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特許7545209無線通信素子用ギャップ保持材、及び無線通信素子
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  • 特許-無線通信素子用ギャップ保持材、及び無線通信素子 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】無線通信素子用ギャップ保持材、及び無線通信素子
(51)【国際特許分類】
   G06K 19/077 20060101AFI20240828BHJP
   H01Q 1/40 20060101ALI20240828BHJP
   C08J 9/06 20060101ALI20240828BHJP
【FI】
G06K19/077 248
H01Q1/40
G06K19/077 144
C08J9/06 CES
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019239812
(22)【出願日】2019-12-27
(65)【公開番号】P2021108076
(43)【公開日】2021-07-29
【審査請求日】2022-09-20
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(72)【発明者】
【氏名】菱沼 慶人
(72)【発明者】
【氏名】高須 健一郎
【審査官】田名網 忠雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-194596(JP,A)
【文献】特開2005-309811(JP,A)
【文献】特開2005-063350(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 19/077
H01Q 1/40
C08J 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚みが0.2~1.0mmであり、周波数1GHzに対する比誘電率が1.4以下であり、坪量が0.5~20mg/cmであり、ポリオレフィン系樹脂を50質量%以上含有する樹脂シートからなる無線通信素子用ギャップ保持材。
【請求項2】
前記樹脂シートが発泡体である、請求項1に記載の無線通信素子用ギャップ保持材。
【請求項3】
前記樹脂シートの50%圧縮永久ひずみが15%以下である、請求項1又は2に記載の無線通信素子用ギャップ保持材。
【請求項4】
前記樹脂シートを50%圧縮した状態で3時間保持し、圧縮を開放して24時間経過後の樹脂シートの厚みが0.15mm以上である、請求項1~3のいずれかに記載の無線通信素子用ギャップ保持材。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかの樹脂シートからなる無線通信素子用ギャップ保持材と、該無線通信素子用ギャップ保持材の少なくとも一方の面側にアンテナ層を有する積層体。
【請求項6】
請求項5に記載の積層体を少なくとも備える、無線通信素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信素子用ギャップ保持材、及びこれを備える無線通信素子に関する。
【背景技術】
【0002】
RFID(Radio Frequency Identification)タグなどの無線通信素子は、近年の物流における配送サービスの拡充、インターネット通信販売の盛況などを背景とした配送数の増大に伴って、盛んに研究開発がなされている(例えば特許文献1)。
【0003】
RFIDタグは、感圧型接着剤、硬化型接着剤などの接着剤や粘着剤などを介して、あるいはヒートシールなどにより構造体に取り付けて使用される。RFIDタグは、無線通信を利用して、これを付した構造体に接触することなくリーダライタによって構造体を認識することができるものであり、構造体を管理する用途などに広く使用されている。具体的には、リーダライタは、例えば、高周波磁界などの信号を出力し、これを受信したRFIDタグは前記信号に対応する構造体のIDデータをリーダライタに送信する。これにより、構造体の認識・管理を行うことができる。RFIDタグによる信号の受送信は、RFIDに備えられている導電性のアンテナ層により行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-59516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
RFIDタグが取り付けられる構造体が、例えば機械部品など金属製の導電体である場合、該構造体とRFIDタグのアンテナ層との距離が近い場合は、渦電流が生じやすくなり、これにより反磁界が発生する。この反磁界はリーダライタから発せられたRFに対し位相差のある干渉波を発生させ、RFIDタグとリーダライタとの信号のやりとりが阻害され、RFIDタグの認識不良を起こしてしまうことが課題として挙げられる。
そこで、本発明は、RFIDタグなどの無線通信素子に用いた場合に、認識不良を抑制することが可能な材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らが、鋭意検討した結果、厚みが一定範囲内であり、特定の周波数における比誘電率が一定値以下である樹脂シートからなる無線通信素子用ギャップ保持材、及び該ギャップ保持材を備える無線通信素子により上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は下記のとおりである。
【0007】
[1]厚みが0.2~2.0mmであり、周波数1GHzに対する比誘電率が1.4以下である樹脂シートからなる無線通信素子用ギャップ保持材。
[2]坪量が0.5~20mg/cmである、上記[1]に記載の無線通信素子用ギャップ保持材。
[3]前記樹脂シートが発泡体である、上記[1]又は[2]に記載の無線通信素子用ギャップ保持材。
[4]前記樹脂シートがポリオレフィン系樹脂を50質量%以上含有する、上記[1]~[3]のいずれかに記載の無線通信素子用ギャップ保持材。
[5]前記樹脂シートの50%圧縮永久ひずみが15%以下である、上記[1]~[4]のいずれかに記載の無線通信素子用ギャップ保持材。
[6]前記樹脂シートを50%圧縮した状態で3時間保持し、圧縮を開放して24時間経過後の樹脂シートの厚みが0.15mm以上である、上記[1]~[5]のいずれかに記載の無線通信素子用ギャップ保持材。
[7]上記[1]~[6]のいずれかの樹脂シートからなる無線通信素子用ギャップ保持材と、該無線通信素子用ギャップ保持材の少なくとも一方の面側にアンテナ層を有する積層体。
[8]上記[7]に記載の積層体を少なくとも備える、無線通信素子。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、RFIDタグなどの無線通信素子に用いた場合に、認識不良を抑制することが可能な無線通信素子用ギャップ保持材、及びこれを備える無線通信素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の無線通信素子の一実施形態を示す断面図である。
図2】本発明の無線通信素子の他の実施形態を示す断面図である。
図3】本発明の無線通信素子の使用態様を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の無線通信素子用ギャップ保持材は、厚みが0.2~2.0mmであり、周波数1GHzに対する比誘電率が1.4以下である樹脂シートからなるものである。
【0011】
[無線通信素子用ギャップ保持材、無線通信素子]
本発明の無線通信素子用ギャップ保持材及びこれを備える無線通信素子の一実施態様について図面を用いて説明する。なお、本発明は、図面の内容に限定されるものではない。
図1には、本発明の樹脂シートからなる無線通信素子用ギャップ保持材13、及びこれを備える無線通信素子10を示している。無線通信素子用ギャップ保持材13は樹脂シートから形成されたものであり、樹脂シートの詳細については後述する。
無線通信素子10は、構造体に取り付けて使用され該構造物の識別情報などを備えており、図示しないリーダライタとの間で電磁界や電波などを利用した無線通信が可能なものである。無線通信素子10は、特に限定されるものではないが、例えば、RFIDタグなどである。無線通信素子10の厚さは特に限定されないが、例えば0.2~5.0mmである。
【0012】
無線通信素子10は、積層体A1を備えるものであり、積層体A1は、樹脂シートからなる無線通信素子用ギャップ保持材13と、該無線通信素子用ギャップ保持材13の少なくとも一方の面側に、図示しないリーダライタとの間で高周波磁界などの信号の受送信を行うアンテナ層14を有する。なお、アンテナ層14は、該無線通信素子用ギャップ保持材13の一方の面側及び他方の面側に設けてもよい。
【0013】
アンテナ層14は、通常導電層であり、アルミニウム、銅、銀などの金属層により形成される。該金属層は、一般に、エッチング法、印刷法、蒸着法などによりパターニングされている。なお、無線通信素子用ギャップ保持材13とアンテナ層14は直接積層されていてもよいし、無線通信素子用ギャップ保持材13とアンテナ層14との間に図示しない粘着層などが設けられていてもよい。アンテナ層14の厚みは、特に限定されないが、通常は0.001~1mmであり、好ましくは0.005~0.1mmである。
【0014】
アンテナ層14の無線通信素子用ギャップ保持材13側とは反対側の面上には、ICチップ17が設けられている。ICチップ17には、無線通信素子10の使用対象物である構造体についての識別情報を記録したメモリ回路などが備えられている。該識別情報は、アンテナ層14を通じて、リーダライタからの信号に基づき送信される。ICチップ17は、例えば、はんだ等の手法により、アンテナ層14に設けられる。
ICチップ17は、シート状の基材16と該基材16の一方の面に積層された粘着層15とからなる封止材によって封止されている。より詳細には、ICチップ17は、粘着層15に埋設されるように封止される。該封止材の厚みは、特に限定されないが、通常0.01~0.2mmである。なお、上記したシート状の基材16の材質は特に限定されないが、紙材であることが好ましい。
無線通信素子用ギャップ保持材13のアンテナ層14が設けられている面側とは反対側の面側は、粘着層12を介して、離型層11を設けてもよい。離型層としては、例えば、PETや紙を基材とし、少なくとも一方の面に離型剤を塗布したものが挙げられる。離型層11の厚みは、特に限定されないが、通常0.01~0.2mmである。
無線通信素子10を構造物に取り付ける際には、図3に示すように、離型層11を剥離して粘着層12を介して、構造体21に取り付けることができる。構造体21は、例えば、機械部品など金属製の物品が挙げられる。
【0015】
粘着層12、粘着層15、及び後述する粘着層18は、一般に知られている粘着剤により形成されていればよく、粘着剤としては例えば、アクリル系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤などが挙げられる。またこれら粘着層の厚みは、それぞれ、通常0.01~0.2mmである。複数ある粘着層は、同種の粘着層であっても異種の粘着層であってもよく、厚みは同一であっても異なっていてもよい。なお、無線通信素子10を構造体21に対して固定することが可能であれば、粘着層12は、必ずしも粘着層でなくてもよく、例えば、硬化型接着剤などの各種接着剤により形成された層であってもよく、構造体21に対して、熱により圧着することが可能なヒートシール層などであってもよい。
【0016】
図1に示した無線通信素子10は、使用している層の数が比較的少ない。このため、無線通信素子10の構成を単純化でき、生産性が高まると共に、無線通信素子全体の厚さを薄くすることが可能であるため、構造体に取り付けた際に、取り付け部が突出し難くなり、他の構造体と接触するなどして、無線通信素子10が構造体から外れることを防止しやすくなる。
【0017】
図2には、図1とは別の実施態様の無線通信素子20を示している。図2に示す無線通信素子20は、図1に示す無線通信素子10における積層体A1の代わりに、積層体A2を用いたものであり、その他の構成は同じである。
無線通信素子20は、積層体A2を備えるものであり、積層体A2は、樹脂シートからなる無線通信素子用ギャップ保持材13と、該無線通信素子用ギャップ保持材13の一方の面側にアンテナ層14を有し、無線通信素子用ギャップ保持材13とアンテナ層14の間には、粘着層18及び樹脂層19が設けられている。すなわち、積層体A2は、無線通信素子用ギャップ保持材13、粘着層18、樹脂層19、アンテナ層14がこの順に積層されたものである。樹脂層19を形成する樹脂の種類は特に限定されないが、ポリエステル系樹脂であることが好ましく、中でもポリエチレンテレフタレートであることがより好ましい。
無線通信素子20は、樹脂層19を有することにより、RtoR(ロールtoロール)プロセスによって各種層を積層加工する際に、引張剛性を高める支持体としての役割を果たし、加工性が優れたものになる。
その他、ICチップ17、粘着層15、基材16、粘着層12、離型層11については上記した図1に示すものと同じである。
また、無線通信素子20についても同様に、離型層11を剥離して粘着層12を介して、構造体に取り付けることができる。
【0018】
構造体が例えば、機械部品など金属製の構造体である場合は、一般に、該構造体とアンテナ層14との間の距離が短いと、渦電流が発生しやすい。しかしながら、本発明の無線通信素子10は、無線通信素子用ギャップ保持材13により、構造体とアンテナ層14との距離を一定以上確保することが可能となり、加えて、無線通信素子用ギャップ保持材13を形成する樹脂シートは、比誘電率が低いものであるため、上記渦電流が発生し難くなる。これにより、渦電流に起因する認識不良を抑制することが可能となる。
【0019】
図1及び図2に示した無線通信素子20は、上記したようにICチップを備えるものであるが、本発明の無線通信素子は、ICチップを備えない、チップレス無線通信素子であってもよい。チップレス無線通信素子では、アンテナ層14のパターン形状の違いを電磁界や電波などで認識することで、構造体の識別情報を通信することができる。チップレス無線通信素子の構成は特に限定されないが、上記した積層体A1、A2などの基本構成を備えるものであり、これに加えて必要に応じて樹脂層、金属層などを備えてもよく、これらの層を積層するに際して、粘着層を用いてもよい。チップレス無線通信素子でも、上記した渦電流に起因する認識不良の問題があり、本発明の無線通信素子用ギャップ保持材を用いることでこのような問題点を解消することが可能となる。
【0020】
[樹脂シート]
本発明の無線通信素子用ギャップ保持材は、樹脂シートから形成されており、該樹脂シートの厚みは、0.2~2.0mmである。厚みが0.2mm未満であると、無線通信素子におけるアンテナ層と、構造体との距離が短くなり、渦電流が発生し易くなる。また、樹脂シートの厚みが2.0mmを超えると、アンテナ層と構造体との距離は長くなるものの、シートの比誘電率が高くなる傾向があるため、この場合も渦電流が発生しやすくなる。また、厚みが2.0mmを超えると、無線通信素子の厚みが厚くなり、構造体に取り付けた際に、取り付け部が突出し易くなり、他の構造体と接触するなどして、無線通信素子が構造体から外れ易くなる。
渦電流の発生を防止して認識不良を低減する観点、及び構造体から外れることを防止する観点から、樹脂シートの厚みは、好ましくは0.2~1.5mmであり、より好ましくは0.2~1.0mmである。
【0021】
本発明における樹脂シートの周波数1GHzに対する比誘電率は、1.4以下である。比誘電率が1.4を超えると、渦電流の発生を防止することが難しくなるため、認識不良が生じやすくなる。無線通信素子用ギャップ保持材の周波数1GHzに対する比誘電率は、好ましくは1.3以下であり、より好ましくは1.1以下であり、そして、通常は1.0以上である。
無線通信用ギャップ保持材の上記比誘電率は、樹脂シートとして後述する発泡体、不織布など適切な素材を選択したり、樹脂シートの密度を調整したりすることなどによって、所望の範囲に調整することができる。
なお、比誘電率は、実施例に記載の方法で測定することができる。
【0022】
<坪量>
本発明における樹脂シートの坪量は、0.5~20mg/cmであることが好ましく、1~15mg/cmであることがより好ましい。坪量が上記上限値以下であると、樹脂シートの比誘電率を低くしやすくなり、坪量が上記下限値以上であると、樹脂シートの機械強度が向上し、破損し難くなる。
【0023】
<50%圧縮永久ひずみ>
樹脂シートの50%圧縮永久ひずみは、15%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。樹脂シートの50%圧縮永久歪みがこのような範囲であると、樹脂シートからなる無線通信用ギャップ保持材が、外力により圧縮された場合であっても、厚みが元に戻りやすく、そのため、構造体とアンテナ層の距離が短くなりすぎることを防止でき、その結果、渦電流の発生を抑制することができる。
なお、50%圧縮永久ひずみは、JIS K6767に準拠して測定することができる。具体的には、厚さtの樹脂シートを、厚さが50%となるように23℃で22時間圧縮し、圧縮を開放した後、23℃の雰囲気で24時間放置した後の樹脂シートの厚さをtとしたときに、以下の式により求められる。
50%圧縮永久ひずみ(%)=100×(t-t)/t
【0024】
<50%圧縮後厚み>
樹脂シートの50%圧縮後厚みは、0.1mm以上であることが好ましく、0.15mm以上であることがより好ましく、0.18mm以上であることがさらに好ましく、0.2mm以上であることがさらに好ましく、そして1mm以下であることが好ましい。樹脂シートの50%圧縮後厚みがこれら下限値以上であると、樹脂シートからなる無線通信用ギャップ保持材が、外力により圧縮された場合であっても、厚みを一定以上に保つことができるため、構造体とアンテナ層の距離が短くなりすぎることを防止でき、その結果、渦電流の発生を抑制することができる。樹脂シートの50%圧縮後厚みが上記した上限値以下であると、樹脂シートの比誘電率を比較的低くすることができる。
ここで、50%圧縮後の厚みとは、樹脂シートを50%圧縮した状態で3時間保持し、圧縮を開放して24時間経過後の樹脂シートの厚みのことを意味する。なお、50%圧縮後厚みの測定は、23℃において行う。
【0025】
<樹脂シートを形成する樹脂>
樹脂シートは、樹脂により形成されており、該樹脂の種類は特に限定されず、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂などが挙げられる。中でも、比誘電率を低くする観点から、樹脂シートはポリオレフィン系樹脂を50質量%以上含むことが好ましく、80質量%以上含むことがより好ましく、100質量%含むことがさらに好ましい。
ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体等が挙げられ、これらの中ではポリエチレン樹脂及びエチレン-酢酸ビニル共重合体が好ましい。
【0026】
〔ポリエチレン樹脂〕
ポリエチレン樹脂としては、チーグラー・ナッタ化合物、メタロセン化合物、酸化クロム化合物等の重合触媒で重合されたポリエチレン樹脂が挙げられ、好ましくは、メタロセン化合物の重合触媒で重合されたポリエチレン樹脂が用いられる。
【0027】
また、ポリエチレン樹脂としては、直鎖状低密度ポリエチレンが好ましい。直鎖状低密度ポリエチレンを用いることにより、例えば樹脂シートが後述する発泡体である場合には、柔軟性を付与するとともに、発泡体の薄型化が可能になる。この直鎖状低密度ポリエチレンは、メタロセン化合物等の重合触媒を用いて得たものがより好ましい。また、直鎖状低密度ポリエチレンは、エチレン(例えば、全モノマー量に対して75質量%以上、好ましくは90質量%以上)と必要に応じて少量のα-オレフィンとを共重合することにより得られる直鎖状低密度ポリエチレンがより好ましい。
α-オレフィンとして、具体的には、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、及び1-オクテン等が挙げられる。なかでも、炭素数4~10のα-オレフィンが好ましい。
ポリエチレン樹脂、例えば上記した直鎖状低密度ポリエチレンの密度は、0.870~0.910g/cmが好ましく、0.875~0.907g/cmがより好ましく、0.880~0.905g/cmが更に好ましい。ポリエチレン樹脂としては、複数のポリエチレン樹脂を用いることもでき、また、上記した密度範囲以外のポリエチレン樹脂を加えてもよい。
【0028】
(メタロセン化合物)
メタロセン化合物としては、遷移金属をπ電子系の不飽和化合物で挟んだ構造を有するビス(シクロペンタジエニル)金属錯体等の化合物を挙げることができる。より具体的には、チタン、ジルコニウム、ニッケル、パラジウム、ハフニウム、及び白金等の四価の遷移金属に、1又は2以上のシクロペンタジエニル環又はその類縁体がリガンド(配位子)として存在する化合物を挙げることができる。
このようなメタロセン化合物は、活性点の性質が均一であり各活性点が同じ活性度を備えている。メタロセン化合物を用いて合成した重合体は、分子量、分子量分布、組成、組成分布等の均一性が高いため、メタロセン化合物を用いて合成した重合体を含むシートを架橋した場合には、架橋が均一に進行する。その結果、均一に延伸できるため、シートを薄くしてもその厚みを均一にしやすくなる。
【0029】
リガンドとしては、例えば、シクロペンタジエニル環、インデニル環等を挙げることができる。これらの環式化合物は、炭化水素基、置換炭化水素基又は炭化水素-置換メタロイド基により置換されていてもよい。炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、各種プロピル基、各種ブチル基、各種アミル基、各種ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基、各種ノニル基、各種デシル基、各種セチル基、フェニル基等が挙げられる。なお、「各種」とは、n-、sec-、tert-、iso-を含む各種異性体を意味する。
また、環式化合物をオリゴマーとして重合したものをリガンドとして用いてもよい。
更に、π電子系の不飽和化合物以外にも、塩素や臭素等の一価のアニオンリガンド又は二価のアニオンキレートリガンド、炭化水素、アルコキシド、アリールアミド、アリールオキシド、アミド、アリールアミド、ホスフィド、アリールホスフィド等を用いてもよい。
【0030】
四価の遷移金属やリガンドを含むメタロセン化合物としては、例えば、シクロペンタジエニルチタニウムトリス(ジメチルアミド)、メチルシクロペンタジエニルチタニウムトリス(ジメチルアミド)、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド、ジメチルシリルテトラメチルシクロペンタジエニル-t-ブチルアミドジルコニウムジクロリド等が挙げられる。
メタロセン化合物は、特定の共触媒(助触媒)と組み合わせることにより、各種オレフィンの重合の際に触媒としての作用を発揮する。具体的な共触媒としては、メチルアルミノキサン(MAO)、ホウ素系化合物等が挙げられる。なお、メタロセン化合物に対する共触媒の使用割合は、10~100万モル倍が好ましく、50~5,000モル倍がより好ましい。
樹脂シートに含まれるポリオレフィン系樹脂は、上記した直鎖状低密度ポリエチレンを使用する場合、上記の直鎖状低密度ポリエチレンを単独で使用してもよいが、他のポリオレフィン系樹脂と併用してもよく、例えば、以下に述べる他のポリオレフィン系樹脂と併用してもよい。他のポリオレフィン系樹脂を含有する場合、直鎖状低密度ポリエチレン(100質量部)に対する他のポリオレフィン系樹脂の割合は、40質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましい。
【0031】
〔ポリプロピレン樹脂〕
また、ポリプロピレン樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、プロピレンを50質量%以上含有するプロピレン-α-オレフィン共重合体等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
プロピレン-α-オレフィン共重合体を構成するα-オレフィンとしては、具体的には、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン等が挙げることができ、これらの中では、炭素数6~12のα-オレフィンが好ましい。
【0032】
〔エチレン-酢酸ビニル共重合体〕
ポリオレフィン系樹脂として使用するエチレン-酢酸ビニル共重合体は、例えば、酢酸ビニルを、好ましくは6~40質量%、より好ましくは10~35質量%、更に好ましくは12~33質量%含有するエチレン-酢酸ビニル共重合体が挙げられる。
本発明で用いるエチレン-酢酸ビニル共重合体は、エチレンと酢酸ビニルの他、酢酸ビニルの一部を加水分解して生成したビニルアルコールを含むものでもよい。
このようなエチレン-酢酸ビニル共重合体としては、例えば、東ソー株式会社製「ウルトラセン」、三井・デュポンポリケミカル株式会社製「エバフレックス」、宇部興産株式会社製「UBEポリエチレン」、旭化成ケミカルズ株式会社製「サンテック」等が挙げられる。
【0033】
<各樹脂の含有量>
ポリオレフィン系樹脂としてポリエチレン樹脂を用いる場合、樹脂全量基準に対するポリエチレン樹脂の量は、30質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、60質量%以上が更に好ましく、70質量%以上がより更に好ましく、実質的にポリエチレン樹脂のみからなることがより更に好ましい。ポリエチレン樹脂の含有量が前記下限値以上であると反発力が向上する。
【0034】
更に、樹脂シートにおいて樹脂としてポリオレフィン系樹脂を含む場合、樹脂シートに含有される樹脂は、ポリオレフィン系樹脂を単独で使用することが好ましいが、ポリオレフィン系樹脂以外の樹脂を含んでもよい。樹脂シートにおいて、ポリオレフィン系樹脂以外の樹脂を含む場合、ポリオレフィン系樹脂の樹脂全量に対する割合は、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上が更に好ましい。
また、樹脂シートに使用するポリオレフィン系樹脂以外の樹脂としては、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂の他、スチレン系熱可塑性エラストマー、EPDM等のエチレンプロピレン系熱可塑性エラストマー等の各種のエラストマー、ゴム成分等が挙げられる。
【0035】
樹脂シートは、特に限定されるものではないが、上記した比誘電率の範囲に調整しやすくする観点から、発泡体又は不織布であることが好ましい。これらの中でも、樹脂シートは発泡体であることがより好ましい。樹脂シートが発泡体であると、柔軟性が高く、衝撃吸収性に優れるため、無線通信素子の破損などを防止しやすくなる。
【0036】
<発泡体>
本発明における樹脂シートとして用いられる発泡体は、樹脂中に複数の気泡が形成されたシート状のものであり、柔軟性に優れる。また、複数の気泡を有するため、比誘電率を低くすることが可能となる。さらに、上記した圧縮永久ひずみ、50%圧縮後厚みの値に調整しやすくなる。
【0037】
≪平均気泡径≫
発泡体の平均気泡径は30~200μmであることが好ましい。平均気泡径がこのような範囲であり、かつ後述する気泡扁平率などを特定の範囲とすることにより、上記した圧縮永久ひずみ、及び50%圧縮後厚み等を所望の範囲に調整しやすくなる。これらの観点から、発泡体の平均気泡径は、好ましくは50~180μmである。発泡体の平均気泡径は、例えば、発泡体を製造するための発泡性組成物の組成、発泡倍率などにより調節することができる。
なお、発泡体の平均気泡径とはMD方向の平均気泡径、及びTD方向の平均気泡径の平均値である。
【0038】
MD方向の平均気泡径、TD方向の平均気泡径、及びZD方向の平均気泡径は、以下の方法により求められる。
シート状の発泡体を50mm四方にカットしたものを測定用の発泡体サンプルとして用意する。これを液体窒素に1分間浸した後にカミソリ刃でMD方向及びTD方向に沿ってそれぞれ厚さ方向に切断する。この断面をデジタルマイクロスコープ(株式会社キーエンス製「VHX-900」)を用いて200倍の拡大写真を撮り、MD方向、TD方向及びZD方向のそれぞれにおける長さ2mm分の切断面に存在する全ての気泡について気泡径を測定し、その操作を5回繰り返す。そして、全ての気泡の平均値をMD方向、TD方向及びZD方向の平均気泡径とする。
なお、MD方向は、Machine directionを意味し、押出方向等と一致する方向であるとともに、TD方向は、Transverse directionを意味し、MD方向に直交する方向である。また、ZD方向は、発泡体の厚さ方向であり、MD方向及びTD方向のいずれにも垂直な方向である。
【0039】
≪気泡扁平率≫
本発明における発泡体の気泡扁平率は50~1000%であることが好ましく、100~500%であることがより好ましく、150~400%であることがさらに好ましい。気泡扁平率がこのような範囲であり、且つ平均気泡径の大きさが前記範囲内であると、上記した圧縮永久ひずみ、50%圧縮後厚みの値に調整しやすくなる。
気泡扁平率は、下記式(1)で表され、気泡の形状を反映した値となる。
100×MD方向の平均気泡径×TD方向の平均気泡径/(ZD方向の平均気泡径)・・・(1)
例えば気泡扁平率が、100%に近い値であると、気泡は球形に近い形状となる。気泡扁平率が上記した範囲内であると、発泡体の反発力が高くなり、圧縮永久ひずみ、及び50%圧縮後厚みの値を上記した範囲に調整しやすくなる。
発泡体の気泡扁平率は、発泡体を製造する際の、延伸倍率などの各種製造条件を調整することで、所望の範囲に調節することができる。
【0040】
≪25%圧縮強度≫
本発明における発泡体の25%圧縮強度は、好ましくは20~500kPaであり、より好ましくは25~300kPaである。発泡体の25%圧縮強度をこのような範囲に調整することにより、適切な柔軟性を有し、無線通信素子の衝撃吸収性を向上させることができる。
25%圧縮強度は、当初の厚さの25%に相当する厚さの分だけ圧縮したときの荷重であり、JIS K6767に準拠して測定することができる。
【0041】
≪見掛け密度≫
本発明における発泡体に見掛け密度は、好ましくは0.02~0.5g/cmであり、より好ましくは0.03~0.3g/cmであり、さらに好ましくは0.05~0.25g/cmである。発泡体の見掛け密度がこれら上限値以下であると、比誘電率を低くしやすくなり、見掛け密度がこれら下限値以上であると、発泡体の機械強度が高くなり、破損を防止しやすくなる。
【0042】
≪独立気泡率≫
本発明における発泡体は、独立気泡を有するものであることが好ましい。独立気泡を有するとは、全気泡に対する独立気泡の割合(「独立気泡率」という)が75%以上となることを意味する。本発明に用いる発泡体が独立気泡を有するものであると、発泡体内部の空気が抜けにくくなるため、反発力が向上し、圧縮永久ひずみ、及び50%圧縮後厚みの値を上記した所望の値に調整しやすくなる。発泡体の独立気泡率は、好ましくは80%以上であり、より好ましくは85%以上であり、更に好ましくは90%以上であり、そして100%以下である。
独立気泡率は、ASTM D2856(1998)に準拠して求めることができる。市販の測定器では、乾式自動密度計アキュピック1330等が挙げられる。
【0043】
独立気泡率は、より具体的には下記の要領で測定される。発泡体から一辺が5cmの平面正方形状で、且つ一定厚みの試験片を切り出す。試験片の厚みを測定し、試験片の見掛け体積Vを算出するとともに試験片の重量Wを測定する。次に、気泡の占める見掛け体積Vを下記式に基づいて算出する。なお、試験片を構成している樹脂の密度は、1g/cmとする。
気泡の占める見掛け体積V=V-W
続いて、試験片を23℃の蒸留水中に水面から100mmの深さに沈めて、試験片に15kPaの圧力を3分間に亘って加える。しかる後、試験片を水中から取り出して試験片の表面に付着した水分を除去し、試験片の重量Wを測定し、下記式に基づいて連続気泡率F及び独立気泡率Fを算出する。
連続気泡率F(%)={(W-W)/V}×100
独立気泡率F(%)=100-F
【0044】
≪発泡体における樹脂≫
本発明における発泡体は、樹脂を含む発泡性組成物を発泡してなるものである。樹脂の種類は特に制限されないが、上記したとおり、比誘電率を低くする観点から、ポリオレフィン系樹脂が好ましい。ポリオレフィン系樹脂については、上記したとおりである。
【0045】
≪熱分解型発泡剤≫
本発明の発泡体は、樹脂と熱分解型発泡剤とを含む発泡性組成物を発泡してなることが好ましい。
熱分解型発泡剤としては、有機発泡剤、無機発泡剤が使用可能である。有機発泡剤としては、アゾジカルボンアミド、アゾジカルボン酸金属塩(アゾジカルボン酸バリウム等)、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン等のニトロソ化合物、ヒドラゾジカルボンアミド、4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、トルエンスルホニルヒドラジド等のヒドラジン誘導体、トルエンスルホニルセミカルバジド等のセミカルバジド化合物等が挙げられる。
無機発泡剤としては、酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、亜硝酸アンモニウム、水素化ホウ素ナトリウム、無水クエン酸モノソーダ等が挙げられる。
これらの中では、微細な気泡を得る観点、及び経済性、安全面の観点から、アゾ化合物が好ましく、アゾジカルボンアミドがより好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
発泡性組成物における熱分解型発泡剤の配合量は、樹脂100質量部に対して、1~20質量部が好ましく、2~18質量部がより好ましく、4~15質量部が更に好ましい。
【0046】
発泡性組成物は、樹脂、熱分解型発泡剤以外にも、酸化防止剤、熱安定剤、着色剤、難燃剤、帯電防止剤、充填材等の発泡体に一般的に使用する添加剤を含有していてもよい。
【0047】
〔発泡体の製造方法〕
発泡体の製造方法は、特に制限はないが、例えば、樹脂及び熱分解型発泡剤を含む発泡性組成物を架橋し、加熱して熱分解型発泡剤を発泡させ、TD方向及びMD方向の少なくとも一方に延伸することで製造することができる。その製造方法は、より具体的には、以下の工程(1)~(4)を含む。
工程(1):樹脂、熱分解型発泡剤、及び必要に応じて配合されるその他の添加剤を混合して、シート状の発泡性組成物に成形する工程
工程(2):シート状の発泡性組成物に電離性放射線を照射して発泡性組成物を架橋させる工程
工程(3):架橋させた発泡性組成物を加熱し、熱分解型発泡剤を発泡させて、シート状の発泡体を得る工程
工程(4):MD方向又はTD方向のいずれか一方又は双方の方向に発泡体を延伸する工程
【0048】
工程(1)において、シート状の発泡性組成物に成形する方法は、特に限定されないが、例えば、樹脂、熱分解型発泡剤、必要に応じて配合されるその他の添加剤を押出機に供給して溶融混練し、押出機から発泡性組成物をシート状に押出すことによって成形すればよい。
工程(2)において発泡性組成物を架橋する方法としては、シート状の発泡性組成物に電子線、α線、β線、γ線等の電離性放射線を照射する方法を用いる。上記電離放射線の照射量は、5~15Mradであることが好ましく、6~13Mradであることがより好ましい。電離照射線の加速電圧は、好ましくは200~1000kVであり、より好ましくは300~800kVである。
工程(3)において、発泡性組成物を加熱し熱分解型発泡剤を発泡させるときの加熱温度は、熱分解型発泡剤の発泡温度以上であればよいが、好ましくは200~300℃、より好ましくは220~280℃である。
【0049】
工程(4)における発泡体の延伸は、MD及びTD方向の両方に行ってもよいし、一方のみに行ってもよい。また発泡体の延伸は、シート状の発泡性組成物を発泡させて発泡体を得た後に行ってもよいし、シート状の発泡性組成物を発泡させつつ行ってもよい。なお、シート状の発泡性組成物を発泡させて発泡体を得た後、発泡体を延伸する場合には、発泡体を冷却することなく発泡時の溶融状態を維持したまま続けて発泡体を延伸してもよく、発泡体を冷却した後、再度、発泡体を加熱して溶融又は軟化状態とした上で発泡体を延伸してもよい。発泡体は延伸することで薄厚にしやすくなる。
工程(4)において、発泡体のMD方向及びTD方向の一方又は両方への延伸倍率は、5.0倍未満であることが好ましく、4.0倍未満がより好ましく、3.0倍未満が更に好ましい。また、上限値以下とすると、気泡扁平率を所望の範囲に調整しやすくなり、発泡体が延伸中に破断したり、発泡中の発泡体から発泡ガスが抜けて発泡倍率が著しく低下したりすることが防止され、発泡体の柔軟性が良好になり、品質も均一なものとしやすくなる。発泡シートのMD方向及びTD方向の一方又は両方への延伸倍率は、好ましくは1.0倍以上であり、より好ましくは1.2倍以上である。
また、延伸時に発泡体は、例えば100~280℃、好ましくは150~260℃に加熱すればよい。
以上のようにして得られた発泡体は、抜き加工等の周知の方法により切断して、所望の形状に加工してもよい。
【0050】
ただし、本製造方法は、上記に限定されずに、上記以外の方法により、発泡体を得てもよい。例えば、電離性放射線を照射する代わりに、発泡性組成物に予め有機過酸化物を配合しておき、発泡性組成物を加熱して有機過酸化物を分解させる方法等により架橋を行ってもよい。
【0051】
<不織布>
本発明における樹脂シートとして、不織布を用いることができる。不織布を構成する繊維としては、特に限定されず、例えば、綿、麻、羊毛等の天然繊維、セルロース系再生繊維、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリオレフィン系、ポリスチレン系、ポリアクリル系、ポリビニルアルコール系等の合成繊維、パルプ、ガラス繊維等の無機繊維等が挙げられる。これらの繊維は、単独或いは混合して使用することができる。中でも、ポリオレフィン系、ポリエステル系及びポリアミド系の合成繊維は、耐久性に優れているので好適に用いられる。特に、比誘電率を低下させ易い観点から、ポリオレフィン系の繊維が、不織布を構成する繊維としてより好適である。
【0052】
不織布の平均繊維径は特に限定されないが、通常は0.1~100μm程度であり、好ましくは0.3~80μmである。
【0053】
不織布は公知の方法によって製造でき、例えば、ニードルパンチ方式、スパンレース方式、スパンボンド方式、メルトブロー方式等の乾式法、抄紙方式等の湿式法などにより製造される。
【0054】
[無線通信素子の使用]
以上のように、本発明の無線通信素子用ギャップ保持材は、一定の厚みを有し、かつ比誘電率が低いため、該ギャップ保持材を備える無線通信素子の渦電流の発生を抑制でき、認識不良を防止することが可能となる。
無線通信素子は、好ましくはRFIDタグやICカード、磁気カードなどであり、上記したように構造体に取り付けて使用され、構造体の識別が可能となる。本発明の無線通信素子は、金属製の構造体及び非金属製の構造体のいずれであっても使用可能である。上記したように、金属製の構造体の場合には、一般に渦電流の発生に起因する認識不良の問題が生じやすいが、本発明の無線通信素子用ギャップ保持材を備えた無線通信素子は、金属製の構造体に取り付けて使用した場合であっても、認識不良の問題は生じ難い。そのため、本発明の無線通信素子は、金属製の構造体に取り付けて使用することが好ましい。
金属製の構造体としては、金属製であれば特に制限されないが、例えば、金属製の容器、筐体、工具、器具、コンテナ、機械部品、自動車部品、医療部品などが挙げられる。
【実施例
【0055】
本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0056】
[測定方法]
各物性の測定方法及び評価方法は、次の通りである。
【0057】
<比誘電率>
得られた発泡体を1mm×10mmの平面形状にカットして測定試料とした。該測定試料の比誘電率を、キーサイト・テクノロジー 社製のネットワークアナライザー「N5071C」と、関東電子応用開発社製の空洞共振器「CP-431」を用いて空洞共振法(JIS C2565)により測定した。なお、測定時の周波数は1GHzとした。測定温度は23℃とした。
【0058】
<圧縮永久ひずみ、50%圧縮後厚み>
明細書に記載の方法にしたがって測定した。
【0059】
<平均気泡径、気泡扁平率>
発泡体の平均気泡径は明細書に記載の方法で測定し、平均気泡径の値に基づいて気泡扁平率を算出した。
【0060】
<25%圧縮強度>
JIS K6767に準拠して測定した。
【0061】
<見掛け密度>
発泡体についてJIS K7222に準拠して見かけ密度を測定した。
【0062】
<独立気泡率>
発泡体の独立気泡率は、明細書記載の方法で測定した。
【0063】
各実施例及び比較例における発泡体の製造に使用した各成分は以下のとおりである。
[樹脂]
<ポリエチレン樹脂>
直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)(エクソン・ケミカル社製、商品名「EXACT3027」、密度:0.900g/cm
【0064】
<エチレン酢酸ビニル共重合体>
日本ポリエチレン社製、商品名「ノバテックEVA LV440」、酢酸ビニル含量15質量%
<ポリウレタン製発泡体>
株式会社ロジャースイノアック社製、商品名「PORON SR-S-15P」、厚み0.5mm、密度150kg/m
【0065】
[熱分解型発泡剤]
・アゾジカルボンアミド 平均粒子径15μm
[酸化防止剤]
・フェノール系酸化防止剤:2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール
【0066】
[実施例1]
(発泡体の製造)
表1に記載した発泡性組成物を構成する各成分を、表1に記載の質量部数で押出機に供給して、130℃で溶融混練して発泡性組成物を得た後、該発泡性組成物をシート状に押出した。次に、上記シート状の発泡性組成物の両面に、それぞれ加速電圧500kVの電子線を5.1Mrad照射して発泡性組成物を架橋した後、架橋した発泡性組成物を熱風及び赤外線ヒーターにより250℃に保持された発泡炉内に連続的に送り込んで加熱して発泡させて、シート状の発泡体を得た。次いで、得られた発泡体を発泡炉から連続的に送り出した。そして、発泡体をその両面の温度が200~250℃となるように維持した状態で、発泡体をそのTD方向に2.0倍の延伸倍率で延伸させると共に、発泡体の発泡炉への送り込み速度(供給速度)よりも速い巻取速度でもって発泡体を巻き取ることによって発泡体をMD方向にも2.3倍の延伸倍率で延伸させた。それにより、無線通信素子用ギャップ保持材である発泡体(厚み:0.50mm)を得た。得られた発泡体を上記評価方法に従って評価し、その結果を表1に示す。
【0067】
[実施例2~6及び比較例1~3]
発泡性組成物の組成、製造条件等を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして発泡体を得た。得られた発泡体を上記評価方法に従って評価し、その結果を表1に示す。
【0068】
[比較例4]
株式会社ロジャースイノアック社製発泡シート、商品名「PORON SR-S-15P」を用いて上記評価方法に従って評価した。その結果を表1に示す。
【0069】
【表1】
【0070】
上記した各実施例における発泡体(無線通信素子用ギャップ保持材)は、厚みが0.2~1.0mmであり、比誘電率が1.4以下である。該発泡体を備える無線通信素子は、構造体に取り付けて使用する際に、構造体とアンテナ層との距離を長くすることができ、その上、発泡体の比誘電率が低いため、渦電流の発生が抑制される。
これに対して、比較例1~4における発泡体は、厚みが所定範囲から外れているか、比誘電率が高いため、該発泡体を備える無線通信素子を構造体に取り付けて使用する際に、渦電流が発生しやすく、認識不良が生じやすい。
【符号の説明】
【0071】
10、20 無線通信素子
11 離型層
12 粘着層
13 無線通信素子用ギャップ保持材
14 アンテナ層
15 粘着層
16 基材
17 ICチップ
18 粘着層
19 樹脂層
21 構造体
A1、A2 積層体
図1
図2
図3