(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】シートスライド装置及びシートスライド装置用ロアレール
(51)【国際特許分類】
B60N 2/06 20060101AFI20240828BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20240828BHJP
【FI】
B60N2/06
B60R16/02 620A
(21)【出願番号】P 2020030667
(22)【出願日】2020-02-26
【審査請求日】2023-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】521452902
【氏名又は名称】アディエント ユーエス エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ミンホ
(72)【発明者】
【氏名】金井 裕也
【審査官】寺澤 忠司
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-208827(JP,A)
【文献】特開平10-138802(JP,A)
【文献】特開2011-136598(JP,A)
【文献】米国特許第05950978(US,A)
【文献】中国実用新案第210258139(CN,U)
【文献】特開2018-191464(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/06
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両床面に固定されるロアレールと、
前記ロアレールに対してスライド可能に取り付けられ、シートが固定されるアッパーレールと、
前記車両床面から前記シートまで配索される配索部材と、を有し、
前記ロアレールは、
前記車両床面に固定されるレール底壁と、
前記レール底壁の両縁部よりそれぞれ立ち上がる一対のレール側壁と、
前記一対のレール側壁の上端から互いに近づく方向に延出し、長手方向に沿って開口部が設けられたレール頂壁と、
前記一対のレール側壁の間において前記レール底壁から立ち上がり、前記ロアレールに沿って延在するレール縦壁と、を有し、
前記ロアレールの内部空間は、前記レール縦壁によって、前記アッパーレールが走行する第1内部空間と、前記配索部材が前記ロアレールに沿って配索される第2内部空間とに隔てら
れ、
前記第1内部空間の中央に向かって突出する第1ローラー支持片が、前記レール側壁のうち、前記第1内部空間に対して臨む内面に設けられ、
前記第1内部空間の中央に向かって突出する第2ローラー支持片が、前記レール縦壁のうち、前記第1内部空間に臨む面に設けられ、
前記第1内部空間の中央に向かうほど下方に傾斜する傾斜面が、前記第1及び第2ローラー支持片にそれぞれ設けられ、
前記アッパーレールのメインローラが、前記第1及び第2ローラー支持片の前記傾斜面によってそれぞれ支持され、
前記レール縦壁の頂部は、前記第1内部空間に向かって突出するような屈曲形状を有している
シートスライド装置。
【請求項2】
前記レール頂壁の前記開口部は、前記レール縦壁よりも前記第1内部空間側にオフセットした位置に設けられてい
る
請求項1記載のシートスライド装置。
【請求項3】
前記レール縦壁の頂部と前記レール頂壁との間には、隙間が設けられており、
前記配索部材における前記シート側の端部領域は、前記レール縦壁の頂部を乗り越えて前記第1内部空間へと導かれた状態で前記アッパーレールに固定されるとともに、前記開口部を介して前記ロアレールの外部に導かれる
請求項1又は2記載のシートスライド装置。
【請求項4】
前記ロアレールの一方の端部に設けられ、前記配索部材を収容する収容部をさらに有する
請求項1から3いずれか一項記載のシートスライド装置。
【請求項5】
前記配索部材は、ワイヤーハーネスである
請求項1から4いずれか一項記載のシートスライド装置。
【請求項6】
シートが固定されるアッパーレールがスライド可能に取り付けられるシートスライド装置用ロアレールにおいて、
車両床面に固定されるレール底壁と、
前記レール底壁の両縁部よりそれぞれ立ち上がる一対のレール側壁と、
前記一対のレール側壁の上端から互いに近づく方向に延出し、長手方向に沿って開口部が設けられたレール頂壁と、
前記一対のレール側壁の間において前記レール底壁から立ち上がり、ロアレールの長手方向に沿って延在するレール縦壁と、を有し、
前記ロアレールの内部空間は、前記レール縦壁によって、前記アッパーレールが走行する第1内部空間と、前記車両床面から前記シートまで配索される配索部材が前記ロアレールに沿って配索される第2内部空間とに隔てられ
、
前記第1内部空間の中央に向かって突出する第1ローラー支持片が、前記レール側壁のうち、前記第1内部空間に対して臨む内面に設けられ、
前記第1内部空間の中央に向かって突出する第2ローラー支持片が、前記レール縦壁のうち、前記第1内部空間に臨む面に設けられ、
前記第1内部空間の中央に向かうほど下方に傾斜する傾斜面が、前記第1及び第2ローラー支持片にそれぞれ設けられ、
前記アッパーレールのメインローラが、前記第1及び第2ローラー支持片の前記傾斜面によってそれぞれ支持され、
前記レール縦壁の頂部は、前記第1内部空間に向かって突出するような屈曲形状を有している
シートスライド装置用ロアレール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートスライド装置及びシートスライド装置用ロアレールに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、自動車のスライドシート内の補機に電力を供給するためのスライドシート用給電装置が開示されている。このスライドシート用給電装置は、合成樹脂製のケースと、ケースの長手方向に移動する合成樹脂製の可動体と、可動体とケース端部を結ぶ複数本の被覆電線でなるワイヤーハーネスとで構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された技術は、シートを移動させるガイドレールとは別に、ワイヤーハーネスを配索するレール(ケース)を設けている。このため、車両床面に設けられるレールの数が増え、フロアの見栄えを悪化させるばかりか、装置重量の増加及びコストアップを招いてしまうという不都合がある。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みて成されたものであり、その目的は、フロアの見栄えの悪化を抑制し、加えて装置重量の増加及びコストアップを抑制することができるシートスライド装置及びシートスライド装置用ロアレールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1又はそれ以上の実施形態の第1の態様によれば、車両床面に固定されるロアレールと、ロアレールに対してスライド可能に取り付けられ、シートが固定されるアッパーレールと、車両床面からシートまで配索される配索部材と、を有し、ロアレールは、車両床面に固定されるレール底壁と、レール底壁の両縁部よりそれぞれ立ち上がる一対のレール側壁と、一対のレール側壁の上端から互いに近づく方向に延出し、長手方向に沿って開口部が設けられたレール頂壁と、一対のレール側壁の間においてレール底壁から立ち上がり、ロアレールに沿って延在するレール縦壁と、を有し、ロアレールの内部空間は、レール縦壁によって、アッパーレールが走行する第1内部空間と、配索部材がロアレールに沿って配索される第2内部空間とに隔てられているシートスライド装置が提供される。
【0007】
1又はそれ以上の実施形態の第2の態様によれば、シートが固定されるアッパーレールがスライド可能に取り付けられるシートスライド装置用ロアレールであって、車両床面に固定されるレール底壁と、レール底壁の両縁部よりそれぞれ立ち上がる一対のレール側壁と、一対のレール側壁の上端から互いに近づく方向に延出し、長手方向に沿って開口部が設けられたレール頂壁と、一対のレール側壁の間においてレール底壁から立ち上がり、ロアレールの長手方向に沿って延在するレール縦壁と、を有し、ロアレールの内部空間は、レール縦壁によって、アッパーレールが走行する第1内部空間と、車両床面からシートまで配索される配索部材がロアレールに沿って配索される第2内部空間とに隔てられているシートスライド装置用ロアレールが提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、フロアの見栄えの悪化を抑制し、加えて装置重量の増加及びコストアップを抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、シート及びシートスライド装置を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2は、ロアレール及びアッパーレールを模式的に示す説明図である。
【
図3】
図3は、ワイヤーハーネスの配索状態を模式的に示す説明図である。
【
図4】
図4は、
図2におけるAA線に沿う断面を示す説明図である。
【
図5】
図5は、
図2におけるBB線に沿う断面を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態に係るシートスライド装置について説明する。説明の便宜上、前後方向、左右方向及び上下方向を、シートスライド装置が搭載される車両における方向を基準に規定する。
【0011】
図1において、シートスライド装置1は、自動車の前後方向に配列された複数列のシート、例えば3列のシートのうち、2列目用シートSR、SLに適用されている。2列目用シートSR、SLは、運転席及び助手席、又は3列目用シートと比較してシートの移動距離が長いのが特徴である。
【0012】
図1に示す2列目用シートSR、SLは、一人乗り用のシートであり、右側の2列目用シートSRと、左側の2列目用シートSLとが左右方向に所定距離だけ隔てて設けられている。右側の2列目用シートSR及びこの2列目用シートSRに適用されるシートスライド装置1と、左側の2列目用シートSL及びこの2列目用シートSLに適用されるシートスライド装置1とは、左右対称に構成されている。以下、右側の2列目用シートSRを対象として、シートスライド装置1を説明する。この説明では、右側の2列目用シートSRを、単にシートSRという場合もある。
【0013】
シートスライド装置1は、一対のロアレール10、50と、一対のアッパーレール40、80と、ワイヤーハーネス20(
図3、4を参照)とを有している。
【0014】
一対のロアレール10、50は、左右方向に所定距離だけ離間した状態で、互いに平行に前後方向に延在している。ロアレール10、50のそれぞれは、車両床面に対して略水平に取り付けられている。右側の2列目用シートSRにおいて、ロアレール10は右側(外側)に配置され、ロアレール50は左側(内側)に配置されている。
【0015】
個々のロアレール10、50の横断面形状は、矩形枠形状を有している。右側のロアレール10の内部にワイヤーハーネス20が配索される都合上、右側のロアレール10の横幅は、左側のロアレール50の横幅に比べて大きく設定されている。個々のロアレール10、50の上方には、前後方向に沿って延在する開口部15、55が設けられている。個々のロアレール10、50は、アルミニウムなどの金属材料を用いて、押し出し成形によって形成されている。
【0016】
一対のアッパーレール40、80は、一対のロアレール10、50に対してスライド可能に取り付けられる。具体的には、アッパーレール40は、右側のロアレール10に対してスライド可能に取り付けられ、ロアレール10によって案内されることにより、前後方向に移動する。アッパーレール80は、左側のロアレール50に対してスライド可能に取り付けられ、ロアレール50によって案内されることにより、前後方向に移動する。
【0017】
アッパーレール40、80は、同一形状の部材であり、アルミニウムなどの金属材料を用いて、押し出し成形によって形成されている。アッパーレール40、80の下側領域は、ロアレール10、50の内部空間に収容され、前後方向の移動がロアレール10、50によって案内される。アッパーレール40、80の上側領域は、ロアレール10、50の開口部15、55より上方に突出している。アッパーレール40、80の上側領域には、シートSRのフレーム部材であるシートクッションフレーム(図示せず)が固定されている。
【0018】
以下、
図2から
図5を参照し、本実施形態の特徴の一つであるロアレール10の構成について説明する。なお、説明の便宜上、
図2では、ガイド部材30及びシート側ハーネス31の記載が省略され、
図3では、ロアレール10の記載が省略されている。
【0019】
ロアレール10は、レール底壁11と、一対のレール側壁12、13と、レール頂壁14とを主体に構成されている。レール底壁11、レール側壁12、レール側壁13、及びレール頂壁14は、一体に形成されている。
【0020】
レール底壁11は、車両床面2(
図4、5を参照)に固定される。レール底壁11と車両床面2との固定には、ボルトなどの締結部材が用いられる。
【0021】
一対のレール側壁12、13は、レール底壁11の左右の縁部に連続し、左右の縁部から鉛直上方にそれぞれ立ち上がっている。一方のレール側壁12は、レール底壁11の右側縁部に位置し、他方のレール側壁13は、レール底壁11の左側縁部に位置する。
【0022】
レール頂壁14は、一対のレール側壁12、13の上端から互いに近づく方向に延出している。レール頂壁14には、前後方向に沿って延在する開口部15が設けられている。左右方向における開口部15の幅は、アッパーレール40の厚さよりも十分に大きくなるように設定されている。
【0023】
ロアレール10は、レール縦壁16をさらに備えている。レール縦壁16は、一対のレール側壁12、13の間に位置し、レール底壁11から鉛直上方に立ち上がっている。レール縦壁16は、前後方向に沿って延在している。
【0024】
ロアレール10の内部空間は、レール縦壁16によって、第1内部空間S1と、第2内部空間S2とに隔てられている。第1内部空間S1は、レール縦壁16を境に左側に位置し、第2内部空間S2は、レール縦壁16を境に右側に位置する。レール頂壁14の開口部15は、レール縦壁16よりも第1内部空間S1側にオフセットした位置に設けられている。
【0025】
レール縦壁16の頂部16aは、レール頂壁14の下面に到達しない程度の高さに設定されている。したがって、レール縦壁16の頂部16aとレール頂壁14との間には隙間が形成され、これにより、第1内部空間S1と第2内部空間S2とが繋がっている。レール縦壁16の頂部16aは、第1内部空間S1に向かって突出するような屈曲形状を有している。
【0026】
第1内部空間S1は、アッパーレール40が走行する空間である。アッパーレール40の下側領域に相当する基部41は、第1内部空間S1に収容されている。アッパーレール40の上側領域に相当するシート支持壁42は、開口部15を介してレール頂壁14よりも上方に突出している。この突出したシート支持壁42に対して、シートクッションフレーム(図示せず)が固定される。
【0027】
第1内部空間S1には、アッパーレール40の走行を案内するレール部が形成されている。具体的には、レール側壁13のうち、第1内部空間S1に対して臨む内面には、第1内部空間S1の中央に向かって突出する第1ローラー支持片13aが設けられている。また、レール縦壁16のうち、第1内部空間S1に臨む面には、第1内部空間S1の中央に向かって突出する第2ローラー支持片16bが設けられている。
【0028】
第1及び第2ローラー支持片13a、16bのそれぞれは、前後方向に沿って延在しており、上下方向の高さが互いに一致するように設定されている。また、第1及び第2ローラー支持片13a、16bには、第1内部空間S1の中央に向かうほど下方に傾斜する傾斜面が設けられている。
【0029】
図4及び
図5に示すように、基部41には、メインローラー45が回転自在に軸支されている。具体的には、基部41には、図示しないピンが設けられており、このピンの軸方向は左右方向と一致するように設定されている。メインローラー45は、ピンに対して回転自在に取り付けられている。
【0030】
メインローラー45における左右の端部領域には、ローラー径が最大となる最大径部が設定されている。メインローラー45は、この最大径部を境に外側に向かうほどローラー径が縮小するテーパー部を有している。メインローラー45における左右のテーパー部は、基部41の下端位置よりも下方に突出している。基部41が第1内部空間S1に収容された状態において、メインローラー45のテーパー部は、第1及び第2ローラー支持片13a、16bの傾斜面によってそれぞれ支持される。
【0031】
また、基部41には、メインローラー45の近傍に、一対のサブローラー46が回転自在に軸支されている。具体的には、基部41の左右両側には、図示しないブラケットがそれぞれ設けられており、左右のサブローラー46は、左右のブラケットに対して回転自在に支持されている。
【0032】
サブローラー46のそれぞれは、基部41の上端位置よりも上方に突出している。基部41が第1内部空間S1に収容された状態において、サブローラー46の上端は、レール頂壁14の内壁に対して当接する。
【0033】
第2内部空間S2には、ワイヤーハーネス20が配索されている。ワイヤーハーネス20は、複数の被覆電線21を外装部材22によって覆って構成されている。複数の被覆電線21には、例えば、シートの着座センサなどのセンサ用の信号線、シート用のヒータ又はパワーシートの電動モーターなどに電力を供給する電力線などが含まれる。外装部材22は、被覆電線21を保護するための適度な剛性を有し、併せて、収容時に必要な可撓性を備えている。外装部材22は、例えばコルゲート状又はキャタピラ状に形成されている。
【0034】
ワイヤーハーネス20の一端は、車両床面2に設けられたコネクタ(図示せず)に接続され、ワイヤーハーネス20の他端は、シートSRに設けられたシート側ハーネス31に接続される。ワイヤーハーネス20は、車両床面2からシートSRまで、ロアレール10に沿って配索されている。
【0035】
図3に示すように、アッパーレール40の前端40aには、ワイヤーハーネス20をアッパーレール40に固定し、シートSRへと導くガイド部材30が設けられている。ワイヤーハーネス20のシート側の端部領域は、ガイド部材30に沿って配索され、その配索状態においてガイド部材30に固定される。ワイヤーハーネス20がガイド部材30に沿って配索されると、ワイヤーハーネス20は、レール縦壁16の頂部16aを乗り越えて第1内部空間S1内へと導かれ、第1内部空間S1から開口部15を介してロアレール10の外部に導かれる。ロアレール10の外部へと導かれたワイヤーハーネス20の端部は、シートSRに設けられたシート側ハーネス31のコネクタ(図示せず)へと接続される。
【0036】
ロアレール10の前端には、ワイヤーハーネス20の余剰部分、ロアレール10の前端より延出する遊び部分を収容するハーネス収容部25が設けられている。ハーネス収容部25の内部には、ワイヤーハーネス20を収容する収容機構が設けられている。収容機構としては、ワイヤーハーネス20を巻き取る機構、ワイヤーハーネス20を葛折りに折りたたむ機構などを用いることができる。ハーネス収容部25は、ロアレール10に沿って配索されるワイヤーハーネス20の全長を収容できる程度の大きさに設定されている。
【0037】
このような構成のシートスライド装置1では、ロアレール10の第1内部空間S1に、第1及び第2ローラー支持片13a、16bが設けられている。第1及び第2ローラー支持片13a、16bは、アッパーレール40のスライド移動を案内するレール部として機能する。アッパーレール40のメインローラー45が第1及び第2ローラー支持片13a、16b上を走行することで、アッパーレール40は前後方向に沿ってスライド移動することができる。
【0038】
メインローラー45が支持される第1及び第2ローラー支持片13a、16bには、第1内部空間S1の中央に向かうほど下方に傾斜する傾斜面に形成されている。そのため、アッパーレール40が第1及び第2ローラー支持片13a、16b上を走行するときの直進安定性を得ることができる。
【0039】
また、アッパーレール40に設けられた左右のサブローラー46がレール頂壁14に対して当接することで、アッパーレール40の上方への位置規制を行うことができる。これにより、アッパーレール40の脱落を抑制することができる。また、一対のサブローラー46は回転可能に構成されているので、アッパーレール40のスライド移動は円滑に行われる。
【0040】
アッパーレール40には、ワイヤーハーネス20が固定されている。ワイヤーハーネス20は、複数の被覆電線21を外装部材22によって覆って構成されているため、適当な剛性を備えた構造となっている。このため、アッパーレール40が前方へと移動すると、ワイヤーハーネス20も前方へと押し出され、第2内部空間S2の内部を前方へと移動する。
【0041】
前方へと移動したワイヤーハーネス20のうち、ロアレール10の前端より延出した部分は、ハーネス収容部25へと収容される。これにより、ワイヤーハーネス20の余剰部分を適切に処理することができる。また、ハーネス収容部25は、ロアレール10に沿って配索されるワイヤーハーネス20の全部を収容できる程度の大きさに設定されている。そのため、アッパーレール40がロアレール10の前端に到達するまで、ハーネス収容部25に対してワイヤーハーネス20を収容することができる。これにより、ハーネス収容部25に収容しきれないワイヤーハーネス20によってアッパーレール40の移動が妨げられるという事態を抑制することができる。
【0042】
また、アッパーレール40が後方へと移動すると、アッパーレール40に固定されたワイヤーハーネス20が後方へと引っ張られる。アッパーレール40の後方への移動量に応じた長さのワイヤーハーネス20が、ハーネス収容部25の内部から引き出される。これにより、ワイヤーハーネス20とともにアッパーレール40をスムーズに後方へと移動させることができる。
【0043】
このように本実施形態において、ロアレール10は、一対のレール側壁12、13の間においてレール底壁11から立ち上がり、ロアレール10の長手方向に沿って延在するレール縦壁16を有している。そして、ロアレール10の内部空間は、レール縦壁16によって、アッパーレール40が走行する第1内部空間S1と、ワイヤーハーネス20がロアレールに沿って配索される第2内部空間S2とに隔てられている。
【0044】
この構成によれば、ロアレール10の一部が、ワイヤーハーネス20を配索するためのレールとして機能している。このため、ロアレール10の他に、ワイヤーハーネス20を配索するためのレールを車両床面2に別途設ける必要がない。その結果、フロアの見栄えの悪化を抑制し、加えて装置重量の増加及びコストアップを抑制することができる。
【0045】
また、本実施形態において、レール頂壁14の開口部15は、レール縦壁16よりも第1内部空間S1側にオフセットした位置に設けられている。
【0046】
ロアレール10は車両床面2に設けられている。そのため、傘の先端又は靴のヒールなどの先鋭な部材が、開口部15を介してロアレール10の内部へと進入することがある。また、ロアレール10は押し出し成形により形成されているため、成形上の制約から、レール頂壁14の縁部に下方へと延出する庇状の部位を形成するなどといった造形的な工夫が難しい。このため、開口部15の形状的な工夫により、先鋭な部材がロアレール10の内部空間へと進入することを規制することが困難となっている。先鋭な部材がロアレール10の内部空間に進入した場合には、先鋭な部材とワイヤーハーネス20との干渉が懸念される。
【0047】
しかしながら、本実施形態の構成によれば、レール頂壁14の開口部15が第1内部空間S1側にオフセットしているので、開口部15から進入した先鋭な部材は、ロアレール10の内部空間の中でも、第1内部空間S1に進入する。また、第1内部空間S1と第2内部空間S2とはレール縦壁16によって隔てられているので、仮に第1内部空間S1に先鋭な部材が進入した場合であっても、レール縦壁16によって第2内部空間S2側に進入を抑制することができる。これにより、先鋭な部材とワイヤーハーネス20との干渉を抑制することができるので、ワイヤーハーネス20を保護することができる。
【0048】
本実施形態において、ワイヤーハーネス20のシート側の端部領域は、レール縦壁16の頂部16aを乗り越えて第1内部空間S1へと導かれた状態でアッパーレール40に固定されるとともに、開口部15を介してロアレール10の外部に導かれている。
【0049】
ロアレール10には、アッパーレール40がスライドするための開口部15が設けられているため、この開口部15を介してワイヤーハーネス20をシート側へと導くことができる。また、アッパーレール40には、シートSRが固定されているため、通常、アッパーレール40はシートSRによって覆い隠されている。そのため、アッパーレール40が存在する位置でワイヤーハーネス20をロアレール10の外部へと引き出すことでで、ワイヤーハーネス20の露出をシートSRによって覆い隠すことができる。これにより、フロア上の見栄えを向上させることができる。また、ワイヤーハーネス20をアッパーレール40に固定することで、アッパーレール40の移動に連動して、ワイヤーハーネス20を前後に移動させることができる。
【0050】
本実施形態において、シートスライド装置1は、ロアレール10の前端に設けられ、ワイヤーハーネス20を収容するハーネス収容部25をさらに有している。
【0051】
この構成によれば、アッパーレール40の移動にともなって連れ回されるワイヤーハーネス20の余剰部分(遊び)をハーネス収容部25が吸収することができる。これにより、ワイヤーハーネス20の余剰部分を適切に処理することができる。ワイヤーハーネス20の余剰部分の露出を抑制することができるので、フロアの見栄えを向上させることができる。
【0052】
上記のように、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0053】
上述した実施形態では、ロアレールの第2内部空間に、ワイヤーハーネスを配索している。しかしながら、第2内部空間に配索される対象は、ワイヤーハーネスに限らない。空調装置から供給されるエアを導くダクトなどであってよい。すなわち、車両床面からシートまで配索される種々の配索部材を広く含むことができる。
【0054】
上述した実施形態では、1つのシートに対応する1対のロアレールのうち、外側に位置するレールに対してレール縦壁及び第2内部空間を設定した。しかしながら、1対のロアレールの両方に、レール縦壁及び第2内部空間を設定してもよい。
【0055】
上述した実施形態では、2列目用シートを対象として、シートスライド装置を説明した。しかしながら、シートスライド装置の適用は、2列目用シート以外のシートであってもよい。また、一人乗り用のシートに限らず、複数人乗り用のシートであってもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 シートスライド装置
2 車両床面
10、50 ロアレール
11 レール底壁
12、13 レール側壁
14 レール頂壁
15、55 開口部
16 レール縦壁
20 ワイヤーハーネス(配索部材)
21 被覆電線
22 外装部材
30 ガイド部材
31 シート側ハーネス
40 アッパーレール
41 基部
42 シート支持壁