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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】光源装置及びキャリブレーション装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/00 20100101AFI20240828BHJP
   F21V 23/00 20150101ALI20240828BHJP
   F21V 29/503 20150101ALI20240828BHJP
   H01S 5/06 20060101ALI20240828BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20240828BHJP
   F21Y 115/30 20160101ALN20240828BHJP
【FI】
H01L33/00 J
F21V23/00 113
F21V23/00 117
F21V23/00 140
F21V29/503
H01S5/06
F21Y115:10
F21Y115:30
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021032812
(22)【出願日】2021-03-02
(65)【公開番号】P2022133879
(43)【公開日】2022-09-14
【審査請求日】2023-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松島 竹夫
【審査官】百瀬 正之
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-053184(JP,A)
【文献】国際公開第2019/216150(WO,A1)
【文献】米国特許第09985414(US,B1)
【文献】特開2006-049674(JP,A)
【文献】特開2006-080235(JP,A)
【文献】特開2006-261314(JP,A)
【文献】特開2004-140509(JP,A)
【文献】国際公開第2005/011006(WO,A1)
【文献】特開平03-036777(JP,A)
【文献】国際公開第2020/008566(WO,A1)
【文献】特開2019-201082(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00-33/64
H01S 5/00-5/50
F21V 23/00-99/00
F21Y 115/10
F21Y 115/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子と、
前記発光素子の設置箇所の温度を検出する温度検出器と、
前記発光素子に対して電流を供給する駆動回路と、
前記駆動回路から前記発光素子に供給する電流を制御する制御部と、
前記発光素子の光出力の目標値Φに対応する情報の入力を受け付ける目標光出力受付部とを備え、
前記制御部は、
前記発光素子の前記設置箇所の温度に相関のある第一変数、及び前記発光素子の光出力に相関のある第二変数から、前記発光素子に供給される電流に相関のある第三変数を求める制御関数が記録された第一記憶部と、
前記第一記憶部から前記制御関数を読み出すと共に、前記温度検出器で検出された温度Tを前記第一変数に代入し、前記目標光出力受付部が入力を受け付けた前記目標値Φを前記第二変数に代入することで、前記第三変数である前記発光素子に対する供給電流量を決定する演算処理部とを備え、
前記制御関数は、独立変数x、独立変数y、及び従属変数zを含む下記(1)式に規定された曲面関数であって、前記第一変数、前記第二変数、及び前記第三変数を、前記独立変数x、前記独立変数y、及び前記従属変数zのいずれかの変数に割りつけて前記第三変数を求める式に変換した関数であり、
前記曲面関数の形状は、下記(1)式内の係数αtsによって決定され
前記演算処理部が決定した前記供給電流量の電流が前記駆動回路から前記発光素子に対して供給されることで、フィードフォワード制御が実行されることを特徴とする光源装置。
【数1】
ただし、(1)式においてαts(0≦t≦k,0≦s≦j)は前記係数であり、k及びjのうちの一方は2以上の整数であり、他方は1以上の整数である。
【請求項2】
前記第一変数は前記独立変数xに対応し、前記第二変数は前記独立変数yに対応し、前記第三変数は前記従属変数zに対応し、
前記演算処理部は、前記温度Tを前記制御関数内の前記独立変数xに適用し、前記目標値Φを前記制御関数内の前記独立変数yに適用することで、(1)式に基づく演算によって算定される前記制御関数内の前記従属変数zの値によって、前記発光素子に対する供給電流量を決定することを特徴とする、請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記第一変数及び前記第二変数のうちの一方は前記独立変数xに他方は前記従属変数zに対応し、前記第三変数は前記独立変数yに対応し、
前記演算処理部は、(1)式に示す前記制御関数を前記独立変数yを算出する変形式に数式変換した上で、前記変形式に対して、前記温度T及び前記目標値Φをそれぞれ対応する前記独立変数x及び前記従属変数zに適用した演算で算定される前記独立変数yの値によって、前記発光素子に対する供給電流量を決定することを特徴とする、請求項1に記載の光源装置。
【請求項4】
(1)式において、k及びjの双方が2であり、
前記演算処理部は、以下の(2)式に基づく演算によって得られる電流量Iによって供給電流量を決定することを特徴とする、請求項2に記載の光源装置。
【数2】
【請求項5】
(1)式において、k及びjの双方が2であり、
前記演算処理部は、以下の(3)式に基づく演算によって得られる電流量Iによって供給電流量を決定することを特徴とする、請求項3に記載の光源装置。
【数3】
【請求項6】
前記制御部は、前記係数αtsの値に関する情報の入力を受け付ける入力ポートを備えていることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の光源装置。
【請求項7】
前記駆動回路及び前記制御部が搭載されると共に前記発光素子から取り外し可能に構成された駆動部を備え、
前記発光素子は、当該発光素子に固有に割り当てられた前記係数αtsの値に関する情報が記録された第二記憶部を備え、
前記駆動部と前記発光素子とが接続されると、前記第二記憶部に記録された前記係数αtsの値に関する情報が、前記入力ポートを介して前記制御部に入力されることを特徴とする、請求項6に記載の光源装置。
【請求項8】
波長の異なる複数の前記発光素子を備え、
前記第一記憶部は、前記発光素子毎に異なる前記制御関数を記録していることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の光源装置。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の光源装置に対するキャリブレーション処理を行うキャリブレーション装置であって、
前記制御関数内の前記係数αtsの更新情報を作成し、前記光源装置が備える前記第一記憶部に対して更新処理を行う情報更新部を備え、
前記情報更新部は、
前記発光素子が発光状態の下で、前記発光素子からの光出力に相関を示す第一実測値、前記発光素子に対して供給される電流量に相関のある第二実測値、及び前記発光素子の前記設置箇所の温度に相関のある温度実測値を、独立変数X、独立変数Y、及び従属変数Zのいずれかに対応させた、以下の(4)式に示す更新用制御関数を演算処理によって決定し、
前記更新用制御関数内における係数αTSに関する情報を前記更新情報として前記第一記憶部に出力することを特徴とする、キャリブレーション装置。
【数4】
ただし、(4)式におけるk及びjの値は、(1)式におけるk及びjの値にそれぞれ一致する。
【請求項10】
前記情報更新部は、前記第一実測値、前記第二実測値、及び前記温度実測値で構成される座標情報を(k+1)×(j+1)点以上取得し、複数の前記座標情報に基づく最小二乗法によって前記更新用制御関数を決定することを特徴とする、請求項9に記載のキャリブレーション装置。
【請求項11】
前記光源装置は、前記発光素子からの出射光を受光する受光センサを備えており、
前記情報更新部は、前記受光センサで検出された光量に基づいて前記第一実測値を取得し、前記制御部による電流の制御量に基づいて前記第二実測値を取得し、前記温度検出器で検出された温度に基づいて前記温度実測値を取得することを特徴とする、請求項9又は10に記載のキャリブレーション装置。
【請求項12】
前記光源装置の前記制御部に対して、前記キャリブレーション処理のために前記発光素子に対する供給電流量を変化させながら発光を行う旨の指示信号を出力する指示信号出力部を備え、
前記情報更新部は、前記指示信号に基づいて発光状態にある前記発光素子から、前記第一実測値、前記第二実測値、及び前記温度実測値を取得することを特徴とする、請求項9~11のいずれか1項に記載のキャリブレーション装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光源装置に関し、特に、光出力に対する高い制御性を示す光源装置に関する。また、本発明は、光源装置に対して高い制御性を維持するためのキャリブレーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
LED等の発光素子は、発光素子の温度によって、同じ投入電流量であっても実際の発光量が変動することが知られている。このような背景の下、従来、LEDの光出力を安定化させるための技術として、LEDからの出射光の一部をフォトセンサで受光すると共に、この受光量に基づいて電源回路からLEDに対する供給電流量を調整する、フィードバック制御が存在する。
【0003】
しかし、フォトセンサを用いたフィードバック制御の場合、フォトセンサ自体が温度の影響を受けるため、高い精度で光出力を制御することが難しい。また、フォトセンサは、他の外乱の影響を受けやすいため、短時間における出力変動に対する追随性が悪い。
【0004】
このような課題への対応策として、LEDの温度を測定し、測定された温度の値に応じてLEDに対する供給電流値を制御する、フィードフォワード制御が提案されている(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平3-36777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された方法によれば、光出力と温度と電流との関係が予め記載されたデータテーブルを準備しておくと共に、所望の光出力を実現するためには、このデータテーブルから読み出された電流値に対応する電流をLEDに供給する制御が行われる。しかし、この方法で光出力を精度よく制御するためには、データテーブルに膨大なデータを記載しておく必要がある。
【0007】
また、必要な電流量を決定するためには、所望の光出力及び測定温度に近いデータをデータテーブルから読み出す処理と補完処理とが必要になり、迅速な応答性を実現するには限界がある。特に、内視鏡のように、照明中に光出力を細かく調整することが予定されているアプリケーションに利用される光源に対しては、光出力の調整に対する速い応答性が求められるため、上記の制御方法を採用しづらい。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑み、従来のフィードフォワード方式による制御方法よりも少ないデータ量でありながらも、応答性の高い光出力制御が可能な光源装置を提供することを目的とする。また、本発明は、このような光源装置に対して高い制御性を維持するためのキャリブレーション装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る光源装置は、
発光素子と、
前記発光素子の設置箇所の温度を検出する温度検出器と、
前記発光素子に対して電流を供給する駆動回路と、
前記駆動回路から前記発光素子に供給する電流を制御する制御部と、
前記発光素子の光出力の目標値Φに対応する情報の入力を受け付ける目標光出力受付部とを備え、
前記制御部は、
前記発光素子の前記設置箇所の温度に相関のある第一変数、及び前記発光素子の光出力に相関のある第二変数から、前記発光素子に供給される電流に相関のある第三変数を求める制御関数が記録された第一記憶部と、
前記第一記憶部から前記制御関数を読み出すと共に、前記温度検出器で検出された温度Tを前記第一変数に代入し、前記目標光出力受付部が入力を受け付けた前記目標値Φを前記第二変数に代入することで、前記第三変数である前記発光素子に対する供給電流量を決定する演算処理部とを備え、
前記制御関数は、独立変数x、独立変数y、及び従属変数zを含む下記(1)式に規定された曲面関数であって、前記第一変数、前記第二変数、及び前記第三変数を、前記独立変数x、前記独立変数y、及び前記従属変数zのいずれかの変数に割りつけて前記第三変数を求める式に変換した関数であり、
前記曲面関数の形状は、下記(1)式内の係数αtsによって決定されることを特徴とする。
【数1】
ただし、(1)式においてαts(0≦t≦k,0≦s≦j)は前記係数であり、k及びjのうちの一方は2以上の整数であり、他方は1以上の整数である。
【0010】
「発光素子の設置箇所の温度」は、発光素子が搭載されている領域(基板)の温度であっても構わないし、発光素子そのものの温度であっても構わない。また、発光素子が閉空間内に配置されている場合において、当該閉空間内の雰囲気の温度であっても構わない。
【0011】
上記構成によれば、所望の光出力(目標値Φ)に対応する情報が入力されると、この目標値Φに関する情報と、現時点における発光素子の設置箇所の温度に関する情報とを、第一記憶部に記録された制御関数に適用して演算するだけで、現時点の温度下で目標値Φに対応する光出力を得るために必要な電流量が決定される。そして、制御部は、この決定した電流量に関する情報を駆動回路に出力することで、駆動回路から発光素子に対して指定された量の電流が供給され、目標値Φに近い光出力が得られる。
【0012】
つまり、上記構成によれば、制御部内の演算処理部において単純な演算処理を行うのみで必要な電流量が決定されるため、少ない処理数で光出力の制御が可能となる。この結果、高い応答性が実現される。
【0013】
また、上述したように、(1)式内のk及びjのうちの一方が2以上であることから、制御関数は、独立変数xと独立変数yのうちの少なくとも一方が2次以上の多元式で表された、多元多項式である。かかる制御関数を用いることは、内視鏡、露光装置、印刷機等のアプリケーションに用いられる光源装置に対して、精度の高い制御が可能となるため、特に有効である。内視鏡は、観測部位と光源との距離が都度変化するような状況で使用されるため、かかる制御関数を用いることで、観測部位の照度を精度よく一定に保つことができる。また、露光装置と印刷機は、かかる制御関数を用いることで、精度よく一定のドーズ量で対象物を繰り返し照射できる。なお、1次式の制御関数では、電流、温度及び光出力の関係を精度良くフィッティングさせることができない結果、1次式の制御関数を用いたフィードフォワード制御を行った場合、目標値Φと実際に得られる光出力との間には無視できない乖離が生まれ、応答性も低下する。
【0014】
制御関数に関する情報は、例えば光源装置を出荷する前段階において予め導出しておくと共に、この導出された情報を第一記憶部に記録させておくものとして構わない。制御関数は、例えば電流量を変化させながら、温度と光出力の関係を複数計測することで、これら3つの要素からなる複数の座標を準備し、演算処理によってこれらの座標に対するフィッティング処理を行うことで導出される。
【0015】
前記第一変数は前記独立変数xに対応し、前記第二変数は前記独立変数yに対応し、前記第三変数は前記従属変数zに対応し、
前記演算処理部は、前記温度Tを前記制御関数内の前記独立変数xに適用し、前記目標値Φを前記制御関数内の前記独立変数yに適用することで、(1)式に基づく演算によって算定される前記制御関数内の前記従属変数zの値によって、前記発光素子に対する供給電流量を決定するものとしても構わない。
【0016】
この場合において、(1)式内のk及びjの双方が2であり、
前記演算処理部は、以下の(2)式に基づく演算によって得られる電流量Iによって供給電流量を決定するものとしても構わない。
【数2】
【0017】
上記構成によれば、二元二項の多項式で規定された制御関数に対して、発光素子の設置箇所における温度Tと光出力の目標値Φに対応する情報を適用するのみで、必要な電流量Iが演算で算定される。このため、演算量が極めて少なくなるため、応答性が極めて向上し、リアルタイムでの光出力制御が可能となる。
【0018】
また、上記の構成とは別に、前記第一変数及び前記第二変数のうちの一方は前記独立変数xに他方は前記従属変数zに対応し、前記第三変数は前記独立変数yに対応し、
前記演算処理部は、(1)式に示す前記制御関数を前記独立変数yを算出する変形式に数式変換した上で、前記変形式に対して、前記温度T及び前記目標値Φをそれぞれ対応する前記独立変数x及び前記従属変数zに適用した演算で算定される前記独立変数yの値によって、前記発光素子に対する供給電流量を決定するものとしても構わない。
【0019】
この場合において、(1)式内のk及びjの双方が2であり、
前記演算処理部は、以下の(3)式に基づく演算によって得られる電流量Iによって供給電流量を決定するものとしても構わない。
【数3】
【0020】
前記制御部は、前記係数αtsの値に関する情報の入力を受け付ける入力ポートを備えているものとしても構わない。
【0021】
かかる構成によれば、例えば、発光素子を交換した場合においても、当該発光素子に対応する係数αtsに関する情報が入力ポートを通じて制御部に送られることで、第一記憶部に記録された制御関数を用いた光出力制御が可能となる。また、発光素子の経時的な劣化に伴って係数αtsの値の見直しを行う場合においても、入力ポートを通じて見直し後の係数αtsの値が制御部に送られることで、第一記憶部に記録された制御関数を用いた光出力制御が可能となる。
【0022】
上記構成において、前記光源装置は、前記駆動回路及び前記制御部が搭載されると共に前記発光素子から取り外し可能に構成された駆動部を備え、
前記発光素子は、当該発光素子に固有に割り当てられた前記係数αtsの値に関する情報が記録された第二記憶部を備え、
前記駆動部と前記発光素子とが接続されると、前記第二記憶部に記録された前記係数αtsの値に関する情報が、前記入力ポートを介して前記制御部に入力されるものとしても構わない。
【0023】
上記構成によれば、発光素子側に係数αtsの値に関する情報が記録されている。このため、例えば発光素子を交換した場合であっても、自動的に制御部の第一記憶部に記録された係数αtsの値が更新されるため、交換後の発光素子に対する光出力の制御を精度良く行える。
【0024】
前記光源装置は、波長の異なる複数の前記発光素子を備え、
前記第一記憶部は、前記発光素子毎に異なる前記制御関数を記録しているものとしても構わない。
【0025】
光源装置として、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の各色の発光素子を備えることで白色の照明光を生成する場合が考えられる。発光素子は、発光波長に応じて温度に対する光出力への影響度合いが変化する。このため、異なる波長帯(色帯)の発光素子に対して電流量の調整を同等に行った場合には、照明光の色バランスが変化することがある。これに対し、上記構成によれば、制御部側において、異なる波長の発光素子に応じた制御関数が記録されているため、色バランスを維持しながらも光出力を高精度に制御できる。
【0026】
また、本発明は、上記光源装置に対するキャリブレーション処理を行うキャリブレーション装置であって、
前記制御関数内の前記係数αtsの更新情報を作成し、前記光源装置が備える前記第一記憶部に対して更新処理を行う情報更新部を備え、
前記情報更新部は、
前記発光素子が発光状態の下で、前記発光素子からの光出力に相関を示す第一実測値、前記発光素子に対して供給される電流量に相関のある第二実測値、及び前記発光素子の前記設置箇所の温度に相関のある温度実測値を、独立変数X、独立変数Y、及び従属変数Zのいずれかに対応させた、以下の(4)式に示す更新用制御関数を演算処理によって決定し、
前記更新用制御関数内における係数αTSに関する情報を前記更新情報として前記第一記憶部に出力することを特徴とする。
【数4】
ただし、(4)式におけるk及びjの値は、(1)式におけるk及びjの値にそれぞれ一致する。
【0027】
前記キャリブレーション装置において、上記(4)式に示す更新用制御関数を最小二乗法によって決定しても構わない。より詳細には、前記情報更新部は、前記第一実測値、前記第二実測値、及び前記温度実測値で構成される座標情報を(k+1)×(j+1)点以上取得し、複数の前記座標情報に基づく最小二乗法によって前記更新用制御関数を決定するものとしても構わない。
【0028】
光源装置の利用が進むに連れて、搭載されている発光素子の温度と光出力の関係性が経時的に変化することがある。上記のキャリブレーション装置によれば、所定のタイミングでキャリブレーション処理を行うことで、現時点の発光素子に対応した係数αTSの値を導出できるため、この係数αTSに関する情報を制御部内の第一記憶部に記録させることで、光出力に対する高い制御性が維持される。
【0029】
前記光源装置は、前記発光素子からの出射光を受光する受光センサを備えており、
前記キャリブレーション装置が備える前記情報更新部は、前記受光センサで検出された光量に基づいて前記第一実測値を取得し、前記制御部による電流の制御量に基づいて前記第二実測値を取得し、前記温度検出器で検出された温度に基づいて前記温度実測値を取得するものとしても構わない。
【0030】
上記構成によれば、キャリブレーション装置側には、入力された情報に基づく演算処理を行う機能(情報更新部)が搭載されていればよい。すなわち、キャリブレーション装置として、例えば汎用的なコンピュータで構成することができる。また、光源装置側に通信機能が搭載されている場合であれば、光源装置の設置場所から離れた位置に存在するコンピュータや演算処理機能が搭載された通信機器によってキャリブレーション装置を実現できる。
【0031】
前記キャリブレーション装置は、前記光源装置の前記制御部に対して、前記キャリブレーション処理のために前記発光素子に対する供給電流量を変化させながら発光を行う旨の指示信号を出力する指示信号出力部を備え、
前記情報更新部は、前記指示信号に基づいて発光状態にある前記発光素子から、前記第一実測値、前記第二実測値、及び前記温度実測値を取得するものとしても構わない。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、応答性の高い光出力制御が可能な光源装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】第一実施形態の光源装置の構造の一例を模式的に示す図面である。
図2】光源装置の構成例を模式的に示す機能ブロック図である。
図3】電流量Iを異ならせた状態で、光出力Pと温度Tを計測して得られる結果の一例を示すグラフである。
図4図3で得られた複数の座標群をフィッティングした制御関数を視覚的に表示したグラフである。
図5図4の結果に基づいて得られた制御関数を用いて算定した電流量の計算値と、実測された電流量との対比結果を示すグラフである。
図6A】比較例による方法(フィードバック)で制御された場合の結果を示すグラフであり、光出力の目標値、実際の光出力の実測値、及び目標値と実測値の分散の経時的な変化を示す。
図6B】比較例による方法(フィードバック)で制御された場合の結果を示すグラフであり、発光素子に供給される電流量、及び発光素子の設置箇所の温度の経時的な変化を示す。
図7A】実施例による方法(制御関数を用いたフィードフォワード)で制御された場合の結果を示すグラフであり、光出力の目標値、実際の光出力の実測値、及び目標値と実測値の分散の経時的な変化を示す。
図7B】実施例による方法(制御関数を用いたフィードフォワード)で制御された場合の結果を示すグラフであり、発光素子に供給される電流量、及び発光素子の設置箇所の温度の経時的な変化を示す。
図7C図7B内の一部領域を拡大したグラフである。
図8】光源装置の別の構成例を模式的に示す機能ブロック図である。
図9】キャリブレーション装置と光源装置の構造を模式的に示す図面である。
図10】キャリブレーション装置と光源装置の構成例を模式的に示す機能ブロック図である。
図11】キャリブレーション装置と光源装置の別の構成例を模式的に示す機能ブロック図である。
図12】キャリブレーション装置と光源装置の別の構成例を模式的に示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明に係る光源装置及びキャリブレーション装置の実施形態につき、図面を適宜参照して説明する。
【0035】
[第一実施形態]
図1は、第一実施形態の光源装置の構造の一例を模式的に示す図面である。光源装置1は、筐体10を有し、筐体10内には、発光素子12が搭載された基板11と、冷却用のヒートシンク16、及びファン17が収容されている。発光素子12は、電流が供給されると、光L12を出射する。
【0036】
光源装置1は、発光素子12の設置箇所の温度を検出する温度検出器19を備えている。図1では、温度検出器19が基板11の温度を検出する場合が例示されているが、少なくとも発光素子12の温度に相関を示す箇所の温度が検出できれば、その設置箇所については限定されない。
【0037】
図2は、光源装置1の構成の一例を模式的に示すブロック図である。図2において、実線の矢印は情報の流れを示し、一点鎖線の矢印は光の流れを示し、二点鎖線の矢印は発光素子12に対して供給される電流の流れを示している。以下の図においても、同様の表記方法が採用される。
【0038】
光源装置1は、駆動回路21、制御部22、及び目標光出力受付部31を備える。駆動回路21は、図示しない電源に接続されており、発光素子12に対して電流を供給する。制御部22は、駆動回路21から発光素子12に対して供給する電流量を制御する機能的手段である。
【0039】
目標光出力受付部31は、ユーザからの指示により、光源装置1の光出力を調整する指示信号の入力を受け付ける手段である。一例として、光源装置1に付設されるか又は光源装置1から離れた箇所に設けられた、目標光出力入力部35が、ユーザによって操作される。目標光出力入力部35は、例えば、操作ボタン、ツマミ、ダイヤル、タッチパネル上のスクロールバー、入力フォーム等で構成される。ユーザは、現時点における光L12の光出力を上昇又は低下させたい場合に、所望する光出力を指示するよう目標光出力入力部35を操作する。目標光出力受付部31は、目標光出力入力部35から入力された、所望する光出力に関する情報(目標値Φに対応する情報)の入力を受け付けると、当該情報を制御部22に出力する。
【0040】
制御部22は、演算処理部25と第一記憶部26と入出力ポート27を備える。入出力ポート27は、制御部22の外側から情報の入力を受け付けると共に、制御部22の外側に対して情報を出力するインタフェースである。例えば、前記した目標値Φに対応する情報は、入出力ポート27を介して制御部22に入力されるものとして構わない。なお、本実施形態においては、入出力ポート27に代えて、出力機能を有さない入力ポートとしてもよい。
【0041】
第一記憶部26は、後述される制御関数に関する情報が記録されている。第一記憶部26は、ハードディスク、フラッシュメモリ等の記憶媒体で構成される。演算処理部25は、温度検出器19から入力される発光素子12の設置箇所の温度Tの情報と、目標光出力受付部31から入力される光出力の目標値Φの情報を、第一記憶部26に記録された制御関数に適用することで、温度Tの下で目標値Φの光出力を得るために必要な供給電流量I(以下、「電流量I」と略記することがある。)を、演算処理によって算定する。演算処理部25は、このような演算処理が実行可能なソフトウェア又は専用のハードウェアで構成される。
【0042】
演算処理部25によって決定された電流量Iに関する情報は、制御部22から駆動回路21に出力される。駆動回路21は、この電流量Iに対応した量の電流を、発光素子12に対して供給する。
【0043】
温度検出器19は、例えば数ミリ秒~数十秒程度の間隔で、発光素子12の設置箇所の温度Tの情報を制御部22(演算処理部25)に対して出力する。演算処理部25は、温度Tの情報が入力される毎に演算処理を行って、供給電流量Iを算定する。駆動回路21は、制御部22から供給電流量Iに関する情報が更新される毎に、発光素子12に対する供給電流量を調整する。
【0044】
次に、第一記憶部26に記録されている制御関数に関する説明を行う。
【0045】
光源装置1は、例えば出荷前の時点において、制御関数を導出する処理が行われており、この処理で確定された制御関数に関する情報が、第一記憶部26に記録された状態で出荷される。
【0046】
具体的には、駆動回路21から発光素子12に対して供給される電流量を意図的に変化させた上で、このときに得られる光L12の光出力Pと、温度検出器19で検出された温度Tを、電流量Iに関連付けることで、座標(P,T,I)を複数取得する。そして、得られた座標群が存在できる関数(制御関数)をフィッティング処理によって導出する。
【0047】
ここで、光出力Pに関する情報は、例えば光源装置1の外側に設置した受光センサによる受光量に基づいて検出できる。また、後述するように、光源装置1内に光L12の一部を受光可能な受光センサ41(図10参照)が搭載されている場合には、この受光センサ41による受光量に基づいて検出しても構わない。また、電流量Iに関する情報は、制御部22から駆動回路21に対して出力する情報に基づいて取得しても構わないし、電流センサ等を用いて駆動回路21から発光素子12に対して供給されている電流量を実測して得られる情報に基づいても構わない。
【0048】
図3は、電流量Iを異ならせた状態で、光L12の光出力Pと、温度検出器19で検出された温度Tを計測して得られる結果の一例を示すグラフである。図3において、円の大小が電流量Iの大小に対応している。電流量Iが共通であっても、温度Tに応じて光出力Pが変動するが、その変動の態様には規則性があることが理解される。また、温度Tが一定であっても、電流量Iによって光出力Pが変動するが、その変動の態様には規則性があることが理解される。
【0049】
図4は、図3で得られた複数の座標群をフィッティングした制御関数を、視覚的に表示したグラフである。図4の例では、制御関数が近似曲面で規定されている。
【0050】
より具体的には、光出力Pを変数x、温度Tを変数y、電流量Iを変数zにそれぞれ割り当てて得られる測定結果(xi,yi,zi)(ただし、i=0,1,…,n)に対し、上述した式(1)に規定される制御関数を例えば最小二乗法を用いてフィッティングさせる。以下、(1)式を再掲する。ただし、(1)式において、k及びjの少なくとも一方は2以上の整数、他方は1以上の整数である。
【数5】
【0051】
ここで、具体的な例として、k=2,j=2である場合について詳細に説明する。この場合、上記(1)式は具体的に下記(5)式で規定される。
【数6】
【0052】
求めたい係数αtsを縦ベクトルCとして表記すると、下記(6)式で定義できる。
【数7】
【0053】
電流量Iに関する測定結果zi(ただし、i=0,1,…,n)を縦ベクトルBとして表記すると、下記(7)式で定義できる。
【数8】
【0054】
光出力Pに関する測定結果xi、及び温度Tに関する測定結果yi(ただし、i=0,1,…,n)を用いて、下記(8)式で表される行列Aを定義する。
【数9】
【0055】
このとき、(6)式の縦ベクトルCで定義される係数αtsは、以下の(9)式に基づく演算によって算定される。ただし、ATは行列(縦ベクトル)Aの転置行列であり、(AT・A)-1は行列(AT・A)の逆行列である。
【数10】
【0056】
上記(9)式で得られる行列Cの各要素は、係数αts(t=0,1,2;s=0,1,2)に対応する。つまり、各係数αtsを(5)式に適用して得られる式が、制御関数に対応する。この制御関数は、測定結果(xi,yi,zi)(ただし、i=0,1,…,n)を最小二乗法でフィッティングさせて得られた関数であり、この実施形態では、曲面関数に対応する。つまり、各係数αtsは、上記曲面関数の形状を決定する因子である。
【0057】
そして、このような方法を用いて予め算定された制御関数に関する情報が、第一記憶部26に記録されている。上の(5)式で規定される制御関数を例に挙げれば、各係数αts(t=0,1,2;s=0,1,2)の値が既に記録された状態で、制御関数に関する情報が第一記憶部26に記録されている。制御部22の演算処理部25は、目標光出力受付部31から入力される光出力の目標値Φの情報を、(5)式で規定される制御関数の変数xに、温度検出器19から入力される発光素子12の設置箇所の温度Tを、同関数の変数yにそれぞれ適用することで演算を行い、得られたzの値をもって供給電流量Iとする。
【0058】
図5は、図4の結果に基づいて得られた制御関数を用いて算定した電流量の計算値と、実際の電流量とを対比した結果を示すグラフである。グラフ上におけるプロットは、電流の実測値であり、横軸は実測に対応した箇所における光出力Pと温度Tの値に基づいて算定した電流の計算値に対応する。また、縦軸は、電流の計算値と実測値の分散を示している。
【0059】
図5の結果によれば、実測値と計算値がほぼ対応しており、分散の値も極めて小さいことが理解される。つまり、実測値に基づいて導出された制御関数によって、発光素子12の特性(温度、電流、光出力の関係)が表現できていることが分かる。
【0060】
比較例として、発光素子12から出射される光L12を受光センサで受光し、受光量に基づいてフィードバック制御を行った場合の制御結果を、図6A及び図6Bに示す。図6Aは、光出力の目標値を刻々と変化させた場合において(図6A内の(b)に対応)、実際に受光された光L12の出力(図6A内の(a)に対応)、及び両者の分散(図6A内の(c)に対応)の経時的な変化を示すグラフである。また、図6Bは、発光素子12に流れる電流(図6B内の(a)に対応)と、温度検出器19で検出された温度(図6B内の(b)に対応)の経時的な変化を示すグラフである。
【0061】
一方、上述した方法で制御部22によって発光素子12に対する電流制御が行われた場合が実施例とされた。すなわち、実施例では、第一記憶部26に制御関数が記録されている状態において、制御部22の演算処理部25が、光出力の目標値Φ、温度検出器19から入力される発光素子12の設置箇所の温度Tをそれぞれ制御関数に適用して演算し、得られたzの値をもって決定された電流量Iに対応する電流が、駆動回路21から発光素子12に対して供給された。
【0062】
実施例の制御結果を、図7A図7Cに示す。図7Aは、光出力の目標値を刻々と変化させた場合において(図7A内の(b)に対応)、実際に受光された光L12の出力(図7A内の(a)に対応)、及び両者の分散(図7A内の(c)に対応)の経時的な変化を示すグラフである。また、図7Bは、発光素子12に流れる電流(図7B内の(a)に対応)と、温度検出器19で検出された温度(図7B内の(b)に対応)の経時的な変化を示すグラフである。図7Cは、図7B内の領域Aを拡大したグラフである。
【0063】
図6A図7Aを対比すると、比較例の場合、光出力の目標値に関する指示が与えられてから、実際の光出力が目標値に達するまでに、3~7秒程度の時間を消費していることが分かる。このため、光出力に関し、目標値と実測値の間にはある程度の分散が生じている。一方、実施例の場合、光出力の目標値に関する指示が与えられてから、実際の光出力が目標値に達するまでにかかる時間は極めて短い。このことは、図7Aにおいて、(a)の曲線と(b)の曲線がほぼ重なっていること、分散の値が常時ほぼ0を示していることにも現れている。
【0064】
この点は、図6B図7Bを対比しても理解される。比較例において発光素子12に流れる電流は、実施例において発光素子12に流れる電流よりも、制御中における変動量が大きいことが理解される。このことは、比較例の制御方法の場合、光出力が目標値から離れていることで、電流量を常に変化させる制御が行われていることを示唆するものである。ただし、実施例においても、温度変化に応じて電流量は微小幅で変動しており、この点は図7Bのグラフの一部を拡大した図7Cに示されている。
【0065】
以上説明したように、本実施形態の光源装置1によれば、光出力の目標値Φを変化させる指示が与えられても、制御部22によって当該目標値Φを実現するために必要な電流量が演算で決定され、その量の電流が発光素子12に対して供給される構成であるため、応答性の高い制御が可能となる。また、上述したように、制御関数は二次以上の多元多項式で規定されているため、高い精度での制御が可能となる。
【0066】
発光素子12が、当該発光素子12に対応した制御関数内の係数αtsに関する情報が記録された第二記憶部42を備えていても構わない(図8参照)。例えば、光源装置1において、発光素子12を交換する場合が考えられる。このとき、ある発光素子12(ここでは便宜上「発光素子12A」と称する。)の係数αtsと、別の発光素子12(ここでは便宜上「発光素子12B」と称する。)の係数αtsとは、必ずしも同一とは限らない。このため、発光素子12Aから発光素子12Bに交換された場合、発光素子12Bを光源装置1に取り付けると、制御部22が発光素子12Bの第二記憶部42に記録された係数αtsに関する情報を読み出し、第一記憶部26に記録するものとしても構わない。
【0067】
より具体的な例として、発光素子12は、駆動回路21及び制御部22を含む駆動部20に対して取り外しが可能な構成であり、発光素子12と駆動部20とが接続されることで、駆動部20側(制御部22側)から発光素子12の第二記憶部42に記録された情報を読み出すものとして構わない。また、別の例としては、第二記憶部42が例えばICタグで構成されると共に、駆動部20がこのICタグの読み出し機能を搭載しており、発光素子12Aが発光素子12Bに交換される際に、新たに取り付けられる発光素子12Bに付されたICタグを駆動部20(制御部22)が読み出すことで、この発光素子12Bに対応した係数αtsに関する情報が第一記憶部26に記録される。
【0068】
[第二実施形態]
光源装置1が長期にわたって利用され続けると、発光素子12に対して同じ電流量を供給しても光出力が低くなる。この場合、例えば出荷前の試験で計測された情報に基づいて規定された制御関数を用いて発光素子12に対して出力制御を行っても、短時間で目標の光出力に達しない場合が考えられる。
【0069】
そこで、図9図10に示すように、発光素子12に対応した制御関数の補正を行うためのキャリブレーション装置50を用いても構わない。図10は、キャリブレーション装置50と光源装置1の構成を模式的に示す機能ブロック図である。
【0070】
図10に示すキャリブレーション装置50は、制御関数内の係数αtsの更新情報を作成する情報更新部51と、キャリブレーション処理の開始を指示するための指示信号出力部52とを備える。
【0071】
キャリブレーション処理を行うに際しては、指示信号出力部52が光源装置1に対してその旨の指示信号csを出力する。制御部22は、キャリブレーション指示信号csの入力を確認すると、駆動回路21から発光素子12に対する供給電流量を意図的に変化させながら発光素子12を発光させる制御を行う。そして、このときに得られる光L12を受光センサ41で受光した光出力P(「第一実測値」に対応する。)と、温度検出器19で検出された温度T(「温度実測値」に対応する。)を、電流量I(「第二実測値」に対応する。)に関連付けた座標(P,T,I)に関する情報が、情報更新部51に出力される。情報更新部51は、演算処理によって、与えられた座標群が存在できる関数(制御関数)をフィッティング処理によって導出し、新たな係数αTSを決定する。この座標(P,T,I)に関する情報は、(k+1)×(j+1)点以上取得され、情報更新部51に出力される。ここでいうk及びjは、(1)式におけるk及びjと同一である。つまり、上記の例のようにk=2,j=2である場合には、9点以上の座標(P,T,I)に関する情報が取得される。
【0072】
フィッティング処理の方法は、出荷前の段階で行われる制御関数の決定方法と同様としてよい。すなわち、光出力Pを変数X、温度Tを変数Y、電流量Iを変数Zにそれぞれ割り当てて得られる測定結果(Xi,Yi,Zi)(ただし、i=0,1,…,n)に対し、(1)式と同様の(4)式に規定される制御関数を、例えば最小二乗法を用いてフィッティングさせることで、更新用制御関数を決定する。なお、(4)式におけるk及びjの値は、(1)式の値と同じであり、少なくとも一方は2以上の整数、他方は1以上の整数である。
【数11】
【0073】
上述したように、制御部22が備える第一記憶部26には、出荷前の時点において発光素子12に対する発光試験が行われることで、導出された制御関数に関する情報が記録されている。本実施形態におけるキャリブレーション装置50は、光源装置1の利用を開始した後において、出荷前に行われるのと同様の試験を行うことで、現時点における発光素子12に対応した制御関数の導出処理を行う機能を有するものである。そして、キャリブレーション装置50は、導出した更新用制御関数を、更新情報として第一記憶部26に出力する。なお、このとき、更新情報としては、更新用制御関数を確定するために求められた係数αTSに関する情報のみとしても構わないし、関数そのものの情報としても構わない。
【0074】
なお、図11に示すように、キャリブレーション装置50が光源装置1に組み込まれていても構わない。この場合、制御関数の見直し処理(すなわち、キャリブレーション処理)を高頻度で行うことができるため、光出力の制御の精度がより高められる。
【0075】
また、図10に示す例では、光源装置1が受光センサ41を備え、この受光センサ41による受光量に基づく光出力Pの情報が、キャリブレーション装置50側に送られるものとした。しかし、図12に示すように、キャリブレーション装置50が受光センサ53を備える場合には、発光素子12から出射される光L12の一部又は全部をキャリブレーション装置50内の受光センサ53が受光し、この受光量に基づく光出力Pを用いて情報更新部51が制御関数の導出処理を行うものとしても構わない。なお、図12に示す構成において、図10の場合と同様に光源装置1が受光センサ41を備えていてもよい。
【0076】
[別実施形態]
以下、別実施形態について説明する。
【0077】
〈1〉光源装置1は、波長の異なる複数の発光素子12を備えるものとしても構わない。この場合、第一記憶部26には、波長の異なる発光素子12毎に、異なる制御関数に関する情報が記録されているものとして構わない。例えば、発光素子12として、赤色光を発する発光素子12R、緑色光を発する発光素子12G、青色光を発する発光素子12Bを含む場合には、第一記憶部26には、発光素子12Rの制御に利用される制御関数、発光素子12Gの制御に利用される制御関数、発光素子12Bの制御に利用される制御関数がそれぞれ記録されている。
【0078】
このように、波長に応じて設定された制御関数に基づいて制御部22が発光素子12に対する供給電流量を制御することで、色バランスを維持しながら光出力の制御が可能となる。例えば、ソーラシミュレータのように、色バランスの維持と光出力の制御性が要求される用途において、本発明は高い効果を奏する。
【0079】
〈2〉本発明において、発光素子12の種類は限定されない。供給される電流量によって光出力が制御でき、且つ、光出力が発光素子12の近傍の温度の影響を受けるような発光素子12を含む光源装置1に対して、本発明は適用される。ただし、典型的には、発光素子12は、LEDやLDといった半導体発光素子である。
【0080】
〈3〉本発明において、光源装置1の構造は限定されない。ただし、本発明は、特に光源装置1が、発光素子12から出射される光L12の出力を頻繁に変化させながら利用される場合に、高い効果を奏する。このような例としては、内視鏡用光源が挙げられる。また、本発明は、一定のドーズ量で対象物を繰り返し照射する場合にも高い効果を奏し、このような例としては、露光装置や印刷機が挙げられる。
【0081】
〈4〉上記実施形態では、独立変数(x,y)として光出力P及び温度Tの情報を用い、従属変数zとして電流量Iの情報を用いた制御関数を利用する場合について説明した。しかし、第一記憶部26に記録されている制御関数の形式は、これには限られない。例えば、(1)式において、変数(x,z)として光出力P及び温度Tの情報を用い、変数yとして電流量Iの情報を用いた制御関数が、第一記憶部26に記録されていても構わない。この場合、演算処理部25は、例えば(1)式の制御関数を変数yの値を求める形式に変形した上で、この変形式に対して、光出力の目標値Φ及び温度Tの情報を適用することで、発光素子12に対する供給電流量Iを決定する。
【0082】
具体例としては、上記(5)式において、求めたい供給電流量Iが変数yに対応し、光出力Pが変数xに対応し、温度Tが変数zに対応している場合、上記(3)式に示す変形式を用いて供給電流量Iが求められる。以下、(3)式を再掲する。
【数12】
【0083】
〈4〉上記実施形態では、光出力P、温度T、及び電流量Iで構成される座標(P,T,I)から制御関数を導出する処理(フィッティング処理)の方法として、最小二乗法を用いる場合を取り上げて説明した。しかし、最小二乗法以外の方法でフィッティング処理を行っても構わない。一例としては、係数αts(又は係数αTS)の値を任意に設定することで基準となる制御関数を設定すると共に、この設定された制御関数と座標(P,T,I)との乖離を評価する。次に、係数αts(又は係数αTS)の値を変更することで設定される制御関数を変更し、同様に前記乖離を評価する。このような処理を繰り返し行うことで、乖離が十分小さくなるまで係数αts(又は係数αTS)の値を変更し、決定された係数αts(又は係数αTS)の値によって、(1)式又は(4)式の制御関数を特定するものとしても構わない。
【符号の説明】
【0084】
1 :光源装置
10 :筐体
11 :基板
12 :発光素子
16 :ヒートシンク
17 :ファン
19 :温度検出器
20 :駆動部
21 :駆動回路
22 :制御部
25 :演算処理部
26 :第一記憶部
27 :入出力ポート
31 :目標光出力受付部
35 :目標光出力入力部
41 :受光センサ
42 :第二記憶部
50 :キャリブレーション装置
51 :情報更新部
52 :指示信号出力部
53 :受光センサ
L12 :光
P :光出力
T :温度
cs :キャリブレーション指示信号
Φ :光出力の目標値
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図8
図9
図10
図11
図12