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▶ アサヒ飲料株式会社の特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】紅茶飲料
(51)【国際特許分類】
   A23F 3/16 20060101AFI20240828BHJP
【FI】
A23F3/16
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020066527
(22)【出願日】2020-04-02
(65)【公開番号】P2021159028
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】596126465
【氏名又は名称】アサヒ飲料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(72)【発明者】
【氏名】高岸 知輝
(72)【発明者】
【氏名】西田 裕貴
【審査官】村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-143467(JP,A)
【文献】John Wright,Flavor Bites:Hexyl acetate,perfumer flavorist,2019年05月30日,https://www.perfumerflavorist.com/flavor/ingredients/article/21856975/flavor-bites-hexyl-acetate
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23F
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紅茶抽出物と酢酸ヘキシルを含み、
前記酢酸ヘキシルの含有量が70300ppbである、
紅茶飲料。
【請求項2】
pHが5~8である、
請求項1に記載の紅茶飲料。
【請求項3】
紅茶抽出物と酢酸ヘキシルと2-ヘプタノンを含み、
前記酢酸ヘキシルの含有量が50~500ppbであり、
前記酢酸ヘキシルと前記2-ヘプタノンとの濃度比が1:0.02~0.5である
茶飲料。
【請求項4】
前記2-ヘプタノンの含有量が1~200ppbである、
請求項3に記載の紅茶飲料。
【請求項5】
乳固形分を含む、
請求項1~4のいずれか一項に記載の紅茶飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紅茶飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、紅茶飲料の需要が高まってきている中で、より華やかさや香ばしさといった紅茶の味わいが感じられる設計が求められている。このような設計を行うには、紅茶茶葉の増量が最も有効な手段であるが、茶葉を増量すると茶葉由来の苦渋みも併せて強くなってしまうため、紅茶特有の味わいが増強する一方で後味が悪くなってしまうという課題がある。
【0003】
所望の紅茶特有の味わいを得るために、例えば特許文献1には、紅茶飲料中のタンニン量を所定の量とし、かつ、ヘキサン酸エチルの濃度に対する酪酸エチルと2-メチル酪酸エチルと酢酸ブチルと酢酸2-メチルブチルとの合計濃度の比を所定の比となるように調整する技術が示されている。このように調整することで、甘酸っぱさや新鮮感に優れた紅茶飲料とすることができる。
【0004】
商品設計の自由度の観点から、様々な方法により、所望の紅茶特有の味わいを得ることができることが好ましく、そのため、更なる新規な方法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-133915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような実情に鑑みて提案されたものであり、華やかな紅茶感を強化しつつ、後味の良い紅茶飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、紅茶飲料が所定の濃度の酢酸ヘキシルを含むことで上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は、以下のものを提供する。
【0008】
<1> 紅茶抽出物と酢酸ヘキシルを含み、上記酢酸ヘキシルの含有量が50~500ppbである、紅茶飲料。
【0009】
<2> pHが5~8である、<1>に記載の紅茶飲料。
【0010】
<3> 2-ヘプタノンを含み、上記酢酸ヘキシルと上記2-ヘプタノンとの濃度比が1:0.02~0.5である、<1>又は<2>に記載の紅茶飲料。
【0011】
<4> 上記2-ヘプタノンの含有量が1~200ppbである、<3>に記載の紅茶飲料。
【0012】
<5> 乳固形分を含む、<1>~<4>のいずれか一つに記載の紅茶飲料。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、華やかな紅茶感を強化しつつ、後味の良い紅茶飲料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明は特にこれに限定されない。なお、本明細書において「X~Y(X、Yは任意の数値)」との表記は、「X以上Y以下」の意味である。
【0015】
<1.紅茶飲料>
紅茶飲料は、紅茶抽出物と酢酸ヘキシルを含み、紅茶飲料中の酢酸ヘキシルの含有量は50~500ppbである。このような紅茶飲料であることにより、華やかな紅茶感が強化されつつ、後味の良い紅茶飲料となる。なお、本明細書において、「紅茶感」とは、紅茶特有の風味のことを意味する。
【0016】
[紅茶抽出物]
紅茶飲料には紅茶抽出物が含まれる。本明細書において、「紅茶抽出物」とは、紅茶葉を抽出処理に供することにより得られる抽出物を意味する。また、本明細書において紅茶抽出物には、紅茶葉からの抽出液それ自体や、その加工品類(例えば、紅茶葉抽出液を濃縮処理や粉末化処理等した紅茶抽出物エキス)等が含まれる。
【0017】
紅茶抽出物の原料として利用できる紅茶葉は特に限定されず、例えばCamellia sinensisの中国種(var.sinensis)、アッサム種(var.assamica)又はそれらの雑種から得られる茶葉から発酵工程を経て製茶されたものが挙げられる。茶期、茶葉の形状、産地、品種、等級、及び発酵条件等も特に限定されず、当業者が適宜設定することができる。また、紅茶葉を抽出する際の茶葉の量、溶媒の量、抽出温度、抽出時間等の条件も特に限定されず、通常紅茶葉を抽出する際の条件を用いることができる。
【0018】
紅茶飲料において、紅茶抽出物の含有量は特に限定されず、当業者が適宜設定できる。一方で、より嗜好性を高める観点から、紅茶飲料におけるタンニンの含有量は、5~150mg/100mLとなるような量であることが好ましい。そのため、当該タンニンの含有量などを考慮して紅茶抽出物の割合が設定されるようにすることができる。
【0019】
[酢酸ヘキシル]
紅茶飲料には酢酸ヘキシルが含まれる。酢酸ヘキシルとしては、特に限定されないが、化合物の市販品を用いて配合したり、酢酸ヘキシルが含まれる天然物やその抽出液を配合することができる。
【0020】
紅茶飲料中の酢酸ヘキシルの含有量は50~500ppbの範囲である。紅茶飲料中の酢酸ヘキシルの含有量をこのような範囲に設定することで、華やかな紅茶感を増強しつつ、後味の良さを良好とすることができる。また、酢酸ヘキシルの含有量は、60ppb以上であることが好ましく、70ppb以上であることがより好ましい。
【0021】
他方で、飲みやすさや後味の良さをより良好とする観点から、紅茶飲料中の酢酸ヘキシルの含有量は300ppb以下であることが好ましく、200ppb以下であることがより好ましく、100ppb以下であることが更に好ましい。
【0022】
紅茶飲料中の酢酸ヘキシルの含有量は、酢酸ヘキシルの化合物の配合量により調整できる。
【0023】
本明細書において、酢酸ヘキシルの含有量は、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS)を用いて測定する。GC-MSの測定は例えば実施例に示す条件に基づいて行うことができる。
【0024】
[pH]
紅茶飲料のpHは特に限定されず、例えば5~8の範囲で設定することができる。紅茶飲料のpHをこの範囲に調整することで、本発明の効果が奏されやすい。pHの下限は、好ましくは5.5以上、より好ましくは6以上である。pHの上限は、好ましくは7.5以下、より好ましくは7以下である。
【0025】
本明細書において、紅茶飲料のpHは、pHメーターを用いて特定する。
【0026】
[2-ヘプタノン]
紅茶飲料には2-ヘプタノンが含有されていてもよい。紅茶飲料に2-ヘプタノンが含有されることで、華やかな紅茶感と後味の良さを更に増強することができる。2-ヘプタノンとしては、特に限定されないが化合物の市販品を用いて配合したり、2-ヘプタノンが含まれる天然物やその抽出液を配合することができる。
【0027】
2-ヘプタノンの含有量に関しては、紅茶飲料中の酢酸ヘキシルと2-ヘプタノンとの濃度比(以下、単に「濃度比」ともいう。)で、1:0.02~0.5の範囲となるような割合の含有量であることが好ましく、1:0.05~0.3の範囲となるような割合の含有量であることがより好ましく、1:0.1~0.2の範囲となるような割合の含有量であることが更に好ましい。酢酸ヘキシルとの関係でこのような濃度比の範囲となるように2-ヘプタノンを含有させることで、本発明が奏する効果をより一層高めることができる。
【0028】
具体的に、紅茶飲料中の好ましい2-ヘプタノンの含有量としては、上述した酢酸ヘキシル濃度及び好ましい濃度比との関係で、1~250ppbの範囲となる。華やかな紅茶感と後味の良さをより良好とする観点から、2-ヘプタノンの含有量は、3ppb以上であることが好ましく、5ppb以上であることがより好ましく、8ppb以上であることが更に好ましい。
【0029】
但し、2-ヘプタノンの含有量が多すぎると、「青臭さ」が発生する場合がある。そのような青臭さの発生を抑制しつつ、華やかな紅茶感と後味の良さをより良好とする観点から、2-ヘプタノンの含有量は、200ppb以下であることが好ましく、100ppb以下であることがより好ましく、50ppb以下であることが更に好ましい。
【0030】
紅茶飲料中の2-ヘプタノンの含有量は、2-ヘプタノンの化合物の配合量により調整できる。
【0031】
本明細書において、2-ヘプタノンの含有量は、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS)を用いて測定する。GC-MSの測定は例えば実施例に示す条件に基づいて行うことができる。
【0032】
[乳固形分]
上述のとおり、紅茶飲料中に2-ヘプタノンが含まれることで、華やかさや後味の良さがより一層増強されるが、他方で、青臭さが発生する場合がある。したがって、そのような青臭さを感じにくく、本発明が奏する効果をより増強する観点から、紅茶飲料は乳固形分を含むものであることが好ましい。本明細書において乳固形分とは、乳脂肪分と無脂乳固形分とを合わせたものを意味する。
【0033】
乳原料は、特に限定されないが、例えば、牛乳、豆乳、練乳、脱脂乳、還元乳(全粉乳、脱脂粉乳又は調製粉乳から還元した還元乳)、クリーム等を使用できる。
【0034】
乳原料の含有量は、特に限定されず、所望のミルク感や、紅茶感、全体のおいしさ、乳成分の種類等を考慮して適宜設定することができる。例えば、乳固形分量が紅茶飲料あたり1~5質量%となるように調整することができ、2~3質量%となるように調整することもできる。なお、乳固形分量はフーリエ変換型中間赤外線で基準液とサンプルのスペクトルを測定し、特定の波長部分の差を比較することで測定する。
【0035】
[その他の成分]
紅茶飲料においては、その効果を阻害しない範囲で、一般的な紅茶飲料に通常用いられる他の原料や添加剤を適宜配合できる。なお、配合量は目的とする効果に応じて適宜調整できる。具体的には、例えば、香料、甘味料、糖類、機能性成分、保存料、安定剤、調味料、酸味料、酸化防止剤、ビタミン類、ミネラル分、色素成分、乳化剤、アミノ酸、pH調整剤等が挙げられる。
【0036】
[容器]
紅茶飲料は、容器に充填することで容器詰紅茶飲料とすることができる。容器としては、飲料業界で公知の密封容器であればよく、適宜選択して用いることができ、流通形態や消費者ニーズに応じて適宜決定できる。その具体例としては、ガラス、プラスチック(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等)、紙、アルミ、スチール等の単体、又はこれらの複合材料又は積層材料からなる密封容器が挙げられる。特に、透明(半透明も含む)容器が好ましい。透明容器は全体が透明であっても、一部が透明であってもよい。
【0037】
<2.紅茶飲料の製造方法>
紅茶飲料は、上記の成分の含有量を適宜調整して、水等とともに、飲料の製造において採用される任意の条件や方法を用いて混合等することで製造できる。上記の成分を混合する条件や装置等は特に限定されず、同時に添加し混合してもよく、あるいは随時添加し混合してもよい。
【0038】
製造された紅茶飲料は、容器に充填して容器詰紅茶飲料とすることができ、容器に充填する前又は後に、適宜殺菌処理してもよい。
【実施例
【0039】
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
【0040】
<試験1:酢酸ヘキシル添加による検証>
[紅茶サンプル(基準品1)の作製]
紅茶葉90gを、90℃の純水2700gに入れ8分間抽出し、2号ろ紙でろ過後、冷却して抽出液を得た。得られた抽出液に、L-アスコルビン酸ナトリウム2.7g、重炭酸ナトリウム3.6gをそれぞれ添加し、純水で9000gに定容して調合液を得た。得られた調合液をUHT殺菌した後、無菌的にPETボトルに充填し、紅茶サンプル(基準品1)を得た。
【0041】
[分析]
得られた紅茶飲料中の酢酸ヘキシル、2-ヘプタノン、及びタンニンの含有量、並びにpHは、下記の方法に従い分析した。
【0042】
(酢酸ヘキシル及び2-ヘプタノンの含有量)
紅茶飲料中における酢酸ヘキシル及び2-ヘプタノンの含有量は、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS)を用いて下記の条件にて測定した。具体的には、ゲステル社製MPSを用いるMVM(Multi Volatile Method)法によりGC-MS(Agilent Technologies社製)に導入した。
・機器 GC:Agilent Technologies社製 7890B
MS:Agilent Technologies社製 5977B MSD
HS:Gerstel社製MPS
TUBE:Tenax TA、CarbopackB/X
・カラム:DB-WAX UI 0.25mm×30m×0.25μm
・定量イオン:酢酸ヘキシルm/z=84、2-ヘプタノンm/z=58
・温度条件:40℃(2分)~8℃/分→240℃(10分)
・キャリアガス流量:He 1mL/分
・注入法:スプリットレス
・イオン源温度:230℃
【0043】
(タンニンの含有量)
タンニンの含有量は、酒石酸鉄法を用いて測定した。
【0044】
(pH)
pHは、液温20℃となるように調整してから、pHメーター(HM-30R、東亜ディーケーケー社製)を用いて測定した。
【0045】
得られた基準品1において、酢酸ヘキシルは不検出、2-ヘプタノン濃度は0.65ppb、タンニンは90mg/100mL、pHは6.5であった。
【0046】
[試験品の紅茶飲料の作製]
調製した基準品1に、酢酸ヘキシルを添加して、試験サンプルである紅茶飲料を作製した。
【0047】
[官能評価]
作製した紅茶飲料について、専門パネル7名にて官能評価を行った。官能評価は、具体的には、基準品1に対して「飲みやすさ」、「後味の良さ」、「華やかさ」、「香ばしさ」、「後味の苦渋み」について比較評価することで行った。各評価点数は、下記の採点基準に従って各パネルがつけた評価点数の平均値として算出した。なお、「飲みやすさ」は「すっきりゴクゴク飲めるか否か」を、「後味の良さ」は「後味に強い苦渋みのようなネガティブな印象があるか否か」を、「華やかさ」は「トップの華やかさ」を、「香ばしさ」は「トップの香ばしさ」を、「後味の苦渋み」は「後味に残る苦渋みの強さ」をそれぞれ評価した。
【0048】
「飲みやすさ」、「後味の良さ」については、下記の評価基準を用いて、7段階で評価した。
7点:かなり良い
6点:良い
5点:やや良い
4点:基準品と同等
3点:やや悪い
2点:悪い
1点:かなり悪い
【0049】
「華やかさ」、「香ばしさ」については、下記の評価基準を用いて、7段階で評価した。
7点:かなり強い
6点:強い
5点:やや強い
4点:基準品と同等
3点:やや弱い
2点:弱い
1点:かなり弱い
【0050】
「後味の苦渋み」については、下記の評価基準を用いて、7段階で評価した。
7点:かなりある
6点:ある
5点:ややある
4点:基準品と同等
3点:比較的ある
2点:少しある
1点:ない
【0051】
かかる評価においては、基準品1の点数を基準値(4点)として評価した。
【0052】
[結果]
下記表1に紅茶飲料中の酢酸ヘキシルの含有量及び官能評価結果を示す。なお、「飲みやすさ」、「後味の良さ」、「華やかさ」、「香ばしさ」については点数が大きくなるほど評価が高いことを意味する。また、「後味の苦渋み」については点数が小さくなるほど感じられにくくなっており評価が高いことを意味する。
【0053】
【表1】
【0054】
表1に示されるとおり、いずれの実施例においても、基準品に比べて「飲みやすさ」、「後味の良さ」、「華やかさ」が増強され、「後味の苦渋み」が抑制された。
【0055】
他方で、酢酸ヘキシルを含有させたものの、所定の含有量より少ない比較例では、「後味の良さ」や「華やかさ」の向上がみられなかった。
【0056】
<試験2:酢酸ヘキシル及び2-ヘプタノン添加による検証>
[紅茶サンプル(基準品2)の作製]
紅茶葉10gを、90℃のイオン交換水300gに入れ、5分間抽出した。その後、固液分離(ろ過)処理し、抽出液を得た。得られた抽出液に、脱脂粉乳25g、砂糖50g、ビタミンC0.3g、乳化剤1gをそれぞれ添加し、イオン交換水で900gにした後、重曹でpH7.0に調整した後に、純水で1kgに定容して調合液を得た。得られた調合液をUHT殺菌した後、無菌的にPETボトルに充填し、紅茶サンプル(基準品2)を得た。
【0057】
[分析]
紅茶飲料中における酢酸ヘキシル及び2-ヘプタノン含有量は、試験1と同様の方法を用いて測定した。
【0058】
(タンニンの含有量)
タンニンの含有量は、フォーリンデニス法を用いて測定した。
【0059】
(乳固形分含有量)
乳固形分含有量は、ミルコスキャンFT1(フォス・ジャパン社製)を用いて測定した。
【0060】
(糖度)
糖度測定は、20℃のサンプルに対して、デジタル示差濃度計DD-7(アタゴ社製)を用いて行った。
【0061】
得られた基準品2において、酢酸ヘキシルは不検出、2-ヘプタノン濃度は1.5ppb、タンニンは94mg/100mL、乳固形分含有量は2.63質量%、糖度は8.0°Brixであった。
【0062】
[試験品の紅茶飲料の作製]
調製した基準品2に、酢酸ヘキシルを100ppb又は200ppbとなるように添加し、更に2-ヘプタノンを添加して、試験サンプルである紅茶飲料を作製した。
【0063】
[官能評価]
作製した紅茶飲料について、専門パネル7名にて官能評価を行った。官能評価は、具体的には、基準品2に対して「飲みやすさ」、「後味の良さ」、「華やかさ」、「ミルク感」、「青臭さ」について比較評価することで行った。各評価点数は、下記の採点基準に従って各パネルがつけた評価点数の平均値として算出した。なお、「飲みやすさ」、「後味の良さ」、「華やかさ」は試験1で説明した評価基準と同様である。「ミルク感」は「牛乳に感じられる乳の香り」を、「青臭さ」は「葉に感じられるような、乳には感じられない青い香り」をそれぞれ評価した。
【0064】
「ミルク感」については、下記の評価基準を用いて、7段階で評価した。
7点:かなり強い
6点:強い
5点:やや強い
4点:基準品と同等
3点:やや弱い
2点:弱い
1点:かなり弱い
【0065】
「青臭さ」については、下記の評価基準を用いて、7段階で評価した。
7点:かなりある
6点:ある
5点:ややある
4点:基準品と同等
3点:比較的ある
2点:少しある
1点:ない
【0066】
かかる評価においては、基準品2の点数を基準値(4点)として評価した。
【0067】
[結果]
下記表2及び3に酢酸ヘキシル及び2-ヘプタノンの含有量、酢酸ヘキシルの含有量に対する2-ヘプタノンの含有量の比、並びに官能評価結果を示す。なお、「飲みやすさ」、「後味の良さ」、「華やかさ」「ミルク感」については点数が大きくなるほど評価が高いことを意味する。また、「青臭さ」については点数が小さくなるほど感じられにくくなっており評価が高いことを意味する。また、表中の「濃度比」の欄の数値は、酢酸ヘキシルを1としたときの2-ヘプタノンの濃度比の数値である。
【0068】
【表2】
【0069】
【表3】
【0070】
表2及び3に示されるとおり、所定量の酢酸ヘキシルに加えて、所定量の2-ヘプタノンを添加することで、「飲みやすさ」、「後味の良さ」、「華やかさ」が更に増強されることが示された。