(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】電力ケーブルの終端接続構造
(51)【国際特許分類】
H02G 15/064 20060101AFI20240828BHJP
H01R 4/20 20060101ALI20240828BHJP
【FI】
H02G15/064
H01R4/20
(21)【出願番号】P 2023522316
(86)(22)【出願日】2022-03-31
(86)【国際出願番号】 JP2022016506
(87)【国際公開番号】W WO2022244526
(87)【国際公開日】2022-11-24
【審査請求日】2023-06-21
(31)【優先権主張番号】P 2021085668
(32)【優先日】2021-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【氏名又は名称】山野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116366
【氏名又は名称】二島 英明
(72)【発明者】
【氏名】三根 章詞
(72)【発明者】
【氏名】助川 琢也
【審査官】鈴木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-33204(JP,A)
【文献】特開2017-169262(JP,A)
【文献】特開平10-248151(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 15/064
H01R 4/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層から露出されている導体の端部を有する電力ケーブルと、
前記導体の前記端部の外周に設けられているスリーブと、
前記絶縁層の外周に設けられているストレスコーンと、
前記スリーブの外周に設けられている電極と、を備え、
前記スリーブは、前記導体の前記端部の先端から後端に向かう方向に順に第一接続部及び第二接続部を有し、
前記第一接続部は、圧縮されることで前記導体の前記端部に機械的に接続されており、
前記第二接続部は、圧縮されることなく前記導体と前記電極とを電気的に接続している、
電力ケーブルの終端接続構造。
【請求項2】
前記スリーブは、前記導体の前記端部が配置されている貫通孔を有する、請求項1に記載の電力ケーブルの終端接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力ケーブルの終端接続構造に関する。
本出願は、2021年5月20日付の日本国出願の特願2021-085668に基づく優先権を主張し、前記日本国出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の電力ケーブルの接続部は、電力ケーブルと接続端子とプレモールド絶縁体と電極とを備える。
【0003】
電力ケーブルは、ケーブル導体とケーブル絶縁体とを備える。ケーブル絶縁体は、ケーブル導体の外周を覆っている。電力ケーブルの端部は、段剥ぎされている。段剥ぎによって、ケーブル導体の端部及びケーブル絶縁体の端部が露出している。
【0004】
接続端子は、止まり穴を有する筒状部材である。この止まり穴の内部に、ケーブル導体の端部が配置されている。接続端子は、ケーブル導体の端部の先端から後端に向かう方向に順に軸部及び筒部を有する。軸部は、圧縮されることなくケーブル導体の端部と電極とを電気的に接続している。筒部は、上記止まり穴を形成している。この筒部は、圧縮されることでケーブル導体の端部に機械的に接続されている。
【0005】
プレモールド絶縁体は、ケーブル絶縁体の端部の外周に設けられてストレスコーンを形成する。プレモールド絶縁体は、圧縮装置によりケーブルの軸方向へ押圧されている。この押圧によって、プレモールド絶縁体は、ストッパに当て止めされている。このストッパは、電極とプレモールド絶縁体との間に配置されている。電極は、接続端子の外周に設けられている。圧縮装置及びストッパによって、プレモールド絶縁体は圧縮されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【0007】
本開示に係る電力ケーブルの終端接続構造は、
絶縁層から露出されている導体の端部を有する電力ケーブルと、
前記導体の前記端部の外周に設けられているスリーブと、
前記絶縁層の外周に設けられているストレスコーンと、
前記スリーブの外周に設けられている電極と、を備え、
前記スリーブは、前記導体の前記端部の先端から後端に向かう方向に順に第一接続部及び第二接続部を有し、
前記第一接続部は、圧縮されることで前記導体の前記端部に機械的に接続されており、
前記第二接続部は、圧縮されることなく前記導体と前記電極とを電気的に接続している。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る電力ケーブルの終端接続構造の概略を示す部分断面図である。
【
図2】
図2は、従来例に係る電力ケーブルの終端接続構造の概略を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示が解決しようとする課題]
生産性に優れる電力ケーブルの終端接続構造の開発が望まれている。具体的には、接続端子とケーブル導体の端部とを機械的に接続する際の圧縮に伴って導体の端部が局所的に曲がらないようにすることが求められている。特に、接続端子の圧縮から圧縮装置によるプレモールド絶縁体の圧縮までの一連の作業を効率的に行うことが求められている。
【0010】
本開示は、生産性に優れる電力ケーブルの終端接続構造を提供することを目的の一つとする。
【0011】
[本開示の効果]
本開示に係る電力ケーブルの終端接続構造は、生産性に優れる。
【0012】
《本開示の実施形態の説明》
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0013】
(1)本開示の一態様に係る電力ケーブルの終端接続構造は、
絶縁層から露出されている導体の端部を有する電力ケーブルと、
前記導体の前記端部の外周に設けられているスリーブと、
前記絶縁層の外周に設けられているストレスコーンと、
前記スリーブの外周に設けられている電極と、を備え、
前記スリーブは、前記導体の前記端部の先端から後端に向かう方向に順に第一接続部及び第二接続部を有し、
前記第一接続部は、圧縮されることで前記導体の前記端部に機械的に接続されており、
前記第二接続部は、圧縮されることなく前記導体と前記電極とを電気的に接続している。
【0014】
上記電力ケーブルの終端接続構造は、生産性に優れる。その理由は、スリーブが導体の端部の先端から後端に向かう方向に順に第一接続部及び第二接続部を有していることで、上記電力ケーブルの終端接続構造を製造するための工程数の増加を抑制できるからである。理由の詳細は、以下の通りである。
【0015】
上述した従来の電力ケーブルの接続部では、スリーブに相当する接続端子が、第一接続部に相当する筒部と第二接続部に相当する軸部とを有する。従来の電力ケーブルの接続部におけるスリーブは、導体の端部の先端から後端に向かう方向に順に第二接続部及び第一接続部を有している。従来の電力ケーブルの接続部は、通常、第一の工程と第二の工程とを順に経て製造される。第一の工程は、導体の端部と第一接続部とを接続する。まず、導体の端部の外周にスリーブが嵌められる。次に、圧縮ダイスを用い、第一接続部の外周から第一接続部と第一接続部の内部の導体の端部とが圧縮される。この圧縮によって、導体の端部と第一接続部とが接続される。第二の工程は、第二接続部と電極とを接続する。第二接続部の外周に電極が嵌められることで、第二接続部と電極とが接続される。
【0016】
上記第一の工程における圧縮によって、導体の端部が局所的に曲がることがある。導体の端部が局所的に曲がると、第一接続部よりも先端に位置する部分の中心軸と後端に位置する部分の中心軸とが同軸にならない。即ち、上記先端に位置する部分の中心軸と上記後端に位置する部分の中心軸とがずれる。従来のように導体の端部の先端から後端に向かう方向に順に第二接続部及び第一接続部を有している場合、第二接続部の中心軸と絶縁層の端部の中心軸とが同軸にならない。即ち、第二接続部の中心軸と絶縁層の端部の中心軸とがずれる。導体の端部が局所的に曲がると、上記第一の工程と上記第二の工程との間に、中間工程を経なけらばならない場合がある。上記中間工程は、第二接続部の中心軸と絶縁層の端部の中心軸とが同軸となるように矯正する。
【0017】
仮に、上記中間工程を経ることなく上記第二の工程を経た場合、第二接続部と電極とが接続された状態では、第二接続部の中心軸と絶縁層の端部の中心軸とがずれたままである。絶縁層の端部の外周にはストレスコーンが設けられる。第二接続部の中心軸と絶縁層の端部の中心軸とがずれていると、詳しくは後述するものの、絶縁層とストレスコーンとの界面の全長にわたって均一に面圧を作用させることが難しくなる。面圧が不均一になれば、絶縁強度が低下する。
【0018】
一方、上記中間工程及び上記第二の工程を順に経た場合、第二接続部と電極とが接続された状態では、第二接続部の中心軸と絶縁層の端部の中心軸とが同軸である。第二接続部の中心軸と絶縁層の端部の中心軸とが同軸であると、詳しくは後述するものの、絶縁層とストレスコーンとの界面の全長にわたって均一に面圧を作用させることができる。
【0019】
以上説明したように、絶縁強度の低下を抑制するためには、中間工程を経る必要がある。しかし、中間工程を経ると、電力ケーブルの終端接続構造を製造するための工程数が増加する。工程数が増加することによって、電力ケーブルの終端接続構造の生産性が低下する。
【0020】
上記のように導体の端部の先端から後端に向かう方向に順に第一接続部及び第二接続部を有している場合、上記第一の工程における圧縮によって導体の端部が局所的に曲がっても、上記中間工程を経る必要がない。導体の端部が局所的に曲がっても、第二接続部の中心軸と絶縁層の端部の中心軸とが同軸のままだかからである。即ち、第二接続部の中心軸と絶縁層の端部の中心軸とがずれない。そのため、上記中間工程を経ることなく上記第二の工程を経ることができる。
【0021】
(2)上記電力ケーブルの終端接続構造において、
前記スリーブは、前記導体の前記端部が配置されている貫通孔を有していてもよい。
【0022】
スリーブが貫通孔を有することで、止まり穴を有する場合に比較して、上記第一の工程を行い易い。スリーブの外側から導体の端部の先端を見ながら圧縮作業を行うことができるからである。そのため、上記電力ケーブルの終端接続構造は、生産性を向上し易い。
【0023】
《本開示の実施形態の詳細》
本開示の実施形態の詳細を、以下に説明する。図中の同一符号は同一名称物を示す。
【0024】
《実施形態》
〔電力ケーブルの終端接続構造〕
図1を参照して、実施形態の電力ケーブルの終端接続構造1を説明する。本形態の電力ケーブルの終端接続構造1は、電力ケーブル2とスリーブ3とストレスコーン4と電極5とを備える。電力ケーブル2は、絶縁層22から露出されている導体21の端部21aを有する。スリーブ3は、導体21の端部21aの外周に設けられている。ストレスコーン4は、絶縁層22の外周に設けられている。電極5は、スリーブ3の外周に設けられている。スリーブ3は、第一接続部31と第二接続部32とを有する。第一接続部31は、圧縮されることで導体21の端部21aに機械的に接続されている。第二接続部32は、圧縮されることなく導体21と電極5とを電気的に接続している。本形態の電力ケーブルの終端接続構造1の特徴の一つは、第一接続部31及び第二接続部32が、導体21の端部21aの先端から後端に向かう方向に順に設けられている点にある。以下、詳細に説明する。
【0025】
本形態の電力ケーブルの終端接続構造1は、電力ケーブルのガス中終端接続構造である。
図1は、電力ケーブルの終端接続構造1に備わる電力ケーブル2の軸方向に沿った平面で電力ケーブルの終端接続構造1の一部を切断した断面を示す。
図1では、説明の便宜上、ストレスコーン4、電極5、及び後述するストッパ9は、半断面を示す。これらの点は、後述する
図2でも同様である。
【0026】
[電力ケーブル]
電力ケーブル2は、導体21と絶縁層22とを有する。絶縁層22は、導体21の外周に設けられている。電力ケーブル2は、図示は省略するものの、例えば、更に、半導電層、遮蔽層、シースを備える。半導電層は、導体21と絶縁層22との間に配置される内部半導電層と、絶縁層22と遮蔽層との間に配置される外部半導電層の少なくとも一方である。具体的な電力ケーブル2は、CVケーブル(架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル)である。電力ケーブル2は、公知の構成が利用できる。電力ケーブル2の端部は段剥ぎされている。この段剥ぎによって、導体21の端部21a及び絶縁層22の端部22aの各々は露出している。
【0027】
[スリーブ]
スリーブ3は、電力ケーブル2と後述する電極5とを接続する。スリーブ3の形状は、円筒状である。本形態のスリーブ3は、孔部30を有する。孔部30の内部には、導体21の端部21aが配置されている。本形態の孔部30は、貫通孔である。貫通孔は、電力ケーブル2の軸方向に沿って設けられている。本形態とは異なり、孔部30は、止まり穴であってもよい。スリーブ3の材質は、導電性に優れる金属である。その金属は、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、又はアルミニウム合金である。スリーブ3の材質は、例えば導電性や導体21との機械的な接続のし易さの点から、これらの金属の中でも導体21と同じ材質であってもよい。例えば、導体21の材質が銅の場合、スリーブ3の材質は銅であってもよく、導体21の材質がアルミニウムの場合、スリーブ3の材質はアルミニウムであってもよい。スリーブ3は、第一接続部31と第二接続部32とを有する。
【0028】
(第一接続部・第二接続部)
第一接続部31は、圧縮されることで導体21の端部21aに機械的に接続されている。この機械的な接続によって、導体21の端部21aとスリーブ3とが固定されている。第一接続部31は、内周面と外周面とを有する。内周面は、導体21に直接接している。外周面は、電極5に接していない。即ち、外周面と電極5の内周面との間には、間隔が設けられている。
【0029】
第二接続部32は、圧縮されることなく導体21と電極5とを電気的に接続している。第二接続部32は、内周面と外周面とを有する。本形態では、第二接続部32の内周面と第一接続部31の内周面とは面一である。本形態では、第二接続部32の内周面と第一接続部31の内周面とは段差なく連続している。本形態とは異なり、第二接続部32の内周面と第一接続部31の内周面とが面一ではなく、第二接続部32の内周面と第一接続部31の内周面との間に段差があってもよい。勿論、本形態のように、第二接続部32の内周面と第一接続部31の内周面とが面一であり、第二接続部32の内周面と第一接続部31の内周面とが段差なく連続している方がよい。内周面は、導体21に直接接している。本形態では、第二接続部32の外径は、圧縮後の第一接続部31の外径よりも大きい。外周面は、電極5に間接的に接している。本形態では、第二接続部32の外周面と電極5の内周面とは、図示は省略するものの、多点接触方式のコンタクト部材を介して接している。このコンタクト部材は、例えば、ストーブリ エレクトリカル コネクターズ社製のマルチラムバンドである。このコンタクト部材によって、第二接続部32と電極5とは径方向に対して機械的にも接続されている。この機械的な接続によって、第二接続部32の中心軸は電極5の中心軸に固定されている。第二接続部32の中心軸は、絶縁層22の端部22aの中心軸と同軸である。
【0030】
第一接続部31は、第二接続部32よりも導体21の端部21aの先端に寄った位置、即ち
図1の上方に設けられている。第一接続部31が第二接続部32よりも導体21の端部21aの先端に寄った位置に設けられていることで、詳しくは後述するように、電力ケーブルの終端接続構造1を製造するための工程数の増加を抑制できる。そのため、電力ケーブルの終端接続構造1は、生産性に優れる。
【0031】
[ストレスコーン]
ストレスコーン4は、電力ケーブル2の端部の電界を緩和する。ストレスコーン4は、絶縁層22の端部22aの外周に設けられている。ストレスコーン4は、図示は省略するものの、半導電材料からなる電界緩和部を有している。この電界緩和部が上記外部半導電層の外周を覆って上記外部半導電層に接続されるように、ストレスコーン4が電力ケーブル2に取り付けられている。
【0032】
ストレスコーン4は、図示は省略するものの、圧縮装置により導体21の端部21aの先端に向かって押圧されている。圧縮装置は、公知の圧縮装置が利用できる。この押圧によって、ストレスコーン4は、ストッパ9に当て止めされている。ストッパ9は、絶縁層22の端部22aに対するストレスコーン4の位置を規定する。ストッパ9は、後述する電極5の段差部51に配置されている。上述したように第二接続部32の中心軸と絶縁層22の端部22aの中心軸とが同軸である。そのため、圧縮装置及びストッパ9によって、ストレスコーン4が電力ケーブル2の軸方向に沿って均一に圧縮され易い。ストレスコーン4は、全長にわたって絶縁層22の端部22aの外周面に密着している。このストレスコーン4と絶縁層22の端部22aとの界面には、全長にわたって均一に所定の面圧が作用している。
【0033】
ストレスコーン4の材質は、例えば、エチレンプロピレンゴム、又はシリコーンゴムである。ストレスコーン4は、公知の構成が利用できる。
【0034】
[電極]
電極5は、電力ケーブル2と図示を省略する外部の接続対象とを電気的に接続する。外部の接続対象とは、例えば、電力機器である。電極5の外周には、図示は省略するものの、ブッシングが設けられている。ブッシングは、例えばエポキシ樹脂で構成されている。ブッシングは、公知のブッシングが利用できる。
【0035】
電極5の材質は、例えばスリーブ3と同様の金属である。即ち、電極5の材質は、銅、銅合金、アルミニウム、又はアルミニウム合金である。電極5の材質は、スリーブ3の材質と同じであってもよいし異なっていてもよい。電極5の材質は、軽量化や低コスト化の点で、これらの金属の中でもアルミニウム合金であってもよい。電極5は、棒状部材で構成されている。電極5は、孔部50を有する。孔部50は、電力ケーブル2に臨む開口部を有する。この孔部50の内部には、スリーブ3が配置されている。本形態の孔部50は、止まり穴である。本形態では、孔部50の開口部には、段差部51が設けられている。段差部51は、上述したストッパ9を位置決めする。
【0036】
[製造方法]
本形態の電力ケーブルの終端接続構造1は、第一の工程と第二の工程とを順に経て製造される。第一の工程は、導体21の端部21aと第一接続部31とを接続する。まず、導体21の端部21aの外周にスリーブ3が嵌められる。次に、圧縮ダイスを用い、第一接続部31の外周から第一接続部31と第一接続部31の内部の導体21の端部21aとが圧縮される。この圧縮によって、導体21の端部21aと第一接続部31とが接続される。上述したようにスリーブ3の孔部30が貫通孔であることで、止まり穴である場合に比較して、第一の工程を行い易い。スリーブ3の外側から導体21の端部21aの先端を見ながら圧縮作業を行うことができるからである。そのため、電力ケーブルの終端接続構造1の生産性が向上し易い。第二の工程は、第二接続部32と電極5とを接続する。第二接続部32の外周に電極5が嵌められることで、第二接続部32と電極5とが接続される。
【0037】
上記第一の工程における圧縮によって、導体21の端部21aが局所的に曲がることがある。第一接続部31が第二接続部32よりも導体21の端部21aの先端に寄った位置に設けられていることで、導体21の端部21aが局所的に曲がっても、第二接続部32の中心軸と絶縁層22の端部22aの中心軸とは同軸のままである。第二接続部32は、第一接続部31よりも導体21の端部21aの後端に寄って位置するからである。即ち、第二接続部32の中心軸と絶縁層22の端部22aの中心軸とがずれない。そのため、上記第一の工程及び上記第二の工程を順に経て、第二接続部32と電極5とが接続された状態では、第二接続部32の中心軸と絶縁層22の端部22aの中心軸とが同軸のままである。上述したように、第二接続部32の中心軸と絶縁層22の端部22aの中心軸とが同軸であることで、絶縁層22とストレスコーン4との界面の全長にわたって均一に面圧を作用させることができる。面圧が均一であることで、絶縁強度の低下が抑制される。
【0038】
一方、
図2に示す従来例の電力ケーブルの終端接続構造100では、第二接続部32が第一接続部31よりも導体21の端部21aの先端に寄った位置に設けられている。この場合、上記第一の工程における圧縮によって導体21の端部21aが局所的に曲がると、第二接続部32の中心軸と絶縁層22の端部22aの中心軸とがずれる。そのため、上記第一の工程と上記第二の工程との間に、中間工程を経なければならない場合がある。上記中間工程は、第二接続部32の中心軸と絶縁層22の端部22aの中心軸とが同軸となるように矯正する。上記中間工程を経ることなく上記第二の工程を経た場合、第二接続部32と電極5とが接続された状態では、第二接続部32の中心軸と絶縁層22の端部22aの中心軸とがずれたままである。第二接続部32の中心軸と絶縁層22の端部22aの中心軸とがずれていると、圧縮装置及びストッパ9によって、ストレスコーン4を電力ケーブル2の軸方向に沿って均一に圧縮できない。そのため、絶縁層22とストレスコーン4との界面の全長にわたって均一に面圧を作用させることが難しくなる。面圧が不均一になれば、絶縁強度が低下する。
【0039】
本形態の電力ケーブルの終端接続構造1は、生産性に優れる。その理由は、次の通りである。本形態の電力ケーブルの終端接続構造1は、スリーブ3が導体21の端部21aの先端から後端に向かう方向に順に第一接続部31及び第二接続部32を有している。そのため、本形態の電力ケーブルの終端接続構造1は、導体21の端部21aの先端から後端に向かう方向に順に第二接続部32及び第一接続部31を有している従来の構造に比較して、電力ケーブルの終端接続構造1を製造するための工程数の増加を抑制できる。
【0040】
本発明は、これらの例示に限定されるものではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0041】
1、100 電力ケーブルの終端接続構造
2 電力ケーブル
21 導体、21a 端部、22 絶縁層、22a 端部
3 スリーブ、30 孔部、31 第一接続部、32 第二接続部
4 ストレスコーン、5 電極、50 孔部、51 段差部
9 ストッパ