(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】農業用、園芸用又は土木作業用の手作業具の柄
(51)【国際特許分類】
B25G 1/10 20060101AFI20240828BHJP
【FI】
B25G1/10 D
(21)【出願番号】P 2024086948
(22)【出願日】2024-05-29
【審査請求日】2024-05-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000200792
【氏名又は名称】浅香工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117374
【氏名又は名称】中尾 真一
(72)【発明者】
【氏名】古川 智康
(72)【発明者】
【氏名】竹中 亮輔
【審査官】大屋 静男
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-098178(JP,U)
【文献】実開平01-117883(JP,U)
【文献】実開昭61-175379(JP,U)
【文献】特開2008-254168(JP,A)
【文献】特表2000-508577(JP,A)
【文献】特開2005-320758(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25G 1/00- 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の筒状の柄本体と、前記柄本体の内部の長さ方向に設けられる2以上の湾曲リブを備え、
前記湾曲リブは、
少なくともスゥエージング処理を施す端部に設けられ、断面弧状の板状体で形成されるとともに、前記柄本体の内部において、湾曲した膨出部が他の湾曲リブの湾曲した膨出部と対向する一方、湾曲した膨出部が他の湾曲リブの湾曲した膨出部と抵触しないように所定の間隔を開けて前記柄本体と一体的に成型されてなることを特徴とする農業用、園芸用又は土木作業用の手作業具の柄。
【請求項2】
2乃至4の前記湾曲リブが、前記柄本体の全長または一部分にわたり、成型されてなることを特報とする請求項1に記載の農業用、園芸用又は土木作業用の手作業具の柄。
【請求項3】
前記柄本体の一端部又は両端部にスゥエージング処理を施したことを特徴とする請求項1又は2に記載の農業用、園芸用又は土木作業用の手作業具の柄。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の手作業具の柄を備えることを特徴とする農業用、園芸用又は土木作業用の手作業具。
【請求項5】
請求項3に記載の手作業具の柄を備えることを特徴とする農業用、園芸用又は土木作業用の手作業具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として農作業(園芸も含む)や土木作業に使用される手作業具、例えばショベル、スコップ、レーキ等の柄に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、農業用、園芸用又は土木作業用として使用される手作業具、例えばショ
ショベル、スコップ、スペード、ホーク、ツルハシ、ハンマー、鍬、鋤、ジョレン、レーキ、熊手、ホーキ、草削り等の手作業具においては、金属製の作業部に木製の柄を取り付けたものが一般的であった。しかし、近年では、例えば、実用新案登録第3112816号に示すように、剛性及び耐久性の点から金属製の柄も多く使用されている。この場合、作業性の観点から柄を軽量とするため、例えば、アルミニウム等の軽金属でパイプ状に成型された柄が使用される場合が多い。
【0003】
前記の手作業具の柄と作業部を連結する場合には、前記作業部に前記柄の挿入のための管状の被挿入部を設け、その被挿入部に前記柄の先端を挿入して固定するという連結構造が採用されている。この場合、前記被挿入部は、長さ方向に切り込みを入れた断面略C字形状の管状に形成されると共に前記作業部方向に向けて縮径して形成されており、この被挿入部に、先端部を先細形状に形成した前記柄を圧入すると、前記被挿入部に前記柄の先端部形状に沿って拡径しながら挿入されるので、ガタツキが少なくなり、作業部と柄の接地面積が大きくなり、連結部の強度がますこととなる。
【0004】
そして、前記手作業具の柄として、金属製の柄を用いる場合は、前記柄と掬い部等の作業部と連結する場合において、前記柄の連結側先端部分にスゥエージング処理を行い、作業部に形成した長手方向に切れ目の入った前記挿入部に挿入した上で、溶接やボルト止め等の手段によって固定する場合がある。
【0005】
一方、上記のように金属製パイプで形成される柄であっても、使用されるうちに折れ曲がったり、折れる場合が生じる場合がある。そのため、剛性を高める手段として、技術分野は相違するものの、例えば、実開平3-25091公報(特許公報1)に記載の硬質パイプがある。前記公報記載のパイプは、全体の形状が筒状で、内側に延長して補強リブが設けられており、補強リブはパイプの内面の複数箇所に設けられており、かつ、補強リブとパイプが一体的に成形されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記公報記載の補強リブの形状では、柄の内部に設けられた補強リブは互いに連結されており、前記補強リブがあることにより、前記柄の先端部を縮径することはできない。したがって、前記形状の補強リブを設けたままでは、前記スゥエージング処理を行うことができない。
【0008】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、スゥエージング処理を行うことができる補強リブを設けた前記手作業具の柄を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の農業用、園芸用又は土木作業用の手作業具の柄は、金属製の筒状の柄本体と、前記柄本体の内周面の長さ方向に設けられる2以上の湾曲リブを備え、前記湾曲リブは、断面弧状の板状体で形成されるとともに、前記柄本体の内周面において、湾曲した膨出部が他の湾曲リブの湾曲した膨出部と対向する一方、湾曲した膨出部が他の湾曲リブの湾曲した膨出部と抵触しないように径方向において所定の間隔を開けて前記柄本体と一体的に成型されてなることを特徴とする。
【0010】
請求項1に記載の農業用、園芸用又は土木作業用の手作業具の柄においては、前記湾曲リブにより、柄本体の強度を高めることができると共に、前記湾曲リブは断面弧状の板状体で形成されるとともに、前記柄本体の内部において、湾曲した膨出部が他の湾曲リブの湾曲した膨出部と対向する一方、湾曲した膨出部が他の湾曲リブの湾曲した膨出部と抵触しないように径方向において所定の間隔を開けて形成されているので、端部を先細形状にスゥエージング処理した場合は、前記湾曲リブは、前記柄本体20の内部中心に向けて、曲率が小さくなるように縮径して変形するので、スゥエージング処理を行うことができる。
【0011】
請求項2に記載の農業用、園芸用又は土木作業用の手作業具の柄は、請求項1に記載の農業用、園芸用又は土木作業用の手作業具の柄において、2乃至4の前記湾曲リブが、前記柄本体の全長または一部分にわたり、成型されてなることを特報とする。
【0012】
請求項2に記載の農業用、園芸用又は土木作業用の手作業具の柄においては、前記湾曲リブの数を2~4としているので、湾曲リブの重量をそれほど増すことなく強度を高めることができる。
【0013】
請求項3に記載の農業用、園芸用又は土木作業用の手作業具の柄は、請求項1又は2に記載の農業用、園芸用又は土木作業用の手作業具の柄において、前記柄本体の一端部又は両端部にスゥエージング処理を施したことを特徴とする。
【0014】
請求項3に記載の農業用、園芸用又は土木作業用の手作業具の柄においては、作業部のハンドル側にもスゥエージング処理を施すことができる。
【0015】
請求項4及び請求項5に記載の農業用、園芸用又は土木作業用の手作業具は、前記柄を備えるので、請求項1乃至3の何れか一に記載した農業用、園芸用又は土木作業用の手作業具の柄を備えるので、柄本体の強度を高めることができると共に、柄のスゥエージング処理を行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の農業用、園芸用又は土木作業用の手作業具の柄に依れば、前記湾曲リブにより、柄本体の強度を高めることができると共に、前記湾曲リブは断面弧状の板状体で形成されるとともに、前記柄本体の内部において、湾曲した膨出部が他の湾曲リブの湾曲した膨出部と対向する一方、湾曲した膨出部が他の湾曲リブの湾曲した膨出部と抵触しないように径方向において所定の間隔を開けて形成されているので、端部を先細形状にスゥエージング処理した場合は、前記湾曲リブは、前記柄本体の内部中心に向けて、曲率が小さくなるように縮径して変形するので、スゥエージング処理を行うことができる。
【0017】
請求項2に記載の農業用、園芸用又は土木作業用の手作業具の柄に依れば、請求項1に記載の農業用、園芸用又は土木作業用の手作業具の柄において、2乃至4の前記湾曲リブが、前記柄本体の全長または一部分にわたり、成型することができるので、湾曲リブの重量をそれほど増すことなく好適に強度を高めることができる。
【0018】
請求項3に記載の農業用、園芸用又は土木作業用の手作業具の柄に依れば、請求項1又は2に記載の農業用、園芸用又は土木作業用の手作業具の柄において、前記柄本体の一端部又は両端部にスゥエージング処理を施すことができるので、作業部のハンドル側にも スゥエージング処理を施すことができる。
【0019】
請求項4及び請求項5に記載の農業用、園芸用又は土木作業用の手作業具に依れば、前記柄を備えるので、請求項1乃至3の何れか一に記載した農業用、園芸用又は土木作業用の手作業具の柄を備えるので、柄本体の強度を高めることができると共に、柄のスゥエージング処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態に係る手作業具の柄の斜視図である。
【
図2】手作業具の柄にスゥエージング処理を行う行程図である。
【
図3】(a)は
図2のA-A線端面図、(b)は
図2のB-B線端面図、(c)は
図2のC-C線端面図である。
【
図5】ショベルの作業部の図であり、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は底面図である。
【
図6】ショベルの作業部に柄を取り付けた状態の(a)は平面図、(b)は側面図である。
【
図7】他の実施例を示す手作業具の柄の端面図であり、(a)は3つの補強リブを形成した手作業具の柄の端面図であり、(b)は4つの補強リブを形成した手作業具の柄の端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面に基づいて具体的に説明する。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態に係る手作業具の柄の斜視図であり、
図2は、手作業具の柄の先端部にスゥエージング処理を行う行程図であり、
図3(a)は
図2のA-A線端面図、(b)は
図2のB-B線端面図、(c)は
図2のC-C線端面図であり、
図4は、
図2(c)の平面図である。
【0023】
図1乃至
図4において、10は、本発明に係る農業用、園芸用又は土木作業用の手作業具(以下、「手作業具」という。)の柄であり、前記手作業具の柄10は、
図1及び
図2(a)に示すように、金属製の円筒形状の長尺の柄本体20の内部に、前記柄本体20の径方向の中央に向かって膨出して湾曲する湾曲リブ30(31、32)を一体的に成型している。
【0024】
前記湾曲リブ30(31、32)は、一対の横断面弧状の板状体に形成され、前記柄の内部において前記板状体の膨出部が対向するように位置させており、かつ、前記板状体31と前記板状体32とは膨出部が所定間隔を隔てて形成される。
【0025】
図2は、手作業具の柄10の先端部にスゥエージング処理を行うと共に、先端部の一部を切り欠き、前記作業部への取付を容易かつ強固にする処理行程図である。本発明に係る手作業具の柄10は、上記の構成からなるので、前記補強リブ30(31、32)により、強度を高めることができると共に、端部にスゥエージング処理(絞り加工)を施すことができる。
【0026】
図2(a)は、前記柄10の側面図であり、(b)は前記柄10の先端部X(前記作業部に挿入する部分)にスゥエージング処理を施した状態の側面図である。
図3(a)~(c)は、
図2(a)及び(b)のA-A線端面図、B-B線端面図、C-C線端面図である。
【0027】
前記柄10の柄本体20は、外径が34mm、厚さ2mmのパイプ状のアルミニウム合金を押出成型して形成されており、前記柄20の内部の前記湾曲リブ30(31、32)も柄本体20と一体成型して形成されており、前記湾曲リブ30(31、32)を、厚さ2mm、R17mmに成型しているので、
図2(b)に示すように、先端に向けて先細り形状に成型すると、内部の前記湾曲リブ30(31、32)の膨出部は所定間隔を隔てて形成されているので、内部中心に向けて、曲率が小さくなるように変形していき、最先端部では、前記膨出部同士が接触し、さらに加圧すると接触した状態で凹んで固定され、強度が増すこととなる。
【0028】
また、
図2(c)及び
図4に示すように、前記柄10の最先端には、後述する作業部70(
図6参照)の被挿入部72に深く挿入できるように、上面に切り欠き部11を設けている。
【0029】
図5は、ショベルの作業部70の図であり、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は底面図である。また、
図6は、ショベルの作業部にハンドルを設けた柄を取り付けた状態の図であり、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【0030】
図5に示すショベルの作業部70は、掬い部71と、前記掬い部70の後端に設けた、前記柄10の被挿入部72とを備えており、前記被挿入部72は、前記掬い部71に対して上面側に湾曲するように湾曲部74を備え、また、下面の長さ方向中央に隙間73を設けて、全体として、略C字形の筒状体として形成されており、後端にゆくにしたがって若干拡径するように形成されている。
【0031】
図6は、ショベルの作業部70に柄を取り付けた状態の(a)は平面図、(b)は側面図である。
【0032】
図6に示すように、前記ショベルの作業部70の筒状の前記被挿入部72に前記柄10のスゥエージング処理を施した先端部を挿入してピンPで固定しているが、挿入時には、前記被挿入部72に、先端部を先細形状に形成した前記柄10を圧入すると、前記被挿入部72は前記柄10の先端部形状に沿って若干拡径しながら挿入されるので、前記柄10の先端部は、前記被挿入部72の内周面に沿って挿入されるので、前記被挿入部72と前記柄10の接地面積が大きくなり、ガタツキが少なくなるとともに、連結部の強度がますこととなる。また、前記柄10の最先端部上面に切り欠き部11を設けているので、前記柄10の先端は、前記被挿入部72の前記湾曲74部に抵触して止まることなく、さらに奥まで進入させて固定することができる。
【0033】
図7は他の実施形態を示す前記柄10A、10Bの端面図であり、
図7(a)に示す柄10Aは、柄の内部に3つの湾曲リブ40(41、41、42)を等間隔に設けたものであり、
図7(b)に示す前記柄10Bは、柄の内部に4つの湾曲リブ50(51、52、53、54)を等間隔に設けている。このように、前記柄の内部には、前記湾曲リブを複数個設けても良いが、柄全体の重量を考慮すると、前記湾曲リブの数は2乃至4程度が好適である。
【0034】
以上の構成からなる前記柄10、10A、10Bは、農業用、園芸用又は土木作業用として使用される手作業具、例えばショベル、スコップ、スペード、ホーク、ツルハシ、ハンマー、鍬、鋤、ジョレン、レーキ、熊手、ホーキ、草削り等の金属製の作業部分に取り付けるものであって、取り付ける時には、前記柄10の先端部をスゥエージング処理(絞り加工)を施して取付を容易かつ強固にしている。
【0035】
なお、前記柄10は、必要が無ければ、前記スゥエージング処理を行わなくても良い。また、例えば、ハンドルを取り付けるため及びその他の必要があれば、前記柄10の後端部又は両端部に、前記スゥエージング処理を行っても良い。
【0036】
また、前記柄10、10A、10Bの厚さ、長さ等の寸法は、使用目的に応じて、適宜設定することができる。また、前記湾曲リブ30、40、50についても、その厚さ、曲率等の寸法及び数は適宜設計可能である。また、断面弧状の前記湾曲リブは全体として略弧状であれば、多少の凹凸があっても良い。
【0037】
その他、前記柄10、10A、10B及び湾曲部30、40、50の構成も本発明の意図する範囲内において任意に設計変更自在である。
【符号の説明】
【0038】
10 作業具の柄
10A 作業具の柄(他の実施形態)
10B 作業具の柄(他の実施形態)
11 切り欠き部
20 柄本体(パイプ)
30(31、32) 湾曲リブ
40(41、42、43) 湾曲リブ(他の実施形態)
50(51、52、53、54) 湾曲リブ(他の実施形態)
60 ハンドル
70 作業部(ショベル)
71 掬い部
72 被挿入部
73 間隙
74 湾曲部
X スゥエージング処理部
P ピン
【要約】
【課題】スゥエージング処理を行うことができる補強リブを設けた前記手作業具の柄を提供する。
【解決手段】
農業用、園芸用又は土木作業用の手作業具の柄10であって、金属製の筒状の柄本体20と、前記柄本体20の内部の長さ方向に設けられる2以上の湾曲リブ30(31,32)を備え、前記湾曲リブ30(31,32)は、断面弧状の板状体で形成されるとともに、前記柄本体20の内部において、湾曲した膨出部が他の湾曲リブの湾曲した膨出部と対向する一方、湾曲した膨出部が他の湾曲リブの湾曲した膨出部と抵触しないように所定の間隔を開けて前記柄本体20と一体的に成型するよう構成した。
【選択図】
図1