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特許7545170アクチュエータを使用する眼に安全な長距離LIDARシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】アクチュエータを使用する眼に安全な長距離LIDARシステム
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/484 20060101AFI20240828BHJP
   G01S 7/481 20060101ALI20240828BHJP
【FI】
G01S7/484
G01S7/481 A
【請求項の数】 32
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023039330
(22)【出願日】2023-03-14
(62)【分割の表示】P 2021570369の分割
【原出願日】2020-05-19
(65)【公開番号】P2023072033
(43)【公開日】2023-05-23
【審査請求日】2023-05-18
(31)【優先権主張番号】62/854,782
(32)【優先日】2019-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518370091
【氏名又は名称】オプシス テック リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】マーク ジェイ. ドノバン
(72)【発明者】
【氏名】ラリー ファビニー
【審査官】藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-214564(JP,A)
【文献】特開2015-129734(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0182789(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0058923(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0350983(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48- 7/51
G01S 17/00-17/95
G01C 3/00- 3/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光検出および測距(LIDAR)システムであって、
a)複数のレーザであって、前記複数のレーザの各々は、前記複数のレーザを一度に発射することが、全LIDARシステムFOVを網羅する光学ビームを生み出さないように、通電されると、視野(FOV)を有する光学ビームを発生させる、複数のレーザと、
b)アレイ内に形成され、前記複数のレーザによって発生させられる光学ビームの光学経路内に位置付けられる複数の検出器であって、前記複数のレーザによって発生させられる前記複数の光学ビームのうちの1つのFOVと前記複数のレーザによって発生させられる前記複数の光学ビームのうちの別の1つのFOVとが、前記複数の検出器上に結像されるときに光学ビーム間に間隙をもたらす、複数の検出器と、
c)レンズシステムであって、前記レンズシステムは、前記複数のレーザによって発生させられる前記光学ビームが前記複数の検出器によって受信される前に前記レンズシステムによって受信されるように、前記複数のレーザによって発生させられる前記光学ビームの光学経路内に位置付けられ、前記レンズシステムは、前記複数のレーザによって発生させられる前記光学ビームをコリメートし、投影する、レンズシステムと、
d)前記複数のレーザおよび前記レンズシステムのうちの少なくとも一方に結合されるアクチュエータであって、前記複数のレーザによって発生させられる前記光学ビームの前記FOVと前記検出器の前記FOVとの間の相対運動を引き起こすように、前記レンズシステムの光軸に対して直交する方向への前記複数のレーザと前記レンズシステムとの間の相対運動を引き起こす、アクチュエータと、
e)前記アクチュエータの入力に接続される出力と、前記複数のレーザの入力に接続される出力とを有するコントローラであって、前記コントローラは、前記複数のレーザの発射パターンと前記アクチュエータの相対運動とが、全LIDARシステムFOVを網羅する光学ビームを生み出すように、前記発射パターンと前記アクチュエータの前記相対運動とを制御するように構成される、コントローラと
を備える、LIDARシステム。
【請求項2】
前記複数のレーザのうちの少なくともいくつかは、垂直共振器面発光レーザである、請求項1に記載のLIDARシステム。
【請求項3】
前記複数のレーザのうちの少なくともいくつかは、2次元モノリシック垂直共振器面発光レーザを備える、請求項1に記載のLIDARシステム。
【請求項4】
前記複数のレーザは、前記複数のレーザのそれぞれのFOV内でクラス1の眼の安全性を維持するように構成される、請求項1に記載のLIDARシステム。
【請求項5】
前記コントローラはさらに、レーザを個々に制御するように構成される、請求項1に記載のLIDARシステム。
【請求項6】
前記複数の検出器のうちの少なくともいくつかは、単一光子アバランシェダイオード(SPAD)検出器を備える、請求項1に記載のLIDARシステム。
【請求項7】
前記複数の検出器のうちの少なくともいくつかは、シリコン光電子増倍管(SiPM)検出器を備える、請求項1に記載のLIDARシステム。
【請求項8】
前記アクチュエータは、撓曲ベースのアクチュエータを備える、請求項1に記載のLIDARシステム。
【請求項9】
前記アクチュエータは、音声コイルを備える、請求項1に記載のLIDARシステム。
【請求項10】
前記アクチュエータは、圧電トランスレータを備える、請求項1に記載のLIDARシステム。
【請求項11】
前記アクチュエータは、電気機械デバイスを備える、請求項1に記載のLIDARシステム。
【請求項12】
前記アクチュエータは、前記複数の光学ビームが2次元パターンで移動するように、前記複数のレーザと前記レンズシステムとの間の相対運動を引き起こすように構成される、請求項1に記載のLIDARシステム。
【請求項13】
前記2次元パターンは、長方形パターンを含む、請求項12に記載のLIDARシステム。
【請求項14】
前記アクチュエータは、前記複数のレーザによって発生させられる前記光学ビームの前記FOVと前記検出器の前記FOVとの間の相対運動が前記LIDARシステムの角度分解能を変化させるように構成される、請求項1に記載のLIDARシステム。
【請求項15】
前記アクチュエータは、前記複数のレーザによって発生させられる前記光学ビームの前記FOVと前記検出器の前記FOVとの間の相対運動が、レーザパルスが発信されている期間に実質的にゼロであるように構成される、請求項1に記載のLIDARシステム。
【請求項16】
前記コントローラはさらに、前記複数の検出器のうちの少なくともいくつかの複数の出力に電気的に接続される複数の入力を備え、前記コントローラは、監視されるべき特定の検出器を選択するように構成されている、請求項1に記載のLIDARシステム。
【請求項17】
前記複数のレーザの各々は、アレイ内の各レーザエミッタが特定の投影角に対応するように構成される、請求項1に記載のLIDARシステム。
【請求項18】
前記複数の検出器は、前記複数のレーザによって発生させられる前記複数の光学ビームのうちの少なくとも1つのFOVが、前記複数の検出器のうちの少なくとも2つのFOVに重複するように構成される、請求項1に記載のLIDARシステム。
【請求項19】
前記複数のレーザは、レーザアレイを備える、請求項1に記載のLIDARシステム。
【請求項20】
前記複数のレーザによって発生させられる前記複数の光学ビームのうちの1つの前記FOVと前記複数のレーザによって発生させられる前記複数の光学ビームのうちの別の1つの前記FOVとが、前記複数の検出器上に結像されるときに光学ビーム間に前記間隙をもたらし、前記複数の検出器上に結像される光学ビームのアレイを生み出す、請求項19に記載のLIDARシステム。
【請求項21】
前記相対運動の範囲は、任意の2つの光学ビーム間のピッチの半分だけ、前記複数のレーザによって発生させられる前記複数の光学ビームのうちの1つの前記FOVを偏移させることと公称上同等である、請求項20に記載のLIDARシステム。
【請求項22】
前記複数のレーザによって発生させられる前記光学ビームの前記FOVと前記検出器の前記FOVとの間の前記相対運動は、長方形パターンを横断する、請求項19に記載のLIDARシステム。
【請求項23】
前記複数のレーザの前記発射パターンと、前記レンズシステムに対して前記複数のレーザを移動させることとが、レーザパルスの最中に移動しない光学ビームを生み出すように、前記発射パターンと、前記レンズシステムに対して前記複数のレーザシステムを移動させることとを制御することをさらに備える、請求項19に記載のLIDARシステム。
【請求項24】
前記コントローラはさらに、前記複数のレーザの前記発射パターンと前記アクチュエータの前記相対運動とが、光学ビームの運動がレーザパルスの最中に生み出されることを引き起こさないように、前記発射パターンと前記アクチュエータの前記相対運動とを制御するように構成される、請求項1に記載のLIDARシステム。
【請求項25】
光検出および測距(LIDAR)の方法であって、
a)複数のレーザのうちの選択されたものの各々が視野(FOV)を有する光学ビームを発生させるように、および、前記複数のレーザを一度に発射することが、全LIDARシステムFOVを網羅する光学ビームを生み出さないように、前記複数のレーザのうちの前記選択されたものに通電することと、
b)レンズシステムを用いて、前記複数のレーザのうちの前記選択されたものによって発生させられる前記光学ビームをコリメートし、複数の検出器上に投影することであって、前記複数のレーザによって発生させられる前記複数の光学ビームのうちの1つのFOVと前記複数のレーザによって発生させられる前記複数の光学ビームのうちの別の1つのFOVとが、前記複数の検出器上に結像されるときに光学ビーム間に間隙をもたらす、ことと、
c)前記レンズシステムに対して前記複数のレーザを移動させ、それによって、前記複数のレーザによって発生させられる前記光学ビームの前記FOVと前記複数の検出器の前記FOVとの間の相対運動を引き起こすことと、
d)前記複数のレーザの射パターンと、前記レンズシステムに対して前記複数のレーザを移動させることが、全LIDARシステムFOVを網羅する光学ビームを生み出すように、前記発射パターンと、前記レンズシステムに対して前記複数のレーザを移動させることとを制御することと、
e)前記複数のレーザのうちの択されたものによって発生させられる前記複数の光学ビームのうちの少なくとも1つのFOV内で、前記複数の検出器のうちの前記選択されたものを監視することと
を含む、方法。
【請求項26】
前記複数のレーザのうちの選択されたものに通電することは、所定の光出力レベルが任意の個々の光学ビームFOV内で超過されないように、レーザのパターンを発射することを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記複数のレーザのうちの選択されたものに通電することは、クラス1の眼の安全性の限界が任意の個々の光学ビームFOV内で超過されないように、レーザのパターンを発射することを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記複数のレーザのうちの選択されたものに通電することは、所定の光出力レベルが任意の重複する光学ビームFOV内で超過されないように、レーザのパターンを発射することを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記複数のレーザのうちの選択されたものに通電することは、クラス1の眼の安全性の限界が任意の重複する光学ビームFOV内で超過されないように、レーザのパターンを発射することを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
前記複数のレーザと前記レンズシステムとの間の前記相対運動は、前記レンズシステムの光軸に対して直交する方向にある、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
前記相対運動は、前記複数のレーザのうちの少なくともいくつかのエミッタ間の物理的距離の約半分である、請求項25に記載の方法。
【請求項32】
前記複数のレーザと前記レンズシステムとの相対運動は、レーザパルスが発信される時間の間に生じない、請求項25に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本明細書において使用される節の見出しは、編成目的のためにすぎず、本願に説明される主題をいかようにも限定するものとして解釈されるべきではない。
【0002】
関連出願の相互参照
本願は、2019年5月30日に出願され「Eye-Safe Long-Range
LIDAR System Using Actuator」と題された米国仮特許出願第62/854,782号の非仮出願である。米国仮特許出願第62/854,782号の全内容は、参照することによって本明細書に援用される。
【0003】
導入
自律型自動車、自動運転型自動車、および半自律型自動車は、周囲の物体の検出および位置特定のためのレーダ、画像認識カメラ、およびソナー等、異なるセンサおよび技術の組み合わせを使用する。これらのセンサは、衝突警報、自動緊急ブレーキング、車線逸脱警報、車線維持支援、アダプティブクルーズコントロール、およびパイロット運転を含む、運転者の安全性における多数の改良を可能にする。これらのセンサ技術の中で、光検出および測距(LIDAR)システムは、重要となる役割を担い、周囲の環境のリアルタイムの高分解能3Dマッピングを可能にする。LIDARシステムが、広く大量に展開されるために、それらは、低コストおよび信頼性の両方、かつ物理的に小型である必要がある。
【0004】
LIDARシステムが広く入手可能な状態になり、市販価格が低下するにつれて、それらはまた、セキュリティ監視、産業用ロボット、およびドローン等の多くの他の用途においても展開され始めるであろう。これらの他の用途および自律車両空間自体内の用途要件が、広く変動しつつある。高速でナビゲートすることができる自律型自動車に関して要求される最大距離、角度分解能、およびフレームレートが、建物の内側において移動する産業用ロボットに関する要件を実質的に超過し得る。そのような場合には、LIDARシステムのコストおよび性能が、用途の仕様との最良の合致を提供するように最適化される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本教示は、物体までの距離(範囲)を測定するためにレーザ光を使用する遠隔感知方法である光検出および測距(LIDAR)に関する。自律車両は、LIDARシステムを使用し、高分解能を有する周囲環境の非常に正確な3Dマップを発生させる。本明細書に説明されるシステムおよび方法は、高レベルの信頼性で、また、長い測定範囲および低コストも維持しながら、パルス飛行時間(TOF)LIDARシステムを提供することを対象とする。本教示の一側面は、コストに関するLIDARシステム全体の最適化に焦点を当てらる一方、小型の物理的サイズにおいて依然として優れた信頼性および性能を提供する。
【0006】
パルスTOF LIDARを提供する本明細書に説明されるシステムおよび方法はまた、クラス1の眼の安全性も維持するように構成される。クラス1の眼の安全性評価は、システムが通常使用の全ての条件下で安全であることを意味する。クラス1の眼の安全性を維持するために、レーザ光エネルギーまたはレーザ光出力は、米国および国際安全性規格によって定義されるような最大許容露光量(MPE)レベルを超過することはできない。しかしながら、LIDARシステムの測定範囲は、最大発信光パルスエネルギーまたは出力レベルに著しく依存する。したがって、自動車用LIDARシステムが、実行可能である限り、意図的にクラス1のMPE限界に近接して動作することが望ましい。
【0007】
同一波長で動作する全てのLIDARシステムが同一のMPE限界を受けるであろうことを前提として、MPE出力限界の近くの出力レベルにおいて動作する別のLIDARシステムに対する1つのLIDARシステムのための範囲のさらなる改良が、光学システムの側面を革新することによって生じなければならない。本教示の一側面は、全てのエネルギーが小さいFOV内に発信される非常にコリメートされたレーザビームを使用するLIDARシステムである。そのような構成は、同一の量のレーザ光がより広いFOVにわたって分散されるシステムと比較して、比較的長い測定範囲を提供する。すなわち、同様に小さい視野(FOV)にわたる測定を可能にする受信機設計と組み合わせて非常にコリメートされたレーザビームを使用することが、測距能力を改良する反射信号出力と背景の光レベルとの望ましい比率をもたらす。
【0008】
公知のLIDARシステムの1つタイプは、広いFOVにわたってレーザ光を放出する放出源を採用する、いわゆるフラッシュLIDARシステムである。いくつかのフラッシュLIDARシステムはまた、可動部品を有しないソリッドステートでもある一方、他のフラッシュLIDARシステムは、一方向に走査するミラーを使用し、増分的に全視野を掃引する「線」を照明する。可動部品を有しないソリッドステートフラッシュLIDARシステムは、単一の照明事象によって場面全体を照明しなければならない。しかし、クラス1の眼の安全性のMPE限界において動作するLIDARシステムに関して、ソリッドステートフラッシュLIDARによって照明される広いFOVは、放出源からの光が非常にコリメートされるシステムと比較して、測定範囲を有意に限定する。
【0009】
LIDARシステム内の測定値または測定点が、標的範囲において特定の照明によって生み出された特定の検出された信号を処理することによって生み出されることを理解されたい。TOFは、この特定の検出された信号に基づいて計算される。測定点に関する特定の検出された信号は、システムが本明細書においてさらに説明されるように制御される方法に応じて、単一の検出器または複数の検出器によって発生させられることができる。また、測定点に関する特定の検出された信号は、システムが制御される方法に応じて、単一のレーザまたは複数のレーザによっても発生させられることができる。
【0010】
本教示によるいくつかのパルスTOF LIDARシステムは、クラス1の眼の安全性に関するMPE限界の光出力/エネルギー、またはそれをわずかに下回る光出力/エネルギーを有するコリメート発信器レーザビームを使用し、従来のフラッシュLIDARシステムと比較して有意な範囲増加を提供する。加えて、本教示によるいくつかのパルスTOF LIDARシステムは、複数のレーザパルスのパルス平均化および/またはパルスヒストグラム化を使用し、信号対雑音比(SNR)を改良し、これはさらに測距を改良する。これらのLIDARシステムは、60Hzを優に上回り、さらに数kHzまでの、非常に高い単一のパルスフレームレートを採用し、複数のパルスの平均化を可能にする。
【0011】
自動車用LIDARシステムの1つの重要な性能目標は、光学システムの角度分解能である。空間内の別個の物体を明確に定義すること、および/または画像分析を通して物体識別を実施することが可能であるために、高角度分解能が自動車用LIDARシステムに関して要求される。現在、自動車用LIDARシステムは、約0.2°未満である角度分解能を要求する。これらのシステムは、達成可能である場合、さらにより高い解像度から恩恵を得るであろう。
【0012】
さらに、特に長い距離においては、測定点間の占有面積内に、いかなる「間隙」も存在するべきではない。そのような間隙が存在するべきではない理由を例証するために、200メートル測距の実践的使用状況を検討する。200メートルにおける0.2°の角度は、0.7メートルの側方距離に対応する。典型的な人物は、幅がおよそ0.15メートルであるため、分解能が0.2°であり200メートルにおけるコリメートレーザビーム直径が0.7メートルより小さい場合、LIDARシステムは、200メートルの範囲において人物の存在を完全に逸することが可能性として考えられ得る。
【0013】
信頼性もまた、自律車両のために設計されるLIDARシステムの重要な側面である。動作環境は、自動車用LIDARシステムにとって、特に厄介である。LIDARセンサの故障は、衝突をもたらし得、また、車両の動作も妨げ得る。可動部品を有しないLIDARシステムは、概して、回転部品または大規模な走査ミラーを使用するLIDARシステムと比較して、より信頼性がある。可動部品は、機械的摩耗を受けやすく、限定された寿命時間を有する。本教示のLIDARシステムは、運動を含むが、モータまたは他の大規模な走査ミラーと同程度までの摩耗を受けにくい「摩擦のない」機構を優先的に使用する。
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
光検出および測距(LIDAR)システムであって、
a)複数のレーザであって、前記複数のレーザの各々は、通電されると、視野(FOV)を有する光学ビームを発生させる、複数のレーザと、
b)アレイ内に形成され、前記複数のレーザによって発生させられる光学ビームの光学経路内に位置付けられる複数の検出器であって、前記複数のレーザによって発生させられる前記複数の光学ビームのうちの少なくとも1つのFOVが、前記複数の検出器のうちの少なくとも2つのFOVに重複する、複数の検出器と、
c)前記複数の光学検出器の前に、前記複数のレーザによって発生させられる前記光学ビームの光学経路内に位置付けられるレンズシステムであって、前記複数のレーザによって発生させられる前記光学ビームをコリメートし、投影する、レンズシステムと、
d)前記複数のレーザおよび前記レンズシステムのうちの少なくとも一方に結合されるアクチュエータであって、前記複数のレーザによって発生させられる前記光学ビームの前記FOVと前記検出器の前記FOVとの間の相対運動を引き起こすように、前記レンズシステムの光軸に対して直交する方向への前記複数のレーザと前記レンズシステムとの間の相対運動を引き起こす、アクチュエータと
を備える、LIDARシステム。
(項目2)
前記複数のレーザのうちの少なくともいくつかは、垂直共振器面発光レーザである、項目1に記載のLIDARシステム。
(項目3)
前記複数のレーザのうちの少なくともいくつかは、2次元モノリシック垂直共振器面発光レーザを備える、項目1に記載のLIDARシステム。
(項目4)
前記複数のレーザは、前記複数のレーザのそれぞれのFOV内でクラス1の眼の安全性を維持するように構成される、項目1に記載のLIDARシステム。
(項目5)
前記複数のレーザの少なくともいくつかは、マトリクスアドレス指定可能なコントローラを用いて通電されるように構成される、項目1に記載のLIDARシステム。
(項目6)
前記複数の検出器のうちの少なくともいくつかは、単一光子アバランシェダイオード(SPAD)検出器を備える、項目1に記載のLIDARシステム。
(項目7)
前記複数の検出器のうちの少なくともいくつかは、シリコン光電子増倍管(SiPM)検出器を備える、項目1に記載のLIDARシステム。
(項目8)
前記アクチュエータは、撓曲ベースのアクチュエータを備える、項目1に記載のLIDARシステム。
(項目9)
前記アクチュエータは、音声コイルを備える、項目1に記載のLIDARシステム。
(項目10)
前記アクチュエータは、圧電トランスレータを備える、項目1に記載のLIDARシステム。
(項目11)
前記アクチュエータは、形状記憶トランスレータを備える、項目1に記載のLIDARシステム。
(項目12)
前記アクチュエータは、前記複数の光学ビームが2次元パターンで移動するように、前記複数のレーザと前記レンズシステムとの間の相対運動を引き起こすように構成される、項目1に記載のLIDARシステム。
(項目13)
前記2次元パターンは、長方形パターンを含む、項目12に記載のLIDARシステム。
(項目14)
前記アクチュエータは、前記複数のレーザによって発生させられる光学ビームの前記FOVと前記検出器の前記FOVとの間の相対運動が前記LIDARシステムの角度分解能を変化させるように構成される、項目1に記載のLIDARシステム。
(項目15)
前記アクチュエータは、前記複数のレーザによって発生させられる光学ビームの前記FOVと前記検出器の前記FOVとの間の相対運動が、前記複数のレーザによって発生させられる前記光学ビームの重複するFOVが全LIDARシステムFOVを網羅するように選定されるように構成される、項目1に記載のLIDARシステム。
(項目16)
前記アクチュエータは、前記複数のレーザによって発生させられる光学ビームの前記FOVと前記検出器の前記FOVとの間の相対運動が、レーザパルスが発信されている期間に実質的にゼロであるように構成される、項目1に記載のLIDARシステム。
(項目17)
前記複数のレーザのうちの少なくともいくつかの入力に電気的に接続される複数の出力を有するコントローラをさらに備え、前記コントローラは、通電されるべき前記複数のレーザ内の特定のレーザを選択する、項目1に記載のLIDARシステム。
(項目18)
前記コントローラはさらに、前記複数の検出器のうちの少なくともいくつかの複数の出力に電気的に接続される複数の入力を備え、前記コントローラは、監視されるべき特定の検出器を選択するように構成されている、項目17に記載のLIDARシステム。
(項目19)
光検出および測距(LIDAR)の方法であって、
a)複数のレーザのうちの選択されたものの各々が視野(FOV)を有する光学ビームを発生させるように、前記複数のレーザのうちの前記選択されたものに通電することと、
b)レンズシステムを伴う前記複数のレーザのうちの前記選択されたものによって発生させられる前記光学ビームをコリメートし、複数の検出器上に投影することであって、前記複数のレーザによって発生させられる前記複数の光学ビームのうちの少なくとも1つのFOVが、前記複数の検出器のうちの少なくとも2つのFOVに重複する、ことと、
c)前記レンズシステムに対して前記複数のレーザを移動させ、それによって、前記複数のレーザによって発生させられる前記光学ビームの前記FOVと前記複数の検出器の前記FOVとの間の相対運動を引き起こすことと、
d)前記複数のレーザのうちの前記選択されたものによって発生させられる前記複数の光学ビームのうちの少なくとも1つのFOV内で、前記複数の検出器のうちの選択されたものを監視することと
を含む、方法。
(項目20)
前記複数のレーザのうちの選択されたものに通電することは、所定の光出力レベルが任意の個々の光学ビームFOV内で超過されないように、レーザのパターンを発射することを含む、項目19に記載の方法。
(項目21)
前記複数のレーザのうちの選択されたものに通電することは、クラス1の眼の安全性の限界が任意の個々の光学ビームFOV内で超過されないように、レーザのパターンを発射することを含む、項目19に記載の方法。
(項目22)
前記複数のレーザのうちの選択されたものに通電することは、所定の光出力レベルが任意の重複する光学ビームFOV内で超過されないように、レーザのパターンを発射することを含む、項目19に記載の方法。
(項目23)
前記複数のレーザのうちの選択されたものに通電することは、クラス1の眼の安全性の限界が任意の重複する光学ビームFOV内で超過されないように、レーザのパターンを発射することを含む、項目19に記載の方法。
(項目24)
前記複数のレーザと前記レンズシステムとの間の前記相対運動は、前記レンズシステムの光軸に対して直交する方向にある、項目19に記載の方法。
(項目25)
前記相対運動は、前記複数のレーザのうちの少なくともいくつかのエミッタ間の物理的距離の約半分である、項目19に記載の方法。
(項目26)
前記複数のレーザと前記レンズシステムとの相対運動は、レーザパルスが発信される時間の間に生じない、項目19に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0014】
好ましい例示的実施形態によると、本教示は、そのさらなる利点とともに、付随の図面と併せて、以下の詳細な説明においてより具体的に説明される。当業者は、下記に説明される図面が、例証の目的のためにすぎないことを理解するであろう。図面は、必ずしも縮尺通りではなく、代わりに、概して、本教示の原理を図示することに重点が置かれている。図面は、本出願人の教示の範囲をいかようにも限定することを意図していない。
【0015】
図1A図1Aは、公知のソリッドステートLIDARシステムの概略図を図示する。
【0016】
図1B図1Bは、図1AのLIDARシステムのシステム視野(FOV)の2次元投影を図示する。
【0017】
図2A図2Aは、各エミッタが本教示のLIDAR発信器のいくつかの実施形態において使用されることができる単一の大開口に対応する、256個の別個のレーザエミッタを伴う2DモノリシックVCSELアレイの概略図を図示する。
【0018】
図2B図2Bは、各エミッタが本教示によるLIDAR発信器内で使用されることができる9個のサブ開口を有する、256個の別個のレーザエミッタを伴う2DモノリシックVCSELアレイの概略図を図示する。
【0019】
図3A図3Aは、16個のレーザエミッタビームの発散が検出器アレイ上に結像されるときにビーム間に間隙をもたらす、本教示によるLIDARシステムのある実施形態の動作のためのLIDARシステムFOVの2次元投影を図示する。
【0020】
図3B図3Bは、個々のレーザエミッタビームの発散が図3Aに示されるものと同一であるが、検出器アレイ上に結像されるときにビーム間のいかなる間隙も排除するためにレーザエミッタの数が64まで増加させられている、LIDARシステムのためのLIDARシステムFOVの2次元投影を図示する。
【0021】
図4図4は、アレイ内の各レーザエミッタが特定の投影角に対応する、本教示の発信器のある実施形態の概略図を図示する。
【0022】
図5図5は、個々のレーザエミッタビームの発散が、図3Aに関連して説明されるシステムと同一であり、レンズシステムとレーザアレイとの相対運動が、示されるようなパターンで走査するために使用される、本教示によるLIDARシステムのある実施形態のLIDARシステムFOVの2次元投影を図示する。
【0023】
図6A図6Aは、2つの物理的に別個の発信器を使用する、本教示によるLIDARシステムのある実施形態を図示する。
【0024】
図6B図6Bは、2つの発信器内のレンズシステムとアレイとの1つの相対位置における、図6AのLIDARシステムのある実施形態のLIDARシステムFOVの2次元投影を図示する。
【0025】
図6C図6Cは、2つの発信器内のレンズシステムとアレイとの別の相対位置における、図6AのLIDARシステムのある実施形態のLIDARシステムFOVの2次元投影を図示する。
【0026】
図7図7は、レーザビームの形状が公称上長方形であり、検出器アレイ内の単一のピクセルのFOVがレーザビームより小さい、本教示によるLIDARシステムのある実施形態のLIDARシステムFOVの2次元投影を図示する。
【0027】
図8図8は、マイクロレンズアレイの相対運動が、レーザビームの投影角を変化させるために使用される、本教示によるLIDARシステム発信器のある実施形態を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本教示は、ここで、付随の図面に示されるようなその例示的実施形態を参照してより詳細に説明される。本教示は、種々の実施形態および例と併せて説明されるが、本教示がそのような実施形態に限定されることは意図されていない。むしろ、本教示は、当業者によって理解されるように、種々の代替、修正、および均等物を包含する。本明細書の教示へのアクセスを有する当業者は、本明細書に説明されるような本開示の範囲内にある付加的な実装、修正、および実施形態、ならびに他の使用分野を認識するであろう。
【0029】
本明細書における「一実施形態」または「ある実施形態」の言及は、実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造、または特性が本教示の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。本明細書内の種々の場所における語句「1つの実施形態では」の表出は、必ずしも全てが同一の実施形態を指しているわけではない。
【0030】
本教示の方法の個々のステップは、本教示が動作可能のままである限り、任意の順序において、および/または同時に、実施されることができることを理解されたい。さらに、本教示の装置および方法は、本教示が動作可能のままである限り、説明される実施形態のうちの任意の数のものまたは全てを含むことができることを理解されたい。
【0031】
図1Aは、公知のソリッドステートLIDARシステムの概略図を図示する。図1Aに図示されるシステムは、全システム視野を全て一度に照明するフラッシュ発信器を採用しない。レーザアレイ102が、種々のパターンの光学ビームを発生させる。光学ビームは、アレイ102内のエミッタから、そのエミッタが制御パルスによってアクティブ化されるときに放出される。1つ以上のエミッタが、特定のシーケンスに従ってアクティブ化されることができる。レーザアレイ102内のレーザからの光学ビームは、標的平面110における標的106に光学ビームを投影する一般的な発信器光学系104を通って伝搬する。この特定の例における標的106は、自動車106であるが、標的は任意の物体であり得ることを理解されたい。
【0032】
入射光学ビームからの光の一部が、標的106によって反射される。反射された光学ビームのこれらの部分が、受信器光学系112を共有する。検出器アレイ114が、受信器光学系112によって投影される反射された光を受信する。種々の実施形態では、検出器アレイ114は、可動部品を有しないソリッドステートである。検出器アレイ114は、典型的に、発信器アレイ102が個々のレーザを有するよりも少ない数の個々の検出器要素を有する。
【0033】
LIDARシステム100の測定分解能は、検出器アレイ114内の検出器要素のサイズによって決定されないが、代わりに、発信器アレイ102内のレーザの数および個々の光学ビームのコリメーションによって決定される。言い換えると、分解能は、各光学ビームの視野によって限定される。LIDARシステム100内のプロセッサ(図示せず)は、検出器アレイ114において検出されるレーザアレイ102によって発信された光学ビームから標的106までの距離を決定する飛行時間(TOF)測定を実施する。
【0034】
本教示によるLIDARシステムの1つの特徴は、発信器アレイ102内の個々のレーザおよび/またはレーザの群が、個々に制御されることができることである。発信器アレイ内の各々の個々のエミッタは、独立して発射されることができ、全システム視野の一部のみに範囲を定める3次元(3D)投影角に対応する光学ビームが、各レーザエミッタによって放出される。そのようなLIDARシステムの一例が、本譲受人に譲渡されている米国特許公開第2017/0307736 A1号に説明されている。米国特許公開第2017/0307736 A1号の全内容は、参照することによって本明細書に援用される。
【0035】
本教示によるLIDARシステムの別の特徴は、検出器アレイ114内の検出器および/または検出器の群も個々に制御されることができることである。発信器アレイ102内の個々のレーザおよび/またはレーザの群、ならびに検出器アレイ114内の検出器および/または検出器の群のこの独立的な制御が、システム視野、光出力レベル、および走査パターンの制御を含む種々の望ましい動作特徴を提供する。
【0036】
図1Bは、図1AのLIDARシステムのシステム視野150の2次元投影を図示する。図1Aおよび図1Bの両方を参照すると、検出器アレイ内の個々の検出器の視野が、小さい正方形152によって表される。発信器レーザアレイ102内の個々のエミッタと関連付けられる検出された信号から結果として生じる照明される測定点が、円154によって図示される。図1AのLIDARシステムの全視野内の単一の3D測定点が、レーザアレイ内の特定の個々のレーザに対応する特定の濃い円158として示される。さらに、この測定点が個々の検出器内に属し、検出器アレイ114内のその個々の検出器の視野が、識別のために斜交平行線パターンを有する正方形156で示されていることが、図1Bに見られ得る。この図は、各レーザが、標的範囲における円154のサイズを生じさせる特定の角度の投影角、および、円154と、個々の検出器要素の視野を表す正方形152との相対サイズに対応するので、LIDARシステムのいくつかの実施形態の3D分解能が、レーザの数によって決定されることを図示する。
【0037】
したがって、発信器アレイ内の特定の個々のレーザもしくはレーザの群を制御すること、ならびに/または受信アレイ内の検出器の個々のレーザまたはレーザの群を制御することによって、所望の視野が確立されることができる。種々のシステム視野が、個々のエミッタもしくはエミッタの群、ならびに/または個々の検出器もしくは検出器の群に関する異なる相対的視野を使用して、確立されることができる。視野は、特定の性能メトリックおよび/またはその組み合わせを生み出すように確立されることができる。これらの性能メトリックは、例えば、改良された信号対雑音比、より長い範囲もしくは制御された範囲、眼の安全性の動作出力レベル、およびより低いもしくはより高い制御可能な分解能を含む。重要なこととして、これらの性能メトリックは、動作の間に、LIDARシステム性能を最適化するように修正されることができる。
【0038】
本教示によるLIDARシステムは、所望のパターンに従って標的を照明するために、レーザデバイスのアレイ内の特定のレーザデバイスの選択的制御を提供することが可能であるアレイ駆動制御システムを使用する。また、本教示によるLIDARシステムは、独立して処理されることができる検出器信号を発生させる検出器のアレイを使用することができる。その結果、本教示によるLIDARシステムの特徴は、共有される発信光学系および受信光学系を使用して投影される発信光学ビームおよび受信光学ビームの両方を有するエミッタの固定アレイと検出器の固定アレイとを含む電気的かつ非機械的でありおよび/または非可動の部品を排他的に伴うLIDARシステムからの各種の動作能力を提供するための能力である。そのようなLIDARシステム構成は、また、サイズが小型であり、動作において信頼性があり、比較的低コストである柔軟なシステムをもたらすことができる。
【0039】
本教示のLIDARシステムの1つの特徴は、LIDARシステムが、光学ビームを発生させるためのレーザアレイと、標的から反射されたこれらの光学ビームからの光の一部を受信するための検出器アレイとに依拠することである。したがって、それらは、サイズが比較的小型であり、動作において信頼性があり、コストが低いという点で、ソリッドステートコンポーネントの多くの特徴から恩恵を得る。種々の検出器技術が、本教示によるLIDARシステムのための検出器アレイを構築するために使用されることができる。例えば、単一光子アバランシェダイオード検出器(SPAD)アレイ、アバランシェ光検出器(APD)アレイ、およびシリコン光電子増倍管アレイ(SPA)が、使用されることができる。検出器サイズは、単一の検出器のFOVを設定することによって分解能を設定するだけでなく、各デバイスの速度および検出感度にも関連する。LIDARのための検出器の最先端の2次元アレイは、すでに、VGAカメラの分解能に接近しつつあり、CMOSカメラ技術において見られるものと同様のピクセル密度の増加の傾向に追随することが予期される。したがって、正方形204によって表される検出器FOVのますます小さくなるサイズが、時間とともに実現されることが予期される。例えば、264,000個のピクセル(688(H)×384(V))を有するAPDアレイが、最近、「A 250m Direct Time-of-Flight Ranging System Based on a Synthesis of Sub-Ranging Images and a Vertical Avalanche Photo-Diodes
(VAPD) CMOS Image Sensor」, Sensors 2018, 18, 3642において報告された。
【0040】
種々のタイプのレーザアレイもまた、本教示によるLIDARシステム内で使用されることができる。レーザアレイの一例は、垂直共振器面発光レーザ(VCSEL)レーザデバイスから作製される。これは、上面発光VCSEL、底面発光VCSEL、および種々のタイプの高出力VCSELを含むことができる。これらのVCSELデバイスは、独立型単一エミッタであることもあるし、または1もしくは2次元アレイとして基板上に製作されることができる複数のエミッタVCSELの一部であることもある。特定のレーザから光学ビームを発生させるために通電される、VCSEL接点が、個々にアドレス指定もしくは通電されることができ、ならびに/または共通電気入力信号を用いてVCSELの群に通電するように、種々の構成においてともに電気的に接続されることができる。本教示のLIDARシステムの1つの特徴は、特定のLIDARシステム用途のための適切な駆動信号を用いて、アレイ内の1つ以上のVCSELデバイスの通電を制御するためのシステムおよび方法である。いくつかの実施形態では、VCSELアレイは、モノリシックであり、レーザは全て、共通基板を共有する。種々の共通基板タイプが、使用されることができる。例えば、共通基板は、半導体材料であることができる。共通基板はまた、セラミック材料を含むこともできる。いくつかの実施形態では、VCSELアレイは、2D VCSELアレイであり、2D VCSELアレイは、1次元(1D)のバーの群から、または多数の個々のダイからさえも組み立てられる。
【0041】
本教示によるLIDARシステムの1つの特徴は、LIDARシステムが各種のレーザアレイのための制御可能な視野を提供することができることである。いくつかの実施形態は、VCSELアレイを使用する。いくつかの実施形態では、VCSELは、上面発光VCSELである。他の実施形態では、VCSELは、底面発光VCSELである。個々のVCSELが単一の大きい放出開口を有することもあるし、または、個々のVCSELがより大きい有効放出直径内の2つ以上のサブ開口から形成されることもある。より大きい有効放出領域を形成するサブ開口の群は、時として、クラスタと称される。クラスタ内のサブ開口は、それらが単一の制御信号によって電子的にアクティブ化されるように、電気的に並列に接続されることができる。
【0042】
図2Aは、256個の別個のレーザエミッタ202を有する2DモノリシックVCSELアレイ200の概略図を図示し、各エミッタ202は、本教示のLIDAR発信器のいくつかの実施形態において使用される単一の大開口に対応する。各レーザエミッタは、直径a204の放出開口を有する。各々の単一のレーザエミッタ202からの放出が、実質的に、放出開口直径a204全体を満たす。したがって、各レーザエミッタは、放出開口の直径に等しい初期の直径aを有するレーザビームを発生させる。レーザエミッタは、間隔d206で水平方向に均一に離間され、間隔d208で垂直方向に均一に離間される。最も外のレーザの中心から測定されるようなアレイの全体的サイズは、水平方向に距離D210、垂直方向に距離D212である。実際のチップサイズは、寸法D210およびD212よりわずかに大きい。種々の実施形態では、エミッタは、種々の形状を有する光学ビームを生み出し得る。例えば、楕円形、正方形、長方形、および種々の変則的形状が、実現されることができる。エミッタ202間に領域214が存在し、領域214は、間隙であり、間隙は、エミッタを有しておらず、したがって、照明を提供しない。
【0043】
図2Bは、本教示のLIDAR発信器のいくつかの実施形態において利用されることができる、各レーザエミッタ252が9個のサブ開口254を有する、256個の別個のレーザエミッタ252を有する2DモノリシックVCSELアレイ250の概略図を図示する。各々の単一のレーザエミッタ252からの放出が、9個のサブ開口254全てからの放出をもたらす。9個のサブ開口254のうちの1つ以上が製作異常またはデバイス故障に起因して光を放出できない場合、エミッタ252が、依然として機能し、たとえより低い出力パワーであっても、光学ビームを発生させる。出力光学ビームは、サブ開口254のパターンに対応し、サブ開口254は、各種の形状で配列されることができる。示される構成では、出力ビームは、形状が公称上正方形であり、9個のサブ開口254の3×3正方形アレイのエミッタ252形状に対応する。レーザエミッタ252は、間隔d256で水平方向に均一に離間され、間隔d258で垂直方向に均一に離間される。最も外のレーザの中心から測定されるアレイの全体的サイズは、水平方向に距離D260、垂直方向に距離D262である。実際のチップサイズは、距離D260および距離D262よりわずかに大きいであろう。規則的アレイと不規則的アレイとを含む各種のアレイパターンが可能である。図2A-BのVCSELは、光が放出されないVCSELダイの区域、例えば、領域214、264を含む。
【0044】
本教示のいくつかの実施形態は、図2Aに示される構成等にある、レーザあたり単一の大開口を有し、規則的に離間された長方形アレイで構成されるVCSELの底面発光型高出力アレイを利用する。本教示のLIDARシステムの他の実施形態は、サブ開口を備える全体的発光区域を有するVCSELの上面発光型または底面発光型の高出力アレイを利用する。しかしながら、当業者は、本教示が、発光開口またはアレイの間隔もしくは形状に関連付けられる上面発光VCSELおよび底面発光VCSELの任意の単一の構成に限定されないことを理解するであろう。
【0045】
本教示のLIDARシステムの1つの特徴は、エミッタの全てが同一の波長における光を放出しないこともあることである。したがって、アレイ内の種々のエミッタは、他のエミッタと異なる波長を有する光を生み出すことができる。例えば、ある列またはある行内のエミッタが1つの波長を放出し得、互い違いの列または行内のエミッタが、異なる波長を放出し得る。各種の波長パターンが、使用されることができる。
【0046】
本教示のLIDARシステムの構築ブロックとしての2D VCSELアレイの使用が、発信器のための小さい物理的サイズを可能にする発信器プラットフォームを確立する。例えば、およそ4mm×4mmである寸法を有するモノリシックチップ上に、256個の高出力型の個々のレーザエミッタを有する典型的な2Dアレイを製作することが可能である。次いで、モノリシック2Dレーザアレイは、物理的寸法を可能な限り小さく保つように選定される発信光学系とともに使用される。例えば、いくつかの実施形態は、モノリシックチップと同様のサイズを有するマイクロレンズアレイを使用する。他の実施形態は、例えば20mm未満の直径を有する共有レンズを使用する。さらに他の実施形態は、例えば、20mm直径の最大寸法を有する回折光学系を使用する。
【0047】
本教示のLIDARシステムの1つの特徴は、エミッタによって生み出される光学ビームの間隔および/または発散が、所望のパターン、形状、または他の規定される特性を有するエミッタFOVを発生させるように構成されることができることである。例えば、光学ビームは、重複するように作成されることもできるし、または、重複しないように作製されることもできる。FOVパターンの選定は、例えば、特定のパターンに応じて、距離、眼の安全性の出力レベル、信号対雑音比、および/または分解能の制御を提供する。
【0048】
図3Aは、16個のレーザエミッタビームの発散が検出器アレイ上に結像されるとビーム間に間隙をもたらす、本教示のLIDARシステムのある実施形態の動作のためのLIDARシステムFOV300の2次元投影を図示する。レーザエミッタFOVが、円302によって表され、検出器要素FOVが、正方形304によって表される。図3Aに示される実施形態では、円302のサイズを有するFOVが、公称上、4つの検出器要素FOVの正方形304を完全に網羅する。この光学的構成は、非常にコリメートされた光学ビームから結果として生じ得る。対照的に、より大きいエミッタFOVをもたらす光学的構成が、より多くの検出器要素を網羅し、光学ビームのコリメーションを低減させることによって達成され得る。図3Aに関連して説明される実施形態等のレーザビームのより高いコリメーションを伴う実施形態では、測定範囲が改良される。これは、特に、レーザビームによって部分的にのみ網羅され得るより小さい標的に当てはまる。
【0049】
10mradの発散を有するLIDARシステムのためのコリメートレーザビームの数値例を検討する。100メートルの範囲において、1メートルのビーム幅が存在し得る。例えば、人物は、およそ0.15メートルのみの幅であるため、1メートルビームの一部が、人物上に到達せず、したがって、測定のために使用される反射信号に寄与しない。そのような構成では、より小さい発散とより小さいビーム幅とを有するビームを発生させることが、好まれる。しかしながら、図3Aに図示されるように、ビーム発散と全視野の網羅との間には、トレードオフが存在する。図3Aに示されるLIDARシステムFOV300の投影において、16個のレーザビームが使用される。この光学的構成では、有意な間隙306が、視野内に結果として生じる。図3Bは、これらの間隙を防止する1つの可能な解決策を図示する。
【0050】
図3Bは、個々のレーザエミッタビームの発散が図3Aと同一であるが、検出器アレイ上に結像されるときにビーム間のいかなる間隙も排除するために、レーザエミッタの数が64個のビームまで増加されている、LIDARシステムの動作のためのLIDARシステムFOV350の2次元投影を図示する。レーザエミッタFOVが、円352によって表され、検出器要素FOVが、正方形354によって表される。本実施形態では、レーザエミッタの数が、16から64に増加され、レーザが、間隙を伴うことなく視野の完全な網羅を提供するような方式で交互配置される。むしろ、ビームFOVは、重複部356を有する。各エミッタからの光学ビームの発散は、図3Aの実施形態と同一である。図3BのLIDARシステムの実装のための1つの解決策は、システム内の各FOV352と個々のレーザとの間に1対1対応を有することであり得、そのため、この場合、64個の個々のレーザが、必要とされ得る。実際のシステムでは、レーザの数が、数千以上まで増加され得、それらのレーザおよび関連付けられる電子機器のコストが、懸念となり得る。
【0051】
図4は、アレイ402内の各レーザエミッタが特定の投影角に対応する、本教示の発信器400のある実施形態の概略図を図示する。レンズシステム404が、アレイ402内のエミッタによって発生させられる光学ビームをコリメートし、投影する。レンズシステム404は、相対運動の軸406に沿って移動可能である。本教示の1つの特徴は、限定された相対運動がレーザエミッタ(単数または複数)と発信光学系との間に提供され、視野内に光学ビームの移動を提供することができることである。この移動は、所望のパターンの光学ビームを提供するような付加的な自由度の制御を可能にする。レンズシステムとレーザアレイとの間の相対運動を導入するための主な理由は、要求される個々のレーザの数を減少させることであり、トレードオフは、限定された相対運動/作動を組み込むための付加的なコストおよび複雑性である。システム要件に応じて、測定視野内にいかなる間隙も伴うことなく、完全なFOVを網羅するために要求される個々のレーザの数と相対運動の量とを平衡させる最適または少なくとも有利なコスト、性能、および物理的サイズが、存在する。
【0052】
アレイ402は、放出平面における寸法D408を有する。レンズシステム404とアレイ402との間の1つの相対位置において、アレイ402の中心におけるエミッタ410が、中心線414に沿って光学ビーム412を発生させる。レンズシステム404は、このビーム412をコリメートし、標的範囲における中心位置416に投影する。寸法D408を有するアレイ402の縁における外側エミッタ418が、光学ビーム420を発生させる。レンズシステム404は、このビーム420をコリメートし、標的範囲における外側位置422に投影する。いくつかの実施形態では、縁エミッタ418からの外側ビーム420の、中心エミッタ410からの中心ビーム412に対する投影される角度424は、視野の半分(FOV/2)に等しい。コントローラ426は、レーザアレイ402内のエミッタのうちの少なくともいくつかの入力に電気的に接続される出力を有する。コントローラは、通電されるべき複数のレーザ内の特定の個々のレーザまたはレーザの群を選択し、したがって、所望のパターンの光学ビームを伴う特定のレーザFOVを生み出すことが可能である。
【0053】
図4はまた、レーザ毎にビームをコリメートすることと、一意の投影角で各レーザを投影することとの両方を行うように作用するレーザエミッタ402のアレイとレンズシステム404との相対運動を使用するLIDARシステム400の基本動作原理も図示する。図4では、レンズシステム404の光軸414に対して直交するレーザアレイ402とレンズシステム404との間の相対運動の方向が、矢印406によって示される。投影角は、各レーザの光軸からの距離によって定義される。そのため、レンズシステム404とアレイ402とが相互に対して移動させられる場合、特定のレーザエミッタによって発生させられる各光学ビームの投影角もまた、対応して変化する。したがって、本教示の1つの特徴は、レンズシステム404とレーザアレイ402との相対運動が、LIDARシステムFOV内の間隙を網羅すること等のために、任意の用途のために角度分解能を変化させるために使用されることができることである。当業者は、図4に示される光学的構成が、レーザエミッタまたはレーザアレイと、投影光学系との間の相対運動の使用の1つの特定の例であることを理解するであろう。相対運動の原理は、いかなる特定のレンズシステムにも制約されない。特に、レンズシステム内のレンズの全てを移動させ、特定のレーザのための投影角の変化を生成することは、必要ではないことを理解されたい。すなわち、レンズシステム404内のレンズのいくつかまたは全てが、移動し得る。また、レンズシステム404は、特定の数のレンズに限定されない。
【0054】
本教示の1つの特徴は、レンズシステム404とアレイ402との相対運動が、コントローラ426に対して既知である特定のパターンの光学ビームFOVを提供することである。これは、例えば、ビーム位置、ビームサイズ、および/またはビーム重複を含む。したがって、いくつかの実施形態では、コントローラ426によるレーザの発射のパターンの制御と組み合わせられる相対運動が、標的範囲における光学ビームの出力レベルを管理するために使用されることができる。具体的には、発射パターンは、所定の光出力レベルが、いかなる個々の光学ビームFOVにおいても超過されないことを確実にするために使用されることができる。いくつかの実施形態では、所定の出力レベルは、クラス1の眼の安全性の限界である。発射パターンはまた、所定の光出力レベルが、いかなる重複する光学ビームFOVにおいても超過されないように制御されることができる。
【0055】
図2Aおよび図2Bに関連して説明されるVCSELデバイスは、レーザエミッタ402のアレイとレンズシステム404との間の相対運動を採用するLIDARシステム400と併用されることができる。図2A図2Bおよび図4を参照すると、レーザの発散が遠視野内に放出される光学ビームの重複をもたらさないほど十分に小さい場合、光が放出しないVCSELダイの区域、例えば、領域214、264が、視野内に間隙をもたらし得る。本明細書に説明されるアレイ402とレンズシステム404との相対運動が、視野内のそれらの間隙を満たすために使用されることができる。
【0056】
図5は、個々のレーザエミッタビームの発散が、図2Aに関連して説明される256個の別個のレーザエミッタを有する2DモノリシックVCSELアレイのための発散と同一であり、レンズシステムとレーザアレイとの相対運動が、示されるパターンで走査するために使用される、本教示のLIDARシステムのある実施形態のLIDARシステムFOV500の2次元投影を図示する。初期の位置におけるエミッタFOVパターンが、実線の円502の4×4アレイによって示される。隣の3つの位置は、エミッタFOVを正方形パターンで移動させ、移動する正方形パターンが、破線の円によって図示される。位置2が、破線の円504として示される。位置3が、破線の円504’として示される。位置4が、破線の円504’’として示される。
【0057】
図4および図5の両方を参照すると、レーザアレイ402とレンズシステム404との相対運動が、移動するFOVが4×4アレイ構成における16個のレーザのみを用いて全LIDARシステムFOVを網羅するように、矢印506、506’、506’’、506’’’によって図示される長方形または正方形パターンを横断する。本実施形態に図示される相対運動が水平方向および垂直方向の両方において要求されることに留意されたい。相対運動の必要な範囲は、レーザエミッタによって発生させられる任意の2つの光学ビーム間のピッチの半分だけレーザパターンを偏移させることと同等である。いくつかの実施形態に関して、要求される実際の相対運動は、数百ミクロンであり得るアレイのエミッタ間の物理的距離の約半分であり得る。
【0058】
レーザアレイ402とレンズシステム404との間の相対運動は、撓曲ベースのアクチュエータ428の使用を通して遂行されることができる。種々の実施形態では、アクチュエータ428は、種々の公知のアクチュエータ技術を備える。例えば、アクチュエータは、ドイツのPhysik Instrumentを含むいくつかの供給業者から商業的に利用可能である。撓曲ベースのアクチュエータを駆動するための力が、圧電モータまたは音声コイルアクチュエータを含む種々の電気機械デバイスによって生み出されることができる。
【0059】
図6Aは、2つの物理的に別個の発信器602、604を使用する、本教示のLIDARシステム600のある実施形態を図示する。各発信器602、604は、16個のレーザエミッタを有するVCSELアレイ606、608を含む。2つの発信器602、604は、レーザアレイ606、608から、レンズシステム610、612によってコリメートされて投影される光学ビームを発生させる。発信器602、604は、異なる周波数における光を発生させることができる。種々の実施形態では、レンズシステム610、612は、1つ以上のレンズおよび/または他の光学要素(図示せず)を含むことができる。2つの発信器602、604からの光学ビームは、標的範囲616にある標的614(この図示においては自動車である)を照明する。
【0060】
発信器602、604の両方から反射される光が、単一の受信器618において組み合わせられる。受信器618は、種々の構成における1つ以上のレンズを含むことができる受信光学システム620を含む。受信光学システム620はまた、フィルタ、ミラー、および多数の他の光学要素等の他の光学要素も含むことができる。受信光学システム620はまた、検出器アレイ622も含む。発信器602、604および受信器622の両方のFOVは、大部分が重複している。
【0061】
図6Aの第1の発信器602のレンズシステム610とアレイ606との異なる相対位置、および第2の発信器604のレンズシステム612とアレイ608との異なる相対位置が、2つの発信器602、604からのエミッタFOVの望ましい制御可能な位置を生み出す。これらの制御可能な位置は、アレイ606、608とレンズシステム610、612との間の相対運動を引き起こすアクチュエータ624、626によって生み出される。特に、この構成は、図4および図5に関連して説明されるような、レーザアレイ606、608とそれらのそれぞれのレンズシステム610、612との間の相対運動の変化の組み合わせ、ならびに1つ以上の標的距離における所望のFOVを横断する完全な網羅を提供するためのエミッタFOVの交互配置を可能にする。いくつかの実施形態では、交互配置されるエミッタFOVが、異なる波長を有する光学ビームによって発生させられる。
【0062】
コントローラ628が、レーザアレイ606、608、検出器アレイ622に、およびアクチュエータ624、626に接続される。コントローラ628は、コントローラが通電されるべきアレイ606、608内の特定の個々のレーザまたはレーザの群を選択し、したがって、光学ビームの所望のパターンを有する特定のレーザFOVを生み出すことが可能であるように、レーザアレイ606、608内の個々のレーザおよび/またはレーザの群の入力に電気的に接続される出力を含む。コントローラ628は、検出器アレイ622内の検出器のうちの少なくともいくつかに電気的に接続される出力を含む。したがって、コントローラは、監視されるべき特定の検出器を選択することができる。コントローラ628はまた、アクチュエータの速度および/または投および/または方向を制御し、アレイ606、608とレンズシステム610、612との間の相対運動の所望の速度および/または変位および/または方向を提供するようなアクチュエータ624への接続も含む。
【0063】
図6Bは、2つの発信器内のレンズシステム610、612とレーザアレイ606、608との1つの相対位置における、図6AのLIDARシステムのある実施形態のLIDARシステムFOV630の2次元投影を図示する。図6A図6Bの両方を参照すると、このLIDARシステムFOV630は、白丸632によって表される第1の発信器602のためのエミッタFOVと、異なる陰影が付けられた円634によって表される第2の発信器604のためのエミッタFOVとを含む。いくつかの実施形態では、白丸632によって表される第1のFOVパターンを発生させる光学ビームは、1つの波長であり、陰影が付けられた円634によって表される第2のFOVパターンを発生させる光学ビームは、異なる波長である。
【0064】
検出器アレイ622内の検出器FOVが、正方形の16×16グリッド636として図示される。また、図に示されるものは、自動車614である標的のFOV638である。2つの発信器602、604から放出される光学ビームは、自由空間内に交互配置され、図6Bに示される円632、634のアレイであるFOVのパターンを生み出す。
【0065】
図6Cは、2つの発信器602、604内のレンズシステム610、612とレーザアレイ606、608との別の相対位置における、図6AのLIDARシステムのある実施形態のLIDARシステムFOV670の2次元投影を図示する。図6A図6Cの全てを参照すると、このLIDARシステムFOV670は、白丸672によって表される1つの発信器602のためのエミッタFOVと、異なる陰影が付けられた円674によって表される第2の発信器604のためのエミッタFOVとを含む。
【0066】
検出器アレイ622内の検出器FOVが、正方形の16×16グリッド676として図示される。また、示されるものは、自動車678である標的のFOVである。2つの発信器602、604から放出される光学ビームは、自由空間内に交互配置され、図6Cに示される円672、674のアレイであるFOVのパターンを生み出す。各アレイ606、608のそのそれぞれのレンズシステム610、612に対する相対運動の方向640、680内での相対位置は、位置が静的である、すなわち、図6Bの位置または図6Cに図示される位置のみにおいて動作する場合、そうでなければ存在し得るLIDARシステムFOV内の間隙を排除するために使用される。例えば、図6Bに示されるFOV間隙領域642は、図6Cにおいて、円684によって示されるレーザエミッタのFOVによって網羅されるように示される網羅された領域682内にある。
【0067】
図6A図6Cに関連して説明される実施形態は、レンズシステムとレーザアレイとの相対運動(制御された相対位置)が、単独で、または交互配置および/もしくは異なる波長エミッタの使用と組み合わせられ、LIDARシステムの種々の性能改良をもたらす所望のFOVパターンを生み出すことができる方法の一例にすぎない。光学的自由空間交互配置とレンズ運動との多数の他の組み合わせが存在すること、および/または、異なる光波長の使用が、本教示の範囲内で可能であることを理解されたい。
【0068】
最も公知のLIDARシステムは、少数のレーザを用いてFOVを走査するために、ミラーまたはモータを使用する。運動は、ある方式では、持続的である。持続的運動は、所望のフレームレートを達成するために、絶えずFOVを掃引することによって遂行される。図6A図6Cを参照すると、本教示の一側面は、レーザパルスのタイミング、フレームレート、およびレーザアレイとレンズシステムとの相対運動のタイミングおよび他の側面の適切な選択である。公知のシステムと対照的に、図6A図6Cに図示されるLIDARシステムに関して、レンズシステムの運動が存在しない一方、そのレンズシステムに対応するレーザがパルス化されており、これは、複数のパルスが、有意な時間的平均化を伴うことなく、平均化/ヒストグラム化のために使用されることを可能にする。
【0069】
本教示による動作方法のある例は、以下の通りである。図6Aのレーザアレイ606、608内の32個のレーザが同時に発射されないように、LIDARシステムが各レーザを個々に動作させることを検討する。また、改良されたSNRを有する平均測定値を発生させるために、複数のパルスがレーザ毎に使用されること、例えば64個のパルスが距離測定毎に使用され得ることも検討する。各発信器を通して走査するために要する時間は、16個のレーザ×64個のパルス×Tであり得る(式中、Tは、測定範囲によって必要とされるパルス繰り返し数である)。200mの距離に関して、Tは、1.33μ秒を上回らなければならない。したがって、この例に関して、各発信器を用いて単一のフレームを発生させるための合計時間は、約1.3ミリ秒である。次の発信器に切り替える前に、各発信器を用いてフレームが発生させられ、その後再び戻る場合、許容可能な動作のモードは、他方の発信器のレンズシステム/レンズアレイを移動させながら、そのレンズシステムを定常状態にした状態で、一方の発信器を用いてデータを採取することであり得る。そして、システムパフォーマンスに影響を及ぼすことなく運動を遂行するために要求される時間は、1.3ミリ秒未満であり得る。数百ミクロンの進行を伴う撓曲ベースのアクチュエータは、典型的に、要件の範囲内である数ミリ秒の範囲内でそのような段階的運動を実施する能力を有している。
【0070】
実践的LIDARシステムにおいて、アレイ内のレーザの数は、はるかに多く、例えば図2Aおよび図2Bに示されるような256個であり得ることに留意されたい。16回等のより少ない平均値を有する場合でも、1つの発信器を用いて単一のフレームを得るために要求される時間は、約5.3ミリ秒である。概して、アクチュエータの時間は、約数ミリ秒である。このタイミングは、他の要因の中でもとりわけ、レーザアレイあたりのレーザの数、各レーザに印加されるパルスの数、距離範囲、および発信器の数に応じて、図6A図6Cに関連して説明されるものと同様のある範囲のLIDAR構成に合致する。
【0071】
図7は、光学ビームFOV702、704の形状が公称上長方形である、本教示のLIDARシステムのある実施形態のLIDARシステムFOV700の2次元投影を図示する。単一の検出器ピクセルのFOVは、検出器アレイ内の単一のピクセルのFOVがレーザビームFOV702、704より小さいような小さい正方形706によって表される。図7では、単一のレーザビームFOV702、704は、形状が略長方形であり、検出器アレイ上に投影されると、受信器検出器アレイ内の数十個ものピクセルに重複する。この場合、レーザビームは、反射されるパルスの喪失を伴うことなく複数のパルスが単一のピクセルを用いて得られるように、ある速度で掃引されることができる。
【0072】
レーザビームの運動の間、レーザ光学ビームFOVは、開始位置708と、重複していない終了位置710とを有する。例えば、ピクセル2 712が、位置1の最右縁に位置し、これは、レーザアレイとレンズシステムの光軸との間の特定のオフセットに対応するビームの開始位置708である。ピクセル2 712は、位置2の最左縁に存在し、これは、レーザビームの終了位置710である。これは、時間の大部分に関して、ピクセル2がレーザビームからのある反射された光を受信することを意味する。レーザビームが運転中である場合でも、複数の測定が、このピクセルから行われることができる。これは、要求される数の測定値を取得するための十分な時間を可能にする。この場合、相対運動は、典型的に、レーザビームパターンのピッチの半分より大きい。ピクセル1 716は、レーザFOV702のための開始位置708内に位置する。構成は、ピクセル3 714等、縁上の特定のピクセルが、1つを上回るレーザビームを用いて照明されることを可能にする。
【0073】
図8は、マイクロレンズアレイ802の相対運動がレーザビーム804、806の投影角を変化させるために使用される、本教示のLIDARシステム発信器800のある実施形態を図示する。エミッタアレイ808が、アレイ808内の各レーザ要素810から、ビーム804、808等の光学ビームを発生させる。例えば、いくつかの実施形態では、エミッタアレイ808は、VCSELアレイである。また、いくつかの実施形態では、エミッタアレイ808は、1次元アレイであり、他の実施形態では、エミッタアレイ808は、2次元アレイである。いくつかの実施形態では、マイクロレンズアレイ802は、1次元アレイであり、他の実施形態では、マイクロレンズアレイ802は、2次元アレイである。ビーム804、808等の光学ビームは、マイクロレンズアレイ802を通過し、次いで、付加的な発信器光学系812を通過して標的平面814まで至る。
【0074】
マイクロレンズアレイ802とエミッタアレイ808との間の相対運動が、矢印816によって図示される。この相対運動は、アクチュエータ817によって引き起こされる。矢印816によって図示される相対運動は、本実施形態では、垂直運動として示されるが、各種の方向における相対運動が存在し得ることを理解されたい。使用される相対運動の方向は、標的平面814における光学ビーム、例えば、ビーム804、808の所望の相対位置に依存する。矢印816によって図示されるこの相対運動は、本明細書に説明されるような受信FOVに対するレーザFOVの所望のFOVを提供し、マイクロレンズアレイ802を使用するLIDAR発信器800を備えるLIDARシステムの種々の性能目標を充足させるために使用されることができる。
【0075】
マイクロレンズアレイ802は、対応するエミッタアレイ808によって放出される個々のレーザビーム804、806あたり少なくとも1つの小さいレンズ818を有する多くの小さいレンズ818を有する。小さいレンズ818の寸法は、エミッタアレイ808内のエミッタ要素のピッチとほぼ同一である。この寸法は、典型的には、数百ミクロンである。図8に図示される実施形態では、発信器光学系812は、固定された付加的な大きいレンズとして示されている。固定された発信器光学系812はまた、レーザビーム804、806をコリメートするためにも使用され、そのため、発信器800の全体的FOVを決定することに役立つ。本実施形態に示される構成では、マイクロレンズアレイ802のみが、システムの速度/応答時間をさらに最適化するために移動させられる。マイクロレンズアレイ802は、小さい質量を有するので、迅速に移動させられることができる。また、小さい運動が、大きい角度変化を発生させることもできる。
【0076】
例えば、本明細書に説明されるように2D VCSELアレイと組み合わせられたマイクロレンズアレイは、投影角の所望の変化を達成するために、約10ミクロン移動することのみが必要であり得る。マイクロレンズアレイ802は、特に、これがガラスの代わりにプラスチック材料から形成される場合、物理的に小さく、典型的には、VCSELアレイよりわずかだけ大きくあり得る(これは、その質量が低く保たれ得ることを意味する)。約10ミクロンであり得る要求される小さい質量および小さい運動が、要求される加速/力に関する要件を低減させ、短い作動時間を可能にする。そのような実施形態では、レンズアレイ802は、約50μ秒未満で約10ミクロン変位させられることができ、これは、走査パターンおよびフレームレートに影響を及ぼす付加的なシステム柔軟性を与えることができる。コントローラ820は、アクチュエータに接続して相対運動の制御を提供し、レーザアレイ808に接続して特定の個々のレーザまたはレーザの群の発射を制御する。
均等物
【0077】
本出願人の教示は、種々の実施形態と併せて説明されるが、本出願人の教示がそのような実施形態に限定されることは意図していない。むしろ、本出願人の教示は、当業者によって理解されるように、本教示の精神および範囲から逸脱することなく、その中に成され得る種々の代替、修正、および均等物を包含する。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8