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特許7545218水処理システム、制御装置、水処理方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】水処理システム、制御装置、水処理方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   B01D 21/30 20060101AFI20240828BHJP
   C02F 1/52 20230101ALI20240828BHJP
   G01N 21/85 20060101ALI20240828BHJP
【FI】
B01D21/30 A
C02F1/52 Z
G01N21/85 B
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020046476
(22)【出願日】2020-03-17
(65)【公開番号】P2021146240
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-11-10
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(74)【復代理人】
【識別番号】100187230
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 晶司
(72)【発明者】
【氏名】福水 圭一郎
【審査官】石岡 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-238442(JP,A)
【文献】特開2016-191679(JP,A)
【文献】特開2017-121601(JP,A)
【文献】特開2019-209271(JP,A)
【文献】特開2020-025943(JP,A)
【文献】特開平07-009000(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D21/00-21/34
C02F1/52-1/56
G01N21/00-21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水が流入する槽と、
凝集剤が注入された、前記槽に貯留された水の画像を撮像する撮像装置と、
前記撮像装置が撮像した画像について濃淡処理を施し、前記濃淡処理を施した画像について微分処理を施し、前記微分処理を行った結果から算出される特徴量に基づいて、前記水の中の凝集物の状態を判定する制御装置とを有し、
前記槽は、反応槽と凝集槽との少なくとも一方であり、
前記撮像装置は、前記反応槽と前記凝集槽との少なくとも一方の接液しない上方に設置されており、
前記制御装置は、前記微分処理を行った結果から、エッジピクセル数に濃淡の変化率の大きさに応じた係数を乗じた数値を前記特徴量として算出する水処理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の水処理システムにおいて、
前記制御装置は、前記濃淡処理として、前記撮像装置が撮像した画像の濃淡を3段階以上の階調に数値化する処理を行う水処理システム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の水処理システムにおいて、
被処理水に前記凝集剤を注入する添加装置を有し、
前記制御装置は、前記特徴量に基づいて、前記凝集剤の注入を制御するための制御信号を生成し、前記生成した制御信号を前記添加装置へ送信し、
前記添加装置は、前記制御装置から送信されてきた制御信号に基づいて、前記凝集剤の注入を制御する水処理システム。
【請求項4】
請求項3に記載の水処理システムにおいて、
前記制御装置は、前記特徴量とあらかじめ設定された閾値とを比較し、該比較の結果に基づいて前記制御信号を生成する水処理システム。
【請求項5】
請求項1に記載の水処理システムにおいて、
前記撮像装置は、赤外線センサである水処理システム。
【請求項6】
反応槽と凝集槽との少なくとも一方である槽の接液しない上方に設置された撮像装置が撮像した、前記槽に貯留された水の画像について濃淡処理を施す濃淡処理部と、
前記濃淡処理部が濃淡処理を施した画像について微分処理を施す微分処理部と、
前記微分処理部が微分処理を行った結果に基づいて特徴量を算出し、該算出した特徴量に基づいて、前記水の中の凝集物の状態を判定する判定部とを有し、
前記判定部は、前記微分処理を行った結果から、エッジピクセル数に濃淡の変化率の大きさに応じた係数を乗じた数値を前記特徴量として算出する制御装置。
【請求項7】
請求項6に記載の制御装置において、
前記濃淡処理部は、前記濃淡処理として、前記撮像装置が撮像した画像の濃淡を3段階以上の階調に数値化する処理を行う制御装置。
【請求項8】
請求項6または請求項7に記載の制御装置において、
前記判定部が算出した特徴量に基づいて、前記槽に貯留された水への凝集剤の注入を制御するための制御信号を生成する制御信号生成部と、
前記制御信号生成部が生成した制御信号を、被処理水に前記凝集剤を注入する添加装置へ送信する送信部とを有する制御装置。
【請求項9】
凝集剤が注入された、被処理水が流入する反応槽と凝集槽との少なくとも一方である槽に貯留された水の画像を該槽の接液しない上方から撮像する処理と、
前記撮像した画像について濃淡処理を施す処理と、
前記濃淡処理を施した画像について微分処理を施す処理と、
前記微分処理を行った結果に基づいて、エッジピクセル数に濃淡の変化率の大きさに応じた係数を乗じた数値を特徴量として算出する処理と、
前記算出した特徴量に基づいて、前記水の中の凝集物の状態を判定する処理とを行う水処理方法。
【請求項10】
請求項9に記載の水処理方法において、
前記濃淡処理は、前記撮像した画像の濃淡を3段階以上の階調に数値化する処理である水処理方法。
【請求項11】
請求項9または請求項10に記載の水処理方法において、
前記算出した特徴量に基づいて、前記凝集剤の注入を制御するための制御信号を生成する処理と、
前記生成した制御信号を、被処理水に前記凝集剤を注入する添加装置へ送信する処理とを行う水処理方法。
【請求項12】
コンピュータに、
反応槽と凝集槽との少なくとも一方である槽の接液しない上方に設置された撮像装置が撮像した、前記槽に貯留された水の画像について濃淡処理を施す手順と、
前記濃淡処理を施した画像について微分処理を施す手順と、
前記微分処理を行った結果に基づいて、エッジピクセル数に濃淡の変化率の大きさに応じた係数を乗じた数値を特徴量として算出する手順と、
前記算出した特徴量に基づいて、前記水の中の凝集物の状態を判定する手順とを実行させるためのプログラム。
【請求項13】
請求項12に記載のプログラムにおいて、
前記濃淡処理は、前記撮像した画像の濃淡を3段階以上の階調に数値化する処理であるプログラム。
【請求項14】
請求項12または請求項13に記載のプログラムにおいて、
前記算出した特徴量に基づいて、前記槽に貯留された水への凝集剤の注入を制御するための制御信号を生成する手順と、
前記生成した制御信号を、被処理水に前記凝集剤を注入する添加装置へ送信する手順とを実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理システム、制御装置、水処理方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
浄水場や下水処理場、その他の排水処理設備においては、被処理水に凝集剤を添加し、被処理水中の懸濁物質(SS)を凝集させてフロックを形成させ、フロックを沈殿分離や浮上分離等で分離する処理が行われている。その際、例えば、被処理水である原水に凝集剤を注入して攪拌し、攪拌された水に光を照射して得た光学的測定値に基づいて、凝集剤の注入量を決定する技術が考えられている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-121601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたような技術においては、光学的測定値として透過光強度を用いて原水の状態を判定するため、光源や槽の壁面の汚れによって、槽内の水の状態を正確に判定することができないという問題点がある。
【0005】
本発明の目的は、槽内の水の状態をより正確に判定することができる水処理システム、制御装置、水処理方法およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、被処理水が流入する槽と、
凝集剤が注入された、前記槽に貯留された水の画像を撮像する撮像装置と、
前記撮像装置が撮像した画像について濃淡処理を施し、前記濃淡処理を施した画像について微分処理を施し、前記微分処理を行った結果から算出される特徴量に基づいて、前記水の中の凝集物の状態を判定する制御装置とを有する水処理システムである。
【0007】
前記制御装置は、前記濃淡処理として、前記撮像装置が撮像した画像の濃淡を3段階以上の階調に数値化する処理を行うことが好ましい。
【0008】
被処理水に前記凝集剤を注入する添加装置を有し、
前記制御装置は、前記特徴量に基づいて、前記凝集剤の注入を制御するための制御信号を生成し、前記生成した制御信号を前記添加装置へ送信し、
前記添加装置は、前記制御装置から送信されてきた制御信号に基づいて、前記凝集剤の注入を制御することが好ましい。
【0009】
前記制御装置は、前記特徴量とあらかじめ設定された閾値とを比較し、該比較の結果に基づいて前記制御信号を生成することが好ましい。
【0010】
前記制御装置は、前記微分処理を行った結果から、エッジピクセル数または該エッジピクセル数に基づき得られる数値を前記特徴量として算出することが好ましい。
【0011】
前記撮像装置は、赤外線センサであることが好ましい。
【0012】
また、本発明は、撮像装置が撮像した、槽に貯留された水の画像について濃淡処理を施す濃淡処理部と、
前記濃淡処理部が濃淡処理を施した画像について微分処理を施す微分処理部と、
前記微分処理部が微分処理を行った結果に基づいて特徴量を算出し、該算出した特徴量に基づいて、前記水の中の凝集物の状態を判定する判定部とを有する制御装置である。
【0013】
前記濃淡処理部は、前記濃淡処理として、前記撮像装置が撮像した画像の濃淡を3段階以上の階調に数値化する処理を行うことが好ましい。
【0014】
前記判定部が算出した特徴量に基づいて、前記槽に貯留された水への凝集剤の注入を制御するための制御信号を生成する制御信号生成部と、
前記制御信号生成部が生成した制御信号を、被処理水に前記凝集剤を注入する添加装置へ送信する送信部とを有することが好ましい。
【0015】
また、本発明は、凝集剤が注入された、被処理水が流入する槽に貯留された水の画像を撮像する処理と、
前記撮像した画像について濃淡処理を施す処理と、
前記濃淡処理を施した画像について微分処理を施す処理と、
前記微分処理を行った結果に基づいて、特徴量を算出する処理と、
前記算出した特徴量に基づいて、前記水の中の凝集物の状態を判定する処理とを行う水処理方法である。
【0016】
前記濃淡処理は、前記撮像した画像の濃淡を3段階以上の階調に数値化する処理であることが好ましい。
【0017】
前記算出した特徴量に基づいて、前記凝集剤の注入を制御するための制御信号を生成する処理と、
前記生成した制御信号を、被処理水に前記凝集剤を注入する添加装置へ送信する処理とを行うことが好ましい。
【0018】
また、本発明は、コンピュータに、
撮像装置が撮像した、槽に貯留された水の画像について濃淡処理を施す手順と、
前記濃淡処理を施した画像について微分処理を施す手順と、
前記微分処理を行った結果に基づいて、特徴量を算出する手順と、
前記算出した特徴量に基づいて、前記水の中の凝集物の状態を判定する手順とを実行させるためのプログラムである。
【0019】
前記濃淡処理は、前記撮像した画像の濃淡を3段階以上の階調に数値化する処理であることが好ましい。
【0020】
前記算出した特徴量に基づいて、前記槽に貯留された水への凝集剤の注入を制御するための制御信号を生成する手順と、
前記生成した制御信号を、被処理水に前記凝集剤を注入する添加装置へ送信する手順とを実行させることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明においては、槽内の水の状態をより正確に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の水処理システムの第1の実施の形態を示す図である。
図2図1に示した制御装置200の内部構成の一例を示す図である。
図3図1に示した水処理システムにおける水処理方法の一例を説明するためのフローチャートである。
図4】本発明の水処理システムの第2の実施の形態を示す図である。
図5図4に示した制御装置の内部構成の一例を示す図である。
図6】濃淡処理および微分処理の一例を説明するための図である。
図7】二値化処理および微分処理の一例を説明するための図である。
図8図4に示した水処理システムにおける水処理方法の一例を説明するためのフローチャートである。
図9】本発明の水処理システムの第1の適用例を示すフロー図である。
図10】本発明の水処理システムの第2の適用例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
【0024】
図1は、本発明の水処理システムの第1の実施の形態を示す図である。本形態における水処理システムは図1に示すように、槽100と、制御装置200と、撮像装置300とを有する。
【0025】
槽100は、原水である被処理水が流入し、流入された被処理水を貯留する貯留槽である。被処理水は、懸濁物質や不溶化しようとする物質を含む水であれば特に限定しない。槽100に貯留された水には、凝集剤が注入される。また、槽100に、貯留された水を攪拌する攪拌機構が設けられていても良い。撮像装置300は、凝集剤が注入された、槽100に貯留された水中の画像を撮像する。撮像装置300は、例えば、カメラや画像センサ等である。画像センサを用いる場合、カラーセンサや、モノクロセンサ、赤外線センサであっても良いが、制御装置200が後述する濃淡処理を行うことから赤外線センサを用いることが好ましい。また、水面の光の乱反射により撮像が阻害される場合、撮像装置300と槽100との間に偏光フィルターを設置することが望ましい。偏光フィルターは、例えば、撮像装置300のレンズに取り付けるタイプのものであっても良い。制御装置200は、撮像装置300が撮像した画像に基づいて、凝集物の状態を判定する。
【0026】
図2は、図1に示した制御装置200の内部構成の一例を示す図である。図1に示した制御装置200は図2に示すように、濃淡処理部210と、微分処理部220と、判定部230とを有する。なお、図2には、図1に示した制御装置200が有する構成要素のうち、本形態に関わる主要な構成要素のみを示した。
【0027】
濃淡処理部210は、撮像装置300が撮像した画像について濃淡処理を施す。この濃淡処理は、投影処理ともいい、画像の濃淡(明暗)を、3段階以上の階調、例えば256段階の階調(0~255階調)に数値化する処理である。微分処理部220は、濃淡処理部210が濃淡処理を施した結果について微分処理を行う。具体的には、微分処理部220は、濃淡処理部210が濃淡処理を行った結果である数値データを微分処理することにより、その数値データ(階調)の変化の割合を算出する。判定部230は、微分処理部220が微分処理を行った結果に基づいて特徴量を算出する。判定部230は、算出した特徴量に基づいて、凝集物の状態を判定する。
【0028】
以下に、図1に示した水処理システムにおける水処理方法について説明する。図3は、図1に示した水処理システムにおける水処理方法の一例を説明するためのフローチャートである。槽100には原水である被処理水が貯留されており、その槽100に凝集剤が注入されている状態である。
【0029】
まず、撮像装置300が、槽100内の画像を撮像し、撮像した画像を制御装置200が取り込む(ステップS1)。すると、濃淡処理部210が、制御装置200内に取り込んだ画像について濃淡処理を施す(ステップS2)。続いて、微分処理部220が、濃淡処理部210が濃淡処理を行った結果である数値データを微分する(ステップS3)。すると、微分処理部220が、微分処理部220が微分処理を行った結果に基づいて特徴量を算出する(ステップS4)。なお、ステップS4の処理は、微分処理部220ではなく判定部230が行っても良い。そして、判定部230は、算出した特徴量に基づいて、凝集物の状態を判定する(ステップS5)。
【0030】
このように、制御装置200は、撮像装置300が撮像した槽100内の画像について、濃淡処理および微分処理を行い、その処理の結果から得られた特徴量に基づいて、槽100内の凝集物の状態を判定する。そのため、槽100内の水の状態をより正確に判定することができる。
(第2の実施の形態)
【0031】
図4は、本発明の水処理システムの第2の実施の形態を示す図である。本形態における水処理システムは図4に示すように、槽100と、制御装置201と、撮像装置300と、添加装置401とを有する。槽100および撮像装置300それぞれは、第1の実施の形態におけるものと同じものである。
【0032】
制御装置201は、第1の実施の形態における制御装置200が具備する機能に加え、凝集物の状態を判定した結果に基づいて、槽100へ凝集剤411の注入を制御するための制御信号を添加装置401へ送信する。添加装置401は、槽100に貯留された水に凝集剤411を注入する。このとき、添加装置401は、制御装置201から送信されてくる制御信号に従って、凝集剤411の注入(注入量)を制御する。添加装置401による凝集剤411の注入は、槽100に流入する前の被処理水への注入であっても良い。
【0033】
図5は、図4に示した制御装置201の内部構成の一例を示す図である。図4に示した制御装置201は図5に示すように、濃淡処理部210と、微分処理部220と、判定部230と、制御信号生成部241と、送信部251とを有する。なお、図5には、図4に示した制御装置201が有する構成要素のうち、本形態に関わる主要な構成要素のみを示した。濃淡処理部210、微分処理部220および判定部230それぞれは、第1の実施の形態におけるものと同じものである。まずは、濃淡処理部210、微分処理部220および判定部230それぞれの処理の詳細について説明する。
【0034】
図6は、濃淡処理および微分処理の一例を説明するための図である。図6(a)は、撮像装置300が撮像した画像の一例を示す。図6(a)に示した画像には、2つの凝集物がそれらの一部が互いに重なり合って存在している。濃淡処理部210は、この画像の濃淡(明度)を判定し、それを数値化(濃淡処理)する。図6(b)は、図6(a)に示した画像のA-A’における濃淡(明度)を数値化したものをグラフに示した図である。図6(b)に示すように、図6(a)に示した画像のA-A’における各濃淡(各明度)のそれぞれが、それぞれに応じた数値となり、グラフに示される。微分処理部220は、図6(b)に示すように濃淡処理により算出された数値をもとに微分処理することで、濃淡(明度)の変化率(絶対値)を算出する。つまり、微分処理部220は、グラフで示された濃淡(明度)の数値データの変化点(エッジ)を検出する。図6(c)は、濃淡処理部210が濃淡処理を行った結果について微分処理部220が微分処理を行った結果を示すグラフである。図6(c)に示すように、濃淡(明度)の数値データの変化点および変化率が検出されている。図6(c)のおけるシグナルは、濃淡(明度)の変化率(絶対値)を示す。エッジとなり得る濃淡変化が大きな箇所は微分値が大きくなる。判定部230は、微分処理の結果得られたエッジのピクセル数を特徴量として算出するものであっても良いし、所定の変化率以上であるエッジのピクセル数を特徴量として算出するものであっても良い。このような処理によって、エッジピクセル数を特徴量として凝集物の状態を判定することができる。また、判定部230は、微分処理の結果得られたエッジのピクセル数(濃淡の変化点の数)に、その変化率の大きさに応じた係数を乗じて特徴量を算出するものであっても良い。
【0035】
図7は、二値化処理および微分処理の一例を説明するための図である。図7(a)は、撮像装置300が撮像した画像の一例を示す。図7(a)に示した画像には、2つの凝集物がそれらの一部が互いに重なり合って存在している。図7(b)は、図7(a)に示した画像のA-A’における濃淡(明度)を上述した濃淡処理ではなく二値化処理したものをグラフに示した図である。図7(b)に示すように、図7(a)に示した画像のA-A’における各濃淡(各明度)のそれぞれが、所定の閾値との大小関係に基づいて二値化、すなわち、白色か黒色かの2段階の階調に数値化されて、グラフに示される。図7(c)は、図7(b)に示したグラフのデータについて微分処理を行った結果を示すグラフである。二値化の処理を行うと、図7(c)に示したような濃淡(明度)の変化点の一部が表現されないものとなってしまう。水中の凝集物を撮像する場合、複数の凝集物が深さ方向に互いに重なることが多く、二値化処理を用いた場合は、水中の凝集物の状態を正確に把握することができない。
【0036】
制御信号生成部241は、判定部230が算出した特徴量に基づいて、添加装置401が槽100への凝集剤411の注入を制御するための制御信号を生成する。制御信号生成部241は、特徴量とあらかじめ設定された閾値とを比較し、比較の結果に基づいて制御信号を生成する。制御信号生成部241は、添加装置401が槽100へ注入する凝集剤411の量を増やすか、減らすか、維持するかを示す情報が含まれる制御信号を生成する。または、制御信号生成部241は、電流値や電圧値、または注入する凝集剤の量を示す制御信号を生成する。制御信号が電流値や電圧値を示すものである場合、制御信号が示す電流値や電圧値は、添加装置401を駆動させるための電流値や電圧値である。制御信号生成部241は、注入すべき量の凝集剤を添加装置401が注入するために必要な電流値や電圧値を制御信号に含める。つまり、添加装置401が、送信されてきた制御信号に含まれる電流値や電圧値で駆動することで、必要な量の凝集剤を注入することができる。特徴量と閾値との比較の結果と、どのような制御信号を作成するかを示す情報とは、あらかじめ対応付けて設定されているものである。制御信号生成部241は、この対応付けを参照して制御信号を作成する。制御信号の信号形態については特に規定しない。例えば、特徴量が閾値を超えている場合、制御信号生成部241は、添加装置401が注入する凝集剤の量を減らすような電流値や電圧値を示す制御信号を生成する。また、特徴量が閾値未満である場合、制御信号生成部241は、添加装置401が注入する凝集剤の量を増やすような電流値や電圧値を示す制御信号を生成する。また、特徴量が閾値と同じ値である場合、制御信号生成部241は、添加装置401が注入する凝集剤の量を維持するような電流値や電圧値を示す制御信号を生成する。
【0037】
なお、制御信号生成部241は、特徴量と複数の閾値とを比較しても良い。この場合、例えば、制御信号生成部241は、特徴量とAおよびAよりも大きな値であるBの2つの閾値とを比較し、特徴量がA未満である場合、特徴量がA以上B未満の値である場合、および特徴量がB以上である場合のそれぞれで、複数の種類の凝集剤の注入量を制御するような制御信号を生成するものであっても良い。
【0038】
送信部251は、制御信号生成部241が生成した制御信号を添加装置401へ送信する。この送信は、無線を用いるものであっても良いし、有線を用いるものであっても良い。また、制御装置201と添加装置401との間の接続形態は、互いに通信が可能な接続形態であれば良く、これらが互いに直接接続されているものであっても良いし、通信ネットワークを介して接続されているものであっても良い。なお、送信部251は、制御信号生成部241が生成した信号が示す電流値の電流を添加装置401へ流すものであっても良いし、制御信号生成部241が生成した信号が示す電圧値の電圧を添加装置401に印加するものであっても良い。
【0039】
以下に、図4に示した水処理システムにおける水処理方法について説明する。図8は、図4に示した水処理システムにおける水処理方法の一例を説明するためのフローチャートである。槽100には原水である被処理水が貯留されており、その槽100に凝集剤が注入されている状態である。
【0040】
まず、撮像装置300が、槽100内の画像を撮像し、撮像した画像を制御装置201が取り込む(ステップS11)。すると、濃淡処理部210が、制御装置201内に取り込んだ画像について濃淡処理を施す(ステップS12)。続いて、微分処理部220が、濃淡処理部210が濃淡処理を行った結果である数値データを微分する(ステップS13)。すると、判定部230が、微分処理部220が微分処理を行った結果に基づいて、そのエッジピクセル数を特徴量として算出する(ステップS14)。続いて、制御信号生成部241は、算出した特徴量とあらかじめ設定されている閾値とを比較する(ステップS15)。ここでは、制御信号生成部241が、算出した特徴量とあらかじめ設定されている1つの閾値とを比較する場合を例に挙げて説明する。
【0041】
算出した特徴量が閾値未満である場合、制御信号生成部241は、添加装置401が注入する凝集剤の量を増やすように指示する制御信号を生成する(ステップS16)。例えば、制御信号生成部241は、添加装置401が注入する凝集剤の量を増やすような電流値や電圧値を示す制御信号を生成する。そして、制御信号生成部241が生成した制御信号を送信部251が添加装置401へ送信する。
【0042】
また、算出した特徴量と閾値とが互いに同じ値である場合、制御信号生成部241は、添加装置401が注入する凝集剤の量を維持するように指示する制御信号を生成する(ステップS17)。例えば、制御信号生成部241は、添加装置401が注入する凝集剤の量を維持するような電流値や電圧値を示す制御信号を生成する。そして、制御信号生成部241が生成した制御信号を送信部251が添加装置401へ送信する。
【0043】
また、算出した特徴量が閾値を超える値である場合、制御信号生成部241は、添加装置401が注入する凝集剤の量を減らすように指示する制御信号を生成する(ステップS18)。例えば、制御信号生成部241は、添加装置401が注入する凝集剤の量を減らすような電流値や電圧値を示す制御信号を生成する。そして、制御信号生成部241が生成した制御信号を送信部251が添加装置401へ送信する。
【0044】
その後、制御装置201は、規定時間が経過したかどうかを判定する(ステップS19)。規定時間が経過したと判定された場合、ステップS11の処理が行われる。つまり、規定時間を周期として、ステップS11~S19の処理が行われる。規定時間が経過したかどうかは、例えば、制御装置201に規定時間を計測するタイマを設けておき、そのタイマがタイムアウトした場合に規定時間が経過したと判定するものであっても良い。
【0045】
なお、制御装置201は、特徴量と閾値との比較に基づいて、槽100に設けられた攪拌機構の動作(例えば、回転数当)を制御するものであっても良い。
【0046】
このように、制御装置201は、撮像装置300が撮像した槽100内の画像について、濃淡処理を行うことで画像の濃淡を数値化し、数値化したデータについて微分処理を行い、微分処理の結果、数値化したデータの変化点であるエッジピクセル数を特徴量として算出し、算出した特徴量とあらかじめ設定された閾値との比較の結果に基づいて、添加装置401が槽100へ注入する凝集剤の量を制御する制御信号を生成して添加装置401へ送信する。そのため、槽100の凝集状態を容易に監視でき、かつ凝集状態に応じて凝集剤の注入量を適切に制御することができる。
(適用例1)
【0047】
図9は、本発明の水処理システムの第1の適用例を示すフロー図である。図9に示す水処理システムは、上述した形態における槽100に相当する反応槽101および凝集槽102と、沈殿槽103と、制御装置201と、撮像装置300と、複数の凝集剤それぞれを注入する添加装置401とを有する。反応槽101は、原水である被処理水が供給されて被処理水に対して添加装置401を用いて無機凝集剤411-1およびpH調整剤411-2が注入される槽である。凝集槽102は、反応槽101の出口に対して流路を介して接続された槽である。凝集槽102は、反応槽101から供給される被処理水に対して添加装置401を用いてポリマーが注入される槽であり、カチオンポリマー411-3とアニオンポリマー411-4との少なくとも一方が注入される槽である。また、凝集槽102にカチオンポリマー411-3を注入する場合、凝集槽102から沈殿槽103を接続する流路に、アニオンポリマー411-4を注入してもよい。沈殿槽103は、凝集槽102の出口に対して流路を介して接続された槽である。沈殿槽103は、凝集物と清澄水とを分離する固液分離手段に相当する。反応槽101、凝集槽102および沈殿槽103それぞれは、撹拌機構を備えているものであっても良い。制御装置201、撮像装置300および添加装置401それぞれは、第2の実施の形態におけるものと同じものである。
【0048】
図9に示した水処理システムでは、被処理水に無機凝集剤411-1を注入することにより反応槽101において浮遊懸濁物から微小なフロックが形成される。この微小なフロックは、凝集槽102においてカチオンポリマー411-3とアニオンポリマー411-4との少なくとも一方が注入されることにより粗大化する。粗大化したフロックは沈殿槽103において凝集物として沈殿する。その結果、浮遊懸濁物を含む被処理水は、凝集物と、清澄水である上澄み水とに固液分離される。沈殿槽103の底部に堆積した凝集物は汚泥として排出され、沈殿槽103における上澄み水は処理水として排出される。
【0049】
また、図9に示した水処理システムでは、凝集状態を監視して凝集剤、特に無機凝集剤411-1の注入量を制御するために、制御装置201と撮像装置300と添加装置401とが設けられている。撮像装置300は、反応槽101の上方に、反応槽101内の水を撮像できるように設置されている。撮像装置300が撮像した画像は制御装置201によって処理される。制御装置201が行う具体的な処理は、第2の実施の形態で説明した通りである。添加装置401それぞれは、制御装置201から送信されてきた制御信号に従って、凝集剤の注入量を制御する。
(適用例2)
【0050】
図10は、本発明の水処理システムの第2の適用例を示すフロー図である。図10に示す水処理システムと、図9に示した水処理システムとの違いは、撮像装置300の設置位置である。図9に示した水処理システムでは、撮像装置300は、反応槽101の上方に、反応槽101内の水を撮像できるように設置されていたが、図10に示した水処理システムでは、撮像装置300は、凝集槽102の上方に、凝集槽102内の水を撮像できるように設置されている。
【0051】
上述した形態においては、凝集沈澱について説明したが、凝集を含む固液分離を行うシステムであれば良い。例えば、凝集加圧浮上、凝集ろ過等へ本発明を適応することもできる。また、添加装置401が反応槽101に添加する無機凝集剤411-1は、アルミニウム系(PAC、硫酸バンド等)、鉄系(ポリ鉄、塩化第二鉄)に限定しない。また、ポリマーは、カチオンでもアニオンでも良い。撮像装置300が画像センサである場合、上述した形態のように反応槽101内を撮像する位置に設置されるものであっても良いし、凝集槽102内を撮像する位置に設置されていても良いが、槽内のタイムラグを考慮すると、反応槽101内を撮像する位置に設置することが望ましい。また、撮像装置300が画像センサである場合、撮像装置300は、フロック(凝集物)の凝集状態を判定できるものであれば良いが、画像処理を行う装置を含め、フロックのエッジ数を検出できるものが望ましい。
【0052】
以上、各構成要素に各機能(処理)それぞれを分担させて説明したが、この割り当ては上述したものに限定しない。また、構成要素の構成についても、上述した形態はあくまでも例であって、これに限定しない。また、各実施の形態を組み合わせたものであっても良い。
【0053】
上述した制御装置200,201が行う処理は、目的に応じてそれぞれ作製された論理回路で行うようにしても良い。また、処理内容を手順として記述したコンピュータプログラム(以下、プログラムと称する)を制御装置200,201にて読取可能な記録媒体に記録し、この記録媒体に記録されたプログラムを制御装置200,201に読み込ませ、実行するものであっても良い。制御装置200,201にて読取可能な記録媒体とは、フロッピー(登録商標)ディスク、光磁気ディスク、DVD(Digital Versatile Disc)、CD(Compact Disc)、Blu-ray(登録商標) Disc、USB(Universal Serial Bus)メモリなどの移設可能な記録媒体の他、制御装置200,201に内蔵されたROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等のメモリやHDD(Hard Disc Drive)等を指す。この記録媒体に記録されたプログラムは、制御装置200,201に設けられたCPUにて読み込まれ、CPUの制御によって、上述したものと同様の処理が行われる。ここで、CPUは、プログラムが記録された記録媒体から読み込まれたプログラムを実行するコンピュータとして動作するものである。
【符号の説明】
【0054】
100 槽
101 反応槽
102 凝集槽
103 沈殿槽
200,201 制御装置
210 濃淡処理部
220 微分処理部
230 判定部
241 制御信号生成部
251 送信部
300 撮像装置
401 添加装置
411 凝集剤
411-1 無機凝集剤
411-2 pH調整剤
411-3 カチオンポリマー
411-4 アニオンポリマー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10