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特許7545151進行期の非小細胞肺癌を処置するための方法および組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】進行期の非小細胞肺癌を処置するための方法および組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/122 20060101AFI20240828BHJP
   A61K 36/07 20060101ALI20240828BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240828BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240828BHJP
【FI】
A61K31/122
A61K36/07
A61P11/00
A61P35/00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018558383
(86)(22)【出願日】2017-05-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-06-06
(86)【国際出願番号】 US2017032562
(87)【国際公開番号】W WO2017197370
(87)【国際公開日】2017-11-16
【審査請求日】2020-05-08
【審判番号】
【審判請求日】2022-09-30
(31)【優先権主張番号】62/336,388
(32)【優先日】2016-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513043570
【氏名又は名称】ゴールデン バイオテクノロジー コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【弁理士】
【氏名又は名称】清原 義博
(74)【復代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リウ,ション-ユン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,チー-ミン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ペイ-ニィ
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ハオ-ユ
【合議体】
【審判長】前田 佳与子
【審判官】岩下 直人
【審判官】田中 耕一郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-504256(JP,A)
【文献】Mol.Clin.Oncol.,2015年,Vol.3,pp.1375-1380
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K31/00-31/80
A61K36/00-36/9068
CAplus/MEDLINE/REGISTRY/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構造
【化1】
を有する、治療上有効な量のシクロヘキセノン化合物、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物を含む、KRAS遺伝子の突然変異の陽性の被験体における進行期の肺癌を処置するための医薬組成物。
【請求項2】
前記進行期の肺癌は、IV期の非小細胞肺癌である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
IV期の非小細胞肺癌と診断された被験体の生活の質を向上させるかまたは維持する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記被験体は、少なくとも2つの手法の抗癌治療に失敗した患者である、請求項1-3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記シクロヘキセノン化合物、またはその薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物は、非経口的に、静脈内に、経口的に、または注射によって使用される、請求項1-4のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記シクロヘキセノン化合物の投与量は、1日当たり約50-450mgである、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記シクロヘキセノン化合物の投与量は、1日当たり約100-300mgである、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記化合物は、ベニクスノキタケから単離される、請求項1-7のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
肺癌は、世界において最も頻繁に診察された主要な癌であり、世界中の癌死亡率の主因である。アメリカ合衆国(USA)において、肺癌の219,440件の新規な症例(116,090人の男性および103,350人の女性)が診断され、2009年において、159,390人の死亡が、この悪性腫瘍に関連していたと見積もられた。台湾においては、2006年に、癌診断の11.94%を占める、8,748の肺癌の新規な症例が診断され、癌による死亡の19.68%である7,479人の患者がこの疾患で亡くなった。死亡率は、100,000人の男性および女性当たり、それぞれ44.42および20.65であった。
【0002】
肺癌は、非小細胞肺癌(NSCLC)または小細胞肺癌(SCLC)のいずれかとして、重要な予後の影響および治療の影響に基づいて分類される。非小細胞肺癌は、毎年診断される新しい症例の約80%であった。NSCLCは典型的には、SCLCよりも低い倍加時間でより遅く増殖し、3つの主要な組織型として特徴づけることができる:腺癌、扁平細胞、および大細胞癌。腺癌は、NSCLCの支配的な組織型になっており、女性および非喫煙者において最も一般的な型である。それは、典型的には、腺分化した末梢またはムチン産生において生じ、尿細管または乳頭構造を形成し、そして扁平上皮癌と比較して、広範かつ初期に転移する。
【0003】
NSCLC患者の約70%は、進行したIII期またはIV期の予後不良の疾患と診断される(IV期がおよそ50%)。これらの進行した腫瘍の大部分は、局所療法に修正可能でない播種性の(多数の部位)転移性疾患または転移部が原因で、手術不可能であると考えられる。
【発明の概要】
【0004】
一態様では、進行期の非小細胞肺癌を治療するための方法が、本明細書において提供され、該方法は、以下の構造
【0005】
【化1】
【0006】
を有する、治療上有効な量のシクロヘキセノン化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、代謝産物、溶媒和物、もしくはプロドラッグを個体に投与する工程を含み、
式中、XおよびYの各々は、酸素であり;
Rは、水素、またはC(=O)C-Cアルキルであり;
、R、およびRの各々は独立して、水素、メチル、または(CH)m-CHであり;Rは、水素であり;
m=1-12、n=1-12である。
【0007】
他の態様では、IV期の非小細胞肺癌の個体を処置する方法が、本明細書において提供され、該方法は、以下の構造
【0008】
【化2】
【0009】
を有する、治療上有効な量のシクロヘキセノン化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、代謝産物、溶媒和物、もしくはプロドラッグを、必要とする被験体に投与する工程を含み、
式中、XおよびYの各々は、酸素であり;
Rは、水素、またはC(=O)C-Cアルキルであり;
、R、およびRの各々は独立して、水素、メチル、または(CH-CHであり;
は、水素であり;
m=1-12、n=1-12である。
【0010】
他の態様では、IV期の非小細胞肺癌と診断された個体の生活の質を向上させる、または維持するための方法が、本明細書において提供され、該方法は、以下の構造
【0011】
【化3】
【0012】
を有する、治療上有効な量のシクロヘキセノン化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、代謝産物、溶媒和物、もしくはプロドラッグを前記個体に投与する工程を含み、
式中、XおよびYの各々は、酸素であり;
Rは、水素、またはC(=O)C-Cアルキルであり;
、R、およびRの各々は独立して、水素、メチル、または(CH-CHであり;
は、水素であり;
m=1-12、n=1-12である。
【0013】
<引用による組み込み>
本明細書で言及されるすべての公報、特許、および特許出願は、個々の公報、特許、特許出願が引用によって組み込まれるように具体的且つ個別に示される程度まで、引用によって本明細書に組み込まれる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
NSCLC患者の約70%は、進行した、予後不良のIII期またはIV期の疾患と診断される(IV期がおよそ50%)。これらの進行した腫瘍の大部分は、局所療法に修正可能でない播種性の(多数の部位)転移性疾患または転移部が原因で、手術不可能であると考えられる。これらの患者に対して、白金ベースの化学療法は、アメリカ臨床癌学会および全米総合癌ネットワーク(NCCN)によって推奨された標準的な処置である。進行したNSCLCに対する、非特異的細胞毒性化学療法を使用する全身療法、または標的療法を包含する利用可能な処置の選択肢は、過去20年間において著しく進歩してきたが;しかしながら、指摘された患者の生存はあまり多くないままである。加えて、IV期の肺癌のための処置は、依然として失望させるようなものである。したがって、新規の治療法に向けての今後の道筋がなくてはならない。
【0015】
カーステンラット肉腫ウイルス癌遺伝子ホモログおよびKRASとしても知られるGTPアーゼKRasは、ヒトにおいて、KRAS遺伝子でコードされるタンパク質である。正常なKRAS遺伝子のタンパク質産物は、正常な組織シグナル伝達において重要な機能を果たし、かつKRAS遺伝子の突然変異は、多くの癌の進行において重要な工程である。KRASは分子のon/offスイッチとして作用する。一度、KRASが作動されると、c-RafおよびPI3キナーゼなどの、成長因子および他の受容体のシグナルの伝播のために必要なタンパク質を補充し、活性化する。
【0016】
患者が上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)における突然変異に関して陽性または陰性かどうかによって、エルロチニブ(タルセバ)またはゲフィチニブ(イレッサ)などの、特定のEGFRアンタゴニストに患者がどのように応答するかが予測される。EGFRの突然変異を内部に持つ患者は、エルロチニブに対して60%の奏効率を有する。しかしながら、KRASおよびEGFRの突然変異は、一般的には、互いに排他的である。KRAS突然変異が陽性の(および、EGFR状態は野生型になる)肺癌患者は、エルロチニブまたはゲフィチニブに対して、5%未満と見積もられる低い奏効率を有する。
【0017】
KRAS検査は、大腸癌細胞におけるKRAS遺伝子の7つの突然変異の存在を検出するように設計された遺伝子検査である。NSCLCに関連するKRAS遺伝子の突然変異の同定は、どの患者が標的療法から利益を得る可能性があるかを測定するのに役立ち得る。
【0018】
驚くべきことに、本明細書に開示される特定のシクロヘキセノン化合物は、特にKRAS突然変異の陽性の患者のために、後期のNSCLCn患者に特異的な、効果的な処置成績を提供することがわかった。
【0019】
いくつかの実施形態では、化合物1などの本発明のシクロヘキセノン化合物は、天然物の抽出物から得られる、または合成的にまたは半合成的に調製され、合併症および/または副作用を低減させる。本明細書において提供されるシクロヘキセノン化合物を個体に投与することにより、進行期(例えばIV期)の非小細胞肺癌を治療するための方法が、本明細書において提供される。
【0020】
いくつかの実施形態では、進行期の非小細胞肺癌を治療するための方法が提供され、該方法は、以下の構造
【0021】
【化4】
【0022】
を有する、治療上有効な量のシクロヘキセノン化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、代謝産物、溶媒和物、もしくはプロドラッグを個体に投与する工程を含み、
式中、XおよびYの各々は、酸素であり;
Rは、水素、またはC(=O)C-Cアルキルであり;
、R、およびRの各々は独立して、水素、メチル、または(CH-CH(すなわちアルキレン基)であり;
は、水素であり;
m=1-12、n=1-12である。特定の実施形態では、前記進行期の非小細胞肺癌は、IV期の非小細胞肺癌である。
【0023】
いくつかの実施形態では、方法は、肺癌の腫瘍サイズまたは腫瘍容積を減少させる。いくつかの実施形態では、方法は、肺癌の腫瘍の成長速度を減少させる。
【0024】
いくつかの実施形態では、IV期の非小細胞肺癌の個体を処置する方法が提供され、該方法は、以下の構造
【0025】
【化5】
【0026】
を有する、治療上有効な量のシクロヘキセノン化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、代謝産物、溶媒和物、もしくはプロドラッグを、必要とする前記個体に投与する工程を含み、
式中、XおよびYの各々は、酸素であり;
Rは、水素、またはC(=O)C-Cアルキルであり;
、R、およびRの各々は独立して、水素、メチル、または(CH-CHであり;
は、水素であり;
m=1-12、n=1-12である。
【0027】
いくつかの実施形態では、前記方法は、IV期の非小細胞肺癌を有する個体を選択する工程をさらに含む。その選択は、当技術分野において知られている臨床設定に基づく。
【0028】
いくつかの実施形態では、IV期の非小細胞肺癌と診断された個体の生活の質を向上させる、または維持するための方法が提供され、該方法は、以下の構造
【0029】
【化6】
【0030】
を有する、治療上有効な量のシクロヘキセノン化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、代謝産物、溶媒和物、もしくはプロドラッグを前記個体に投与する工程を含み、
式中、XおよびYの各々は、酸素であり;
Rは、水素、またはC(=O)C-Cアルキルであり;
、R、およびRの各々は独立して、水素、メチル、または(CH-CHであり;
は、水素であり;
m=1-12、n=1-12である。
【0031】
いくつかの実施形態では、以下の構造
【0032】
【化7】
【0033】
を有するシクロヘキセノン化合物が、任意の適切な出発原料から合成的にまたは半合成的に調製される。例えば、化合物1(Antroquinonol(商標)もしくは「Antroq」としても知られる)、または化合物3は、いくつかの例において、4-ヒドロキシ-2,3-ジメトキシ-6-メチルシクロヘキサ-2,5-ジエノンから調製される。非限定的で例示的な化合物は、以下に例示される。
【0034】
【化8】
【0035】
他の実施形態では、以下の構造
【0036】
【化9】
【0037】
を有するシクロヘキセノン化合物が、処理されたベニクスノキタケ(Antrodia camphorate)の有機溶媒抽出物から単離される。例えば、米国特許第7,342,137号を参照されたい。いくつかの実施形態では、有機溶剤は、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、または同種のもの)、エステル類(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、または同種のもの)、アルカン類(例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、または同種のもの)、ハロゲン化アルカン類(例えば、クロロメタン、クロロエタン、クロロホルム、塩化メチレン、および同種のもの)などから選択される。例えば、例示的な化合物1-7は、有機溶媒抽出物から単離される。特定の実施形態において、有機溶媒はアルコールである。特定の実施形態において、アルコールはエタノールである。いくつかの実施形態では、シクロヘキセノン化合物はベニクスノキタケの水性抽出物から単離される。
【0038】
いくつかの実施形態では、Rは、水素、C(=O)C、C(=O)C、またはC(=O)CHである。特定の実施形態では、Rは、水素またはメチルである。特定の実施形態では、Rは、水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、またはヘキシルである。いくつかの実施形態では、Rは、水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、またはヘキシルである。特定の実施形態では、化合物は
【0039】
【化10】
【0040】
である。
【0041】
いくつかの実施形態では、前記個体はKRAS陽性である。いくつかの実施形態では、前記個体は、少なくとも2つの手法の抗癌治療に失敗した患者である。
【0042】
前記シクロヘキセノン化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、代謝産物、溶媒和物、もしくはプロドラッグは、非経口投与される、静脈投与される、経口投与される、または注射によって投与される。いくつかの実施形態では、前記シクロヘキセノン化合物の投与量は、1日当たり約600mgである。特定の実施形態では、前記個体は、本明細書において提供された方法に従って、前記化合物を12週間投与した後、癌のない状態となる。
【0043】
投与量
【0044】
当業者は、投与量が、限定されないが、個体の体重、腫瘍サイズ、または腫瘍の進行を含むいくつかの因子に左右されることがあると理解している。化合物1などの例示的な化合物は、いくつかの例において、1日当たり投与量600mgで単一の薬剤として投与される(200mgを1日3回、8時間の間隔で投与される)。100-300mgの投与量の範囲において、AUC0-24の有意差はなかった。したがって、いくつかの例において、投与量は1日当たり100-300mgに減してもよい。いくつかの実施形態では、高い薬物濃度を維持し、化合物1の有効性を高めるために、200mgで1日3回(8時間毎)の投与計画を選択することが好ましい。
【0045】
個人は、単一の適用または累積的な適用のいずれかにおいて、約50mg、約100mg、約200mg、約300mg、約400mg、約500mg、約600mg、約700mg、約800mg、約800mg以上の化合物1が与えられる。
【0046】
本発明化合物を用いる処置に対するNSCLCの個体を選択することにおいて、患者がKRAS陽性またはKRAS陰性かどうかを判定することが有益であり得る。驚くべきことに、化合物1などの本発明の化合物は、KRASの突然変異を持つ、およびその突然変異を持たない、IV期のNSCLCに対する良好な治療成績を示す。いくつかの実施形態では、KRAS陽性のそれらの患者は、本明細書に開示される処置の方法により利益を得る。
【0047】
様々な病期のNSCLCの個体
【0048】
NSCLCの個体が本発明のシクロヘキセノン化合物により処置される場合、癌性胸水の、または癌性胸水ではない、IV期などの進行期を有しているとして診断された個体が、特に処置され得る。
【0049】
一般的には、本発明の化合物がNSCLCの個体において使用されるとき、個体におけるNSCLCの病期は、処置の前に、処置の後、または処置の間に判定されることがある。肺癌進行度分類の概要は以下に示す:
【0050】
通常、肺癌では、「病期」の数字が大きくなることと、予後がより悪いことは相関がある。癌の病期で個体を診断するために、原発性腫瘍のサイズおよび位置(「T」値)、ならびにリンパ節の関与の程度および転移の可能性の上昇(「N」値)が考慮される。個体を診断するとき、転移の非存在(「M0」)または存在(「M1」)も留意される。
【0051】
1.Tカテゴリ
【0052】
Tカテゴリは、サブカテゴリT1-T4から構成され、それによって、1から4までの数字の増加は、原発性腫瘍のサイズ上昇および局所侵入を表わす。例えば、T1およびT2は主としてサイズで区別され、T1が3cm未満である一方、T2は3cmよりも大きい。T3腫瘍は、典型的には胸壁に関与しており、限定されないが、上肺溝、横隔膜、縦隔胸膜、心膜、または近位の主な気管支幹(proximal main stem bronchus)が挙げられるが、切除可能であり得る。T4腫瘍は、それらが縦隔に侵入した可能性があり、 癌性胸水、胸膜の場合には、心臓、大血管、気管、気管分岐部、または食道に関与している可能性があるため、外科的に切除可能ではない。
【0053】
2.Nカテゴリ
【0054】
リンパ節の病期(Nodal stages)は、N1、N2およびN3へと分けられる。N1の節は、典型的には、気管支周囲または同側性の肺門リンパ節に関与している。これらの節は胸膜内の適所にある。N2の節は、典型的には、同側性の縦隔リンパ節または分岐下リンパ節に関与している。N3の節は、典型的には、対側性肺門、縦隔、斜角筋リンパ節、または鎖骨上リンパ節に関与している。
【0055】
3.NSCLCの病期
【0056】
したがってNSCLCの「病期(stages)」は、T値、N値、およびM値の様々な順列に基づいた明瞭なNSCLCの分類である。認知されているNSCLCの病期は以下の通りである。
【0057】
潜伏癌:このカテゴリでは、患者はTX N0 MOと分類され、患者は、気管支肺分泌物中に検出される悪性細胞を有するが、気管支強または放射線撮影法による腫瘍の証拠はないことを意味する。
【0058】
IA期およびIB期:IA期は、IB期の疾患患者(T2 N0 M0)よりも5年生存率が有意に高いことに基づき、T1 N0 M0と分類される。これらの患者に対して、手術が好ましい処置である。例えば、1997年では、IA期に外科的に段階分けされた患者の5年生存率は67%であり、またIB期の同生存率は57%であった。
【0059】
IIA期およびIIB期:IIA期の疾患は、T1 N1 M0と定義され、外科的分類に基づく5年生存率は55%である。IIB期の疾患は、T2 N1 M0およびT3 N0 M0から構成される。T3 N0 M0の判定は、リンパ節が関与しない腫瘍の肺外への拡張を表している。T3 N0 M0の分類は、T2 N1 M0と共にグループ分けされるが、それはその外科的に段階付けされた疾患の5年生存率がそれぞれ38%対39%であり、有意な差がないからである。これらの個体に対しても、手術が主な処置である。
【0060】
IIIA期:IIIA期の患者は、切除可能と考えられる一方、III期B患者は切除可能ではない。IIIA期の患者は、肺外への拡張を伴い(T3)、かつリンパ節の関与が限定的な(N1またはN2)病変により定義される。節の関与は、同側性の縦隔リンパ節または分岐下リンパ節にまで広がることがある。これらの患者はT3 N1 M0またはT1-3 N2 M0のいずれかに分類される。例えば、1997年時点のIIIA期の疾患の5年生存率は23%であった。
【0061】
IIIB期:IIIB期の分類は、対側性の縦隔または肺門リンパ節;同側性か対側性の鎖骨上リンパ節もしくは斜角筋リンパ節;遠隔転移のない広範な縦隔リンパ節;または細胞学的陽性の癌性胸水;を含むが、これらに限定されない肺外の関与を有する患者を指す。これらの患者は、T1-3 N3 M0またはT4 N0-3 M0のいずれかに分類できる。例えば、1997年では、臨床的に段階分けされた疾患の5年生存率は、多様な処置を受けた状態で5%である。
【0062】
IV期:IV期は任意の転移の関与により定義される。これらの患者は、いずれかのTおよびいずれかのNを持つM1によって分類される。例えば、1997年の時点では、NSCLC患者の4分の1を超える患者が臨床上IV期であった。
【0063】
一般の当業者は、他の類似で適切な方法を、NSCLCの病期の分類において、および患者の選出のために、容易に適用するであろう。
【0064】
<特定の用語>
特に明記されていない限り、本明細書および請求項を含む本出願において使用される以下の用語は、以下に与えられる定義を有する。本明細書および添付の請求項で使用されるように、単数形「a」、「an」、および「the」は、その内容が特に他に明確に指示していない限り、複数の指示対象を包含することが留意されなければならない。特に指示がない限り、質量分析、NMR、HPCL、タンパク質化学、生化学、組換えDNA技術、および薬理学の従来の方法が使用される。本出願において、「または」、或いは「および」の使用は特に明記しない限り、「および/または」を意味する。さらに、用語「含むこと(including)」の使用は、「含む(include)」、「含む(includes)」、および「含まれる(included)」といった他の形態と同じく、限定されない。 本明細書で使用されるセクションの表題は、構成上の目的のみにあり、記載される主題を限定すると解釈されるものではない。
【0065】
「アルキル」基は、脂肪族炭化水素の基を指す。アルキル基は飽和アルキル基(炭素間二重結合または炭素間三重結合を包含しないこと意味する)であってもよくアルキル基は、不飽和アルキル基(少なくとも1つの炭素間二重結合または炭素間三重結合を包含することを意味する)であってもよい。アルキル部分は、飽和または不飽和のいずれの場合でも、分枝鎖または直鎖を含む。
【0066】
「アルキル」基は、1から12の炭素原子を有することもある(本明細書で見られる場合は常に、「1から12」など数的な範囲は一定の範囲内の各整数を指す;例えば、「1から12の炭素原子」は、アルキル基が1つの炭素原子、2つの炭素原子、3つの炭素原子など、最大12の炭素原子からなることを意味するが、本定義は数的な範囲が指定されていない用語「アルキル」の発生も包含する)。本明細書に記載される化合物のアルキル基は、「C-Cアルキル」または同様の名称として命名してもよい。ほんの一例として、「C-Cアルキル」は、1、2、3、4、5、6、7、または8個の炭素原子がアルキル鎖にあることを示す。一態様では、アルキルは、メチル、エチル、プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、iso-ブチル、sec-ブチル、およびt-ブチルからなる基から選択される。典型的なアルキル基は、限定されないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、第三ブチル、ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、アリル、ブテ-2-エニル、ブテ-3-エニル、シクロプロピルメチル、シクロブチルメチル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、およびその他同種のものが挙げられる。一態様では、アルキルはC-Cアルキルである。
【0067】
用語「アルキレン」は二価アルキルラジカルを指す。上述の一価アルキル基のいずれかは、アルキルからの第2の水素原子の抽出によるアルキレンであってもよい。一態様では、アルキレンは、C-C12アルキレン(例えば-(CH-CH)である。他の態様では、アルキレンは、C-Cアルキレンである。典型的なアルキレン基は、限定されないが、-CH-、-CH(CH)-、-C(CH-、-CHCH-、-CHCH(CH)-、-CHC(CH-、-CHCHCH-、-CHCHCHCH-などを含む。
【0068】
本明細書において使用されるような用語「アルケニル」は、2-10個の炭素を包含しており、2つの水素を取り除いて形成された少なくとも1つの炭素間二重結合を含む、直線、分枝鎖、または環状(この場合には、「シクロアルケニル」としても知られる)炭化水素を意味する。いくつかの実施形態では、構造に応じて、アルケニル基は、モノラジカルまたはジラジカル(すなわちアルケニレン基)である。いくつかの実施形態では、アルケニル基は随意に置換される。アルケニルの例証的な例は、限定されないが、エテニル、2-プロペニル、2-メチル-2-プロペニル、3-ブテニル、4-ペンテニル、5-ヘキセニル、2-ヘプテニル、2-メチル-1-ヘプテニル、および3-セセニル(3-cecenyl)が挙げられる。
【0069】
本明細書において使用されるような用語「アルキニル」は、2-10個の炭素を包含しており、4つの水素を取り除いて形成された少なくとも1つの炭素間三重結合を含む、直線、分枝鎖、または環状(この場合には、「シクロアルケニル」としても知られる)炭化水素を意味する。いくつかの実施形態では、構造に応じて、アルキニル基は、モノラジカルまたはジラジカル(すなわちアルキニレン基)である。いくつかの実施形態では、アルキニル基は随意に置換される。アルキニルの例証的な例は、限定されないが、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル、および同種のものが挙げられる。
【0070】
<特定の薬学および医学用語>
本明細書で使用されるような、製剤、組成物または成分に関する用語「許容可能な」は、処置されている被験体の健康状態に対して持続的な有害効果がないことを意味する。
【0071】
シカタケ属はMeripilaceae科における菌類の属である。シカタケ属種は、典型的には、成長表面上で水平に位置するか、広がる子実体を有し、その子実層は外側にさらされており;その縁は、狭いブラケットを形成するように回転され得る。大半の種は、温暖及び北方の林において見られ、褐色腐朽を引き起こす。この属における種の幾つかは、薬効成分を有しており、伝統薬として台湾で使用された。
【0072】
用語「担体」は、本明細書で使用されるように、細胞又は組織への化合物の組み込みを促進する、相対的に無毒な化学化合物又は薬剤を指す。
【0073】
用語「同時投与」などは、本明細書で使用されるように、一人の患者への選択された治療剤の投与を包含することを意味するとともに、同じまたは異なる経路によって、あるいは同じまたは様々な時間に薬剤が投与される処置レジメンを含むことを意図している。
【0074】
用語「希釈剤」は、送達前に対象となる化合物を希釈するために用いられる化学化合物を表す。希釈剤はまた、より安定した環境を提供できるので、化合物を安定させるために用いられることもある。(pH制御または維持も提供することができる)バッファー中に溶解された塩が、限定されないが、リン酸緩衝食塩水溶液を含む、当該技術分野における希釈剤として利用される。
【0075】
「有効な量」または「治療上有効な量」は、本明細書で使用されるように、処置されている疾患または疾病の症状の1つ以上をある程度まで軽減する十分な量の投与されている薬剤または化合物を指す。その結果、疾患の徴候、症状、または原因が減少および/または軽減され得るか、あるいは生物系の他の望ましい変更がもたらされうる。例えば、治療上の使用のための「有効な量」は、疾患症状を臨床的に有意に減少させるために必要とされる、本明細書に開示されるような化合物を含む組成物の量である。任意の個々の場合における適切な「有効な」量は、用量漸増試験などの技術を使用して判定され得る。
【0076】
本明細書で使用されるような用語「増強する(enhance)」または「増強する(enhancing)」は、効能または持続時間のいずれかにおいて望ましい効果を増大させる又は延長することを意味する。したがって、治療薬の効果を増強することに関して、用語「増強する」は、効能または持続時間のいずれかにおいて、系に対する他の治療薬の効果を増大させる又は延長する能力を指す。本明細書で使用されるような「増強する有効な量」は、望ましい系において別の治療薬の効果を増強するのに十分な量を指す。
【0077】
本明細書で開示される化合物の「代謝産物」は、化合物が代謝される際に形成されるその化合物の誘導体である。用語「活性代謝産物」は、化合物が代謝されるときに形成される、化合物の生物学的に活性な誘導体を指す。用語「代謝した(metabolized)」は、本明細書で使用されるように、有機体によって特定の物質が変化するプロセス(限定されないが、加水分解反応および酵素によって触媒される反応を含む)の全体を指す。したがって、酵素は、化合物への具体的な構造的変化をもたらし得る。例えば、シトクロムP450は、様々な酸化反応および還元反応を触媒する一方で、ウリジン二リン酸グルクロニルトランスフェラーゼは、芳香族アルコール、脂肪族アルコール、カルボン酸、アミン、および遊離スルフヒドリル基への活性化グルクロン酸分子の移動を触媒する。本明細書に開示される化合物の代謝産物は、随意に、宿主への化合物の投与および宿主からの組織サンプルの解析、または肝細胞を用いた化合物のインビトロでのインキュベーションおよびその結果生じる化合物の解析のいずれかによって特定される。
【0078】
本明細書で使用されるような用語「薬学的な組み合わせ」とは、1つを超える活性成分の混合または組み合わせに起因し、活性成分の組み合わせを固定した組み合わせと固定しない組み合わせの両方を含む製品を意味する。用語「固定された組み合わせ」は、活性成分、例えば、化合物(即ち、本明細書に記載のシクロヘキセノン化合物)及び助剤の両方が、単一の実体又は用量の形態で患者に同時投与されることを意味する。用語「固定されない組み合わせ」は、活性成分、例えば、化合物(即ち、本明細書に記載のシクロへキセノン化合物)及び助剤が、具体的な時間制限の介入なく同時に、平行して、又は連続して、別々の実体として患者に投与されることを意味し、前記投与は、患者の身体に効果的なレベルの2つの化合物を提供する。後者はまた、カクテル療法、例えば3つ以上の有効成分の投与にも当てはまる。
【0079】
用語「医薬組成物」は、化合物(すなわち、本明細書に記載のシクロへキセノン化合物)と、担体、安定剤、希釈剤、分散剤、懸濁剤、増粘剤、及び/又は、賦形剤などの他の化学成分との混合物を指す。医薬組成物は、有機体への化合物の投与を促進する。化合物を投与する多数の技術は、限定されないが、以下の当該技術分野において存在する:静脈内、経口、エアロゾル、非経口、眼、肺、及び、局所への投与。
【0080】
用語「被験体」又は「患者」は、哺乳動物を包含する哺乳動物の例は、限定されないが、以下の哺乳動物のクラスのメンバーを含む:ヒト、チンパンジーなどのヒト以外の霊長類、および他の類人猿並びにサル類;ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタなどの家畜;ウサギ、イヌ、およびネコなどの飼育動物;ラット、マウスおよびモルモットなどの、げっ歯類を含む実験動物。一実施形態では、哺乳動物はヒトである。
【0081】
本明細書で使用されるような用語「処置する(treat)」、「処置すること(treating)」または「処置(treatment)」は、予防的に及び/又は治療的に、疾患または疾病の少なくとも1つの症状を緩和、軽減、または改善すること、追加の症状を予防すること、疾患または疾病を阻害すること、例えば、疾患または疾病の進行を妨げること、疾患または疾病を軽減すること、疾患または疾病の退行を引き起こすこと、疾患または疾病によって引き起こされた状態を軽減すること、あるいは疾患または疾病の症状を止めることを含む。
【0082】
<投与経路>
適切な投与経路は、限定されないが、経口、静脈内、直腸、エアロゾル、非経口、眼、肺、経粘膜、経皮的、膣、耳、鼻、および局所の投与を含む。さらに、ほんの一例として、非経口送達は、筋肉内、皮下、静脈内、髄内の注射の他に、くも膜下腔内、直接的な脳室内、腹腔内、リンパ管内、および鼻腔内の注射を含む。
【0083】
特定の実施形態において、本明細書に記載される化合物は、しばしばデポ製剤または持続放出性製剤として、例えば、器官への直接的な化合物の注射を介して、全身よりもむしろ局所に投与される。特定の実施形態では、長時間作用型の製剤は、移植によって(例えば皮下または筋肉内)または筋肉内注射によって投与される。更に、他の実施形態において、薬は標的とする薬送達系において、例えば、臓器特異的抗体(organ-specific antibody)に覆われたリポソームにおいて送達される。そのような実施形態では、リポソームは、臓器に標的とされ、選択的に臓器によって吸収される。さらに他の実施形態において、本明細書に記載の化合物は、急速放出製剤の形態、拡張放出製剤の形態、または、中間放出製剤の形態で提供される。さらに他の実施形態において、本明細書に記載の化合物は、局所的に投与される。
【0084】
シクロヘキセノン化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、代謝産物、溶媒和物、もしくはプロドラッグは、非経口投与、または静脈投与される。他の実施形態において、シクロヘキセノン化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、代謝産物、溶媒和物、もしくはプロドラッグは、注射によって投与される、いくつかの実施形態では、シクロヘキセノン化合物、またはその薬学的に許容可能な塩、代謝産物、溶媒和物、もしくはプロドラッグは、経口投与される、
【0085】
<医薬組成物/製剤>
いくつかの実施形態では、以下の構造
【0086】
【化11】
【0087】
を有する化合物、あるいはその薬学的に許容可能な塩、溶媒和物またはプロドラッグが提供され、
式中、XおよびYの各々は、酸素であり;
Rは、水素、またはC(=O)C-Cアルキルであり;
、R、およびRの各々は独立して、水素、メチル、または(CH-CHであり;
は、水素であり;
m=1-12、n=1-12である。
【0088】
いくつかの実施形態では、Rは、水素、C(=O)C、C(=O)C、またはC(=O)CHである。いくつかの実施形態では、Rは、水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルヘキシル、またはオクチルである。特定の実施形態では、Rは、水素またはメチルである。特定の実施形態では、Rは、水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、またはヘキシルである。特定の実施形態では、Rは、水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、またはヘキシルである。
【0089】
特定の実施形態では、化合物は、
【0090】
【化12】
【0091】
、および
【0092】
【化13】
【0093】
からなる群から選択される。
【0094】
いくつかの実施形態では、以下の構造
【0095】
【化14】
【0096】
を有する、治療上有効な量のシクロヘキセノン化合物、その薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、代謝産物、もしくはプロドラッグを含む医薬組成物が提供され、
式中、XおよびYの各々は、酸素であり;
Rは、水素、またはC(=O)C-Cアルキルであり;
、R、およびRの各々は独立して、水素、メチル、または(CH-CHであり;
は、水素であり;
m=1-12、n=1-12である。
【0097】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される化合物は、医薬組成物へと製剤される。特定の実施形態では、医薬組成物は、薬学的に使用され得る製剤への活性化合物の処理を促進する、賦形剤及び助剤を含む1つ以上の生理学的に許容可能な担体を使用する従来の方法で製剤される。適切な製剤は、選択される投与の経路に左右される。あらゆる薬学的に許容可能な技術、担体、および賦形剤が、ここに記載される医薬組成物を製剤するのに適したものとして使用される:Remington:The Science and Practice of Pharmacy, Nineteenth Ed (Easton, Pa.: Mack Publishing Company, 1995);Hoover, John E., Remington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., Easton, Pennsylvania 1975;Liberman, H.A. and Lachman, L., Eds., Pharmaceutical Dosage Forms, Marcel Decker, New York, N.Y., 1980;およびPharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems, Seventh Ed.(Lippincott Williams & Wilkins1999)。
【0098】
本明細書において、化合物(即ち、本明細書に記載のシクロへキセノン化合物)及び薬学的に許容可能な希釈剤、賦形剤、又は担体を含む医薬組成物が、提供される。特定の実施形態において、記載される化合物は、化合物(すなわち、本明細書に記載のシクロへキセノン化合物)が併用療法におけるように他の活性部分と混合される医薬組成物として投与される。以下の併用療法のセクションにおいて及び本開示の全体にわたって明記される有効成分(actives)のすべての組み合わせが、本明細書に包含される。具体的な実施形態において、医薬組成物は、1以上の化合物(即ち、本明細書に記載されるシクロへキセノン化合物)を含む。
【0099】
医薬組成物は、本明細書で使用されるように、化合物(例えば、本明細書に記載のシクロへキセノン化合物)と、担体、安定剤、希釈剤、分散剤、懸濁剤、増粘剤、及び/又は、賦形剤などの他の化学成分との混合物を指す。特定の実施形態において、医薬組成物は、生物への化合物の投与を容易にする。いくつかの実施形態において、本明細書で提供される処置又は使用の方法を実行する際に、治療上効果的な量の化合物(即ち、本明細書に記載のシクロへキセノン化合物)は、処置されるべき疾患又は疾病を有する哺乳動物に対して医薬組成物で投与される。具体的な実施形態では、哺乳動物はヒトである。特定の実施形態では、治療上有効な量は、疾患の重症度、被験体の年齢および相対的な健康状態、使用される化合物の効能、並びに他の要因に依存して変わる。本明細書に記載される化合物は、単一で、又は、混合物の成分としての1以上の治療薬と組み合わせて、使用される。
【0100】
一実施形態では、化合物(即ち、本明細書に記載されるシクロへキセノン化合物)は、水溶液状で製剤される。具体的な実施形態では、水溶液は、ほんの一例として、ハンクス液、リンゲル液、または生理食塩水緩衝液などの、生理学的に適合性の緩衝液から選択される。他の実施形態において、化合物(即ち、本明細書に記載されるシクロヘキセノン化合物)は、経粘膜投与のために製剤される。具体的な実施形態では、経粘膜製剤は、浸透される障壁に適切な浸透剤を含む。本明細書に記載の化合物が、他の非経口注入のために製剤されるさらに他の実施形態において、適切な製剤は、水溶性又は非水溶性の溶液を含む。具体的な実施形態では、そのような溶液は、生理学的に適合性の緩衝液及び/又は賦形剤を含む。
【0101】
別の実施形態において、本明細書に記載の化合物は、経口投与のために製剤される。化合物(即ち、本明細書に記載されるシクロへキセノン化合物)を含む、本明細書に記載の化合物は、例えば、薬学的に許容可能な担体又は賦形剤と、活性な化合物を混合させることによって製剤される。様々な実施形態において、本明細書に記載の化合物は、ほんの一例であるが、錠剤、粉剤、丸薬、糖衣錠、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、エリキシル剤、スラリー剤、懸濁剤などを含む、経口の投与形態で処方される。
【0102】
特定の実施形態において、経口使用のための医薬製剤は、1以上の固体の賦形剤を、本明細書中に記載される1以上の化合物と混合することによって、結果として得られた混合物を随意に粉砕することによって、及び、錠剤又は糖衣錠コア(dragee cores)を得るために、必要に応じて、適切な助剤を添加した後に、顆粒の混合物を処理することによって、得られる。適切な賦形剤は、特に、ラクトース、スクロース、マンニトール、又はソルビトールを含む糖類などの、充填剤;例えば、トウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、じゃがいもデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、微結晶性セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース製剤;またはポリビニルピロリドン(PVP又はポビドン)又はリン酸カルシウムなどの他のもの、である。具体的な実施形態では、崩壊剤が随意に加えられる。崩壊剤は、ほんの一例ではあるが、架橋結合したクロスカルメロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、寒天、又はアルギン酸、或いは、アルギン酸ナトリウムなどのその塩を含む。
【0103】
糖衣錠コアや錠剤などの剤形は、1以上の適切なコーティングと共に提供される。具体的な実施形態では、剤形のコーティングのために、濃縮した糖溶液が使用される。糖溶液は、随意に、ほんの一例として、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、及び/又は二酸化チタン、ラッカー溶液、および適切な有機溶媒または溶媒混合物などの、追加の成分を含有する。染料及び/又は色素も、随意に、識別目的でコーティングに加えられる。さらに、染料及び/又は色素は、随意に、活性化合物の投与量の異なる組み合わせを特徴づけるために利用される。
【0104】
特定の実施形態では、本明細書に記載される少なくとも1つの治療上効果的な量の化合物は、他の経口剤形へと製剤される。経口剤形は、ゼラチン製の押し出しカプセル剤と、ゼラチン製の密封された軟カプセル剤、および、グリセロールやソルビトールなどの可塑剤を含む。具体的な実施形態では、押し込み型のカプセル剤は、1以上の充填剤と混合させた活性成分を含む。充填剤は、ほんの一例として、ラクトース、デンプンなどの結合剤、及び/又は、タルクもしくはステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、及び、随意に安定剤を含む。他の実施形態では、軟カプセル剤は、適切な液体中で溶解又は懸濁される、1以上の活性な化合物を含む。適切な液体は、ほんの一例として、1以上の脂肪油、流動パラフィン、又は、液体ポリエチレングリコールを含む。加えて、安定剤が随意に加えられる。
【0105】
他の実施形態において、治療上効果的な量の本明細書中に記載される少なくとも1つの化合物が、口腔投与又は舌下投与のために製剤される。口腔投与又は舌下投与に適した製剤は、ほんの一例ではあるが、錠剤、ロゼンジ剤、又はゲル剤を含む。更に他の実施形態において、本明細書中に記載される化合物は、ボーラス注入又は持続注入に適した製剤を含む、非経口注入のために製剤される。具体的な実施形態において、注入用製剤は、単位剤形で(例えば、アンプルで)、又は、複数回用量容器で提供される。保存剤は、注入製剤へ随意に加えられる。更に別の実施形態において、化合物(すなわち、本明細書に記載されるシクロへキセノン化合物)の医薬組成物は、油性ビヒクル又は水性ビヒクル状の、滅菌した懸濁液、溶液、又は、乳濁液のような、非経口注入に適した形態で製剤される。非経口注入製剤は、懸濁剤、安定剤、及び/又は、分散剤などの製剤化剤(formulatory agent)を随意に含む。具体的な実施形態において、非経口投与のための医薬製剤は、水溶性の形態において活性な化合物の水溶液を含む。さらなる実施形態では、活性な化合物の懸濁液は、適切な油性注入懸濁剤として調製される。本明細書中に記載される医薬組成物中で使用されるための適切な親油性溶媒又はビヒクルは、ほんの一例ではあるが、ゴマ油などの脂肪油、又はオレイン酸エチル若しくはトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステル、又はリポソームを含む。特定の具体的な実施形態において、水性注入懸濁剤は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、又は、デキストランのような懸濁液の粘度を増加させる物質を含む。随意に、懸濁液は、高濃縮溶液の調製を可能にするため、化合物の溶解度を増加させる適切な安定剤又は薬剤を含む。あるいは、他の実施形態において、活性成分は、使用前に、適切なビヒクル、例えば、発熱物質を含まない滅菌水で構築するための粉末形態である。
【0106】
一態様では、化合物(すなわち、本明細書に記載されるシクロへキセノン化合物)は、本明細書に記載されるような、又は当該技術で既知の非経口注入のための溶液として調製され、自動注入器で投与される。米国特許第4,031,893号、第5,358,489号;第5,540,664号;第5,665,071号、第5,695,472号、及び国際公開第2005/087297(その各々は、このような開示のための引用によって本明細書に組み込まれる)に開示されるもの等の、自動注入器が知られている。一般に、自動注入器はすべて、注入される化合物(すなわち、本明細書に記載されるシクロへキセノン化合物)を含む大量の溶液を含む。一般に、自動注入器は、溶液の保持のためのリザーバーを含み、それは、患者に注射針を挿入し、患者へ用量を送達する注射針を自動的に展開させるための機構と同様に、薬物を送達するための針との流体連結中にある。典型的な注入器は、1mLの溶液につき化合物(すなわち、本明細書に記載されるシクロヘキセノン化合物)の約0.5mgから50mgの濃度で、約0.3mL、0.6mL、1.0mL又は他の適切な量の溶液を提供する。注入器はそれぞれ、化合物を1回分だけ送達することができる。
【0107】
さらに他の実施形態において、化合物(すなわち、本明細書に記載されるシクロへキセノン化合物)は、局所投与される。本明細書に記載される化合物は、溶液、懸濁液、ローション剤、ゲル剤、ペースト剤、薬用スティック、バーム、クリーム、又は軟膏といった様々な局所投与が可能な組成物へと製剤される。前記医薬組成物は、可溶化剤、安定剤、等張増強剤(tonicity enhancing agent)、バッファー、及び保存剤を随意に含む。
【0108】
さらに他の実施形態において、化合物(すなわち、本明細書に記載されるシクロヘキセノン化合物)は、経皮投与のために製剤される。具体的な実施形態において、経皮製剤は、経皮送達デバイス及び経皮送達パッチを利用し、ポリマー又は粘着剤中で溶解及び/又は分散した、親油性エマルジョン又は緩衝水溶液であってもよい。様々な実施形態において、このようなパッチは、医薬品の連続送達、パルス送達、又は、オンデマンド送達に合わせて構築される。更なる実施形態において、化合物(すなわち、本明細書に記載されるシクロヘキセノン化合物)の経皮送達は、イオン泳動性パッチなどの手段により達成される。特定の実施形態において、経皮パッチは、化合物(すなわち、本明細書に記載されるシクロヘキセノン化合物)の制御送達を提供する。具体的な実施形態において、吸収速度は、速度制御膜を使用することで、又は、化合物をポリマーマトリックス若しくはゲルの中に捕捉することで、遅くされる。代替的な実施形態において、吸収促進剤は、吸収性を高めるために使用される。吸収促進剤又は担体は、皮膚を介する通過を補助する、吸収可能である薬学的に許容可能な溶媒を含む。例えば、1つの実施形態において、経皮デバイスは、裏当て部材、任意に担体を有する化合物を含むリザーバー、任意に長期間にわたって制御され、及び予め定められた速度で化合物を宿主の皮膚に送達するための速度制御膜、及びデバイスを皮膚に固定する手段を含む包帯の形態をとっている。
【0109】
本明細書に記載される経皮製剤は、当該技術分野で記載された様々なデバイスを用いて投与され得る。例えば、前記デバイスは、限定されないが、米国特許第3,598,122号、第3,598,123号、第3,710,795号、第3,731,683号、第3,742,951号、第3,814,097号、第3,921,636号、第3,972,995号、第3,993,072号、第3,993,073号、第3,996,934号、第4,031,894号、第4,060,084号、第4,069,307号、第4,077,407号、第4,201,211号、第4,230,105号、第4,292,299号、第4,292,303号、第5,336,168号、第5,665,378号、第5,837,280号、第5,869,090号、第6,923,983号、第6,929,801号、及び第6,946,144号を含む。
【0110】
本明細書に記載される経皮剤形は、当該技術分野においてありふれた、特定の薬学的に許容可能な賦形剤を組み込み得る。1つの実施形態において、本明細書に記載される経皮製剤は、少なくとも3つの成分を含む:(1)化合物(すなわち、本明細書に記載されるシクロヘキセノン化合物)の製剤;(2)浸透促進剤;及び(3)水性のアジュバント。加えて、経皮製剤は、これらに限定されないが、例えば、ゲル化剤、クリーム、及び軟膏基剤などの追加の成分を含み得る。いくつかの実施形態において、経皮製剤はさらに、織り込まれた裏地又は織り込まれていない裏地を含み、それにより吸収を促進するとともに、皮膚からの経皮製剤の除去を防ぐ。他の実施形態において、本明細書に記載される経皮製剤は皮膚への拡散を促進するために飽和状態又は過飽和状態を維持する。
【0111】
他の実施形態において、化合物(すなわち本明細書に記載されるシクロヘキセノン化合物)は吸入投与のために製剤される。吸入投与に適した様々な形態は、これらに限定されないが、エアロゾル、霧又は粉末を含む。化合物(すなわち本明細書に記載されるシクロヘキセノン化合物)の医薬組成物は、適切な高圧ガス(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素又はその他適切なガス)を用いた、圧縮パック又は噴霧機からのエアロゾルスプレー投与の形態で都合よく送達される。具体的な実施形態において、加圧エアロゾルの用量単位は、バルブを用いて測定し、計量した量を送達する。特定の実施形態において、ほんの一例ではあるが、吸入器又は注入器で使用するためのゼラチンなどから成るカプセル剤及び薬包は、化合物の粉末混合、及びラクトース又はでん粉などの適切な粉末基剤を含み製剤される。
【0112】
経鼻製剤の剤形は当該技術分野で既知であり、例えば、米国特許第4,476,116号、米国特許第5,116,817号、及び米国特許第6,391,452号に記載されており、これらは、引用によって本明細書に具体的に組み込まれる。当該技術分野で周知のこれらの技術及び他の技術に従って調製される、化合物(すなわち本明細書に記載されるシクロヘキセノン化合物)を含む製剤は、従来技術で公知のベンジルアルコール又は他の適切な保存剤、フルオロカーボン、及び/又は可溶化剤又は分散剤を用いて、生理食塩水中の溶液として調製される。例えば、Ansel, H.C. et al., Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems, Sixth Ed.(1995)を参照されたい。好ましくは、これらの組成物及び製剤は、適切で毒性のない、薬学的に許容可能な成分を用いて調製される。これらの成分は、当該分野における標準的な文献である、REMINGTON:THE SCIENCE AND PRACTICE OF PHARMACY, 21st edition,(2005)のような情報源において見られる。適切な担体の選択は、例えば、溶液、分散液、軟膏剤、又はゲルのような、所望の鼻腔剤形の正確な性質に大きく依存している。鼻腔剤形は、一般的に活性成分に加えて、大量の水を含有する。pH調節剤、乳化剤、又は分散剤、保存剤、界面活性剤、ゲル化剤、又は緩衝剤、及び他の安定剤及び可溶化剤などの少量の他の成分も同様に存在してもよい。好ましくは、鼻腔剤形は、鼻からの分泌物に等張である。
【0113】
吸入による投与のため、本明細書に記載される化合物は、エアロゾル、霧、又は粉末としての形態であってもよい。本明細書に記載される医薬組成物は、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、又は他の適当なガスなどの適切な高圧ガスを用いる、圧縮パック又は噴霧機からエアゾルスプレーの形態で都合よく送達される。加圧したエアロゾルの場合において、投与単位は、計量した量を送達するためのバルブを用いることによって測定されてもよい。ほんの一例として、吸入器又は注入器で用いるためのゼラチンなどのカプセル及び薬包は、本明細書に記載される化合物と、例えば、ラクトース又はでんぷんのような好適な粉末の粉末混合物を含むように処方されてもよい。
【0114】
更に他の実施形態において、化合物(すなわち本明細書に記載されるシクロヘキセノン化合物)は、ポリビニルピロリドン、PEGなどの合成ポリマーと同様に、ココアバター又は他のグリセリドなどの従来の坐薬用基剤を含む、浣腸剤、直腸用ゲル剤、直腸用気泡剤、直腸用エアロゾル、坐薬、ゼリー状坐薬、又は保持浣腸剤などの直腸組成物として製剤される。組成物の坐剤形態において、限定されないが、脂肪酸グリセリドの混合物などの低融点ワックスは、随意にココアバターと組み合わせて、最初に融解される。
【0115】
特定の実施形態において、医薬組成物は、賦形剤及び補助剤を含む1以上の生理学的に許容可能な担体を用いる任意の従来の様式で処方され、これらの賦形剤及び補助剤により、活性化合物を薬学的に使用され得る調製物へと処理するのが容易となる。適切な製剤は、選択される投与経路に依存する。任意の薬学的に許容可能な技術、担体、及び賦形剤を、適切に、かつ当該技術分野で理解されているように随意に使用する。化合物(すなわち、本明細書に記載されるシクロヘキセノン化合物)を含む医薬組成物は、ほんの一例として、従来の混合、溶解、造粒、糖衣錠化、微粒子化、乳化、カプセル化、封入又は圧縮のプロセスといった、従来の方法で製造されてもよい。
【0116】
医薬組成物は、少なくとも一つの薬学的に許容可能な担体、希釈剤又は賦形剤、及び、活性成分として少なくとも一つの本明細書中に記載の化合物(すなわち、本明細書中に記載されるシクロヘキセノン化合物)を含む。活性成分は、遊離酸形態若しくは遊離塩基形態、又は薬学的に許容可能な塩の形態である。さらに、本明細書で記載される方法及び医薬組成物は、結晶性形状(多形態としても知られる)、ならびに同様のタイプの活性を有するこれらの化合物の活性代謝物質を含む。本明細書に記載される化合物の互変異性体のすべてが、本明細書に示される化合物の範囲内に含まれる。更に、本明細書中に記載される化合物は、水やエタノールなどの薬学的に許容可能な溶媒を有する溶媒和形態のみでなく、非溶媒和形態も含む。本明細書に示される化合物の溶媒和形態はまた、本明細書に開示されていると考えられる。更に、医薬組成物は、保存剤、安定剤、湿潤剤、若しくは乳化剤、溶解促進剤、浸透圧を調整する塩、バッファー、及び/又は他の治療上効果的な物質などの、他の医薬品又は治療剤、担体、アジュバントを随意に含む。
【0117】
本明細書に記載される化合物を含む組成物を調製するための方法は、1以上の不活性成分、薬学的に許容可能な賦形剤又は担体を用いて化合物を処方し、固形物、半固形物又は液体を形成する工程を含む。固形の組成物は、限定されないが、粉末、錠剤、分散性顆粒、カプセル剤、カシェ剤、及び坐剤を含む。液体の組成物は、化合物を溶かした溶液、化合物を含む乳剤、又は本明細書で開示されている化合物を含むリポソーム、ミセル、又はナノ粒子を含有する溶液を含む。半固形の組成物は、これらに限定されないが、ゲル、懸濁液及びクリームを含む。本明細書中に記載されている医薬組成物の形態は、液体溶液又は懸濁液、使用前で液体に溶解若しくは懸濁することに適した固形形態、又はエマルジョンを含む。これらの組成物はまた、湿潤剤又は乳化剤、pH緩衝剤などの微量の非毒性の補助物質を随意に含む。
【0118】
いくつかの実施形態において、少なくとも化合物(すなわち本明細書に記載されるシクロヘキセノン化合物)を含む医薬組成物は、例えば、薬剤が溶液、懸濁液、又はその両方に存在する液体の形態を取る。一般的に組成物を溶液又は懸濁液として投与すると、薬剤の第一の部分は溶液中に存在し、薬剤の第二の部分は液体マトリックス中の懸濁液中に粒子形態で存在する。いくつかの実施形態において、液体組成物はゲル製剤を含む。他の実施形態において、液体組成物は水性である。
【0119】
特定の実施形態において、医薬品の水溶性懸濁液は、懸濁剤として1以上のポリマーを含む。ポリマーは、セルロースポリマー、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロースなどの水溶性ポリマー、および架橋カルボキシル含有ポリマーなどの不水溶性ポリマーが挙げられる。本明細書に記載される特定の医薬組成物は、例えばカルボキシメチルセルロース、カルボマー(アクリル酸ポリマー)、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリアクリルアミド、ポリカルボフィル、アクリル酸/アクリル酸ブチルコポリマー、アルギン酸ナトリウム、及びデキストランから選択された粘膜付着性ポリマーを含む。
【0120】
医薬組成物は、また、化合物(すなわち本明細書に記載されているシクロヘキセノン化合物)の溶解度を援助するための可溶化剤を随意に含む。用語「可溶化剤」は、一般的に、ミセル溶液又は薬剤の真溶液の形成をもたらす薬剤を含む。例えばポリソルベート80のような、特定の許容可能な非イオン性界面活性剤は、可溶化剤として有用であり、眼科用として許容可能なグリコール、ポリグリコール(例えばポリエチレングリコール400)、及びグリコールエーテルとして有用である。
【0121】
更に、医薬品組成物は、酢酸、ホウ酸、クエン酸、乳酸、リン酸及び塩酸などの酸;水酸化ナトリウム、リン酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム及びトリスヒドロキシメチルアミノメタンなどの塩基;及びシトラート/デキストロース、重炭酸ナトリウム及び塩化アンモニウムなどのバッファーを含む、1以上のpH調整剤又はバッファーを随意に含む。このような酸、塩基、及びバッファーは、組成物のpHを許容可能な範囲で維持するのに必要とされる量で含まれる。
【0122】
更に、医薬組成物は、組成物の重量モル浸透圧濃度を許容可能な範囲にするために必要な量の1以上の塩を随意に含む。そのような塩は、ナトリウムカチオン、カリウムカチオン又はアンモニウムカチオン及び塩化物アニオン、クエン酸アニオン、アスコルビン酸アニオン、ホウ酸アニオン、リン酸アニオン、重炭酸アニオン、硫酸アニオン、チオ硫酸アニオン又は亜硫酸水素アニオンを有するものが挙げられ;適切な塩は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム及び硫酸アンモニウムが挙げられる。
【0123】
他の医薬組成物は、微生物の活性を阻害する1以上の保存剤を随意に含む。適切な保存剤は、マーフェン(merfen)及びチオマーサルなどの水銀含有物質;安定した二酸化塩素;及び塩化ベンザルコニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム及び塩化セチルピリジニウムなどの四級アンモニウム化合物を含む。
【0124】
更なる他の医薬組成物は、物理的安定性を増幅するため、又は他の目的のために、1以上の界面活性剤を含む。適切な非イオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリド、及び、例えばポリオキシエチレン(60)水素化ヒマシ油等の植物油を含む;及びポリオキシエチレンアルキルエーテル、及び、例えばオクトキシノール10、オクトキシノール40等のアルキルフェニルエーテルを含む。
【0125】
更なる他の医薬組成物は、必要な場合に、化学安定性を増幅させる1若しくはそれ以上の抗酸化剤を含み得る。適切な抗酸化剤は、ほんの一例として、アスコルビン酸及び二亜硫酸ナトリウムを含む。
【0126】
特定の実施形態において、医薬品の水性懸濁液組成物は、単回用量用の再密閉できない容器に包装される。あるいは、複数回用量用の再密閉できる容器が使用され、この場合には、組成物中に保存剤を含むのが典型的である。
【0127】
代替の実施形態において、疎水性医薬化合物のための他の送達系を利用する。リポソーム及びエマルジョンは、本明細書中の送達用ビヒクル又は担体の例である。特定の実施形態において、N-メチルピロリドンなどの有機溶媒も利用される。更なる実施形態において、本明細書に記載される化合物は、治療薬剤を含む固形疎水性ポリマーの半透性マトリックスなどの持続放出系を用いて送達される。様々な持続放出物質が本明細書において有用である。いくつかの実施形態において、徐放性カプセル剤は、数時間から24時間を超えて、化合物を放出する。治療試薬の化学的性質と生物学的安定性に依存して、タンパク質安定化のための追加方策が用いられ得る。
【0128】
特定の実施形態において、本明細書中に記載される製剤は、1以上の抗酸化剤、金属キレート剤、チオール含有化合物、及び/又は他の一般的な安定剤を含む。これら安定剤の例は、限定されないが、次のようなものが挙げられる:(a)約0.5%から約2%w/vのグリセロール、(b)約0.1%から約1%w/vのメチオニン、(c)約0.1%から約2%w/vのモノチオグリセロール、(d)約1mMから約10mMのEDTA、(e)約0.01%から約2%w/vのアスコルビン酸、(f)0.003%から約0.02%w/vのポリソルベート80、(g)0.001%から約0.05%w/vのポリソルベート20、(h)アルギニン、(i)ヘパリン、(j)硫酸デキストラン、(k)シクロデキストリン、(l)ペントサンポリサルフェート及び他のヘパリノイド、(m)マグネシウム及び亜鉛などの二価カチオン;又は(n)それらの組み合わせ。
【0129】
<併用療法>
一般的に、本明細書で記載される組成物、及び、併用療法が用いられている実施形態において、他の薬剤は同一の医薬組成物中に投与される必要はなく、かつ、いくつかの実施形態において、物理的及び化学的特徴が異なることから、異なる経路で投与される。いくつかの実施形態において、初回投与を、当該分野での実証されたプロトコルに従って行い、その後、観察された効果に基づいて、投与量、投与の形態、及び投与の時間は、熟練した臨床医により修正される。
【0130】
いくつかの実施形態において、薬物を併用療法において使用する場合、治療上効果的な投与量は変化する。併用療法は、更に、患者の臨床管理を援助するために、様々な時点で開始及び停止する定期的処置も含む。本明細書中に記載される併用療法に関して、同時に投与される化合物の投与量は、併用される薬のタイプ、利用される特定の薬、処置される疾患、障害、又は疾病などに依存して変化する。
【0131】
いくつかの実施形態において、緩和が求められる疾病を処置、予防、又は改善するための投与レジメンは、様々な要因に従って修正され得ると理解される。これらの要因は、被験者の年齢、体重、性別、食事及び健康状態と同様に、被験者が苦しむ障害も含む。したがって、他の実施形態において、実際に用いられる投与レジメンは幅広く変化し、それゆえに、本明細書に明記される投与レジメンから逸脱する。
【0132】
他の抗癌剤と化合物(すなわち本明細書に記載されるシクロヘキセノン化合物)の組み合わせがカバーされるように意図されている。いくつかの実施形態では、抗癌剤の例は、限定されないが、以下のものが挙げられる:シスプラチン(CDDP)、カルボプラチン、プロカルバジン、メクロレタミン、シクロホスファミド、カンプトテシン、イホスファミド、メルファラン、クロラムブチル、ブスルファン、ニトロソウレア(nitrosurea)、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリカマイシン(plicomycin)、マイトマイシン、エトポシド(VP16)、タモキシフェン、ラロキシフェン、エストロゲン受容体結合剤、タキソール、ゲムシタビン、ナベルビン、ファルネシル-タンパク質転移酵素阻害剤、トランスプラチナ、5-フルオロウラシル、ビンクリスチン、ビンブラスチンおよびメトトレキセート、他のトポイソメラーゼ阻害剤 (例えばイリノテカン、トポテカン、カンプトテシン等)、または前述のもののあらゆる誘導体に関連する薬剤。
【0133】
本明細書において記載されたシクロヘキセノン化合物と、他の抗癌剤との組み合わせは、いくつかの実施形態では、他の薬剤を用いたさらなる療法および処置レジメンを含む。そのようなさらなる療法および処置レジメンは、いくつかの実施形態では、他の抗癌治療を含むことができる。代替的に、他の実施形態では、さらなる療法および処置レジメンは、他の薬剤を含み、併用療法における、癌に関連する付属的な疾病、またはそのような薬剤からの副作用を処置するさらなる実施形態では、アジュバントまたはエンハンサーは、本明細書において記載された併用療法を用いて投与される。
【0134】
さらなる抗癌治療は、化学療法、放射線療法、免疫療法、遺伝子療法、外科手術、または例えば、癌細胞を死滅させる、癌細胞中でアポトーシスを誘発する、癌細胞の成長速度を減少させる、転移の発生または数を減少させる、腫瘍大きさを縮小する、腫瘍成長を阻害する、腫瘍または癌細胞に対する血液供給を減少させる、癌細胞または腫瘍に対する免疫反応を促進する、癌の進行を防ぐ又は阻害する、または癌を有する被験体の寿命を増加させることなどによって、患者において癌に否定的に影響を与えることができる他の治療を含む。
【実施例
【0135】
<実施例1:例示的なシクロヘキセノン化合物の調製>
ベニクスノキタケからの、100グラムの菌糸体、子実体、またはそれら両方の混合物を、フラスコへと入れた。正確な量の水およびアルコール(70-100%のアルコール溶液)をフラスコへと添加し、20-25℃で少なくとも1時間にわたって撹拌した。溶液を、フィルターおよび0.45μmの薄膜を介して濾過し、その濾液を、抽出物として採取した。
【0136】
ベニクスノキタケの濾液を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析にかけた。その分離を、移動相がメタノール(A)および0.3%酢酸(B)からなるRP18カラムにおいて、1ml/minの流量で、95%の-20%Bで0-10分、20%-10%Bで10-20分、10%-10%Bで20-35分、10%-95%Bで35-40分の勾配条件を使用して実施した。カラム流出液を、UV可視検出器を用いてモニタリングした。
21.2~21.4minで採取された分画を採取および濃縮し、淡黄色液体の産物である化合物5を産出させた。化合物5は、408の分子量を有する、4-ヒドロキシ-5-(11-ヒドロキシ-3,7,11-トリメチルドデカ-2,6-ジエニル)-2,3-ジメトキシ-6-メチルシクロヘキサ-2-エノン(分子式:C2440)であると分析された。
23.7~24.0minで採取された分画を、採取および濃縮し、淡黄色液体の産物である化合物7を産出させた。化合物7は、422の分子量を有する、4-ヒドロキシ-2,3-ジメトキシ-5-(11-メトキシ-3,7,11-トリメチルドデカ-2,6-ジエニル)-6-メチルシクロヘキサ-2-エノン(C2542)であると分析された。
【0137】
25~30minで採取された分画を、採取および濃縮して、淡黄色で茶色の液体の産物である4-ヒドロキシ-2,3-ジメトキシ-6-メチル-5-(3,7,11-トリメチルドデカ-2,6,10-トリエニル)シクロヘキサ-2-エノンを産出させた。化合物1の分析によって、C2438の分子式が示され、その分子量は390であり、48~52℃の融点を有する。NMRスペクトルによって:H-NMR(CDCl)δ(ppm)=1.51、1.67、1.71、1.75、1.94、2.03、2.07、2.22、2.25、3.68、4.05、5.07、および5.14;13C-NMR(CDCl)δ(ppm)=12.31、16.1、16.12、17.67、25.67、26.44、26.74、27.00、39.71、39.81、40.27、43.34、59.22、60.59、120.97、123.84、124.30、131.32、135.35、135.92、138.05、160.45、および197.12;であることが示された。
【0138】
【化15】
【0139】
化合物1:4-ヒドロキシ-2,3-ジメトキシ-6-メチル-5-(3,7,11-トリメチルドデカ-2,6,10-トリエニル)シクロヘキサ-2-エノン
【0140】
化合物1の代謝産物である化合物6を、動物実験において化合物1を与えられたラットの尿サンプルから得た。化合物6は、312の分子量を有する、4-ヒドロキシ-2,3-ジメトキシ-6-メチル-5-(3-メチル-2-ヘキセン酸)シクロヘキサ-2-エノン(C1624)であると判定された。3,4-ジヒドロキシ-2-メトキシ-6-メチル-5-(3,7,11-トリメチルドデカ-2,6,10-トリエニル)シクロヘキサ-2-エノンとして判定された化合物4は、6時間、40℃以上の条件下に、化合物1をおいた場合に得られた。
【0141】
【化16】
【0142】
代替的に、例示的な化合物は、4-ヒドロキシ-2,3-ジメトキシ-6-メチルシクロヘキサ-2,5-ジエノン、または同種のものなどの適切な出発原料から合成的に調製されてもよい。例えば、米国特許番号9365481号を参照されたい。同様に、以下の構造
【0143】
【化17】
【0144】
を有する他のシクロヘキセノン化合物は、ベニクスノキタケから単離されるか、または適切な出発原料から合成的にまたは半合成的に調製される。通常の当業者は、そのような合成の適切な条件を容易に活用するだろう。
【0145】
<実施例2:例示的な化合物1の前臨床試験>
例示的な化合物1は、様々な癌細胞株に対して2.22~6.42μMのIC50で、細胞死をもたらした。化合物1は、肺癌細胞において、用量依存的様式(P<0.01)で、処理されたRasに対する未処理のRasの比率を著しく高めた。化合物1によって、イソプレニルトランスフェラーゼ活性が阻害され、分子ドッキング分析によって、イソプレン単位および化合物1の4’-ヒドロキシ基が、化合物1とイソプレニルトランスフェラーゼとの間の相互作用に重要な役割を果たし得ることが予測された。加えて、化合物1は、肺癌細胞における、ベクリン-1の発現レベル(3倍)、LC3-II/I(P<0.01)、およびPC3斑点形成(puncta formation)を増加させた。したがって、化合物1は、イソプレニルトランスフェラーゼの阻害を介してRasの活性化を阻害することもあり、結果として、自己貪食の細胞死をもたらす。
【0146】
従来の研究は、化合物1などの本発明のシクロヘキセノン化合物が、AMPK、PI3K、およびmTORを含むいくつかのシグナル分子を介して抗腫瘍活性を引き起こすことを明らかにした。最近の研究では、化合物1がイソプレニルトランスフェラーゼ活性の阻害を介して、Ras処理を間接的に阻害することが示唆される。増殖、運動性、物質代謝および分化に関連するRas-PI3K-Akt-mTOR経路は、化合物1に応じて阻害される。したがって、例示的な化合物1は、アポトーシスおよびオートファジーを結果としてもたらす複雑なシグナルネットワークにおけるクロストークを調節することによって、その抗癌効果を促進することもある。
【0147】
A549皮下異種移植片を用いる、非肥満性糖尿病/重症複合免疫不全症マウスにおけるインビボの研究は、30および60mg/kgの化合物1で2数週間経口処置した後に、腫瘍成長の抑制結果を一貫して示した。スプラーグドーリーラットにおける中枢神経作用、インビトロの設定におけるhERGイオンチャネルによる結合活性、ビーグル犬における心血管系効果、およびスプラーグドーリーラットにおける呼吸器系効力研究を含む、安全性薬理試験を、すべて完了し、その結果は、化合物1の特定の安全性への懸念を示さなかった。絶対バイオアベイラビリティ測定、臓器分布、シトクロムP450(CYP)に関する物質代謝、ラット尿における主代謝物、および異種間の代謝産物比較を含む薬物動態(PK)試験を、すべて完了させ、その結果は、速い吸収と、特に肺、心臓、および腎臓における実質的な臓器分布を示し、かつCYPは、化合物1の物質代謝プロファイルに関与していた。
【0148】
予め、7日間の毒性試験を2回、スプラーグドーリーラットおよびビーグル犬の両方において実施し、測定された最大耐量(MTD)は、ラットに対しては100mg/kg/day、イヌに対しては100mg/kg/dayであった。28日間の毒性試験を2回行い、スプラーグドーリーラットおよびビーグル犬に対する無毒性量(NOAEL)を測定した。ラットのNOAELは30mg/kg/dayであり、100mg/kg/dayの高い投与量はそう有毒ではなかった。
【0149】
イヌにおけるNOAELは特定されず(すなわち、緩い便、液状の便、および嘔吐はすべての投与量で観察された);30mg/kg/dayの投与レベルは、忍容性が示され、重篤な毒性が発現しない最大投与量(HNSTD)である。
【0150】
毒物動態評価を、7日間のイヌの試験(100、250、および500mg/kg/dayの単回投与、500mg/kg/dayの3日間の投与)、および上述の2回の28日間の試験(ラット:10、30、および100mg/kg/dayの単回投与、および28日間の投与;犬:10、30、および100mg/kg/dayの単回投与および28日間の投与)で、実施した。化合物1の速い吸収が、0.25~6時間の範囲のピーク時間(Tmax)を有するラットおよびイヌにおいて繰り返し見られた。ラットおよびイヌにおける用量比例性の傾向が、1日の処置の後に多少示された。処置の28日間後、ラットおよびイヌの試験は、用量比例性の観点では一貫しない現象を示し、投与量-曝露の関連性において、1つはその線形より大きく、もう一方はより小さかった。
【0151】
例示的な化合物1の遺伝毒性および繁殖毒性(最大80mg/kg/day)は、エイムズ試験、哺乳動物細胞遺伝子突然変異試験、小核試験、赤血球小核試験、およびスプラーグドーリーラットにおけるインビボの試験を介して、観察されなかった。
【0152】
<実施例3:化合物1の第1相臨床試験>
ヒト初回第1相試験を、MTDを測定するために、かつ従来の処置様式に抵抗性のあるNSCLC患者における、例示的な化合物1のPK、安全性/忍容性、および有効性のプロファイルを評価するために実施した。この非盲検の、非無作為化で、用量漸増な試験は、2013年2月に完了したものであるが、合計13人の患者を登録し;彼らは、7人の男性および6人の女性で、全員アジア人であった。合計5人の患者を、漸増用量設定相(accelerated titration phase)に登録し(50、100、200、300、および450mgの投与量群にそれぞれ患者1人)、8人の患者を標準用量設定相(standard titration phase)に登録した(450mgの投与量群に3人の患者、600mgの投与量群に5人の患者)。
【0153】
用量制限毒性(DLT)は、漸増用量設定相または標準用量設定相の治療企図集団における、いずれの投与量(50、100、200、300、450および600mg)の患者においても報告されなかった。
【0154】
薬物動態的結果によって、化合物1の吸収の速度および範囲が、化合物1の多回投与後に50~600mgの投与範囲を超えて、投与量に比例する様式で増大したことが示された。しかしながら、化合物1の吸収の速度および範囲は、単回投与条件下で、50~600mgの投与範囲を超えて、それぞれ投与量に比例しない様式、および投与量に比例する様式で増大した。単回投与条件下のPKパラメータを、複数回投与条件下のものと比較した場合には、明らかな傾向は観察されなかった。
【0155】
有効性の結果は、処置の終わりにおける腫瘍奏効率が、パープロトコル集団に含まれる(登録された全患者以外の)以下の3人の患者が安定した疾患進行を示したことを表した:1人の患者は200mgの投与量群にあり、および2人の患者は600mgの投与量群にあった(100%)。
【0156】
安全性の結果は、50、100、200、300、450、および600mgの投与レベルで、4週間毎日与えられる例示的な化合物1が、一般的には安全で、良好な忍容性を示すことを示した。投与レベル50、100、200、300、450、および600mgの化合物1は、低い毒性プロファイルを示した。全体として、450および600mgの投与量群におけるそれぞれ2人の患者、すなわち4人の患者が、4つの重篤な有害事象(SAE)を報告した。そのうち、各投与量群からの1人患者が進行性の疾患が原因で亡くなり、試験を中止した(600mgの投与量群の1人の患者は、胸水の有害事象[AE]が原因で中止した)。中止の原因となった死亡、SAE、およびAEのいずれも、試験薬とは関係がなかった。国立癌研究所-有害事象共通用語規準(NCI-CTCAE)、バージョン4.03によって判定されるような、処置で発現したグレード4の有害事象(TEAE)は報告されなかった。
【0157】
毒性グレード3の処置で発現したAEは、2人患者において報告されたが(200mgの投与量群の1人患者は、眩暈を経験し、450mgの投与量群の1人の患者は、食欲減退および脳炎を経験した);全事象は治験薬には無関係であった。
【0158】
全13人(100%)の処置された患者が、処置に関連すると考えられるTEAEを報告した。2人を超える患者において報告された、最も共通して現われるTEAEは、全体的に見て、胃腸障害(12人の患者、92.3%[7人の患者がグレード1で53.8%、5人の患者がグレード2で38.5%])の器官別大分類にあり、優先語で下痢(10人の患者、76.9%[9人の患者がグレード1で69.2%、1人の患者がグレード2で7.7%])、および嘔吐(9人の患者、69.2%[6人の患者がグレード1で46.2%、3人の患者がグレード2で23.1%])、および吐き気(7人の患者、53.8%[6人の患者がグレード1で46.2%、1人の患者がグレード2で7.7%])であった。
【0159】
患者は、450mgの投与量群のグレード1の血尿症の1つの症例を除いて、TEAEとしてのいかなる試験的異常も記録しなかった。腎臓のソノグラムレポート(sonogram report)によって、水腎症ではない左腎における0.47cm~0.50cmの大きさの石が注目された。その事象は、治験薬に無関係であると考えられた。血液学および生化学のパラメータにわずかな増加または減少があったが、いずれも異常な結果とは考えられなかった。
【0160】
尿分析に関して、サイクル1の基線で、4人の患者が異常な尿分析結果を有していた:200および600mgの投与量群のそれぞれ1人の患者、および450mgの投与量群の2人の患者。経過観察において、5人の患者が異常な尿の値を有していた:基線で異常な値を有していた450mgの群の2人の患者、およびより低い投与量レベルの3人の新しい患者(50、100、および300mgの投与量群のそれぞれ1人の患者)。
【0161】
経過観察の訪問では、患者の誰も、バイタルサイン、心電図(ECG)および身体検査パラメータのいずれにおいても、臨床的に著しい変化を有していると報告されなかった。
【0162】
東部共同腫瘍医療グループ(ECOG)スコアは、経過観察訪問においてECOGスコア4(完全に身体的損傷があり、いかなるセルフケアもできない)を有していた患者と、サイクル3の28日目の訪問においてスコア2(歩行でき、全てのセルフケアができるが、いかなる作業活動もできない)を有していた患者の、450mgの群における2人の患者を除く、すべての患者で、すべての時点において1であった。その結果は、試験に登録された患者の中で可能な様々な治療効果を示し、このことが、例示的な化合物1が、後期のNSCLCを有する患者に対して特に効果的であるかどうか、および/または NSCLCに対して他の治療的な利益を予想外に提供できるかどうかを突き止める試験のきっかけとなった。
【0163】
<実施例4:化合物1を用いる、IV期(胸水を含む)非扁平上皮の非小細胞肺癌(NSCLC)の患者における臨床試験>
従来の処置様式に抵抗性のあるNSCLC患者の第1相試験において、50、100、200、300、450、および600mgの投与レベルで、4週間毎日与えられる化合物1は、特定の安全性への懸念またはDLTが試験において特定されなかったので、全般的に安全で、良好な忍容性を示した。加えて、有効性の結果は、処置の終わりにおける腫瘍奏効率が、パープロトコル集団に含まれる満足な結果を有する3人の患者全員の疾患の安定を示したことを表し:1人の患者は投与量200mgの群にあり、2人の患者は投与量600mgの群にあった(100%)。したがって、さらなる臨床開発へのその進展は、より多くのNSCLCの患者において、保証される。
【0164】
<試験の目的>
主目的:2つの手法の抗癌治療に失敗した、IV期(胸水を含む)の非扁平上皮のNSCLCを有する、未選別の、KRAS陽性、およびKRAS陰性の患者における化合物1の活性を評価すること。
【0165】
第2の目的:2つの手法の抗癌治療に失敗した、IV期の(胸水を含む)非扁平上皮のNSCLCの患者における、化合物1の安全性および忍容性、ならびにPKを査定すること。
【0166】
探索的目的:化合物1の曝露と、安全性および有効性評価項目との間の潜在的関連性を探索すること。
【0167】
<全体的な試験設計および計画>
概要:これは、2つの手法の抗癌治療に失敗した、IV期の(胸水を含む)非扁平上皮のNSCLCの、KRAS陽性およびKRAS陰性の患者における、単一群で、非盲検の、第II相試験である。この患者は、2つ以上であるが4つ以下の従来の手法の全身性抗癌治療後の、放射線学的に確認された疾患進行を有する患者として定義される。最高60人のNSCLCの評価可能患者は、化合物1を受けることとなり、そのうち、30人の患者が、KRAS陽性となり、30人の患者がKRAS陰性となる。評価可能患者は、少なくとも1回の化合物1の投与を受けることとなり、有効な基線の腫瘍評価を有することとなる。目標数の評価可能患者が登録されるまで、登録は継続する。
【0168】
書面のインフォームドコンセントを、スクリーニングを開始する前にすべての患者から得なくてはならない。スクリーニング期間は、継続時間で最大42日となる(-42日目から-1日目)。すべてのスクリーニング評価を完了し、適格基準を確認した後、患者は、0日目から12週間(1回の処置サイクル)にわたって、200mgで1日3回(8時間の間隔で、1日3回)受けるか、または疾患進行の文書証拠、承諾しがたい毒性、患者による同意の非遵守または撤回、または治験責任医師が処置を中止することを決定するなど、いずれか早い方まで、化合物1を受けることとなる。試験薬は、8時間の間隔でのむべきである。試験薬投与の時間は、患者の日記に記録するべきである。
【0169】
第1の12週間の処置サイクル後、無進行の患者は、疾患進行の文書証拠、承諾しがたい毒性、患者による同意の非遵守または撤回、または治験責任医師が処置を中止することを決定するなど、いずれか早い方まで、化合物1によるさらなる(12週間)処置サイクル(延長期)を受ける資格があるだろう。治験責任医師は、代替的な処置を開始する前に、試験薬を最後に投与した後から少なくとも7日待つべきである。
【0170】
患者は、第1の12週間の処置サイクルの間は0、14、28、42、56、および84日目、第2、第3、および第4の処置サイクル(延長期)の間は4週間毎に;およびその後の処置サイクル(延長期)の間は12週間毎に、試験訪問に参加することとなる。試験に特異的な手順は、以下のものが挙げられる:身体検査、バイタルサイン、12-誘導ECG、パフォーマンスステータス、臨床検査、AE、併用薬、患者の服薬遵守。評価のスケジュールを表1に示す。
【0171】
試験薬を中止する患者は、試験薬を最後に投与した4週間後、試験終了(EOS)訪問に参加することとなる。患者が試験薬を最後に投与した後に、新規の処置を3週間経つよりも早く開始する場合、新規の処置を開始する前におよびその理由が文書化される前に、EOS訪問を行うべきであり、
【0172】
集中的PKサンプリングを、0および28日目に、段階1に登録されたすべての患者に対して実施することとなる。スパースPKサンプリングを、28、42、および56日目に、段階2に登録されたすべての患者に対して実施することとなる。
【0173】
試験薬を撤回するが、生存ステータスの経過観察されることを承諾するすべての患者は、試験薬の最後の投与の日付からの最高6ヶ月間、または死亡のいずれかが先に起こるまで、3ヶ月毎に電話で連絡をとることによって経過観察されるだろう。
【0174】
腫瘍の評価は、固形癌効果判定基準(RECIST)の基準バージョン1.1を用いて、スクリーニング時、42日目、および84日目で実施されるだろう。腫瘍の評価は、延長期の間は、12週間毎に実施されるだろう。
【0175】
一次の有効性評価項目は、12週間における無進行生存(PFS)率であり、これは、12週間目に生存していて無進行である患者の割合として定義される。患者は、処置の開始から12週目までに、進行性の疾患の証拠がない場合には、無進行となる(RECISTガイドライン、バージョン1.1によって定義される)。
【0176】
試験は、全体(未選別)の集団において35%よりも高い、およびKRAS腫瘍の突然変異陽性および陰性の層内の40%よりも高い、正しいPFS率を検出しようとする2段階設計を用いる。30人の評価可能患者(各層において15人)を、初めに処置し(段階1)、最高60人の評価可能患者へと展開することとなる(段階2)。
【0177】
独立データモニタリング委員会は、試験からの患者の安全性および有効性のデータをモニタリングするように、顧問として行動するだろう。そのメンバーは、関係のある経験、臨床調査およびその治療領域に特異的な問題の理解、ならびに以前のデータモニタリング委員会の経験に基づいて選択されるだろう。各患者から取られる血液サンプルのスケジュールは表2に示される。
【0178】
【表1】
【0179】
ECOG:東部共同腫瘍医療グループ;ECG:心電図;PK:薬物動態;AE:有害事象;EORTC:欧州癌研究治療機関;QLQ:生活の質に関する質問表。
患者が試験に特異的な手順を受ける前に、インフォームドコンセントが得られなければならない。
試験を中止する患者は、試験薬を最後に投与した4週間後、EOS訪問に参加することとなる。患者が試験薬を最後に投与した後に、新規の処置を3週間経つよりも早く開始する場合、EOS訪問を新規の処置を開始する、およびその理由が文書化される前に行うべきである。腫瘍評価は、84日目の訪問で実施された場合、EOS訪問で実施する必要はない。延長期に参加する患者に関して、腫瘍評価は、EOS訪問から8週間以内に評価されている場合、EOS訪問で実施する必要はない。
第1の12週間の処置サイクル後、無進行の患者は、疾患進行の文書証拠、承諾しがたい毒性、患者による同意の非遵守または撤回、または治験責任医師が処置を中止することを決定するなど、いずれか早い方まで、化合物1によるさらなる(12週間)処置サイクル(延長期)を受ける資格があるだろう。治験責任医師は、代替的な処置を開始する前に、試験薬を投与した後から少なくとも7日待つべきである。試験を中止する患者は、試験薬を最後に投与した4週間後に、EOS訪問に参加することとなる。患者は、延長期における第2、第3、および第4の処置サイクルの間は、4週間(±7日)毎に訪問に参加することとなる。第4の処置サイクルの完了後、患者は、12週間(±7日)毎に訪問に参加することとなる。
腫瘍の組織塊または組織スライドは、スクリーニング期間の間に、保管材料または新鮮な生検材料から得られ、患者が登録される前に、腫瘍のKRAS突然変異ステータスが判定されることとなる。患者は地方の研究所からのKRAS検査結果に基づいて登録されることもある。細胞構造が病理学的に調査され、NSCLCに一致する悪性細胞を含むことが報告される場合、胸膜液細胞診を、KRAS突然変異ステータスを判定するために使用してもよい。腫瘍組織は、目的のゲノムマーカーおよびプロテオームマーカーのアレイを試験するためにも使用されるであろう。
体重、身長、および肥満度指数(BMI)は、スクリーニング訪問でのみ測定されるだろう。
尿による妊娠試験は、出産する可能性のある女性のためのスクリーニング訪問の間に実施されるだろう。この試験は、もし地方条例により必要ならば、試験の間に繰り返すことができる。
バイタルサイン(呼吸数、心拍数および血圧、および体温)は、各訪問で実施されるだろう。それらは、患者が5分間静止した後に、座位で得られるだろう。評価の日付および時間を記録するべきである。
血液学的検査、化学検査、および尿検査。すべての試験は中央研究所の施設で実施された。
放射線学的および臨床的な腫瘍の評価は、RECIST基準バージョン1.1を使用して、スクリーニング時、42日目、および84日目で実施されるだろう。スクリーニングの間の評価は、試験薬の服用開始日から14(±7)日以内に実施されなければならない。腫瘍の評価は、延長期の間は、12週間毎に実施されるだろう。
10 全てのスクリーニング手順および検査結果は、患者が試験薬の第1の投与を受ける前に、利用可能であり、審査されなければならない。試験薬は、8時間の間隔でのむべきである。試験薬投与の時間は、患者の日記に記録するべきである。
11 集中的PKサンプリングを、0および28日目に、段階1に登録されたすべての患者に対して実施することとなる。サンプルは、0日目の第1の投与の30分前、およびその0.5、1、2、3、4、および8時間後、ならびに28日目の第1の投与の直前、およびその0.5、1、2、3、4、6、および8時間後にとられることとなる。スパースPKサンプリングを、28、42、および56日目に、段階2に登録されたすべての患者に対して実施することとなる。少なくとも2つのサンプルが、各機会で採取されることとなり、そのうちの1つは、トラフ濃度となるだろう(投与の30分前、および前日の最後の投与のおよそ8時間後)。1人の患者当たりの少なくとも1つのサンプルは、ピーク濃度と一致するように調整されることとなる(投与後のおよそ3時間)。残りは、投与間隔の間の任意の時間にとられてもよい。
12 患者は、インフォームドコンセントの日付から、分解もしくは安定化、NSCLCのための代替的な処置が開始される、試験薬の最後の投与の6ヶ月後、または経過観察の不能のいずれかが先に発生するまで、AEに関して経過観察されなければならない。重症の毒性または試験薬に関する毒性の事象では、分解または安定化まで患者を経過観察することとなる。安全性経過観察データは、EOS訪問後の3ヶ月毎に、電話により連絡をとることよって収集されてもよい。
13 患者が試験薬の第1の投与を受ける前に実施される、0日目の評価。
14 試験薬の使用を止めたが、生存ステータスを経過観察されることを承諾するすべての患者は、試験薬の最後の投与の日付からの最高6ヶ月間、または死亡のいずれかが先に起こるまで、3ヶ月毎に電話で連絡をとることによって経過観察されることとなる。
【0180】
【表2】
【0181】
訪問のためのサンプリングタイミングを予定する際のガイダンスのために提供される;時間窓に従わなければならない。
**サンプルは前の投与のおよそ8時間後にとられるべきである。
***サンプルは、投与間隔の間の任意の時間でとられてもよい。
【0182】
試験の手順
【0183】
<スクリーニング(0日目の最大42日前)>
・試験の性質について説明し、患者に同意説明文書(ICF)を読ませて署名させる。
・患者に患者識別コード(スクリーニング番号)を割り当てる。
・人口統計的特性を得る。
・癌歴を含む病歴および手術歴を記録する。
・癌治療歴を含む薬歴を記録する。
・包含/除外基準に関して患者をスクリーニングする。
・組織試料(腫瘍生検標本または保管されていた腫瘍組織)を得えて、試験登録前にKRAS腫瘍の突然変異ステータスを判定する。患者は地方の研究所からのKRAS検査結果に基づいて登録されることもある。細胞診が病理学的に調査され、NSCLCと一致する悪性細胞を含むことを報告される場合、胸膜液細胞診を、KRAS突然変異ステータスを判定するために使用してもよい。患者からの腫瘍組織は、目的のゲノムマーカーおよびプロテオームマーカーのアレイを評価するためにも使用されることとなる。
・身体検査を実施する。体重、身長、および肥満度指数(BMI)は、スクリーニング訪問でのみ測定されるだろう。
・該当する患者のみに対して尿により妊娠試験を実施する。尿による妊娠試験は、出産する可能性のある女性のためのスクリーニング訪問の間に実施されるだろう。この試験は、もし地方条例により必要ならば、試験の間に繰り返すことができる。
・バイタルサインを得る。患者が5分の間静止していた後、バイタルサイン(呼吸数、心拍数および血圧および体温)は、座位で得られるだろう。評価の日付および時間を記録するべきである。
・ECOGパフォーマンスステータスの評価を実施する。
・12-誘導ECGの診察を実施する。
・臨床検査(血液学的検査、生化学的検査、および尿検査)を実施する。
・腫瘍の評価(放射線学的および臨床的な腫瘍の評価)。スクリーニング訪問時の評価は、試験薬の服用開始日から14(±7)日以内に実施されなければならない。
<訪問1(0日目)>
・併用薬を登録する。
・身体検査を実施する。
・バイタルサインを得る。
・ECOGパフォーマンスステータスの評価を実施する。
・12-誘導ECGの診察を実施する。プロトコル(化合物1)
・臨床検査(血液学的検査、生化学的検査、および尿検査)を実施する。
・試験薬を投薬する。全てのスクリーニング手順、検査結果、および繰り返しの検査結果は、患者が試験薬の第1の投与を受ける前に、利用可能であり、審査されなければならない。
・投与前30分以内に投与前の血液サンプルを採取する(段階1のみ)。
・治験実施施設で、試験薬の第1の投与量を投与し、投与の0.5、1、2、3、4、および8時間後に、PK血液サンプルを採取する(段階1のみ)。
・試験薬の投与時間を文書化する。
・AEを記録し、起こりうる毒性を等級づけする。
・患者の服薬遵守を算出する。
・欧州癌研究治療機関(EORTC)の生活の質に関する質問表(QLQ)を実施する。
<訪問2(14日目±3)>
・併用薬を登録する。
・身体検査を実施する。
・バイタルサインを得る。
・臨床検査(血液学的検査、生化学的検査、および尿検査)を実施する。
・AEを記録し、起こりうる毒性を等級づけする。
・患者の服薬遵守を算出する。
<訪問3(28日目±3)>
・併用薬を登録する。
・身体検査を実施する。
・バイタルサインを得る。
・ECOGパフォーマンスステータスの評価を実施する。
・12-誘導ECGの診察を実施する。
・臨床検査(血液学的検査、生化学的検査、および尿検査)を実施する。
・試験薬を投薬する。
・治験薬管理を実施する。
・投与の30分前に投与前の血液サンプルを採取する(段階1および2;事前の投与のおよそ8時間後)。
・治験実施施設で試験薬を投与し、投与の0.5、1、2、3、4、および8時間後に、PK血液サンプルを採取する(段階1のみ)。段階2のみ:投与の3時間後のPK血液サンプルを採取する。
・試験薬の投与時間を文書化する。
・AEを記録し、起こりうる毒性を等級づけする。
・患者の服薬遵守を算出する。
<9.1.3.5 訪問4(42日目±3)>
・併用薬を登録する。
・身体検査を実施する。
・バイタルサインを得る。
・ECOGパフォーマンスステータスの評価を実施する。
・12-誘導ECGの診察を実施する。
・臨床検査(血液学的検査、生化学的検査、および尿検査)を実施する。
・腫瘍の評価(放射線学的および臨床的な腫瘍の評価)。
・治験薬管理を実施する。
・投与の30分前に投与前の血液サンプルを採取する(段階2のみ;事前の投与のおよそ8時間後)。
・治験実施施設で試験薬を投与し、無作為PK血液サンプルを採取する(段階2のみ)。
・AEを記録し、起こりうる毒性を等級づけする。
・患者の服薬遵守を算出する。
・EORTC QLQを実施する。
<訪問5(56日目±3)>
・併用薬を登録する。
・身体検査を実施する。
・バイタルサインを得る。
・ECOGパフォーマンスステータスの評価を実施する。
・12-誘導ECGの診察を実施する。
・臨床検査(血液学的検査、生化学的検査、および尿検査)を実施する。
・試験薬を投薬する。
・治験薬管理を実施する。
・投与の30分前に投与前の血液サンプルを採取する(段階2のみ;事前の投与のおよそ8時間後)。
・治験実施施設で試験薬を投与し、無作為PK血液サンプルを採取する(段階2のみ)。
・AEを記録し、起こりうる毒性を等級づけする。
・患者の服薬遵守を算出する。
<訪問6(84日目±3)>
・併用薬を登録する。
・身体検査を実施する。
・バイタルサインを得る。
・ECOGパフォーマンスステータスの評価を実施する。
・12-誘導ECGの診察を実施する。
・臨床検査(血液学的検査、生化学的検査、および尿検査)を実施する。
・腫瘍の評価(放射線学的および臨床的な腫瘍の評価)。
・試験薬を投薬する。
・治験薬管理を実施する。
・AEを記録し、起こりうる毒性を等級づけする。
・患者の服薬遵守を算出する。
・EORTC QLQを実施する。
<試験終了(EOS)訪問(±7日)>
患者は、試験薬を最後に投与した4週間後、EOS訪問に参加することとなる。患者が試験薬を最後に投与した後に、新規の処置を3週間経つよりも早く開始する場合、EOS訪問を新規の処置を開始するおよびその理由が文書化される前に行うべきである。
・併用薬を登録する。
・身体検査を実施する。
・バイタルサインを得る。
・ECOGパフォーマンスステータスの評価を実施する。
・12-誘導ECGの診察を実施する。
・臨床検査(血液学的検査、生化学的検査、および尿検査)を実施する。
・腫瘍の評価(放射線学的および臨床的な腫瘍の評価)。腫瘍評価は、84日目の訪問で実施された場合、EOS訪問で実施する必要はない。延長期に参加する患者に関して、腫瘍評価は、EOS訪問から8週間以内に評価されている場合、EOS訪問で実施する必要はない。
・治験薬管理を実施する。
・AEを記録し、起こりうる毒性を等級づけする。安全性経過観察データは、EOS訪問後の3ヶ月毎に、電話により連絡をとることよって収集されてもよい。
・患者の服薬遵守を算出する。
・EORTC QLQを実施する。試験薬を撤回するが、生存ステータスの経過観察されることを承諾するすべての患者は、試験薬の最後の投与の日付からの最高6ヶ月間、または死亡のいずれかが先に起こるまで、3ヶ月毎に電話で連絡をとることによって経過観察されることとなる。
<延長期の訪問(±7日)>
患者は、第2、第3、および第4の処置サイクルの間は、4週間(±7日)毎に訪問に参加することとなる。第4の処置サイクルの完了後、患者は、12週間(±7日)毎に訪問に参加することとなる。
.併用薬を登録する。
.身体検査を実施する。バイタルサインを得る。
.ECOGパフォーマンスステータスの評価を実施する。
.12-誘導ECGの診察を実施する。
.臨床検査(血液学的検査、生化学的検査、および尿検査)を実施する。
.腫瘍の評価(放射線学的および臨床的な腫瘍の評価)。
.試験薬を投薬する。
.治験薬管理を実施する。
.AEを記録し、起こりうる毒性を等級づけする。
.患者の服薬遵守を算出する。
.EORTC QLQを実施する。
【0184】
<単一群、非盲検の第II相試験のための論理的根拠>
これは、2つの手法の抗癌治療に失敗した、IV期の(胸水を含む)非扁平上皮のNSCLCの、KRAS陽性およびKRAS陰性の患者における、単一群で、非盲検の、第II相試験である。この患者は、2つ以上であるが4つ以下の従来の手法の全身性抗癌治療後の、放射線学的に確認された疾患進行を有する患者として定義される。この試験に対する論理的根拠は、より詳細に以下に記載される。
【0185】
2つの手法の抗癌治療に失敗した、IV期の(胸水を含む)非扁平上皮のNSCLCの患者の被験体集団が、この試験のために選択されたが、これは、この集団を処置するという必要性が現在も満たされておらず、そしてヒト初回投与第1相試験の結果は、処置の終わりにおける腫瘍奏効率が、パープロトコルセット(PPS)に含まれる、3人の患者すべて(200mgの投与量群の1人の患者、および600mgの投与量群の2人の患者)の疾患の安定を示したことを表す。PPSは、第1相試験において、適切な画像化の評価(RECIST v.1.1)を用いて、少なくとも3サイクルの処置で完了されたすべての患者として、定義された。50、100、200、300、450、および600mgの投与レベルで、4週間毎日与えられる化合物1は、全般的に安全で、良好な忍容性を示し、特定の安全性への懸念またはDLTは,試験において特定されなかった。
【0186】
前臨床データ(実施例2を参照されたい)は、ことを示唆する。KRAS突然変異の陽性腫瘍を有する患者は、化合物1による治療からのより高い利益を得ることもある。従って、患者はKRAS突然変異のステータスによって階層化されるだろう。
【0187】
非盲検の設計が、この試験に参加するのにふさわしい患者集団における、単一の薬剤としての化合物1を評価に最も適した設計であると考えられたため、選択された。
【0188】
これが、以前に2つの手法の抗癌治療に失敗した患者における化合物1の安全性、忍容性、PK、および有効性を評価するのに最も適していると考えられたので、2段階で単一群の設計を選択した。
【0189】
化合物1は、1日当たり投与量600mgで、この試験において、単一の薬剤として投与されることとなる(200mgを1日3回、8時間の間隔で投与される)。この投与レジメンは、従来の処置様式に抵抗性のあるNSCLC患者に関与する第1相臨床試験からの結果に基づいて選択され、この試験により、最大600mg/日の化合物1の良好な忍容性が報告された。第1の処置サイクル(サイクル1)の1日目の単回投与の0から24時間(AUC0-24)後のまでの血漿中濃度-時間曲線下面積は、50mg投与レベルと比較するとき、100、200、300、450、および600mgの投与レベルにおける、それぞれ18.79%、200.1%、215.16%、265.19%、396.61%だけ増大したが;サイクル1の28日目では、AUC0-24は、100mgの投与レベルにおいて、34.88%減少し、200、300、450、および600mgの投与レベルにおける、それぞれ133.58%、141.87%、680.65%、および562.54%だけ増大した。したがって、AUC0-24は、1日目および28日目の化合物1の投与に対して直線的に比例しなかった。1日目および28日目の、100-300mgの投与量の範囲において、AUC0-24の有意差はなかった。100-300mgの投与量の範囲にわたって最も高いピーク濃度(Cmax)は、28日目の200mgの投与により観察された。200mgの投与量群の1人の患者、および600mgの投与量群の2人の患者は、処置の終わりで疾患の安定を示した。
【0190】
したがって、高い薬物濃度を維持し、かつ化合物1の有効性を高めるために、200mgで1日3回(8時間毎)の条件を、この試験のための投与レジメンとして選んだ。
【0191】
試験設計は、KRAS腫瘍の突然変異の陽性の層および陰性の層の各々内において、40%および35%の12週間でのPFS率が、全体として対象であろうという仮定に基づく。もし12週間でのPFS率が15%未満であれば、さらなる試験は遂行されないだろう。
【0192】
試験薬は、疾患進行、許容できない毒性の発生、患者による同意の非遵守もしくは撤回、または試験薬を止めるという治験責任医師の決定のいずれか早い方まで投与されることとなる。
【0193】
<測定の適切性>
この試験における一次の有効性評価項目は、PFS率であり、12週目に生存していて無進行である患者の割合として定義される。患者は、処置の開始から12週目までに、(RECIST、バージョン1.1による)進行性の疾患の証拠がない場合には、無進行となる。RECISTガイドラインはそれを認識する。事前に指定された時点における無進行の割合は、化合物1などの薬剤の抗腫瘍活性を評価するのに適切であり、ここで生物学的活性は、疾患の安定性へと解釈するのがもっともらしい。
【0194】
腫瘍反応は、放射線学的測定に基づいて、臨床開発において、標準的で十分に認められた有効性評価項目である。試験薬に対する反応は、癌の処置に対する反応を測定するための国際的に標準化され、広範に認められた基準である、RECISTバージョン1.1を使用して、この試験において評価されることとなる。
【0195】
奏効率(ORR)、疾患制御率(DCR)、奏効の期間(DR)、PFS、全生存(OS) 無増悪期間(TTP)の第2の有効性基準はまた、腫瘍学的試験に関する臨床開発、および欧州医薬品庁(EMA)における推薦、ヒト用医薬品委員会(CHMP)のGuideline on the Evaluation of Anticancer Medicinal Products in Man(EMA/CPMP/205/95/Rev.4、2012年)26; および米国(US)食品医薬品局(FDA)のGuidance for Industry on Clinical Trial Endpoints for the Approval of Cancer Drugs and Biologics(US Department of Health and Human Services, May 2007)、に則する十分に認められた有効性評価項目である。
【0196】
この試験における安全性およびPKの終点評価項目は、臨床腫瘍学における標準的で、十分に理解された評価項目である。この試験の補正QT時間(QTc)評価戦略は、ハーモナイゼーション国際会議(ICH)のE14ガイドライン28における推薦に基づき、心臓の安全性情報の収集に対して焦点を置くように立案されている。作用メカニズム、非臨床の毒性試験、または現時点の限定的な臨床的な情報に基づく、心毒性に関する懸念は存在しない。12-誘導ECGは、スクリーニングの間に、処置の間に、および処置訪問の終わりで、ならびに臨床的に示されるように、必要とされる。
【0197】
生活の質は、EORTC QLQ C30(QLQ-C30)、および肺癌の測定標準(QLQ-LC13)を使用して評価されることとなり、これは、肺癌の患者における生活の質(QoL)を評価するための公認の手段である。[00163]EORTC QLQ-C30/EORTC QLQ-LC13は、5つの機能的スケール(身体、役割、情緒、認知、および社会的機能)、3つの症状スケール(疲労、悪心および嘔吐、ならびに疼痛)いくつかの単一の項目、あるいは、特に肺癌のための立案された測定標準などの、世界的な健康状態スケールで構成される。これらのQoL評価手法は、化合物1の副作用、ならびに患者の疾患関連症状への処置の影響を評価するためにこの試験にも含まれている。
【0198】
リスク/ベネフィットの評価および倫理的評価:ベニクスノキタケの市販品(食物サプリメント)による致命的または重度/深刻な薬物有害反応は報告されていない。試験に登録される見込みのない患者は、再発性の/転移性の疾患に関する全身性の抗癌治療の2つの手法(そのうち1つは白金ベースのレジメンであるべきである)後の、確認された疾患進行を有する非扁平上皮のNSCLCの患者である。この試験のために利用される投与量は、控えめで、許容可能と考えられ、かつ標的とされた患者は主に、いくぶん限定的な処置の選択肢しか持たない患者であるので、リスクとベネフィットの評価は正当であると思われる。
【0199】
試験集団の選択
【0200】
包含基準:試験に登録するのにふさわしい患者は、以下の基準をすべて満たさなければならない:1.細胞学的にまたは組織学的に確認された非扁平上皮のIV期のNSCLC(胸水を含む)。2.2つ以上であるが4つ以下の全身性抗癌治療の従来の手法後の疾患進行であると、放射線学的に確認されており、そのうちの1つが、白金ベースのレジメンであるべきであるか、または患者が、承認された処置様式を用いる処置を拒絶したか、または治験責任医師が、患者は他の全身療法に対する候補者ではないと感じている。上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)陽性の突然変異を有する患者は、この試験に登録する前にEGFR-TK阻害剤を用いる処置提示されるべきである。維持療法を用いる、または維持療法用いない合併療法は、全身療法の1つの手法と見なされるだろう。毒性が原因で中止されないのであれば、治療の手法は、少なくとも2回の3-4週間の完全なサイクルを必要し、その場合には、それは治療の1つの手法として見なされるだろう。3.RECISTバージョン1.1による、少なくとも1つの放射線学的に測定可能な標的の病変。4.KRAS腫瘍の突然変異ステータスを判定するのに利用可能な新鮮か保管されている生検組織。5.インフォームドコンセントへの署名時点で少なくとも18歳。6.少なくとも3ヶ月の推定寿命。7.臨床試験の実施に関する基準(GCP)ガイドラインのICH Tripartite Guidelineに一致する書面のインフォームドコンセント。8.試験に特有の処置(特別なスクリーニング試験を含む)が実施される前に、患者または法律上受理可能な代理人が書面のインフォームドコンセントを認めている。9.0、1、または2の東部共同腫瘍医療グループ(ECOG)パフォーマンススコア。プロトコル(化合物1)10.造血成長因子を用いない、ヘモグロビン?9.0g/dL;血小板?100x10/L;ANC?1.5x10/L11.機関の正常上限(ULN)の2倍未満のビリルビンおよびクレアチニン12.アルブミン?2.5mg/dL13.機関の(for the institution)ULNの5倍未満の、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)およびアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)14.機関のULNの1.5倍未満のプロトロンビン時間15.機関の正常範囲内のカリウム、マグネシウム、およびリン(追加は許される)16.試験の間および試験薬の最後の投与後の3ヶ月間に、以下のリストからの2つの医学的に許容され効果的な避妊法(男性および女性の両方にそれぞれに見合った)を使用することをいとわない:
-経口、注射、または埋め込みのホルモンの避妊法の確立された使用。
-子宮内避妊器具または子宮内避妊システムの配置。
-障害式避妊法:殺精子発泡剤/ゲル/フィルム/クリーム/坐薬を備えるコンドームまたは閉塞キャップ(ペッサリー、または避妊用頸部/子宮頸キャップ)。
-男性不妊手術(射精液中の精子の非存在の適切な精管切除後証拠書類を用いる)。
-正しい禁欲:これが患者の好ましい通常の生活様式に一致する場合。17.脱毛症を除く、事前の処置が原因の毒性のグレード1または基線までの回復
【0201】
除外基準
【0202】
以下の基準を1つでも満たす患者は、試験に登録されてはならない:1.治験薬の服用開始日の4週間以内または4半減期未満以内の、化学療法、ホルモン療法、もしくは免疫療法、および/または臨床的に関連すると見なされる先の抗癌治療の毒性の持続2.治験薬の服用開始日前の過去2週間以内の放射線療法3.治験薬の服用開始日の少なくとも4週間以内の、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤またはEGFR阻害剤を用いる以前の処置4.治験薬の服用開始日の14日以内の、CYP2C19、CYP3A4、CYP2C8、およびCYP2E1の強い阻害剤または誘導物質として知られる任意の薬物を用いる処置5.症候性の脳転移;脳転移を処置された患者は、ステロイド治療または抗てんかん治療を必要とすることなく、少なくとも4週間の安定した脳疾患に適格である。6.経口薬を呑み込めない、または下痢を含めた最近の急性胃腸障害、例えば、クローン病、吸収不良、または基線で病因学の有害事象共通用語規準(CTCAE)のグレード2を超える下痢7.過去5年以内に診断された他の悪性腫瘍(病気に効くように処置された、上皮内の子宮頚癌、非黒色腫性の皮膚癌、表面的な膀胱腫瘍Ta[非侵襲性腫瘍]およびTIS[上皮内癌]、または非転移の前立腺癌の1期から2期以外であり、以前に手術または放射線治療で処置され、そして血清前立腺特異抗原は正常な範囲内にある[治験薬の服用開始日前の過去12ヶ月以内に実施された試験])8.任意の重症の活性感染症の患者(すなわち静脈内の抗生物質、抗真菌剤、または抗ウイルス剤を必要としている)9.既知のHIV、活性B型肝炎、または活性C型肝炎の患者10.治験責任医師の見解において、 患者の安全性を損なうか、または治験薬の安全性の評価を妨げるであろう、他のいかなる生命にかかわる病気または臓器系の機能障害を有する患者11.薬物乱用またはアルコール中毒と知られている、または疑われる12.試験の間に2つの医学的に許容され効果的な避妊法(包含基準において明示されたような)を使用する気がない、出産の可能性のある女性、または子供の親となる男性13.妊娠または母乳哺育14.患者がプロトコルに応じることができない15.ニューヨーク心臓協会の機能別分類3を含む、うっ血性心不全、狭心症、心筋梗塞、不整脈が挙げられる、臨床的に深刻で非管理の心臓病の履歴、
【0203】
<患者の処置>
試験薬による処置およびその投与:化合物1は、食事または軽食のおよそ15分後で8時間毎にとるべきであるが、エタノール含有飲料、例えばアルコール飲料を飲んで±1時間以外には摂取してはならない。予定された時間で投与を受けるのを忘れたか、服用できなかった被験体は、できるだけ早くその投与を受けるように指示されるべきである。彼らが、思い出さないか、次の予定された投与量を服用できない場合、予定された投与を受けるべきであり、受け損ねた投与は埋め合わせされることはない。各試験薬の投与の日付および時間は、患者の日記に記録されるべきである。
【0204】
試験薬過剰投与の処置:試験薬過量投与の処置は治験責任医師の判断である。
【0205】
<薬物動態サンプリングの日々における投与>
PKサンプリングが実施される段階1の日、すなわち0および28日目において、患者は、試験施設で食事を取り、その後、完了して15分(±3分)後に化合物1の次の投与を受けることとなる。患者は、27日目において、試験施設における投与の予定された時間のおよそ8時間前に、化合物1の最後の投与を受けるべきである。
【0206】
試験薬は、食事または軽食のおよそ15分後に8時間の間隔で摂取されるべきであるが、エタノール含有飲料、例えばアルコール飲料を飲んで±1時間以内には摂取してはならない。試験薬投与の正確な時間は、患者の日記に記録するべきである。カプセル剤の全ては2~3分以内に呑み込まれなければならない。0と28日目に、患者は、PKのために要求される場合、その施設に試験薬の投与後8時間残ることとなる。
【0207】
PKサンプリングがされる段階2の日、すなわち28、42、および56日目において、患者は、試験施設で食事を取り、その後、完了して15分(±3分)後に化合物1の次の投与を受けるだろう。患者は、27、41、および55日目において、試験施設における投与の予定された時間のおよそ8時間前に、化合物1の最後の投与を受けるべきである。
【0208】
<延長期>
第1の12週間の処置サイクル後、無進行の患者は、延長期において化合物1を用いる処置サイクルをさらに(12週間)受けるのにふさわしい。
【0209】
延長期に参加する患者は、PKサンプルが取られないこと以外は、第1の12週間の処置サイクルのスケジュールに類似するスケジュールに従うこととなる。患者は、第2、第3、および第4の処置サイクルの間は、4週間(±7日)毎に訪問に参加することとなる。第4の処置サイクルの完了後、患者は、12週間(±7日)毎に訪問に参加することとなる。
【0210】
患者は、疾患進行の証拠の文書化、承諾しがたい毒性、患者による同意の非遵守もしくは撤回、または治験責任医師による処置の中止の決定のうち、いずれかが最初に生じるまで、延長期を継続してもよい
【0211】
グレード3または4の毒性が存在している場合、患者の投与量は、以下のような投与量変更および毒性管理要領にしたがって、次点の低い投与量まで低下するだろう。
【0212】
用量の変更
用量変更及び薬物毒性の管理のガイドラインは以下のとおりである:
【0213】
【表3】
【0214】
処置は、試験薬関連の毒性により最大7日間保留される場合がある。処置の中断が7日以上であり、調査者及び医療監視者が治験薬の恒久的停止を必要と考えた場合、患者は治験薬を恒久的に中止される。患者は、サイクルの終了前に処置を再開した場合、そのサイクルの処置の残りを完了しなければならない。
【0215】
患者がグレード3以上のAEを経験している疑いがあると、患者は、アポイントメントのために可能な限り早急に施設に連絡して、未使用の治験薬をその施設に戻さなければならない。適切な処置にもかかわらず症状がグレード≧3のままの場合、処置は、グレード≧3の吐き気、嘔吐、及び下痢にのみ差し控えられる。用量の変更が必要と考えられた場合、未使用の試験薬は回収され、変更された用量に基づいて計算された一定量の試験薬を含む新たなボトルが分配される。十分な試験薬が、用量の変更の日から次の分配訪問までにわたり分配されなければならない。
【0216】
与えられた量は、eCRF及び治験薬管理記録に記録される。患者が未使用の試験薬を戻した時、それらを施設にて計数し、eCRFに記録した。投与の中断の日付及び期間をeCRFに記録する。
【0217】
有効性の評価
第1及び第2の有効性の分析は、医療画像の独立した集中型の評価に基づく。プロセスの詳細な記載は、Independent Review Charterの中で提供される。
【0218】
有効性の変動
【0219】
主なエンドポイント:主なエンドポイントは、12週目に生存し且つ進行が無い患者の割合として定義される、12週目のPFS率である。患者は、処置の開始から12週目までに進行性疾患(RECISTガイドライン、バージョン1.1により定義される)の証拠を有していなければ、進行が無い。
【0220】
腫瘍反応は、RECIST基準のバージョン1.1を使用して第1の処置サイクル中に6週間の間隔で評価される。患者はそれぞれ、以下のカテゴリのうち1つに割り当てられる:1)完全寛解(CR)、2)部分寛解(PR)、3)疾患の安定(SD)、又は4)進行性疾患(PD)。何らかの原因で死亡した、或いは、後のスクリーニング又は12週目の腫瘍評価無しに何らかの理由で研究を中止した患者は、処置に反応しないと考慮される。
【0221】
第2のエンドポイント:第2の有効性のエンドポイントは以下のとおりである:
・その最良の奏効率がRECISTのバージョン1.1に従いCR又はPRの何れかである患者の割合として定義される、客観的反応。最良の奏効率は、1回目の12週間の処置サイクル中に記録された最良の反応である。
・RECISTのバージョン1.1に従い1回目の12週間の処置サイクル中にCR、PR、及びSDを文書化された患者の割合として定義される、疾患制御率。
・腫瘍反応(CR又はPR)の最初の観察の日付と疾患進行又は死亡の日付との間の間隔として定義される、全体的な腫瘍反応の期間。
・試験薬の最初の投与日から、RECISTのバージョン1.1による客観的な腫瘍進行又は何らかの原因による死亡のうち何れかが最初に生じるまでの時間として定義される、進行の無い生存。
・試験薬の最初の投与日から何らかの原因による死亡までの時間として定義される、全生存。
・試験薬の最初の投与日からRECISTのバージョン1.1による客観的な腫瘍進行までの時間として定義される、進行までの時間。
【0222】
患者は結果のエンドポイントを報告した:PROエンドポイントは以下のとおりである:欧州癌研究治療機関のQLQ-C30及びEORTC QLQ-LC13。
【0223】
薬物動態のエンドポイント:1期について、PKエンドポイントは、非区画法によって集中的にサンプリングされたPKプロファイルに対して導き出され、以下を含む:
・Cmax:ピーク濃度
・Ctrough:トラフ血漿濃度
・Tmax:ピーク時間
・AUCτ:8時間の投与間隔にわたる血漿濃度-時間曲線下面積
・T1/2:末端半減期
・Vz/F:排除中の見かけの分布容積
・CL/F:明白な経口クリアランス
・T1/2eff:有効な半減期
【0224】
可能であれば、全ての患者のPKデータを、PopPK法を使用して分析し、化合物1の曝露の事後の推定(即ち、Cmax、Ctrough、及びAUCτ)は、起こり得る曝露-反応の関係の調査のために計算される。
【0225】
腫瘍バイオマーカー:亜群の分析は、腫瘍バイオマーカーの予測値を評価する。
【0226】
有効性評価
腫瘍測定:スクリーニング訪問、訪問4(42)、及び訪問6(84)の時に、RECISTガイドラインのバージョン1.1に従い、コンピューター断層撮影(CT)スキャン又は磁気共鳴画像(MRI)を使用して、腫瘍評価を12週の処置期間中に行う。腫瘍評価は、延長期中に12週ごとに行われる。腫瘍評価は、84日目の訪問時に行われる場合、EOS訪問時に行う必要はない。延長期に関与する患者について、腫瘍評価は、EOS訪問の8週間以内に評価されている場合、EOS訪問時に行う必要はない。好ましいスキャンは、IVコントラストで行われる、胸部、腹部、及び骨盤のCTである。患者が、文書化されたアレルギー又は腎機能障害などの、ヨード造影剤に対する禁忌を有する場合、胸部の非造影CT、及び腹部と骨盤のMRIが許容される(好ましくはガドリニウム造影剤でのMRIであるが、腎機能障害が重症の場合にこれは省略されることもある)。スクリーニング訪問時の画像化評価は、試験薬の最初の投与日の14(±7)日以内に行われなければならない。基線訪問時に使用されるものと同じ評価方法が各腫瘍評価訪問時に使用される。
【0227】
臨床反応-固形腫瘍:臨床反応は、基線及び試験中での標的病変の測定値と数を比較することにより、評価可能な患者においてRECIST基準に従い評価される。
【0228】
腫瘍バイオマーカー:ホルマリン固定/パラフィン包埋(FFPE)腫瘍組織が、腫瘍バイオマーカーの分析のために提出される。次世代配列決定を使用して、KRAS、EGFR、及びALKを含む、腫瘍中で共通して変異させられる236の遺伝子のパネルをスクリーニングする。患者は、試験薬に対する感度/抵抗性の起こり得る差に関して試験するべきKRAS突然変異状態に従い階層化される。加えて、選択されたサンプルはまた、免疫組織化学により判定されるALK及びROS1の状態を有し得る。突然変異アッセイの詳細に関する研究所マニュアル、及び、サンプルの収集、取り扱い、及び輸送に関する指示書を参照する。
【0229】
薬物動態
【0230】
薬物動態サンプリング
【0231】
PKサンプリングを、以下の時点で1期に登録された全ての被験体において0日目と28日目に行なう:
【0232】
・0日目:(1つのサンプルにつきおよそ5mL、合計60mL)最初の投与の30分前、及び0.5、1、2、3、4、6、及び8時間後。
【0233】
・28日目:(1つのサンプルにつきおよそ5mL、合計60mL)28日目の最初の投与の直前、及び0.5、1、2、3、4、6、及び8時間後。
【0234】
まばらなPKサンプリングを、2期に登録された全ての患者において、28、42、及び56日目に行う。少なくとも2つのサンプルを各機会に集め、そのうちの1つは、トラフ濃度である(28、42、56日目の最初の投与の30分前、及び前日の最後の投与のおよそ8時間後)。患者につき少なくとも1つのサンプルは、最大濃度と一致するように時間調整される(最初の投与の3時間後)。残りは、投与間隔中にいつでも摂取されてもよい。
【0235】
各血液サンプルは、化合物1の血漿濃度について分析され、それにより、完全に検証された生物学的分析法(分析法検証報告書及び生物学的分析報告書のコピーは、臨床研究報告書に含まれる)を使用して化合物1の投与後のPKパラメータを判定する。
【0236】
薬物動態サンプリングの手順
【0237】
血液サンプル:静脈血のサンプルを、上記に列挙したサンプル時間にて5mLのナトリウムヘパリンVacutainer(登録商標)チューブの中で得る。収集直後、チューブを優しく8~10回反転させ、抗凝血薬を血液サンプルと混合する。全てのサンプルを処理し、収集後1時間以内に冷凍装置に入れる。3000rpmで10分間、冷凍遠心機(4℃)に収集チューブを入れることにより、血漿分画を分離する。血漿分画をピペットにより引き抜き、2つのポリプロピレン冷凍チューブに分ける(各チューブは、ほぼ等しいアリコートを受ける)。サンプル収集及び冷凍チューブを全て、患者の番号、試験期間、及び収集時間により明白に標識する。標識が冷凍後に剥がれるのを防ぐ方法で、標識を冷凍チューブに固定する。全ての血漿サンプルを、収集後1時間以内に-70℃で冷凍装置に入れる。
【0238】
解析的方法論:治験薬の濃度を、検証された分析法を使用して血漿サンプルから判定する。方法の検証及びサンプル分析の詳細は、最終の臨床研究報告書に含まれる。
【0239】
安全性の評価:安全性は、AE、臨床検査室結果(慣例的な血液学及び生化学)、身体検査、生命徴候、及びECG記録に基づいて評価される。
【0240】
米国東海岸癌臨床試験グループのパフォーマンスステータス
【0241】
患者のパフォーマンスステータスは、訪問2を除く全ての訪問時のECOGパフォーマンスステータスのスコアによってグレード分けされる。ECOGパフォーマンスステータスのスケールの概要は以下のように定義される:
0:正常な活動。完全に活動的であり、制限無しに全ての罹患前のパフォーマンスを実行することが可能。
1:症状はあるが歩行可能。物理的に精力的な活動が制限されているが、歩行可能であり、且つ軽度及び座位での機能(nature)の働き(例えば、軽い家事、事務)を行うことが可能である。
2:<50%の時間寝込んでいる。歩行可能であり且つ全てのセルフケアが可能であるが、あらゆる作業活動を行うことができない。起床時間の50%より長い間、床を離れて動き回っている。
3:>50%の時間寝込んでいる。限定的なセルフケアしか可能でなく、起床時間の50%より長い間、床又は椅子にとどまっている。
4:100%寝たきり。完全に障害者である。あらゆるセルフケアを行うことができない。完全に床又は椅子にとどまっている。
5:死亡。
【0242】
統計的評価
【0243】
サンプルのサイズと検出力(Power):試験は二段階実験計画を使用する。30人の評価可能な患者(各階層で15人)が最初に処置され(1期)、最高60人の評価可能な患者(2期)に拡大される。目標数の評価可能な患者が登録されるまで、登録を継続する。
【0244】
KRAS腫瘍突然変異の陽性及び陰性の層の各々の中で、40%及び35%の全体的な(未選択の)集団の12週間でのPFS率が対象であると仮定されている。更に、12週間のPFS率が15%未満ならば、試験は追跡されない。
【0245】
最初に、15人の評価可能な患者が各層内に登録される(accrued)。2人以上の患者が層内で12週目に生存し且つ進行が無い場合、その後、更に15人の評価可能な患者が、合計30人の評価可能な患者のためにその層に登録される。9人以上の患者が、層における30人の評価可能な患者内で12週目に生存し且つ進行が無い場合、その後、化合物1は、そのコホートにおける更なる試験にふさわしいと考慮される。この設計により、各層内で2.8%の有意水準及び90.5%の検出力が可能になる。
【0246】
層内での仮説検証に加えて、この試験はまた、全体的な(未選択の)集団における12週間でのPFS率を調査するように設計されている。最初の20人の評価可能な患者内で3人未満の患者が、12週目に生存し且つ進行が無く、そして個々の層を継続する基準が満たされていない場合、全ての層の登録(accrual)が中止される。そうでなければ、最高40人の更なる評価可能な患者が参入する(個々の層が閉じられるかどうかに依存する)。最大60人の評価可能な患者のうち、12週目に生存し且つ進行が無い15人以上の患者が、更なる試験を是認する。全体的な設計には、2.8%の有意水準(更なる試験を是認するために12週間において15%のPFS率でレジメンを誤って宣言する可能性)、及び95.6%の検出力(更なる検討を是認するために集団全体において12週間で、35%のPFS率でレジメンを宣言する可能性)がある。
【0247】
統計的方法:分析は全て、詳細な統計分析計画書(SAP)に従って行われる。
【0248】
分析集団
【0249】
第1の分析は、評価可能な集団に行われる。評価可能な集団は、化合物1の投与を少なくとも1回受け且つ有効な基線腫瘍評価を持つ、全ての登録された患者から成る。有効な基線評価は、試験薬の最初の投与日の14(±7)日以内に行われる、読取り可能なスキャン(画像が腫瘍の正確な評価を可能にするのに十分に高品質であるもの)として定義される。有効性の分析のために、目標数の評価可能な患者が登録されるまで、登録を継続する。完全な分析セット(FAS)及びPPSは、支持的な有効性分析のために使用される。FASは、少なくとも1つの事後の基線腫瘍評価を持つ、評価可能な集団の患者から成る。PPSは、主要なプロトコル違反をしていない、FASの患者から成る。
【0250】
PK集団は、評価可能なPKプロファイルを持ち、且つ化合物1のPKに影響を及ぼすプロトコル逸脱がない、1期の患者から成り、該PKプロファイルは、エンドポイントとして明示されたPKパラメータのうち少なくとも1つが推定されるプロファイルとして定義される。
【0251】
PopPK集団は、少なくとも2つの血漿濃度及び十分且つ確実な投薬の履歴を持つ患者から成る。
【0252】
安全性集団は、試験薬の少なくとも1回の投与で処置される患者を全て含む。PRO集団は、0日目、及び試験薬の最初の投与後の少なくとも1つの機会に、QoL質問書を完了した全ての患者から成る。
【0253】
有効性分析:第1の有効性分析を除いて、形式的な統計的試験はない。全てのデータが適切なものとして要約され且つ列挙される。全ての有効性のエンドポイントは、全体的な(未選択の)集団及び層内の両方で評価される。第1及び第2の有効性の分析は、医療画像の独立した集中型の評価に基づく。
【0254】
第1の有効性分析:主なエンドポイントは、12週目に生存し且つ進行が無い患者の割合として定義される、12週目のPFS率である。患者は、処置の開始から12週目までに進行性疾患(RECISTガイドライン、バージョン1.1により定義される)の証拠を有していなければ、進行が無い。何らかの原因で死亡した、或いは、後のスクリーニング又は12週目の腫瘍評価無しに何らかの理由で研究を中止した、評価可能な患者は、処置に反応しないと考慮される。
【0255】
第2の有効性分析:FASとPPSが、第2の有効性分析のために使用される。第2の有効性のエンドポイントは以下を含む:ORR、DCR、DR、PFS、OS、及びTTP。ORRは、最良の奏効率がRECISTのバージョン1.1に従いCR又はPRの何れかである患者の割合として定義される。最良の奏効率は、1回目の12週間の処置サイクル中に記録された最良の反応である。DCRは、RECISTのバージョン1.1に従い1回目の12週間の処置サイクル中にCR、PR、及びSDを文書化された患者の割合として定義される。ORRとDCRの両方については、95%の両側CIが提示される。DRは、腫瘍反応(CR又はPR)の最初の観察日から疾患進行又は死亡の日付までの間隔として定義される。DRは、カプラン-マイヤー法を使用して要約され、適切な場合にはグラフ式に表示される。DRは、腫瘍反応(CR又はPR)を持つ患者の亜群のために計算される。CR又はPRを文書化した患者の数が少なければ、記述的な統計又は列挙のみが提示される。
【0256】
進行の無い生存は、試験薬の最初の投与日から、RECISTのバージョン1.1による客観的な腫瘍進行又は何らかの原因による死亡のうち何れかが最初に生じるまでの時間として定義される。PFSの打ち切りの規則は、SAPに記載される。
【0257】
全生存は、試験薬の最初の投与日から何らかの原因による死亡までの時間として定義される。OSの打ち切りの規則は、SAPに記載される。
【0258】
進行までの時間は、RECISTのバージョン1.1により試験薬の最初の投与日から客観的な腫瘍進行までの時間として定義される。TTPの打ち切りの規則は、SAPに記載される。客観的奏効率及びDCRは、カテゴリ数、割合、及び95%のCIで報告される。PFS、OS、及びTTPは、カプラン-マイヤー評価を使用して評価され、曲線はこれらの評価に基づいて生成される。全ての患者が延長期を完了した時、事象までの時間のエンドポイントが再分析される。
【0259】
薬物動態分析:非区画化PK分析はPK集団について行われ、PK集団は、評価可能なPKプロファイルを持ち、且つ化合物1のPKに影響を及ぼすプロトコル逸脱がない1期の患者から成り、該PKプロファイルは、エンドポイントとして明示されたPKパラメータのうち少なくとも1つが推定されるプロファイルとして定義される。結晶中の化合物1の濃度対時間の曲線が、各患者について構築される。記述的な統計が、全てのPKパラメータのために提示される。
【0260】
以下のPKパラメータが、非区画化方法により推定される:
・Cmax:ピーク濃度
・Ctrough:トラフ血漿濃度
・Tmax:ピーク時間
・AUC:8時間の投与間隔にわたる血漿濃度-時間曲線下面積
・T1/2:末端半減期
・Vz/F:排除中の見かけの分布容積
・CL/F:明白な経口クリアランス
・T1/2eff:有効な半減期
・PK分析の完全な詳細はSAPに提供される。
【0261】
可能であれば、PopPK集団の全ての患者のPKデータは、潜在的な曝露-反応の関係の調査のために計算された化合物1曝露のPopPK方法及び事後推定を使用して、分析される。PopPK分析の完全な詳細は、別個のモデリングシミュレーション分析計画(MSAP)に提供される。
【0262】
中間分析:全体で20人の患者、及び各層内で15人の患者が、12週間での第1のエンドポイント、すなわちPFS率について評価可能な時、安全性と有効性の中間分析を行う。2人未満の患者が層内で生存し且つ進行が無い場合、その層の登録は中止される。そうでなければ、最高15人の更なる評価可能な患者が、合計30人の評価可能な患者のためにその層に登録される。更に、全体の(未選択の)集団の3人未満の患者が、最初の20人の評価可能な患者の中で、生存し且つ進行が無く、そして個々の層を継続する基準が満たされていない場合、全ての層の登録が中止される。そうでなければ、最高40人の更なる評価可能な患者が参入する(個々の層が閉じられるかどうかに依存する)。
【0263】
腫瘍バイオマーカー:腫瘍組織のブロック又はスライドを、スクリーニング期間中にアーカイブの材料又は新鮮な生検から得て、試験に患者を登録する前にKRAS腫瘍突然変異の状態を判定する。患者は、地方の研究所からのKRAS検査結果に基づいて登録されてもよい。胸膜液の細胞学を使用して、細胞学が病理学的に調査され且つNSCLCと一致する悪性細胞を含むと報告された場合にKRAS突然変異の状態を判定してもよい。患者は、試験薬に対する感度/抵抗性の起こり得る差に関して試験するべきKRAS突然変異状態に従い階層化される。KRASおよび他の腫瘍バイオマーカーを亜群分析に使用して、化合物1から利益を得る患者の分子シグネチャを判定する。その効果のために、患者の腫瘍組織を使用して、対象のゲノム及びプロテオミクスマーカーのアレイを評価する。
【0264】
試験結果:23人の被験体が登録され、安全性集団の基準を満たしている。22人の被験体は、独立的な評価に基づいて評価可能な集団の基準を満たした。18人の被験体は、評価可能な集団の4人の被験体が事後の基線腫瘍評価を有していない場合に、完全な分析セットの基準を満たした。20人の被験体のうち4人は、化合物1の摂取の12週間後に生存し且つ進行が無い。
【0265】
驚くことに、KRAS突然変異患者において、12週間での患者の腫瘍進行の無い割合又は生存の割合は、3/14であったことが分かった。この試験の患者は全て、第2線の抗癌治療に失敗した、4期(胸膜滲出を含む)の非鱗状肺非小細胞癌(NSCLC)の患者であることに注意されたい。
【0266】
化合物1は、肺に関連する部位の標的及び非標的病変について5/11の有効性を示した。ラットにおける化合物1の組織分布に関する以前の試験は、最高の化合物1の蓄積が肺組織に見出されたことを示した。この予備的な第2相の結果は、肺組織における化合物1の有効性と濃度との正の相関を示す。
【0267】
故に予想外にも、NSCLC患者における化合物1の予備的な臨床結果に従い、化合物1は、4期のNSCLC患者、具体的にはKRAS突然変異を持つ患者のための治療上の利益を提供する。
【0268】
実施例5:経口製剤
経口送達のための医薬組成物を調製するために、200mgの典型的な化合物1を200mgのトウモロコシ油と混合した。混合物を、経口投与に適した、カプセルでの経口投薬ユニットに組み込んだ。
【0269】
幾つかの例において、本明細書に記載される化合物200mgを、適当量のデンプンと混合する。混合物を、経口投与に適した、例えばハードゼラチンカプセルなどの経口投薬ユニットに組み込む。
【0270】
本発明の好ましい実施形態が本明細書中で示され且つ記載されてきたが、このような実施形態はほんの一例として提供されるものであることは、当業者に明らかであろう。
多数の変形、変更、及び置き換えは、本発明から逸脱することなく、当業者によって現在想到されるものである。本明細書に記載される本発明の実施形態の様々な代案が、本発明の実施において利用されるかもしれないことを理解されたい。以下の特許請求の範囲は本発明の範囲を定義するものであり、この特許請求の範囲及びその同等物の範囲内の方法及び構造は、それにより包含されることが、意図されている。