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特許7545225伸び特性と透湿性を備えた硬化物の得られるフィルム用組成物、フィルム用組成物の硬化物であるフィルム、及びフィルムを使用した皮膚への貼付型センサデバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】伸び特性と透湿性を備えた硬化物の得られるフィルム用組成物、フィルム用組成物の硬化物であるフィルム、及びフィルムを使用した皮膚への貼付型センサデバイス
(51)【国際特許分類】
   C08L 75/04 20060101AFI20240828BHJP
   C08K 5/05 20060101ALI20240828BHJP
【FI】
C08L75/04
C08K5/05
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020054864
(22)【出願日】2020-03-25
(65)【公開番号】P2021155503
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】390005223
【氏名又は名称】株式会社タムラ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100143959
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 秀一
(72)【発明者】
【氏名】喜多村 明
【審査官】松村 駿一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/036038(WO,A1)
【文献】特表2007-504295(JP,A)
【文献】特開平09-241484(JP,A)
【文献】特開2007-196336(JP,A)
【文献】特開2017-204594(JP,A)
【文献】特開2017-022173(JP,A)
【文献】特開2010-006882(JP,A)
【文献】特開2008-291386(JP,A)
【文献】国際公開第2017/094757(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 75/04
C08K 5/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)質量平均分子量が10000以上のポリマーと、(B)水酸基を有する化合物と、を含有し、前記(B)水酸基を有する化合物の融点が、45℃以上120℃以下であり、
前記(A)質量平均分子量が10000以上のポリマーが、熱可塑性ポリウレタンを含有し、
前記(B)水酸基を有する化合物が、トリス(ヒドロキシアシル)グリセロール及びドデカンジオールからなる群から選択された少なくとも1種である、フィルム用組成物。
【請求項2】
前記(B)水酸基を有する化合物を、前記(A)質量平均分子量が10000以上のポリマー100質量部に対して、0.2質量部以上20質量部以下含有する請求項1に記載のフィルム用組成物。
【請求項3】
回路パターンを有するフィルム用である請求項1または2に記載のフィルム用組成物。
【請求項4】
請求項1乃至のいずれか1項に記載のフィルム用組成物の熱乾燥物であるフィルム。
【請求項5】
請求項に記載のフィルムを使用した皮膚への貼付型センサデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸び特性と透湿性を備えたフィルムの得られる組成物に関するものであり、例えば、導電性材料による回路パターンを基板上に形成して伸び特性と透過性を備えた回路基板を製造するための伸び特性と透湿性を備えたフィルムを得ることができる組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器の小型化、電子部品の高密度搭載等に対応するために、電子機器の狭小空間に配線板を搭載することが要求される場合がある。狭小空間に配線板を搭載するには、柔軟性に優れた配線板が要求されることから、絶縁被膜が形成された樹脂フィルムに導電性材料による回路パターンが設けられたフレキシブルプリント配線板が使用されることがある。一方で、近年、心拍数、呼吸、心電、筋電等の生体情報を得るために、回路パターンを形成したフィルムを使用した皮膚への貼付型センサデバイスを用い、前記回路パターンを形成したフィルムを人体の皮膚に直接貼付することも検討されている。
【0003】
回路パターンを形成したフィルムを人体に直接貼付する場合には、フィルムが、人体の曲面に十分に対応でき、ツッパリ感等の違和感を人に起こさせず、また、人体の動きに円滑に追従できることが要求される。従来のフレキシブルプリント配線板の絶縁被膜に用いる組成物の柔軟性では、上記のような人体に貼付する用途に対応することができない。
【0004】
フィルムが、人体の曲面に対応でき、ツッパリ感等の違和感を人に起こさせず、また、人体の動きに円滑に追従できるためには、優れた伸び特性を有することが要求される。そこで、シリコーンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム、スチレンゴム、ウレタンゴム、プロピレンゴム、天然ゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、エチレンゴムおよびエチレンプロピレンゴムからなる群より選択されるいずれかを含む耐熱性を有する樹脂の厚さ1~100μmの伸縮性シートであって、シートの少なくとも一方の面にセパレーターを備え、セパレーターとシートとの剥離力が、0.01N/15mm以上である、回路基板用の伸縮性シートが提案されている(特許文献1)。
【0005】
特許文献1では、セパレーターを付けることでシートの厚みを薄く設計できることにより追従性を向上させ、回路を印刷した後、セパレーターを剥がす際に伸縮性シートが伸びてしまい導電インク回路の損傷が発生するのを防止するために、伸縮性シートとセパレーターとの剥離力を調整したものである。
【0006】
一方で、回路パターンを形成したフィルムを人体の皮膚に直接貼付する場合には、フィルムが、汗などの水分を十分に透過する特性を有することも要求される。しかし、セパレーターを付けることでシートの厚みを薄く設計した特許文献1では、伸び特性と透湿性に改善の余地があった。
【0007】
また、フィルムに伸び特性や透湿性を付与するために、フィルム用組成物にアミド類や特定のアルコール類等の添加剤を配合することも検討されている。しかし、フィルム用組成物にアミド類や特定のアルコール類等の添加剤を配合すると、フィルムにべたつき感が生じる、すなわち、タック性が生じる場合があった。また、フィルム用組成物にアミド類や特定のアルコール類等の添加剤を配合すると、フィルムから添加剤が分離してしまう、すなわち、相溶性が得られないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2017-204594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記事情に鑑み、本発明は、タック性と相溶性を有しつつ、透湿性と伸び特性に優れたフィルムを得ることができるフィルム用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の構成の要旨は以下の通りである。
[1](A)質量平均分子量が10000以上のポリマーと、(B)水酸基を有する化合物と、を含有し、前記(B)水酸基を有する化合物の融点が、45℃以上120℃以下である、フィルム用組成物。
[2]前記(A)質量平均分子量が10000以上のポリマーが、熱可塑性ポリウレタンを含有する[1]に記載のフィルム用組成物。
[3](C)ポリイソシアネート及びポリイソシアネートの変性体からなる群から選択された少なくとも1種のイソシアネート化合物と、(D)ポリオールと、(B)水酸基を有する化合物と、を含有し、前記(B)水酸基を有する化合物の融点が、45℃以上120℃以下である、フィルム用組成物。
[4]前記(B)水酸基を有する化合物の融点が、75℃以上である[1]乃至[3]のいずれか1つに記載のフィルム用組成物。
[5]前記(B)水酸基を有する化合物の融点が、83℃以上である[1]乃至[3]のいずれか1つに記載のフィルム用組成物。
[6]前記(B)水酸基を有する化合物を、前記(A)質量平均分子量が10000以上のポリマー100質量部に対して、0.2質量部以上20質量部以下含有する[1]または[2]に記載のフィルム用組成物。
[7]前記(B)水酸基を有する化合物を、前記(C)イソシアネート化合物と前記(D)ポリオールとの合計100質量部に対して、0.2質量部以上20質量部以下含有する[3]に記載のフィルム用組成物。
[8]前記(B)水酸基を有する化合物が、トリス(ヒドロキシアシル)グリセロール、ドデカンジオール、ステアリルアルコール、トリメチロールプロパン及びポリエチレングリコールからなる群から選択された少なくとも1種である[1]乃至[7]のいずれか1つに記載のフィルム用組成物。
[9]前記(B)水酸基を有する化合物が、トリス(ヒドロキシアシル)グリセロール、ドデカンジオール及びステアリルアルコールからなる群から選択された少なくとも1種である[1]乃至[7]のいずれか1つに記載のフィルム用組成物。
[10]回路パターンを有するフィルム用である[1]乃至[9]のいずれか1つに記載のフィルム用組成物。
[11][1]乃至[10]のいずれか1つに記載のフィルム用組成物の硬化物であるフィルム。
[12][11]に記載のフィルムを使用した皮膚への貼付型センサデバイス。
【0011】
上記[1]の態様では、添加剤として、融点が45℃以上120℃以下である水酸基を有する化合物を配合している。なお、本明細書中、「質量平均分子量」とは、GPC(ゲルパーミションクロマトグラフィー)によるポリスチレン換算した質量平均分子量を意味する。
【発明の効果】
【0012】
本発明のフィルム用組成物の態様によれば、(A)質量平均分子量が10000以上のポリマーと、(B)水酸基を有する化合物と、を含有し、(B)水酸基を有する化合物の融点が45℃以上120℃以下であることにより、タック性と相溶性を有しつつ、透湿性と伸び特性に優れたフィルムを得ることができるフィルム用組成物を得ることができる。
【0013】
本発明のフィルム用組成物の態様によれば、(A)質量平均分子量が10000以上のポリマーが熱可塑性ポリウレタンを含有することにより、伸び特性をさらに向上させることができる。
【0014】
本発明のフィルム用組成物の態様によれば、(C)ポリイソシアネート及びポリイソシアネートの変性体からなる群から選択された少なくとも1種のイソシアネート化合物と、(D)ポリオールと、(B)水酸基を有する化合物と、を含有し、(B)水酸基を有する化合物の融点が45℃以上120℃以下であることにより、タック性と相溶性を有しつつ、透湿性と伸び特性に優れたフィルムを得ることができるフィルム用組成物を得ることができる。
【0015】
本発明のフィルム用組成物の態様によれば、(B)水酸基を有する化合物の融点が75℃以上であることにより、透湿性をさらに向上させることができる。
【0016】
本発明のフィルム用組成物の態様によれば、(B)水酸基を有する化合物の融点が83℃以上であることにより、透湿性と伸び特性をさらに向上させることができる。
【0017】
本発明のフィルム用組成物の態様によれば、(B)水酸基を有する化合物が、トリス(ヒドロキシアシル)グリセロール、ドデカンジオール及びステアリルアルコールからなる群から選択された少なくとも1種であることにより、タック性、相溶性、透湿性及び伸び特性をバランスよく向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に本発明のフィルム用組成物について説明する。本発明のフィルム用組成物は、(A)質量平均分子量が10000以上のポリマーと、(B)水酸基を有する化合物と、を含有し、前記(B)水酸基を有する化合物の融点が、45℃以上120℃以下である。上記各成分は、以下の通りである。
【0019】
<(A)質量平均分子量が10000以上のポリマー>
質量平均分子量が10000以上のポリマーを配合することで、タック性と相溶性を損なうことなく、透湿性の向上に寄与しつつ、優れた伸び特性をフィルムに付与することができる。質量平均分子量が10000以上のポリマーとしては、例えば、熱可塑性ポリウレタン、シリコーンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム、スチレンゴム、ウレタンゴム、プロピレンゴム、天然ゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、エチレンゴム、エチレンプロピレンゴム、アクリル系ブロック共重合体、熱硬化性ポリウレタン、ウレタンフォーム等を挙げることができる。このうち、フィルムの伸び特性をさらに向上させることができる点から、熱可塑性ポリウレタンが好ましい。
【0020】
ポリウレタンの化学構造としては、特に限定されないが、例えば、後述する(C)成分のイソシアネート化合物と(D)成分のポリオールを反応させて得られる化学構造を有するポリウレタンが挙げられる。これらのうち、透湿性の向上に寄与しつつ、硬化物であるフィルムに伸び特性を確実に付与する点から、脂肪族ポリイソシアネート及び/または脂肪族ポリイソシアネートのイソシアヌレート体と、ポリカプロラクトンポリオール、ポリエステルポリオールまたはポリオキシアルキレン系ポリオールと、を反応させて得られる化学構造を有するポリウレタンが好ましい。
【0021】
ポリウレタンの質量平均分子量は10000以上であれば、特に限定されないが、伸び特性をさらに向上させる点から、12000以上が好ましく、13000以上が特に好ましい。また、ポリウレタンの質量平均分子量の上限値としては、例えば、1000000が挙げられる。
【0022】
<(B)水酸基を有する化合物>
水酸基を有する化合物として、融点が45℃以上120℃以下である水酸基を有する化合物を配合することで、上記した(A)成分である質量平均分子量が10000以上のポリマーとあいまって、タック性と相溶性を有しつつ、透湿性と伸び特性に優れたフィルムを得ることができるフィルム用組成物を得ることができる。一方で、水酸基を有する化合物の融点が45℃未満では、特にタック性が得られず、水酸基を有する化合物の融点が120℃超では、特に透湿性と相溶性が得られない。
【0023】
水酸基を有する化合物の融点は45℃以上120℃以下であれば、特に限定されないが、融点の下限値は、透湿性をさらに向上させることができる点から、75℃が好ましく、透湿性と伸び特性をさらに向上させることができる点から、83℃が特に好ましい。一方で、水酸基を有する化合物の融点の上限値は、透湿性と相溶性を確実に得る点から、110℃が好ましく、100℃が特に好ましい。
【0024】
融点が45℃以上120℃以下である水酸基を有する化合物の化学構造は、特に限定されず、例えば、トリス(ヒドロキシアシル)グリセロール等のグリセロールと水酸基を有する脂肪酸3分子とのエステルが挙げられる。水酸基を有する脂肪酸としては、例えば、炭素数が15個以上20個以下の直鎖脂肪酸が挙げられる。トリス(ヒドロキシアシル)グリセロールとしては、例えば、トリス(ヒドロキシヘキサデカン酸(C16))、トリス(ヒドロキシオクタデカン酸(C18))グリセリル、トリス(ヒドロキシヘプタデカン酸(C17))グリセリル、トリス(ヒドロキシノナデカノン酸(C19))グリセリル等が挙げられる。
【0025】
また、融点が45℃以上120℃以下である水酸基を有する化合物としては、ヘキサデカノール(C16)、ステアリルアルコール(C18)、アラキジルアルコール(C20)、ベヘニルアルコール(C22)、テトラコシルアルコール(C24)等の直鎖脂肪族モノオール、ポリエチレングリコール等のエーテル系モノオール、デカンジオール(C10)、ウンデカンジオール(C11)、ドデカンジオール(C12)等の直鎖脂肪族ジオール、トリメチロールプロパン等の脂肪族トリオールなどが挙げられる。これらのうち、タック性、相溶性、透湿性及び伸び特性をバランスよく向上させることができる点から、トリス(ヒドロキシアシル)グリセロール、ドデカンジオール、ステアリルアルコールが好ましい。これらの水酸基を有する化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
水酸基を有する化合物の配合量は、特に限定されないが、その下限値は、(A)質量平均分子量が10000以上のポリマー100質量部に対して、透湿性を確実に得る点から0.2質量部が好ましく、透湿性とスリップ性、すなわち、フィルム上に導電性塗料をスクリーン印刷する際、フィルム表面のスリップ性が向上することで、スクリーン版の移動がスムーズになり、スクリーン版のフィルムからの離れも向上させる点から1.0質量部がより好ましく、2.0質量部が特に好ましい。一方で、水酸基を有する化合物の配合量の上限値は、(A)質量平均分子量が10000以上のポリマー100質量部に対して、タック性と相溶性が損なわれることを確実に防止する点及び伸び特性を確実に得る点から20質量部が好ましく、15質量がより好ましく、10質量部がさらに好ましく、8質量部が特に好ましい。
【0027】
また、本発明のフィルム用組成物では、熱可塑性ポリウレタン等の(A)質量平均分子量が10000以上のポリマーに代えて、(C)ポリイソシアネート及びポリイソシアネートの変性体からなる群から選択された少なくとも1種のイソシアネート化合物と(D)ポリオールとを配合してもよい。(B)融点が45℃以上120℃以下である水酸基を有する化合物と、(C)ポリイソシアネート及びポリイソシアネートの変性体からなる群から選択された少なくとも1種のイソシアネート化合物と、(D)ポリオールと、を配合しても、タック性と相溶性を有しつつ、透湿性と伸び特性に優れたフィルムを得ることができる。なお、(A)質量平均分子量が10000以上のポリマーに代えて配合する(D)ポリオールは、融点が45℃未満または120℃超の化合物であり、融点が45℃以上120℃以下である水酸基を有する化合物とは異なるポリオールである。
【0028】
<(C)イソシアネート化合物>
イソシアネート化合物は、後述するポリオールと反応させてポリウレタンを得るための成分である。ポリウレタンを得るための成分を配合することで、透湿性に寄与しつつ、フィルムの伸び特性を向上させることができる。
【0029】
ポリイソシアネートとしては、例えば、メチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート、メチルペンタンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート等の脂環族ポリイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート等のジフェニルメタンジイソシアネート類(MDI類)、2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート等のトルエンジイソシアネート類(TDI類)、フェニレンジイソシアネート、ジフェニルジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ジフェニルエーテルジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ポリイソシアネートなどが挙げられる。このうち、硬化物であるフィルムに伸び特性を確実に付与する点から、脂肪族ポリイソシアネートが好ましく、伸び特性をさらに向上させる点から炭素数3~10の脂肪族ポリイソシアネートがより好ましく、炭素数5~10の直鎖状脂肪族ポリイソシアネートがさらに好ましく、伸び特性と機械的強度をバランスよく向上させる点から、ヘキサメチレンジイソシアネートが特に好ましい。これらのポリイソシアネートは、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
また、ポリイソシアネートの変性体は、特に限定されず、例えば、上記脂肪族ポリイソシアネートのイソシアヌレート体、アダクト体、ビウレット体、2官能型などが挙げられる。これらのうち、硬化物であるフィルムに伸び特性を確実に付与する点から、脂肪族ポリイソシアネートのイソシアヌレート体が好ましく、伸び特性をさらに向上させる点から、炭素数3~10の脂肪族ポリイソシアネートのイソシアヌレート体がより好ましく、炭素数5~10の直鎖状脂肪族ポリイソシアネートのイソシアヌレート体がさらに好ましく、伸び特性と機械的強度をバランスよく向上させる点から、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体が特に好ましい。これらのポリイソシアネートの変性体は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、ポリイソシアネートの変性体は、ポリイソシアネートと併用してもよい。
【0031】
イソシアネート化合物として市販されているものには、例えば、タケネートD170N(ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体:三井化学株式会社)、ミリオネートMT(4,4’- ジフェニルメタンジイソシアネート:日本ポリウレタン工業株式会社)、コスモネートLL(カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート:三井化学ポリウレタン株式会社)、デュラネートTPA100(ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体:旭化成株式会社)等を挙げることができる。
【0032】
<(D)ポリオール>
ポリオールの種類は、特に限定されないが、例えば、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオキシアルキレンポリオール、グリコール類などが挙げられる。このうち、透湿性に寄与しつつ、硬化物であるフィルムの伸び特性と機械的強度とのバランスを得られる点から、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールが好ましい。
【0033】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、へキサヒドロオルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、トリメリット酸等のポリカルボン酸と、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-シクロへキサンジメタノール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の低分子ポリオール類と、の脱水縮合反応で得られるポリエステルポリオール、環状エステルを開環して得られるポリカプロラクトンポリオールなどが挙げられる。これらのうち、硬化物であるフィルムの伸び特性が確実に向上する点から、ポリカプロラクトンポリオールが好ましい。
【0034】
ポリカプロラクトンポリオールとしては、例えば、2官能性のポリカプロラクトンジオール、3官能性のポリカプロラクトントリオール及び4官能性のポリカプロラクトンテトラオールなどが挙げられるが、硬化物であるフィルムの伸び特性と機械的強度とのバランスの点から、ポリカプロラクトントリオールが好ましい。
【0035】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、前記ポリエステルポリオールの合成に用いられる低分子ポリオール類とホスゲンとの脱塩酸反応、または前記低分子ポリオール類とジエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート等とのエステル交換反応で得られるものが挙げられる。
【0036】
ポリオキシアルキレンポリオールとしては、例えば、前記ポリエステルポリオールの合成に用いられる低分子ポリオール類を開始剤として、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン等の環状エーテル化合物の1種以上を開環付加重合あるいは(共)重合させた、ポリオキシエチレン系ポリオール、ポリオキシプロピレン系ポリオール、ポリオキシブチレン系ポリオール、ポリオキシテトラメチレン系ポリオール、ポリ-(オキシエチレン)-(オキシプロピレン)-ランダムまたはブロック共重合系ポリオール等が挙げられる。
【0037】
グリコール類としては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコールなどが挙げられる。
【0038】
ポリオールのOH基価は、特に限定されないが、その下限値は、伸び特性を有するフィルムとして十分な強度を付与する点から50mgKOH/gが好ましく、150mgKOH/gがより好ましく、250mgKOH/gが特に好ましい。一方で、ポリオールのOH基価の上限値は、硬化物であるフィルムに伸び特性を確実に付与する点から400mgKOH/gが好ましく、380mgKOH/gがより好ましく、350mgKOH/gが特に好ましい。
【0039】
ポリオールの質量平均分子量は、特に限定されないが、伸び特性と機械的強度とのバランスの点から300~2500が好ましく、500~2000が特に好ましい。
【0040】
ポリオールの配合量は、特に限定されないが、例えば、ポリオールのヒドロキシ基(OH)に対するイソシアネート化合物のイソシアネート基(NCO)の当量比(NCO/OH)について、その下限値は、フィルム組成物の硬化性の低下を確実に防止する点から0.6が好ましく、0.9が特に好ましい。一方で、前記当量比(NCO/OH)の上限値は、硬化物であるフィルムの硬度が高くなって伸び特性が低下するのを確実に防止する点から2.5が好ましく、1.5が特に好ましい。上記から、ポリオール100質量部に対して、ポリイソシアネート化合物の配合量は50~200質量部が好ましく、65~150質量部が特に好ましい。
【0041】
ポリオールとして市販されているものには、例えば、PLACCEL(プラクセル) 305(ポリカプロラクトントリオール:株式会社ダイセル、OH基価は305mgKOH/g)、PLACCEL 308(ポリカプロラクトントリオール:株式会社ダイセル、OH基価は195mgKOH/g)、PLACCEL 309(ポリカプロラクトントリオール:株式会社ダイセル、OH基価は186mgKOH/g)、デュラノールT5652(1,5-ペンタンジオールと1,6-ヘキサンジオールを用いた共重合ポリカーボネートジオール:旭化成株式会社、数平均分子量は約2000、OH基価は51mgKOH/g~61mgKOH/g)等を挙げることができる。上記ポリオールは、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0042】
(A)質量平均分子量が10000以上のポリマーに代えて、(C)イソシアネート化合物と(D)ポリオールとを配合する場合、(B)水酸基を有する化合物の配合量は、特に限定されないが、その下限値は、(C)イソシアネート化合物と(D)ポリオールとの合計100質量部に対して、透湿性を確実に得る点から0.2質量部が好ましく、透湿性とスリップ性をさらに向上させる点から1.0質量部がより好ましく、2.0質量部が特に好ましい。一方で、(B)水酸基を有する化合物の配合量の上限値は、(C)イソシアネート化合物と(D)ポリオールとの合計100質量部に対して、タック性と相溶性が損なわれることを確実に防止する点及び伸び特性を確実に得る点から20質量部が好ましく、15質量がより好ましく、10質量部がさらに好ましく、8質量部が特に好ましい。
【0043】
本発明のフィルム用組成物では、上記した(A)成分~(D)成分に加えて、必要に応じて、さらに、非反応性希釈剤を配合してもよい。非反応性希釈剤は、組成物の塗工性や乾燥性を調節するためのものである。非反応性希釈剤としては、例えば、有機溶剤が挙げられる。有機溶剤としては、例えば、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピランなどの環状エーテル類、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブのセロソルブ類、メチルカルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロプレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及び上記グリコールエーテル類のエステル化物などのエステル類;エタノール、プロパノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのモノオール類等を挙げることができる。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0044】
本発明のフィルム組成物は、(A)成分~(D)成分からなる組成物、または(A)成分~(D)成分と非反応性希釈剤とからなる組成物でもよい。従って、本発明のフィルム用組成物では、光安定剤、フィラー等、他の成分は配合されなくてよい。本発明のフィルム用組成物では、(A)成分~(D)成分と任意成分である非反応性希釈剤のみが配合され、他の成分が配合されないことにより、伸び特性をより確実に向上させることができる。また、本発明の組成物では、必要に応じて、所望の伸び特性を損なわない範囲で、(A)成分~(D)成分と非反応性希釈剤以外の添加成分を、さらに配合した組成物としてもよい。
【0045】
添加成分としては、例えば、難燃剤、着色剤等を挙げることができる。
【0046】
難燃剤としては、例えば、リン系の難燃剤を挙げることができる。リン系の難燃剤としては、例えば、トリス(クロロエチル)ホスフェート、トリス(2,3-ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(2-クロロプロピル)ホスフェート、トリス(2,3-ブロモプロピル)ホスフェート、トリス(ブロモクロロプロピル)ホスフェート、2,3-ジブロモプロピル-2,3-クロロプロピルホスフェート、トリス(トリブロモフェニル)ホスフェート、トリス(ジブロモフェニル)ホスフェート、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェートなどの含ハロゲン系リン酸エステル;トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェートなどのノンハロゲン系脂肪族リン酸エステル;トリフェニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、ジクレジルフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、イソプロピルフェニルジフェニルホスフェート、ジイソプロピルフェニルフェニルホスフェート、トリス(トリメチルフェニル)ホスフェート、トリス(t-ブチルフェニル)ホスフェート、ヒドロキシフェニルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェートなどのノンハロゲン系芳香族リン酸エステル;トリスジエチルホスフィン酸アルミニウム、トリスメチルエチルホスフィン酸アルミニウム、トリスジフェニルホスフィン酸アルミニウム、ビスジエチルホスフィン酸亜鉛、ビスメチルエチルホスフィン酸亜鉛、ビスジフェニルホスフィン酸亜鉛、ビスジエチルホスフィン酸チタニル、テトラキスジエチルホスフィン酸チタン、ビスメチルエチルホスフィン酸チタニル、テトラキスメチルエチルホスフィン酸チタン、ビスジフェニルホスフィン酸チタニル、テトラキスジフェニルホスフィン酸チタンなどのホスフィン酸の金属塩、ジフェニルビニルホスフィンオキサイド、トリフェニルホスフィンオキサイド、トリアルキルホスフィンオキサイド、トリス(ヒドロキシアルキル)ホスフィンオキサイド等のホスフィンオキサイド系化合物等が挙げられる。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0047】
着色剤は、顔料、色素等、特に限定されず、また、白色着色剤、青色着色剤、緑色着色剤、黄色着色剤、紫色着色剤、橙色着色剤等、いずれの色彩の着色剤も使用可能である。上記着色剤には、例えば、白色着色剤である酸化チタン(ルチル型、アナターゼ型)等の無機系着色剤や、緑色着色剤であるフタロシアニングリーン及び青色着色剤であるフタロシアニンブルーやリオノールブルー等のフタロシアニン系、黄色着色剤であるアントラキノン系、橙色着色剤であるクロモフタルオレンジ等のジケトピロロピロール系等の有機系着色剤などを挙げることができる。
【0048】
上記した本発明のフィルム用組成物の製造方法は、特定の方法に限定されず、例えば、上記各成分を所定割合で配合後、室温(常温)または30℃~50℃に加温した状態にて、三本ロール、ボールミル、サンドミル等の混練手段、またはスーパーミキサー、プラネタリーミキサー等の攪拌手段により混練または撹拌して製造することができる。また、混練または撹拌の前に、必要に応じて、室温(常温)または30℃~50℃に加温した状態にて、予備混練または予備撹拌を行ってもよい。
【0049】
次に、本発明のフィルム用組成物の使用方法例について説明する。ここでは、本発明のフィルム用組成物を、基板(例えば、石英ガラス基板、銅等の金属製基板、PET(ポリエチレンテレフタレート)等の樹脂基板)上に塗工して、透湿性と伸び特性を有するフィルムを形成する方法を例にとって説明する。上記のように製造したフィルム用組成物を、基板上に、スクリーン印刷法、バーコータ法、ブレードコータ法、ナイフコータ法、ロールコータ法、グラビアコータ法等の公知の方法を用いて所望の厚さに塗布する。次に、60℃~170℃程度の温度の乾燥炉等で5分~30分間程度加熱することにより塗布したフィルム用組成物を熱硬化させて、基板上に目的とする硬化膜を形成させる。硬化膜の膜厚としては、例えば、10μm~100μmが挙げられる。得られた硬化膜を基板から剥離することで、透湿性と伸び特性を有するフィルムを製造することができる。
【0050】
本発明のフィルム用組成物から得られたフィルムの用途としては、例えば、心拍数、呼吸、心電、筋電等の生体情報を得るために回路パターンを形成する、透湿性と伸び特性を有するフィルム用、すなわち、透湿性と伸び特性を有する回路基板用を挙げることができる。従って、本発明のフィルム用組成物から得られたフィルムを使用して、皮膚への貼付型センサデバイスを製造することができる。
【実施例
【0051】
次に、本発明の実施例を説明するが、本発明はその趣旨を超えない限り、これらの例に限定されるものではない。
【0052】
実施例1-1~1-5、実施例2-1~2-3、実施例3-1、比較例1-1、比較例2-1~2-4、比較例3-1
下記表1に示す各成分を下記表1に示す配合割合にて配合し、セパラブルフラスコを用いて40℃(オイルヒーター中)にて撹拌して、実施例及び比較例にて使用するフィルム用組成物を調製した。なお、下記表1中の配合の数字は質量部を、空欄部は配合なしを意味する。
【0053】
なお、表1中の各成分についての詳細は以下の通りである。
(A)質量平均分子量が10000以上のポリマー
・ミラクトランP22SRNAT:熱可塑性ポリウレタン樹脂、質量平均分子量10000~15000(固形分100質量%)、東ソー株式会社
・ハイムレンY-206-2:熱可塑性ポリウレタン樹脂、質量平均分子量13000~18000(固形分25質量%、分散媒である溶剤はジメチルホルムアミド(DMF))、大日精化工業株式会社
【0054】
(B)融点が45℃以上120℃以下の水酸基を有する化合物
・トリス(12-ヒドロキシオクタデカン酸)グリセリル:東京化成工業株式会社
・1,12-ドデカンジオール:東京化成工業株式会社
・ステアリルアルコール:東京化成工業株式会社
・トリメチロールプロパン:東京化成工業株式会社
・PEG4000:和光純薬工業株式会社
【0055】
(C)イソシアネート化合物
・タケネートD170N:三井化学株式会社
(D)ポリオール
・プラクセル305T:株式会社ダイセル
非反応性希釈剤
・THF:三菱ケミカル株式会社
【0056】
融点が45℃未満または120℃超の水酸基を有する化合物
・ペンタエリスリトール:東京化成工業株式会社
・1,6-ヘキサンジオール:東京化成工業株式会社
その他の添加剤
・ビスアマイドLA:日化トレーディング株式会社
【0057】
試験体作製工程
支持用基板:PET(ポリエチレンテレフタレート)離形処理フィルム(フィルム厚さ125μm)
調製した実施例及び比較例の組成物の塗工方法:バーコータ法
組成物の乾燥処理:100℃、10分
組成物の本硬化処理:120℃、30分
DRY膜厚:20~30μm
【0058】
評価項目は以下の通りである。
(1)透湿性
上記試験体作製工程で得られた試験体について、PETフィルム上に形成された組成物の硬化膜をPETフィルムから剥がして、試験用フィルムを得た。試験用フィルムについて、JIS L1099 A-1に準じて、40℃90%RH条件下で透湿性を測定、比較対象であるポリウレタン樹脂フィルム(比較例1-1、比較例2-1、比較例3-1の試験用フィルム)に対する透湿性の増加率(%)を、以下の基準で評価した。
◎:比較対象であるポリウレタン樹脂フィルムに対して15%以上、透湿性が向上。
○:比較対象であるポリウレタン樹脂フィルムに対して10%以上15%未満、透湿性が向上。
△:比較対象であるポリウレタン樹脂フィルムに対して1%以上10%未満、透湿性が向上。
×:比較対象であるポリウレタン樹脂フィルムに対して透湿性向上が1%未満。
【0059】
(2)タック性
上記試験体作製工程で得られた試験体における組成物の硬化膜について、指触によりタック性を、以下の基準で評価した。
◎:全く粘着性なし。
○:ほとんど粘着性なし。
△:若干の粘着性あり。
×:粘着性あり。
【0060】
(3)相溶性
上記試験体作製工程で得られた試験体における組成物の硬化膜について、目視により相溶性を評価した。
○:外観に異常なし。
△:僅かにムラが見られる。
×:ムラや分離が見られる。
【0061】
(4)伸び特性
上記試験体作製工程で得られた試験体について、PETフィルム上に形成された組成物の硬化膜をPETフィルムから剥がして、試験用フィルムを得た。試験用フィルムについて、オートグラフ(株式会社島津製作所)を用いて、測定温度25℃にて、50mm/分の速度で引っ張り試験を実施し、比較対象であるポリウレタン樹脂フィルム(比較例1-1、比較例2-1、比較例3-1の試験用フィルム)に対する伸び率(%)を測定し、以下の基準で評価した。
◎:比較対象であるポリウレタン樹脂フィルムに対して伸び率10%以上向上。
○:比較対象であるポリウレタン樹脂フィルムに対して伸び率5%以上10%未満向上。
△:比較対象であるポリウレタン樹脂フィルムに対して伸び率に変化なし。
×:比較対象であるポリウレタン樹脂フィルムよりも伸び率が低下。
【0062】
評価結果を下記表1に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
上記表1から、融点が45℃以上120℃以下である水酸基を有する化合物を配合した実施例1-1~1-5、実施例2-1~2-3、実施例3-1のフィルム用組成物では、タック性と相溶性を有しつつ、透湿性と伸び特性に優れたフィルムを得ることができた。特に、水酸基を有する化合物として、融点が85℃~87℃であるトリス(12-ヒドロキシオクタデカン酸)グリセリルを配合した実施例1-1、2-1、2-3、3-1では、透湿性と伸び特性がさらに向上した。また、水酸基を有する化合物として、融点が79℃~81℃である1,12-ドデカンジオールを配合した実施例1-2では、透湿性とタック性がさらに向上した。また、融点が59℃~60℃であるステアリルアルコールを配合した実施例1-3では、タック性、相溶性、透湿性及び伸び特性がバランスよく向上した。
【0065】
一方で、融点が45℃以上120℃以下である水酸基を有する化合物に代えて、融点が257℃であるペンタエリスリトールを配合した比較例2-2では、透湿性と相溶性が得られなかった。また、融点が45℃以上120℃以下である水酸基を有する化合物に代えて、融点が38℃~42℃である1,6-ヘキサンジオールを配合した比較例2-3では、タック性が得られなかった。また、融点が45℃以上120℃以下である水酸基を有する化合物に代えて、アミド類を配合した比較例2-4では、透湿性と相溶性が得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明のフィルム用組成物は、タック性と相溶性を有しつつ、透湿性と伸び特性に優れたフィルムを得ることができるので、例えば、生体情報を得るために人体に貼付する回路基板を備えたセンサデバイスの分野で利用価値が高い。