている。排出ヘッド5と筒部2の端部との間には、Oリングなどのシール部材を設けることができる。シール部材は、排出ヘッド5と筒部2との間が液密となるように封止する。
【0021】
排出ヘッド5は、例えば、円柱状を呈し、孔5aおよび孔5dを有する。孔5aの一方の開口は、筒部2の内部とつながっている。孔5aの他方の開口は、排出ヘッド5の側面に設けられた排出口5a1となる。例えば、排出口5a1には、配管を介して、タンク105などを接続することができる(図4を参照)。
【0022】
排出ヘッド5の材料は、殺菌済みの流体301bと紫外線に対する耐性があれば特に限定がない。排出ヘッド5の材料は、例えば、ステンレスなどの金属とすることができる。
【0023】
図1に示すように、孔5aは屈曲した流路となっている。孔5aは、排出ヘッド5の筒部2側の端面に略平行な流路5a2と、排出ヘッド5の軸方向に延びる流路5a3とを有する。
【0024】
流路5a2は、排出ヘッド5の筒部2側の端面に開口している。また、流路5a2の内壁には、窓7が露出している。流路5a2は、例えば、円板状の空間とすることができる。
流路5a3の一方の端部は、流路5a2の周縁近傍に接続されている。流路5a3の他方の端部は、排出口5a1に接続されている。流路5a3は、例えば、円筒状の空間とすることができる。
【0025】
図1に示すように、供給ヘッド4を介して、筒部2の内部に供給された流体301aは、流路5a2の内部に供給される。流路5a2の内部に供給された流体301aは、窓7に当たり、窓7の面に沿って、窓7の周縁側に流れる。この際、窓7を介して照射された紫外線により、流体301aが殺菌される。殺菌済みの流体301bは、流路5a3を介して排出口5a1から排出される。
【0026】
なお、流路5a2に照射された紫外線の一部は、筒部2の内部に照射される。また、筒部2の内部に照射された紫外線の一部は、反射部3により反射される。そのため、筒部2の内部においても流体301aの殺菌が行われる。
【0027】
孔5dは、排出ヘッド5の、筒部2側とは反対側の端面と、流路5a2とに開口している。
【0028】
光源6は、例えば、排出ヘッド5に着脱自在に設けることができる。
光源6は、例えば、発光素子61、基板62(第1の基板または第2の基板の一例に相当する)、およびホルダ63を有する。
発光素子61は、基板62に設けられ、窓7に向けて紫外線を照射することができる。すなわち、発光素子61は、筒部2の内部に紫外線を照射可能となっている。発光素子61は、少なくとも1つ設けることができる。発光素子61が複数設けられる場合には、複数の発光素子61を直列接続することができる。発光素子61は、紫外線を発生させる素子であれば特に限定はない。発光素子61は、例えば、発光ダイオードやレーザダイオードなどとすることができる。
【0029】
発光素子61から照射される紫外線のピーク波長は、殺菌効果があれば特に限定はない。ただし、ピーク波長が260nm~280nmであれば、殺菌効果を向上させることができる。そのため、ピーク波長が260nm~280nmの紫外線を照射可能な発光素子61とすることが好ましい。
【0030】
基板62は、板状を呈し、ホルダ63の窓7側の面に設けられている。基板62の一方の面には、配線パターンを設けることができる。基板62の配線パターンには発光素子61を実装することができる。すなわち、基板62には、少なくとも1つの発光素子61が設けられている。基板62の材料は、紫外線に対する耐性を有するものとすることが好ましい。基板62の材料は、例えば、酸化アルミニウムなどのセラミックスとすることができる。基板62は、金属板の表面を無機材料で覆ったもの(メタルコア基板)とすることもできる。基板62の材料がセラミックスなどであったり、基板62がメタルコア基板であったりすれば、紫外線に対する耐性と高い放熱性を得ることができる。
【0031】
ホルダ63は、排出ヘッド5に着脱自在に設けることができる。発光素子61は放電ランプなどに比べて長寿命ではあるが、点灯時間が長くなれば発光効率が低下する。また、発光素子61が故障して不灯になったり、基板62の配線パターンなどに不具合が生じたりすることも考えられる。ホルダ63が排出ヘッド5に着脱自在に設けられていれば、ホルダ63と共に発光素子61と基板62を容易に取り外すことができるので、メンテナンス作業が容易となる。
【0032】
ホルダ63は、例えば、フランジ63aと凸部63bを有することができる。フランジ63aと凸部63bは一体に形成することができる。
フランジ63aは、板状を呈し、排出ヘッド5の筒部2側とは反対側の端面に取り付けることができる。フランジ63aは、例えば、ネジなどの締結部材を用いて排出ヘッド5に取り付けることができる。
【0033】
凸部63bは、フランジ63aの、筒部2側の面に設けられている。凸部63bの、筒部2側の端面には、発光素子61が設けられた基板62を設けることができる。また、凸部63bが、排出ヘッド5に対する発光素子61の位置を決める機能を有するようにしてもよい。例えば、凸部63bの側面を、排出ヘッド5の孔5dの内壁に接触させることができる。この様にすれば、排出ヘッド5に対する発光素子61の位置を決めることができる。
【0034】
また、排出ヘッド5の孔5dと流路5a2は、窓7により仕切られているので、流路5a2に流体301aがある状態でも、光源6(ホルダ63)の着脱が可能となる。
【0035】
また、ホルダ63は、発光素子61において発生した熱を外部に放出する機能を有することができる。そのため、ホルダ63は、熱伝導率の高い材料から形成することが好ましい。ホルダ63は、例えば、アルミニウム、銅、ステンレスなどの金属から形成することができる。
【0036】
また、ホルダ63の、発光素子61側とは反対側の端面などに放熱フィンや冷却装置64などを設けることもできる。冷却装置64は、例えば、ホルダ63に空気を供給するファンなどとすることができる。また、ホルダ63に放熱フィンが設けられる場合には、冷却装置64は、放熱フィンに空気を供給するファンとすることができる。また、冷却装置64は、例えば、ホルダ63に設けられた流路に冷媒を供給するものとしてもよい。すなわち、冷却装置64は、空冷式であってもよいし、液冷式であってもよい。
【0037】
なお、発光素子61の数や発熱量、流体301aの温度や流量などによっては冷却装置64を省くことができる。ただし、冷却装置64が設けられていれば、発光素子61の数や印加電力などを増加させても、発光素子61の温度が最大ジャンクション温度(最大接合部温度)を越え難くなる。
【0038】
窓7は、板状を呈し、排出ヘッド5の孔5dの内壁に液密となるように設けられている。すなわち、窓7は、排出ヘッド5設けられ、一方の面が、排出ヘッド5に設けられた流路5a2に露出している。窓7と基板62との間には空間5d1を設けることができる。窓7は、紫外線を透過させることができ、且つ、紫外線と流体301aに対する耐性を有する材料から形成することができる。窓7は、例えば、石英や、紫外線を透過するフッ素樹脂などから形成することができる。
【0039】
また、窓7の、発光素子61側の面には、反射防止膜を設けることもできる。反射防止膜が設けられていれば、発光素子61から照射された紫外線が窓7により反射されて、流体301aに照射され難くなるのを抑制することができる。すなわち、発光素子61から照射された紫外線の利用効率を向上させることができる。
【0040】
また、窓7の、筒部2側の面には、防汚膜を設けることもできる。流体301aには不純物が含まれている場合がある。不純物が窓7に付着すると、発光素子61から照射された紫外線が窓7を透過し難くなる。防汚膜が設けられていれば、不純物が窓7に付着するのを抑制することができる。そのため、紫外線が、経時的に、流体301aに照射され難くなるのを抑制することができる。
【0041】
カバー8は、筒状を呈し、筒部2および反射部3を内部に収納することができる。カバー8と反射部3(筒部2)の外側面との間には空間8aが設けられている。カバー8は、例えば、供給ヘッド4と排出ヘッド5に取り付けることができる。カバー8の取り付け方法には特に限定がない。例えば、カバー8の一方の端部を供給ヘッド4に設けられた溝の内部に設け、カバー8の他方の端部を排出ヘッド5に設けられた溝の内部に設けることができる。また、例えば、カバー8の両側の端部のそれぞれにフランジを設け、一方のフランジを供給ヘッド4にネジなどで取り付け、他方のフランジを排出ヘッド5にネジなどで取り付けてもよい。
【0042】
ここで、筒部2の内部を流れる流体301aの温度が、流体殺菌装置1が設けられている環境の温度よりも低くなる場合がある。例えば、夏などの気温が高い時期に、地下水や湧き水などの殺菌を行う場合がある。カバー8と反射部3(筒部2)の外側面との間の空間8aには、空気などの気体が含まれている。一般的に、空間8aに含まれている気体は、カバー8を供給ヘッド4および排出ヘッド5に取り付ける作業を行う環境の空気となる。そのため、空間8aには水蒸気を含む空気がある。
【0043】
この場合、流体301aの温度と、流体殺菌装置1が設けられている環境の温度との差が大きくなると、空間8aに含まれている水蒸気が凝縮して、反射部3(筒部2)の外側面において結露が発生する場合がある。
【0044】
光源6から照射され、筒部2の内側面に入射した紫外線は、筒部2の内部で反射を繰り返しながら伝搬していく。結露により発生した水が、筒部2の外側面に付着したり、筒部2の外側面と反射部3との間に侵入したりすると、反射部3や筒部2の光学特性(例えば、反射率など)が変化するおそれがある。筒部2の内部で反射を繰り返しながら伝搬する紫外線も殺菌に寄与するので、反射部3などの光学特性が変化すると、殺菌効果が低下するおそれがある。
【0045】
そこで、本実施の形態に係る流体殺菌装置1には、温度制御部9が設けられている。
温度制御部9は、カバー8に設けることができる。温度制御部9は、カバー8と反射部3(筒部2)との間の空間8aの温度を制御することができる。例えば、温度制御部9は、空間8aに含まれている気体の温度と、筒部2の内部に供給される流体301aの温度との差が小さくなるようにする。温度制御部9は、例えば、ペルチェ素子とすることができる。温度制御部9がペルチェ素子であれば、ペルチェ素子に流す電流の方向を変化させることで、空間8aに含まれている気体を冷却したり、空間8aに含まれている気体を加熱したりすることができる。ペルチェ素子は、板状の素子であるため、カバー8の外側面や内側面に設けることが容易である。また、図1に示すように、カバー8に孔を設け、孔の内部に温度制御部9を設けることもできる。
【0046】
なお、温度制御部9は、熱媒体を循環させる流路を備えたものとしてもよい。例えば、温度制御部9は、水冷ジャケットなどとすることもできる。また、温度制御部9は、送風機やヒータなどを備えたものとしてもよい。ただし、温度制御部9がペルチェ素子であれば、温度制御部9の小型化、ひいては流体殺菌装置1の小型化を図ることができる。また、流す電流の方向を変化させることで、空間8aに含まれている気体を冷却したり、空間8aに含まれている気体を加熱したりすることができるので、温度制御が容易となる。
【0047】
また、結露の抑制を考慮すると、カバー8と供給ヘッド4との間に、パッキンやOリングなどのシール部材を設けることが好ましい。カバー8と排出ヘッド5との間に、パッキンやOリングなどのシール部材を設けることが好ましい。シール部材を設ければ、空間8aに、外部の水蒸気を多く含む空気などが侵入するのを抑制することができる。
【0048】
また、結露の抑制を考慮すると、空間8aに含まれている水蒸気の量が少ない方が好ましい。例えば、空間8aにおける相対湿度が、80%以下となるようにすることが好ましい。例えば、相対湿度が80%以下の環境において、カバー8を供給ヘッド4と排出ヘッド5とに取り付ければ良い。また、空間8aに除湿剤などを設けることもできる。
【0049】
また、結露の抑制を考慮すると、カバー8の材料は、熱伝導率の低い材料とすることが好ましい。例えば、カバー8は、例えば、フェノール樹脂やフッ素樹脂などの樹脂。セラミックスなどの無機材料などから形成することができる。また、金属などの熱伝導率の高い材料と、樹脂などの熱伝導率の低い材料とを積層させるようにしてもよい。また、カバー8の外側面および内側面の少なくともいずれかに断熱材を設けることもできる。この様にすれば、外気と空間8aに含まれている気体との間における熱の伝搬を抑制することができるので、温度制御部9による温度制御を容易とすることができる。
【0050】
図2は、他の実施形態に係る流体殺菌装置1aを例示するための模式断面図である。
図2に示すように、流体殺菌装置1aには、筒部2、反射部3、供給ヘッド14、排出ヘッド5、光源6、窓7、カバー8、温度制御部9、および連通部10(第1の連通部または第2の連通部の一例に相当する)を設けることができる。
【0051】
図1に例示をした流体殺菌装置1の場合には、排出ヘッド5に光源6(発光素子61)が設けられ、供給ヘッド4には光源6(発光素子61)が設けられていない。なお、供給ヘッド4に光源6(発光素子61)が設けられ、排出ヘッド5には光源6(発光素子61)が設けられないようにしてもよい。本実施の形態に係る流体殺菌装置1aの場合には、供給ヘッド14と排出ヘッド5のそれぞれに光源6(発光素子61)が設けられている。すなわち、光源6(発光素子61)は、供給ヘッドおよび排出ヘッドの少なくともいずれかに設けることができる。この場合、光源6(発光素子61)が、供給ヘッドと排出ヘッドに設けられていれば、殺菌を行う流体301aの量を増加させたり、筒部2の中心軸方向の長さを長くしたりすることができる。また、発熱量の多い発光素子61を複数設ける場合には、複数の発光素子61を供給ヘッド側の光源6と排出ヘッド側の光源6とに分けて設けることができる。そのため、発熱量の多い発光素子61であっても、発光素子61の温度が最大ジャンクション温度を越えるのを抑制することができる。
【0052】
なお、供給ヘッドに光源6を設ける場合には、供給ヘッドにも窓7(第2の窓の一例に相当する)を設けることができる。すなわち、窓7は、供給ヘッド14に設けられ、一方の面が、供給ヘッド14に設けられた流路14a2に露出している。
【0053】
図2に示すように、光源6と窓7が設けられる供給ヘッド14は、例えば、排出ヘッド5と同様の構成を有することができる。供給ヘッド14の材料は、例えば、排出ヘッド5の材料と同じとすることができる。
例えば、供給ヘッド14に設けられた孔14aおよび孔14dは、排出ヘッド5に設けられた孔5aおよび孔5dと同様とすることができる。この場合、孔14aの一方の開口は、筒部2の内部とつながっている。孔14aの他方の開口は、供給ヘッド14の側面に設けられた供給口14a1となる。例えば、供給口14a1には、配管を介して、水源などを接続することができる。また、フィルタや整流板などを供給口14a1の内部に設けることもできる。
【0054】
また、孔14aに設けられた流路14a2と流路14a3は、孔5aに設けられた流路5a2と流路5a3と同様とすることができる。例えば、流路14a2は、供給ヘッド14の筒部2側の端面に開口している。また、流路14a2の内壁には、窓7が露出している。流路14a3の一方の端部は、流路14a2の周縁近傍に接続されている。流路14a3の他方の端部には、供給口14a1が接続されている。
【0055】
図2に示すように、供給口14a1および流路14a3を介して、流路14a2の内部に供給された流体301aは、窓7の面に沿って、窓7の中央側に流れる。この際、窓7を介して照射された紫外線により、流体301aが殺菌される。また、流体301aは、筒部2の内部を排出ヘッド5側に流れ、排出ヘッド5の流路5a2の内部に供給される。流路5a2の内部に供給された流体301aは、窓7に当たり、窓7の面に沿って、窓7の周縁側に流れる。この際、窓7を介して照射された紫外線により、流体301aが殺菌される。殺菌済みの流体301bは、流路5a3を介して排出口5a1から排出される。
【0056】
なお、流路14a2および流路5a2に照射された紫外線の一部は、筒部2の内部に照射される。また、筒部2の内部に照射された紫外線の一部は、反射部3により反射される。そのため、筒部2の内部においても流体301aの殺菌が行われる。
【0057】
連通部10は、窓7の、発光素子61側の面と基板62との間の空間5d1(空間14d1)と、カバー8と反射部3(筒部2)との間の空間8aと、を連通している。連通部10は、例えば、管状を呈するものとすることができる。連通部10の一方の端部は、カバー8の外側面に設けられた孔を介して空間8aと接続することができる。連通部10の他方の端部は、ホルダ63に設けられた孔を介して空間5d1(空間14d1)と接続することができる。
【0058】
連通部10が設けられていれば、空間8aと空間5d1(空間14d1)を接続することができる。連通部10が設けられていれば、空間8aと空間5d1(空間14d1)との間で気体の循環を生じさせることができる。これにより、窓7に結露が発生するのを抑制することができる。そのため、窓7の表面の光学特性が変化するのを抑制することができ、ひいては、殺菌効果が低下するのを抑制することができる。空間5d1(空間14d1)の内部には発光素子61が露出しているので、空間5d1(空間14d1)の内部に気体の流れが生じれば、発光素子61の冷却を図ることができる。そのため、発光素子61の温度が最大ジャンクション温度を越えるのを抑制することができる。
【0059】
なお、連通部10の数、配置、断面寸法(内径)などは、発光素子61の数や発熱量などに応じて適宜変更することができる。連通部10の数、配置、断面寸法(内径)などは、実験やシミュレーションを行うことで適宜決定すればよい。
【0060】
図3は、他の実施形態に係る流体殺菌装置1bを例示するための模式断面図である。
図3に示すように、流体殺菌装置1bには、筒部2、反射部3、供給ヘッド14、排出ヘッド5、光源6、窓7、カバー8、温度制御部9、連通部10、および送風部11(第1の送風部または第2の送風部の一例に相当する)を設けることができる。
【0061】
送風部11は、窓7の、発光素子61側の面と基板62との間の空間5d1(空間14d1)と、カバー8と反射部3(筒部2)との間の空間8aと、の間で気体の流れを生じさせる。送風部11は、例えば、連通部10に設けることができる。送風部11は、例えば、ポンプやブロアなどの送風機とすることができる。送風部11が設けられていれば、空間8aと空間5d1(空間14d1)との間で気体の循環を強制的に生じさせることができる。そのため、窓7に結露が発生するのを効果的に抑制することができる。また、発光素子61の冷却を効果的に行うことができる。
【0062】
なお、連通部10が複数設けられる場合には、少なくとも1つの連通部10に送風部11を設けることができる。この場合、空間5d1および空間14d1の内部に気体の流れが生じるようにすることが好ましい。そのため、図3に示すように、供給ヘッド14に接続された連通部10に送風部11を設け、且つ、排出ヘッド5に接続された連通部10に送風部11を設けることが好ましい。
【0063】
(流体殺菌システム100)
図4は、本実施の形態に係る流体殺菌システム100を例示するための模式図である。なお、以下においては、一例として、流体殺菌装置1が設けられる場合を説明するが、流体殺菌装置1a、1bが設けられる場合も同様とすることができる。
【0064】
図4に示すように、流体殺菌システム100は、流体殺菌装置1、タンク101、ポンプ102、流量制御弁103、温度センサ104a、温度センサ104b、タンク105、電源106、およびコントローラ107を有することができる。
【0065】
タンク101は、殺菌前の流体301aを収納することができる。タンク101の排出口と流体殺菌装置1の供給口4a1は、例えば、配管を介して接続することができる。
【0066】
ポンプ102は、タンク101と流体殺菌装置1の間の配管に設けることができる。ポンプ102は、タンクに101に収納されている流体301aを流体殺菌装置1に供給する。なお、ポンプ102が、例えば、地下水や湧き水などを汲み上げる場合には、タンク101を省くことができる。流体殺菌装置1が、例えば、工場配管などに接続される場合には、タンク101を省くこともできるし、タンク101およびポンプ102を省くこともできる。
【0067】
流量制御弁103は、ポンプ102と流体殺菌装置1の間の配管に設けることができる。流量制御弁103は、流体殺菌装置1に供給する流体301aの流量を制御する。また、流量制御弁103は、流体301aの供給の開始と供給の停止を行うこともできる。
また、流体殺菌装置1の供給ヘッド4や、供給口4a1に接続された配管には、フィルタなどを適宜設けることもできる。
【0068】
温度センサ104aは、流体殺菌装置1に供給される流体301aの温度を検出する。温度センサ104bは、空間8aにある気体の温度を検出する。温度センサ104a、104bは、例えば、熱電対などとすることができる。
【0069】
タンク105は、配管を介して流体殺菌装置1の排出口5a1に接続することができる。タンク105は、殺菌後の流体301b(例えば、水)を収納することができる。なお、殺菌後の流体301bがタンク105に収納される場合を例示したが、流体殺菌装置1の排出口5a1が洗浄装置などの流体301bを用いる装置に接続されてもよい。また、流体殺菌装置1の排出口5a1から排出された流体301bが基板などの対象物にかけ流されるようにしてもよい。
【0070】
電源106は、流体殺菌装置1の光源6(発光素子61)に電気的に接続されている。電源106は、光源6(発光素子61)に所定の電力を供給する。電源106は、例えば、直流電源とすることができる。直流電源には、整流回路、コンバータ、およびスイッチなどを設けることができる。整流回路は、交流電源と電気的に接続される。整流回路は、例えば、交流電源により印加された交流電圧を全波整流することができる。整流回路は、例えば、ダイオードブリッジなどを有することができる。コンバータは、整流回路により全波整流された電圧を、所定の直流電圧に変換する。コンバータは、例えば、スイッチング回路を有することができる。スイッチは、光源6(発光素子61)への電力の印加と、電力の印加の停止とを切り替えることができる。
【0071】
コントローラ107は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などの演算素子と、半導体メモリなどの記憶素子を有することができる。コントローラ107は、例えば、コンピュータとすることができる。記憶素子には、流体殺菌システム100に設けられた各要素の動作を制御する制御プログラムを格納することができる。演算素子は、記憶素子に格納されている制御プログラム、操作者により入力されたデータなどを用いて、流体殺菌システム100に設けられた各要素の動作を制御する。
【0072】
コントローラ107は、流体殺菌装置1に設けられたカバー8と反射部3(筒部2)との間の空間8aの温度と、流体殺菌装置1に供給される液体301aの温度と、の差が小さくなるように温度制御部9を制御することができる。コントローラ107は、例えば、温度センサ104aにより検出された流体301aの温度と、温度センサ104bにより検出された空間8aにある気体の温度との差が小さくなるように、温度制御部9を制御することができる。例えば、夏などの気温の高い時期に井戸水などを殺菌する場合には、温度制御部9により、空間8aにある気体を冷却することができる。この様にすれば、空間8aに含まれている水蒸気が凝縮して、反射部3(筒部2)の外側面において結露が発生するのを抑制することができる。そのため、反射部3などの光学特性が変化するのを抑制することができ、ひいては、殺菌効果が低下するのを抑制することができる。
【0073】
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0074】
1 流体殺菌装置、1a 流体殺菌装置、1b 流体殺菌装置、2 筒部、3 反射部、4 供給ヘッド、5 排出ヘッド、6 光源、7 窓、8 カバー、8a 空間、9 温度制御部、10 連通部、11 送風部、14 供給ヘッド、61 発光素子、62 基板、100 流体殺菌システム、104a 温度センサ、104b 温度センサ、107 コントローラ、301a 流体、301b 流体
図1
図2
図3
図4