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特許7545186肝臓オルガノイド組成物ならびにその作製および使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】肝臓オルガノイド組成物ならびにその作製および使用方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/10 20060101AFI20240828BHJP
   C12N 5/071 20100101ALN20240828BHJP
【FI】
C12N5/10
C12N5/071
【請求項の数】 18
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022082075
(22)【出願日】2022-05-19
(62)【分割の表示】P 2019522219の分割
【原出願日】2017-11-03
(65)【公開番号】P2022119862
(43)【公開日】2022-08-17
【審査請求日】2022-06-17
(31)【優先権主張番号】62/417,371
(32)【優先日】2016-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/517,414
(32)【優先日】2017-06-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500469235
【氏名又は名称】チルドレンズ ホスピタル メディカル センター
(73)【特許権者】
【識別番号】503360115
【氏名又は名称】国立研究開発法人科学技術振興機構
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【弁理士】
【氏名又は名称】矢口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】武部 貴則
(72)【発明者】
【氏名】篠澤 忠紘
(72)【発明者】
【氏名】木村 昌樹
(72)【発明者】
【氏名】小池 博之
【審査官】大久保 智之
(56)【参考文献】
【文献】特許第7148552(JP,B2)
【文献】生化学,2012年08月,第84巻第8号,658-665頁
【文献】コトバンク 基底膜[online],2023年07月19日,https://kotobank.jp/word/%E5%9F%BA%E5%BA%95%E8%86%9C-474889参照
【文献】Cell Metabolism,2019年08月06日,Vol.30,pp.374-384,https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6687537/参照
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 5/00-28
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多能性幹細胞(PSC)由来の肝臓オルガノイドであって、前記肝臓オルガノイドが、間葉系細胞と、内在化微絨毛を含む管腔構造とを含み、前記管腔構造が極性肝細胞によって囲まれている、肝臓オルガノイド。
【請求項2】
前記多能性幹細胞(PSC)がヒト人工多能性幹細胞(iPSC)または胚性幹細胞(ESC)である、請求項1に記載の肝臓オルガノイド。
【請求項3】
前記肝臓オルガノイドが、機能的星細胞および機能的クッパー細胞を含む、請求項1または請求項2に記載の肝臓オルガノイド。
【請求項4】
前記肝臓オルガノイドが、以下:胆汁産生能、胆汁輸送活性、少なくとも50ng/mL/1xe細胞/24時間の補体因子H発現、少なくとも40ng/mL/1xe 細胞/24時間の補体因子B、少なくとも1000ng/mL/1xe細胞/24時間のC3発現;少なくとも1000ng/mL/1xe細胞/24時間のC4発現、少なくとも1,000ng/mL/1xe細胞/24時間のフィブリノゲン産生、および少なくとも1000ng/mL/1xe細胞/24時間のアルブミン産生、のうちの1つ以上を有することを特徴とする、請求項1~3のいずれか1つに記載の肝臓オルガノイド。
【請求項5】
前記肝臓オルガノイドが、少なくとも10,000ng/mL 1xe細胞/24時間の総肝臓タンパク質発現を有することを特徴とする、請求項1~4のいずれか1つに記載の肝臓オルガノイド。
【請求項6】
前記肝臓オルガノイドが、PROX1、RBP4、CYP2C9、CYP3A4、ABCC11、CFH、C3、C5、ALB、FBG、MRP2、ALCAM、CD68、CD34、および、CD31から選択される1つ以上の遺伝子を発現する、請求項1~5のいずれか1つに記載の肝臓オルガノイド。
【請求項7】
前記肝臓オルガノイドが、薬物代謝シトクロム変異体、好ましくはCY2C9*2変異体を含む、請求項1~6のいずれか1つに記載の肝臓オルガノイド。
【請求項8】
前記肝臓オルガノイドが、炎症細胞、例えばT細胞または他の炎症性分泌タンパク質を含まない、請求項1~7のいずれか1つに記載の肝臓オルガノイド。
【請求項9】
重篤な有害事象(SAE)、好ましくは肝不全および/または薬物誘発性肝障害(DILI)についてスクリーニングする、in vitroの方法であって、対象となる薬物を請求項1~8のいずれか1つに記載の肝臓オルガノイドと接触させるステップを含む方法。
【請求項10】
前記方法が、フルオレセインジアセテート(FD)の摂取および/または流出を測定するステップを含み、排出障害が、前記薬物が重篤な有害事象を誘発する可能性があることを示す、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記対象となる薬物の毒性が、ミトコンドリア膜電位、ROSの測定、肝臓ミトコンドリアの膨潤、およびそれらの組み合わせから選択されるパラメータの測定によって決定され、前記ミトコンドリアに対する損傷が、前記薬物が重篤な有害事象を誘発する可能性があることを示す、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記方法がオルガノイド生存率を測定するステップを含み、オルガノイド生存率の決定における障害が、前記薬物が重篤な有害事象を誘発する可能性があることを示す、請求項9~11のいずれか1つに記載の方法。
【請求項13】
肝障害を有する個体の治療において使用するための、請求項1~8のいずれか1つに記載の肝臓オルガノイド。
【請求項14】
前記肝障害が、代謝性肝疾患、末期肝疾患、または両方から選択される、請求項13に記載の肝臓オルガノイド。
【請求項15】
請求項1~8のいずれか1つに記載の肝臓オルガノイドを候補化合物と接触させることを含む、個体に対する候補化合物を試験する、in vitroの方法。
【請求項16】
前記肝臓オルガノイドが、前記個体に見出される1つ以上の変異を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記肝臓オルガノイドが、前記個体と同じ民族的背景に由来する、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
前記肝臓オルガノイドが前記個体に由来する、請求項15~17のいずれか1つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年11月4日に出願された米国仮特許出願第62/471,371号、および2016年6月9日に出願された第62/517,414号の優先権および利益を主張するものであり、これらの各内容は全ての目的のために参照によりその全てが本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
肝臓は、外因性化合物の解毒および凝固、ならびに脂質、タンパク質、アンモニウム、および胆汁の生成など、生命に不可欠な多くの代謝機能を提供する重要な器官である。患者の肝臓のインビトロ再構成は、再生療法、創薬および薬物毒性研究を含む用途を提供し得る。肝細胞を用いた既存の方法論は、必須の解剖学的構造の欠如に主に起因しているが、非常に貧弱な機能性を示し、それは製薬産業におけるそれらの実際的使用を制限している。
【0003】
製薬産業では、初期スクリーニングで同定された候補薬の失敗により、医薬品開発から毎年数十億ドルが失われ、そのような失敗のために3分の1近くの薬が市場から回収される(TakebeおよびTaniguchi,2014)。薬物候補の失敗は、患者の治療機会の甚大なる喪失をもたらす。前臨床試験は一般的に、「ヒット」化合物を同定するための主要な有効性スクリーニングとしてのin vitro評価と、それに続く代謝および毒性の機序を評価するためのin vitroおよびin vivoでの安全性試験と、で構成される。この非効率性は、ヒトにおける薬物誘発性肝障害(DILI)を評価するのに高いスループットを伴う生理学的に関連する前臨床モデルが実質的に欠如していることから説明することができ、したがって、絶え間なく増大する化合物ライブラリの莫大な数を評価するためのin vitroヒトスクリーニングモデルを早急に開発する必要がある。
【0004】
初代肝細胞は、高度に極性のある代謝細胞型であり、微絨毛線チャネルを有する毛細胆管構造を形成し、末梢循環を胆汁酸分泌経路から分離する。DILIの最も上流の局面は、肝細胞による薬物(またはそれらの反応性代謝産物)解毒および多剤耐性関連タンパク質(MRP)輸送体などの輸送体を介した毛細胆管への排泄を含む。これは、DILI病理学を予測するために肝細胞のin vivoでの重要な特性としてこれらの独自に組織化された構造を再構築する必要性を示唆している。しかしながら、トログリタゾン、ネファゾドンおよびトルカポンの場合においてのように(https://livertox.nlm.nih.gov/index.html)、単離された初代ヒト肝細胞または肝細胞株の使用を伴う現在の単純化された培養モデルとin vivo生理学との間には、薬物毒性プロファイルにかなりの違いがある。したがって、毒性学的特性の決定は主に、薬物開発のための必須のステップとして動物に依存しているが、ヒトと動物との間の生理学には顕著な違いがあるために、ヒトの結果に対する忠実度は著しく欠如している(Leslie et al.,2007;Yang et al.,2014)。さらに、特異体質性DILI(IDILI)の発症は非常にまれであるが、それにもかかわらず、米国の急性肝不全の約10~15%に関与しており(Reuben et al.,2010)、予測はほとんど不可能である(Kullak-Ublick et al.,2017)。まとめると、提案された薬物の解毒および排泄を試験する化合物をスクリーニングするために効果的なヒト細胞モデルが必要とされている。
【0005】
多能性幹細胞(PSC)からのヒト肝細胞分化方法の斬新的進歩にもかかわらず、ヒト幹細胞を用いたディッシュでの臨床試験は依然として「誇大宣伝」である。有効性および/または毒性についての薬物スクリーニングのみならず、例えば、移植用のブリッジとして、また精密(個別化医療)用のブリッジとして、生体人工肝臓装置に使用されるための肝細胞モデルが必要とされている。本開示は、当該技術分野における前述の必要性のうちの1つ以上に対処しようと努めたものである。
この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、以下のものがある(国際出願日以降国際段階で引用された文献及び他国に国内移行した際に引用された文献を含む)。
(先行技術文献)
(特許文献)
(特許文献1) 国際公開第2015/183920号
(特許文献2) 米国特許出願公開第2013/0189327号明細書
(特許文献3) 米国特許第2393917号明細書
(特許文献4) 国際公開第2010/094694号
(特許文献5) 米国特許出願公開第2016/0237400号明細書
(特許文献6) 国際公開第2017/048193号
(特許文献7) 国際公開第2017/153992号
(特許文献8) 国際公開第2015/183920号
(特許文献9) 国際公開第2017/048193号
(特許文献10) 国際公開第2016/056999号
(特許文献11) 国際公開第2011/116930号
(非特許文献)
(非特許文献1) Ramachandran et al."In Vitro Generation of Functional Liver Organoid-Like Structures Using Adult Human Cells" Plos One,21 October 2015,Vol.10,No.10,p
g.1-14.
(非特許文献2) Ijpenberg et al."Wt1 and retinoic acid signaling are essential for stellate cell development and liver morphogenesis" Developmental Biology.Vol 312,No.1,Pg.157-170.
(非特許文献3) Thomas J.Cunningham et al."Mechanisms of retinoic acid signaling and its roles in organ and limb development".Nat.Rev.Mol.Cell.Biol.Vol.16,No.2,Pg.110-123.
(非特許文献4) Yuan Guan et al."Human hepatic organoids for the analysis of human genetic diseases" JCI Insight.Vol.2,No.17, e94954.
(非特許文献5) Richard Siller et al."Small-molecule-driven hepatocyte differentiation of human pluripotent stem cells" Stem Cell Reports.Vol.4,No.5,Pg.939-952
(非特許文献6) Takanori Takebe et al."Vascularized and functional human liver from an iPSC-derived organ bud transplant" Nature,Vol.499,No.7459,Pg.481-484.
【発明の概要】
【0006】
iPSC細胞などの前駆細胞から肝臓オルガノイドの形成を誘導する方法が開示される。開示された肝臓オルガノイドは、肝不全および/または薬物誘発性肝障害(DILI)、および/または薬物毒性などの重篤な有害事象(SAE)についてのスクリーニングに使用することができる。開示された肝臓オルガノイドは、肝障害を有する個体を治療するために、または好ましい治療薬を同定するためにも使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
当業者は、以下に記載される図面が例示目的のみのためであることを理解するだろう。図面は、決して本教示の範囲を限定することを意図しない。
【0008】
特許または出願ファイルは、カラーで作成された少なくとも1つの図面を含む。カラー図面(複数可)を伴うこの特許または特許出願公開のコピーは、請求および手数料の支払いにより、官庁により提供されるであろう。
【0009】
図1】管腔構造を伴うiPSCからのヒト肝臓オルガノイドの生成。A.肝臓オルガノイドについての分化方法の概要。B.ヒト肝臓オルガノイドの位相差画像。C.オルガノイド中のアルブミン(ALB)、IV型コラーゲン(コラーゲンIV)およびZO-1の免疫染色。核をヘマトキシリン(青)で染色した。バー、50μm。D.未分化iPS細胞、分化の7、11、20および30日目のオルガノイド、ならびに初代肝細胞(PH)における、アルファ-フェトプロテイン(AFP)、アルブミン(ALB)、レチノール結合タンパク質4(RBP4)、サイトケラチン19(CK19)、肝細胞核因子6(HNF6)およびシトクロムP450 3A4(CYP3A4)の定量的RT-PCR。相対的発現値を未分化iPSC(AFP、ALB、RBP4およびCK19)または7日目のオルガノイド(HNF6)または11日目のオルガノイド(CYP3A4)で比較した。バーは平均値±SDを表し、n=3である。E.未分化iPS細胞(iPSC)、胚体内胚葉(DE)、肝特定細胞(HS)、肝前駆細胞(HP)、iPSC由来胆管細胞(iDC)、正常ヒト胆管細胞(NHC)、iPSC由来後部前腸(pFG)、iPSC由来ヒト肝臓オルガノイド、初代肝細胞、胎児肝臓組織、ヒト肝臓の肝臓組織および右葉における、RNA配列データに基づく主成分分析。F.25~30日目のオルガノイドからのアルブミン(ALB、n=10)およびフィブリノゲン(FBG、n=4)分泌レベル。バーは平均値±SEMを表す。G.25~30日目のオルガノイドからの補体因子分泌レベル。FH:H因子、FB:B因子。バーは平均±SEM、n=5を表す。
図2】ヒトiPSC肝臓オルガノイドにおける胆汁酸合成、取り込みおよび排泄。A.単一のオルガノイドにおける多剤耐性関連タンパク質2(MRP2)および胆汁酸塩排出ポンプ(BSEP)の免疫染色。バー、50μm。B.微絨毛(V)管腔内表面を示すオルガノイドの透視電子顕微鏡組織;N:核。バー、10μm。C.未分化iPSC細胞、分化の20日目(NTCP)および30日目(ABCB11)のオルガノイド、ならびに初代肝細胞(PH)における、ATP結合カセット、サブファミリーBメンバー11(ABCB11)、およびタウロコール酸ナトリウム共輸送ポリペプチド(NTCP)の定量的RT-PCR。相対的発現値を未分化iPS細胞(ABCB11)または11日目のオルガノイド(NTCP)で比較した。バーは平均値±SDを表し、n=3である。D.27日目のオルガノイド内部の総胆汁酸分泌レベル。バーは平均値±SEMを表し、n=4である。E.蛍光胆汁酸(CGamF)の存在下で30分培養後のオルガノイドによる胆汁酸の取り込み。F.4つのiPSC株由来のオルガノイドに対するCLF輸送活性。T、W、1、およびFは、iPS細胞株のクローン名を示す。グリーン:CLF。
図3】ボセンタン(Bosetan)誘発胆汁うっ滞は、CYP2C9*2 iPSC-肝臓オルガノイドに特異的である。A.CYP2C9*2のrs1799853およびUGT1A1*6のrs4148323の代表的な対立遺伝子画像は、それぞれ、ボセンタンおよびイリノテカンによるDILIのリスクSNPを示す。この表は、各iPS細胞株におけるリスク対立遺伝子の保有率を示す。B.CLF輸送活性およびボセンタンによる阻害の画像。C.異なる4つのiPS細胞株に由来する個々のオルガノイドにおけるCLF強度レベル。*:p<0.01、**:p<1E-4、****:p<1E-8、ウィルコクソン-マン-ホイットニー検定。NS:有意でない。ボックスプロットでは、ボックスの上および下は、75パーセンタイルおよび25パーセンタイルを表し、中心線が中央値を表す。ドットは各オルガノイドからのデータを示す。
図4】オルガノイドを用いた高い忠実度の薬物誘発胆汁うっ滞モデル。A.オルガノイドの外側から内側へのフルオレセインジアセテートの流出についての連続画像。B.フルオレセインジアセテート流出輸送の比較。C.オルガノイドへのフルオレセインジアセテート流出輸送の定量化。例示的な左の図は、オルガノイドの内側と外側との間のフルオレセイン強度の定量化された比である。右の図は、対照(DMSO)、シクロスポリンA(CSA)、および陰性対照としてストレプトマイシン(STP)を用いた検証試験の結果を示す。バーは平均値±SDを表し、**:p<0.01、n=4である。D.9つのトレーニング化合物で24時間処置した後のフルオレセインジアセテート輸送阻害の画像。E.トレーニング化合物の処置後の輸送阻害の定量化、バーは平均値±SD、*:p<0.05、**:p<0.01、n=4~6を表す。トレーニング化合物の処置後のMMP変化の定量化、バーは平均値±SD、*:p<0.05、**:p<0.01、n=4~5を表す。CON:対照試料、STP:ストレプトマイシン、TOL:トルカポン、DICLO:ジクロフェナク、BOS:ボセンタン、CSA:シクロスポリン。
図5】オルガノイドを用いた高い忠実度の薬物誘発ミトコンドリア毒性スクリーニング。A.9つのトレーニング化合物の処置後のTMRM上のミトコンドリア膜電位(MMP)の画像。下段:トレーニング化合物の処置後の輸送阻害の定量化、バーは平均値±SD、*:p<0.05、**:p<0.01、n=4~6を表す。C.トレーニング化合物の処置後のMMP変化の定量化、バーは平均値±SD、*:p<0.05、**:p<0.01、n=4~5を表す。CON:対照サンプル、STP:ストレプトマイシン、TOL:トルカポン、DICLO:ジクロフェナク、BOS:ボセンタン、CSA:シクロスポリンA、TRO:トログリタゾン、NEFA:ネファゾドン、ENTA:エンタカポン、PIO:ピオグリタゾン。B.Oorts et al.,2016(Oorts et al.,2016)で言及された9つのトレーニング化合物(TC)のセットの分類。クラスAは、in vivoでのDILIについての既知の報告を有するTCを表し、クラスBのものは、in vivoでの薬物誘発性胆汁うっ滞についての報告を有するTCである。文献データに基づく毒性の機序もまた提供される。クラスC化合物は一般にDILIに関して安全であると考えられる。C.薬物処置後72時間の生存率と二重リスクパラメータ、薬物誘発性胆汁うっ滞の可能性およびミトコンドリア毒性の可能性との間の分析。胆汁うっ滞およびミトコンドリア毒性(Mito-tox)指数は、図3のデータから導き出された。円の大きさは、生存率低下の大きさを示した。
図6】NAC暴露により救済された脆弱状態における薬物誘発性肝障害のモデリング。A.脆弱なオルガノイドモデルに対する薬物誘発細胞毒性の評価の概要。B.脂質蓄積に関する脆弱モデルのプロファイリング(青:核、緑:脂質、赤:F-アクチン)。C ROS産生(青:核、緑:ROS)およびD.ミトコンドリア健康度(青:核、赤:ミトコンドリア)。E.薬物処置の24時間後のオルガノイドの画像。F.脂質蓄積により誘発された脆弱オルガノイドモデルに関する生存率評価。バーは平均値±SDを表し、*:p<0.05、n=5~6である。CON:対照、STP:ストレプトマイシン、TRO:トログリタゾン、NAC:N-アセチルシステイン。
図7】毒性予測のための多重肝臓オルガノイドに基づくスクリーニング。
図8】レチノイン酸処置プロトコルAの最適化。レチノイン酸処置の時期と期間の計画。RA:レチノイン酸、HCM:肝細胞培養培地。B.異なる期間のRA処置における25日目のオルガノイド中のアルブミン分泌レベル。
図9】D20におけるオルガノイドの形態。D20におけるオルガノイドの総数は305であった。内腔を伴うオルガノイド:216、内腔を伴わないオルガノイド:89。
図10】オルガノイド中の細胞数を決定するための換算式 A.単一オルガノイドの位相差画像。B.各単一オルガノイドの直径および細胞数。C.単一オルガノイドにおける直径と細胞数との間の相関関係。
図11図4の補足。複数のPSC株からのオルガノイドの生成。異なるiPS細胞株(317D6および1383D6)由来オルガノイドの位相差画像とアルブミン分泌レベル。
図12】10種類の化合物での処置の24時間後の細胞生存率。脂質蓄積により誘発された脆弱オルガノイドモデルに関する生存率評価。CON:対照試料、STP:ストレプトマイシン、TOL:トルカポン、DICLO:ジクロフェナク、AMIO:アミオダロン、BOS:ボセンタン、CSA:シクロスポリンA、TRO:トログリタゾン、NEFA:ネファゾドン、ENTA:エンタカポン、PIO:ピオグリタゾン。バーは平均値±SDを表し、n=4~6である。
図13】脂肪毒性肝臓オルガノイドにおけるミトコンドリアのROS生成と形態変化。A.800μMのオレイン酸(OA)の処理による脂質蓄積誘発性脆弱性オルガノイドモデル上の全細胞中のROSを産生する細胞数の比率。B.脆弱オルガノイドモデルについてのオルガノイド中のミトコンドリアの画像。赤:ミトコンドリア、紫:F-アクチン、青:核。C.脆弱オルガノイドモデルについてのミトコンドリアの数およびサイズ。バーは平均値±SDを表し、*:p<0.05、n=5~6である。
図14】細胞Matrigelフリー法の概略図。オルガノイドを生成するためにMatrigelを使用しない肝臓オルガノイド生成方法の概略図が示される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
特に明記しない限り、用語は当業者による従来の使用法に従って理解されるべきである。
【0011】
「約」もしくは「およそ」という用語は、当業者による決定に従って、例えば、測定システムの制限の、その値がどのように測定され、または、決定されるかに依存する、特定の値に対して許容できる誤差範囲内にあることを意味する。例えば、「約」は、当該技術分野における実務に従って、1以上の標準偏差内であることを意味し得る。あるいは、「約」は、与えられた値の20%まで、または10%まで、または5%まで、または1%までの範囲であることを意味し得る。あるいは、特に生物系または生物学的プロセスに関して、この用語は、ある値の10倍以内、好ましくは5倍以内、より好ましくは2倍以内であることを意味し得る。特定の値が本出願および特許請求の範囲に記載されている場合、特に明記しない限り、特定の値に対する許容可能な誤差範囲内を意味する「約」という用語を想定すべきである。
【0012】
本明細書中で使用されるとき、用語「全能性(totipotent)幹細胞」(全能性(omnipotent)幹細胞としても知られる)は、胚性細胞型および胚体外細胞型に分化することのできる幹細胞である。そのような細胞は完全で生存可能な生物を構築することができる。これらの細胞は卵細胞と精子細胞の融合から産生される。受精卵の最初の数回の分裂によって産生された細胞も全能性である。
【0013】
本明細書で使用されるとき、用語「多能性幹細胞(PSC)」は、体のほぼ全ての細胞型、すなわち、内胚葉(胃内胃壁、消化管、肺)、中胚葉(筋肉、骨、血液、尿生殖器)、および外胚葉(表皮組織および神経系))を含む3つの胚葉(胚上皮)のいずれかに由来する細胞に分化できる任意の細胞を包含する。PSCは、着床前の胚盤胞の内細胞塊細胞の子孫であり得るか、または特定の遺伝子の発現を強制することによって、成体体細胞などの非多能性細胞の誘導により得ることができる。多能性幹細胞は、任意の適切な供給源に由来し得る。多能性幹細胞の供給源の例には、ヒト、げっ歯類、ブタ、およびウシを含む哺乳動物の供給源が含まれる。
【0014】
本明細書で使用されるとき、用語「人工多能性幹細胞(iPSC)」は、一般にiPS細胞とも略され、特定の遺伝子の「強制的な」発現を誘導することによって、成体体細胞などの通常は非多能性細胞から人工的に誘導される多能性幹細胞の一種を指す。hiPSCはヒトiPSCを指す。
【0015】
本明細書中で使用されるとき、用語「胚性幹細胞(ESC)」はまた一般にES細胞とも略され、多能性であり、かつ初期胚である胚盤胞の内部細胞塊に由来する細胞を指す。本発明の目的のために、用語「ESC」は、胚性生殖細胞も場合により包含するように広く使用される。
【0016】
本明細書中で使用されるとき、用語「前駆細胞」は、1つ以上の前駆細胞がそれ自体を再生する能力または1つ以上の特殊化細胞型に分化する能力を獲得することになる、本明細書に記載の方法において使用され得る任意の細胞を包含する。いくつかの実施形態では、前駆細胞は、多能性であるか、または多能性になる能力を有する。いくつかの実施形態では、前駆細胞は、多能性を獲得するために外部因子(例えば増殖因子)の処理に供される。いくつかの実施形態では、前駆細胞は、全能性(totipotentまたはomnipotent)幹細胞;多能性幹細胞(誘導型または非誘導型);多分化能性幹細胞;オリゴ分化能性幹細胞および単分化能性幹細胞であり得る。いくつかの実施形態では、前駆細胞は、胚、幼児、子供、または成人由来であり得る。いくつかの実施形態では、前駆細胞は、多能性が遺伝子操作またはタンパク質/ペプチド処置を介して付与されるような処置を受ける体細胞であり得る。
【0017】
発生生物学において、細胞分化は、それほど特殊化されていない細胞がより特殊化された細胞型になる過程である。本明細書中で使用されるとき、用語「指向性分化」は、それほど特殊化されていない細胞が特定の特殊化された標的細胞型になるプロセスを指す。特殊化された標的細胞型の特異性は、初期細胞の運命を定義または変更するために使用できる任意の適用可能な方法によって決定することができる。例示的な方法としては、遺伝子操作、化学的処理、タンパク質処理、および核酸処理が挙げられるが、これらに限定されない。
【0018】
胚性細胞由来の多能性幹細胞
いくつかの実施形態において、1つのステップは、多能性であるかまたは多能性になるように誘導され得る幹細胞を得ることである。いくつかの実施形態では、多能性幹細胞は胚性幹細胞に由来し、また、この胚性幹細胞は哺乳動物初期胚の全能性細胞に由来し、in vitroで無限の未分化増殖が可能である。胚性幹細胞は、初期段階の胚である胚盤胞の内部細胞塊に由来する多能性幹細胞である。胚盤胞から胚性幹細胞を誘導するための方法は当技術分野において周知である。ヒト胚性幹細胞H9(H9-hESC)は、本明細書に記載されている例示的な実施形態において使用されるが、本明細書に記載されている方法およびシステムは任意の幹細胞に適用可能であることは当業者には理解されよう。
【0019】
本発明に従う実施形態において使用され得るさらなる幹細胞は、National Stem Cell Bank(NSCB)、Human Embryonic Stem Cell Research Center at the University of California、San Francisco(UCSF);WISC cell Bank at the Wi Cell Research Institute;the University of Wisconsin Stem Cell and Regenerative Medicine Center(UW-SCRMC);Novocell、Inc.(San Diego、Calif.);Cellartis AB(Goteborg、Sweden);ES Cell International Pte Ltd(Singapore);Technion at the Israel Institute of Technology(Haifa、Israel);ならびにPrinceton Universityおよびthe University of Pennsylvaniaが保有するthe Stem Cell Database;によって提供されるものか、それらが保有するデータベースに記載されているものを含むが、これらに限定されない。本発明に従う実施形態において使用され得る例示的な胚性幹細胞は、SA01(SA001);SA02(SA002);ES01(HES-1);ES02(HES-2);ES03(HES-3);ES04(HES-4);ES05(HES-5);ES06(HES-6);BG01(BGN-01);BG02(BGN-02);BG03(BGN-03);TE03(13);TE04(14);TE06(16);UC01(HSF1);UC06(HSF6);WA01(H1);WA07(H7);WA09(H9);WA13(H13);WA14(H14)を含むが、これらに限定されない。
【0020】
胚性幹細胞についてのさらなる詳細は、例えば、Thomson et al.,1998,"Embryonic Stem Cell Lines Derived from Human Blastocysts,"Science 282(5391):1145-1147;Andrews et al.,2005,"Embryonic stem(ES) cells and embryonal carcinoma(EC) cells:opposite sides of the same coin,"Biochem Soc Trans 33:1526-1530;Martin 1980,"Teratocarcinomas and mammalian embryogenesis,"Science 209(4458):768-776;Evans and Kaufman,1981,"Establishment in culture of pluripotent cells from mouse embryos,"Nature 292(5819):154-156;Klimanskaya et al.,2005,"Human embryonic stem cells derived without feeder cells,"Lancet 365(9471):1636-1641、において見出され得るが、それらの各記載は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0021】
人工多能性幹細胞(iPSC)
いくつかの実施形態では、iPSCは、成体線維芽細胞などの非多能性細胞への特定の幹細胞関連遺伝子のトランスフェクションによって誘導される。トランスフェクションは典型的には、レトロウイルスのようなウイルスベクターを通して達成される。トランスフェクトされた遺伝子はマスター転写調節因子Oct-3/4(Pouf51)およびSox2を含むが、他の遺伝子が誘導の効率を高めることが示唆されている。3~4週間後、少数のトランスフェクトされた細胞が多能性幹細胞と形態学的および生化学的に類似するようになり、通常は形態学的選択、倍加時間、またはレポーター遺伝子および抗生物質選択を通じて単離される。本明細書中で使用されるとき、iPSCには、第一世代iPSC、マウスにおける第二世代iPSC、およびヒト人工多能性幹細胞が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、レトロウイルス系を用いて、4つの中心遺伝子:Oct3/4、Sox2、Klf4、およびc-Mycを用いて、ヒト線維芽細胞を多能性幹細胞に形質転換する。別の実施形態では、レンチウイルス系を用いて体細胞をOCT4、SOX2、NANOG、およびLIN28で形質転換する。発現がiPSCにおいて誘導される遺伝子には、Oct-3/4(例えば、Pou5f1);Sox遺伝子ファミリーの特定のメンバー(例えば、Sox1、Sox2、Sox3、およびSox15);Klfファミリーの特定のメンバー(例えば、Klf1、Klf2、Klf4、およびKlf5)、Mycファミリーの特定のメンバー(例えば、C-myc、L-myc、およびN-myc)、Nanog、およびLIN28が含まれるが、これらに限定されない。
【0022】
いくつかの実施形態において、iPSCを作製するために非ウイルス系技術が使用される。いくつかの実施形態では、アデノウイルスを使用して、必要な4つの遺伝子をマウスの皮膚および肝臓細胞のDNAに輸送し、その結果、胚性幹細胞と同一の細胞を得ることができる。アデノウイルスはそれ自身の遺伝子のいずれも標的宿主に組み込まないので、腫瘍を作り出す危険性が排除される。いくつかの実施形態では、リプログラミングは、非常に低い効率ではあるが、ウイルストランスフェクション系を全く用いることなく、プラスミドを介して達成することができる。他の実施形態では、タンパク質の直接送達を使用してiPSCを作製し、したがってウイルスまたは遺伝子改変の必要性を排除する。いくつかの実施形態において、マウスiPSC細胞の作製は、類似の方法論を使用して可能である:ポリアルギニンアンカーを介して細胞内に導かれる特定のタンパク質による細胞の反復処理は、多能性を誘導するのに十分であった。いくつかの実施形態では、多能性誘導遺伝子の発現はまた、低酸素条件下で体細胞をFGF2で処理することによっても増加させることができる。
【0023】
胚性幹細胞に関するさらなる詳細は、Kaji et al.,2009,"Virus free induction of pluripotency and subsequent excision of reprogramming factors,"Nature 458:771-775;Woltjen et al.,2009,"piggyBac transposition reprograms fibroblasts to induced pluripotent stem cells,"Nature 458:766-770;Okita et al.,2008,"Generation of Mouse Induced Pluripotent Stem Cells Without Viral Vectors,"Science 322(5903):949-953;Stadtfeld et al.,2008,"Induced Pluripotent Stem Cells Generated without Viral Integration,"Science 322(5903):945-949;およびZhou et al.,2009,"Generation of Induced Pluripotent Stem Cells Using Recombinant Proteins,"Cell Stem Cell 4(5):381-384;において見出されることができ、それらの各記載は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0024】
いくつかの実施形態において、例示的なiPS細胞株はiPS-DF19-9;iPS-DF19-9;iPS-DF4-3;iPS-DF6-9;iPS(包皮);iPS(IMR90);およびiPS(IMR90)を含むがこれらに限定されない。
【0025】
DE発生に関連するシグナル伝達経路の機能に関するさらなる詳細は、例えば、ZornおよびWells,2009,"Vertebrate endoderm development and organ formation,"Annu Rev Cell Dev Biol 25:221-251;Dessimoz et al.,2006,"FGF signaling is necessary for establishing gut tube domains along the anterior-posterior axis in vivo,"Mech Dev 123:42-55;McLin et al.,2007,"Repression of Wnt/β-catenin signaling in the anterior endoderm is essential for liver and pancreas development.Development,"134:2207-2217;WellsおよびMelton,2000,Development 127:1563-1572;de Santa Barbara et al.,2003,"Development and differentiation of the intestinal epithelium,"Cell Mol Life Sci 60(7):1322-1332;において見出されることができ、それらの各記載は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0026】
多能性細胞(例えば、iPSCまたはESC)から胚体内胚葉を作製するための任意の方法が、本明細書に記載の方法に適用可能である。多能性細胞(例えば、iPSCまたはESC)から胚体内胚葉を作製するための任意の方法が、本明細書に記載の方法に適用可能である。例示的な方法は、例えば、US97/19068B2(Wells et al.),"Methods and systems for converting precursor cells into intestinal tissues through directed differentiation,"およびUS2017/0240866A1(Wells et al),"Methods and systems for converting precursor cells into gastric tissues through directed differentiation」に記載されている。いくつかの実施形態では、多能性細胞は桑実胚に由来する。いくつかの実施形態では、多能性幹細胞は幹細胞である。これらの方法で使用される幹細胞は、胚性幹細胞を含み得るが、これに限定されない。胚性幹細胞は、胚の内部細胞塊または胚の生殖巣堤に由来し得る。胚性幹細胞または生殖細胞は、ヒトを含む種々の哺乳動物種を含むがこれらに限定されない種々の動物種に由来し得る。いくつかの実施形態において、ヒト胚性幹細胞は胚体内胚葉を産生するために使用される。いくつかの実施形態において、ヒト胚性生殖細胞は、胚体内胚葉を産生するために使用される。いくつかの実施形態では、iPSCは胚体内胚葉を産生するために使用される。本発明において使用することができるDE細胞を取得または作製するためのさらなる方法としては、米国特許第7,510,876号(D’Amour et al.);米国特許第7,326,572号(Fisk et al.);Kubo1 et al.,2004,"Development of definitive endoderm from embryonic stem cells in culture,"Development 131:1651-1662;D’Amour et al.,2005,"Efficient differentiation of human embryonic stem cells to definitive endoderm,"Nature Biotechnology 23:1534-1541;およびAng et al.,1993,"The formation and maintenance of the definitive endoderm lineage in the mouse:involvement of HNF3/forkhead proteins,"Development 119:1301-1315に記載されたものを含むが、これらに限定されない。
【0027】
出願人は、ヒトiPSCを用いて3D肝臓構造を作製する方法を見出した。この構造は、極性肝上皮、星細胞、および小管構造を含む微小肝臓構造を含む。開示された組成物は、既存のモデルと比較して、肝機能、胆汁輸送活性、および耐久性において改善を示す。3D構造モデルは、薬物スクリーニング試験および/または薬物毒性スクリーニング、移植、血清タンパク質産物の産生、ならびに個別化治療の開発のための新規かつ頑強なモデルとして使用され得る。1つの特定の用途において、組成物および方法は、肝臓毒性について薬物化合物をスクリーニングするために使用され得る。
【0028】
3D凝集肝細胞が報告されているが、開示された組成物はアルブミン産生(iPSC由来肝細胞を使用する従来の最高標準モデルと比較して最大10倍の増加)などの非常に高い機能活性を有し、内部管腔構造に起因して改善された酸素および/または栄養供給が可能となり、そのために、はるかにより長い培養(少なくとも60日以上)と薬物検査に有用な長期検査プラットフォームとが可能になる。開示された組成物は、低アルブミン血症の治療のための凝固因子生成物であるアルブミンのような血漿生成物の産生に有用であり、またヒトiPSC由来のミニチュア肝臓を移植してin vivoで障害を治療できる治療的移植にも有用であり得る。最後に、開示された組成物は、個別化医療(治療の個別化)に使用することができる。
【0029】
一態様では、iPSC細胞から肝臓オルガノイドの形成を誘導する方法が開示される。方法は、以下の
【0030】
a)後部前腸スフェロイドを形成するのに十分な期間、好ましくは約1~約3日間、iPSC細胞由来の胚体内胚葉(DE)をFGF経路活性化剤およびGSK3阻害剤と接触させるステップと、b)肝臓オルガノイドを形成するのに十分な期間、好ましくは約1~約5日間、好ましくは約4日間、レチノイン酸(RA)の存在下で、ステップaで得られた後部前腸スフェロイドをインキュベートするステップと、を含み得る。
【0031】
線維芽細胞増殖因子(FGF)は、血管新生、創傷治癒、および胚発生に関与する増殖因子のファミリーである。FGFはヘパリン結合タンパク質であり、細胞表面関連ヘパラン硫酸プロテオグリカンとの相互作用はFGFシグナル伝達に必須であることが示されている。適切なFGF経路活性化剤は、当業者には容易に理解されよう。例示的なFGF経路活性化剤としてはFGF1、FGF2、FGF3、FGF4、FGF10、FGF11、FGF12、FGF13、FGF14、FGF15、FGF16、FGF17、FGF18、FGF19、FGF20、FGF21、FGF22、およびFGF23からなる群から選択される1つ以上の分子が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの態様において、FGFシグナル伝達経路に関連する細胞成分を標的とするsiRNAおよび/またはshRNAを用いてこれらの経路を活性化してもよい。
【0032】
いくつかの実施形態では、DE培養物は、10ng/mlまたはそれ以上;20ng/mlまたはそれ以上;50ng/mlまたはそれ以上;75ng/mlまたはそれ以上;100ng/mlまたはそれ以上;120ng/mlまたはそれ以上;150ng/mlまたはそれ以上;200ng/mlまたはそれ以上;500ng/mlまたはそれ以上;1,000ng/mlまたはそれ以上;1,200ng/mlまたはそれ以上;1,500ng/mlまたはそれ以上;2,000ng/mlまたはそれ以上;5,000ng/mlまたはそれ以上;7,000ng/mlまたはそれ以上;10,000ng/mlまたはそれ以上;あるいは15,000ng/mlまたはそれ以上の濃度の本明細書に記載のFGFシグナル伝達経路の1つ以上の分子で処置される。いくつかの実施形態では、シグナル伝達分子の濃度は処置の間、一定に維持される。他の実施形態では、シグナル伝達経路の分子の濃度は、処置の過程で変化する。いくつかの実施形態において、本発明によるシグナル伝達分子は、DMEMおよびウシ胎仔血清(FBS)を含む培地に懸濁される。FBSは、2%以上、5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、30%以上、または50%以上の濃度であり得る。当業者は、本明細書に記載されるレジメンが、限定されるものではないがFGFシグナル伝達経路における任意の分子を含む、本明細書に記載されるシグナル伝達経路の任意の既知の分子に単独でまたは組み合わせて適用可能であることを理解するであろう。
【0033】
適切なGSK3阻害剤は、当業者には容易に理解されよう。例示的なGSK3阻害剤としては、限定されないが、例えば、GSK3βを阻害するChiron/CHIR99021が挙げられる。当業者は、開示された方法を実施するのに適したGSK3阻害剤を認識するであろう。GSK3阻害剤は、約1μM~約100μM、または約2μM~約50μM、または約3μM~約25μMの量で投与されてもよい。当業者は、適切な量および期間を容易に認識するであろう。
【0034】
一態様では、幹細胞は、哺乳動物、またはヒトのiPSCであり得る。
【0035】
一態様において、前腸スフェロイドは、例えば、商標名Matrigelとして販売されている市販の基底膜マトリックスなどの基底膜マトリックス中に埋め込むことができる。
【0036】
一態様では、肝臓オルガノイドは、アルファ-フェトプロテイン(AFP)、アルブミン(ALB)、レチノール結合タンパク質(RBP4)、サイトケラチン19(CK19)、肝細胞核因子6(HNF6)、シトクロムP450 3A4(CYP3A4)、HNF4a、E-カドヘリン、DAPI、およびEpcamを発現し得ることを特徴とし得る。そのような発現は、例えば、40日目から50日目に起こり得る。発現レベルは、ヒト肝細胞において観察されるもの、例えば、成体肝細胞のものと類似していてもよい。
【0037】
一態様において、肝臓オルガノイドは、胆汁輸送活性を有することを特徴とし得る。
【0038】
一態様では、肝臓オルガノイドは幹細胞に由来してもよく、内在化微絨毛をさらに含む管腔構造、および間葉系細胞を含んでもよい。管腔構造は、極性肝細胞および基底膜によって囲まれていてもよい。肝臓オルガノイドは、機能的星細胞および機能的クッパー細胞を含み得る。
【0039】
ある態様では、肝臓オルガノイドは、以下:胆汁産生能、胆汁輸送活性、少なくとも50ng/mL/1xe細胞/24時間の補体因子H発現、少なくとも40ng/mL/1xe細胞/24時間の補体因子B、少なくとも1000ng/mL/1xe細胞/24時間のC3発現、少なくとも1000ng/mL/1xe細胞/24時間のC4発現、少なくとも1000ng/mL/1xe細胞/24時間のフィブリノゲン産生、および少なくとも1000ng/mL/1xe細胞/24時間のアルブミン産生、のうちの1つ以上を有することを特徴とし得る。一態様では、肝臓オルガノイドは、少なくとも10,000ng/mL 1xe細胞/24時間の総肝臓タンパク質発現を有することを特徴とし得る。肝臓オルガノイドは、PROX1、RBP4、CYP2C9、CYP3A4、ABCC11、CFH、C3、C5、ALB、FBG、MRP2、ALCAM、CD68、CD34、CD31から選択される1つのまたは複数の遺伝子を発現し得ることを特徴とし得る。一態様では、肝臓オルガノイドは、例えば、CY2C9*2変異体などの薬物代謝シトクロム変異体を含む細胞を含み得る。肝臓オルガノイドは、US 2016/0177270号に記載されているもののような血管系を含み得る。
【0040】
一態様では、肝臓オルガノイドは、肝臓オルガノイドが炎症細胞、例えば、T細胞または他の炎症性分泌タンパク質を含まないことを特徴とし得る。
【0041】
一態様では、重篤な有害事象(SAE)についてスクリーニングする方法が開示される。SAEは、肝不全および/または薬物誘発性肝障害(DILI)であり得る。この方法は、毒性が目的とされる対象となる薬物を本明細書に記載の肝臓オルガノイドと接触させるステップを含み得る。一態様では、方法は、フルオレセインジアセテート(FD)の摂取および/または流出を測定するステップを含んでもよく、ここで、排出障害は、薬物が重篤な有害事象を誘発する可能性があることを示す。対象となる薬物の毒性は、ミトコンドリア膜電位、ROSの測定、肝臓ミトコンドリアの膨潤、およびそれらの組み合わせから選択されるパラメータの測定によって決定されてもよく、ここで、ミトコンドリアに対する損傷は、薬物が重篤な有害事象を誘発する可能性があることを示す。一態様では、方法は、オルガノイド生存率を分析するステップを含み、ここで、オルガノイド生存率の障害または低下は、対象となる薬物が重篤な有害事象を誘発する可能性があることを示す。
【0042】
一態様では、肝障害を有する個体を治療する方法が開示され、この方法は、本明細書に記載の肝臓オルガノイドをそれを必要とする個体に移植するステップを含み得る。肝障害は、例えば、代謝性肝疾患、末期肝疾患、またはそれらの組み合わせを含み得る。
【0043】
一態様では、個体にとって好ましい治療薬を同定する方法が開示される。この態様では、方法は、目的のiPSCに由来する肝臓オルガノイドを候補化合物と接触させるステップを含むことができ、ここで、例えば、目的のiPSCは、かかる個体において見出される1つ以上の突然変異を含むか、または例えば、目的のiPSCは、かかる個体と同じ倫理的背景に由来するか、またはさらに、目的のiPSCは、かかる個体に由来するものである。
【実施例
【0044】
本研究において、出願人は、毛細胆管膜を横切ってMRP2によって毛細胆管ネットワークに排出されたフルオレセインジアセテートを使用して胆汁輸送活性を試験した(Tian et al.,2004)。トログリタゾンおよびシクロスポリンがMRP2を阻害することは以前に報告されている(Chang et al.,2013;Lechner et al.,2010)。さらに、排出トランスポーターMRP2は、ボセンタンの輸送を仲介する(Fahrmayr et al.,2013)。ネファゾドンによるMRP2の阻害は報告されていないが、MRP2は肝細胞における胆汁酸の毛細胆管排泄のためのATP依存性胆汁酸塩トランスポーターであるため、ネファゾドンによるミトコンドリアストレスは、胆汁輸送活性、フルオレセインジアセテートの流出の減少に関連し得る。
【0045】
薬物誘発性肝障害(DILI)のリスク化合物の前臨床的検出は、依然として薬物開発における重要な課題であり、予測的なヒトシステムの必要性が強調されている。ここで、出願人は、オルガノイド解像度で臨床DILI病理を分析するためのヒト肝臓オルガノイド(HLO)モデルを開発した。ヒトiPSCからの分化型HLOは、毛細胆管様構造によって裏打ちされた内腔を有する極性肝細胞を含み、一方向性の胆汁酸輸送経路を確立している。出願人は、LoT(肝臓オルガノイドに基づく毒性スクリーニング)と呼ばれる肝臓オルガノイドイメージングを使用してDILIをモデル化することによってオルガノイドの構造的特徴を活用した。LoTは、胆汁うっ滞性および/またはミトコンドリア毒性に基づいて、10種の市販薬と5体の異なるドナーで機能的に検証される。ボセンタン誘発胆汁うっ滞は、CYP2C9低代謝ドナー由来HLOに特異的である。興味深いことに、脂肪症のオルガノイドは診療所で示唆されたようにロシグリタゾン毒性に対して脆弱であり、大量のオルガノドの死からの化学的救助が続いた。したがって、LoTは、薬物の安全性を分析するために使用することができる高い忠実度のオルガノイドモデルであり、さらに費用対効果の高いプラットフォームであり、化合物の最適化を容易にし、機構的研究を提供し、そして個別化医療および抗DILI治療スクリーニング用途をもたらす。
【0046】
製薬産業では、初期スクリーニングで同定された候補薬の失敗により、医薬品開発から毎年数十億ドルが失われ、そのような失敗のために多くの(3分の1の)薬が市場から回収される(TakebeおよびTaniguchi,2014)。有望な有効性にも関わらず、薬物候補の失敗は、患者の治療機会の甚大なる喪失をもたらす。前臨床試験は一般的に、「ヒット」化合物を同定するための主要な有効性スクリーニングとしてのin vitro評価と、それに続く代謝および毒性の機序を評価するためのin vitroおよびin vivoでの安全性試験と、で構成される。この非効率性は、ヒトにおける薬物誘発性肝障害(DILI)を評価するのに生理学的に関連する前臨床モデルが実質的に欠如していることから説明することができ、したがって、絶え間なく増大する化合物ライブラリの莫大な数を評価するためのin vitroヒトスクリーニングモデルを早急に開発する必要がある。
【0047】
初代肝細胞は、高度に極性のある代謝細胞型であり、微絨毛線チャネルを有する毛細胆管構造を形成し、末梢循環を胆汁酸分泌経路から分離する。DILIの最も上流の局面は、肝細胞による薬物(またはそれらの反応性代謝産物)解毒および多剤耐性関連タンパク質(MRP)輸送体などの輸送体を介した毛細胆管への排泄を含む。これは、DILI病理学を予測するために肝細胞のin vivoでの重要な特性としてこれらの独自に組織化された構造を再構築する必要性を示唆している。しかしながら、トログリタゾン、ネファゾドンおよびトルカポンの場合においてのように(https://livertox.nlm.nih.gov/index.html)、単離された初代ヒト肝細胞または肝細胞株の使用を伴う現在の単純化された培養モデルとin vivo生理学との間には、薬物毒性プロファイルにかなりの違いがある。したがって、毒性学的特性の決定は主に、薬物開発のための必須のステップとして動物に依存しているが、ヒトと動物との間の生理学には顕著な違いがあるために、ヒトの結果に対する忠実度は著しく欠如している(Leslie et al.,2007;Yang et al.,2014)。さらに、特異体質性DILI(IDILI)の発症は非常にまれであるが、それにもかかわらず、米国の急性肝不全の約10~15%に関与しており(Reuben et al.,2010)、予測はほとんど不可能である(Kullak-Ublick et al.,2017)。まとめると、提案された薬物の解毒および排泄を試験する化合物をスクリーニングするために効果的なヒト細胞モデルが非常に期待されている。
【0048】
多能性幹細胞(PSC)からのヒト肝細胞の分化方法の革新的進歩にもかかわらず、ヒト幹細胞を用いたディッシュでの臨床試験は「誇大宣伝」のままである。ある程度まで、これは、(1)ロット差の克服、(2)実験的バッチ差の最小化、(3)アッセイスループットの向上、および(4)臨床試験データとの関連性における改善、を含む、以前の細胞に基づくアプローチにおける課題によって説明できる。本出願人は、安定的に拡張可能なヒト幹細胞、すなわちiPSCを使用して比較的単純かつ頑強なオルガノイドに基づく試験プラットフォームを開発することによってこれらの問題に対処する。出願人はまず、ヒトPSCを後部前腸オルガノイドに指向させ、定義された因子およびマトリックスを用いた極性培養を通して漸進的な肝細胞分化を続けた。生成されたヒト肝臓オルガノイドは、極性肝細胞に囲まれた管腔内構造を有し、タンパク質および胆汁酸産生ならびに輸送機能を含む重要なヒト肝細胞機能を果たすことができることが示されている。興味深いことに、本出願人は、ライブ画像に基づく蛍光ジアセテートの取り込みおよび排泄の動的検出が、高レベルの再現性を伴って、胆汁排泄の阻害剤として特徴付けられる一連のDILI薬によって誘発される胆汁うっ滞を正確にモデル化することを見出した。別に、ミトコンドリア膜電位評価は、臨床試験によって確立されたDILI薬の従来の分類を反映して、各化合物について独立したリスク評価を可能にした。さらに、本出願人は、脂肪毒性ストレスによって誘発されるモデル条件へのアプローチを拡張し、活性酸素種(ROS)産生によるDILIの可能性の増強を確認した。オルガノイドに基づく生存率評価により、N-アセチルシステインによるDILIの逆転が確認され、抗DILI薬物スクリーニングに対する我々のアプローチの可能性が強調された。総合すると、肝臓オルガノイドに基づく毒性スクリーニング(LoT)と呼ばれるこの頑強なアッセイは、ヒト肝臓オルガノイドにおいて開発された最初の機能的読み出しであると考えられ、診断、機能研究、薬物開発および個別化医療を容易にする。
【0049】
結果
複数のヒトiPSCからの極性肝臓オルガノイドの生成と特徴付け
出願人は、まず、ヒトiPSC由来の前腸スフェロイドを使用することによって新規肝臓オルガノイド分化方法を確立した(Spence et al.,2011)(図1A)。第一ステップとして、出願人は、以前に記載されたように(D’Amour et al.,2005)、胚体内胚葉への分化を促進するためにBMPおよびアクチビンAを使用した。さらに、FGF4およびGSK3阻害剤(CHIR99021)を使用して前腸スフェロイドを誘導し、出芽スフェロイドを観察した。穏やかなピペッティングによりディッシュ上に播種した間葉系細胞を剥離した後、オルガノイドをMatrigel中に埋め込んだ。レチノイン酸(RA)は、毛細胆管および小管周囲鞘のサイズおよび複雑さの増大によって示されるように細胞極性を増強することが報告されている(Falasca et al.,1998)。胆汁輸送モデリングに適した極性オルガノイドを生成するために、オルガノイドをRAで処置した。オルガノイド生成方法を最適化するために、出願人は最初にRA処置の期間を変化させた。オルガノイドのアルブミン分泌レベルは、1、2、3、4、および5日間のRA処置について、それぞれD25で1160、1054、3092、4709、および3865ng/mLであり、4日間のRA処置プロトコルは最高レベルに達する傾向があった(図8)。したがって、アルブミン分泌のレベルに基づいて、RAの期間を4日間に設定した。形態学的には、RA処置後約10日で、上皮細胞で覆われた300を超えるオルガノイドが首尾よく生成され、管腔化構造を有するオルガノイドの比率は71%(216/305)であった(図1、パネルBおよび図9)。免疫組織化学分析は、アルブミンがオルガノイドの上皮細胞において陽性であることを明らかにし、そして興味深いことに、IV型コラーゲンは外表面に局在化し、ZO-1(接着帯閉塞)は管腔内層を染色し、これは、これらのオルガノイドが極性特性を有することを示唆する(図1、パネルC)。
【0050】
定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)分析により、オルガノイド中の細胞は、アルファ-フェトプロテイン(AFP)、アルブミン(ALB)、レチノール結合タンパク質4(RBP4)、サイトケラチン19(CK19)、胆管細胞分化を制御する肝細胞核因子6(HNF6)、および分化中のシトクロムP450 3A4(CYP3A4)などの肝マーカー遺伝子の発現が有意に増加したことが明らかになった(図1、パネルD)。しかしながら、バルクオルガノイド由来RNAから抽出された最も肝臓的な遺伝子の発現レベルは、初代肝細胞よりもオルガノイドにおいて低かった。理論によって制限されることを意図しないが、これらの異なるmRNAプロファイルは、間質細胞マーカーによって同定された細胞の約30%が非実質細胞であるため、間質系列の存在に一部起因すると考えられ、これにより、オルガノイドは初代肝細胞よりもin vivoの肝臓組織により近いものとなる。出願人はさらに、RNA配列(RNA-seq)を用いた包括的な遺伝子発現分析によってオルガノイドをプロファイリングした。主成分分析は、オルガノイドにおける遺伝子発現が、iPSC由来胆管細胞および正常ヒト胆管細胞と類似していないことを示した(図1、パネルE)。さらに、培養上清中、ALB、フィブリノゲン(Fbg)および補体因子などの肝細胞特異的タンパク質がELISAによって確認された(図1、パネルF~G)。オルガノイドの肝機能性を定量するために、出願人は細胞数によって正規化されたアルブミン分泌レベルを調べた(図10)。アルブミン分泌レベルは、2133ng/日/10細胞であり(図1、パネルF)、公表されたiPSC由来肝細胞(Miki et al.,2011;Song et al.,2015;Song et al.,2009;Vosough et al.,2013)に関連するhPSCのHLCへの2Dおよび3D分化における他の実験(150~1000ng/日/10細胞)よりも高く、一方で、初代肝細胞は、3D足場において30~40μg/日/10細胞を産生する(Davidson et al.,2016;Dvir-Ginzberg et al.,2003)。これらの結果は、公表された文献において、肝臓オルガノイドが幹細胞由来の肝細胞と比較して妥当なアルブミン分泌活性を有する肝細胞を含んでいることを示した。重要なことに、このオルガノイド生成方法は再現性があり、したがって、管腔内オルガノイドがアルブミン分泌能を有する317D6および1383D6のiPS細胞株の両方から生成されたので、他のPSC株に適用可能である(図11)。まとめると、出願人は、肝細胞の特徴を有する多数の極性肝臓オルガノイドを生成するためのプロトコルを確立した。
【0051】
胆汁酸産生ヒトiPSC-肝臓オルガノイドのミクロ解剖学的特徴付け
次に、肝臓オルガノイドが胆汁輸送活性を有するかどうかを試験するために、出願人は最初に胆汁合成および排泄機能に関与する主要なタンパク質を染色することによってオルガノイドを特徴付けた。BSEPおよびMRP2の免疫蛍光染色は、これらのタンパク質が管腔内領域に優先的に局在することを実証した(図2、パネルA)。胆管は最小の肝内分泌チャネルであり、毛細胆管腔は隣接する肝細胞の対向する原形質膜の修飾された先端領域によって形成された空間からなる(Cutrin et al.,1996;Tsukada et al.,1995)。さらに、それは密着帯複合体によって区切られ、微絨毛は毛細胆管内腔の内側に位置する(Tsukada et al.,1995)。ZO-1染色は肝臓の毛細胆管領域を染色することが知られており、図1、パネルCは密着帯が我々の肝臓オルガノイドの内側に位置することを示唆した。透過型電子顕微鏡検査は、オルガノイドが内腔に指向した微絨毛を含有することを明らかにした(図2、パネルB)。これらの解剖学的特徴と一致して、qRT-PCR分析は、オルガノイドがABCB11およびNa + -タウロコール酸共輸送ポリペプチド(NTCP)の遺伝子発現を有することを明らかにしたが、そのレベルは初代肝細胞よりもオルガノイドにおいて低かった(図2、パネルC)。したがって、オルガノイドは、接着帯によって内腔から分離された極性ヒト肝細胞を含み、これはin vivo肝毛細胆管を模倣する独特のミクロ解剖学的構造を反映する。
【0052】
次に、胆汁酸(BA)産生能力を決定するために、出願人は、オルガノイド培養物から収集した管腔内液にELISAを実施した。管腔内液の総BAプールのレベルは、26.7μg/日/10細胞(直径200μmのオルガノイド中で約125μmol/L)であり(図2、パネルD)、そして驚くべきことに、BA濃度は、以前の報告(Ni et al.,2016)におけるサンドイッチ培養由来の初代肝細胞のもの(約40μg/日/10細胞、培養上清中10μmol/L)に匹敵した。このように、オルガノイドは毛細胆管様の形態を有するだけでなく、胆汁酸産生および分泌活性も有し、これは、胆汁酸輸送経路が正しく構築されていることを示唆している。
【0053】
ヒト肝臓オルガノイドにおける胆汁酸摂取と排泄の動的可視化
胆汁酸排泄は、胆汁流の主要な決定要因であり、それ故に、この系における欠陥は様々な肝疾患病理に関連した胆汁分泌障害(胆汁うっ滞)をもたらす可能性がある(Nishida et al.,1991)。肝細胞の頂端(毛細胆管)膜に位置する排出輸送タンパク質は、薬物および代謝物を含む多くの内因性および外因性化合物の肝臓除去において重要な役割を果たしている(KockおよびBrouwer,2012)。BSEPおよびMRP2は、ヒトにおいて毛細胆管胆汁酸塩輸送を媒介する。胆汁輸送のための主要なタンパク質の発現陽性を実証した後、出願人は次に、オルガノイドが胆汁酸をその内腔に活発に輸送することができるかどうか考えた。第一に、オルガノイドへの胆汁酸の摂取を調べるために、出願人は、胆汁酸塩アナログ(Mork et al.,2012)であるコリルグリチルアミド-フルオレセイン(CGamF)を用いてオルガノイドに挑戦した。外部からのCGamFの処理後、オルガノイドの管腔内へのCGamFの蓄積は首尾よく確認された(図2、パネルE)。同様に、蛍光胆汁酸コリル-リシル-フルオレセイン(CLF)は再現性よく排泄され、複数のヒトiPSC株からオルガノイド内に蓄積されることが見出された(図2、パネルF)。このアッセイの特異性を決定するために、出願人は、CRISPR-Cas9に基づく遺伝子編集アプローチを用いてBSEP非官能化対立遺伝子を有するiPSC株を開発した。BSEPは胆汁輸送に関与し、これと一致して、BSEP-KO iPSC-オルガノイドは、親対照オルガノイドと比較して蛍光胆汁酸を蓄積することができなかった。まとめると、これらのデータは、オルガノイドが胆汁酸を外側から摂取し、それらをオルガノイドの内側に排出する能力を有することを示唆している。
【0054】
CYP2C9*2 iPSC-肝臓オルガノイドに特異的なボセンタン誘発胆汁うっ滞
オルガノイドに基づく胆汁うっ滞表現型決定法の臨床的関連性を試験するために、出願人は、忠実度の問題に対処するために、我々のシステムに薬理ゲノム学的洞察を採用した。具体的には、周知の感受性遺伝子変異体(すなわち、例えば、ボセンタンについては、Clin Pharmacol Ther.2013 Dec;94(6):678-86.doi:10.1038/clpt.2013.143.Epub 2013 Jul 17.「Association of CYP2C9*2 with bosentan-induced liver injury」に記載されているCYP2C9*2)を保有する複数のiPSC株が収集され(図3、パネルA)、ボセンタンの存在下でそれらの胆汁うっ滞性の可能性を比較した(図3、パネルB)。興味深いことに、オルガノイドへのCLF排泄は、CY2C9*2保有オルガノイドでは著しく損なわれたが、非保有オルガノイドでは損なわれなかった。これは、図3、パネルCに示されるように、CYP2C9 * 2の不在下で3つの異なるiPSC由来オルガノイドにおいて示される、ボセンタンにより誘導される胆汁うっ滞に対する臨床的傾向と一致する。対照的に、イリノテカンに基づく胆汁うっ滞は、CYP2C9*2 iPSC株に特異的ではなかった。これらの結果は、オルガノイドに基づく胆汁うっ滞アッセイがヒトの多様性のいくつかの局面を予測することを示した。
【0055】
オルガノイドにおけるハイスループット薬物誘発性胆汁うっ滞評価
薬物によって誘発されたDILIにおける胆汁うっ滞の重要な役割を考慮して、出願人は次に、このオルガノイドモデルが特定の化合物の存在下でのDILIの病理学を反映するかどうかを考えた。多数の化合物を試験する前に、出願人は、CLFおよびCGamFの両方がいくつかの問題:1.バックグラウンドが強く、手動での洗浄プロセスが必要となる;2.シグナル強度が弱いため、慎重な集録設定が必要となる、に起因して高速イメージングに適用できないので、まずハイスループット蛍光ベースアッセイを開発しようとした。あるいは、肝細胞における排出輸送の有用なマーカーであると報告されているフルオレセインジアセテート(FD)の使用が提案されている(BarthおよびSchwarz,1982;Bravo et al.,1998)。極性蛍光代謝物フルオレセインは、細胞から毛細胆管腔内に活発に輸送されるまで細胞内に捕捉される(Malinen et al.,2014)。培地交換や曝露量の調整をせずにFDを輸送能力の生の評価に使用できるかどうかを判断するために、経時的肝胆道輸送活性を低速度撮影イメージングを用いてさらに調べた。オルガノイドをフルオレセインジアセテートと共に45分間インキュベートし、そして管腔内蓄積が処理後20分でオルガノイドの内部に観察された(図4、パネルA、B)。この輸送の流れの反対方向は、オルガノイドへのFDの微量注入によって決定された。管腔内へのジアセテートの微量注入後、フルオレセインは内部に留まり、オルガノイドの外部には観察されなかった(図4、パネルC)。要約すると、このFDに基づく評価モデルは、単純な蛍光ライブイメージング分析によって肝臓オルガノイドにおける一方向性の排出胆汁輸送を評価するためのハイスループットの可能性を有する。
【0056】
次に、出願人は、FDAが承認した10種類の薬物の実行可能な投与量を評価することによってFDに基づくアッセイの忠実度を検証し、細胞損傷による二次的な障害を測定した。出願人は、許容可能な生存率を有する9つの化合物について最適用量を首尾よく見出した。対照的に、アミオダロン(AMIO)は試験された範囲内でオルガノイドに対して有意に有毒であり、それ故、AMIOはさらなる潜在的なDILI評価試験から排除された(図12)。出願人は、DILI機序に基づいて3つのタイプ:胆汁うっ滞を伴わないDILI化合物(クラスA)、胆汁うっ滞を伴うDILI化合物(クラスB)、およびDILI化合物として報告されていない化合物(クラスC)(Oorts et al.,2016)のうちの1つとして分類された9つのトレーニング化合物(TC)と共にFDを使用して、オルガノイドにおける胆汁うっ滞の可能性を調査した。FD排泄の阻害可能性を定量化するために、出願人は、画像Jによってオルガノイドの外側と内側との間の蛍光強度比を決定することによって、単純だが頑健な定量化方法を開発した(図4、パネルB)。検証研究として、出願人は最初にシクロスポリンA(CSA)を用いて阻害率を評価する能力を確認した。FD処置後5分で、対照(DMSO)と比較して、24時間CSAで処置した群において有意な減少(対照と比較して0.4)が観察された(図4、パネルB)。次に、出願人は、このアプローチの忠実度を評価するために9つのTCを複数の濃度でスクリーニングした。興味深いことに、このスクリーニングシステムでは、TCの処置後24時間で、臨床的観察と同様に、FDの排出はクラスB化合物、ボセンタン、CSA、トログリタゾンおよびネファゾドンにおいて有意に減少した(p<0.01または0.05)が、一方で、クラスAおよびクラスCの化合物では阻害効果は観察されなかった(図4、パネルDの上の画像および図4、パネルE)。これらの結果は、肝臓オルガノイドモデルが、ヒト表現型との関連性が高い薬物開発における候補化合物についての胆汁輸送阻害効力を分類するのに有用であることを示唆した。
【0057】
オルガノイドにおけるミトコンドリア過負荷の評価
さらに、ミトコンドリアの毒性は、DILIの発症に関連する複数の機序においてDILIにおける中心的な役割を果たすので(Pessayre et al.,2012)、出願人はミトコンドリアの健康評価を調査した。この研究では、オルガノイド中のミトコンドリアの健康度を調べるために、ミトコンドリアの健康度を直接読み取ることにより、ミトコンドリア膜電位(MMP)の指標を用いて無傷細胞のMMPをモニターした(Li et al.,2014)。24時間のTCの処置後、MMPの用量依存的な増加がトルカポン(2~8倍の変化、p<0.01)、ジクロフェナク(7~13倍の変化、p<0.05または0.01)、CSA(3~7倍の変化、p<0.01)およびネファゾドン(4~42倍の変化、p<0.01)の処置で観察された(図5、パネルAの下の画像およびグラフ)。さらに、用量依存性は観察されなかったが、トログリタゾンはオルガノイド中のMMPも増加させた(3~5倍の変化、p<0.05)。一方、ボセンタン、エンタカポンおよびピオグリタゾンの処置後、MMPの増加は複数回投与においてさえ明確に観察されなかった。これらの結果は、肝臓オルガノイドに基づく毒性スクリーニング(LoT)と命名されたこのライブ画像に基づくアッセイが、ミトコンドリア毒性のあるなしにかかわらず化合物を区別することを実証した。
【0058】
LoTシステムによるDILI化合物の機構的分類の再検討
ヒトDILIの重度の症状発現は多因子性であり、ミトコンドリアおよびBSEP阻害などのDILIの既知の機序に特に関連する薬効の組み合わせと高度に関連している(Aleo et al.,2014)。しかし、現在のin vitro機能モデルはそのような多因子寄与を評価することは困難である。LoTシステムにおける多重化された生の機能的読み出しの利点を考慮して、出願人は、生存、胆汁うっ滞およびミトコンドリアストレスの間の関係を分析することを試みた。注目すべきことに、CSA、TROおよびNEFAなどの24時間で二重作用(胆汁うっ滞およびミトコンドリアストレス)を有する薬物は、TOL、DICLOおよびBOSと比べて72時間で細胞生存率を有意に低下させた。これらのデータは、二重毒性がDILIの重症度と非常に関連していることを示す臨床データと同等であり、以前の報告(Aleo et al.,2014)と一致する(図5、パネルB、C)。さらに、本出願人はまた、130μMでのエンタカポン処置はオルガノイド生存率を減少させた(24時間で85%から72時間で64%まで)ことを指摘した。エンタカポンは、DILIを誘導するために血漿タンパク質、主にアルブミンへの広範な結合を必要とする(Fisher et al.,2002)。しかしながら、利用可能な方法に基づいて、エンタカポンがどのように肝臓に対して有毒であるかは依然として分かっていない(Oorts et al.,2016)。まとめると、LoTシステムはDILIの主要な機序分類のための有利な人体モデルシステムであり、未知の複雑な機序をさらに詳しく説明するための有用な試験プラットフォームである。
【0059】
ヒト肝臓オルガノイドにおけるDILIに対する脆弱性の評価
DILIの発生率は多数の宿主因子によってしばしば混乱することが知られている。確かに、アセトアミノフェンのようないくつかの薬物からの肝毒性の危険性が、げっ歯類とヒトの両方において、肥満およびNAFLDに起因して、非常に増加するという証拠が増えている(APAP)(Fromenty,2013;Michaut et al.,2016)。したがって、無症状の段階であっても、患者に対してそのような「脆弱な」状態にあるDILI可能性を予測することは重要である。本研究では、出願人は、不飽和脂肪酸、オレイン酸への同時曝露によって脂肪毒性オルガノイドモデルを確立した(図6、パネルA)。オルガノイドに対するオレイン酸処置の3日後、オルガノイド中の脂質蓄積は激しくなった(図6、パネルB)。脂肪酸の酸化は活性酸素種(ROS)の重要な供給源であり、それはATPおよびニコチンアミドジヌクレオチドの枯渇をもたらし、脂肪肝におけるDNA損傷を誘発する(BrowningおよびHorton,2004)。これと一致して、ROS産生は脂質処置オルガノイドにおいて観察された(図6、パネルCおよび図13、パネルA)。さらに、脂肪酸は、公表されている表現型と同様に肝臓ミトコンドリアの大量の腫脹を誘発した(図6、パネルDおよび図13、パネルB)(ZborowskiおよびWojtczak,1963)。ラットモデルにおいて肝ミトコンドリア機能障害がNAFLDの発症に先行するので(Rector et al.,2010)、これらの結果は、肝毒性オルガノイドがある程度in vivo脂肪肝モデルをモデル化することを示している。
【0060】
この脂肪毒性オルガノイドモデルを強化されたROS産生を伴う脆弱な状態として認識して、トログリタゾン(0~50μM)を24時間処置し、オルガノイドにおける細胞生存率を評価した。50μMのトログリタゾン単独の処置により、細胞生存率は24時間で85%であり、一方、72時間で67%に減少した。しかしながら、脂肪毒性状態に対するトログリタゾンの処置後、オルガノイド死のためにオルガノイドの大量の断片化が観察された。その後の細胞生存率分析によりこの結果が確認された(対照と比較して約40%、p<0.05)(図6、パネルEおよび6、パネルF)。
【0061】
次に、出願人は、潜在的な治療用化合物によってオルガノイドをDILI様状態から回復できるかどうかを調べた。静脈内NACはアセトアミノフェンに関連しない急性肝不全患者の生存率を改善し(Lee et al.,2009)、トログリタゾン誘発性細胞毒性を減少させた(Rachek et al.,2009)ので、出願人は、ROS産生を阻害するためにN-アセチルシステイン(NAC)、抗酸化剤を用いた。予想通り、細胞生存率はNACによって有意に改善され、これはNACが脆弱な条件下でさえオルガノイドにおける細胞死を救済したことを示唆している(図6、パネルEおよび6、パネルF)。ほとんどのDILIの場合、唯一の介入は、原因薬物が同定できればそれを除去することである(PolsonおよびLee,2005)(Bohan et al.,2001;NavarroおよびSenior,2006)。このLoTシステムは、DILIを治療するための多剤レジメンおよび創薬に関連する原因薬物を同定するための有用なツールとなり得る。
【0062】
肝不全を含む重篤な有害事象(SAE)は、臨床開発中の薬物の減少または市販医薬品の中止の主な原因である。特に、DILIは薬物開発における重大な課題であり、ここで、トランスポーター活性の阻害によって誘導される薬物誘発性胆汁うっ滞は1つの主要な原因である。ヒト初代肝細胞を用いるサンドイッチ培養は、医薬品における現在の最良の選択である。最近の報告は、ヒト線維芽細胞からの分化転換細胞を用いた肝細胞に基づく胆汁うっ滞モデルの有望性を示したが(Ni et al.,2016)、ヒト肝細胞供給源が多様かつ制限されているため、ならびに複雑な定量化アルゴリズムが必要であるために、これらのアッセイプラットフォームは依然として再現性の課題ならびにスループットの問題を有する。さらに、ヒト肝細胞癌細胞株であるHepaRG細胞も胆汁うっ滞の特徴を評価するのに有用であるが、それらの低いBSEP(胆汁酸塩排出ポンプ、またはABCB11、胆汁酸排出のための重要な輸送体、ならびに胆汁うっ滞剤の主な標的)活性および時間のかかる分化手順のために、その使用が制限される(Le Vee et al.,2013)。さらに重要なことに、本質的な解剖学的構造の欠如はそれらの製薬産業への実用化を制限する。あるいは、記載された方法は、試験化合物の存在下でライブ蛍光イメージングにより胆汁輸送活性を測定するための簡単で、頑強な、かつハイスループットなシステムを可能にする。LoTアッセイの主な利点は以下:1.費用対効果(50オルガノイドあたり12.35ドル、384ウェルあたり94.85ドル)、2.アッセイスループット(単一オルガノイドで測定可能)、3.ミトコンドリアストレスなどの他の因子間の相互作用を分析するための多重読み出し、を含む。特に、上述のように、遡及的研究は、細胞生存率が二重読み出し;ミトコンドリアおよび胆汁うっ滞ストレスに依存して減少したため、複数の細胞ストレス可能性がDILI(Aleo et al.,2014)の発生率と関連しており、LoTアッセイはこの研究を用いた結果と同等であることを明らかにした。酸化ストレスは細胞死に重要な役割を果たしており、胆汁うっ滞性肝障害の発症と関連付けられた(Serviddio et al.,2004)。疎水性胆汁酸は、胆汁うっ滞の間に細胞内に蓄積し、正常なミトコンドリアの電子伝達を妨害し、呼吸複合体IおよびIIIの活性を阻害し、その結果アデノシン三リン酸合成を減少させ(Krahenbuhl et al.,1994)、ミトコンドリア機能不全誘導アポトーシスをもたらす(Bernardi,1996)。これらの知見と一致して、出願人のこれらの二重読み出しの相関分析は、図5に見られるように、胆汁うっ滞ストレスがミトコンドリアストレスと比較して肝障害についてより支配的な因子であることを示した。したがって、LoTシステムはDILI機序を調査するためのモデルシステムとして使用することができる。
【0063】
さらに、最近のiPSCパネル集団の確立を考慮すると、個人における異なる感受性についての潜在的評価もまた有望である(Inoue et al.,2014)。従来のin vitroアッセイシステムにおけるSAEの予測は、一般的に個体差に焦点を合わせていないが、SAEは多くの場合、SAEが発生しやすい小さな準患者群で起こる(StevensおよびBaker,2009)。LoTシステムを多様な集団iPSCパネルに適用することにより、以前は到達できないものであったSAEに対する異なる感受性について提供できるようになる。DILIの極めてまれな性質を考慮すると、特定のゲノムまたは民族的要因を有する患者の細胞の使用は、現在知られていないDILIの特異体質的な機序を解明するのに役立つだろう。したがって、LoTは、DILIの可能性を最小にするための本質的な洞察を提供することによって、製薬産業にとってゲームチェンジング的戦略として役立ち得る(図7)。
【0064】
このオルガノイドモデルにおける一つの制限は免疫学的反応の欠如である。過敏性反応から生じる免疫学的効果は、特異体質性DILIについての1つの可能な機序である。薬物による過敏性を評価するためのin vitroモデルは限られているが、トログリタゾン誘導性細胞傷害性による感受性は、肝細胞株、Huh7細胞およびTHP-1細胞を用いたin vitro共培養モデルを用いて高められた(Edling et al.,2009)。したがって、免疫系統に焦点を当てることによってLoTプラットフォームを進めることは、肝細胞炎症を評価するために興味深いものとなる。それにもかかわらず、LoT試験プラットフォームは、複数のFDA承認薬物による胆汁排出機能の阻害がこのアッセイにおいて再現可能に観察されるので、個々のオルガノイドから再現可能かつ大量のデータセットを生成することにおいて優れているように思われる。胆汁うっ滞が薬物誘発性、脂肪毒性、感染性および先天性の状態を含む広範囲の肝疾患によって誘発されることを考慮すると(Chatterjee et al.,2014)、オルガノイドに基づくLoTアッセイは、機序的研究ならびにDILIを超えた薬物スクリーニング用途の可能性を伴って、様々な状況における肝内胆汁うっ滞の分析に有用である。
【0065】
LoTアッセイによる脆弱なヒト肝状態の研究
肥満などの宿主因子は、DILIの発症に大きな影響を与えることが知られている(Heidari et al.,2014)が、その複雑な性質のために臨床現場では多くの場合理解されていない。肥満または脂肪肝の存在は、生体異物および非毒性化学物質(例えば、薬物)によって引き起こされる肝障害に対して患者を脆弱にする可能性があり、これらは危険因子の存在下でより低用量で肝毒性になる可能性がある(Fromenty,2013)。それにもかかわらず、現在の臨床試験システムは、一握りのバイオマーカー(ALT、AST)レベルで脆弱な肝臓条件下でボランティアを層別化するためには設計されていない。脂肪症を有する患者の数は無症状であり、投薬前にバイオマーカーで検出不可能であるため、臨床段階に入る前にこの脆弱条件における結果を予測することが重要である。
【0066】
リード化合物の生成/最適化などの初期薬物スクリーニング段階におけるこれらの脆弱条件における毒性を評価するために、LoTシステムを発展させる努力を重ね、出願人は、肝臓オルガノイドに脂肪毒性ストレスを適用し、DILIに対する高糖尿病薬物トログリタゾンの多大な相乗効果を実証した。実際、オルガノイド系は、オルガノイド中の肝細胞へのトリグリセリドの蓄積によって促進される大量の肝細胞死を示すことによって、この特徴をうまく反映している。肥満におけるDILIの機序の1つは、グルタチオン(GSH)レベルの低下を説明することができる(Michaut et al.,2016)。薬物誘発性酸化ストレスには、いくつかの原因があり得るが、特にGSH枯渇およびミトコンドリア呼吸鎖の阻害による(Begriche et al.,2011;Pessayre et al.,2010)。脆弱モデルは、細胞内GSHレベルの低下、およびNACを提供することによる改善されるミトコンドリア機能障害を介するトログリタゾン誘導酸化ストレスの悪化、を反映し得る。非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の罹患率の劇的な上昇を考慮すると、既存のNAFLDを悪化させるかまたはより頻繁に急性肝炎を誘発するための薬物の最小限のリストがまだあることは注目に値する。さらに、in vitro還元系は、単離された宿主因子がオルガノイドに効果的に展開され得るので、以前試験されなかった宿主因子を研究するための以前には予期されなかったウィンドウを提供する。
【0067】
LoTに基づく精密医療
個別化医療の観点から、LoTを用いた最適な薬物療法の選択は、臨床において主要な関心事となるであろう。例えば、抗精神病薬の選択において考慮される戦略は、精神科病処置集団における無視できない肝障害の発生率に従って肝耐性を考慮しなければならない;考えられるDILI薬の16%が神経精神薬である(Dumortier et al.,2002)。NASHが多くの場合、鬱病などの心理的障害を伴うことを考慮すると、抗鬱剤(三環系薬剤またはSSRI)、気分安定剤、および神経遮断薬のより安全な組合せ選択が必要である(Dumortier et al.,2002)。また、加齢に伴う慢性状態の増加のために、複数剤併用(すなわち、多剤併用)は高齢者に医療を提供することの一般的な結果であり(MarcumおよびGellad,2012)、DILIが疑われる場合に、原因となる薬を特定することが非常に困難となる。患者由来のiPSC-オルガノイドは無限かつ再現性のある供給源を提供するので、LoTは患者におけるDILIの可能性を層別化するためのパネルとして役立ち、個別化の観点からより安全な薬物を選択するための情報を提供することができる。
【0068】
DILIに対するLoTに基づく創薬
同様に重要なのは、LoT系を用いた抗DILI治療用化合物スクリーニングの潜在的用途である。多くの薬は肝臓とDILIに有害な影響を及ぼしており、それは臨床的に大きな問題である。実際には、アセトアミノフェンは、米国におけるDILIの症例の約半分を占める(Russo et al.,2004)。世界の他の地域、例えば発展途上国では、抗結核薬などの他の薬がDILIの主な原因である可能性がある(BellおよびChalasani,2009)。しかし、利用可能な対症療法は数えるほどしかない。ここで、概念実証実験として、出願人は、トログリタゾンによって証明されるように、DILIの毒性機序に抵抗する化合物の治療効果を評価するためのオルガノイド生存実験を確立した。NACがパラセタモール過量投与の主な治療選択である(Makin et al.,1995;VermaおよびKaplowitz,2009)が、最近では、研究の焦点は非パラセタモール性DILIにおけるNACの使用の調査へと変化している(Chughlay et al.,2016)。LoTシステムは、非パラセタモール薬によるDILIに対するNACの有効性を評価するのに有用である。さらに、このさらなるハイスループットアプローチは、DILI様症状をin vitroで回復する大規模化合物ライブラリをスクリーニングするための強力なツールとして役立つ。本明細書に記載の方法を組み合わせて、臨床DILI表現型に関連する細胞内因性および外因性因子を同定および研究するために使用することができ、リード化合物最適化、機序研究、および精密化医療、ならびに抗DILI療法スクリーニング用途が容易となる。
【0069】
方法
PSCの維持
この研究で使用されたCYP2C9*2変異体ヒトiPSCクローンを有するTkDA3は、K.EtoおよびH.Nakauchiの好意により提供された。他の適切な株には、京都大学から寄贈されたヒトiPSC株およびCoriell Biorepositoryから購入した株が含まれ、以前に記載されたように維持された(Takahashi et al.,2007)。未分化hiPSCは、mTeSR1培地中でフィーダー不含条件下で維持された(StemCell technologies、Vancouver、Canada)。他の適切な培地は、LonzaからのE8、またはAijinomoto Co.からのStemFitを含む。プレートを5%CO/95%空気を伴うインキュベーター中、37℃で、1/30希釈のMatrigel(Corning Inc.、New York、NY、USA)でコーティングした。hPSC維持。Matrigelの代わりに、Mippi CoまたはBiolamina CoのLaminin 511、Laminin 411を使用することができる。
【0070】
肝臓オルガノイド(HLO)の産生
胚体内胚葉へのhiPSCの分化は、以前に記載された方法にいくつかの修飾を加えて使用して、誘導された(Spence et al.,2011)。簡単に説明すると、hiPSCのコロニーをAccutase(Thermo Fisher Scientific Inc.、Waltham、MA、USA)中で単離し、150000~300000細胞をMatrigelまたはラミニンコート組織培養24ウェルプレート(VWR Scientific Products、West Chester、PA)に蒔いた。細胞が高密度になったとき(90%超の細胞がウェルを覆う)、1日目には、100ng/mLのアクチビンA(R&D Systems、Minnepolis、MN)および50ng/mLの骨形成タンパク質4(BMP4;R&D Systems)を含むRPMI 1640培地(Life Technologies、Carlsbad、CA)に、2日目には、100ng/mLのアクチビンAおよび0.2%ウシ胎仔血清(FCS;Thermo Fisher Scientific Inc.)を含むRPMI 1640培地に、および3日目には、100ng/mLのアクチビンAおよび2%FCSを含むRPMI 1640培地に、培地を交換した。4~6日目に、細胞を、500ng/mlの線維芽細胞増殖因子(FGF4;R&D Systems)および3μMのCHIR99021(Stemgent、Cambridge、MA、USA)を含有するB27(Life Technologies)およびN2(Gibco、Rockville、MD)を伴うアドバンストDMEM/F12(Thermo Fisher Scientific Inc.)中で培養した。細胞分化のための培養物を5%CO/95%空気の雰囲気中で37℃で維持し、培地は毎日交換した。分化した胚体内胚葉は、7日目にプレート上で発芽を示した。スフェロイドがMatrigel中に包埋するのに十分でない場合は、4~6日目の培地を再び添加し、37℃で一晩インキュベートする。
【0071】
肝臓オルガノイドへの分化3つの方法:「Matrigelドロップ法」、「Matrigelサンドイッチ法」、および「Matrigelフリー法」を使用して、DEを肝臓オルガノイドに分化させてもよく、各方法については以下に記載される。
【0072】
Matrigelドロップ法:7~8日目に、プレーティングした細胞を有する胚体内胚葉オルガノイドを静かにピペッティングして、ディッシュから剥離した。単離したスフェロイドを800rpmで3分間遠心分離し、上清を除去した後、ディッシュ上の100%Matrigelドロップに包埋した。プレートを5%CO/95%空気の雰囲気中、37℃で5~15分間置いた。Matrigelが固化した後、アドバンストDMEM/F12に、B27、N2およびレチノイン酸(RA;Sigma、St.Louis、MO)2μMを1~5日間添加した。培地を一日おきに交換した。RA処理後、Matrigelドロップ中に包埋されたオルガノイドを、10ng/mLの肝細胞増殖因子(HGF;PeproTech、Rocky Hill、NJ)、0.1μMのデキサメタゾン(Dex;Sigma)および20ng/mLのオンコスタチンM(OSM;R&D Systems)を伴う肝細胞培養培地(HCM Lonza、Walkersville、MD)中で培養した。細胞分化のための培養物を5%CO/95%空気の雰囲気中で37℃に維持し、培地は3日毎に交換した。20~30日目頃に、Matrigelドロップ中に包埋されたオルガノイドを、あらゆる分析のために、スクラッチおよび穏やかなピペッティングによって単離した。
【0073】
Matrigelサンドイッチ法:7~8日目に、プレーティングした細胞を有する胚体内胚葉オルガノイドを静かにピペッティングして、ディッシュから剥離した。単離したスフェロイドを800rpmで3分間遠心分離し、上清を除去した後、それらを100%Matrigelと混合した。同時に、全てのサプリメントを含む肝細胞培養培地を同容量の100%Matrigelと混合した。HCMおよびMatrigel混合物をディッシュの底にプレーティングして、プレート上に厚いコーティング(0.3~0.5cm)を作り、次いで、5%CO/95%空気の雰囲気中に37℃で15~30分間置いた。Matrigelを固化させた後、Matrigelと混合したスフェロイドを、Matrigelで厚くコーティングされたプレート上に播種した。プレートを5%CO/95%空気の雰囲気中、37℃で5分間置いた。アドバンストDMEM/F12に、B27、N2およびレチノイン酸(RA;Sigma、St.Louis、MO)2μMを1~5日間添加した。培地を一日おきに交換した。RA処理後、Matrigelドロップ中に包埋されたオルガノイドを、10ng/mLの肝細胞増殖因子(HGF;PeproTech、Rocky Hill、NJ)、0.1μMのデキサメタゾン(Dex;Sigma)および20ng/mLのオンコスタチンM(OSM;R&D Systems)を伴う肝細胞培養培地(HCM Lonza、Walkersville、MD)中で培養した。細胞分化のための培養物を5%CO/95%空気の雰囲気中で37℃に維持しそして培地を3日毎に交換した。20~30日目頃に、Matrigelドロップ中に包埋されたオルガノイドを、あらゆる分析のために、スクラッチおよび穏やかなピペッティングによって単離した。
【0074】
Matrigelフリー法:7~8日目に、プレーティングした細胞を有する胚体内胚葉オルガノイドを、B27(Life Technologies)およびN2(Gibco、Rockville、MD)レチノイン酸(RA;Sigma、St.Louis、MO)2μMを含むアドバンストDMEM/F12(Thermo Fisher Scientific Inc.)中で平面培養を4日間続けた。培地を一日おきに交換した。4日間の平面培養の後、オルガノイドは出芽し始めるが、一方で、2D細胞は肝細胞に分化する。オルガノイドおよび肝細胞の両方は、10ng/mLの肝細胞増殖因子(HGF;PeproTech、Rocky Hill、NJ)、0.1μMのデキサメタゾン(Dex;Sigma)、および20ng/mLのオンコスタチンM(OSM;R&D Systems)10日間を伴う肝細胞培養培地(HCM Lonza、Walkersville、MD)下で60日間にわたって維持することができる。オルガノイドアッセイのために、浮遊オルガノイドは、超低接着マルチウェルプレート6ウェルプレートに収集することができ、必要に応じて、その後のアッセイに使用することができる。細胞分化のための培養物を5%CO/95%空気の雰囲気中で37℃に維持しそして培地を3日毎に交換した。
【0075】
H&E染色および免疫組織化学
肝臓オルガノイドをMatrigelから収集し、4%パラホルムアルデヒド中で固定し、次いで、パラフィン中に包埋した。切片をH&E染色および免疫組織化学染色にかけた。以下の一次抗体を使用した:抗ヒトアルブミン抗体(1:200希釈 abcam、Cambridge、UK)、抗IV型コラーゲン抗体(1:200希釈 eBioscience、San Diego、CA、USA)、抗ZO-1抗体(1:200希釈 BD Transduction Laboratories(San Jose、CA、USA)および抗MRP2抗体(1:200希釈 Novus Biologicals、Littleton、CO)。色素結合二次抗体、Alexa Fluor 568結合ロバ抗ウサギ免疫グロブリン(IgG;1:1000;Invitrogen、A10042)を室温で2時間、オルガノイドに適用した。核を10μg/mLのHoechst 33342(Sigma)を用いて室温で10分間染色し、その後オルガノイドを洗浄用緩衝液で3回再度洗浄した。標本を蛍光顕微鏡または明視野下で観察した。全組織標本免疫組織化学染色のために、肝臓オルガノイドを4%パラホルムアルデヒドで30分間固定し、2.5% Tween20(Sigma)で室温で透過処理した後、オルガノイドを、PBSで希釈した以下の一次抗体:ポリクローナル抗BSEP抗体(1:200 Sigma)と共に4℃で一晩インキュベートした。蛍光色素結合二次抗体、Alexa Fluor 568結合ロバ抗ウサギ免疫グロブリン(IgG;1:500;Invitrogen、A10042)を室温で2時間、オルガノイドに適用した。反応後、細胞を洗浄用緩衝液(0.5% Triton-X 100[Sigma]および0.5%ウシ血清アルブミン[BSA;Sigma]を含むPBS)で3回洗浄した。核を10μg/mLのHoechst 33342(Sigma)を用いて室温で10分間染色し、その後オルガノイドを洗浄用緩衝液で3回再度洗浄した。標本をNikon A1Rsi倒立共焦点顕微鏡で実施した共焦点イメージングの下で観察した。
【0076】
RNA単離、RT-qPCR
RNeasyミニキット(Qiagen、Hilden、Germany)を用いてRNAを単離した。製造元のプロトコルに従ってRT-PCRのためのSuperScriptIII First-Strand Sysnthesis Systen(Invitrogen、CA、USA)を用いて逆転写を行った。qPCRは、QuantStudio 3 リアルタイムPCRシステム(Thermo)上でTaqMan遺伝子発現マスターミックス(Applied Biosystmes)を使用して実施した。各標的遺伝子についての全てのプライマーおよびプローブ情報は、Universal ProbeLibrary Assay Design Center(https://qpcr.probefinder.com/organism.jsp)から入手した。
【0077】
RNA配列データの主成分分析
RNA単離、cDNA合成、Illumina HiSeq 2500での配列決定は、以前に記載されている(Asai et al.,2017)。TopHat(バージョン2.0.13)を用いてRNA-Seqリードをヒトゲノム(GRCh37/hg19)に整列させた。TophatからのアラインメントデータをアセンブラーCufflinks(バージョン2.2.1)に供給して、アラインメントされたRNA-Seqリードを転写物に組み立てた。注釈付き転写物は、UCSCゲノムブラウザ(http://genome.ucsc.edu)およびEnsemblデータベースから得た。転写物存在量は、マッピングされた百万フラグメント当たりのエキソンの1キロベース当たりのフラグメント数(FPKM)で測定された。
【0078】
pHLOの系統を比較するために、出願人は、以下のようにインハウスのRNA配列データ(pFGおよびオルガノイド)を前処理した公開データと組み合わせた:iPSC、DE、HS、HP、iDHおよびNHCの転写物存在量は、GSE86007から得た(Jalan-Sakrikar et al.,2016);小児肝臓組織、成体肝臓組織、成体右葉組織、胎児肝臓組織、および初代肝細胞のものが、エンコード(ENCODE)(ENCFF418BVF、ENCFF804QWF、ENCFF965IQH、ENCFF918SJO、ENCFF367FJJ、ENCFF029IUF、ENCFF280YNO、ENCFF347TXW、ENCFF724CQI、ENCFF624LQL、ENCFF962SOD、ENCFF170AEC)(Consortium、2012;Sloan et al.,2016)およびGSE85223(Asai et al.,2017)から得られた。可能なデータ前処理の後に全てのデータセットが同一の遺伝子記号を有する場合には遺伝子を使用した。出願人は、log2空間でFPKM+1およびRPKM+1データの四分位数正規化を行い、続いて中央値発現レベルの上位10000以内の遺伝子を選択した。RパッケージFactoMineR(バージョン1.35)を使用することによってスケール化された遺伝子発現レベルを使用することによって、主成分分析を実施した(Sebastien Le,2008)。
【0079】
タンパク質分泌分析
オルガノイドのアルブミン、フィブリノゲンおよび補体因子の分泌レベルを測定するために、超低接着96ウェルプレート(Corning)上のオルガノイドの培養上清200μLを収集した。培養上清を回収し、使用時まで-80℃で保存した。ヒトアルブミンELISA定量セット(Bethyl Laboratories、Inc.、TX、USA)およびフィブリノゲン(Thermo Fisher Scientific)を製造元の指示に従って用いて、上清をアッセイした。補体因子を分析するために、Luminexシステム(Luminex Corporation、Austin、TX)を製造業者の指示に従って用いて、上清を測定した。細胞数当たりのアルブミン産生量を算出するために、細胞数のオルガノイド直径による線形回帰式を用いた。管腔内オルガノイドの総胆汁酸分泌レベルを測定するために、マイクロインジェクションNanoject II(Drummond Scientific、Broomall、PA、USA)を用いて、オルガノイド内部の液体を吸収した。吸収した液体をPBSで希釈し、次いで、総胆汁酸ELISAキット(Antibodies-online、Inc.、GA、USA)を用いてアッセイした。総胆汁酸の容量を算出するために、オルガノイド中の細胞の数を、アルブミン産生についてと同じ方法で線形回帰式を用いて算出し、また、コール酸の分子量を算出のために使用し、以前の報告における容量と比較した。
【0080】
透過電子顕微鏡法
透過型電子顕微鏡法のために、簡単には、オルガノイドを4℃で一晩3%グルタルアルデヒド中で固定し、0.1Mカコジル酸ナトリウム緩衝液中で洗浄し、次いで、4%四酸化オスミウム中で1時間インキュベートした。続いてそれらを洗浄し、次いでエタノール系列中で脱水し、そして最後にプロピレンオキシド/LX112中に包埋した。次に組織を切片化し、2%酢酸ウラニル、続いてクエン酸鉛で染色した。画像はHitachi透過型電子顕微鏡で視覚化した。
【0081】
CGamFアッセイ
簡単に説明すると、オルガノイドを、輸送用緩衝液(118mM NaCl、23.8mM NaHCO 3、4.83mM KCl、0.96mM KH 2 PO 4、1.20mM MgSO 4、12.5mM HEPES、5mMグルコース、1.53mM CaCl 2、pH7.4に調整)と共に30分間プレインキュベートした。次に、オルガノイドを10μMの蛍光標識胆汁酸(CGamF;Dr Hofmannから寄贈)で1時間処理し、その後、オルガノイドをPBSで3回洗浄した。画像を蛍光顕微鏡BZ-X710(Keyence、Osaka、Japan)上で得た。
【0082】
胆汁輸送阻害の評価
フルオレセインジアセテートをオルガノイド中の胆汁輸送活性を評価するために使用した。25日目頃に、オルガノイドをPBSですすぎ、フルオレセインジアセテートを培地中でオルガノイドに処理した。さらに、輸送の方向を調べるために、Nanoject III(Drummond Scientific)を用いてフルオレセインジアセテートをオルガノイドに注入した。フルオレセインジアセテートの処理または注射の後、画像を蛍光顕微鏡BZ-X710(Keyence)で捕捉した。次に、試験システムの実現可能性を確認するために、HCM中の10mg/mLフルオレセインジアセテート(Sigma)に20μMシクロスポリンA(CSA;Sigma)を45分間添加し、蛍光顕微鏡法BZ-9000(Keyence)を使用して画像を連続的に捕捉した。胆汁輸送阻害の評価のために、ジメチルスルホキシド(DMSO;Sigma)、陰性対照としてストレプトマイシン(STP;Sigma)、トルカポン(Tol;Sigma)、ジクロフェナク(Diclo;Sigma)、ボセンタン(BOS;Sigma)、CSA、トログリタゾン(Tro;Sigma)、ネファドゾン(Nefa;Sigma)、エンタカポン(Enta;Sigma)およびピオグリタゾン(PIO、Sigma)での処理後、HCM中の10mg/mLフルオレセインジアセテートを加えた。5分間インキュベートした後、オルガノイドをPBSで3回すすぎ、そして蛍光顕微鏡BZ-X710を用いて画像を連続的に捕捉した。Imagej 1.48kソフトウェア(Wayne Rasband、NIHR、USA、http://imagej.nih.gov/ij)を使用して、オルガノイドの外側と内側の強度の比を計算することによって、分析を行った。処理中の明度またはコントラストの変化は、画像全体にわたって等しく適用された。
【0083】
ミトコンドリア毒性可能性の評価
各培養条件下の超低接着マルチウェルプレート6ウェルプレートにて培養した後、オルガノイドを拾い上げ、Microslide 8ウェルガラスボトム(Ibidi、WI、USA)に播種した。ミトコンドリア膜電位(MMP)の評価のために、ジメチルスルホキシド(DMSO;Sigma)、陰性対照としてストレプトマイシン(STP;Sigma)、トルカポン(Tol;Sigma)、ジクロフェナク(Diclo;Sigma)、ボセンタン(BOS;Sigma)、シクロスポリンA(CSA;Sigma)、トログリタゾン(Tro;Sigma)、ネファドゾン(Nefa;Sigma)、エンタカポン(Enta;Sigma)およびピオグリタゾン(PIO、Sigma)での24時間の処理後、250nM テトラメチルローダミン、メチルエステル、過塩素酸塩(TMRM;Thermo Fisher Scientific)を加えた。30分間インキュベートした後、オルガノイドをPBSで3回すすぎ、60倍の水浸対物レンズを用いてNikon A1倒立共焦点顕微鏡(日本)上で画像をスキャンした。TMRMのアリアス(Arias)および強度は、IMARIS 8(Bitplane AG、Switzerland)によりMMPとして計算された。胆汁うっ滞性ストレスおよびミトコンドリア性ストレスを評価するために、薬物処置後24時間目にオルガノイドごとにCellTiter-Glo(登録商標)発光細胞生存率アッセイ(Promega、Mannheim、Germany)を用いることにより細胞生存率を測定し、細胞死に至る細胞損傷に起因する二次的変化を回避するために、各用量にて生存率が低下しないことが確認された。
【0084】
ミトコンドリアおよび胆汁うっ滞性ストレスとオルガノイドにおける細胞生存率との関係の分析
細胞生存率とミトコンドリアおよび胆汁うっ滞性ストレスとの関係を実証するために、まず、ミトコンドリアおよび胆汁うっ滞性ストレスアッセイから得られた値に基づいて、以下の式:「指数=-(サンプル値-対照値)×100」を用いて、指数を設定した。ミトコンドリアおよび胆汁うっ滞性ストレスに関連する細胞損傷を分析するために、薬物処置後72時間目に、オルガノイド当たりのATP含量を、CellTiter-Glo(登録商標)発光細胞生存率アッセイ(Promega)を使用して測定した。これらのデータは、Infogr.am(http://infogr.am):無料のウェブベースのツールを使用して図4、パネルBとして示された。
【0085】
脆弱条件におけるオルガノイドの生存率の評価
実験は図5Aに示すように実施した。Matrigelから排除され洗浄された後、オルガノイドは、超低接着マルチウェルプレート6ウェルプレート(Corning)上で3日間800μMオレイン酸で処理された。次に、50μMのトログリタゾンを50μMのNACの存在下または非存在下で24時間処理した。細胞生存率は、CellTiter-Glo(登録商標)発光細胞生存率アッセイ(Promega)を用いて実施した。蛍光顕微鏡BZ-9000を用いて画像を連続的に得た。
【0086】
脂質誘発ミトコンドリアストレス評価
各培養条件下の超低接着マルチウェルプレート6ウェルプレートにて培養した後、20個のオルガノイドを拾い上げ、Microslide 8ウェルガラスボトム(Ibidi、WI、USA)に播種し、生細胞染色に付した。以下の試薬またはキットを使用した:脂質用のBODIPY(登録商標)493/503(Thermo Fisher Scientific)、および細胞骨格用のSiRアクチンキット(USA Scientific、FL、USA)、ROS用のCellROX(登録商標)緑色試薬(Fisher Scientific)、ミトコンドリア用のTMRM(ThermoFisher Scientific)。オルガノイドを可視化し、60倍の水浸対物レンズを用いてNikon A1倒立共焦点顕微鏡(日本)でスキャンした。ROS産生、ミトコンドリアのサイズおよび数は、IMARIS8によって分析された。
【0087】
統計学
統計的有意性は、対応のないスチューデントのt検定または一元配置分散分析とダネットの多重比較事後検定を用いて決定した。P<0.05を有意と見なした。
【0088】
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【0089】
他に指示がない限り、パーセンテージおよび割合は全て重量で計算される。
【0090】
全てのパーセンテージおよび割合は、特に指示がない限り、組成物全体を基準にして計算される。
【0091】
本明細書全体を通じて記載されているあらゆる最大数値限定には、それより小さいあらゆる数値限定が、そのようなより小さい数値限定が本明細書に明確に記載されているかのように含まれることを理解すべきである。本明細書全体を通じて記載されるあらゆる最小数値限定は、それよりも大きいあらゆる数値限定を、あたかもこうしたそれよりも大きい数値限定が本明細書に明確に記載されているかのように含む。本明細書全体を通じて記載されるあらゆる数値範囲は、こうしたより広い数値範囲内に入る、それよりも狭いあらゆる数値範囲を、あたかもこうしたそれよりも狭い数値範囲が全て本明細書に明確に記載されているかのように含む。
【0092】
本明細書に開示した寸法および値は、列挙された正確な数値に厳密に限定されるものと理解されるべきではない。むしろ、特に指定されないかぎり、そのような各寸法は、列挙された値とその値の周辺の機能的に同等の範囲の両方を意味することが意図されている。例えば、「20mm」として開示される寸法は、「約20mm」を意味するものとする。
【0093】
相互参照されるまたは関連特許もしくは出願のいずれも含めた、本明細書に引用されているすべての文書は、明示的に除外される、または特に限定されないかぎり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。いかなる文献の引用も、本明細書中で開示または特許請求される任意の発明に対する先行技術であるとはみなされず、あるいはそれを単独でまたは他の任意の参考文献(単数または複数)と組み合わせたときに、そのような発明すべてを教示、示唆、または開示するとはみなされない。さらに、本文書における用語の任意の意味または定義が、参照により組み込まれた文書内の同じ用語の意味または定義と矛盾する場合、本文書におけるその用語に割り当てられた意味または定義が適用されるものとする。
【0094】
本発明の特定の実施形態を例示し説明してきたが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく他の様々な変更および修正を加えることができることは当業者には明らかであろう。したがって、本発明の範囲内にあるそのような全ての変更および修正を添付の特許請求の範囲で網羅することを意図している。
図1
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