(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】塗布ノズル、及び、塗布方法
(51)【国際特許分類】
B05B 1/14 20060101AFI20240828BHJP
B05C 5/02 20060101ALI20240828BHJP
B05D 1/26 20060101ALI20240828BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20240828BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20240828BHJP
【FI】
B05B1/14 Z
B05C5/02
B05D1/26 Z
B05D3/00 D
B05D7/24 301P
(21)【出願番号】P 2020179991
(22)【出願日】2020-10-27
【審査請求日】2023-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000105648
【氏名又は名称】コニシ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【氏名又は名称】上村 喜永
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】伊豫 和裕
(72)【発明者】
【氏名】後藤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】川口 泰英
(72)【発明者】
【氏名】堤 文生
【審査官】吉田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-033670(JP,U)
【文献】特開2006-341167(JP,A)
【文献】特開2004-290475(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0014201(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 1/14
B05D 7/24
B05D 1/26
B05D 3/00
B05C 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗料又は接着剤
である粘性材料が内部に収容された容器の材料導出口部に取り付けられる塗布ノズルであって、
基端側に設けられた前記容器の前記材料導出口部に取り付けられる取付口部と、
前記粘性材料が外部へ吐出される複数の吐出口が
基端側から先端側に向かう方向に沿って一列に並べて設けられた粘性材料吐出部と、を備え、
前記粘性材料吐出部が、基端側から先端側に向かって傾斜させて設けられており、
前記複数の吐出口のうち最も先端側に配置された吐出口が他の吐出口よりも大きく形成されていることを特徴とする塗布ノズル。
【請求項2】
前記塗布ノズルの前記取付口部以外の部分における基端側の幅寸法と、前記塗布ノズルの突出方向に沿って視た場合の前記粘性材料吐出部の各吐出口が並んでいる方向の幅寸法がほぼ同寸法である請求項1記載の塗布ノズル。
【請求項3】
請求項1又は2記載の塗布ノズルを用いた前記粘性材料の塗布方法であって、
前記
吐出口の列
の方向が長方形状の面板部を有する床材の短辺方向とほぼ平行となるように前記塗布ノズルを配置し、
前記列
の方向と前記短辺方向の平行状態をほぼ保ちながら、前記塗布ノズルを前記床材の長辺方向に沿って移動させることを特徴とする塗布方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料又は接着剤等の粘性材料が内部に収容された容器の材料導出口部に取り付けられる塗布ノズルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば建築現場等では塗料や接着剤等を塗布対象に対して塗布する場合、粘性材料が内部に充填されたラミネートフィルム容器等の可撓性容器の材料導出口部に対して、目的に応じた形状を有した樹脂製のノズルが取り付けられた塗布器具が用いられる。例えば特許文献1に記載の塗布器具は、先端部が横方向に広がる扁平ヘラ状をなすノズルを備えている。このようなものを用いることで、可撓性容器から手で絞り出された接着剤は所定幅で予め広がった状態でノズルの先端部から吐出できる。
【0003】
ところで、床材等の面積の大きい建築材料に対して接着剤を塗布する場合、できるだけ大きな幅で均一に塗布して作業効率を改善できることが好ましい。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のノズルの幅を単純に横方向にさらに広げて、材料導出口部の取り付け部分よりも大きくしすぎてしまうと、樹脂成形の際に複雑な金型を用いないとノズルを成形できなくなってしまう。この結果、製造コストを抑えることが難しくなってしまう。
【0005】
また、ノズルの横方向の幅を広げるほど吐出される所定幅の接着剤が不均一になりやすくなり、吐出された後で接着剤を引き伸ばす等の手間が増えてしまう恐れがある。例えば接着剤が短時間で硬化するようなものの場合、このような作業性の低下が発生するのは特に好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上述したような問題に鑑みてなされたものであり、粘性材料を幅広く均一に塗布することができるとともに、樹脂成形がしやすく、製造コストを低減しやすい形状の塗布ノズル、及び、この塗布ノズルを用いた塗布方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明に係る塗布ノズルは、塗料又は接着剤等の粘性材料が内部に収容された容器の材料導出口部に取り付けられるものであって、基端側に設けられた前記容器の前記材料導出口部に取り付けられる取付口部と、前記粘性材料が外部へ吐出される複数の吐出口が一列に並べて設けられた粘性材料吐出部と、を備え、前記粘性材料吐出部が、基端側から先端側に向かって傾斜させて設けられており、前記複数の吐出口のうち最も先端側に配置された吐出口が他の吐出口よりも大きく形成されていることを特徴とする。
【0009】
このようなものであれば、前記粘性材料吐出部が、基端側から先端側向かって傾斜させて設けられているので、粘性材料を一度に吐出できる幅を大きくでき、粘性材料の塗布効率を高めることができる。
【0010】
また、前記複数の吐出口のうち最も先端側に配置された吐出口が他の吐出口よりも大きく形成されているので、吐出量が低下しやすい先端側の吐出口からも粘性材料が十分に吐出されるようにできる。この結果、前記是粘性材料吐出部の全体から吐出される粘性材料を均一にすることができる。
【0011】
さらに、前記粘性材料吐出部が傾斜していることにより、各吐出口が並んでいる方向の幅は広く形成しながら、前記粘性材料吐出部を前記取付口部の幅内に収める事が可能となる。この結果、単純な金型であっても容易に抜く事ができるようになるので、金型作成にかかるコストを低減し、製造コストを抑えることができる。
【0012】
前記粘性材料吐出口から一度に吐出される粘性材料の幅を最大限大きくしつつ、単純な金型で樹脂成形して製造コストを低減できるようには、前記塗布ノズルの前記取付口部以外の部分における基端側の幅寸法と、前記塗布ノズルの突出方向に沿って視た場合の前記粘性材料吐出部の各吐出口が並んでいる方向の幅寸法がほぼ同寸法であればよい。
【0013】
本発明に係る塗布ノズルを用いた塗布方法は、前記列方向が長方形状の面板部を有する床材の短辺方向とほぼ平行となるように前記塗布ノズルを配置し、前記列方向と前記短辺方向の平行状態をほぼ保ちながら、前記塗布ノズルを前記床材の長辺方向に沿って移動させることを特徴とする。このような塗布方法を用いれば、例えば床材等の面積の大きい材料に対して接着剤等の粘性材料を短時間で均一に塗布できる。
【発明の効果】
【0014】
このように本発明に係る塗布ノズルによれば、前記粘性材料吐出部が傾斜させて設けられているので、粘性材料を塗布できる幅を大きくしつつ、前記粘性材料吐出部を前記取付口部の幅内に収めて、先端側が取付口部よりも広がらないようにできる。このため、容易に金型から抜ける形状にすることができ、単純な形式の金型による製造が可能となり、製造コストを低減しやすい。また、先端側の吐出口が他の吐出口よりも大きく形成されているので、各吐出口から吐出される粘性材料の量を均一化できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る塗布ノズルの模式的斜視図。
【
図2】同実施形態の塗布ノズルの背面図を省略した六面図。
【
図3】同実施形態の塗布ノズルの縦断面図及び粘性材料塗布部の詳細図。
【
図4】同実施形態の塗布ノズルの使用時における状態を示す模式図。
【
図5】同実施形態の塗布ノズルを用いた塗布方法を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施形態に係る塗布ノズル100について
図1乃至
図5を参照しながら説明する。
【0017】
図1に示す本実施形態の塗布ノズル100は、例えば建築現場等において、手作業により床材Fに対して粘性材料である接着剤Bを塗布するために用いられるものである。この塗布ノズル100は、接着剤Bが充填されたラミネートフィルム容器や軟質樹脂容器等の容器Cの材料導出口部C1に取り付けられて、接着剤Bを塗布するための塗布器具200を構成する。塗布器具200は、容器Cを手で絞ることにより、材料導出口部C1から絞り出された接着剤Bが塗布ノズル100の内部を通ってその先端部から所定幅で吐出される。
【0018】
図1及び
図2に示すように塗布ノズル100は、容器Cに取り付けられる基端側が扁平円筒状をなす取付口部1と、基端側から先端側に向かって先細りながら突出するノズル本体2と、ノズル本体2の先端部において基端側から先端側に向かって傾斜させて設けられた粘性材料吐出部3と、を備えている。
【0019】
取付口部1は、
図3の断面図に示すように容器Cの材料導出口部C1に形成されている雄ネジと螺合する雌ねじが形成されているとともに、
図1及び
図2に示すように外側面に滑り止めが形成されている。塗布ノズル100において取付口部1は最も直径の大きい部分となるように構成されている。
【0020】
ノズル本体2は、
図1及び
図2に示すように基端は取付口部1よりも若干直径が小さい円形状をなし、先端側に向かって一方の幅寸法が絞られた形状をなしている。
図2(a)に示すようにノズル本体2の先端側において前述した材料導出口部C1を挟む2つの側面部分の投影形状は、底辺が取付口部1の直径と同じ寸法の直角三角形状をなし、その斜辺部分に粘性材料吐出部3となる概略長方形面3Lの長辺部分が直交させて設けられている。また、
図2(b)及び
図2(c)に示すように、これらの側面部分は先端側に進むに連れて互いに近づき絞られている。ノズル本体2の先端側において粘性材料吐出部3の短辺部分と交差する部分は
図2(a)、
図2(d)に示すようにノズル本体2の基端と同じ直径を有する部分円筒として形成されている。したがって、ノズル本体2の基端の直径を有するとともに所定の高さを有する仮想円筒を考えた場合、ノズル本体2のすべての面はその仮想円筒内に収容される。さらに言い換えると、
図2(d)に示すように塗布ノズル100の取付口部1以外の部分における基端側の幅寸法と、塗布ノズル100の突出方向に沿って視た場合の粘性材料吐出部3の各吐出口31が並んでいる方向の幅寸法がほぼ同寸法となるように構成されている。すなわち、ノズル本体2においてノズル本体2の基端の円よりも外側に広がる部分が存在しないように構成されている。
【0021】
粘性材料吐出部3は、
図1、
図2(b)、
図2(d)、
図3に示すようにノズル本体2において基端側から先端側に向かって斜めに傾斜した概略長方形面3Lと、この長方形面3L上においてノズル本体2内に貫通するように設けられた複数の吐出口31と、を備えている。各吐出口31は長方形面3Lにおいて長軸方向に一列に並べて5つ設けてある。また、
図3の断面図に示すようにノズル本体2内は中空であり、この中空空間は仕切られることなく直接各吐出口31と連通している。ノズル本体2内の縦断面は中空の直角三角形状をなしているので、容器Cと連結される取付口部1から最も遠い最先端吐出口31Aには接着剤Bが他の吐出口31と比べて流通しにくくなる。本実施形態では、
図1、
図2(d)、
図2(e)、
図3に示すように粘性材料吐出部3において最も先端側に配置されている吐出口31である最先端吐出口31Aは他の吐出口31と比較してその直径を大きくすることで、最先端吐出口31Aと他の吐出口31とで接着剤Bの吐出量をほぼ同じ量にすることができる。
【0022】
次にこのように構成された塗布ノズル100を用いた接着剤Bの塗布方法について
図4及び
図5を参照しながら説明する。ここで、接着剤Bが塗布される対象は例えば概略長方形薄板状をなす床材Fである。
【0023】
まず、接着剤Bが充填された容器Cに対して塗布ノズル100が取り付けられ、
図4及び
図5に示すように床材Fの面板部に対して粘性材料吐出部3の長方形面3Lをほぼ平行に対向するように配置される。すなわち、塗布器具200は床材Fに対して斜めに入射するように配置される。さらに
図5に示すように各吐出口31の列方向は、床材Fの短辺方向とほぼ平行となるように塗布ノズル100を配置する。この状態で、各吐出口31の列方向が床材Fの短辺方向と平行となった状態をほぼ保ちながら、床材Fの長辺方向に沿って塗布ノズル100を移動させつつ、容器Cを手で絞っていく。そうすると、各吐出口31から接着剤Bが5列でビード状に床材Fの長辺方向に沿った形で吐出される。
【0024】
このように本実施形態の塗布ノズル100によれば、床材Fの長辺方向に対して移動させていくことにより、従来よりも幅広い状態で接着剤Bを均一に塗布していくことができる。したがって、面板部の面積が大きい床材Fであっても短時間で効率よく接着剤Bを塗布できる。加えて、効率よく接着剤Bを塗布できるので、硬化時間が短い接着剤Bも使用しやすくなり、工期を短縮できるようになる。
【0025】
また、粘性材料吐出部3を傾斜させて設けられているので、塗布ノズル100に幅方向に広がっている部分を形成しなくても
図5に示したように幅広い範囲で帯状に接着剤Bを一気に塗布していくことができる。また、塗布ノズル100のノズル本体2及び粘性材料吐出部3は幅方向に広がっている部分が存在しておらず、前述した仮想円筒内に内包されるように構成されているので、単純な金型だけで樹脂成形することが可能である。このため、複雑な金型や工程が必要なく、製造コストを低減できる。
【0026】
その他の実施形態について説明する。
【0027】
粘性材料吐出部は塗布ノズルにおいて傾斜させて設けられていればよく、傾斜角度については実施形態に示したものに限られない。また、粘性材料吐出部に設けられる吐出口の数については5つに限られるものではなく、4つ以下であってもよいし、6つ以上であってもよい。また、最先端側に吐出口を他の吐出口よりも大きく形成していたが、さらに最先端側から2番目の吐出口も基端側にある吐出口よりも大きくしてもよい。加えて、複数の吐出口について基端側から先端側に向かうにつれて直径が大きくなるように構成してもよい。
【0028】
塗布ノズルによって塗布される粘性材料は接着剤に限られず、例えば塗料等のその他のものであってもよい。また、塗布対象は床材に限られるものはなく、その他のものを対象としてもよく、建築現場で使用されるものに限られない。
【0029】
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて様々な実施形態の変形が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0030】
200 :塗布器具
100 :塗布ノズル
1 :取付口部
2 :ノズル本体
3 :粘性材料吐出部
31 :吐出口
31A :最先端吐出口
B :接着剤
C :容器
C1 :材料導出口部
F :床材