(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】動力伝達装置及び動力伝達方法
(51)【国際特許分類】
F16H 61/14 20060101AFI20240828BHJP
【FI】
F16H61/14 601Z
(21)【出願番号】P 2020053170
(22)【出願日】2020-03-24
【審査請求日】2023-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】米田 拓郎
(72)【発明者】
【氏名】山内 哲也
(72)【発明者】
【氏名】鳥巣 弘徳
【審査官】西藤 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-203535(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 61/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力源と走行装置との間に配置される動力伝達装置であって、
トルクコンバータとロックアップクラッチとを有し、前記動力源からの動力を前記走行装置に伝達するトルクコンバータ装置と、
前記動力源によって駆動される第1油圧ポンプと、
前記動力源によって駆動される第2油圧ポンプと、
前記第1油圧ポンプからの作動油を前記トルクコンバータに供給するための第1油路と、
前記トルクコンバータから作動油を排出するための第2油路と、
前記第1油路及び前記第2油路に連通する第3油路と、
前記第2油圧ポンプからの作動油を油圧機器に供給するための第4油路と、
前記第4油路及びオリフィスに連通する第5油路と、
前記第5油路及びオンオフ弁に連通する第6油路と、
前記第6油路及び前記圧力制御弁に連通する第7油路と、
前記第2油路又は前記第3油路に配置される圧力制御弁と、
前記圧力制御弁を開閉させるコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、前記ロックアップクラッチが係合状態である場合、
前記オンオフ弁をオン状態にすることによって、前記圧力制御弁を開状態にする、
動力伝達装置。
【請求項2】
前記油圧機器は、トランスミッションである、
請求項
1に記載の力伝達装置。
【請求項3】
請求項1に記載の動力伝達装置を用いた、動力源と走行装置との間における動力伝達方法であって、
前記トルクコンバータ装置において、前記ロックアップクラッチを係合させる工程と、
前記オンオフ弁をオン状態にすることによって、前記第2油路又は前記第3油路に配置される
前記圧力制御弁を開状態にする工程と、
を備える動力伝達方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力伝達装置及び動力伝達方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トルクコンバータとロックアップクラッチとを有するトルクコンバータ装置を備える作業車両(例えば、ホイールローダなど)が知られている。トルクコンバータ装置において、エンジンからの動力は、ロックアップクラッチが開放状態であればトルクコンバータを介して走行装置に伝達され、ロックアップクラッチが係合状態であればロックアップクラッチを介して走行装置に伝達される(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開WO2011-099568号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1においては、ロックアップクラッチが係合状態である間もトルクコンバータの内圧を上昇させている。この場合、油圧ポンプの吐出圧を高く維持し続ける必要があるため、油圧ポンプにおけるロス馬力が増大してしまう。
【0005】
本開示の目的は、油圧ポンプにおけるロス馬力を抑制可能な動力伝達装置及び動力伝達方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る動力伝達装置は、動力源と走行装置との間に配置される動力伝達装置であって、トルクコンバータ装置と、第1油圧ポンプと、第1油路と、第2油路と、第3油路と、圧力制御弁と、コントローラとを備える。トルクコンバータ装置は、トルクコンバータとロックアップクラッチとを有し、動力源からの動力を走行装置に伝達する。第1油圧ポンプは、動力源によって駆動される。第1油路は、第1油圧ポンプからの作動油をトルクコンバータに供給する。第2油路は、トルクコンバータから作動油を排出する。第3油路は、第1油路及び第2油路に連通する。圧力制御弁は、第2油路又は第3油路に配置される。コントローラは、圧力制御弁を開閉させる。コントローラは、ロックアップクラッチが係合状態である場合、圧力制御弁を開状態にする。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、油圧ポンプにおけるロス馬力を抑制可能な動力伝達装置及び動力伝達方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る作業車両を示す側面図である。
【
図2】第1実施形態に係る動力伝達システムの油圧回路図である。
【
図3】第1実施形態に係る動力伝達方法を説明するためのフローチャートである。
【
図4】第2実施形態に係る動力伝達システムの油圧回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示に係る動力伝達装置の実施形態について、図面を参照しながら説明する。本開示に係る動力伝達装置は、作業車両に搭載される。作業車両としては、例えば、ホイールローダ、ダンプトラック、ブルドーザ、フォークリフトなどが挙げられるが、これらには限定されない。
【0010】
1.第1実施形態
図1は、第1実施形態に係る作業車両1を示す側面図である。
図2は、第1実施形態に係る動力伝達装置2の構成を模式的に示す構成図である。
【0011】
本実施形態に係る作業車両1は、ホイールローダである。作業車両1は、動力伝達装置2、動力源3及び走行装置4を備える。動力伝達装置2は、動力源3と走行装置4との間に配置される。動力源3は、たとえばエンジンである。
【0012】
作業車両1には、
図2に示される動力伝達装置2が搭載される。
【0013】
(動力伝達装置2の構成)
動力伝達装置2は、トランスミッション10、トルクコンバータ装置20、油圧回路及びコントローラ40を有する。
【0014】
トランスミッション10は、トルクコンバータ装置20と走行装置4との間に配置される。トランスミッション10は、トルクコンバータ装置20に連結されており、トルクコンバータ装置20を介して伝達される動力源3からの動力を走行装置4に伝達させる。本実施形態において、トランスミッション10は、油圧機器の一例である。
【0015】
トルクコンバータ装置20は、動力源3とトランスミッション10との間に配置される。トルクコンバータ装置20は、動力源3の出力軸とトランスミッション10の入力軸とに連結される。
【0016】
トルクコンバータ装置20は、トルクコンバータ21と、ロックアップクラッチ22とを有する。トルクコンバータ21は、インペラ、タービン及びステータを含む。ロックアップクラッチ22は、油圧作動式のクラッチであり、係合状態と開放状態とに切換可能である。ロックアップクラッチ22のクラッチ油圧は、ロックアップクラッチ制御弁23によって調整される。ロックアップクラッチ制御弁23は、コントローラ40によって制御される。
【0017】
ロックアップクラッチ22が開放状態である場合、トルクコンバータ21は、オイルを媒体として動力源3からの動力をトランスミッション10に伝達する。ロックアップクラッチ27が係合状態である場合、ロックアップクラッチ27は、トルクコンバータ21のインペラとタービンとを直結して動力源3からの動力をトランスミッション10に伝達する。
【0018】
油圧回路は、第1乃至第8油路L1~L8、第1油圧ポンプ31、第1圧力制御弁32、第2圧力制御弁33、第2油圧ポンプ34、オンオフ弁35、第3圧力制御弁36及びオイルパン37を有する。
【0019】
第1油路L1は、第1油圧ポンプ31とトルクコンバータ21とに連通する。第1油路L1は、第1油圧ポンプ31からの作動油をトルクコンバータ21に供給するための給油路である。
【0020】
第1油圧ポンプ31は、動力源3によって駆動される。第1油圧ポンプ31は、固定容量型ポンプである。第1油圧ポンプ31としては、例えばギヤポンプなどを用いることができる。第1油圧ポンプ31は、オイルパン37から取り込んだ作動油を吐出する。第1油圧ポンプ31から吐出された作動油は、第1油路L1を介してトルクコンバータ21に供給される。
【0021】
第2油路L2は、トルクコンバータ21とオイルパン37とに連通する。第2油路L2は、トルクコンバータ21から作動油を排出するための排油路である。トルクコンバータ21から排出された作動油は、第2油路L2を介してオイルパン37に戻される。
【0022】
第1圧力制御弁32は、第2油路L2に配置される。第1圧力制御弁32は、トルクコンバータ21の内圧が定常圧より低くなりすぎないように、トルクコンバータ21から排出される作動油の圧力を調整するレギュレータ弁である。
【0023】
第3油路L3は、第1油路L1と第2油路L2とに連通する。第3油路L3は、接続ポイントP1において第1油路L1に連結され、接続ポイントP2において第2油路L2に連結される。接続ポイントP1は第3油路L3の上流端であり、接続ポイントP2は第3油路L3の下流端である。接続ポイントP1は、第2圧力制御弁33の上流側に位置し、接続ポイントP2は、第1圧力制御弁32の下流側に位置する。
【0024】
第2圧力制御弁33は、第3油路L3に配置される。第2圧力制御弁33は、トルクコンバータ21の内圧が定常圧より高くなりすぎないように、第1油圧ポンプ31から供給される作動油の圧力を調整するリリーフ弁である。
【0025】
本実施形態において、第2圧力制御弁33は、ロックアップクラッチ22が係合状態である場合に、トルクコンバータ21の内圧を低減させるための圧力制御弁として機能する。第2圧力制御弁33は、ロックアップクラッチ22が係合状態である場合、コントローラ40によって開状態に保持される。
【0026】
第4油路L4は、第2油圧ポンプ34とトランスミッション10とに連通する。第4油路L4は、第2油圧ポンプ34からの作動油をトランスミッション10に供給するための給油路である。
【0027】
第2油圧ポンプ34は、動力源3によって駆動される。第2油圧ポンプ34は、オイルパン37から取り込んだ作動油を吐出する。第4油圧ポンプ34から吐出された作動油は、第4油路L4を介してトランスミッション10に供給される。
【0028】
第5油路L5は、第4油路L4と第6油路L6とロックアップクラッチ制御弁23とに連通する。第5油路L5は、接続ポイントP3において第4油路L4に連結される。第5油路L5は、第2油圧ポンプ34から第4油路L4に供給された作動油の一部を第6油路L6に供給する。第5油路L5は、第2油圧ポンプ34から第4油路L4に供給された作動油の一部をロックアップクラッチ制御弁23に供給する。
【0029】
第6油路L6は、第5油路L5とオンオフ弁35とに連通する。第6油路L6は、オリフィス38において第5油路L5に連結される。オリフィス38は、第6油路L6の上流側に位置する。第6油路L6は、第2油圧ポンプ34から第4油路L4を経て第5油路L5に供給された作動油の一部をオンオフ弁35に供給する。
【0030】
オンオフ弁35は、オン状態(閉状態)とオフ状態(開状態)とに切り替え可能である。オンオフ弁35の切り替えは、コントローラ40によって制御される。本実施形態において、オンオフ弁35は、コントローラ40からの制御信号によってオンオフ切り替え可能な電磁弁である。ロックアップクラッチ22が係合状態である場合、オンオフ弁35はオン状態に切り替えられて、第6油路L6の油圧は高い状態に維持される。ロックアップクラッチ22が開放状態である場合、オンオフ弁35はオフ状態に切り替えられて、第6油路L6の油圧は低い状態に維持される。
【0031】
第7油路L7は、第6油路L6と第2圧力制御弁33とに連通する。第7油路L7は、接続ポイントP4において第6油路L6に連結される。接続ポイントP4は、オンオフ弁35の上流側に位置する。ロックアップクラッチ22が係合状態である場合、オンオフ弁35がオン状態に切り替えられると、第7油路L7の油圧は高い状態に維持される。その結果、第2圧力制御弁33は開状態に保持される。ロックアップクラッチ22が開放状態である場合、オンオフ弁35がオフ状態に切り替えられると、第7油路L7の油圧は低い状態に維持される。その結果、第2圧力制御弁33は、トルクコンバータ21の内圧が定常圧になるように開閉動作する。
【0032】
第8油路L8は、第1油路L1と第4油路L4とに連通する。第8油路L8は、接続ポイントP1において第1油路L1に連結され、接続ポイントP5において第4油路L4に連結される。接続ポイントP5は、第4油路L4と第5油路L5との接続ポイントP3の上流側に位置する。第8油路L8には、第3圧力制御弁36が配置される。第3圧力制御弁36は、第4油路L4を通過する作動油の圧力を調整するレギュレータ弁である。
【0033】
コントローラ40は、動力伝達装置2全体を制御するコントローラである。コントローラ40は、ロックアップクラッチ制御弁23、オンオフ弁35等を制御する。コントローラ40は、CPUなどのプロセッサと、プログラムが格納されたメモリ(RAM及びROMなど)とを有する。メモリは、ロックアップ係合車速、ロックアップ開放車速、定数α及び定数βを記憶している。ロックアップ係合車速、ロックアップ開放車速、定数α及び定数βそれぞれの値は、所望の値に適宜設定される。
【0034】
コントローラ40は、ロックアップクラッチ22の係合条件が成立した場合、ロックアップクラッチ制御弁23にクラッチ油圧指令信号を出力して、ロックアップクラッチ22を係合させる。本実施形態では、作業車両1の車速がロックアップクラッチ係合車速を超えたことを、ロックアップクラッチ22の係合条件として用いる。コントローラ40は、ロックアップクラッチ22の開放条件が成立した場合、ロックアップクラッチ制御弁23にクラッチ油圧指令信号を出力して、ロックアップクラッチ22を開放させる。本実施形態では、作業車両1の車速がロックアップ開放車速を下回ったことを、ロックアップクラッチ22の開放条件として用いる。
【0035】
コントローラ40は、ロックアップクラッチ22の係合及び開放に応じて、第2圧力制御弁33を開閉させる。
【0036】
具体的には、コントローラ40は、作業車両1の車速がロックアップクラッチ係合車速を超えると、ロックアップクラッチ制御弁23にクラッチ油圧指令信号を出力する。ロックアップクラッチ22が係合完了し、作業車両1の車速がロックアップクラッチ係合車速に定数αを加算した値を超えると、オンオフ弁35に制御信号を出力して、オンオフ弁35をオン状態に切り替える。これにより、第7油路L7の油圧が高くなって第2圧力制御弁33が開状態に切り替えられ、第1油圧ポンプ31からトルクコンバータ21に供給される作動油の一部が、第3油路L3及び第2油路L2を順次介してオイルパン37に戻される。その結果、トルクコンバータ21の内圧は定常圧よりも低い所定圧に低減されるため、第1油圧ポンプ31のロス馬力が抑制される。なお、ロックアップクラッチ22が係合状態である場合におけるトルクコンバータ21の内圧(所定圧)は、定常圧よりも低ければよく、特に制限されないが、トルクコンバータ21の内部を作動油で潤滑可能な程度であることが好ましい。
【0037】
このように、コントローラ40は、ロックアップクラッチ22が係合状態である場合、第2圧力制御弁33を開状態にすることによって、トルクコンバータ21の内圧を低減させる。
【0038】
一方、コントローラ40は、作業車両1の車速がロックアップクラッチ開放車速に定数βを加算した値を下回ると、ロックアップクラッチ22を開放する前に、オンオフ弁35に制御信号を出力して、オンオフ弁35をオフ状態に切り替える。これにより、第7油路L7の油圧が低くなって第2圧力制御弁33が閉状態に切り替えられ、第3油路L3の油圧は第2圧力制御弁33によって調圧される。その結果、トルクコンバータ21の内圧は定常圧に復帰する。
【0039】
このように、コントローラ40は、作業車両1の車速がロックアップクラッチ開放車速に定数βを加算した値を下回ると、第2圧力制御弁33を閉状態にすることによって、トルクコンバータ21の内圧を定常圧まで上昇させる。
【0040】
(動力伝達方法)
図3は、トルクコンバータ装置20における動力伝達方法を説明するためのフローチャートである。
【0041】
ステップS1において、コントローラ40は、作業車両1の車速がロックアップクラッチ係合車速を超えているか否かを判定する。作業車両1の車速がロックアップクラッチ係合車速を超えている場合、処理はステップS2に進む。作業車両1の車速がロックアップクラッチ係合車速を超えていない場合、処理はステップS1を繰り返す。
【0042】
ステップS2において、コントローラ40は、ロックアップクラッチ制御弁23にクラッチ油圧指令信号を出力して、ロックアップクラッチ22を係合させる。
【0043】
ステップS3において、コントローラ40は、作業車両1の車速がロックアップクラッチ係合車速に定数αを加算した値を超えているか否かを判定する。作業車両1の車速がロックアップクラッチ係合車速に定数αを加算した値を超えている場合、処理はステップS4に進む。作業車両1の車速がロックアップクラッチ係合車速に定数αを加算した値を超えていない場合、処理はステップS5に進む。
【0044】
ステップS3からステップS4に進んだ場合、ステップS4において、コントローラ40は、オンオフ弁35に制御信号を出力して、オンオフ弁35をオン状態(閉状態)に切り替える。その結果、上述したとおり、第2圧力制御弁33が開状態に切り替えられて、トルクコンバータ21の内圧が低減される。ステップS4が完了すると、処理はステップS1に戻る。
【0045】
ステップS3からステップS5に進んだ場合、ステップS5において、コントローラ40は、作業車両1の車速がロックアップクラッチ解放車速に定数βを加算した値を下回るか否かを判定する。作業車両1の車速がロックアップクラッチ解放車速に定数βを加算した値を下回る場合、処理はステップS6に進む。作業車両1の車速がロックアップクラッチ解放車速に定数βを加算した値を下回らない場合、処理はステップS1に戻る。
【0046】
ステップS5からステップS6に進んだ場合、ステップS6において、コントローラ40は、オンオフ弁35に制御信号を出力して、オンオフ弁35をオフ状態(開状態)に切り替える。その結果、上述したとおり、第2圧力制御弁33が閉状態に切り替えられて、トルクコンバータ21の内圧は定常圧まで上昇する。
【0047】
ステップS7において、コントローラ40は、作業車両1の車速がロックアップクラッチ開放車速を下回るか否かを判定する。作業車両1の車速がロックアップクラッチ開放車速を下回る場合、処理はステップS8に進む。作業車両1の車速がロックアップクラッチ開放車速を下回らない場合、処理はステップS1に戻る。
【0048】
ステップS8において、コントローラ40は、ロックアップクラッチ制御弁23にクラッチ油圧指令信号を出力して、ロックアップクラッチ22を開放させる。
【0049】
2.第2実施形態
第2実施形態に係る動力伝達装置2aについて説明する。本実施形態に係る動力伝達装置2aは、上記第1実施形態に係る作業車両1と同様の作業車両に搭載される。
【0050】
(動力伝達装置2aの構成)
図4は、第2実施形態に係る動力伝達装置2aの構成を模式的に示す構成図である。
【0051】
動力伝達装置2aは、第7油路L7aが第6油路L6と第1圧力制御弁32とに連通している点において上記第1実施形態に係る動力伝達装置2と相違している。以下、当該相違点について主に説明する。
【0052】
第7油路L7aは、第6油路L6と第1圧力制御弁32とに連通する。第7油路L7aは、接続ポイントP4において第6油路L6に連結される。接続ポイントP4は、オンオフ弁35の上流側に位置する。ロックアップクラッチ22が係合状態である場合、オンオフ弁35がオン状態に切り替えられると、第7油路L7aの油圧は高い状態に維持される。その結果、第1圧力制御弁32は開状態に保持される。ロックアップクラッチ22が開放状態である場合、オンオフ弁35がオフ状態に切り替えられると、第7油路L7aの油圧は低い状態に維持される。その結果、第1圧力制御弁32は、トルクコンバータ21の内圧が定常圧になるように開閉動作する。
【0053】
コントローラ40は、ロックアップクラッチ22の係合及び開放に応じて、第1圧力制御弁32を開閉させる。
【0054】
具体的には、コントローラ40は、作業車両1の車速がロックアップ係合車速を超えると、ロックアップクラッチ22に係合指令を出す。ロックアップクラッチ22が係合完了し、作業車両1の車速がロックアップクラッチ係合車速に定数αを加算した値を超えると、オンオフ弁35に制御信号を出力して、オンオフ弁35をオン状態に切り替える。これにより、第7油路L7aの油圧が高くなって第1圧力制御弁32が開状態に切り替えられ、トルクコンバータ21から排出される作動油が第2油路L2を介して速やかにオイルパン37に戻される。その結果、トルクコンバータ21の内圧は定常圧よりも低い所定圧に低減されるため、第1油圧ポンプ31のロス馬力が抑制される。
【0055】
このように、コントローラ40は、ロックアップクラッチ22が係合状態である場合、第1圧力制御弁32を開状態にすることによって、トルクコンバータ21の内圧を低減させる。
【0056】
一方、コントローラ40は、作業車両1の車速がロックアップクラッチ開放車速に定数βを加算した値を下回ると、ロックアップクラッチ22を開放する前に、オンオフ弁35に制御信号を出力して、オンオフ弁35をオフ状態に切り替える。これにより、第7油路L7aの油圧が低くなって第1圧力制御弁32が閉状態に切り替えられ、第2油路L2の油圧は第1圧力制御弁32によって調圧される。その結果、トルクコンバータ21の内圧は定常圧に復帰する。
【0057】
このように、コントローラ40は、作業車両1の車速がロックアップクラッチ開放車速に定数βを加算した値を下回ると、第1圧力制御弁32を閉状態にすることによって、トルクコンバータ21の内圧を定常圧まで上昇させる。
【0058】
トルクコンバータ装置20における動力伝達方法は、
図3のフローチャートで説明したのと同様である。
【0059】
(実施形態の変形例)
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0060】
上記第1実施形態では、ロックアップクラッチ27が係合状態である場合にトルクコンバータ21の内圧を低減させるための圧力調整弁として、トルクコンバータ21の内圧を定常圧に保つための第2圧力制御弁33を利用した。また、上記第2実施形態では、ロックアップクラッチ27が係合状態である場合にトルクコンバータ21の内圧を低減させるための圧力調整弁として、トルクコンバータ21の内圧を定常圧に保つための第1圧力制御弁32を利用した。しかしながら、トルクコンバータ21の内圧を低減させるための圧力調整弁は、第1及び第2圧力制御弁32,33とは別に設けられていてもよい。この場合、圧力調整弁は、第2油路L2又は第3油路L3に配置される。第2油路L2に圧力調整弁を配置する場合には、第1圧力制御弁32の上流側に圧力調整弁を配置する。第3油路L3に圧力調整弁を配置する場合には、第2圧力制御弁33の上流側に圧力調整弁を配置する。
【符号の説明】
【0061】
1 作業車両
2,2a 動力伝達装置
3 動力源
4 走行装置
10 トランスミッション
20 トルクコンバータ装置
21 トルクコンバータ
22 ロックアップクラッチ
23 ロックアップクラッチ制御弁
L1~L8 第1乃至第8油路
31 第1油圧ポンプ
32 第1圧力制御弁
33 第2圧力制御弁
34 第2油圧ポンプ
35 オンオフ弁
36 第3圧力制御弁
37 オイルパン
38 オリフィス
40 コントローラ