(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】抗真菌剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/427 20060101AFI20240828BHJP
A61P 31/10 20060101ALI20240828BHJP
A61K 31/661 20060101ALI20240828BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240828BHJP
【FI】
A61K31/427
A61P31/10
A61K31/661
A61P43/00 123
(21)【出願番号】P 2021513621
(86)(22)【出願日】2020-04-06
(86)【国際出願番号】 JP2020015471
(87)【国際公開番号】W WO2020209215
(87)【国際公開日】2020-10-15
【審査請求日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】P 2019073394
(32)【優先日】2019-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519127362
【氏名又は名称】株式会社セレンファーマ
(73)【特許権者】
【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
(74)【代理人】
【識別番号】100102015
【氏名又は名称】大澤 健一
(72)【発明者】
【氏名】加納 塁
(72)【発明者】
【氏名】尾川 修
【審査官】辰己 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】WANG, Li et al.,In vitro and in vivo activities of the new triazole BMS-207147 against Cryptococus neoformans,Chinese Journal of Antibiotics,2002年,Vol. 27, No. 9,pp. 560-564
【文献】YAMAZUMI, T et al.,In Vitro Activities of Ravuconazole (BMS-207147) against 541 Clinical Isolates of Cryptococcus neofo,Antimicrobial Agents and Chemotherapy,2000年
【文献】KANO, R. et al.,Antifungal susceptibility of clinical isolates and artificially produced multi-azole-resistant strai,Medical Mycology Journal,2020年02月,Vol. 61, No. 1,pp. 11-13
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K31/00-33/44
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラブコナゾール、ラブコナゾールのプロドラッグエーテル、ラブコナゾールのプロドラッグエステル、及びそれらの薬学的に許容される塩からなる群より選ばれる化合物を有効成分として含む、クリプトコックス症に罹患した動物に投与することを特徴とする抗真菌剤であって、前記クリプトコックス症に罹患した動物は、フルコナゾール、イトラコナゾールおよびボリコナゾールからなる群より選ばれる少なくとも2つのトリアゾール系抗菌剤に対して耐性を有するクリプトコックス菌に罹患した動物である抗真菌剤。
【請求項2】
前記クリプトコックス菌は、Cryptococcus neoformans var. grubii である請求項1に記載の抗真菌剤。
【請求項3】
前記クリプトコックス症に罹患した動物は、免疫不全ウイルス又は白血病ウイルスに感染している動物である請求項1又は2に記載の抗真菌剤。
【請求項4】
前記動物はヒトである請求項1~3のいずれか一つに記載の抗真菌剤。
【請求項5】
前記動物はネコである請求項1~3のいずれか一つに記載の抗真菌剤。
【請求項6】
前記ラブコナゾールのプロドラッグ
エーテルはホスラブコナゾールである請求項1~5のいずれか一つに記載の抗真菌剤。
【請求項7】
前記有効成分が、ホスラブコナゾールのL-リシンエタノール付加物である請求項1~5のいずれか一つに記載の抗
真菌剤。
【請求項8】
クリプトコックス症に罹患したヒト以外の動物を治療するための、治療有効量の、ラブコナゾール、ラブコナゾールのプロドラッグエーテル、ラブコナゾールのプロドラッグエステル、及びそれらの薬学的に許容される塩からなる群より選ばれる化合物を該動物に投与する方法であって、前記クリプトコックス症に罹患したヒト以外の動物は、フルコナゾール、イトラコナゾールおよびボリコナゾールからなる群より選ばれる少なくとも2つのトリアゾール系抗菌剤に対して耐性を有するクリプトコックス菌に罹患したヒト以外の動物である方法。
【請求項9】
前記クリプトコックス菌は、Cryptococcus neoformans var. grubii である請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記クリプトコックス症に罹患した動物は、免疫不全ウイルス又は白血病ウイルスに感染している動物である請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記動物はネコである請求項8~10のいずれか一つに記載の方法。
【請求項12】
前記ラブコナゾールのプロドラッグ
エーテルはホスラブコナゾールである請求項8~11のいずれか一つに記載の方法。
【請求項13】
前記
化合物が、ホスラブコナゾールのL-リシンエタノール付加物である請求項8~11のいずれか一つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗真菌剤に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は抗真菌剤に関する。本発明は、具体的には、クリプトコックス症に有効な抗真菌剤に関する。
【0003】
多くの様々な真菌は、人を含む動物の皮膚や体内に住み着いているが、動物に重篤な害を及ぼすことは希である。これは、宿主の免疫力によってそれらの常在菌の増殖が抑えられているからである。しかしながら、後天性免疫不全症候群(エイズ)などに代表される免疫力低下を招く疾患に罹患している、臓器移植等で免疫抑制剤を使用中である、又は加齢に伴う体力減衰等の要因によって免疫力が低下すると、通常であればその免疫力によって増殖が抑えられている病原性の低い常在菌が増殖し、その結果として病気を引き起こすことがあり、日和見感染症と呼ばれている。つまり、日和見感染症とは、宿主と病原体との間で保たれていたバランスが宿主側の抵抗力低下により崩れ、宿主の発病につながるものである。真菌が原因として発症する日和見感染症としては、例えば、カンジタ症、クリプトコックス症、ニューモシスチス肺炎(カリニ肺炎ともいう)がある。
【0004】
クリプトコックス症(cryptococcosis)は、真菌であるCryptococcus neoformans や Cryptococcus gattiiによって発症する真菌感染症であり、酵母様の真菌細胞を吸い込むことで感染する。そのため、クリプトコックス症は通常、鼻腔、気道、肺を侵す。さらに感染が脳と脊髄を覆う組織(髄膜)に広がって、髄膜炎を起こすこともある。また、外傷などから侵入して皮膚などの組織に広がることもある。
【0005】
この真菌は世界中に存在しているが、エイズが流行し始めるまではクリプトコックス症は比較的まれであった。しかし今日では、エイズ患者に最も一般的な死に至る可能性がある真菌感染症となっている。エイズ患者のクリプトコックス症の病原体については、Cryptococcus neoformans がほとんどである。
クリプトコックス感染症の原因菌は、エイズ患者以外の免疫系の機能が低下した人にも感染する。例えば、ホジキンリンパ腫又はサルコイドーシスを患っている人や、臓器移植後の拒絶反応を予防する薬又はコルチコステロイド(長期間使用している場合)など、免疫系の働きを抑制する薬を使用している人に感染が起こることもある。
【0006】
Cryptococcus neoformansを血清型でみると、さらに、A型(Cryptococcus neoformans var. grubii(Cryptococcus grubii と呼ばれる))、D型(Cryptococcus neoformans var. neoformans(Cryptococcus deneoformans と呼ばれる))、及びAD型に分類される。また、Cryptococcus gattiiは、更にB型、C型に分類される。エイズ患者以外のクリプトコックス症患者での病原体としての頻度は、日本を含めて欧米などの温帯地域では、Cryptococcus neoformans が大部分を占める。熱帯では、 Cryptococcus gattiiが半数以上を占める。一方、エイズ患者のクリプトコックス症患者での病原体としての頻度は、Cryptococcus neoformans がほとんどを占め、特にフランス以外での患者では、Cryptococcus neoformans の血清型A型であるCryptococcus neoformans var. grubii が全体の99%となっている。国内においても、Cryptococcus neoformans var. grubii感染がほとんどである。
【0007】
一般人口でのこのクリプトコックス症の患者発生は、10万人につき年間0.209人と報告されている。しかし、エイズ患者では、年間の患者発生は1000人につき2~4人と報告されており、非常に多い。
ヒト以外の動物もクリプトコックス症になることがある。特にネコがクリプトコックス症になることが知られている。健康なネコの自然発症も散見されるが、特にネコ免疫不全ウイルス感染症やネコ白血病ウイルス感染症などで免疫力が低下したネコでよく見られる。日本では、ネコ科の動物のクリプトコックス症は、典型的には、Cryptococcus neoformans var. grubii が病原菌となっている。ヒト以外の動物のクリプトコックス症は日和見感染が多いと考えられている。クリプトコックス症に罹患した哺乳類、鳥類、爬虫類などでは、かぜ様の症状、肺炎、脳炎、流産、子宮内膜炎、皮膚炎、乳房炎などを起こすことがある。鳥は病原体の Cryptococcus neoformansの運び屋であり、鳥(特にハト)の糞は栄養源となるため、それらに汚染されている土壌に菌がよくみられる。
【0008】
一方、 真菌感染症の罹患率は、ここ数十年にわたって大幅に増加している。これらの真菌の多くは、アゾール系及びポリエン系などの第一線の抗真菌薬に対して耐性を持つようになったことから、疾患の適切な治療及び/又は予防が妨げられている。真菌感染症の増加及び従来の治療薬への耐性は、世界的に重要な公衆衛生の脅威である。
【0009】
クリプトコックス症の治療には、アゾール系抗真菌薬であるフルコナゾール(FLCZ)などの抗真菌剤が使われる。しかし、FLCZ耐性株がヒトのクリプトコックス症の患者からの分離株として報告されている。また、クリプトコックス症に罹ったネコからのFLCZ耐性のCryptococcus neoformans 菌株の分離株が報告されている。さらに、FLCZよりも抗菌活性の強いアゾール系抗真菌薬であるボリコナゾール(VRCZ)を含む培地でFLCZ耐性株を培養すると、アゾール系抗真菌薬に対する多剤耐性株が容易に分離されることが報告されている。第一線の抗真菌薬として使用されているアゾール系抗真菌薬に対する多剤耐性菌の出現は大きな問題である。
【0010】
ラブコナゾールは、フルコナゾールやボリコナゾールと同じアゾール系の抗真菌薬であり、多種多様な菌に有効な活性を示す。特に、Candida albicans や Cryptococcus neoformans var. neoformans に対し優れた活性を示すことが報告されている(非特許文献1:Yamaguchi, Med. Mycol. J., vol. 57E, E73-E110, 2016)。ラブコナゾールは、フルコナゾールと同様のトリアゾール系の抗菌剤であるが、現在医薬品としては使用されていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【文献】Yamaguchi, Med. Mycol. J., vol. 57E, E73-E110, 2016
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、クリプトコックス症に対して有効な抗真菌剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、ラブコナゾールが、クリプトコックス症の原因菌の一つである、Cryptococcus neoformans の血清型A型の菌(Cryptococcus neoformans var. grubii )に対して有効な抗真菌作用を示すとともに、多剤耐性となったCryptococcus neoformans に対して抗真菌作用を示すことを見いだし、本発明を完成した。本発明は以下の態様を含むものである。
[1]ラブコナゾールを有効成分として含む抗真菌剤であって、クリプトコックス症に罹患した動物に投与することを特徴とする抗真菌剤。
[2]前記クリプトコックス症に罹患した動物は免疫不全ウイルス又は白血病ウイルスに感染している動物である上記[1]に記載の抗真菌剤。
[3]前記動物はCryptococcus neoformans var. grubii に罹患している上記[1]又は[2]に記載の抗真菌剤。
[4]前記Cryptococcus neoformans var. grubii は、フルコナゾール、イトラコナゾールおよびボリコナゾールからなる群より選ばれる少なくとも1つに対して耐性を有する、上記[3]に記載の抗真菌剤。
[5]前記Cryptococcus neoformans var. grubii は、フルコナゾール、イトラコナゾールおよびボリコナゾールからなる群より選ばれる少なくとも2つに対して耐性を有する、上記[3]に記載の抗真菌剤。
[6]前記クリプトコックス症が、ラブコナゾール以外の抗真菌剤に対して耐性を示すクリプトコックス菌に起因するクリプトコックス症である上記[1]に記載の抗真菌剤。
[7]前記ラブコナゾール以外の抗真菌剤が、フルコナゾール、イトラコナゾールおよびボリコナゾールからなる群より選ばれる少なくとも1つの抗真菌剤である上記[6]に記載の抗真菌剤。
[8]前記動物はヒトである上記[1]~[7]のいずれか一つに記載の抗真菌剤。
[9]前記動物はネコである上記[1]~[7]のいずれか一つに記載の抗真菌剤。
【0014】
[10]ラブコナゾールのプロドラッグを有効成分として含む抗真菌剤であって、クリプトコックス症に罹患した動物に投与することを特徴とする抗真菌剤。
[11]前記クリプトコックス症に罹患した動物は免疫不全ウイルス又は白血病ウイルスに感染している上記[10]に記載の抗真菌剤。
[12]前記動物は、Cryptococcus neoformans var. grubii に罹患している上記[10]又は[11]に記載の抗真菌剤。
[13]前記Cryptococcus neoformans var. grubii は、フルコナゾール、イトラコナゾールおよびボリコナゾールからなる群より選ばれる少なくとも1つに対して耐性を有する、上記[12]に記載の抗真菌剤。
[14]前記Cryptococcus neoformans var. grubii は、フルコナゾール、イトラコナゾールおよびボリコナゾールからなる群より選ばれる少なくとも2つに対して耐性を有する、上記[12]に記載の抗真菌剤。
[15]前記クリプトコックス症が、ラブコナゾール以外の抗真菌剤に対して耐性を示すクリプトコックス菌に起因するクリプトコックス症である上記[10]に記載の抗真菌剤。
[16]前記ラブコナゾール以外の抗真菌剤が、フルコナゾール、イトラコナゾールおよびボリコナゾールからなる群より選ばれる少なくとも1つの抗真菌剤である上記[15]に記載の抗真菌剤。
[17]前記ラブコナゾールのプロドラッグはホスラブコナゾールである上記[10]~[16]のいずれか一つに記載の抗真菌剤。
[18]前記動物はヒトである上記[10]~[17]のいずれか一つに記載の抗真菌剤。
[19]前記動物はネコである上記[10]~[17]のいずれか一つに記載の抗真菌剤。
【0015】
[20]ラブコナゾールを有効成分として含む抗真菌剤であって、フルコナゾール、イトラコナゾールおよびボリコナゾールからなる群より選ばれる少なく2つのトリアゾール系抗菌剤に対して耐性を有するクリプトコックス菌に罹患した動物に対して投与することを特徴とする抗真菌剤。
[21]前記クリプトコックス菌は、Cryptococcus neoformans var. grubii である上記[20]に記載の抗真菌剤。
[22]ラブコナゾールのプロドラッグを有効成分として含む抗真菌剤であって、フルコナゾール、イトラコナゾールおよびボリコナゾールからなる群より選ばれる少なく2つのトリアゾール系抗菌剤に対して耐性を有するクリプトコックス菌に罹患した動物に対して投与することを特徴とする抗真菌剤。
[23]前記クリプトコックス菌は、Cryptococcus neoformans var. grubii である上記[22]に記載の抗真菌剤。
[24]前記ラブコナゾールのプロドラッグはホスラブコナゾールである上記[22]又は[23]に記載の抗真菌剤。
[25]前記動物はヒトである上記[20]~[24]のいずれか一つに記載の抗真菌剤。
[26]前記動物はネコである上記[20]~[24]のいずれか一つに記載の抗真菌剤。
【0016】
[27]クリプトコックス症に罹患した動物を治療するための方法であって、治療有効量のラブコナゾールを該動物に投与することを特徴とする方法。
[28]前記クリプトコックス症に罹患した動物は免疫不全ウイルス又は白血病ウイルスに感染している動物である上記[27]に記載の方法。
[29]前記動物は、Cryptococcus neoformans var. grubii に罹患している上記[27]又は[28]に記載の方法。
[30]前記Cryptococcus neoformans var. grubii は、フルコナゾール、イトラコナゾールおよびボリコナゾールからなる群より選ばれる少なくとも1つに対して耐性を有する、上記[29]に記載の方法。
[31]前記クリプトコックス症が、ラブコナゾール以外の抗真菌剤に対して耐性を示すクリプトコックス菌に起因するクリプトコックス症である上記[27]に記載の方法。
[32]前記ラブコナゾール以外の抗真菌剤が、フルコナゾール、イトラコナゾールおよびボリコナゾールからなる群より選ばれる少なくとも1つの抗真菌剤である上記[31]に記載の方法。
[33]前記動物はヒトである上記[27]~[32]のいずれか一つに記載の方法。
[34]前記動物はネコである上記[27]~[32]のいずれか一つに記載の方法。
【0017】
[35]クリプトコックス症に罹患した動物を治療するための方法であって、治療有効量のラブコナゾールのプロドラッグを該動物に投与することを特徴とする方法。
[36]前記クリプトコックス症に罹患した動物は免疫不全ウイルス又は白血病ウイルスに感染している動物である上記[35]に記載の方法。
[37]前記動物は、Cryptococcus neoformans var. grubii に罹患している上記[35]又は[36]に記載の方法。
[38]前記Cryptococcus neoformans var. grubii は、フルコナゾール、イトラコナゾールおよびボリコナゾールからなる群より選ばれる少なくとも1つに対して耐性を有する、上記[37]に記載の方法。
[39]前記クリプトコックス症が、ラブコナゾール以外の抗真菌剤に対して耐性を示すクリプトコックス菌に起因するクリプトコックス症である上記[35]に記載の方法。
[40]前記ラブコナゾール以外の抗真菌剤が、フルコナゾール、イトラコナゾールおよびボリコナゾールからなる群より選ばれる少なくとも1つの抗真菌剤である上記[39]に記載の方法。
[41]前記ラブコナゾールのプロドラッグがホスラブコナゾールである上記[35]~[40]のいずれか一つに記載の方法。
[42]前記動物はヒトである上記[35]~[41]のいずれか一つに記載の方法。
[43]前記動物はネコである上記[35]~[41]のいずれか一つに記載の方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、クリプトコックス症に対して有効な抗真菌剤が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を、例示的な実施態様を例として、本発明の実施において使用することができる好ましい方法および材料とともに説明するが、本発明は以下に記載の態様に限定されるものではない。なお、文中で特に断らない限り、本明細書で用いるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般に理解されるのと同じ意味をもつ。また、本明細書に記載されたものと同等又は同様の任意の材料および方法は、本発明の実施において同様に使用することができる。また、本明細書に記載された発明に関連して本明細書中で引用されるすべての刊行物および特許は、例えば、本発明で使用できる方法や材料その他を示すものとして、本明細書の一部を構成するものである。
【0020】
本明細書中で、「X~Y」という表現を用いた場合は、下限としてXを上限としてYを含む意味で、或いは上限としてXを下限としてYを含む意味で用いる。
本明細書において、抗真菌剤又は治療方法との関連で「ラブコナゾール」という場合は、ラブコナゾール、その薬学的に許容される塩、水和物及び溶媒和物の全てを含む意味で用いられる。本明細書において、抗真菌剤又は治療方法との関連で「ホスラブコナゾール」という場合は、ホスラブコナゾール、その薬学的に許容される塩、水和物及び溶媒和物の全てを含む意味で用いられる。
【0021】
本発明の一つの態様は、クリプトコックス症に罹患した動物に使用することを目的としたラブコナゾールを有効成分として含む抗真菌剤である。
本発明の別の一つの態様は、アゾール系抗真菌薬に対して多剤耐性を獲得したクリプトコックス菌に罹患した動物に使用することを目的としたラブコナゾールを有効成分として含む抗真菌剤である。
本発明の別の一つの態様は、免疫不全ウイルス又は白血病ウイルスに感染した動物であって、さらにクリプトコックス症に罹患した動物に使用することを目的としたラブコナゾールを有効成分として含む抗真菌剤である。
本発明の他の一つの態様は、クリプトコックス症に罹患した動物に使用することを目的としたラブコナゾールのプロドラッグ、好ましくはホスラブコナゾールを有効成分として含む抗真菌剤である。
本発明の他の一つの態様は、アゾール系抗真菌薬に対して多剤耐性を獲得したクリプトコックス菌に罹患した動物に使用することを目的としたラブコナゾールのプロドラッグ、好ましくはホスラブコナゾールを有効成分として含む抗真菌剤である。
本発明の他の一つの態様は、免疫不全ウイルス又は白血病ウイルスに感染した動物であって、さらにクリプトコックス症に罹患した動物に使用することを目的としたラブコナゾールのプロドラッグ、好ましくはホスラブコナゾールを有効成分として含む抗真菌剤である。
本発明の別の一つの態様は、クリプトコックス症に罹患した動物を治療するための方法であって、治療有効量のラブコナゾールを該動物に投与することを特徴とする方法である。
本発明の別の一つの態様は、アゾール系抗真菌薬に対して多剤耐性を獲得したクリプトコックス菌に罹患した動物を治療するための方法であって、治療有効量のラブコナゾールを該動物に投与することを特徴とする方法である。
本発明の別の一つの態様は、免疫不全ウイルス又は白血病ウイルスに感染した動物であって、さらにクリプトコックス症に罹患した動物を治療するための方法であって、治療有効量のラブコナゾールを該動物に投与することを特徴とする方法である。
本発明の他の一つの態様は、クリプトコックス症に罹患した動物を治療するための方法であって、治療有効量のラブコナゾールのプロドラッグ、好ましくはホスラブコナゾールを該動物に投与することを特徴とする方法である。
本発明の別の一つの態様は、アゾール系抗真菌薬に対して多剤耐性を獲得したクリプトコックス菌に罹患した動物を治療するための方法であって、治療有効量のラブコナゾールのプロドラッグ、好ましくはホスラブコナゾールを該動物に投与することを特徴とする方法である。
本発明の他の一つの態様は、免疫不全ウイルス又は白血病ウイルスに感染した動物であって、さらにクリプトコックス症に罹患した動物を治療するための方法であって、治療有効量のラブコナゾールのプロドラッグ、好ましくはホスラブコナゾールを該動物に投与することを特徴とする方法である。
【0022】
ラブコナゾールは、カンジダ属、アスペルギルス属、クリプトコックス属を含む様々な菌類病原体に対して抗菌活性を示す化合物として報告されている。ラブコナゾールは、以下の構造式(I)を有するアゾール系抗真菌化合物であり、フルコナゾールに類似の化学構造を持っている。
【0023】
【化1】
ラブコナゾールの製造方法は、例えば、Organic Process Research & Development 2009, 13, 716-728に開示されており、かかる開示を参考にして製造することができる。かかる開示は引用することにより本明細書の一部である。製造に当たっては、当業者は当該技術分野において公知の技術を制限なく適宜利用することができる。
【0024】
ホスラブコナゾールは、ラブコナゾールの水酸基にホスホモノオキシメチルエステルが置換した以下の構造式(II)を有する化合物である。
【0025】
【化2】
ホスラブコナゾールはラブコナゾールのプロドラッグであり、ヒトに投与すると速やかにラブコナゾールに変換される。ホスラブコナゾールのL-リシンエタノール付加物が、爪白癬に対する医薬品として現在販売されている。ホスラブコナゾールはまた、当該技術分野で公知の技術を適宜用い合成することもできる。
【0026】
本発明の抗真菌剤が含有するラブコナゾールは、薬学的に許容される塩であってもよい。「薬学的に許容される塩」とは、上記式(I)で表される化合物から形成されるあらゆる非毒性の塩を示す。適切な塩としては、例えば、これに限定しないが、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、リン酸塩、リン酸水素塩、硫酸塩などの無機酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、リンゴ酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、ソルビン酸塩、アスコルビン酸塩、サリチル酸塩、フタル酸塩、メチルスルホン酸塩、トリフルオロメチルスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩などの有機酸塩、アンモニウム塩などの無機塩、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、カルボン酸塩などの酸性基の塩、メチルアミン、エチルアミン、シクロヘキシルアミンなどの低級アルキルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの置換低級アルキルアミンなどの有機塩基との塩、グリシン塩、リシン塩、アルギニン塩、オルニチン塩、グルタミン酸塩、アスパラギン酸塩などのアミノ酸塩をあげることができる。
【0027】
本発明の抗真菌剤が含有するラブコナゾールはまた、上記式(I)で表される化合物から形成される水和物のような含水生成物及び溶媒和物などでもよい。本明細書で使用する「水和物」という用語は、非共有結合性分子間力によって結合する、化学量論的又は非化学量論的量の水をさらに含む、化合物又はその塩を意味する。 本明細書で使用する「溶媒和物」という用語は、非共有結合性分子間力によって結合する、化学量論的又は非化学量論的量の溶媒をさらに含む、化合物又はその塩を意味する。好ましい溶媒は、揮発性の、無毒の、及び/又は微量の、ヒトに投与するのに許容されるものである。例えば、これに限定されないが、水、エタノールなどである。
【0028】
本発明の抗真菌剤が含有するホスラブコナゾールは、薬学的に許容される塩であってもよい。「薬学的に許容される塩」とは、上記式(II)で表される化合物から形成されるあらゆる非毒性の塩を示す。具体的には、ラブコナゾールとの関連で記載した上記塩をあげることができる。
本発明の抗真菌剤が含有するホスラブコナゾールは、上記式(II)で表される化合物から形成される水和物のような含水生成物及び溶媒和物などでもよい。水和物及び溶媒和物は上記と同様の意味である。好ましい溶媒は、揮発性の、無毒の、及び/又は微量の、ヒトに投与するのに許容されるものであり、これに限定されないが、水、エタノールなどである。
本発明の抗真菌剤が有効成分として含有するホスラブコナゾールは、好ましくは、ホスラブコナゾールのL-リシンエタノール付加物である。
【0029】
本発明の抗真菌剤は、有効成分としてラブコナゾールのプロドラッグを含有してもよい。ラブコナゾールの「プロドラッグ」は、「プロドラッグエステル」及び「プロドラッグエーテル」の両方を包含する。「プロドラッグエステル」には、当業者に公知の方法を用いて、上記式(I)で表される化合物のヒドロキシルを、アルキル、アルコキシ、もしくはアリール置換アシル化剤もしくはリン酸化剤のいずれかと反応させて、アセテート、ピバレート、メチルカーボネート、ベンゾエート、アミノ酸エステル、ホスフェート、ハーフ酸エステル(例えばマロネート、スクシネート、もしくはグルタレート)などを生成することにより形成される、エステルおよびカーボネートが含まれる。本明細書で用いる用語「プロドラッグエーテル」には、当業者に公知の方法を用いて製造される、上記式で表される化合物のホスフェートアセタールおよびO-グルコシドの両方が含まれる。
プロドラッグは、インビボで、例えば血中での加水分解により、上記式(I)で表される親化合物に変換される化合物をいう。
本発明の抗真菌剤が含有するラブコナゾールのプロドラッグは、薬学的に許容される塩であってもよい。本発明の抗真菌剤が含有するラブコナゾールのプロドラッグはまた、水和物のような含水生成物及び溶媒和物などでもよい。
本発明の抗真菌剤が含有するプロドラッグは、好ましくはホスラブコナゾール、より好ましくはホスラブコナゾール-L-リシンエタノール付加物である。
【0030】
本発明の抗真菌剤は、ラブコナゾール又はラブコナゾールのプロドラッグのいずれかの化合物に加え、1以上の薬学的に許容される担体、及び、適宜、他の抗真菌剤を含むことができる。
【0031】
本明細書で使用される「薬学的に許容される担体」という用語は、当業者に知られているように、任意及びすべての、溶媒、分散媒体、コーティング剤、酸化防止剤、キレート剤、保存剤(例えば、抗菌剤)、界面活性剤、緩衝剤、浸透圧調節剤、吸収遅延剤、塩、薬物安定剤、賦形剤、希釈剤、結合剤、崩壊剤、甘味剤、芳香剤、潤沢剤、染料など、及びそれらの組合せを含む。何れかの担体が本発明の活性成分と不適合である場合以外は、本発明の抗真菌剤(以下、組成物という場合がある)又は治療方法において使用することができる。
【0032】
本明細書で使用される「治療有効量」という用語は、治療を必要とするほ乳類に投与される場合、治療効果を生じさせるのに十分な量のラブコナゾール又はラブコナゾールのプロドラッグ(好ましくは、ホスラブコナゾール)をいう。治療有効量は、対象及び治療する疾患症状、対象の体重及び年齢、疾患症状の重症度、投与方法などに依存して異なり、当該技術分野における当業者により容易に決定されることができる。
【0033】
本明細書で使用される「対象」という用語は、治療を必要とする動物であり、哺乳類、鳥類、魚類を含む。典型的には、動物は哺乳動物である。例えば、霊長類(例えば、ヒト)、ネコ、イヌ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ウサギ、ラット、マウス、コアラなどを指す。ある種の実施形態において、対象である動物は、好ましくはヒト、ネコ又はイヌであり、より好ましくはヒト又はネコである。
【0034】
本発明の抗真菌剤が投与される対象は、クリプトコックス症に罹患した動物である。好ましくは、免疫不全ウイルス又は白血病ウイルスに感染したため或いはそれ以外の理由により免疫系の機能が低下し、クリプトコックス症に罹っている動物である。より好ましくは、クリプトコックス症の原因菌として、Cryptococcus neoformans var. grubii に罹患した動物である。
【0035】
ラブコナゾール(上記式(I))又はラブコナゾールのプロドラッグ(例えば、ホスラブコナゾール(上記式(II)))のいずれかを含む本発明の抗真菌剤は、医薬組成物の処方のための既知の方法に準じて処方することができる。代表的な医薬組成物には、上記した薬学的に許容される担体が含まれうる。これらの担体の使用は、当該技術分野においてよく知られている。また、活性成分を含む医薬組成物を調製するための方法は、当該技術分野においてよく知られている。
【0036】
本発明の組成物は、使用目的に応じた特定の投与経路に適合するように製剤化されうる。投与経路は、これに限定されないが、例えば、経口、非経口、静脈内、皮内、皮下、経皮、吸入、局所、経粘膜的、又は直腸投与がある。本発明の組成物は、固体形態又は液体形態で製剤化されうる。固定形態は、これに限定されないが、例えば、錠剤、カプセル剤、丸剤、顆粒剤、散剤、又は坐剤を含む。液体形態は、これに限定されないが、例えば、溶液剤、懸濁剤、又は乳濁剤を含む。本発明の組成物は、好ましくは経口により投与される。
【0037】
経口投与用に調合された本発明の組成物は、液体組成物又は固体組成物のいずれでもよい。液体製剤については、水、グリコール、油、アルコール及びこれらに類するものなどの液体担体を用いて組成物を調製することができる。錠剤及びカプセル剤などの固体製剤については、ステアリン酸カルシウムなどの潤滑剤とともに結合剤、崩壊剤及びこれらに類するものを一般には含有し、デンプン、糖、カオリン、エチルセルロース、炭酸カルシウム及びナトリウム、リン酸カルシウム、タルク、ラクトースなどの固体担体を用いて組成物を調製することができる。錠剤及びカプセルは、投与が容易なため、最も有利な経口剤形である。投与の容易さ及び投薬量の均一性のためには、組成物を単位剤形で調合すると特に有利である。単位剤形での組成物は本発明の一つの態様を構成する。
【0038】
組成物は、注射用に調製することができ、水中0.85%の塩化ナトリウム又は5%のデキストロースなどの油性又は水性ビヒクル中の懸濁液、溶液又はエマルジョンなどの形態を取ることができる。また、懸濁化剤、安定剤及び/又は分散剤などの調合剤を含有することができる。緩衝剤ならびに添加剤(生理食塩水又はグルコースなど)を添加して、溶液を等張性にすることができる。点滴静脈内投与のために、化合物をアルコール/プロピレングリコール又はポリエチレングリコールに溶解することもできる。これらの組成物は、望ましくは保存薬を添加した、アンプル内又は複数回分用容器内の単位剤形で提供することもできる。あるいは、有効成分は、投与前に適するビヒクルと再構成するように、粉末形態であることができる。
【0039】
本発明の組成物の投与には、通常、経口投与または静脈内投与が用いられる。本発明の組成物をクリプトコックス症の治療に用いる際、肺及び気管支を直接治療することが望ましい時は、髄膜炎等の中枢神経系への感染症を併発していない場合は吸入法が好ましい。吸入による投与については、本発明の化合物は、例えばネブライザーを用いて、エアロゾル粒子で送達される。吸入のために好ましい送達系は、定量吸入(MDI)用エアロゾルある。髄膜炎等の中枢神経系への感染症を併発しているかその可能性がある場合には、液剤を含む経口投与又は及び静脈内投与が考慮される。クリプトコックス症の治療における本発明の組成物の投与には、好ましくは液剤が用いられる。
【0040】
本発明の組成物における上記化合物の投与量は、疾患の種類、投与対象の症状、年齢、投与方法等により適宜選択される。ヒトへの投与の場合、例えばこれに限定されないが、経口剤であれば、通常、1日当たり10~5000mg、好ましくは20~2000mg、より好ましくは50~500mg、さらに好ましくは100~200mgを、1日1回~2回、数週間から数カ月間、場合によっては半年から1年間、連続して又は間歇的に投与すればよい。また、ネコへの投与の場合、例えばこれに限定されないが、通常、1日当たり2~1000mg、好ましくは10~100mg、より好ましくは20~40mgを、1日1回~2回、数週間から数カ月間、場合によっては半年から1年間、連続して又は間歇的に投与すればよい。
【0041】
本発明の組成物は、ラブコナゾール又はホスラブコナゾールに加えて他の抗真菌剤を含むこともできる。他の抗真菌剤としては、これに限定されないが、ナタマイシン、リモシジン、ナイスタチン、アムホテリシンB、カンジシン、ハマイシン、ペリマイシン、ミコナゾール、ケトコナゾール、クロトリマゾール、エコナゾール、オモコナゾール、ビホナゾール、ブトコナゾール、フェンチコナゾール、イソコナゾール、オキシコナゾール、セルタコナゾール、スルコナゾール、チオコナゾール、フルコナゾール、ホスフルコナゾール、イトラコナゾール、イサブコナゾール、ポサコナゾール、ボリコナゾール、テルコナゾール、アルバコナゾール、アバファンギン、テルビナフェン、ナフティフィン、ブテナフィン、アモロルフィン、アニデュラファンギン、カスポファンギン、ミカファンギン、シクロピロックス、トルナフテート、又はフルシトシンをあげることができる。よって、本発明の組成物は、ラブコナゾール又はラブコナゾールのプロドラッグ(好ましくはホスラブコナゾール)に加え、他の抗真菌剤を含む2つ以上の有効成分の組合せ(配合剤)を含む。
【0042】
本発明の組成物はまた、併用療法のために他の抗真菌薬を併用投与することができる。併用投与は、二つの薬剤の逐次、同時又は並行投与を含む。併用投与することができる他の抗真菌薬は、上記した抗真菌剤を制限なく用いることができる。
【0043】
本発明はまた、治療有効量のラブコナゾール又はラブコナゾールのプロドラッグ(好ましくはホスラブコナゾール)を患者に投与することを含む、クリプトコックス症の治療のための方法を含む。本発明はまた、他の既知の抗真菌薬と組み合わせて患者に投与することを含む、クリプトコックス症の治療のための方法(併用)を含む。他の抗真菌薬は、上記の配合剤に関して例示したものをあげることができる。
【実施例】
【0044】
以下、実施例により、本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0045】
Cryptococcus neoformans の臨床分離株及びフルコナゾール(FLCZ)耐性株から分離した多剤耐性株を用い、それらのラブコナゾールに対する感受性を試験した。
(実施例1)分離株及び耐性株の分離
クリプトコックス菌の分離株を皮膚感染のネコから6株、全身感染のネコから5株、計11株を取得した。ネコ皮膚クリプトコックスの1株とネコ全身クリプトコックスの1株はフルコナゾール耐性株であった。
皮膚感染したヒトからクリプトコックス菌の分離株を3株取得した。
上記取得した分離株は全て、Cryptococcus neoformans var. grubii strain(A型)であった。
また、以下のようにして、アゾール系抗真菌剤であるフルコナゾール(FLCZ)及びボリコナゾール(VRCZ)に耐性を示す多剤耐性株を3株取得した。
臨床分離したフルコナゾール(FLCZ)耐性Cryptococcus neoformans 細胞2.3 × 105 個を、ボリコナゾール(VRCZ)として3μg/ml含有するサブローブドウ糖寒天培地上に接種し、室温で7日間培養した。その後、プレート上に発生した12個コロニーそれぞれを、VRCZとして5μg/ml含有するサブローブドウ糖寒天培地へ接種した。これを室温で10日間培養し、得られたコロニー各々を更に継代培養することにより、アゾール系薬剤多剤耐性株を3株取得した。
【0046】
(実施例2)各アゾール系薬剤に対する感受性
実施例1で取得した株は、抗真菌化合物に対する感受性の試験までサブローブドウ糖寒天培地で維持した。
ラブコナゾール(RVCZ)に対する感受性は、微量液体希釈法(broth microdilution assay)を用い、CLSI M27-A3ガイドラインに従って行った。最少発育阻止濃度(MIC)は、35度で72時間培養した後に測定した。MICは、成長の顕著な阻害(約50%以上の阻害)を誘導する最少の濃度と定義した。
フルコナゾール(FLCZ)、イトラコナゾール(ITCZ)及びボリコナゾール(VRCZ)に対する感受性は、E-テストを用いて評価した。E-テストは、90mmペトリ皿に入れたRPMI-1640寒天培地を用い、E-test Technical Guide 10(AB Biodisk、スエーデン)に従って行った。E-test gradient stripsは、AB BIODISK から購入した。FLCZ、ITCZ及びVRCZのMICは、35度で72時間培養した後に決定した。各分離株について、時期をずらして2回テストし、それぞれのテストは2回測定した。
【0047】
テストの結果を表1に示す。
【0048】
【0049】
14の分離株(No.1-14)の平均MICは、フルコナゾールで17.313mg/L(range:<0.016-128mg/L)、イトラコナゾールで0.235mg/L(range:<0.002-0.75mg/L)、ボリコナゾールで0.036mg/L(range:<0.002-0.125mg/L)、ラブコナゾールでは0.0376mg/L(range:<0.003125-0.25mg/L)であった。他のアゾール系抗真菌化合物に比べラブコナゾールが顕著な結果を示した。
一方、アゾール系薬剤多剤耐性株(No.15-17)のMICは、フルコナゾールで>256mg/L、イトラコナゾールで>32mg/L、ボリコナゾールで6-12mg/L、ラブコナゾールで0.25-0.5mg/Lであり、ラブコナゾールが顕著に効果を示した。
コントロールとして、ATCCから入手したCandida parapsilosis ATCC 22019 及び Candida kruzei ATCC 6258 を用い、CLSI M27-A3テスト及びE-テストのMICアッセイを行った。その結果、CLSI M27-A3テスト及びE-テストで得られたアゾール系薬剤のMICの結果の間に高い相関性が認められたので、両者の結果を比較した。
【0050】
上記の詳細な記載は、本発明の目的及び対象を単に説明するものであり、添付の特許請求の範囲を限定するものではない。添付の特許請求の範囲から離れることなしに、記載された実施態様に対しての、種々の変更及び置換は、本明細書に記載された教示より当業者にとって明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明により提供されるラブコナゾールを含む抗真菌剤は、クリプトコックス症の治療薬として有用である。