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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】回転ロック装置および巻上機
(51)【国際特許分類】
   B66D 5/04 20060101AFI20240828BHJP
   B66D 3/14 20060101ALI20240828BHJP
【FI】
B66D5/04
B66D3/14 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023535139
(86)(22)【出願日】2022-03-31
(86)【国際出願番号】 JP2022016822
(87)【国際公開番号】W WO2023286404
(87)【国際公開日】2023-01-19
【審査請求日】2024-03-11
(31)【優先権主張番号】P 2021116227
(32)【優先日】2021-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000129367
【氏名又は名称】株式会社キトー
(74)【代理人】
【識別番号】100120101
【弁理士】
【氏名又は名称】畑▲崎▼ 昭
(72)【発明者】
【氏名】河西 貴幸
【審査官】加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】特許第7372016(JP,B2)
【文献】特開2017-218842(JP,A)
【文献】特開2000-016769(JP,A)
【文献】特開2003-226489(JP,A)
【文献】国際公開第2012/053628(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66D 5/04
B66D 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸状部材に取り付けられ、当該軸状部材と一体的に回転するストッパ支持部材と、
前記軸状部材の軸心側から外方側に向かってスライド可能な状態で前記ストッパ支持部材に支持されているストッパ部材と、
円盤状に設けられ、前記ストッパ支持部材に対して相対的に回動可能に設けられ、前記ストッパ部材を前記ストッパ支持部材の所定の位置に保持する保持プレートと、
前記ストッパ支持部材に対し前記保持プレートを一方の回転方向である第1回転方向に向かって付勢する付勢手段と、
前記ストッパ部材と係合することで前記軸状部材の回転を停止させるストッパ係止手段と、
を備え、
前記ストッパ部材は、前記保持プレートに向かって突出するストッパ突起を有し、
前記保持プレートは、前記ストッパ突起と係合し前記ストッパ部材を前記ストッパ支持部材の径方向における所定位置に保持するガイド溝を有し、
前記ガイド溝は、前記ストッパ部材が前記径方向における所定位置で係合すると共に前記軸状部材と同心の円弧で形成されている第1規制壁と、前記径方向における所定位置から外径側に前記ストッパ部材が突出した位置で係合する第2規制壁とを有していて、
前記第2規制壁は前記ガイド溝の周方向における一方側に設けられていて、
前記軸状部材が前記第1回転方向に向かい回転を加速したときに、前記付勢手段による付勢力に抗して前記ストッパ支持部材と保持プレートとが相対的に回転して、前記ストッパ突起が前記第1規制壁との間の係止を外れた際に、前記ストッパ部材が所定の位置から前記ストッパ係止手段と係合する位置に突出し、前記軸状部材の回転を停止させると共に、
前記ガイド溝の前記周方向の他方側には、前記径方向における所定位置から外径側に前記ストッパ部材が突出した位置で当該ストッパ部材と係合することで前記第1回転方向とは逆の第2回転方向に向かって前記ストッパ支持部材に対し前記保持プレートが相対的に回転するのを阻止する第3規制壁が設けられていて、
前記第3規制壁への前記ストッパ突起の係合時には、前記ストッパ部材と前記ストッパ係止手段とが係止しない部位に位置する、
ことを特徴とする回転ロック装置。
【請求項2】
請求項1記載の回転ロック装置であって、
前記第3規制壁よりも前記周方向の他方側には、前記ストッパ部材を前記軸心側の所定の位置に戻すための復帰ガイド壁が設けられていて、
前記復帰ガイド壁は、前記周方向の一方側から前記他方側に向かうにつれて、前記内径側に向かうように傾斜している、
ことを特徴とする回転ロック装置。
【請求項3】
請求項2記載の回転ロック装置であって、
前記第3規制壁および前記復帰ガイド壁は、移動規制溝部の内壁に設けられている、
ことを特徴とする回転ロック装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の回転ロック装置であって、
前記ストッパ支持部材は軟磁性材料から構成されると共に、
前記ストッパ部材のうち前記径方向の内径側と前記ストッパ支持部材の対向部位の少なくとも一方には、互いに吸引する方向に磁力を及ぼすマグネットが取り付けられている、
ことを特徴とする回転ロック装置。
【請求項5】
請求項4記載の回転ロック装置であって、
前記ストッパ部材のうち前記径方向の内径側と前記ストッパ支持部材の対向部位の双方には、互いに吸引する方向に磁力を及ぼすマグネットがそれぞれ取り付けられている、
ことを特徴とする回転ロック装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の回転ロック装置であって、
前記保持プレートには、保持プレートの表面または裏面から突出する突出手段が設けられていて、
前記突出手段は、前記付勢手段によって前記保持プレートが前記第1回転方向に向かって付勢された際に、前記ストッパ突起が前記ガイド溝の前記第1回転方向とは反対側の端部に当接するよりも先または当接するのと同時に前記ストッパ支持部材の側面に当接する位置に配置されている、
ことを特徴とする回転ロック装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の回転ロック装置であって、
前記保持プレートには、保持プレートの一部を折り曲げることで形成されると共に、前記付勢手段よりも前記保持プレートの外径側に配置されるバネ受け突部が設けられていて、
前記バネ受け突部は、前記付勢手段が前記保持プレートの回転時の遠心力によって外径側に脱落するのを受け止める、
ことを特徴とする回転ロック装置。
【請求項8】
一対のフレームに軸支され、荷を吊り上げるチェーンが掛け回されているロードシーブと、
前記ロードシーブと減速ギヤを介して連結される駆動軸と、
前記駆動軸に取り付けられているブレーキ装置と、
前記ロードシーブを巻上げおよび巻下げ方向に回転駆動操作する操作レバーと、を備えている巻上機であって、
前記駆動軸の外周には、請求項1から6のいずれか1項に記載の回転ロック装置が配置されていて、
前記軸状部材は前記駆動軸であり、
前記ストッパ係止手段は前記フレームに取り付けられている、
ことを特徴とする巻上機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転ロック装置および巻上機に関する。
【背景技術】
【0002】
荷物を昇降および引き寄せたり、荷物をスリング等で固定する(荷締めする)等の作業のために、レバーホイストが広く用いられている。このレバーホイストは、手で操作レバーを駆動操作することで、チェーンの巻上げ(巻取り)および巻下げ(巻戻し)を行える。このようなレバーホイストとしては、たとえば特許文献1に示すものがある。特許文献1に示すレバーホイストでは、従来からあるブレーキ機構(メカニカルブレーキ)の他に、ピニオンのフレーム(2B)よりも操作ハンドル(12)側には、2つの遠心力部材(31)およびその遠心力部材(31)を収納するハウジングリング(35)が設けられている。この遠心力部材(31)は、遠心力の作用によって、ハウジングリング(35)の内周面に押し付けられる。それにより、荷が落下する速度を低下させるようにしている。
【0003】
なお、上記のブレーキ機構(メカニカルブレーキ)は、たとえば特許文献2に示すように構成されている。このブレーキ機構は、駆動軸(4)に回転不能に取り付けられた受圧部材(7)と、駆動軸(4)に螺合する駆動部材(8)と、一対のブレーキ板(10a,10b)と、逆転防止用爪車(11)と、爪軸(15)に取り付けられたラチェット爪(12)とを備えている。そして、ラチェット爪(12)がバネ(13)によって付勢されることで、ラチェット爪(12)は爪車(11)の係止歯(11a)に係合されている。かかる係合により、爪車(11)の逆転が防止され、それによって駆動軸(4)の巻下げ方向への回転にはブレーキ力が作用する機構となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】DE102015121581A1号公報
【文献】特開2008-230726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ホイスト類(レバーホイストやチェーンブロック)の巻上げに際して、外周に多数のラチェット歯が形成された爪車と、このラチェット歯と噛み合う爪部材を備えたラチェット機構を有するブレーキ機構(メカニカルブレーキ)に、例えば特許文献2に示すような爪車(11)の係止歯(11a)とラチェット爪(12)との噛み合い不具合や損傷が発生すると、機能しなくなる虞がある。ブレーキが機能しなくなると、吊り荷の荷重によってチェーンを巻き取るロードシーブが勢い良く巻下げ方向に回転し始め荷を落下させてしまう虞がある。
【0006】
ここで、ブレーキ機構が故障した場合、特許文献1に開示の構成では、遠心力の作用によって、遠心力部材(31)がハウジングリング(35)の内周面に押し付けられることで、荷の落下速度(すなわち、ピニオンの回転速度)を遅くすることはできる。しかしながら、荷が落下するのを停止させることはできない。
【0007】
また、特許文献2に示す構成では、爪軸(15)は、圧入等によってフレーム(1b)に取り付けられている。しかしながら、フレーム(1b)の厚みは比較的薄いため、爪軸(15)の長さが長くなると爪軸(15)に作用するモーメントも大きくなるので、その分だけ爪軸(15)とその取付部の強度を高くする必要があるが、フレーム(1b)の孔部への圧入で爪軸(15)を取り付ける場合、その取付強度の向上には限界がある。
【0008】
そこで、ブレーキ装置が故障した場合などにおいても、荷が落下してしまう(巻下げ方向へ回転してしまう)のを確実に停止させることが可能な回転ロック装置の開発が進められている。
【0009】
ところで、上記の開発が進められている回転ロック装置においては、ロードチェーンの下端に取り付けられた下フックを吊り荷などに引っ掛けた状態で、巻上操作を開始しようとした際に、ロードチェーンに弛みがある場合、レバー操作では、チェーンの弛みを取るのに時間がかかってしまう。そのため、ロードチェーンの無負荷側を勢い良く引っ張るといった巻上げ動作をすることで、ロードチェーンの弛みを一気に無くす方法が作業現場ではとられることがある。しかしながら、上記の回転ロック装置においては、ロードチェーンの弛みがなくなる際に、軸状部材の回転が急激に停止するか、または急減速する。その場合、実際には荷が落下していない(巻上げ方向への動作である)にも拘わらず、回転ロック装置が意図せずに作動してしまう虞があり、回転ロック装置を復旧させる手間が生じるという問題がある。
【0010】
本発明は上記の事情に鑑みなされたもので、ブレーキ装置が故障した場合などに、巻下げ方向への軸状部材の回転を確実に停止させることが可能であると共に、巻上げ方向に軸状部材が回転させられた際に意図せずに作動して軸状部材が回転不能となるのを防止することが可能な回転ロック装置および巻上機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の第1の観点によると、軸状部材に取り付けられ、当該軸状部材と一体的に回転するストッパ支持部材と、軸状部材の軸心側から外方側に向かってスライド可能な状態でストッパ支持部材に支持されているストッパ部材と、円盤状に設けられ、ストッパ支持部材に対して相対的に回動可能に設けられ、ストッパ部材をストッパ支持部材の所定の位置に保持する保持プレートと、ストッパ支持部材に対し保持プレートを一方の回転方向である第1回転方向に向かって付勢する付勢手段と、ストッパ部材と係合することで軸状部材の回転を停止させるストッパ係止手段と、を備え、ストッパ部材は、保持プレートに向かって突出するストッパ突起を有し、保持プレートは、ストッパ突起と係合しストッパ部材をストッパ支持部材の径方向における所定位置に保持するガイド溝を有し、ガイド溝は、ストッパ部材が径方向における所定位置で係合すると共に軸状部材と同心の円弧で形成されている第1規制壁と、径方向における所定位置から外径側にストッパ部材が突出した位置で係合する第2規制壁とを有していて、第2規制壁はガイド溝の周方向における一方側に設けられていて、軸状部材が第1回転方向に向かい回転を加速したときに、付勢手段による付勢力に抗してストッパ支持部材と保持プレートとが相対的に回転して、ストッパ突起が第1規制壁との間の係止を外れた際に、ストッパ部材が所定の位置からストッパ係止手段と係合する位置に突出し、軸状部材の回転を停止させると共に、ガイド溝の周方向の他方側には、径方向における所定位置から外径側にストッパ部材が突出した位置で当該ストッパ部材と係合することで第1回転方向とは逆の第2回転方向に向かってストッパ支持部材に対し保持プレートが相対的に回転するのを阻止する第3規制壁が設けられていて、第3規制壁へのストッパ突起の係合時には、ストッパ部材とストッパ係止手段とが係止しない部位に位置する、ことを特徴とする回転ロック装置が提供される。
【0012】
また、上述の発明において、第3規制壁よりも周方向の他方側には、第3規制壁よりも周方向の他方側には、ストッパ部材を軸心側の所定の位置に戻すための復帰ガイド壁が設けられていて、復帰ガイド壁は、周方向の一方側から他方側に向かうにつれて、内径側に向かうように傾斜している、ことが好ましい。
【0013】
また、上述の発明において、第3規制壁および復帰ガイド壁は、移動規制溝部の内壁に設けられている、ことが好ましい。
【0014】
また、上述の発明において、ストッパ支持部材は軟磁性材料から構成されると共に、ストッパ部材のうち径方向の内径側とストッパ支持部材の対向部位の少なくとも一方には、互いに吸引する方向に磁力を及ぼすマグネットが取り付けられている、ことが好ましい。
【0015】
また、上述の発明において、ストッパ部材のうち径方向の内径側とストッパ支持部材の対向部位の双方には、互いに吸引する方向に磁力を及ぼすマグネットがそれぞれ取り付けられている、ことが好ましい。
【0016】
また、上述の発明において、保持プレートには、保持プレートの表面または裏面から突出する突出手段が設けられていて、突出手段は、付勢手段によって保持プレートが第1回転方向に向かって付勢された際に、ストッパ突起がガイド溝の第1回転方向とは反対側の端部に当接するよりも先または当接するのと同時にストッパ支持部材の側面に当接する位置に配置されている、ことが好ましい。
【0017】
また、上述の発明において、保持プレートには、保持プレートの一部を折り曲げることで形成されると共に、付勢手段よりも保持プレートの外径側に配置されるバネ受け突部が設けられていて、バネ受け突部は、付勢手段が保持プレートの回転時の遠心力によって外径側に脱落するのを受け止める、ことが好ましい。
【0018】
また、上記課題を解決するために、本発明の第2の観点によると、一対のフレームに軸支され、荷を吊り上げるチェーンが掛け回されているロードシーブと、ロードシーブと減速ギヤを介して連結される駆動軸と、駆動軸に取り付けられているブレーキ装置と、ロードシーブを巻上げおよび巻下げ方向に回転駆動操作する操作レバーと、を備えている巻上機であって、駆動軸の外周には、上述の各発明に係る回転ロック装置が配置されていて、軸状部材は駆動軸であり、ストッパ係止手段はフレームに取り付けられている、ことを特徴とする巻上機が提供される。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、ブレーキ装置が故障した場合などに、巻下げ方向への軸状部材の回転を確実に停止させることが可能であると共に、巻上げ方向に軸状部材が回転させられた際に意図せずに作動して軸状部材が回転不能となるのを防止することが可能な回転ロック装置および巻上機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る回転ロック(荷落下防止)装置が取り付けられるレバーホイストの構成の一例を示す正面図である
図2図1に示すレバーホイストの構成を示す断面図である。
図3図1に示すレバーホイストのうち、回転ロック(荷落下防止)装置付近の構成を示す断面図である。
図4図3に示す回転ロック(荷落下防止)装置の構成を示す分解斜視図である。
図5図1に示すレバーホイストのうち、ストッパ部材を示すと共に、ガイド溝を透過的に示す平面図である。
図6図1に示すレバーホイストのうち、X1側に位置する保持プレートを示す正面図である。
図7図1に示すレバーホイストのうち、X2側に位置する保持プレートを示す正面図である。
図8図1に示すレバーホイストのうち、回転ロック(荷落下防止)装置付近の構成を示すと共に、回転ロック(荷落下防止)装置の作動前の各部位の位置関係を透過的に示す図である。
図9図8に示す状態からストッパ支持部材と保持プレートとが相対的に回転してストッパ突起が許容溝部に到達した状態における各部位の位置関係を透過的に示す図である。
図10図9に示す状態からストッパ部材が外径側に突出すると共に、ストッパ突起が戻り規制溝部に位置した状態における各部位の位置関係を透過的に示す図である。
図11図8に示す状態からストッパ支持部材と保持プレートとが相対的に回転してストッパ突起が移動規制溝部に入り込んだ状態における各部位の位置関係を透過的に示す図である。
図12図11に示す状態における移動規制溝部付近の位置関係を拡大して示す図である。
図13図12に示す状態から付勢バネの引っ張り力の作用によってストッパ突起が復帰ガイド壁に沿って摺動した状態を拡大して示す図である。
図14】本発明の変形例に係り、ストッパ部材130の底面側の凹部にマグネットを配置すると共に、ストッパ支持部材の底面側の凹部にもマグネットを配置した状態を示す図である。
図15】(A)は図14に示す構成において2つのマグネットが距離Yだけ離れた状態を示す図であり、(B)は図5に示す構成においてマグネットとストッパ部材の底面とが距離Y/2だけ離れた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の第1の実施の形態に係る、レバーホイスト10について、図面に基づいて説明する。以下の説明においては、X方向は、駆動軸25の軸線方向とし、X1側は遊転ニギリ60が取り付けられる側とし、X2側はそれとは逆のギヤボックス34側とする。また、Z方向はレバーホイスト10の懸吊状態における鉛直方向(懸吊方向;巻上げ下げ方向)とし、Z1側は懸吊状態における上側とし、Z2側は懸吊状態における下側とする。また、X方向およびZ方向に直交する方向をY方向とし、Y1側は図1において右側とし、Y2側は図1において左側とする。また、以下の説明では、ロードシーブ20の回転方向は、巻下げ方向を一方の回転方向とし巻上げ方向を他方の回転方向としている。また、ロードシーブ20に連結する軸回りの回転方向は、ロードシーブ20を回転させる方向を基準としている。
【0022】
<レバーホイストの全体構成について>
図1は本発明の第1の実施の形態に係るレバーホイスト10の構成の一例を示す正面図である。図2は、図1に示すレバーホイスト10の構成を示す断面図である。
【0023】
図2に示すように、レバーホイスト10が備える一対のフレーム11,12の間には、チェーンC1を掛け回すロードシーブ20が回転自在な状態で支持されている。このロードシーブ20には、後述する減速ギヤ30の小径ギヤ部32と噛み合うロードギヤ21が回転不能に設けられている。なお、ロードシーブ20の構成の詳細については、後述する。
【0024】
また、ロードシーブ20は、軸方向(X方向)に貫く挿通孔20aを有し、そのロードシーブ20の中空孔には駆動軸25が挿通されている。なお、駆動軸25は、軸状部材に対応する。駆動軸25の中途の外周側には後述するブレーキ装置70を構成するメネジ部材35と噛み合う雄ネジ部26が設けられると共に、駆動軸25の他端側(X2側)には減速ギヤ30の大径ギヤ部31に噛み合うピニオンギヤ27が設けられている。また、減速ギヤ30には、上述したロードギヤ21と噛み合う小径ギヤ部32も一体的に設けられている。
【0025】
なお、フレーム11にはケーシング13が取り付けられ、上述した減速ギヤ30やロードギヤ21等の駆動部位を保護している。また、上述した雄ネジ部26は、メネジ部材35の雌ネジ部36と噛み合っている。このメネジ部材35には、雌ネジ部36の他に、操作レバー50に配置された切換爪40と噛み合い可能な切換歯車37も設けられている。切換爪40は、たとえば一方側と他方側に1つずつ設けられているラチェット爪であり、この切換爪40が切換歯車37と噛み合った状態で操作レバー50を揺動させることで、メネジ部材35に駆動力を伝達させる。
【0026】
また、切換爪40に同軸で切換ツマミ45が固定され、その切換ツマミ45の切り換え操作によって、メネジ部材35への駆動力の伝達を、巻上げ方向とするか、または巻下げ方向とするか、またはニュートラル位置とするかを切り換え可能となっている。たとえば、図1において切換ツマミ45の下側(Z2側)を左側に倒すと巻上げ用の切換爪40が切換歯車37と噛み合う。それにより、操作レバー50を揺動させる動作を繰り返した場合、切換歯車37は巻上げ方向には回転するが巻下げ方向には回転しない。このとき、チェーンC1の巻上げ状態に対応する。
【0027】
一方、たとえば切換ツマミ45の下側(Z2側)を図1において右側に倒すと巻下げ用の切換爪40が切換歯車37と噛み合う。それにより、操作レバー50を揺動させる動作を繰り返した場合、切換歯車37は巻下げ方向には回転するが巻上げ方向には回転しない。また、ニュートラル位置に切り換えた場合、手でチェーンC1を引き出すことができる遊転状態(このときロードシーブ20および駆動軸25も回転する)への移行を可能としている。さらには、後述する遊転ニギリ60の操作で操作レバー50を操作せずにチェーンC1の巻上げまたは巻下げを素早く行うこともできる。
【0028】
また、駆動軸25には、たとえばスプライン結合やキー結合といった回転不能な状態でカム部材55が取り付けられている。さらに、カム部材55には、遊転ニギリ60と呼ばれる部材がカム部材55に対し所定量軸方向にスライド可能に取り付けられている。図2の位置では、遊転ニギリ60は、カム部材55に対し回転不能に係合されているが、X1方向に遊転ニギリ60をスライドさせると、遊転ニギリ60はカム部材55に対し一定の範囲で回転可能となっている。遊転ニギリ60は、カム部材55を介して駆動軸25と共に回転可能な略円筒形のノブ状の部分であり、作業者が手で握ることが可能となっている。
【0029】
この遊転ニギリ60は、図示しない第1ねじりばねでメネジ部材35と連結され、さらに図示しない第2ねじりばねで駆動軸25の一端に連結されている。切換ツマミ45がニュートラルの位置で、遊転ニギリ60を図2のX1方向にスライドさせると遊転ニギリ60は第2ねじりばね(遊転ばね)の付勢力で巻下げ方向に所定量回転する。所定量回転した遊転ニギリ60に取り付けられた第1ねじりばねも巻下げ方向に回転し、それまでメネジ部材35を巻き上げ方向に回転付勢していた付勢力が解除され、遊転モードに切り替わる。ここで、遊転モードか否かに拘わらず、作業者が遊転ニギリ60を手で握って巻上げ方向に回転させると、駆動軸25に回転力を伝達することができる。したがって、遊転ニギリ60を回転させることで、チェーンC1の長さ調整を素早く行うことや、スライドさせることで遊転モードへの切り替えが可能となっている。また、遊転モードにおいても、チェーンC1に規定以上の張力が巻下げ方向に作用すると、メネジ部材35は駆動軸25に対し締まり方向である巻上げ方向に相対的に回転し、後述するブレーキ装置70のブレーキが作動する。
【0030】
<ブレーキ装置70について>
図2に示すように、ロードシーブ20に歯車を介して連結された駆動軸25には、ブレーキ装置70が配置されている。ブレーキ装置70は、ブレーキ受け71、ブレーキ板72a,72b、爪車80、爪部材90、爪軸115、ブッシュ92、メネジ部材35等を主要な構成要素としている。なお、爪車80、爪部材90および爪軸115は、ラチェット機構の主な構成要素に対応する。
【0031】
ブレーキ受け71は、フランジ部71aと、中空ボス部71bとを有している。フランジ部71aは、中空ボス部71bよりも大径に設けられている部分であり、ブレーキ板72aを受け止めることが可能となっている。
【0032】
中空ボス部71bは、フランジ部71aよりもメネジ部材35側(X1側)に位置し、ブッシュ92を介して爪車80を軸支する。なお、中空ボス部71bの内周側は、スプライン結合等によって駆動軸25と噛み合うことで、駆動軸25とブレーキ受け71とが一体的に回転する。
【0033】
また、フランジ部71aと爪車80との間、及びメネジ部材35と爪車80との間には、それぞれブレーキ板72a,72bが中空ボス部71bに軸支されている。ブレーキ板72a,72bは、たとえば所定の摩擦材料を板状に形成された摩擦材であり、または、爪車80の両面に焼結成形するなどして配置されている。
【0034】
メネジ部材35を巻き上げ方向に回転させると、駆動軸25の雄ネジ部26との作用によりメネジ部材35は爪車80をブレーキ板72a,72bと共にブレーキ受け71方向に押圧し、駆動力を駆動軸25に伝達する。一方、この状態で、駆動軸25を巻下げ方向に回転させても、メネジ部材35は爪車80をブレーキ板72a,72bとともにブレーキ受け71方向に押圧する。このとき、爪車80は爪部材90により巻下げ方向に回転不能となっているので、ブレーキ装置70には摩擦力によるブレーキ力が働く。これによって、駆動軸25の巻下げ方向への回転は停止させることが可能となっている。反対に、メネジ部材35を巻下げ方向に回動させると、その分だけメネジ部材35による押圧力が緩みブレーキ装置70のブレーキ力が減じ巻下げ方向に回転することが可能となる。
【0035】
また、後述するストッパ支持部材120には爪軸115が一体的に設けられていて、その爪軸115には爪部材90が回動可能に支持されている。また、爪軸115には、ねじりばね93のコイル部93aが取り付けられていて、爪部材90が爪車80のラチェット歯83に押し付けられる向きの付勢力をねじりばね93が与えている。このようにして、爪車80は、巻上げ方向には回転可能で巻下げ方向には爪車80の歯数で分割されるピッチ角度毎に回転が規制されるようになっている。なお、爪部材90は一対設けられていて、爪車80の周方向において、180度離れて配置されている。
【0036】
なお、図2に示すように、上記のブレーキ装置70は、ブレーキカバー14で覆われることで、当該ブレーキカバー14の内部に存在するブレーキ装置70側に塵埃や雨水等が侵入するのを防止している。
【0037】
<ロードシーブ20および回転ロック(荷落下防止)装置100について>
次に、ロードシーブ20および回転ロック(荷落下防止)装置100について説明する。図3は、回転ロック(荷落下防止)装置100付近の構成を示す断面図である。図4は、図3に示す回転ロック(荷落下防止)装置100の構成を示す分解斜視図である。図3および図4に示すように、回転ロック(荷落下防止)装置100は、ストッパ係止部材110、ストッパ支持部材120、ストッパ部材130、保持プレート140および付勢ユニット150を主要な構成要素としている。なお、ストッパ係止部材110はストッパ係止手段に対応し、付勢ユニット150は付勢手段に対応する。
【0038】
図2から図4に示すように、本実施の形態では、フレーム12の爪車80側には、一対のストッパ係止部材110が取り付けられている。ストッパ係止部材110は、本実施の形態では、Y方向に長い長片状の部材であり、2つのストッパ係止部材110の間に、スペースSP1が形成されている。このため、ストッパ係止部材が、ストッパ支持部材120および保持プレート140の外周側の全周に亘るように設けられている場合と比較して、ストッパ係止部材110の軽量化が可能となっている。
【0039】
それぞれのストッパ係止部材110は、2本のステイボルトB1を介してフレーム12に取り付けられているが、そのような取り付けを可能とするために、ストッパ係止部材110には2つの取付孔111が設けられ、その取付孔111にステイボルトB1が挿通されている。なお、取付孔111は、本実施の形態では一対(2つ)設けられているが、3つ以上設けるように構成しても良い。
【0040】
また、ストッパ係止部材110には内側突出部112が設けられている。内側突出部112は、ストッパ係止部材110のうち、フレーム12の軸孔12bの中心側に向かって突出している部分である。なお、軸孔12bは、上述した駆動軸25およびロードシーブ20を挿通させるための孔である。
【0041】
内側突出部112は、後述するストッパ支持部材120および保持プレート140の外周面に対して若干の隙間を有する状態で対向している。それにより、ストッパ部材130を保持位置に支持しているストッパ支持部材120および保持プレート140の回転に支障のない構成となっている。なお、本実施の形態では、それぞれのストッパ係止部材110に1つずつ設けられている。したがって、内側突出部112は、周方向において180度間隔で2つ配置されている。
【0042】
また、内側突出部112には、係止壁114が設けられている。係止壁114は、内側突出部112の回転方向における他方側(図3および図4では、内側突出部112の時計回り側)の壁面であり、この係止壁114に対して、一方の回転方向(巻下げ方向)に回転するストッパ部材130がストッパ支持部材120から径方向外側に突出した際に衝突することで、ロードシーブ20の回転を停止させることが可能となっている。このため、係止壁114は、軸孔12bにおける径方向に対し、後述するストッパ部材130を回転軸芯方向に押し戻さない傾斜角度に設定されている。また、ストッパ部材130の側面も、係止壁114との衝突で、回転軸芯方向に押し戻されない傾斜角度の側面を有している。なお、図4に示すように、係止壁114に連続して、回転軸心方向から離れる方向(外径側)に向かって凹む凹状部113が設けられている。この凹状部113には、ねじりばね93の図示しない一方のフック部が係合され、ストッパ部材130とねじりばね93のフック部の接触を回避できるようになっている。
【0043】
また、図4に示すように、ストッパ係止部材110には爪軸115が設けられている。本実施の形態では、爪軸115は、ストッパ係止部材110の他の部分と一体化されている。このような一体化のために、ストッパ係止部材110は、鋳造(たとえばロストワックス法)によって形成されるのが好ましい。しかしながら、爪軸115のみを別体的に形成し、ストッパ係止部材110に存在する取付穴等に爪軸115を圧入して取り付けるようにしても良い。
【0044】
ここで、図3の断面図に示すように、ストッパ係止部材110の内部には、複数のリブ116が配置されている。すなわち、ストッパ係止部材110は中実部材でなく、複数のリブ116から構成される中空部分が存在する部材となっているので、ストッパ係止部材110の軽量化が可能となっている。なお、爪軸115の根本側には2つのリブ116がXを描くように配置されることで、爪軸115の軸線方向(スラスト方向)の荷重を受け止めることが可能となっている。
【0045】
なお、本実施の形態では、図3に示すように、内側突出部112のうち係止壁114とは反対側の側壁も、係止壁114として機能しても良い。また、凹状部113に面する側壁のうち、図3および図4における時計回り側の側壁が、径方向に対して所定角度以上傾斜することで、ストッパ収納部123から突出したストッパ部材130を、後述するストッパ収納部123に収納させるように構成しても良い。
【0046】
次に、ストッパ支持部材120について説明する。ストッパ支持部材120は、中心孔121を有し、その中心孔121において駆動軸25に取り付けられていて、ストッパ支持部材120と駆動軸25とは一体的に回転する。なお、ストッパ支持部材120の駆動軸25に対する取り付けは、たとえば止めねじ、キー結合、スプライン結合等、必要なトルクを伝達できればどのようなものであっても良い。
【0047】
また、図4に示すように、ストッパ支持部材120には、軸受ボス部122が設けられている。軸受ボス部122は、軸方向(X方向)に突出する中空軸状の部分であり、保持プレート140に設けられた中心孔142に回転可能な状態で嵌め込まれる。
【0048】
また、ストッパ支持部材120には、その中心孔121側から外周側に向かうストッパ収納部123が設けられている。ストッパ収納部123は、後述するストッパ部材130を収納する部分であり、その外周側が開放している。したがって、ストッパ収納部123に収納されたストッパ部材130は、外周側に向かって突出することが可能となっており、ストッパ収納部123の側壁123aでスライド可能に支持されている。
【0049】
なお、ストッパ収納部123は、幅狭片部120aと幅広片部120bとで挟まれることで形成されている。後述するストッパ部材130が係止壁114に衝突する場合、幅狭片部120aは内側突出部112と対向する部位に位置するが、幅広片部120bは、ストッパ収納部123を挟んで内側突出部112(係止壁114)から離れる部位に位置している。図3に示す構成では、幅狭片部120aはストッパ収納部123の左側に位置し、幅広片部120bはストッパ収納部123の右側に位置している。ここで、幅広片部120bは、幅狭片部120aよりも周方向の幅が広く設けられている。したがって、ストッパ部材130が係止壁114に衝突した場合でも、その衝撃を幅広片部120bで受け止めるだけの強度が確保されている。
【0050】
また、ストッパ支持部材120には、差込穴124も設けられている。差込穴124は、ストッパ支持部材120の外周面のうち中心孔121およびストッパ収納部123と干渉しない部位から凹む穴であり、図3ではストッパ収納部123とは反対側の外周面から形成されている。この差込穴124には、後述する一端掛止ピン152の一端が差し込まれることで、ストッパ支持部材120は一端掛止ピン152を支持する。
【0051】
次に、ストッパ部材130について説明する。図5は、ストッパ部材130およびガイド溝145を示す平面図である。図3から図5に示すように、上記のストッパ支持部材120のストッパ収納部123には、ストッパ部材130が収納されている。このストッパ部材130は、ストッパ収納部123に対し、収納位置から遠心方向にスライド可能な状態で収納されている。
【0052】
なお、図3に示す構成では、ストッパ収納部123の底面(回転軸心側の内壁面)123aには、平面状に設けられる部分が存在しているので、ストッパ部材130の底面130a(ストッパ収納部123の内径側に位置する面)にも平面状に設けられる部分が存在している。そして、ストッパ部材130の底面130a側には、後述するようなマグネットM1を取り付けるための凹部(符号省略)が形成されている。
【0053】
なお、図3に示すように、ストッパ収納部123にストッパ部材130が所定の位置に収納された状態では、ストッパ部材130の外周面(径方向中心から離れる側の面)は、回転軸中心に対してストッパ支持部材120の外周面よりも内径側に位置している。
【0054】
ここで、ストッパ部材130には、円柱状のストッパ突起131が設けられている。ストッパ突起131は、ストッパ部材130のうち保持プレート140と対向する面(表面および裏面)から、保持プレート140に向かってX軸方向に突出している。なお、図3および図4等に示すように、ストッパ突起131は、ストッパ部材130の深さ方向(ストッパ支持部材120の径方向)の中央よりも、駆動軸25(ストッパ部材130)の軸心側に設けられている。また、ストッパ突起131はストッパ部材130と一体成形するようにしても良いが、ストッパ部材130に取り付け孔を設け、軸状部材やピン等を取り付け孔に嵌合させてストッパ突起131を構成するようにしても良い。
【0055】
このストッパ突起131は、後述するガイド溝145に入り込む。それにより、ストッパ支持部材120と保持プレート140の回転方向の位置が相対的に変化した場合に、ストッパ突起131がガイド溝145内を摺動する。そして、ストッパ突起131が後述する許容溝部145aに位置する場合には、ストッパ部材130に作用する遠心力と、付勢バネ151の付勢力による第2規制壁145c1からの押圧力に応じて、ストッパ部材130が外径側に飛び出すことが可能となる。
【0056】
ここで、ストッパ部材130の径方向の最も外側に位置する外周面132は、上述したストッパ支持部材120の外周面や保持プレート140の外周面と同様に円弧状に設けられている。しかしながら、外周面132は直線状に設けられていても良く、その他の形状に設けられていても良い。なお、上記のストッパ部材130の径方向とは、駆動軸25の回転中心と外径側とを結ぶ方向を指すものとする(本明細書での他の部分でも同様)。
【0057】
また、ストッパ部材130の底面130aには、マグネットM1が取り付けられている。マグネットM1は、遠心力の作用によって外径側に突出したストッパ部材130を、元の収納位置に戻すための磁力を発生させる部材である。具体的には、マグネットM1は、軟磁性材料から構成されるストッパ支持部材120のストッパ収納部123の底面123bに対して対向するように配置されている。そのため、マグネットM1は、底面123bとの間で磁力を生じさせるため、マグネットM1が底面123bに近接するにつれて磁力が大きくなり、ストッパ部材130が収納位置へと引き戻される。
【0058】
なお、ストッパ支持部材120およびストッパ部材130が回転している状態では、マグネットM1は、ストッパ部材130が一定回転数(設定回転数)に到達するまで、磁力が遠心力に抗して外径側に突出するのを抑制する機能も有している。かかる設定回転数は、チェーンC1の手引きの際に、通常は高速での手引となる適宜の回転数に設定することが可能である。また、ストッパ部材130をストッパ収納部123の所定の位置(底面130aと底面123bが接する位置;収納位置)に磁力によって保持しているので、停止状態から急加速した場合にストッパ部材130のストッパ突起131と保持プレート140の第1規制壁145b1の摺接を抑制できるので、保持プレート140とストッパ支持部材120が相対的に回転する作動値が安定する効果もある。
【0059】
次に、保持プレート140について説明する。本実施の形態では、それぞれ形状の異なる2枚の保持プレート140が設けられている。以下の説明では、図4においてX1側に位置する保持プレート140を保持プレート140Aと称呼し、図4においてX2側に位置する保持プレート140を保持プレート140Bと称呼する。ただし、両者を区別する必要がない場合には、単に保持プレート140と称呼する。なお、保持プレート140Aと保持プレート140Bの間に、ストッパ支持部材120が挟み込まれている。そして、保持プレート140同士を連結部材R1で所定の間隔で連結している。なお、保持プレート140同士の連結は、一体となるように強固に連結するのが好ましい。
【0060】
図6は、X1側に位置する保持プレート140Aを示す正面図である。この保持プレート140Aは円盤状(リング状)に設けられていて、その径方向の中央には、中心孔142が設けられている。この中心孔142にストッパ支持部材120の軸受ボス部122を嵌め込むことで、保持プレート140は、ストッパ支持部材120に対して同軸で回動可能に支持されている。なお、回転中心から保持プレート140Aの最外周までの距離(すなわち半径)は、ストッパ支持部材120の最外周までのそれと同程度となっている。しかしながら、ストッパ支持部材120と保持プレート140Aのうちのいずれか一方の半径が大きく設けられていても良い。
【0061】
図7は、X2側に位置する保持プレート140Bを示す正面図である。この保持プレート140Bは、円形のリング状の複数個所(図7では2箇所)を打ち抜いたり折り曲げることで、外径側から内径側に向かう凹み部分を有している。
【0062】
これらの凹み部分のうちの一方には、保持プレート140Bのプレート面から立ち上げられた係止用突部143が設けられている。この係止用突部143は、ストッパ支持部材120の幅広片部120bの側面120b1に当接する部分であり、その当接によって、ストッパ支持部材120が付勢バネ151によって引っ張られても、それ以上、回転しない状態となっている。すなわち、係止用突部143は、保持プレート140Bに対するストッパ支持部材120の巻上げ方向の回転位置を規制している。したがって、ストッパ突起131が遊間溝部145bの第2回転方向の終端部で、付勢ユニット150からの付勢力を受けるのを抑制できる。このため、ストッパ部材130と側壁123aの間で生じる、付勢ユニット150からの付勢力に起因する摩擦力によるストッパ部材130の挙動への影響を低減でき、回転ロック装置100の作動を安定化できる。
【0063】
なお、係止用突部143は、その側面で幅広片部120bの側面に当接している。また、係止用突部143とプレート面とがなす境界線は、保持プレート140Bの径方向には沿わずに当該径方向に対して所定の角度をなすように設けられている。このため、係止用突部143に対して幅広片部120bが衝突した際に、プレート面に対する係止用突部143の折り曲げ角度が変わるように変形するのを防止している。
【0064】
また、上記の凹み部分の他方には、上記と同様に、保持プレート140Bのプレート面から立ち上げられたバネ受け突部144が設けられている。図3に示すように、バネ受け突部144は、付勢バネ151よりも保持プレート140Bの外径側に配置されていて、保持プレート140の回転時に付勢バネ151が遠心力によって外径側に向かって脱落するのを受け止めている。
【0065】
また、保持プレート140には、ガイド溝145が設けられている。図5から図7に示すように、ガイド溝145は、ストッパ部材130のストッパ突起131が入り込んで、そのストッパ突起131の移動をガイドする部分であり、その外観は、略三角形状の部位の径方向中心側に、円弧状に長く伸びている溝を加えた形状となっている。具体的には、ガイド溝145には、図5から図7に示すような略三角形状の保持凸部146が入り込んでいて、その入り込みにより、ガイド溝145には、許容溝部145aと、遊間溝部145bと、戻り規制溝部145cが設けられている。また、これらの溝部の他に、ガイド溝145には、移動規制溝部145dが設けられている。
【0066】
許容溝部145aは、ストッパ突起131が径方向に移動するのを許容する溝である。そのため、図5から図7において許容溝部145aの下側に位置する内側壁145a1は、径方向(中心孔142の中心から延びる一つの放射線の方向)に平行となるように設けられている。なお、許容溝部145aの幅は、保持凸部146のうち最も内側壁145a1に向かって突出している凸部先端部146aと、上述した内側壁145a1の間によって規定される。
【0067】
また、遊間溝部145bは、凸部先端部146aから、周方向において許容溝部145aから遠ざかるように(図5から図7において右側に)凹んだ溝である。この遊間溝部145bは、ストッパ突起131を、遊びをもって位置させることを可能としている。なお、遊間溝部145bのうち、許容溝部145aから最も離れた側(他端側)には、後述する移動規制溝部145dが設けられている。
【0068】
また、遊間溝部145bのうち、許容溝部145a側の端部には、R形状部分(丸みのあるコーナー部分)は存在するものの、そのR形状部分の半径は、ストッパ突起131の半径と同等の寸法に設けられている。ここで、R形状部分の半径が、ストッパ突起131の半径よりも大きい場合には、このR形状部分にストッパ突起131が衝突した際に、外径側にストッパ突起131が移動する力を与えられてしまう。しかしながら、R形状部分の半径は、ストッパ突起131の半径と同等の寸法に設けられることで、このR形状部分にストッパ突起131が衝突した際に、外径側にストッパ突起131が移動する力を与えるのを防止している。なお、R形状部分の半径は、ストッパ突起131の半径よりも小さく設けるようにしても良い。
【0069】
ここで、遊間溝部145bの外径側の内壁(第1規制壁145b1とする)は、ストッパ突起131と係合して、ストッパ部材130をストッパ支持部材120の所定位置に保持するための壁面で中心孔142と同心の円弧状の壁面となっている。なお、この遊間溝部145bにストッパ突起131が収納された状態では、ストッパ部材130の外径側は、ストッパ支持部材120の外周面よりも外径側に突出しない状態で、ストッパ収納部123に収納されている。
【0070】
ここで、遊間溝部145bの周方向の長さは、次に述べる角度γにより定まる長さより長くなるように形成されている。すなわち、爪車80は、巻上げ操作途中で操作を中断すると、最大で一周を歯数で分割した角度(ピッチ角度)分だけ、巻き下げ方向に空転する。この角度を角度γ(図示省略)とする。この場合、回転ロック装置100も角度γより大きい角度だけ遅延して作動することが好ましい態様となる。このため、ストッパ部材130の収納状態において、ストッパ突起131が入り込む遊間溝部145bの周方向の長さを少なくとも角度γ以上に長くする。そして、ストッパ支持部材120に対して、保持プレート140が角度γ以上、駆動軸25およびストッパ支持部材120に対し、巻下げ方向とは反対の第2の回転方向に相対回転するまで、ストッパ部材130の保持を維持するようにすることが好ましい。
【0071】
なお、本実施の形態では、遊間溝部145bは、角度γよりも十分に長くしている。ここで、遊間溝部145bの長さが短い場合には、切換ツマミ45をニュートラル位置に切り換えて遊転ニギリ60を操作して遊転モードとした後、巻下げ方向にチェーンC1を素早く引き出す遊転操作中に、回転ロック装置100が作動し易い状態となってしまい、チェーンC1の引き出しの利便性が低下してしまう。そこで、切換ツマミ45をニュートラル位置に切り換えて遊転モードとした後、チェーンC1を手で引き出す遊転操作中に、回転ロック装置100が直ぐには作動しないように、遊間溝部145bの長さを、角度γよりも十分に長くしている。それにより、上記のような遊転操作中に、回転ロック装置100が作動して回転ロック状態となってしまうのを防止している。
【0072】
また、戻り規制溝部145cは、周方向において許容溝部145aから遠ざかるように(図5から図7において上側に)凹んだ溝である。この戻り規制溝部145cは、ストッパ突起131を、遊びをもって位置させることを可能としている。しかしながら、戻り規制溝部145cには、第2規制壁145c1が設けられている。この第2規制壁145c1は、ストッパ突起131と係合することにより、ストッパ部材130の外径側は、ストッパ支持部材120の外周面よりも突出した状態が維持される。すなわち、第2規制壁145c1は、ストッパ部材130がストッパ収納部123に収納されるのを規制するための壁面である。
【0073】
なお、第2規制壁145c1は、内径側に向かうにしたがって、内側壁145a1に徐々に近接するように傾斜していて、保持凸部146に接している。そのため、ストッパ部材130が所定の位置から遠心方向にスライドし、ストッパ突起131が凸部先端部146aを越えた後に、駆動軸25の第1回転方向への回転加速度が減少しても、ストッパ突起131が第2規制壁145c1と係合することで、ストッパ部材130は係止壁114と確実に係合し、駆動軸25に第1回転方向への負荷が継続する間は、その係合を維持する。また一方で、戻り規制溝部145cにストッパ突起131が入り込んだ状態で、ストッパ支持部材120およびストッパ部材130を、保持プレート140に相対的に回転させることで、ストッパ突起131が許容溝部145aに向かい移動すると、第2規制壁145c1との係合が外れる。それにより、ストッパ部材130がストッパ収納部123の内径側に移動可能となる。
【0074】
また、移動規制溝部145dは、巻上げ方向にストッパ支持部材120および保持プレート140を高速で回転させた際に、ストッパ部材130に取り付けられているストッパ突起131が入り込むための溝部である。この移動規制溝部145dには、第3規制壁145d1と、復帰ガイド壁145d2とが設けられている。
【0075】
第3規制壁145d1は、ストッパ突起131が衝突する壁面である。すなわち、第3規制壁145d1は、移動規制溝部145d内に移動した、ストッパ部材130のストッパ突起131と当接することで、保持プレート140がストッパ部材130に対して、図5から図7において時計回りに回転するのを規制する壁面である。詳述すると、たとえば下フック(図示省略)に荷を掛けた状態で、弛んでいるチェーンC1の下フックとは反対側を手で強く引くことで、チェーンC1を巻きかけたロードシーブ20が巻上方向に回転し、さらに減速ギヤ30を経由して駆動軸25およびストッパ支持部材120が一体的に高速回転すると、その高速回転に伴って保持プレート140も高速回転する。このとき、ストッパ部材130は、遠心力によって外径側に移動することで、ストッパ突起131が移動規制溝部145dに入り込む。
【0076】
その状態で、チェーンC1の弛みが解消されると、ロードシーブ20と共に駆動軸25およびストッパ支持部材120の回転が急停止する。このとき、慣性によって巻上げ方向に保持プレート140が回転しようとしても、第3規制壁145d1に対してストッパ突起131が当接することで、当該保持プレート140の慣性による回転が阻止される。
【0077】
したがって、第3規制壁145d1は、ストッパ突起131が押圧しても、ストッパ突起131が内径側に移動しないような形状に設けられている。このような第3規制壁145d1の形状としては、たとえば、第3規制壁145d1が径方向に沿うように形成されている場合が挙げれられる。しかしながら、第3規制壁145d1の形状はこのような形状には限られず、第3規制壁145d1は、たとえば、図5において若干左側(反時計回り側)に凹状に窪んだポケット部分が存在するような形状としても良く、径方向に向かうにつれて左側(反時計回り側)に傾斜するような形状に形成されても良い。
【0078】
また、復帰ガイド壁145d2は、上記の第3規制壁145d1と同様にストッパ突起131が摺動する壁面でありストッパ部材130がストッパ係止部材110と係合するのを防止すると共に、ストッパ部材130を内径側の所定の収納位置に戻すための壁面である。具体的には、復帰ガイド壁145d2は、図5から図7において右方向(時計回り方向)に向かうにつれて径方向の中央側に向かうように傾斜している壁面である。したがって、この復帰ガイド壁145d2を利用して、ストッパ部材130をストッパ収納部123の収納位置に復帰させることができる。
【0079】
かかるストッパ部材130の復帰に関して詳述すると、保持プレート140の係止用突部143がストッパ係止部材110の側面に当接する位置関係にあり、所定以上の高速で回転している状況では、遠心力によりストッパ部材130が移動し、ストッパ突起131が移動規制溝部145d内に移動する。この状態で、駆動軸25およびストッパ支持部材120の回転が減速停止するときを考える。減速する前は、ストッパ支持部材120と保持プレート140の間には、付勢バネ151の引っ張り力が作用することから、保持プレート140は、図5から図7において、ストッパ支持部材120およびストッパ部材130に対して左方向(反時計回り方向)に回転しようとするが、その回転はストッパ係止部材110と係止用突部143の当接で規制されている。巻上げ方向に高速回転している際に減速開始すると、図11に示すように保持プレート140は付勢バネ151の付勢力に抗して第3規制壁145d1に当接するまでストッパ支持部材120とストッパ部材130に対し巻上げ方向に回転する。この状態から、減速が終了し停止する間に、付勢バネ151の付勢力によって、ストッパ突起131は、復帰ガイド壁145d2と摺動するが、その復帰ガイド壁145d2の傾斜に伴って、ストッパ部材130は所定の収納位置の方向に押し戻される。所定だけ摺動してマグネットM1がストッパ収納部123の底面123bに近づくと、マグネットM1と底面123bの間での磁力の作用によって、ストッパ部材130が収納位置に復帰する。
【0080】
なお、移動規制溝部145d内で、ストッパ突起131が最も径方向の外側に位置しても、ストッパ部材130の外周面132がストッパ支持部材120の外周面よりも外径側に突出しない状態で、ストッパ収納部123に収納されている。この状態では、ストッパ部材130が係止壁114に衝突することなく、ストッパ支持部材120、ストッパ部材130および保持プレート140が一体的に回転可能となっている。
【0081】
ところで、上記のストッパ支持部材120にストッパ部材130と2つの保持プレート140と付勢ユニット150を組み付け、連結部材R1(図4参照)で2枚の保持プレート140を所定の間隔で連結すると共に、ガイド溝145の内壁でストッパ突起131を規制し、ストッパ部材130をストッパ支持部材120のストッパ収納部123の所定の位置に保持していることで、1ユニット化することができる。このように1ユニット化とすることで、駆動軸25への組付け及びメンテナンス時の取り外しや交換などの作業が容易に確実に行うことが可能となっている。特に、レバーホイスト10(巻上機)に組み付け前に、上記の1ユニット化したものの動作確認や調整が可能となっている。また、ストッパ部材130に大きな負荷が作用する場合でも、一対の保持プレート140でストッパ部材130をストッパ支持部材120のストッパ収納部123に確実に保持することが可能となっている。
【0082】
なお、本実施の形態では、連結部材R1は、リベットとカラー(スペーサ)から構成されている。すなわち、一対の保持プレート140の間にカラーを配置し、保持プレート140に形成された孔部141およびカラーにリベットを挿通させる。その後に、リベットの他端側を塑性変形させることで、所定の間隔が維持された状態で、一対の保持プレート140が連結される。
【0083】
次に、付勢ユニット150について説明する。図3および図4に示すように、付勢ユニット150は、付勢バネ151と、一端掛止ピン152と、他端掛止ピンに対応する連結部材R1とを有している。これらのうち、付勢バネ151は、本実施の形態では、引っ張りバネとなっている。付勢ユニット150の構成としては、引っ張りバネを含むものの他に、圧縮バネやねじりバネを含むものであっても良く、保持プレート140をストッパ支持部材120に対し図3において反時計方向である一方の回転方向(巻下げ方向;第1回転方向)に回動付勢する構成であれば良い。
【0084】
また、一端掛止ピン152は、上述したように、ストッパ支持部材120の差込穴124に差し込まれることで取り付けられている。差込穴124はねじ孔で一端掛止ピン152の雄ねじ部分をねじ込んで取り付けられている。また、この一端掛止ピン152には、付勢バネ161の一端側が掛けられている。また、他端掛止ピンとして、連結部材R1を兼用している。すなわち、孔部141に差し込まれた連結部材R1に、付勢バネ151の他端側が掛けられる。
【0085】
ここで、一端掛止ピン152のうち付勢バネ151が掛けられている作用点と、他端掛止ピンに対応する連結部材R1のうち付勢バネ151が掛けられている作用点とは、回転中心に対して所定の角度θだけ異なっている。したがって、付勢バネ151は、この角度θが小さくなるように付勢力を与えている。
【0086】
<作用について>
以上のような構成の回転ロック(荷落下防止)装置100について、レバーホイスト10の巻上げ操作において、ブレーキ装置70が破損するなどして、駆動軸25が吊り荷重などによるチェーンC1に掛かる張力によって巻下げ方向に加速回転を開始するときを考える。
【0087】
図8は、図1に示すレバーホイスト10のうち、回転ロック(荷落下防止)装置100付近の構成を示すと共に、回転ロック(荷落下防止)装置100の作動前の各部位の位置関係を透過的に示す図である。また、図9は、図8に示す状態から保持プレート140がストッパ支持部材120と保持プレート140に対し相対的に回転して、許容溝部145aがストッパ突起131の位置に到達した状態における各部位の位置関係を透過的に示す図である。また、図10は、図9に示す状態からストッパ部材130が外径側に突出すると共に、ストッパ突起131が戻り規制溝部145cに位置した状態における各部位の位置関係を透過的に示す図である。
【0088】
最初に、荷を吊った状態でブレーキ力を失うと、駆動軸25およびストッパ支持部材120は、ストッパ部材130と共に図8における反時計方向である一方の回転方向(巻下げ方向)に急激に回転速度を上昇させる。このとき、付勢バネ151の付勢力は、遊間溝部145bの最も端部(許容溝部145aから離れる側の端部)にストッパ部材130のストッパ突起131が位置する状態で、保持プレート140をストッパ部材130の回転に追従させようと働く。しかし、保持プレート140に働く慣性力が付勢バネ151の付勢力を上回ると、保持プレート140は取り残される形で、ストッパ突起131は、遊間溝部145bの移動規制溝部145d側の端部から離れる。さらに、遊間溝部145bの移動規制溝部145d側の端部からストッパ突起131が離れる(追従できない)向きの加速度で駆動軸25がストッパ支持部材120とストッパ部材130と共に加速回転すると、保持プレート140に働く慣性力により付勢バネ151が伸びて、ストッパ部材130のストッパ突起131は、遊間溝部145b内を許容溝部145aに向かって移動する。
【0089】
なお、ストッパ支持部材120とストッパ部材130の回転に伴って生じる遠心力により、ストッパ部材130が外径側に飛び出そうとしても、許容溝部145aにストッパ突起131が到達するまでは、ストッパ突起131が第1規制壁145b1に規制されることで、ストッパ部材130の外径側への飛び出しが規制される。
【0090】
そして、図9に示す位置まで、遊間溝部145b内をストッパ突起131が相対的に移動すると、ストッパ部材130が外径側に飛び出すことが可能となる。すなわち、ストッパ突起131と第1規制壁145b1との間での係合(保持)状態が解除されたストッパ部材130は、遠心力によってストッパ収納部123から外径側に飛び出す。ただし、外径側への飛び出しは、ガイド溝145の最外周側までの範囲内となっている。また一方で、ストッパ部材130が所定の位置から遠心方向にスライドし、ストッパ突起131が凸部先端部146aを越えた後に、駆動軸25の第1回転方向への回転加速度が減少しても、付勢バネ151の付勢力によりストッパ突起131が第2規制壁145c1により押圧される。この押圧により、ストッパ部材130は係止壁114と確実に係合する位置まで突出し、駆動軸25に第1回転方向への負荷が継続する間は、その係合を維持する。
【0091】
そして、ストッパ収納部123から突出したストッパ部材130が、反時計方向である一方の回転方向(巻下げ方向)に回転を継続すると、図10に示すように、ストッパ係止部材110の係止壁114に衝突する。それにより、ストッパ支持部材120および駆動軸25の一方の回転方向(巻下げ方向)への回転は停止させられ、荷の落下が停止する。
【0092】
また、ストッパ部材130が係止壁114に衝突した後に、ストッパ突起131は戻り規制溝部145cに入り込む。それにより、駆動軸25が停止した後に、付勢バネ151の付勢力によって、ストッパ突起131が第2規制壁145c1から反時計回りの付勢力を受けるので、ストッパ突起131が戻り規制溝部145cに入った状態が維持される。このとき、ストッパ部材130がストッパ収納部123に不用意に戻ろうとしても、ストッパ突起131が第2規制壁145c1に係合を維持することで、ストッパ部材130のストッパ収納部123への戻りが規制される。このため、駆動軸25の回転停止状態が維持される。すなわち、荷が再び落下し始めるのが防止される。
【0093】
次に、ブレーキ装置70が正常に作動している状態において、チェーンC1を手で引いて巻下げ方向に引き出すことが可能な状態である遊転モードについて考える。レバーホイスト10では、フックを対象物に取り付ける際に、チェーンC1の長さを調整できるように、上記の遊転機能を有している。具体的には、ブレーキ装置70のメネジ部材35を遊転ばね(図示せず)の作用によりブレーキを開放する機能を有している。遊転モードでは、操作レバー50の操作で操作するより速い速度でチェーンC1の長さを調整できるようになっている。レバーホイストで遊転モードに切り替えるには、無負荷状態で切換ツマミ45をニュートラルにするだけで切換が可能な自動遊転方式と、図1および図2に示すレバーホイスト10のように切換ツマミ45をニュートラルに操作した後、さらに遊転ニギリ60を所定の操作をすることで遊転モードに切り替えるものがある。本実施の形態では、後者の切換ツマミ45をニュートラルに操作した後、さらに遊転ニギリ60を所定の操作をすることで遊転モードに切り替えられる構造となっているが、その詳細説明は省略する。
【0094】
このような遊転モードにおいては、ブレーキ装置70のブレーキ力を一時的に働かないようにしている。ただし、安全上、巻下げ方向に所定以上の張力がチェーンC1に働くとブレーキ装置70が作用して駆動軸25の回転を停止させる機構となっている。一方、レバーホイスト10のように多くのレバーホイストで採用されている爪車80を有するブレーキ装置70は、巻上げ方向にはブレーキが働かないので、遊転モードに切り替えなくても操作レバー50で巻き上げるよりも速い速度でチェーンC1の長さを調節することが可能となっている。かかる状況のレバーホイスト10においては、回転ロック(荷落下防止)装置100も巻上げ方向(他方の回転方向)には出来るだけ作用しない方が、作業性が良好となる。
【0095】
ところで、チェーンC1の長さ調整は、巻下げ方向にチェーンC1を繰り出すだけでなく、弛んでいるチェーンC1を巻き上げる方向に調整がある。前述の通り、巻下げ方向には遊転モードに切り替えて調整するが、所定の張力以上でチェーンC1を引っ張るとブレーキ装置70が作用する。一方、巻上げ方向への調整では、作業者がチェーンC1の無負荷側部分を引っ張って行う。この場合、ロードシーブ20は巻上げ方向に回転し、駆動軸25、ストッパ支持部材120、ストッパ部材130も巻上げ方向に回転する。このとき、保持プレート140に働く慣性力は、ストッパ突起131を遊間溝部145bのうち移動規制溝部145d側の端部に押し付ける向きに働く。この状態で、巻上げ方向へチェーンC1を引っ張る速度が上昇し、ストッパ部材130に作用する遠心力が徐々に大きくなっても、移動規制溝部145dを含む遊間溝部145bにストッパ部材130のストッパ突起131が位置している状態では、ストッパ部材130はストッパ係止部材110と係止することは無く、回転ロック装置100による回転ロックは作用しない。所定の回転速度以下では、マグネットM1とストッパ収納部123の底面123bとの間の磁力による保持力により、ストッパ部材130が径方向の外径側には飛び出さない。したがって、所定の回転速度以下では、ストッパ突起131は、移動規制溝部145dの内部には入り込まない。
【0096】
しかしながら、所定の回転速度を超えると、ストッパ部材130に作用する遠心力が、マグネットM1とストッパ収納部123の底面123bとの間の磁力による保持力よりも大きくなるので、ストッパ部材130が外側に移動して、ストッパ突起131が移動規制溝部145d内に入り込む。
【0097】
図11および図12に示す状態では、ストッパ突起131は、移動規制溝部145dの最も外径側に位置すると共に、第3規制壁145d1に当接している。なお、この図11に示す状態では、ストッパ部材130の外周面132は、径方向においてストッパ支持部材120の外周面と同等以下の位置に位置している。
【0098】
ここで、チェーンC1の弛みが解消されると、荷とレバーホイスト10の間のチェーンC1が突っ張る状態となるが、荷が軽く持ち上がらない重量の場合には、チェーンC1の巻上げが行えなくなるので、駆動軸25およびストッパ支持部材120(ストッパ部材130)の回転が急停止する。しかしながら、保持プレート140は、慣性によって、巻上げ方向へ回転しようとするが、図11および図12に示すように第3規制壁145d1に対してストッパ突起131が当接(衝突)することで、当該保持プレート140の慣性による回転が阻止される。なお、図11は、ストッパ突起131が移動規制溝部145dに入り込んだ後、図8に示す状態よりも保持プレート140が巻上方向に相対的に微小回転し、ストッパ突起131が第3規制壁145d1に当接した状態における各部位の位置関係を透過的に示す図である。
【0099】
したがって、ストッパ突起131が、遊間溝部145b内を許容溝部145aに向かって移動することを阻止できる。このため、ストッパ突起131が許容溝部145a内を外径側に向かって移動することで、巻上時にも拘らずストッパ部材130がストッパ支持部材120の外周面よりも外径側に突出してしまうのを阻止できる。
【0100】
また、巻上げ方向への回転が停止すると、ストッパ部材130がストッパ収納部123の収納位置へと復帰する。すなわち、ストッパ支持部材120と保持プレート140の間には、付勢バネ151の引っ張り力が作用している。そのため、ストッパ支持部材120およびストッパ部材130は、図11および図12において、保持プレート140に対して右方向(時計回り方向)に回転しようとする。そのため、ストッパ突起131は、図13に示すように、付勢バネ151の引っ張り力の作用によって復帰ガイド壁145d2に沿って摺動する。そして、所定だけ摺動してマグネットM1がストッパ収納部123の底面123bに近づくと、マグネットM1と底面123bの間での磁力が大きくなり、その大きくなった磁力の作用によって、ストッパ部材130が収納位置に復帰する。
【0101】
なお、ストッパ部材130が収納位置に復帰しても、ストッパ支持部材120と保持プレート140の間には、付勢バネ151による引っ張り力が作用し続けるが、その引っ張り力が作用している状態では、係止用突部143がストッパ支持部材120の幅広片部120bの側面に当接する。したがって、ストッパ突起131が遊間溝部145bの時計回り方向の端部側に付勢された状態で、ストッパ部材130がストッパ支持部材120の側壁123aに押し付けられるのを防止可能となっている。また、マグネットM1の磁力でストッパ部材130をストッパ収納部123の底面123bに吸着し保持しているので、保持プレートがストッパ支持部材に対し巻上げ方向に回転してストッパ突起131が許容溝部145aに位置していても、磁力による吸着力を超える力が作用しない限り、ストッパ部材130は、ストッパ収納部の所定の位置に収納され、回転ロック装置100による回転ロックが作用することはない。
【0102】
次に、チェーンC1を作業者が巻下げ方向に引っ張った場合を考える。このとき、ロードシーブ20が巻下げ方向に回転し、駆動軸25、ストッパ支持部材120、ストッパ部材130も巻下げ方向に回転する。このとき、ストッパ支持部材120およびストッパ部材130の回転加速により、保持プレート140が取り残されるように付勢バネ151の付勢力に抗して相対回転し、ストッパ突起131が遊間溝部145bの最も端部(許容溝部145aから離れる側の端部)から離れる場合がある。この場合において、遊間溝部145bの長さが短いと、ストッパ突起131が比較的容易に許容溝部145aに到達し、その後にストッパ部材130が外径側に突出して係止壁114とストッパ部材130とが衝突するロック状態となってしまう。その場合には、チェーンC1を作業者が巻下げ方向に引っ張る作業が中断され、ロック状態を解除する必要があるので、作業性が悪化してしまう。
【0103】
しかしながら、本実施の形態では、遊間溝部145bの長さは、上記の角度γよりも十分に長くなっていて、チェーンC1を作業者が巻下げ方向に引っ張る程度の回転加速では、ストッパ突起131が遊間溝部145b内を若干移動しても、許容溝部145aにまで到達できない程度に設定されている。このため、チェーンC1を作業者が巻下げ方向に引っ張る作業が中断されずに済む。遊転モードにおいて駆動軸25が巻下げ方向に急激に回転した場合、遊転モードにより一時的に解放されたブレーキ装置70が回転ロック装置100より先に駆動軸25の回転を制動するように、遊間溝部145bの長さが設定されている。
【0104】
<効果について>
以上のような構成の回転ロック(荷落下防止)装置100は、駆動軸25(軸状部材)に取り付けられ、駆動軸25(軸状部材)と一体的に回転するストッパ支持部材120と、駆動軸25(軸状部材)の軸心側から外方に向かってスライド可能な状態でストッパ支持部材120に支持されているストッパ部材130と、円盤状に設けられ、ストッパ支持部材120に対して相対的に回動可能に設けられ、ストッパ部材130をストッパ支持部材120の所定の位置に保持する保持プレート140と、ストッパ支持部材120に対し保持プレート140を一方の回転方向である第1回転方向に向かって付勢する付勢バネ151(付勢手段)と、ストッパ部材130と係合することで駆動軸25(軸状部材)の回転を停止させるストッパ係止部材110(ストッパ係止手段)と、を備えている。また、ストッパ部材130は、保持プレート140に向かって突出するストッパ突起131を有し、保持プレート140は、ストッパ突起131と係合しストッパ部材130をストッパ支持部材120の径方向における所定位置に保持するガイド溝145を有し、ガイド溝145は、ストッパ部材130が径方向における所定位置で係合すると共に駆動軸25(軸状部材)と同心の円弧で形成されている第1規制壁145b1と、径方向における所定位置から外径側にストッパ部材130が突出した位置で係合する第2規制壁145c1とを有していて、第2規制壁145c1はガイド溝145の周方向における一方側に設けられている。
【0105】
また、駆動軸25(軸状部材)が第1回転方向に向かい回転を加速したときに、付勢バネ151(付勢手段)による付勢力に抗してストッパ支持部材120と保持プレート140とが相対的に回転して、ストッパ突起131が第1規制壁145b1との間の係止を外れた際に、ストッパ部材130が所定の位置からストッパ係止部材110(ストッパ係止手段)と係合する位置に突出し、駆動軸25(軸状部材)の回転を停止させる。これと共に、ガイド溝145の周方向の他方側には、径方向における所定位置から外径側にストッパ部材130が突出した位置で当該ストッパ部材130と係合することで第1回転方向とは逆の第2回転方向に向かってストッパ支持部材120に対し保持プレート140が相対的に回転するのを阻止する第3規制壁145d1が設けられている。そして、第3規制壁145d1へのストッパ突起131の係合時には、ストッパ部材130とストッパ係止部材110(ストッパ係止手段)とが係止しない部位に位置している。
【0106】
このような構成によると、弛んでいるチェーンC1を作業者が巻上げ方向に高速で引っ張り、ストッパ部材130に作用する遠心力により、ストッパ部材130が外径側に飛び出した状態で、チェーンC1の弛みが解消されて、駆動軸25およびストッパ支持部材120(ストッパ部材130)の回転が急停止すると、保持プレート140は、慣性によって、巻上げ方向へ回転しようとする。しかしながら、第3規制壁145d1に対してストッパ突起131が当接(衝突)することで、当該保持プレート140の慣性による回転が阻止される。したがって、ストッパ突起131が、ガイド溝145内を第2回転方向に移動することを阻止できる。また、第3規制壁145d1へのストッパ突起131の係合時には、ストッパ部材130とストッパ係止部材110(ストッパ係止手段)とが係止しない部位に位置しているので、巻上時にも拘らずストッパ部材130がストッパ支持部材120の外周面よりも外径側に突出してしまうのを阻止できる。
【0107】
このため、実際には荷が落下していない(巻上げ方向への動作である)にも拘わらず、回転ロック装置100が意図せずに作動してしまい、駆動軸25(軸状部材)が回転不能となるのを防止することができ、それによって回転ロック装置100を復旧させる手間が生じるのを防止することができる。
【0108】
また、巻下げ方向において駆動軸25(軸状部材)が一方の回転方向に所定の加速度を超える場合に、回転ロック(荷落下防止)装置100が作動して、回転を停止させることができる。さらに、駆動軸25(軸状部材)が一方の回転方向である第1回転方向へ加速回転した場合には、その加速度と回転速度の相乗作用によって、他方の回転方向への回転した場合の回転速度より低速で回転ロック(荷落下防止)装置100が作動するように設定することが可能となる。また、巻上機や昇降装置など負荷が一方向にのみ働く駆動装置において、ブレーキ装置70が故障するなどしても、巻上げまたは昇降駆動するための回転部材の回転をただちに停止させ、荷落下などによる事故を防止することができる。
【0109】
また、本実施の形態では、第3規制壁145d1よりも周方向の他方側には、ストッパ部材130を軸心側の所定の位置に戻すための復帰ガイド壁145d2が設けられていて、復帰ガイド壁145d2は、周方向の一方側から他方側に向かうにつれて、内径側に向かうように傾斜している。
【0110】
このような構成とすることで、ストッパ部材130をストッパ支持部材120の所定の位置(収納位置)に復帰させることが容易となる。すなわち、ストッパ支持部材120と保持プレート140の間には、付勢バネ151(付勢手段)の引っ張り力が作用する。このため、ストッパ支持部材120およびストッパ部材130は、図5から図7において、保持プレート140に対して右方向(時計回り方向)に回転しようとするので、ストッパ突起131は、復帰ガイド壁145d2に沿って摺動することで、ストッパ支持部材120の所定の位置(収納位置)に向けてストッパ部材130を移動させることができる。このため、ストッパ部材130をストッパ支持部材120の所定の位置(収納位置)に復帰させることが容易となる。
【0111】
また、本実施の形態では、第3規制壁145d1および復帰ガイド壁145d2は、移動規制溝部145dの内壁に設けられている。このため、保持プレート140を加工する際に、たとえばプレス加工等によって同時に第3規制壁145d1および復帰ガイド壁145d2を形成することができ、加工工程の簡素化を図ることができる。
【0112】
また、本実施の形態では、ストッパ支持部材120は軟磁性材料から構成されると共に、ストッパ部材130のうち径方向の内径側には、マグネットM1が取り付けられている。このため、マグネットM1の磁力によって、ストッパ部材130が所定の位置(収納位置)に復帰することをアシストすることが可能となる。
【0113】
また、本実施の形態では、保持プレート140には、当該保持プレート140の表面または裏面から突出する係止用突部143(突出手段)が設けられていて、係止用突部143(突出手段)は、付勢バネ151(付勢手段)によって保持プレート140が第1回転方向に向かって付勢された際に、ストッパ突起131がガイド溝145の第1回転方向とは反対側の端部に当接するよりも先または当接するのと同時に、ストッパ支持部材120の側面120b1に当接する位置に配置されている。
【0114】
このため、係止用突部143(突出手段)がストッパ支持部材120の側面120b1に当接することによって、ストッパ突起131へ付勢力が作用し続けるのを防止することができる。また、ストッパ部材130がストッパ収納部123の内部の側壁に押し付けられるのを防止することができる。このため、ストッパ部材130と、ストッパ収納部123の内部の側壁との間の摩擦力により、ストッパ部材130が所定の位置(収納位置)に戻るのが阻害されるのを防止可能となる。
【0115】
また、本実施の形態では、保持プレート140には、この保持プレート140の一部を折り曲げることで形成されると共に、付勢バネ151(付勢手段)よりも保持プレート140の外径側に配置されるバネ受け突部144が設けられていて、バネ受け突部144は、付勢バネ151(付勢手段)が保持プレート140の回転時の遠心力によって外径側に脱落するのを受け止める。
【0116】
このように、付勢バネ151(付勢手段)よりも保持プレート140Bの外径側にバネ受け突部144が配置されていることにより、保持プレート140の回転時に付勢バネ151が遠心力によって外径側に向かって脱落するのを受け止めることができる。
【0117】
<変形例>
以上、本発明の各実施の形態について説明したが、本発明はこれ以外にも種々変形可能となっている。以下、それについて述べる。
【0118】
上述の各実施の形態では、回転ロック(荷落下防止)装置100が、レバーホイスト10に適用された場合について説明している。しかしながら、上記の回転ロック(荷落下防止)装置は、たとえばチェーンブロック等のような、レバーホイスト以外の巻上機や、あるいは巻上装置と同様に負荷の方向が一定の昇降装置などに適用しても良い。
【0119】
また、上述の実施の形態では、マグネットM1は、ストッパ部材130の底面130aに取り付けられている場合について説明している。しかしながら、マグネットは、ストッパ収納部123の底面123bに取り付けても良く、ストッパ部材130の底面130aとストッパ収納部123の底面123bの両方に取り付けても良い。
【0120】
このような構成例を、図14に示す。図14においては、ストッパ部材130の底面130a側に凹部(符号省略)を設けて、その凹部にマグネットM1を配置している。加えて、ストッパ支持部材120の底面123b側にも凹部(符号省略)を設けて、その凹部に、マグネットM2を配置している。このとき、マグネットM1とマグネットM2とが磁力によって吸引するように、マグネットM1とマグネットM2との互いに対向する磁極は、異なっている。
【0121】
ここで、図14に示すようなマグネットM1,M2が接触して吸着した状態(すなわち、マグネットM1とマグネットM2の間の距離=0の状態)の吸着力は、図5に示すようなマグネットM1と、鉄系の金属を材質とするストッパ支持部材120の底面123bとが接触して吸着した状態(すなわち、マグネットM1と底面123bの間の距離=0の状態)の吸着力と、同等となっている。
【0122】
ここで、図15(A)に示すように、マグネットM1とストッパ支持部材120の底面123bとが、距離Yだけ離れて対向する場合の吸着力と、マグネットM1,M2が、同じ距離Yだけ離れて対向する場合の吸着力とを比較する。この場合、磁石による吸引力は、距離の2乗に反比例することから、マグネットM1とストッパ支持部材120の底面123bとが、距離Yだけ離れて対向する場合の吸着力に対して、マグネットM1,M2が、同じ距離Yだけ離れて対向する場合の吸着力は、4倍程度となる。換言すれば、図15(A)に示すような、マグネットM1とストッパ支持部材120の底面123bとが、距離Yだけ離れて対向する場合の吸着力と等しいのは、図15(B)に示すような、マグネットM1とストッパ支持部材120の底面123bとが、距離Y/2だけ離れて対向するときである。
【0123】
このように、ストッパ部材130のうち、径方向の内径側とストッパ支持部材120の対向部位の双方には、互いに吸引する方向に磁力を及ぼすマグネットM1,M2がそれぞれ取り付けられている。このため、図5に示すような、マグネットM1とストッパ支持部材120の底面123bとが対向している構成と比較して、マグネットM1,M2が、互いに離れた際に作用する磁力による吸引力を強くすることが可能となり、ストッパ部材130が外径側に飛び出した際に、たとえば異物による摩擦抵抗が一定程度生じていても、ストッパ部材130を所定の位置(収納位置)に容易に復帰させることができる。
【0124】
また、図6図7等から明らかなように、保持プレート140においては、許容溝部145aと比較して、移動規制溝部145dの径方向における寸法が小さく設けられている。このため、許容溝部145aにストッパ部材130が位置した場合には、移動規制溝部145dにストッパ部材130が位置した場合と比較して、外径側へのストッパ部材130の外径側に向かう飛び出し量が小さくなる。したがって、上記のようなマグネットM1,M2を配置する構成を採用する場合には、マグネットM1とストッパ支持部材120の底面123bとが対向している構成と比較して、ストッパ部材130を所定の位置(収納位置)に容易に復帰させることができる。
【0125】
また、回転ロック(荷落下防止)装置100は、巻上機の駆動軸に配置するように例示しているが、その取り付け位置は駆動軸に限定されず、例えばロードシーブや巻取りドラムの軸部のように、対象とする回転部材と一体的に回転する軸状部材に、回転ロック(荷落下防止)装置100を配置することができる。そうすることによって、減速機構などが破損しても荷の落下を防止することができる。
【0126】
また、図示は省略するが、ストッパ部材130側にガイド溝、保持プレート140側にガイド溝と係合するガイドピンを備えるようにしても良い。
【0127】
また、保持プレート140は2枚でストッパ支持部材120を挟みこむように配置されることが好ましいが、1枚の保持プレート140だけでストッパ支持部材120に隣接配置する構成としても良い。
【0128】
また、付勢ユニット160の付勢力による保持プレート140の回転を、保持プレート140Bの一部を折り曲げて、突出手段に対応する係止用突部143を設け、ストッパ支持部材120の側面120b1に当接することで規制するようにしている。しかしながら、例えばリベット等の連結部材R1のような、保持プレート140に取り付けた別部材を突出手段としても良い。
【0129】
また、ストッパ突起131が移動規制溝部145dに位置する状態で、ストッパ部材130を底面123bに接触する位置に引き戻すためにマグネットM1を備えているが、復帰ガイド壁の緩い傾斜部を長く形成するようにして、付勢ユニット160の付勢力によって引き戻すようにしても良い。
【0130】
また、第3規制壁145d1を有する移動規制溝部145dを遊間溝部の他方側の端部に設けているが、端部に限らず中間部に配置しても良く、複数有しても良い。
【符号の説明】
【0131】
10…レバーホイスト、11,12…フレーム、12a…貫通孔、12b…軸孔、13…ケーシング、14…ブレーキカバー、14a…フランジ部、14a1…挿通孔、15…ロックカバー、15a…立ち上がり部、15b…対向面、15b1…通し孔、20…ロードシーブ、20a…挿通孔、21…ロードギヤ、25…駆動軸(軸状部材に対応)、26…雄ネジ部、27…ピニオンギヤ、30…減速ギヤ、31…大径ギヤ部、32…小径ギヤ部、34…ギヤボックス、35…メネジ部材、36…雌ネジ部、37…切換歯車、40…切換爪、45…切換ツマミ、50…操作レバー、55…カム部材、60…遊転ニギリ、70…ブレーキ装置、71…ブレーキ受け、71a…フランジ部、71b…中空ボス部、72a,72b…ブレーキ板、80…爪車(ラチェット機構の一部に対応)、83…ラチェット歯、90…爪部材(ラチェット機構の一部に対応)、91…爪軸、92…ブッシュ、93…ねじりばね、93a…コイル部、100…回転ロック(荷落下防止)装置、110…ストッパ係止部材(ストッパ係止手段に対応)、111…取付孔、111a…内壁面、112…内側突出部、113…凹状部、114…係止壁、114a…角部、115…爪軸(ラチェット機構の一部に対応)、116…リブ、120…ストッパ支持部材、120a…幅狭片部、120b…幅広片部、121…中心孔、122…軸受ボス部、123…ストッパ収納部、123a…側壁、123b…底面、124…差込穴、125…収納凹部、126…抜け止め凹部、127…傾斜壁、130…ストッパ部材、130a…底面、131…ストッパ突起、132…外周面、140…保持プレート、141…孔部、142…中心孔、143…係止用突部、144…バネ受け突部、145…ガイド溝、145a…許容溝部、145a1…内側壁、145b…遊間溝部、145b1…第1規制壁、145c…戻り規制溝部、145c1…第2規制壁、146…保持凸部、146a…凸部先端部、150…付勢ユニット(付勢手段に対応)、151…付勢バネ、152…一端掛止ピン、B1…ステイボルト(締結部材に対応)、C1…チェーン、R1…連結部材、SP1…スペース
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