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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】検品システム、方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B41J 29/393 20060101AFI20240828BHJP
   B41J 29/38 20060101ALI20240828BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20240828BHJP
   H04N 1/00 20060101ALI20240828BHJP
【FI】
B41J29/393 105
B41J29/38 206
G03G21/00 500
G03G21/00 510
H04N1/00 567L
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019143312
(22)【出願日】2019-08-02
(65)【公開番号】P2021024183
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2022-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】生野 貴生
【審査官】大関 朋子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-086800(JP,A)
【文献】特開2007-322465(JP,A)
【文献】特開2018-086799(JP,A)
【文献】特開2019-008116(JP,A)
【文献】特開2004-026401(JP,A)
【文献】特開2008-180900(JP,A)
【文献】特開2021-168488(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0206153(US,A1)
【文献】特開2012-11601(JP,A)
【文献】特開2019-98525(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 29/393
B41J 29/38
G03G 21/00
H04N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像をシートに印刷する印刷部と、
少なくとも3つの排紙トレイと、
前記シートに印刷された前記画像を読取って、読取画像を生成する読取部と、
前記読取画像について印刷不良が存在するか否かを判定する制御部と、
を備え、
前記制御部は、部数M(M>1)の印刷が指定されている場合において、
前記読取画像について印刷不良が存在しないと判定された場合に、第1排紙トレイへ印刷済みシートが排紙されるように、前記印刷済みシートの排紙を制御し、
前記読取画像についてN番目(N<M)の部の排紙の途中で印刷不良が存在すると判定された場合に、前記第1排紙トレイとは異なる第2排紙トレイへ印刷済みシートが排紙されるように、前記印刷済みシートの排紙を制御し、
前記印刷不良が存在すると判定された頁に後続する前記N番目の部の残りの頁の印刷済みシートが前記第1排紙トレイ及び前記第2排紙トレイとは異なる第3排紙トレイへN+1番目の部の一部として排紙されるように、前記印刷済みシートの排紙を制御し、
前記N番目の部の最終頁の印刷済みシートの排紙の直後に、前記印刷不良が存在すると判定された頁の画像を再印刷シートに再印刷するように前記印刷部を制御し、及び前記再印刷シートが前記第1排紙トレイへ排紙されるように、前記再印刷シートの排紙を制御し、
前記第1排紙トレイにおいて部として不足する頁の画像を印刷するように前記印刷部を制御し、及び当該不足する頁の印刷済みシートが前記第1排紙トレイへ前記N番目の部の一部として排紙されるように、前記印刷済みシートの排紙を制御し、
前記第3排紙トレイにおいて部として不足する頁の画像を印刷するように前記印刷部を制御し、及び当該不足する頁の印刷済みシートが前記第3排紙トレイへ前記N+1番目の部の一部として排紙されるように、前記印刷済みシートの排紙を制御する、
検品システム。
【請求項2】
前記印刷不良が存在すると判定された頁に後続する頁の印刷済みシートは、前記第3排紙トレイ上の第1排紙位置へ排紙され、
前記第3排紙トレイにおいて部として不足する頁の印刷済みシートは、前記第3排紙トレイ上の前記第1排紙位置からシフトされた第2排紙位置へ排紙される、
請求項1に記載の検品システム。
【請求項3】
印刷部、読取部及び少なくとも3つの排紙トレイを含む検品システムにおいて排紙を制御するための方法であって、
前記印刷部により、画像をシートに印刷することと、
前記読取部により、前記シートに印刷された前記画像を読取って、読取画像を生成することと、
前記読取画像について印刷不良が存在するか否かを判定することと、
を含み、
前記方法は、部数M(M>1)の印刷が指定されている場合において、
前記読取画像について印刷不良が存在しないと判定された場合に、第1排紙トレイへ印刷済みシートが排紙されるように、前記印刷済みシートの排紙を制御することと、
前記読取画像についてN番目(N<M)の部の排紙の途中で印刷不良が存在すると判定された場合に、前記第1排紙トレイとは異なる第2排紙トレイへ印刷済みシートが排紙されるように、前記印刷済みシートの排紙を制御することと、
前記印刷不良が存在すると判定された頁に後続する前記N番目の部の残りの頁の印刷済みシートが前記第1排紙トレイ及び前記第2排紙トレイとは異なる第3排紙トレイへN+1番目の部の一部として排紙されるように、前記印刷済みシートの排紙を制御することと、
前記N番目の部の最終頁の印刷済みシートの排紙の直後に、前記印刷部により、前記印刷不良が存在すると判定された頁の画像を再印刷シートに再印刷することと、
前記再印刷シートが前記第1排紙トレイへ排紙されるように、前記再印刷シートの排紙を制御することと、
前記印刷部により、前記第1排紙トレイにおいて部として不足する頁の画像を印刷することと、
前記第1排紙トレイにおいて部として不足する頁の印刷済みシートが前記第1排紙トレイへ前記N番目の部の一部として排紙されるように、前記印刷済みシートの排紙を制御することと、
前記印刷部により、前記第3排紙トレイにおいて部として不足する頁の画像を印刷することと、
前記第3排紙トレイにおいて部として不足する頁の印刷済みシートが前記第3排紙トレイへ前記N+1番目の部の一部として排紙されるように、前記印刷済みシートの排紙を制御することと、
を含む方法。
【請求項4】
前記印刷不良が存在すると判定された頁に後続する頁の印刷済みシートは、前記第3排紙トレイ上の第1排紙位置へ排紙され、
前記第3排紙トレイにおいて部として不足する頁の印刷済みシートは、前記第3排紙トレイ上の前記第1排紙位置からシフトされた第2排紙位置へ排紙される、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
システムのプロセッサに、請求項3又は4に記載の方法を行わせるためのコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、検品システム、方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、コピー機及び複合機といった画像形成装置は、画像が印刷されたシートをトレイへ排紙する。画像形成装置の後段に後処理装置(フィニッシャとも呼ばれる)が取り付けられる場合、後処理装置は、例えば、複数のトレイへのシートの仕分け、部ごとのステイプル留め、折り、製本及びパンチといった処理を行う。
【0003】
後処理装置には、検品機能を有するものがある。検品機能は、印刷済みシートから読取られる読取画像を用いて、印刷不良を検出する。例えば、ある頁の1部目の読取画像と比較して2部目の読取画像に有意な差がある場合、2部目のその頁の印刷は不良であると判定され得る。印刷不良が検出されたシートは、除去(パージ)の対象となる。特許文献1は、印刷不良が検出されたシートを、直前のシートの排紙先のトレイとは別のトレイへ排紙することで、不良シートを除去する作業を容易化することを提案している。特許文献2は、印刷ジョブにおける印刷不良が検出されたシートの位置をユーザに通知するために、不良位置の情報を印刷し又はディスプレイへ表示することを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-144627号公報
【文献】特開2018-192752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数頁からなる印刷物が印刷される場合、検品機能により複数頁のうちの数頁に印刷不良が検出されると、不良シートが除去される結果として、不良シートを含む部の全体が不完全となる。例えば、10頁の印刷物を20部印刷しようとするケースで、5部目の3頁目に印刷不良が発生すると、5部目の印刷済みシートの束全体が不完全となる。この場合、ユーザは、例えば、同じ3頁目を再印刷して不良シートと差替えるか、又は5部目の全体を再印刷し得る。印刷不良が発生した頁のみを再印刷した場合のシートの差替えは、シートの束から特定のシートを探す作業を含むため、仮に特許文献2のように不良位置の情報がユーザへ通知されるとしても煩雑である。一方、部の全体の再印刷は、作業の煩雑さを軽減する代償として、正常に印刷されたシートまでもが除去され得るという無駄を生じさせる。
【0006】
そこで、本開示は、印刷不良が検出された場合のシートの差替えの労力を軽減しつつ、シートの無駄を可能な限り低減する仕組みを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ある観点によれば、画像をシートに印刷する印刷部と、少なくとも3つの排紙トレイと、前記シートに印刷された前記画像を読取って、読取画像を生成する読取部と、前記読取画像について印刷不良が存在するか否かを判定する制御部と、を備え、前記制御部は、部数M(M>1)の印刷が指定されている場合において、前記読取画像について印刷不良が存在しないと判定された場合に、第1排紙トレイへ印刷済みシートが排紙されるように、前記印刷済みシートの排紙を制御し、前記読取画像についてN番目(N<M)の部の排紙の途中で印刷不良が存在すると判定された場合に、前記第1排紙トレイとは異なる第2排紙トレイへ印刷済みシートが排紙されるように、前記印刷済みシートの排紙を制御し、前記印刷不良が存在すると判定された頁に後続する前記N番目の部の残りの頁の印刷済みシートが前記第1排紙トレイ及び前記第2排紙トレイとは異なる第3排紙トレイへN+1番目の部の一部として排紙されるように、前記印刷済みシートの排紙を制御し、前記N番目の部の最終頁の印刷済みシートの排紙の直後に、前記印刷不良が存在すると判定された頁の画像を再印刷シートに再印刷するように前記印刷部を制御し、及び前記再印刷シートが前記第1排紙トレイへ排紙されるように、前記再印刷シートの排紙を制御し、前記第1排紙トレイにおいて部として不足する頁の画像を印刷するように前記印刷部を制御し、及び当該不足する頁の印刷済みシートが前記第1排紙トレイへ前記N番目の部の一部として排紙されるように、前記印刷済みシートの排紙を制御し、前記第3排紙トレイにおいて部として不足する頁の画像を印刷するように前記印刷部を制御し、及び当該不足する頁の印刷済みシートが前記第3排紙トレイへ前記N+1番目の部の一部として排紙されるように、前記印刷済みシートの排紙を制御する、検品システムが提供される。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、印刷不良が検出された場合のシートの差替えの労力を軽減しつつ、シートの無駄を可能な限り低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態に係る排紙システムの構成の一例を示すブロック図。
図2図1に示した画像形成システムに含まれる装置の具体的な構成の一例を示すブロック図。
図3】第1比較例に係るシートの排紙順序の一例を示す説明図。
図4】第2比較例に係るシートの排紙順序の一例を示す説明図。
図5】第1実施例に係るシートの排紙順序及び排紙モードの一例を示す説明図。
図6】第1実施例に係る排紙制御処理の流れの一例を示すフローチャート。
図7】第1実施例の一修正例に係るシートの排紙順序及び排紙モードの一例を示す説明図。
図8】第2実施例に係るシートの排紙順序及び排紙モードの一例を示す説明図。
図9】第2実施例に係る排紙制御処理の流れの一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一の又は同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略される。
【0011】
<<1.システムの構成>>
本節では、本開示に係る技術がデジタル複合機(Multi-Function Peripheral(MFP))を含むシステムに適用される例を主に説明する。しかしながら、本開示に係る技術は、概して、複合機に限定されない画像形成装置(例えば、プリンタ若しくはコピー機)を含むシステム、又はそうした画像形成装置へ接続される後処理システムへ適用可能である。また、特に説明の無い限り、以下に説明する装置、デバイス、モジュール及びチップといった構成要素の各々は、単一のエンティティで構成されてもよく、又は物理的に異なる複数のエンティティから構成されてもよい。
【0012】
図1は、一実施形態に係る排紙システムの構成の一例を示すブロック図である。図1を参照すると、排紙システム1は、複合機10、検品装置20及び排紙装置30を含む。検品装置20及び排紙装置30は、後処理システム(フィニッシャともいう)40を構成する。
【0013】
複合機10は、印刷ジョブに基づいて画像をシートへ印刷する(記録する)印刷機能を有する。複合機10は、印刷機能により画像を印刷された印刷済みシートを、出力口15から検品装置20へ出力する。複数頁にわたる印刷が印刷ジョブにより指定されている場合には、それら複数頁の印刷済みシートが順次出力口15から出力され得る。なお、本明細書において、頁とは、1部の印刷の範囲内で単一のシートへ印刷される処理単位をいう。例えば、2枚の画像が所謂ツーインワンで1シートへ印刷される場合、頁数は1である。また、部とは、1つの印刷対象から一度に印刷される、同一の頁の複製を含まない処理単位をいう。1つの部は互いに独立した1つ以上の頁のみを含み、2つ以上の部は同一の頁の複製を含む。
【0014】
検品装置20は、複合機10から出力される印刷済みシートに印刷不良が発生していないかを印刷の品質として検査する検査機能を有する。図1の例において、検品装置20は、複合機10の出力口15から出力される印刷済みシートを搬送する搬送路22と、搬送路22上の印刷済みシートの各々を読取る読取装置24とを含む。読取装置24は、例えば各印刷済みシートを光学的に読取ることにより、各印刷済みシートの読取画像を取得する。後にさらに説明するように、この読取画像は、印刷済みシートの各々の印刷不良の検出のために用いられる。
【0015】
排紙装置30は、検品装置20と一体的に構成される。排紙装置30は、搬送路22上を搬送されて来る印刷済みシートの各々を、検品装置20での検品の結果に依存して、1つ以上の排紙先35のうちの1つへ排紙する排紙機能(仕分け機能ともいう)を有する。図1の例において、排紙装置30は、3つの排紙先35を有する。各排紙先35は、限定ではないものの、例えばトレイ型であってよい。これ以降の説明では、3つの排紙先35をそれぞれ、トレイT1、トレイT2及びトレイT3という。なお、当然ながら、排紙先35の数は、3つより多くても少なくてもよい。
【0016】
<<2.各装置の具体的な構成>>
<2-1.複合機>
図2は、図1に示した排紙システム1に含まれる装置の具体的な構成の一例を示すブロック図である。図2を参照すると、複合機10は、CPU101、eMMC102、DRAM103、記憶部104、操作部105、第1読取部106、印刷部107、画像処理部108、通信部109、接続部110及びデータバス111を備える。
【0017】
CPU(Central Processing Unit)101は、複合機10の機能の全般を制御するプロセッサである。eMMC(embedded Multi-Media Card)102は、CPU101により実行される1つ以上のコンピュータプログラムと、それらプログラムで使用されるデータとを記憶する記憶デバイスである。DRAM(Dynamic Random Access Memory)103は、主記憶デバイスであり、プログラム制御変数及び処理対象の画像データといったデータを処理中に一時的に記憶する揮発性メモリを含む。記憶部104は、例えばHDD(Hard Disk Drive)のような二次記憶デバイスであり、画像データを含む多様なデータを永続的に記憶する不揮発性メモリを含む。操作部105は、複合機10又は排紙システム1に関連する情報を表示する表示デバイスと、ユーザ入力を受け付ける入力デバイスとを含むユーザインタフェースを提供する。第1読取部106は、スキャナユニットであり、原稿を光学的に読取って原稿の画像を取得する。印刷部107は、プリンタユニットであり、印刷ジョブに基づいて画像をシート(記録紙ともいう)へ印刷する。印刷ジョブは、例えば、第1読取部106により読取られる原稿についてのコピーを指示するジョブであってもよく、又は通信部109により外部装置から受信される文書その他の印刷対象についての印刷を指示するジョブであってもよい。印刷部107が例えばレーザ方式を採用する場合、感光ドラムからシートへ転写されたトナーを加熱された定着器で加圧することにより、トナーのパターンとして表現された画像がシートに記録される。但し、印刷部107は、レーザ方式に限定されず、例えばインクジェット方式などいかなる種類の印刷方式を採用してもよい。画像処理部108は、画像処理に専用のプロセッサである。例えば、画像処理部108は、印刷用の画像データが符号化されている場合に当該画像データを復号する。また、画像処理部108は、第1読取部106により取得される画像を、記憶又は外部装置への送信のために符号化する。通信部109は、複合機10による外部装置とのネットワークを介した通信のための通信インタフェースである。接続部110は、複合機10に後処理システム40を接続するための接続インタフェースである。複合機10は、接続部110を介して検品装置20及び排紙装置30との間で信号及びデータを交換することができる。データバス111は、CPU101、eMMC102、DRAM103、記憶部104、操作部105、第1読取部106、印刷部107、画像処理部108、通信部109及び接続部110を相互に接続する回線である。
【0018】
<2-2.検品装置>
図2を参照すると、検品装置20は、接続部121、第2読取部122、記憶部123、検出部124及びデータバス125を備える。
【0019】
接続部121は、検品装置20を複合機10及び排紙装置30と接続するための接続インタフェースである。第2読取部122は、図1に示した読取装置24に相当し、複合機10により印刷された印刷済みシートを読取ることにより読取画像を取得する。複数頁が印刷される場合には、第2読取部122は、それら複数頁の印刷済みシートを順次読取って、それぞれの頁に対応する読取画像を取得する。記憶部123は、第2読取部122により取得された各印刷済みシートの読取画像を記憶する記憶デバイスである。検出部124は、図1を用いて説明した検品装置20の検査機能を動作させるプロセッサであってよい。本実施形態において、検出部124は、第2読取部122により取得された読取画像を用いて、印刷済みシートの各々の印刷不良を検出する。例えば、検出部124は、対応する読取画像が汚れ又は位置ズレを含む場合に、印刷済みシートが不良シート(印刷不良が存在するシート)であると判定してもよい。また、検出部124は、部数M(M>1)の印刷が行われる場合に、異なる部の間で同一頁の印刷済みシートの読取画像を比較することにより、印刷不良の存在を判定してもよい。この場合、例えば、1部目の頁の各々の読取画像データが記憶部123内に見本データとして記憶され、検出部124は、2部目以降の印刷済みシートの読取画像と対応する見本データにより表現される画像とを比較し得る。検出部124は、個々の印刷済みシートに印刷不良が検出されたか否かを示す検出結果情報を、接続部121を介して複合機10及び排紙装置30へ送信し得る。データバス125は、接続部121、第2読取部122、記憶部123及び検出部124を相互に接続する回線である。
【0020】
<2-3.排紙装置>
図2を参照すると、排紙装置30は、接続部131、排紙部132及びデータバス133を備える。
【0021】
接続部131は、排紙装置30を複合機10及び検品装置20と接続するための接続インタフェースである。排紙部132は、図1を用いて説明した排紙装置30の排紙機能を動作させるプロセッサであってよい。本実施形態において、排紙部132は、検品装置20から通知される印刷不良の検出結果に依存する排紙モードで、印刷済みシートの各々を1つ以上の排紙先35のうちの1つへ排紙する。ここでの排紙モードは、どの排紙先35へシートを排紙するか、及び選択された排紙先における排紙位置のシフト、のうちの少なくとも一方の設定を含み得る。典型的には、異なる排紙モードで排紙された複数のシートをユーザが容易に互いに区別し得る形で、2つ以上の排紙モードが定義され得る。排紙部132における印刷不良の検出結果に依存した印刷済みシートの仕分け、即ち排紙制御について、次節でより詳細に説明する。データバス133は、接続部131及び排紙部132を相互に接続する回線である。
【0022】
<<3.排紙制御の詳細>>
<3-1.比較例>
前節で説明した排紙システム1における排紙制御の詳細を説明する前に、いくつかの比較例を検討する。
【0023】
(1)第1比較例
例えば、複数頁の印刷対象を複数部印刷している途中で印刷不良が検出された場合に、単純に印刷ジョブの最後に、不良シートと同じ頁が印刷された再印刷シートを出力することが考えられる。図3は、こうした第1比較例に係るシートの排紙順序の一例を示している。
【0024】
図3において、左から右及び上から下へ流れる矢印は、一連のシートの排紙順序を表す。矩形の各ボックスが1つの印刷済みシートを表し、各シート(ボックス)に付与された“i-j”というラベルは、当該シートがi部目のj頁目であることを意味する。各シートの“X”の表記は、当該シートが不良シートとして検出されたことを意味する。各シートの“R”の表記は、当該シートが再印刷シートであることを意味する。
【0025】
図3の例では、全6頁の印刷対象が3部印刷されるものとする。まず、2部目の2頁目のシートP10まで正常に印刷が行われた後、2部目の3頁目のシートP11に印刷不良が検出される。続いて、3部目の1頁目のシートP12まで正常に印刷が行われた後、3部目の2頁目のシートP13に印刷不良が検出される。続いて、3部目の最終頁まで印刷が行われる。最後に、2部目の3頁目の再印刷シートP14及び3部目の2頁目の再印刷シートP15が印刷され排紙される。
【0026】
ユーザは、再印刷が終了すると、再印刷シートP14を不良シートP11と差替える。また、ユーザは、再印刷シートP15を不良シートP13と差替える。それにより、2部目及び3部目が完全な1部の束となる。しかしながら、1つのトレイに重なったシートの束から不良シートP11及びP13を見つけ出して正確に再印刷シートと差替える作業は煩雑であり、ユーザに大きな負担を課す。ユーザは、差替えの煩雑さを回避するために、2部目及び3部目の不完全な束を破棄してそれら部の全体を再印刷することもできるが、そうした再印刷は正常に印刷されたシートまでもが除去され得るという無駄を生じさせる。
【0027】
(2)第2比較例
別の例として、印刷の途中で印刷不良が検出された場合に、排紙先を切り替えてその後のシートを排紙することで、不良シートを除去する作業を容易化することが考えられる。図4は、こうした第2比較例に係るシートの排紙順序の一例を示している。
【0028】
図4の例でも、全6頁の印刷対象が3部印刷されるものとする。まず、2部目の2頁目のシートP20まで正常に印刷が行われ、それら印刷済みシートがトレイT1へ排紙される。続いて、2部目の3頁目のシートP21に印刷不良が検出される。不良シートP21もまた、トレイT1へ排紙される。この印刷不良の検出に応じて、排紙先がトレイT1からトレイT2へ切り替わる。続いて、不良シートP21と同じ頁について再印刷が行われ、再印刷シートP22がトレイT2へ排紙される。さらに、排紙先はトレイT2からトレイT3へ切り替わる。続いて、2部目の5頁目のシートP23及び後続のシートが印刷され、トレイT3へ排紙される。
【0029】
第2比較例においては、トレイT1の最後尾に不良シートP21があり、トレイT2に再印刷シートP22のみがあるため、ユーザは、比較的容易に再印刷シートP22を不良シートP21と差替えることができる。しかしながら、トレイT1上の2部目の束は不完全であるため、ユーザは、トレイT3から2部目の残りの印刷済みシートを探して2部目の束に補完しなければならない。よって、第2比較例もまた、印刷不良が検出された場合のユーザ作業の煩雑さを十分に軽減しているとは言い難い。この煩雑さを回避するために、ユーザは2部目の不完全な束の全体を除去してしまう可能性もある。加えて、複数のシートを高速に印刷する機器においては、印刷不良が検出された時点でいくつかの後続のシートの印刷が既に行われており、不良シートの直後にその不良シートと同じ頁の再印刷シートを排紙することが機器の構造上困難なケースもある。
【0030】
<3-2.実施例>
本実施形態に係る排紙システム1は、上で述べた比較例における不利のうちの1つ以上を、以下に説明する仕組みを通じて解消する。
【0031】
後述する2つの実施例に共通して、排紙システム1は、印刷不良が検出されるまで、1つ以上の印刷済みシートを第1排紙モードで第1排紙先へ排紙する。また、排紙システム1は、印刷不良の検出に応じて、不良シートを第2排紙モードで排紙する。そして、排紙システム1は、その不良シートと同じ頁が印刷された再印刷シートを上記第1排紙先へ排紙する。それにより、ユーザは、不良シートを排紙モードの相違に基づいて容易に見つけ出すことができる。さらに、再印刷シートがもとの第1排紙先へ排紙されるため、同じ部に属するシートの完全な束を得ることがユーザにとって容易である。後述する2つの実施例においては、それぞれ固有のさらなる利点が提供される。
【0032】
(1)第1実施例
第1実施例において、排紙装置30は、同じ排紙先35のいくつかの異なる位置へシートを排紙することのできるシフト排紙機能を有するものとする。そして、第1排紙モードは、第1排紙先の第1排紙位置へシートを排紙するモードであり、第2排紙モードは、第1排紙先の第1排紙位置からシフトされた第2排紙位置へシートを排紙するモードである。不良シートは正常に印刷された印刷済みシートとは異なる排紙位置へシフト排紙されるため、ユーザは不良シートを容易に見つけ出すことができる。
【0033】
また、本実施例において、排紙部132は、再印刷シートを第3排紙モードで排紙してもよい。第3排紙モードは、第1排紙位置から第2排紙位置とは異なる方向に又は異なるシフト量でシフトされた第3排紙位置へシートを排紙するモードである。それにより、再印刷シートは、正常に印刷された印刷済みシートとも不良シートとも異なる排紙位置へシフト排紙される。よって、ユーザは、再印刷シートを容易に見つけ出して不良シートと差替えることができる。
【0034】
また、本実施例において、排紙部132は、部数M(M>1)の印刷が指定されている場合において、N番目(N<M)の部の排紙の途中で印刷不良が検出されたときに、N番目の部の最終頁の印刷済みシートの排紙の直後に、再印刷シートを排紙してもよい。この場合、再印刷シートは、第1比較例のように全ての部の印刷の終了後に排紙されるのではなく、また第2比較例のように検出された不良シートの次に排紙されるのでもなく、部と部の区切りのタイミングで排紙される。それにより、印刷不良が発生したとしても、ユーザは、重なったシートの束から部ごとのシートを単純に抜き出して、個々の部に閉じた作業でそれぞれ完全な部を得ることができる。
【0035】
図5は、第1実施例に係るシートの排紙順序及び排紙モードの一例を示している。図5において、各シートの下に示された上向き矢印は、当該シートが第2排紙モードでシフト排紙されることを意味する。また、各シートの上に示された下向き矢印は、当該シートが第3排紙モードでシフト排紙されることを意味する。これら矢印を伴わないシートは、第1排紙モードで既定の排紙位置へ排紙される。排紙先は全てトレイT1である。
【0036】
図5の例では、全6頁の印刷対象が5部印刷されるものとする(M=5)。まず、2部目の2頁目のシートP30まで正常に印刷が行われ、それら印刷済みシートが第1排紙モードで排紙される。続いて、2部目の3頁目のシートP31に印刷不良が検出される。不良シートP31は、第2排紙モードで、印刷済みシートP30とは異なる排紙位置へ排紙される。その後、2部目の6頁目のシートP32まで正常に印刷が行われ、それら印刷済みシートが第1排紙モードで排紙される。続いて、不良シートP31と同じ頁について再印刷が行われ、再印刷シートP33が、第3排紙モードで、不良シートP31とも印刷済みシートP32とも異なる排紙位置へ排紙される。
【0037】
さらに、4部目の1頁目のシートP35まで正常に印刷が行われ、それら印刷済みシートが第1排紙モードで排紙される。続いて、4部目の2頁目のシートP36に印刷不良が検出される。不良シートP36は、第2排紙モードで、印刷済みシートP35とは異なる排紙位置へ排紙される。その後、2部目の6頁目のシートP37まで正常に印刷が行われ、それら印刷済みシートが第1排紙モードで排紙される。続いて、不良シートP36と同じ頁について再印刷が行われ、再印刷シートP38が、第3排紙モードで、不良シートP36とも印刷済みシートP37とも異なる排紙位置へ排紙される。一連の印刷は、5部目の6番目のシートが排紙された時点で終了する。
【0038】
ユーザは、単一の重なったシートの束から部ごとのシートを抜き出し、2部目の7枚のシートのうち不良シートP31をシフト排紙を手掛かりとして除去し、同じ場所に再印刷シートP33を挿入することにより、2部目の完全な束を作成できる。同様に、ユーザは、4部目の7枚のシートのうち不良シートP36を除去し、同じ場所に再印刷シートP38を挿入することにより、4部目の完全な束を作成できる。こうした排紙モードの切り替えと再印刷のタイミングとによって、印刷不良が検出された場合のシートの差替えの労力を大幅に軽減することができる。また、不良シート以外の印刷済みシートは除去されないため、シートの無駄も最小化される。
【0039】
図5には、1部目から5部目までの全てのシートが同一のトレイ(例えば、トレイT1)へ排紙される例が示されているものの、排紙先のトレイは、例えば部ごとに変更されてもよい。
【0040】
なお、上述した排紙制御は、例えば排紙装置30の排紙部132、検品装置20の検出部124及び複合機10の印刷部107の間の連携によって実現されてもよい。例えば、印刷部107は、どの部のどの頁を印刷したのかを示す制御信号を、検出部124及び排紙部132へ送信する。検出部124は、その制御信号に基づいて、各読取画像を同じ頁の見本データの画像と比較し得る。また、検出部124は、各印刷済みシートについての印刷不良の検出結果を示す制御信号を、印刷部107及び排紙部132へ送信する。排紙部132は、その制御信号に基づいて、個々のシートをどの排紙モードでどの排紙先35へ排紙すべきかを判定する。印刷不良が検出された頁の再印刷は、排紙部132から印刷部107へ要求されてもよく、又は検出部124から印刷部107へ要求されてもよい。
【0041】
図6は、第1実施例に係る排紙制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。なお、以下の説明では、処理ステップをS(ステップ)と略記する。
【0042】
まず、S101で、検品装置20の第2読取部122は、複合機10の印刷部107により印刷された1つの印刷済みシートを読取ることにより、読取画像を取得する。
【0043】
次いで、S103で、検出部124は、S101で取得された読取画像を用いて、印刷済みシートに印刷不良が存在するかを判定する。その後の処理は、S103で印刷不良が検出されたか否かに依存して分岐する(S105)。印刷不良が検出されなかった場合には、処理はS107へ進む。一方、印刷不良が検出された場合には、処理はS109へ進む。
【0044】
印刷不良が検出されなかった場合、S107で、排紙部132は、第1排紙モードで動作し、印刷済みシートをトレイT1の既定の排紙位置へ排紙する。一方、印刷不良が検出された場合、S109で、排紙部132は、第2排紙モードで動作し、不良シートをトレイT1の排紙位置F1へ排紙する。また、S111で、検出部124は、印刷部107へ不良シートと同じ頁の再印刷を要求する。印刷部107は、この再印刷要求に応じて、同じ部の最終頁の印刷の直後に、不良シートと同じ頁を再印刷する。
【0045】
S107又はS111の後、処理は印刷中の部の最終頁が排紙済みであるか否かに依存して分岐する(S113)。最終頁が排紙済みではない場合、処理はS101へ戻り、次の頁の印刷済みシートについて、読取画像の取得、印刷不良の検出及び検出結果に基づく排紙が繰り返される。
【0046】
印刷中の部の最終頁が排紙済みとなった場合、S115で、排紙部132は、その部において再印刷が発生したか否かを判定する。再印刷が発生した場合、排紙部132は、第3排紙モードで動作し、不良シートと同じ頁の再印刷シートをトレイT1の排紙位置F2へ排紙する。
【0047】
上述した処理は、全ての部の全ての頁の印刷済みシートの排紙が終了するまで繰り返される(S119)。全ての部の全ての頁の印刷済みシート(再印刷シートを含む)の排紙が終了すると、図6の排紙制御処理は完了する。
【0048】
(2)修正例
高速印刷が行われる場合、図6のS111で送信される再印刷要求が印刷部107へ到達する前に、印刷不良が発生した部の次の部の印刷が既に開始している可能性がある。とりわけ、ある部の最終頁(又はそれに近い頁)に印刷不良が存在する場合には、そのように再印刷が部の区切りに間に合わない可能性が高い。
【0049】
そこで、第1実施例の修正例として、排紙部132は、N番目の部における印刷不良の検出時にN+1番目の部の印刷が既に開始されている場合に、N+1番目の部の排紙先を、N番目の部の排紙先とは異なる排紙先35へ切り替えてもよい。即ち、排紙部132は、この場合、N+1番目の部の1つ以上の印刷済みシートを第2排紙先へ排紙した後、N番目の部の再印刷シートを元の第1排紙先へ排紙し得る。
【0050】
図7は、本修正例に係るシートの排紙順序及び排紙モードの一例を示している。図7の例でも、全6頁の印刷対象が5部印刷されるものとする。まず、2部目の5頁目のシートP40まで正常に印刷が行われ、それら印刷済みシートがトレイT1の既定の排紙位置へ排紙される。続いて、2部目の6頁目のシートP41に印刷不良が検出される。不良シートP41は、トレイT1の既定の排紙位置とは異なる排紙位置へシフト排紙される。この時点で、3部目の1頁目から3頁目のシートP42の印刷は開始されており、これら3つのシートP42は、正常に印刷され、トレイT2の既定の排紙位置へ排紙される。続いて、不良シートP41と同じ頁について再印刷が行われ、再印刷シートP43が、不良シートP41とは異なるシフト方向でトレイT1へシフト排紙される。続いて、3部目の残りの4頁目から6頁目のシートP44が印刷され、トレイT2の既定の排紙位置へ排紙される。
【0051】
続いて、4部目の1頁目から5頁目のシートが正常に印刷され、それら印刷済みシートがトレイT1の既定の排紙位置へ排紙される。続いて、4部目の6頁目のシートP46に印刷不良が検出される。不良シートP46は、トレイT1の既定の排紙位置とは異なる排紙位置へシフト排紙される。この時点で、5部目の1頁目から3頁目のシートP47の印刷は開始されており、これら3つのシートP47は、正常に印刷され、トレイT2の既定の排紙位置へ排紙される。続いて、不良シートP46と同じ頁について再印刷が行われ、再印刷シートP48が、不良シートP46とは異なるシフト方向でトレイT1へシフト排紙される。続いて、5部目の残りの4頁目から6頁目のシートP49が印刷され、トレイT2の既定の排紙位置へ排紙される。
【0052】
図7に示したような排紙制御の結果として、トレイT1には、1部目、2部目及び4部目の印刷済みシートの束が、不良シートを含むものの不足頁の無い状態で出力される。また、トレイT2には、3部目及び5部目の印刷済みシートの束が、不足頁の無い状態で出力される。ユーザは、トレイT1の重なったシートの束から部ごとのシートを抜き出し、シフト排紙を手掛かりとして不良シートを再印刷シートに差替えることにより、2部目及び4部目の完全な束を作成できる。また、ユーザは、トレイT2の重なったシートの束を単純に分割して、3部目及び5部目の完全な束を得ることができる。こうした排紙モードの切り替えによって、高速印刷が行われる場合にも、印刷不良の検出時のシート差替えの労力の軽減と、シートの無駄の最小化とを両立することができる。
【0053】
(3)第2実施例
第2実施例において、排紙装置30は、3つの排紙先35のうちの1つを不良シート用の排紙先として扱う。第1排紙モードは、第1排紙先へシートを排紙するモードであり、第2排紙モードは、第1排紙先とは異なる不良シート用の第2排紙先へシートを排紙するモードである。即ち、不良シートはこの第2排紙先へ排紙される。また、排紙装置30は、部数M(M>1)の印刷が指定されている場合において、N番目(N<M)の部の排紙の途中で印刷不良が検出されたときに、N番目の部の、不良シートの後の残余頁の印刷済みシートを第3排紙モードで排紙する。第3排紙モードは、第1排紙先及び第2排紙先とは異なる第3排紙先へシートを排紙するモードである。
【0054】
本実施例では、印刷不良の検出に起因するこうした仕訳けの結果として、第1排紙先及び第3排紙先に、一時的に不完全な部のシートの束がそれぞれ発生する。そこで、排紙装置30は、個々の部において欠落している頁を補完するように、その後印刷される印刷済みシートを第1排紙先及び第3排紙先へ仕分けする。
【0055】
具体的には、排紙部132は、第1排紙先において部として不足する頁(典型的には、不良検出頁及び上記残余頁)のさらなる印刷済みシートを、第1排紙先へ排紙する。第1排紙先への当該さらなる印刷済みシートの排紙は、不良検出頁の再印刷シート及び上記残余頁と同じ頁が印刷された印刷済みシートを、頁の順に排紙することを含んでもよい。例えば、1部の頁数をpmaxとし、p頁目で印刷不良が検出されたものとする。第1排紙先において部として不足する頁はp頁目からpmax頁目であり、これら頁(p,p+1,…,pmax)の印刷済みシートが第1排紙先へ補完的に排紙され得る。それにより、第1排紙先において、N部目の印刷済みシートの完全な束を、頁の順に正確に並んだ形で排紙することができる。
【0056】
また、排紙部132は、第3排紙先において上記残余頁以外の頁(典型的には、不良検出頁及びその前の先行頁)のさらなる印刷済みシートを第3排紙先へ排紙する。第3排紙先への当該さらなる印刷済みシートの排紙は、上記先行頁及び不良検出頁と同じ頁が印刷された印刷済みシートを頁の順に排紙することを含んでもよい。第3排紙先において一時的に不足する頁は1頁目からp頁目であり、これら頁(1,2,…,p)の印刷済みシートが第3排紙先へ補完的に排紙され得る。それにより、第3排紙先に印刷済みシートのさらなる完全な束が排紙され、これをN+1部目の束とすることができる。
【0057】
図8は、第2実施例に係るシートの排紙順序及び排紙モードの一例を示している。図8の例においても、全6頁の印刷対象が5部印刷されるものとする。まず、2部目の2頁目のシートP50まで正常に印刷が行われ、それら印刷済みシートがトレイT1へ排紙される。続いて、2部目の3頁目のシートP51に印刷不良が検出される。不良シートP51は、不良シート用のトレイT3へ排紙される。その後、残余頁である2部目の4頁目から6頁目までのシートP52が正常に印刷され、それら印刷済みシートP52がトレイT2へ排紙される。続いて、不良シートP51と同じ頁について再印刷が行われ、再印刷シートP53がトレイT1へ排紙される。また、上記残余頁と同じ頁についてさらなる印刷が行われ、印刷済みシートP54がトレイT1へ排紙される。さらに、上記先行頁及び不良検出頁と同じ頁についてさらなる印刷が行われ、印刷済みシートP55がトレイT2へ排紙される。
【0058】
この時点で、トレイT1には、1頁目から6頁目の印刷済みシート(再印刷シートP53を含む)の完全な束が正確な頁順で排紙されており、ユーザはこれを2部目の束B2として扱うことができる。また、トレイT2には、4頁目から6頁目の印刷済みシート及び1頁目から3頁目の印刷済みシートの完全な束が排紙されており、ユーザはこれを3部目の束B3として扱うことができる。ユーザは、束B3の4頁目から6頁目と1頁目から3頁目とを入替えて正確な頁順を復元することを要するが、そうした作業の負荷は、不良シートを探し出す作業と比較すると小さいであろう。この入替え作業の必要性をユーザに通知するために、補完的に排紙される不足頁の印刷済みシートP55の排紙位置が、シートP52の排紙位置に対してシフトされてもよい。
【0059】
図8の例では、その後、4部目の2頁目のシートにも印刷不良が検出される。しかし、上で説明したものと同様の手法での仕分け及び不足頁の補完によって、トレイT1に4部目の完全な束B4を、トレイT2に5部目の完全な束B5を排紙することが可能である。ここでも、ユーザは、束B5の3頁目から6頁目と1頁目から2頁目とを入替えて正確な頁順を復元することのみを要する。
【0060】
図9は、第2実施例に係る排紙制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0061】
まず、S201で、検品装置20の第2読取部122は、複合機10の印刷部107により印刷された1つの印刷済みシートを読取ることにより、読取画像を取得する。
【0062】
次いで、S203で、検品装置20の検出部124は、S201で取得された読取画像を用いて、印刷済みシートに印刷不良が存在するかを判定する。その後の処理は、S203で印刷不良が検出されたか否かに依存して分岐する(S205)。印刷不良が検出されなかった場合には、処理はS207へ進む。一方、印刷不良が検出された場合には、処理はS213へ進む。
【0063】
さらに、印刷不良が検出されなかった場合の処理は、システムの動作状態に依存して分岐する(S207、S209)。システムが通常動作中である場合、処理はS211へ進む。ここでの通常動作とは、印刷不良の検出に起因する別トレイへの退避、及び退避の結果として一時的に発生する不完全状態の解消(補完)と異なる、通常時の動作を意味する。一方、システムが退避動作中である場合、処理はS217へ進む。また、システムが不完全状態の解消中である場合、処理はS219へ進む。
【0064】
通常動作において、S211で、排紙部132は、第1排紙モードで動作し、印刷済みシートをトレイT1へ排紙する。
【0065】
また、印刷不良の検出に応じて、S213で、排紙部132は、第2排紙モードで動作し、不良シートをトレイT3へ排紙する。また、S215で、検出部124は、印刷部107へ不良シートと同じ頁の再印刷を要求する。印刷部107は、この再印刷要求に応じて、同じ部の最終頁の印刷の後に、不完全状態の解消のための図8を用いて説明した順序での印刷を実行する。
【0066】
退避動作において、S217で、排紙部132は、第3排紙モードで動作し、不良シートの後の残余頁の印刷済みシートをトレイT3へ排紙する。
【0067】
不完全状態の解消中である場合、S219で、排紙部132は、不良検出頁の頁番号及び処理中の印刷済みシートの頁番号に基づいて、印刷済みシートの排紙先(トレイT1又はトレイT2)を判定する。そして、S221で、排紙部132は、判定した排紙先へ印刷済みシートを排紙する。
【0068】
上述した処理は、全ての部の全ての頁の印刷済みシートの排紙が終了するまで繰り返される(S223)。全ての部の全ての頁の印刷済みシート(再印刷シートを含む)の排紙が終了すると、図9の排紙制御処理は完了する。
【0069】
なお、第1実施例に関連して図7を用いて説明した修正例が、この第2実施例に適用されてもよい。その場合、印刷不良の検出時に既に印刷開始されていた次の部の印刷済みシートは別の排紙先(例えば、図1には示していないトレイT4)へ排紙され、次いで、再印刷シートの排紙を含む不完全状態の解消が行われ得る。その後、上記別の排紙先への残りの印刷済みシートの排紙が続行され得る。
【0070】
<<4.まとめ>>
上述した実施形態では、印刷済みシートの読取画像を用いて印刷不良を検出し、その検出結果に依存するモードで各印刷済みシートを排紙するシステムにおいて、印刷不良が検出されるまで1つ以上の印刷済みシートが第1排紙モードで第1排紙先へ排紙される。そして、印刷不良の検出に応じて、不良シートが第2排紙モードで排紙され、不良シートと同じ頁が印刷された再印刷シートが第1排紙先へ排紙される。かかる構成によれば、ユーザは、不良シートを排紙モードの相違に基づいて容易に見つけ出すことができる。また、ユーザは、再印刷シートを含む同じ部の印刷済みシートの完全な束を第1排紙先から難なく得ることができる。また、不良シート以外の印刷済みシートは除去されないため、シートの無駄が最小化される。
【0071】
また、ある実施例では、第1排紙モードは第1排紙先の第1排紙位置へシートを排紙するモードであり、第2排紙モードは第1排紙先の第1排紙位置からシフトされた第2排紙位置へシートを排紙するモードである。かかる構成によれば、ユーザは、同じ排紙先においてシフト排紙を手掛かりとして不良シートを容易に見つけ出してこれを除去できると共に、再印刷シートをどこに挿入すべきかをも端的に知ることができる。
【0072】
一例として、再印刷シートは第3排紙モードで排紙されてよく、第3排紙モードは、第1排紙位置から第2排紙位置とは異なる方向に又は異なるシフト量でシフトされた第3排紙位置へシートを排紙するモードであり得る。かかる構成によれば、ユーザは、同じ排紙先においてシフト排紙を手掛かりとして再印刷シートを不良シートと区別して容易に見つけ出すことができる。
【0073】
他の例として、部数M(M>1)の印刷の最中のN番目(N<M)の部の排紙の途中で印刷不良が検出された場合に、再印刷シートは、N番目の部の最終頁の印刷済みシートの排紙の直後に排紙され得る。かかる構成によれば、ユーザは、印刷不良が発生したとしても、重なったシートの束から部ごとのシートを単純に抜き出して、個々の部に閉じた作業でそれぞれ完全な部を作成することができる。また、個々の部を構成するシート同士で印刷タイミングが大きく離れないため、同じ部内で印刷の色味又は濃淡が極端に変化せず、印刷の品質についてユーザに不自然な印象を与えることが防止される。
【0074】
また、ある修正例では、印刷不良の検出時に次の部の印刷が既に開始されている場合に、当該次の部の1つ以上の印刷済みシートが第2排紙先へ排紙された後、不良シートと同じ頁が印刷された再印刷シートが第1排紙先へ排紙される。かかる構成によれば、高速印刷における印刷不良の検出時にも、個々の排紙先で部の順序が互い違いにならないため、シート差替えの労力が大幅に軽減され、かつシートの無駄も防止される。
【0075】
また、ある実施例では、第1排紙モードは第1排紙先へシートを排紙するモードであり、第2排紙モードは第1排紙先とは異なる不良シート用の第2排紙先へシートを排紙するモードである。かかる構成によれば、印刷済みシートの束から不良シートを除去するユーザの手間が解消される。また、部数M(M>1)の印刷の途中で印刷不良が検出された場合に、不良シートの後の残余頁の印刷済みシートが第3排紙先へ退避された後、第1排紙先及び第3排紙先の不足分のシートがさらに印刷され、それぞれ第1排紙先及び第3排紙先へ補完され得る。かかる構成によれば、ユーザは、第1排紙先及び第3排紙先から2つの部の印刷済みシートの完全な束を得ることができる。とりわけ、個々の排紙先で補完される印刷済みシートが頁の順に排紙される場合には、ユーザは、第3排紙先から得られるシートの束についてシートの順序を1回入替えるだけでよい。
【0076】
<<5.変形例>>
本発明は上記実施形態に限定されず、様々な変形が可能である。例えば上記実施形態では、複合機10へ接続される後処理システム40に、又は複合機10と後処理システム40とを含む画像形成システムである排紙システム1に本開示に係る技術が適用される例を主に説明した。しかしながら、単独の複合機10(又はそれに類する画像形成装置)が、上述した検品装置20及び排紙装置30と同等の機能を内蔵していてもよい。そうした装置もまた、一種の排紙システム又は画像形成システムであると解釈され得る。
【0077】
また、上記実施形態では、所望の印刷済みシートの束を得るためにユーザにいくつかの作業が残される例を説明したが、それら作業のうちの1つ以上が、システムにより自動化されてもよい。例えば、第2実施例において、トレイT2へ排紙される印刷済みシートの順序の入替えを自動的に行う機構が導入されれば、同実施例におけるユーザの作業は、各トレイからシートの束を取り出すことのみとなる。
【0078】
また、いくつかのフローチャートにおいて、主に排紙装置30の視点から、印刷済みシートの各々をどういった排紙モードで排紙するかに関わる排紙制御処理の流れを説明した。しかしながら、それら排紙制御処理は、説明した排紙ステップを任意の装置が排紙装置30に行わせる形で実装されてもよい。例えば、複合機10のCPU101又は検品装置20の何らかのプロセッサがそうした排紙制御処理を行ってもよい。また、システムのプロセッサにそうした排紙制御処理を行わせるためのコンピュータプログラム(又は当該プログラムを記憶した非一時的なコンピュータ読取可能な記憶媒体)が提供されてもよい。
【0079】
<<6.その他の実施形態>>
本発明は、上述の実施形態の1つ以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読み出して実行する処理の形式でも実現可能である。また、1つ以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0080】
本発明は上述した実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。したがって、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0081】
1:排紙システム、10:複合機(画像形成装置)、20:検品装置、30:排紙装置、35:排紙先、40:後処理システム、107:印刷部、122:(第2)読取部、124:検出部、132:排紙部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9