(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】セラミック電子部品およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20240828BHJP
【FI】
H01G4/30 201M
H01G4/30 201K
H01G4/30 201L
H01G4/30 201N
H01G4/30 311
H01G4/30 512
H01G4/30 515
H01G4/30 516
H01G4/30 517
(21)【出願番号】P 2019190493
(22)【出願日】2019-10-17
【審査請求日】2022-10-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004370
【氏名又は名称】弁理士法人片山特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森田 浩一郎
【審査官】田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-195144(JP,A)
【文献】特開2019-176176(JP,A)
【文献】特開2016-169130(JP,A)
【文献】特開2012-206890(JP,A)
【文献】特開平06-104138(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックを主成分とする誘電体層と、内部電極層と、が交互に積層され、略直方体形状を有し、積層された複数の前記内部電極層が交互に対向する2端面に露出するように形成された積層構造を備え、
前記積層構造の積層方向の上面および下面の少なくとも一方に設けられたカバー層と、前記積層構造において積層された複数の前記内部電極層が前記2端面以外の2側面に延びた端部を覆うように設けられたサイドマージンとで構成されるセラミック保護部の主成分セラミックは、一般式ABO
3で表されるペロブスカイト構造を有するセラミック材料であり、Aサイトに少なくともBaを含み、Bサイトに少なくともTiおよびZrを含み、ZrとTiとのモル比であるZr/Ti比が0.010以上0.25以下であり、AサイトとBサイトのモル比であるA/B比が0.960以下であることを特徴とするセラミック電子部品。
【請求項2】
前記セラミック保護部の表面におけるビッカース硬さHVは、600以上であることを特徴とする請求項1記載のセラミック電子部品。
【請求項3】
前記セラミック保護部の表面における平均結晶粒子径は、2.0μm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のセラミック電子部品。
【請求項4】
前記内部電極層は、NiまたはCuを主成分とすることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のセラミック電子部品。
【請求項5】
前記2端面のうち異なる端面に露出する内部電極層同士が対向する容量領域の前記誘電体層における主成分セラミックは、前記セラミック保護部の主成分セラミックと同組成を有することを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のセラミック電子部品。
【請求項6】
前記Zr/Ti比が0.020以上0.040以下であることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のセラミック電子部品。
【請求項7】
前記Zr/Ti比が0.080以上0.16以下であることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のセラミック電子部品。
【請求項8】
前記Zr/Ti比は、0.020以上0.040以下であるか、0.080以上0.16以下であり、
前記Aサイトは、カルシウムを含まないことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のセラミック電子部品。
【請求項9】
前記A/B比は、0.922以上0.960以下であることを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載のセラミック電子部品。
【請求項10】
セラミックを主成分とする粒子を有するシートと金属導電ペーストのパターンとが、前記金属導電ペーストが対向する2端面に露出するように交互に積層された積層部分と、前記積層部分の積層方向の上面および下面に配置されたカバーシートと、前記積層部分の側面に配置されたサイドマージン領域と、を含むセラミック積層体を準備する工程と、
前記セラミック積層体を焼成する工程と、を含み、
焼成前の前記カバーシートおよび前記サイドマージン領域における主成分セラミックは、一般式ABO
3で表されるペロブスカイト構造を有するセラミック材料であり、Aサイトに少なくともBaを含み、Bサイトに少なくともTiおよびZrを含み、ZrとTiとのモル比であるZr/Ti比が0.010以上0.25以下であり、AサイトとBサイトのモル比であるA/B比が0.960以下であることを特徴とするセラミック電子部品の製造方法。
【請求項11】
前記焼成する工程における昇温速度の最大値は、6000℃/h以上であることを特徴とする
請求項10記載のセラミック電子部品の製造方法。
【請求項12】
焼成後における前記カバーシートおよび前記サイドマージン領域の表面における平均結晶粒子径が2.0μm以下となるように、前記焼成する工程における条件を調整することを特徴とする
請求項10または11に記載のセラミック電子部品の製造方法。
【請求項13】
前記カバーシートおよび前記サイドマージン領域における主成分セラミックの平均粒径に対して、焼成後における前記カバーシートおよび前記サイドマージン領域の表面における平均結晶粒子径が10倍以下となるように、前記焼成する工程における条件を調整することを特徴とする
請求項10~12のいずれか一項に記載のセラミック電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック電子部品およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内部電極層と誘電体層とが交互に積層された積層セラミックコンデンサなどのセラミック電子部品が知られている。このようなセラミック電子部品を焼成によって作製する際に、昇温速度を3000℃/hまで増加させることで、内部電極層の連続性が向上したことが報告されている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】J. Am. Ceram. Soc., 90 [12] 3811-3817 (2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、昇温速度をさらに増加させても内部電極層の連続性が向上することを確認した。しかしながら、昇温速度が高いと、内部電極層を保護するためのセラミック保護部の焼結が追従せず、焼結不足が生じることがある。セラミック保護部に焼結不足が生じると、セラミック電子部品の表面の硬さが不足し、欠けが生じる。欠けに起因して生じたクラックがセラミック保護部を超えて内部電極層に達すれば、電気的ショートを引き起こすことがある。しかしながら、セラミック保護部の焼結不足を解消するために昇温速度を下げたり焼成温度を上げたりすれば、内部電極層に過焼結が生じるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、焼成時の昇温速度が高くてもセラミック保護部に十分な機械的硬度を確保することができるセラミック電子部品およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るセラミック電子部品は、セラミックを主成分とする誘電体層と、内部電極層と、が交互に積層され、略直方体形状を有し、積層された複数の前記内部電極層が交互に対向する2端面に露出するように形成された積層構造を備え、前記積層構造の積層方向の上面および下面の少なくとも一方に設けられたカバー層と、前記積層構造において積層された複数の前記内部電極層が前記2端面以外の2側面に延びた端部を覆うように設けられたサイドマージンとで構成されるセラミック保護部の主成分セラミックは、一般式ABO3で表されるペロブスカイト構造を有するセラミック材料であり、Aサイトに少なくともBaを含み、Bサイトに少なくともTiおよびZrを含み、ZrとTiとのモル比であるZr/Ti比が0.010以上0.25以下であり、AサイトとBサイトのモル比であるA/B比が0.990以下であることを特徴とする。
【0007】
上記セラミック電子部品において、前記セラミック保護部の表面におけるビッカース硬さHVは、600以上としてもよい。
【0008】
上記セラミック電子部品において、前記セラミック保護部の表面における平均結晶粒子径は、2.0μm以下としてもよい。
【0009】
上記セラミック電子部品において、前記内部電極層は、NiまたはCuを主成分としてもよい。
【0010】
上記セラミック電子部品において、前記2端面のうち異なる端面に露出する内部電極層同士が対向する容量領域の前記誘電体層における主成分セラミックは、前記セラミック保護部の主成分セラミックと同組成を有していてもよい。
【0011】
本発明に係るセラミック電子部品の製造方法は、セラミックを主成分とする粒子を有するシートと金属導電ペーストのパターンとが、前記金属導電ペーストが対向する2端面に露出するように交互に積層された積層部分と、前記積層部分の積層方向の上面および下面に配置されたカバーシートと、前記積層部分の側面に配置されたサイドマージン領域と、を含むセラミック積層体を準備する工程と、前記セラミック積層体を焼成する工程と、を含み、焼成前の前記カバーシートおよび前記サイドマージン領域における主成分セラミックは、一般式ABO3で表されるペロブスカイト構造を有するセラミック材料であり、Aサイトに少なくともBaを含み、Bサイトに少なくともTiおよびZrを含み、ZrとTiとのモル比であるZr/Ti比が0.010以上0.25以下であり、AサイトとBサイトのモル比であるA/B比が0.990以下であることを特徴とする。
【0012】
上記セラミック電子部品の製造方法において、前記焼成する工程における昇温速度の最大値は、6000℃/h以上としてもよい。
【0013】
上記セラミック電子部品の製造方法において、焼成後における前記カバーシートおよび前記サイドマージン領域の表面における平均結晶粒子径が2.0μm以下となるように、前記焼成する工程における条件を調整してもよい。
【0014】
上記セラミック電子部品の製造方法において、前記カバーシートおよび前記サイドマージン領域における主成分セラミックの平均粒径に対して、焼成後における前記カバーシートおよび前記サイドマージン領域の表面における平均結晶粒子径が10倍以下となるように、前記焼成する工程における条件を調整してもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、焼成時の昇温速度が大きくてもセラミック保護部に十分な機械的硬度を確保することができるセラミック電子部品およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】積層セラミックコンデンサの部分断面斜視図である。
【
図4】(a)はサイドマージンの断面の拡大図であり、(b)はエンドマージンの断面の拡大図である。
【
図5】セラミック保護部の表面における結晶粒子径とビッカース硬さHVとの関係を示す図である。
【
図6】積層セラミックコンデンサの製造方法のフローを例示する図である。
【
図7】(a)および(b)は積層工程を例示する図である。
【
図10】(a)は実施例1~4および比較例1,2についてセラミック保護部の表面のビッカース硬さHVを示す図であり、(b)は焼成温度が1190℃の場合のセラミック保護部の表面のビッカース硬さHVを示す図である。
【
図11】実施例3,5~7および比較例3についてセラミック保護部の表面のビッカース硬さHVを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ、実施形態について説明する。
【0018】
(実施形態)
まず、積層セラミックコンデンサの概要について説明する。
図1は、実施形態に係る積層セラミックコンデンサ100の部分断面斜視図である。
図2は、
図1のA-A線断面図である。
図3は、
図1のB-B線断面図である。
図1~
図3で例示するように、積層セラミックコンデンサ100は、直方体形状を有する積層チップ10と、積層チップ10のいずれかの対向する2端面に設けられた外部電極20a,20bとを備える。なお、積層チップ10の当該2端面以外の4面のうち、積層方向の上面および下面以外の2面を側面と称する。外部電極20a,20bは、積層チップ10の積層方向の上面、下面および2側面に延在している。ただし、外部電極20a,20bは、互いに離間している。
【0019】
積層チップ10は、誘電体として機能するセラミック材料を含む誘電体層11と、卑金属材料を含む内部電極層12とが、交互に積層された構成を有する。各内部電極層12の端縁は、積層チップ10の外部電極20aが設けられた端面と、外部電極20bが設けられた端面とに、交互に露出している。それにより、各内部電極層12は、外部電極20aと外部電極20bとに、交互に導通している。その結果、積層セラミックコンデンサ100は、複数の誘電体層11が内部電極層12を介して積層された構成を有する。また、誘電体層11と内部電極層12との積層体において、積層方向の最外層には内部電極層12が配置され、当該積層体の上面および下面は、カバー層13によって覆われている。カバー層13は、セラミック材料を主成分とする。例えば、カバー層13の材料は、誘電体層11とセラミック材料の主成分が同じであってもよい。
【0020】
積層セラミックコンデンサ100のサイズは、例えば、長さ0.25mm、幅0.125mm、高さ0.125mmであり、または長さ0.4mm、幅0.2mm、高さ0.2mm、または長さ0.6mm、幅0.3mm、高さ0.3mmであり、または長さ1.0mm、幅0.5mm、高さ0.5mmであり、または長さ3.2mm、幅1.6mm、高さ1.6mmであり、または長さ4.5mm、幅3.2mm、高さ2.5mmであるが、これらのサイズに限定されるものではない。
【0021】
内部電極層12は、Ni(ニッケル),Cu(銅),Sn(スズ)等の卑金属を主成分とする。内部電極層12として、Pt(白金),Pd(パラジウム),Ag(銀),Au(金)などの貴金属やこれらを含む合金を用いてもよい。誘電体層11は、例えば、一般式ABO3で表されるペロブスカイト構造を有するセラミック材料を主成分とする。なお、当該ペロブスカイト構造は、化学量論組成から外れたABO3-αを含む。本実施形態では、当該セラミック材料として、Aサイトに少なくともBa(バリウム)を含み、Bサイトに少なくともTi(チタン)を含むものを用いる。
【0022】
図2で例示するように、外部電極20aに接続された内部電極層12と外部電極20bに接続された内部電極層12とが対向する領域は、積層セラミックコンデンサ100において電気容量を生じる領域である。そこで、当該領域を、容量領域14と称する。すなわち、容量領域14は、異なる外部電極に接続された2つの隣接する内部電極層12が対向する領域である。
【0023】
外部電極20aに接続された内部電極層12同士が、外部電極20bに接続された内部電極層12を介さずに対向する領域を、エンドマージン15と称する。また、外部電極20bに接続された内部電極層12同士が、外部電極20aに接続された内部電極層12を介さずに対向する領域も、エンドマージン15である。すなわち、エンドマージン15は、同じ外部電極に接続された内部電極層12が異なる外部電極に接続された内部電極層12を介さずに対向する領域である。エンドマージン15は、容量を生じない領域である。
【0024】
図3で例示するように、積層チップ10において、積層チップ10の2側面から内部電極層12に至るまでの領域をサイドマージン16と称する。すなわち、サイドマージン16は、上記積層構造において積層された複数の内部電極層12が2側面側に延びた端部を覆うように設けられた領域である。
【0025】
カバー層13およびサイドマージン16は、容量領域14の外周を覆うことで保護している。そこで、以下の説明では、カバー層13およびサイドマージン16を、総称してセラミック保護部50と称する。
【0026】
図4(a)は、サイドマージン16の断面の拡大図である。サイドマージン16は、誘電体層11と逆パターン層17とが、容量領域14における誘電体層11と内部電極層12との積層方向において交互に積層された構造を有する。容量領域14の各誘電体層11とサイドマージン16の各誘電体層11とは、互いに連続する層である。この構成によれば、容量領域14とサイドマージン16との段差が抑制される。
【0027】
図4(b)は、エンドマージン15の断面の拡大図である。サイドマージン16との比較において、エンドマージン15では、積層される複数の内部電極層12のうち、1つおきにエンドマージン15の端面まで内部電極層12が延在する。また、内部電極層12がエンドマージン15の端面まで延在する層では、逆パターン層17が積層されていない。容量領域14の各誘電体層11とエンドマージン15の各誘電体層11とは、互いに連続する層である。この構成によれば、容量領域14とエンドマージン15との段差が抑制される。
【0028】
内部電極層12は、金属粉末を含む金属導電ペーストを焼成することによって得られる。誘電体層11およびカバー層13は、セラミック粉末を含む誘電体グリーンシートを焼成することによって得られる。しかしながら、材料の相違に起因して、焼結の態様が異なる。例えば、焼成工程における昇温速度が小さいと、内部電極層12の連続性が低下する。そこで、焼成工程における昇温速度を3000℃/h以上まで増加させることで、内部電極層12の連続性が向上することが知られている。
【0029】
本発明者は、昇温速度をさらに高くしても内部電極層12の連続性が向上することを確認した。しかしながら、昇温速度が高いと(例えば、6000℃/h以上)、セラミック保護部50の焼結が追従せず、焼結不足が生じることがある。セラミック保護部50に焼結不足が生じると、積層セラミックコンデンサ100の表面の硬さが不足し、欠けが生じる。欠けに起因して生じたクラックがセラミック保護部50を超えて内部電極層12に達すれば、電気的ショートを引き起こすことがある。しかしながら、セラミック保護部50の焼結不足を解消するために昇温速度を下げたり焼成温度を上げたりすれば、内部電極層12に過焼結が生じるおそれがある。
【0030】
そこで、セラミック保護部50の焼結を促進するために、Mn(マンガン)、V(バナジウム)、Si(シリコン)、B(ホウ素)などの酸化物やこれらを含むガラス組成物などを、焼結助剤としてセラミック保護部50に添加することが考えられる。このような焼結助剤は、焼結過程で液相となって主成分のセラミック表面の溶解・再析出機構を通じた緻密化に貢献する。しかしながら、6000℃/h以上といった高速昇温では、溶解・再析出に必要な時間が十分に確保されないために緻密化改善効果が限定的となる。
【0031】
そこで、焼結促進作用を有するZr(ジルコニウム)を、セラミック保護部50に添加することが考えられる。例えば、Baと同量程度のZrを添加して、焼結性を調整することが考えられる。これは、ペロブスカイト焼結体では、AサイトとBサイトのモル比であるA/B比が重要であって、A/B比を大きく変えないことが焼結性に重要と考えられるためである。例えば、BaZrO3、CaZrO3、SrZrO3などの形態でZrを添加することが考えられる。
【0032】
しかしながら、本発明者の鋭意研究の結果、6000℃/h以上といった高速昇温では、Zrを添加する手法では、かえって焼結を遅らせてしまうことが突き止められた。これは、A/B比を1.000以上にすることで、ペロブスカイトの粒成長が抑制され、粒界に高濃度に存在するAサイト成分元素がペロブスカイト粒子間の物質拡散を妨げるためだと考えられる。
【0033】
そこで、本発明者は、さらなる鋭意研究の結果、あえてA/B比をBリッチに大きくずらしたうえで、Zrリッチな組成とすることで、セラミック保護部50が高速昇温にも追従することを見出した。
【0034】
まず、Zrの添加量が少なすぎると、高速昇温に追従できずにセラミック保護部50の焼結が十分に進まないおそれがある。そこで、本実施形態においては、Zr添加量に下限を設ける。具体的には、セラミック保護部50の主成分セラミックにおいてZrとTiとのモル比であるZr/Ti比を0.010以上とし、0.015以上とすることが好ましく、0.020以上とすることがさらに好ましい。一方、Zrの添加量が多すぎると、異常粒成長が生じてセラミック保護部50の表面に十分な硬さが得られないおそれがある。そこで、本実施形態においては、Zr添加量に上限を設ける。具体的には、Zr/Ti比を0.25以下とし、0.20以下とすることが好ましく、0.16以下とすることがより好ましい。
【0035】
次に、Zrを十分に添加してあっても、A/B比が大きいと、セラミック保護部50の焼結が十分に進まないおそれがある。そこで、本実施形態においては、A/B比に上限を設ける。具体的には、セラミック保護部50の主成分セラミックにおいて、A/B比を0.990以下とする。A/B比における「A」は、Aサイトに置換固溶し得る元素の総量のモル量である。例えば、セラミック保護部50に一般式ABO3で表されるペロブスカイト構造を有し、Aサイトに少なくともBaを含み、Bサイトに少なくともTiおよびZrを含むセラミック材料を用いる場合には、Baと、Ca、Sr、希土類元素などのAサイトに置換固溶し得る元素と、の合計モル量である。A/B比における「B」は、Bサイトに置換固溶し得る元素の総量のモル量である。例えば、「B」は、TiとZrの合計のモル量である。A/B比は、0.985以下であることが好ましく、0.982以下であることがより好ましい。一方、A/B比が小さすぎると、局所的な異常粒成長による外観不良や緻密化阻害,それによる大型ポアの発生といった不具合が生じるおそれがある。そこで、A/B比に下限を設けることが好ましい。例えば、A/B比は、0.900以上であることが好ましく、0.920以上であることがより好ましく、0.940以上であることがさらに好ましい。
【0036】
図5は、平均粒径が0.5μm程度のセラミック粉末を用いてセラミック保護部50を焼成した場合の、焼成後のセラミック保護部50の表面における結晶粒子径とビッカース硬さHVとの関係を示す図である。
図5に示すように、焼成によって緻密化するにしたがって、ビッカース硬さHVが大きくなることがわかる。しかしながら、さらに焼成を継続して粒成長が生じて結晶粒子径が大きくなるにしたがって、ビッカース硬さHVが低下していくことがわかる。セラミック保護部50は、表面のビッカース硬さHVが600以上であることが好ましい。そこで、セラミック保護部50の表面において、平均結晶粒子径に上限を設けることが好ましい。
図5において、平均結晶粒子径が3μm程度でもHV≧600を満たすものはあるが、結晶粒子径の分布や異常粒成長粒子の混入などを考慮すると、セラミック保護部50の表面において、平均結晶粒子径は2.0μm以下であることが好ましく、1.5μm以下であることがより好ましく、1.2μm以下であることがさらに好ましい。平均結晶粒子径は、一視野に100粒以上の粒子が入るように調整された倍率でSEM(Scanning Electron Microscope:走査型電子顕微鏡)像を取得し,内部電極面と水平方向で各粒子の最大径を,その一視野分すべて測定することで,その平均値として求めることができる。
【0037】
なお、積層チップ10において、セラミック保護部50以外の領域(容量領域14およびエンドマージン15の少なくともいずれか一方)における主成分セラミックも、セラミック保護部50の主成分セラミックと同組成を有していることが好ましい。この場合、大型形状品を急速昇温焼成した場合であっても、焼結内外差に起因する内部歪みが抑制される。このような製品は、車載等の機械的応力耐性が要求される用途に適する。
【0038】
続いて、積層セラミックコンデンサ100の製造方法について説明する。
図6は、積層セラミックコンデンサ100の製造方法のフローを例示する図である。
【0039】
(原料粉末作製工程)
まず、誘電体層11を形成するための誘電体材料を用意する。誘電体材料は、誘電体層11の主成分セラミックを含む。誘電体層11に含まれるAサイト元素およびBサイト元素は、通常はABO3の粒子の焼結体の形で誘電体層11に含まれる。例えば、BaTiO3は、ペロブスカイト構造を有する正方晶化合物であって、高い誘電率を示す。このBaTiO3は、一般的に、二酸化チタンなどのチタン原料と炭酸バリウムなどのバリウム原料とを反応させてチタン酸バリウムを合成することで得ることができる。誘電体層11の主成分セラミックの合成方法としては、従来種々の方法が知られており、例えば固相法、ゾル-ゲル法、水熱法等が知られている。本実施形態においては、これらのいずれも採用することができる。
【0040】
得られたセラミック粉末に、目的に応じて所定の添加化合物を添加する。添加化合物としては、Zr、Ca、Sr、Mg(マグネシウム)、Mn(マンガン)、V(バナジウム)、Cr(クロム)、希土類元素(Y(イットリウム)、Sm(サマリウム)、Eu(ユウロピウム)、Gd(ガドリニウム)、Tb(テルビウム)、Dy(ジスプロシウム)、Ho(ホロミウム)、Er(エルビウム)、Tm(ツリウム)およびYb(イッテルビウム))の酸化物、並びに、Co(コバルト)、Ni、Li(リチウム)、B、Na(ナトリウム)、K(カリウム)およびSiの酸化物もしくはガラスが挙げられる。
【0041】
次に、エンドマージン15およびサイドマージン16を形成するための逆パターン材料を用意する。逆パターン材料は、エンドマージン15およびサイドマージン16の主成分セラミックを含む。主成分セラミックとして、例えば、BaTiO3粉を作製する。BaTiO3粉は、誘電体材料と同様の手順により作製することができる。得られたBaTiO3粉末に、目的に応じて所定の添加化合物を添加する。添加化合物としては、Zr、Ca、Sr、Mg、Mn、V、Cr、希土類元素(Y、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、TmおよびYb)の酸化物、並びに、Co、Ni、Li、B、Na、KおよびSiの酸化物もしくはガラスが挙げられる。なお、逆パターン材料として、上述した誘電体材料を用いてもよい。
【0042】
次に、カバー層13を形成するためのカバー材料を用意する。カバー材料は、カバー層13の主成分セラミックを含む。主成分セラミックとして、例えば、BaTiO3粉を作製する。BaTiO3粉は、誘電体材料と同様の手順により作製することができる。得られたBaTiO3粉末に、目的に応じて所定の添加化合物を添加する。添加化合物としては、Zr、Ca、Sr、Mg、Mn、V、Cr、希土類元素(Y、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、TmおよびYb)の酸化物、並びに、Co、Ni、Li、B、Na、KおよびSiの酸化物もしくはガラスが挙げられる。なお、カバー材料として、上述した誘電体材料を用いてもよい。
【0043】
(積層工程)
次に、原料粉末作製工程で得られた誘電体材料に、ポリビニルブチラール(PVB)樹脂等のバインダと、エタノール、トルエン等の有機溶剤と、可塑剤とを加えて湿式混合する。得られたスラリーを使用して、例えばダイコータ法やドクターブレード法により、基材上に例えば厚み0.8μm以下の帯状の誘電体グリーンシート51を塗工して乾燥させる。
【0044】
次に、
図7(a)で例示するように、誘電体グリーンシート51の表面に、有機バインダを含む内部電極形成用の金属導電ペーストをスクリーン印刷、グラビア印刷等により印刷することで、内部電極層用の第1パターン52を配置する。金属導電ペーストには、共材としてセラミック粒子を添加する。セラミック粒子の主成分は、特に限定するものではないが、誘電体層11の主成分セラミックと同じであることが好ましい。
【0045】
次に、原料粉末作製工程で得られた逆パターン材料に、エチルセルロース系等のバインダと、ターピネオール系等の有機溶剤とを加え、ロールミルにて混練して逆パターン層用の逆パターンペーストを得る。
図7(a)で例示するように、誘電体グリーンシート51上において、第1パターン52が印刷されていない周辺領域に逆パターンペーストを印刷することで第2パターン53を配置し、第1パターン52との段差を埋める。
【0046】
その後、
図7(b)で例示するように、内部電極層12と誘電体層11とが互い違いになるように、かつ内部電極層12が誘電体層11の長さ方向の両端面に端縁が交互に露出して極性の異なる一対の外部電極20a,20bに交互に引き出されるように、誘電体グリーンシート51、第1パターン52および第2パターン53を積層していく。例えば、誘電体グリーンシート51の積層数を100~500層とする。
【0047】
次に、原料粉末作製工程で得られたカバー材料に、ポリビニルブチラール(PVB)樹脂等のバインダと、エタノール、トルエン等の有機溶剤と、可塑剤とを加えて湿式混合する。得られたスラリーを使用して、例えばダイコータ法やドクターブレード法により、基材上に例えば厚み10μm以下の帯状のカバーシート54を塗工して乾燥させる。
図8で例示するように、積層された誘電体グリーンシート51の上下にカバーシート54を所定数(例えば2~10層)だけ積層して熱圧着させ、所定チップ寸法(例えば1.0mm×0.5mm)にカットし、その後に外部電極20a,20bとなる金属導電ペーストを、カットした積層体の両側面にディップ法等で塗布して乾燥させる。これにより、セラミック積層体が得られる。なお、所定数のカバーシート54を積層して圧着してから、積層された誘電体グリーンシート51の上下に貼り付けてもよい。
【0048】
図7(a)~
図8の手法では、誘電体グリーンシート51のうち第1パターン52に対応する部分と、第1パターン52と、が積層された領域が、BaTiO
3粒子を主成分セラミックとするシートと金属導電ペーストのパターンとが交互に積層された積層部分に相当する。誘電体グリーンシート51のうち第1パターン52よりも外側にはみ出した部分と、第2パターン53と、が積層された領域が、積層部分の側面に配置されたサイドマージン領域に相当する。
【0049】
サイドマージン領域は、上記積層部分の側面に貼り付けまたは塗布してもよい。具体的には、
図9で例示するように、誘電体グリーンシート51と、当該誘電体グリーンシート51と同じ幅の第1パターン52とを交互に積層することで、積層部分を得る。次に、積層部分の側面に、逆パターンペーストで形成したシートを貼り付ける、または逆パターンペーストを塗布することで、サイドマージン領域を形成してもよい。
【0050】
なお、
図7(a)~
図9のいずれの手法であっても、セラミック保護部50に対応する領域において、Zr/Ti比が0.02以上0.16以下となり、A/B比が0.982以下となるように、原料粉末作製工程において添加元素の添加量を調整しておく。
【0051】
(焼成工程)
このようにして得られたセラミック積層体を、N2雰囲気で脱バインダ処理した後に外部電極20a,20bの下地となるNiペーストをディップ法で塗布し、酸素分圧10-5~10-8atmの還元雰囲気中で1100~1300℃で10分~2時間焼成する。このようにして、積層セラミックコンデンサ100が得られる。
【0052】
(再酸化処理工程)
その後、N2ガス雰囲気中で600℃~1000℃で再酸化処理を行ってもよい。
【0053】
(めっき処理工程)
その後、めっき処理により、外部電極20a,20bに、Cu,Ni,Sn等の金属コーティングを行ってもよい。
【0054】
本実施形態に係る製造方法によれば、セラミック保護部50に対応する領域において、Zr/Ti比が0.010以上であることから、セラミック保護部50の焼結を十分に進ませることができる。一方、Zr/Ti比を0.25以下とすることで、異常粒成長が抑制され、セラミック保護部50の表面に十分な硬さが得られるようになる。また、セラミック保護部50に対応する領域において、A/B比を0.990以下とすることで、A/B比が十分に小さくなり、セラミック保護部50の焼結を十分に進ませることができる。
【0055】
なお、Zr/Ti比は、0.015以上とすることが好ましく、0.020以上とすることがより好ましい。また、Zr/Ti比は、0.20以下とすることが好ましく、0.16以下とすることがより好ましい。A/B比は、0.985以下であることが好ましく、0.982以下であることがより好ましい。また、A/B比は、0.920以上であることが好ましく、0.940以上であることがより好ましい。また、焼成後のセラミック保護部50の表面における平均結晶粒子径が2.0μm以下となるように焼成温度、焼成時間などの焼成条件を調整することが好ましく、1.5μm以下となるように焼成条件を調整することがより好ましく、1.2μm以下となるように焼成条件を調整することがさらに好ましい。
【0056】
なお、
図5で説明したように、粒成長とともにビッカース硬さHVが低下していくことから、粒成長に上限を設けることが好ましい。例えば、焼成前のセラミック積層体においてセラミック保護部50に対応する領域の主成分セラミック粉末の平均粒径に対して、焼成後のセラミック保護部50の表面の平均結晶粒子径が、10倍以下となるように焼成条件を調整することが好ましく、4倍以下となるように焼成条件を調整することがより好ましく、2.5倍以下となるように焼成条件を調整することがさらに好ましい。
【0057】
内部電極層12の連続率を向上させる観点から、焼成工程における昇温速度の最大値は、3000℃/hを上回ることが好ましく、6000℃/h以上であることがより好ましく、9000℃/h以上であることがさらに好ましい。
【0058】
焼成温度(焼成工程における最高温度)は、860℃以上であることが好ましく、1000℃以上であることがより好ましく、1100℃以上であることがさらに好ましい。高温ほど緻密化が進むためである。焼成温度は、1250℃以下であることが好ましく、1200℃以下であることがより好ましく、1150℃以下であることがさらに好ましい。低温ほど内部電極層12に加わる熱エネルギーが少なくて済むために内部電極層12の途切れが抑制されるためである。
【0059】
なお、上記各実施形態においては、セラミック電子部品の一例として積層セラミックコンデンサについて説明したが、それに限られない。例えば、バリスタやサーミスタなどの、他の電子部品を用いてもよい。
【実施例】
【0060】
(実施例1)
チタン酸バリウム粉末に対して添加物を添加し、ボールミルで十分に湿式混合粉砕して誘電体材料を得た。チタン酸バリウム粉末に対して添加物を添加し、ボールミルで十分に湿式混合粉砕して逆パターン材料を得た。チタン酸バリウム粉末に対して添加物を添加し、ボールミルで十分に湿式混合粉砕してカバー材料を得た。
【0061】
誘電体材料に有機バインダとしてブチラール系、溶剤としてトルエン、エチルアルコールを加えてドクターブレード法にて誘電体グリーンシート51を作製した。得られた誘電体グリーンシート51に金属導電ペーストの内部電極パターン52を印刷した。逆パターン材料に、エチルセルロース系等のバインダと、ターピネオール系等の有機溶剤とを加え、ロールミルにて混練して逆パターンペーストを作製し、誘電体グリーンシート51において第1パターン52が印刷されていない領域に、第2パターン53として印刷した。第1パターン52および第2パターン53が印刷された誘電体グリーンシート51を250枚重ねた。
【0062】
カバー材料に有機バインダとしてブチラール系、溶剤としてトルエン、エチルアルコールを加えてドクターブレード法にてカバーシートを作製した。誘電体グリーンシートの積層体の上下に、カバーシートを積層して熱圧着した。カバーシートの厚みは、30μmとした。
【0063】
なお、セラミック保護部50に対応する領域において、Zr/Ti比を0.020とし、A/B比を0.960とした。
【0064】
その後、N2雰囲気で脱バインダ処理した。得られた積層体にNi外部電極をディップ法で形成し、還元雰囲気下(O2分圧:10-5~10-8atm)で焼成して焼結体を得た。形状寸法は、長さ1.0mm、幅0.5mm、高さ0.5mmであった。焼結体をN2雰囲気下800℃の条件で再酸化処理を行った後、めっき処理して外部電極端子の表面にCu,Ni,Snの金属コーティングを行い、積層セラミックコンデンサ100を得た。なお、焼成後において、誘電体層11の厚みは、2.5μmであった。内部電極層12の厚みは、2.0μmであった。
【0065】
(実施例2)
実施例2では、セラミック保護部50に対応する領域において、Zr/Ti比を0.040としたこと以外は、実施例1と同様の条件とした。
【0066】
(実施例3)
実施例3では、セラミック保護部50に対応する領域において、Zr/Ti比を0.080としたこと以外は、実施例1と同様の条件とした。
【0067】
(実施例4)
実施例4では、セラミック保護部50に対応する領域において、Zr/Ti比を0.16としたこと以外は、実施例1と同様の条件とした。
【0068】
(比較例1)
比較例1では、セラミック保護部50に対応する領域において、Zr/Ti比を0.0020としたこと以外は、実施例1と同様の条件とした。
【0069】
(比較例2)
比較例2では、セラミック保護部50に対応する領域において、Zr/Ti比を0.32としたこと以外は、実施例1と同様の条件とした。
【0070】
図10(a)は、実施例1~4および比較例1,2について、焼成温度を1170℃、1190℃、1210℃、1230℃、1250℃、1270℃の各温度とした場合の、セラミック保護部50の表面のビッカース硬さHVを示す図である。
図10(b)は、焼成温度が1190℃の場合の、実施例1~4および比較例1,2のセラミック保護部50の表面のビッカース硬さHVを示す図である。ビッカース硬さHVは、ビッカース試験機において荷重を100gfとし、荷重保持時間を15秒とする条件で測定された値である。
【0071】
図10(a)および
図10(b)に示すように、実施例1~4のいずれにおいても、ビッカース硬さHVは十分に高くなった。特に、内部電極層12が十分に緻密化する1180℃を上回る温度において、ビッカース硬さHVは600以上と十分に高くなった。これは、セラミック保護部50に対応する領域において、Zr/Ti比を0.010以上0.25以下とし、A/B比を0.990以下としたことで、異常粒成長を抑制しつつセラミック保護部50の焼結が十分に進んだからであると考えられる。
【0072】
これに対して、比較例1では、ビッカース硬さHvが低くなった。これは、Zr/Ti比が0.010を下回ったことで、セラミック保護部50の焼結が十分に進まなかったからであると考えられる。比較例2では、1210℃や1230℃でビッカース硬さHVが高くなったものの、1250℃、1270℃などで十分なビッカース硬さHVが得られなかった。これは、Zr/Ti比が0.25を上回って、異常粒成長が生じたからであると考えられる。
【0073】
(実施例5)
実施例5では、セラミック保護部50に対応する領域において、A/B比を0.922としたこと以外は、実施例3と同様の条件とした。
【0074】
(実施例6)
実施例6では、セラミック保護部50に対応する領域において、A/B比を0.942としたこと以外は、実施例3と同様の条件とした。
【0075】
(実施例7)
実施例7では、セラミック保護部50に対応する領域において、A/B比を0.982としたこと以外は、実施例3と同様の条件とした。
【0076】
(比較例3)
比較例3では、セラミック保護部50に対応する領域において、A/B比を1.002としたこと以外は、実施例3と同様の条件とした。
【0077】
図11は、実施例3,5~7および比較例3について、焼成温度を1190℃とした場合の、セラミック保護部50の表面のビッカース硬さHVを示す図である。ビッカース硬さHVは、ビッカース試験機において荷重を100gfとし、荷重保持時間を15秒とする条件で測定された値である。
図11に示すように、実施例3,5~7のいずれにおいても、ビッカース硬さHVは600を上回って十分に高くなった。これは、セラミック保護部50に対応する領域において、Zr/Ti比を0.010以上0.25以下とし、A/B比を0.990以下としたことで、異常粒成長を抑制しつつセラミック保護部50の焼結が十分に進んだからであると考えられる。
【0078】
これに対して、比較例3では、ビッカース硬さHvが低くなった。これは、A/B比を大きくしたことで、セラミック保護部50の焼結が十分に進まなかったからであると考えられる。
【0079】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0080】
10 積層チップ
11 誘電体層
12 内部電極層
13 カバー層
14 容量領域
15 エンドマージン
16 サイドマージン
20a,20b 外部電極
50 セラミック保護部
100 積層セラミックコンデンサ