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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】極端紫外線リソグラフィ装置
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20240828BHJP
   G03F 1/62 20120101ALI20240828BHJP
【FI】
G03F7/20 503
G03F1/62
【請求項の数】 6
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020105426
(22)【出願日】2020-06-18
(65)【公開番号】P2021036311
(43)【公開日】2021-03-04
【審査請求日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】19185767.1
(32)【優先日】2019-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】514156563
【氏名又は名称】アイメック・ヴェーゼットウェー
【氏名又は名称原語表記】IMEC VZW
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【弁理士】
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】イェルン-ホルガー・フランケ
(72)【発明者】
【氏名】エミリー・ギャラガー
【審査官】植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-124463(JP,A)
【文献】特表2011-530184(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 1/62
G03F 1/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
目標ウェハ(250)に描かれるリソグラフィパターンを備えるレチクル(220)と、
レチクル(220)の前で平行に取り付けられた光透過性ペリクル膜(232)であって、前記ペリクル膜(232)は、優先散乱軸(214)に沿って透過光を散乱する、光透過性ペリクル膜と、
前記ペリクル膜(232)を通って前記レチクル(220)に光を当てるように構成された極端紫外線、EUV、照明システム(210)であって、前記EUV照明システム(210)によって提供される照度分布(212)は、EUV照明システム(210)のソース瞳孔平面に見えるように非対称である、EUV照明システムと、を備え、
前記レチクル(220)によって反射され、その後前記ペリクル膜(232)を透過する光は、非散乱部分と、前記ペリクル膜(232)によって散乱される光によって形成される散乱部分を備える極端紫外線リソグラフィ、EUVL、装置(20)であって、
前記EUVL装置(20)は、さらに
前記レチクル(220)によって反射され、その後前記ペリクル膜(232)を透過する前記光の一部を捕獲するように構成された受け入れ錐体(260)を有する描画システム(240)であって、前記描画システム(240)は、目標ウェハ(250)上に捕獲部分を投影するように構成される、描画システムを備え、
前記優先散乱軸(214)は、前記捕獲部分の散乱部分前記優先散乱軸(214)の少なくとも1つの他の方向と比較して減らされるように、前記照度分布(212)に対して配向され
EUV照明システム(210)によって提供された非対称照度分布(212)は、主に双極子形状または四重極形状照度分布であるEUVL装置(20)。
【請求項2】
前記描画システム(240)の受け入れ錐体(260)の断面(262)は、円である、請求項1に記載のEUVL装置(20)。
【請求項3】
前記ペリクル膜(232)は、少なくとも1枚のカーボンナノチューブ束を備える、請求項2または3に記載のEUVL装置(20)。
【請求項4】
前記少なくとも1枚のカーボンナノチューブ束は、複数の実質的に平行なカーボンナノチューブ束を備える、請求項3に記載のEUVL装置(20)。
【請求項5】
前記照度分布(212)は、ソースピクセル(213)の分布を備える、請求項1乃至4のいずれか1項に記載のEUVL装置(20)
【請求項6】
照度分布(212)は、ソースピクセル(213)が、ソース瞳孔平面の対向する2つの象限内に大部分が収まるように、レチクル(220)のリソグラフィパターンに対して最適化され、優先散乱軸(214)は、幾何学的なソース瞳軸(263)に対して45°以下で配向され、前記幾何学的なソース瞳軸(263)は、前記対向する2つの象限のそれぞれを2つの等しい大きさの八分儀に分けるように延在する、請求項5に記載のEUVL装置(20)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、EUVL装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造において、様々なフォトリソグラフィ工程は、装置及び回路パターンを画定する方向で広く用いられる。画定される特徴の大きさに依存して、異なる光リソグラフィ工程が用いられる。フォトリソグラフィ工程において、フォトマスクまたはレチクルに存在するパターンは、レチクルに光を当てることによって感光性フォトレジストコーティングに移される。典型的に、光は、レチクルパターンによって調節され、感光性フォトレジストにコーティングされたウェハ上に描かれる。
【0003】
従来のフォトリソグラフィにおいて、ペリクルは、ハンドリング及び露光の間、汚染からレチクルを保護するために、レチクルに一般に配置される。ペリクルは、そうでなければレチクルのパターンの忠実性、及びそのためウェハへのパターンの転移に負の影響を与える望まれない粒子からとりわけレチクルを保護するであろう。
【0004】
パターンはより小さくなるので、より短い波長を用いることに興味がある。極端紫外線リソグラフィ、EUVLにおいて、約13.5nmの波長が頻繁に用いられる。短波長へのシフトは、EUV放射へ高い透過率を提供し、EUVL装置の一般に厳しい条件に耐えることができる新しいペリクルデザインの探査をもたらした。
【発明の概要】
【0005】
本発明の概念は、極端紫外線、EUVL、装置に用いることを意図する典型的なペリクルデザインが、ペリクルを透過する光の無視できない、指向性優先散乱を引き起こすことの認識に基づく。もし、ペリクルによって散乱された光がEUVL装置の描画システムによって集められるならば、これは、目標ウェハに転移されるパターンの忠実性を減らすことを引き起こすかもしれない。例えば、ペリクルによって散乱された光は、EUVL装置の描画エラーなど、光学的問題を引き起こすかもしれない。
【0006】
ペリクルの光散乱の問題に対処するEUVL装置を提供することが目的である。さらにまたは代替の目的は、次から理解される。
【0007】
第1の態様によると、極端紫外線リソグラフィ、EUVL、装置が提供される。EUVL装置は、目標ウェハに描かれるリソグラフィパターンを備えるレチクルと、レチクルの前で平行に取り付けられた光透過性ペリクル膜であって、ペリクル膜は、優先散乱軸に沿って透過光を散乱する、光透過性ペリクル膜と、ペリクル膜を通ってレチクルに光を当てるように構成された極端紫外線、EUV、照明システムであって、EUV照明システムによって提供される照度分布は、EUV照明システムのソース瞳孔平面に見えるように非対称である、EUV照明システムと、を備え、レチクルによって反射され、その後ペリクル膜を透過する光は、非散乱部分と、ペリクル膜によって散乱される光によって形成される散乱部分を備える極端紫外線リソグラフィ、EUVL、装置であって、EUVL装置は、さらにレチクルによって反射され、その後ペリクル膜を透過する光の一部を捕獲するように構成された受け入れ錐体を有する描画システムであって、描画システムは、目標ウェハ上に捕獲部分を投影するように構成される、描画システムを備え、優先散乱軸は、捕獲部分の散乱部分が、優先散乱軸の少なくとも1つの他の方向と比較して減らされるように照度分布に対して配向される。
【0008】
EUVL分野の状態において、非対称照度分布は、ソース瞳孔平面のいくつかの部分が他より光を当てることがさらに重要であるので、レチクルから目標ウェハへの改善されたパターン転移のために一般に用いられる。一般にペリクル膜を透過する光の非散乱部分は、散乱部分より大きいまたはとても大きい。例えば、非散乱部分は、ペリクル膜を透過する光の90%-95%であり、散乱部分は、ペリクル膜を透過する光の5%-10%である。光の散乱部分は、一般にレチクルから目標ウェハへのパターン転移の目的において、不使用で、または有害でさえある。しかしながら、優先散乱軸を有するペリクル膜の使用により、描画システムの受け入れ錐体によって実際に捕らえられる散乱光の総量は、ペリクル膜の意図的な配向(及び結果としてその優先散乱軸の意図的な配向)によって減らされることができる。言い換えると、捕獲された非散乱光に対する捕獲された散乱光の割合は、減らされる。照度分布に対する優先散乱軸の配向は、割合が最小であるようにすることが好ましい。
【0009】
描画システムの受け入れ錐体の断面は、円である。
【0010】
発明のEUVL装置の上記議論された利点は、そのため円/対称断面を備える受け入れ錐体を有する描画システムで享受され、リソグラフィ用途の分野の様々な状態で一般に用いられる。別の言い方をすると、目標ウェハ上に描かれる散乱光の量は、描画システムのいかなる複雑な再設計なく減らされる。
【0011】
ペリクル膜は、少なくとも1枚のカーボンナノチューブ束を備える。少なくとも1枚のカーボンナノチューブ束は、特に複数の実質的に平行なカーボンナノチューブ束を備える。
【0012】
複数枚のカーボンナノチューブ、CNT束に基づくペリクル膜は、EUV光の低い吸収を提供する。CNT束の細長い形状及び平行な配置により、しかしながら、ペリクル膜を透過する光をCNT束の長手方向の延長に垂直な方向に大部分、散乱させる。
【0013】
その結果、CNTベースのペリクル膜によって提供される増加した構造規則性は、CNT束の長手方向の延長に垂直、少なくとも実質的に垂直な区別できる優先散乱軸を有するペリクル膜に変換する。これにより、描画システムの受け入れ錐体の外側のペリクル膜によって散乱された光によって形成される散乱部分の大きな割合を偏向させることを促進する。目標ウェハの移動パターンの忠実性は、それにより改善される。
【0014】
照度分布は、ソースピクセルの分布を備える。
【0015】
ソースピクセルは、光がレチクルを照らす方向、または方向の狭い範囲である。
【0016】
照度分布は、ソースピクセルが、ソース瞳孔平面の対向する2つの象限内に大部分が収まり、優先散乱軸は、幾何学的なソース瞳軸に対して45°以下(好ましくは0°)に配向されるように、レチクルのリソグラフィパターンに対して最適化される。幾何学的なソース瞳軸は、2つの等しい大きさの八分儀に当該対向する2つの象限のそれぞれを分けるために延在するように定義される。
【0017】
レチクルのリソグラフィパターンに対して照度分布を最適化することと関連する利点は、目標ウェハに移されるパターンの忠実性が改善されることである。そのようなソースピクセル分布のために、上記議論の視点において、散乱光のほとんどが当該象限に収まることが理解されるであろう。幾何学的なソース瞳軸に対して45°以下の角度の優先散乱軸の配向により、散乱光/散乱ソースピクセルを、描画システムの受け入れ錐体の外側に向けて増加させ、0°において最大にすることができる。
【0018】
EUV照明システムによって提供される非対称照度分布は、大部分が双極子形状または四重極形状照度分布である。
【0019】
本開示の適用性のさらなる範囲は、以下に与えられる詳細な説明から明白になるであろう。しかしながら、詳細な説明及び具体的な実施例は、本発明の概念の好ましい変形を示すが、発明の範囲内の様々な変更及び改良が詳細な説明から当業者に明白になるので、説明のみを手段として与えられることが理解されるべきである。
【0020】
本発明の上記及び他の態様は、これから本発明の実施形態を示す添付された図を参照してさらに詳細に記載される。図は、特定の実施形態に発明を限定して考えられるべきでなく、代わりに、それらは発明を説明し、理解するために用いられる。
【0021】
図に描かれるように、層及び領域の大きさは、説明の目的のために誇張され、そのため本発明の実施形態の一般的な構造を描くために提供される。同様の符号は、通して同様の要素を指す。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1A】極端紫外線リソグラフィ、EUVL、装置の概略図を描く。
図1B】EUVL装置のソース瞳孔平面の、重ねられた受け入れ錐体の断面を備える非対称照度分布を描く。
図1C】EUVL装置のソース瞳孔平面の、散乱パターンを備える単一ソースピクセルと、重ねられた受け入れ錐体の断面を描く。
図2A】EUVL装置のソース瞳孔平面の、優先散乱軸が、第1の方向に沿って配向されるソースピクセルを備える照度分布を描く。
図2B】EUVL装置のソース瞳孔平面の、優先散乱軸がそれぞれのソースピクセルから断面の境界への平均距離を最小化することによって見つけられる方向に沿って配向される、ソースピクセルを備える照度分布を描く。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の概念は、これから発明の概念の現在の好ましい変形が示される、添付された図面を参照して以後、さらに完全に記載されるであろう。この発明の概念は、しかしながら多くの異なる形態で実施され、この中に記載された変形に限定して解釈されるべきでなく、むしろ、これらの変形は、完璧さ、完全性のために提供され、完全に当業者に本発明の概念の範囲を伝える。
【0024】
図1Aは、例えばEUVLスキャナなど、極端紫外線リソグラフィ、EUVL、装置20の概略図を描く。EUVL装置20は、レチクル220、光透過ペリクル膜232、極端紫外線、EUV、照明システム210、及び描画システム240を備える。EUVL装置20は、図1Aに例示されるように光軸200を有する。EUVL装置20は、EUVLスキャナである。
【0025】
レチクル220は、目標ウェハ250に描かれるリソグラフィパターンを備える。レチクル220は、レチクル220に作用する光を反射するように構成される。レチクル220のリソグラフィパターンは、複数の回折次数でレチクル220に作用する光を回折する。レチクル220は、レチクル面を定義する。リソグラフィパターンは、例えば半導体フィンまたはピラーなどの半導体構造をパターニングするためのラインのために及びバックエンドオブライン相互接続構造の形成によって用いられる、例えば「印刷」パターンの目的のために、半導体装置の製造で従来用いられる任意のタイプであることができる。例として、レチクルは、例えば複数の平行に空間を空けて離れた線を備える、ラインベースのレチクルパターンを備える。
【0026】
光透過ペリクル膜232は、レチクル220の前に平行に取り付けられる。ペリクル膜232は、図1で示されるように、EUV照明システム210から見えるようにレチクル220の前に取り付けられる。ペリクル膜232は、ペリクル膜232が取り付けられるフレームを備えるペリクル230に含まれる。ペリクル膜232は、EUV放射を透過する。EUV放射は、15nmより短い、好ましくは13.3から13.7nmの範囲の波長を有する電磁放射(すなわち光)である。ペリクル膜232は、例として少なくとも80%、好ましくは90%より大きいEUVシングルパス透過を示す。ペリクル膜232を透過する光のうち一部は、ペリクル膜232によって散乱される。この理由で、ペリクル膜232を透過する光は、非散乱部分と散乱部分を備える。ペリクル膜232の構造は、ペリクル膜232が優先散乱軸214に沿って透過光を散乱するようにある。考慮されるように、優先散乱軸に沿って透過光の散乱を提供するペリクル膜232は、もし等方性照度分布の光で描かれるならば、優先散乱軸214に平行な主軸を有する楕円散乱パターンに等方性照度分布を散乱する。
【0027】
ペリクル膜232は、少なくとも1枚のカーボンナノチューブ束を備える。カーボンナノチューブ束は、少なくとも10nmの幅を有する。少なくとも1枚のカーボンナノチューブ束は、複数の実質的に平行なカーボンナノチューブ束を備える。複数の実質的に平行なカーボンナノチューブ束は、ペリクル膜232に実質的に平行である。複数の実質的に平行なカーボンナノチューブ束のそれぞれのカーボンナノチューブ束は、隣のカーボンナノチューブ束から少なくとも10nmから500nmの距離によって分離される。複数の実質的に平行なカーボンナノチューブ束は、準周期的パターンで配置される。準周期的パターンは、少なくとも50nmの平均ピッチを有する。ペリクル膜232のカーボンナノチューブベースの構造は、有利であるが、EUVL装置20は、優先散乱軸に沿って透過光を散乱することを提供する任意のタイプのEUV透過膜を備えて用いられることが考えられる。
【0028】
EUV照明システム210は、ペリクル膜232を通るレチクル220に光を当てるように構成される。レチクル220から目標ウェハ250への忠実性の高い転移ができるために、EUV照明装置210は、EUV照明システム210のソース瞳孔平面で見えるように非対称である照度分布212で光を放射するように構成される。ソース瞳孔平面は、EUV照明システム210の射出瞳211の平面と一致する。ソース瞳孔平面は、EUV照明システム210とペリクル膜232の間の平面である。ソース瞳孔平面は、EUV照明システム210の最後のビーム形成光学系とペリクル膜232の間の平面である。ソース瞳孔平面は、EUVL装置20の光軸200に直交する。EUV照明システム210によって放射される光は、照明システム210のEUV光源によって生成される。EUV光源は、例えばプラズマ光源で誘起されたレーザなどの、従来のタイプのものである。EUV光源は、広い範囲の波長の光を放射する。EUV照明システム210は、EUV光源によって放射された光をフィルタするように構成された光学系を備え、そのため狭い波長範囲の光がペリクル膜232に到達する。例えば、ペリクル膜232に届く光は、15nmより短い、好ましくは13.3から13.7nmの範囲内の波長を有する。EUV照明システム210は、EUV光源によって発生された光を成形するように構成された光学系を備える。さらに特に、光学系は、照明システム210の照度分布212を成形し、レチクル220に光を当てるために光を導くように構成される。光学系は、例えばEUV反射ミラーなど、反射光学系である。光学系は、コリメート光学系及び/またはレチクル220に光を当てるために配置された光学系を備える。
【0029】
上記議論から理解されるように、レチクル220によって反射され、その後ペリクル膜232を透過するEUV照明装置210からの光は、非散乱部分と、ペリクル膜232によって散乱された光によって形成される散乱部分を含む。光の非散乱部分は、パターン転移のために役立つ部分を表すことが理解されるべきである。非散乱部分は、従ってレチクル220によって反射される光を含み、その少なくとも一部がレチクル220によって回折される。光の非散乱部分は、第1に(散乱されることなく)ペリクル膜232を透過し、その後レチクル220によって反射され、そしてその後(散乱されることなく)ペリクル膜232を再び透過する光によって形成されることが理解されるべきである。光の散乱部分はその一方で、パターン転移に役立たないまたは有害でさえある光の部分を表す。次に散乱部分の参照がなされ、第1にペリクル膜232を透過し(第1の通過)、その後レチクル220によって反射され、そしてその後ペリクル膜232を再び透過(第2の通過)する光を参照し、光は、第1と第2の通過の少なくとも1つの間散乱を受ける。
【0030】
描画システム240は、レチクル220によって反射され、その後ペリクル膜232を透過する当該光の一部を捕らえるように構成された受け入れ錐体260を有する。描画システム240は、目標ウェハ250上に捕獲部分を投影するように構成される。描画システム240は、光学系を備える。光学系は、反射光学系である。
【0031】
描画システム240の受け入れ錐体260の断面262は円である。描画システム240の受け入れ錐体260は、例えば0.05から0.125の範囲の(レチクル側)開口数に対応する。
【0032】
優先散乱軸214は、照度分布212に対して配向され、そのため捕獲部分の散乱部分が、優先散乱軸214の少なくとも1つの他の配向と比較して減らされる。言い換えると、受け入れ錐体260によって捕獲される非散乱部分に対する受け入れ錐体260によって捕獲される散乱部分の割合は、減らされ、好ましくは最小にされる。
【0033】
当該分野で知られているように、照度分布212は、ソースピクセル213の分布を含むものとして特徴付けられる。従って、それぞれのソースピクセルに関連する光は、ペリクル膜232を透過し、その後レチクル220によって反射され、そしてその後ペリクル膜232を透過する。
【0034】
EUV照明システム210によって提供される非対称照度分布212は、レチクル220のリソグラフィパターンを目標ウェハ250へ転移することに対して最適化される。照度分布212は、ソースピクセル213が、大部分がソース瞳孔平面の相互に対向する2つの象限2622,2624内に入るように、レチクル220のリソグラフィパターンに対して最適化される。幾何学的なソース瞳軸263は、2つの等しい大きさの八分儀に当該対向する2つの象限2622,2624のそれぞれを分割するように延在し、優先散乱軸214は、ソース瞳軸263に対して45°以下の角度に配向する。
【0035】
EUV照明システム210によって提供される非対称照度分布212は、主に双極子形状または四重極形状照度分布である。主に双極子形状または四重極形状照度分布に関連する光は、主方向に垂直な異なる方向と比較して、主方向に沿って大幅に分離することができる。主方向は、幾何学的なソース瞳軸263と平行であり、双極子形状または四重極形状照度分布と関連する光は、大部分が相互に対向する2つの象限2622,2624内に収まる。主な双極子形状照度分布は、主方向に垂直な方向に沿って配向されるライン及びスペースを備えるリソグラフィパターンを、特にレチクル220から目標ウェハ250に移すために最適化される。ライン及び/またはスペースが時に壊れる場合、四重極形状照度分布は、レチクル220から目標ウェハ250へのパターン転移のために最適である。パターン転移のための最適な照度分布を決定するための当該技術分野の標準的なアプローチは、一般にソースとマスクの最適化(SMO)と呼ばれる数値手法である。一般にソース(すなわち照度分布212)とマスク(すなわちレチクル220のリソグラフィパターン)は、目標ウェハ250上にパターンを投影することを改善するために共設計される。
【0036】
図1Bは、EUVL装置20のソース瞳孔平面の、重ねられた受け入れ錐体260の断面262を備える非対称照度分布212を描く。非対称照度分布212は、光がレチクル220を照らす異なる角度/方向の分布として見える。図1Bに示される例において、ペリクル膜232によって導入された光散乱は、示されない。非対称照度分布212は、ソースピクセル213の分布として描かれる。図1Bに示される実施例において、ソースピクセル213は、大部分ソース瞳孔平面の第1の象限2622及び第2の象限2624内に収まる。言い換えると、ソースピクセル213は、大部分ソース瞳孔平面の対向する2つの象限2622,2624内に収まる。幾何学的ソース瞳軸263は、図1Bに示されるように、等しい大きさの八分儀に第1の象限2622と第2の象限2624に分けるように延在する。
【0037】
それぞれのソースピクセルに関連する光は、ペリクル膜232を透過するので、その光の一部は、大部分優先散乱軸214と平行な方向に散乱される。その結果、図1Bのそれぞれのソースピクセルと関連する光の少なくとも一部は、優先散乱軸214に沿って散乱される(図1Bで図示されず)。そのため、幾何学的なソース瞳軸263と平行であるようにペリクル膜232の優先散乱軸214を配向することによって、描画システム240の受け入れ錐体260の断面262内の光の散乱部分は、最小化される。これは、図1Cに示されるように、断面262の境界に近い単一ソースピクセル213Aを考慮することによって理解される。図1Cにおいて、単一ソースピクセル213Aに関連する光は、ペリクル膜232によって優先散乱軸214に沿う散乱から生じる例示的な散乱パターン215aとともに示される。散乱パターン215aは例示のみであり、例えば図1Cに描かれたものよりより細長くされた/ほど細長くない、他の形状を有することが理解されるべきである。図1Cに示される例において、優先散乱軸214は、幾何学的なソース瞳軸263に沿って配向される。単一ソースピクセル213Aと関連する光の散乱パターン215aの方向は、優先散乱軸214と同じ方向に配向されるので、また幾何学的なソース瞳軸263に沿って配向される。図1Cに見られるように、単一ソースピクセル213Aと関連する光の散乱パターン215aの一部は、受け入れ錐体260の断面262の外側に収まり、それゆえ描画システム240によって捕獲されない。それぞれのソースピクセル(例えば図1Bに示されるソースピクセル213)と関連する光は、図1Cの単一ソースピクセル213Aと関連する光と同じ方法で散乱されるので、断面262の内側のペリクル膜232によって散乱される(及びそのため描画システム240によって捕獲される)光の部分は、幾何学的なソース瞳軸263と平行に優先散乱軸214を配向することによって減らされる。光の散乱部分は、幾何学的なソース瞳軸263に対して45°未満の角度において、優先散乱軸214を配向することによって、45°より大きい配向と比較して、減らされることが理解される。
【0038】
ここから、捕獲部分の散乱部分が最小化されるように、照度分布212に対して優先散乱軸214を配向することを見つける例示的なアルゴリズムは、図2を参照して記載される。捕獲部分の散乱部分が最小化されるように照度分布212に対する優先散乱軸214の配向は、照度分布212に対する優先散乱軸214の配向を見つけることによって決定され、そのため、それぞれのソースピクセルから優先散乱軸214の方向に沿って受け入れ錐体260の断面262の境界への距離の加重和は、最小化される。加重和のそれぞれの重みは、受け入れ錐体260の断面262内の加重平均のそれぞれのソースピクセルの位置に基づく。加重和のそれぞれの重みは、散乱強度の指数関数的減衰を説明することができる。それゆえ、優先散乱軸214の配向は、Nソースピクセル213における次の最適化問題によって見つけられる。
【0039】
【数1】
【0040】
ここでαは、優先散乱軸214の配向であり、Wは、i番目ソースピクセルの重みであり、r(α)は、i番目のソースピクセルから優先散乱軸214の配向αに沿った断面262の境界への距離である。上記最適化問題を解くことによって、ソースピクセル213から受け入れ錐体260の断面262の境界への優先散乱軸214に沿った平均距離を最小化する優先散乱軸214の配向αminは、見つけられる。
【0041】
図2Aで示される単純化された例において、照度分布212は、第1のソースピクセル213-1、第2のソースピクセル213-2、及び第3のソースピクセル213-3を備える。照度分布は、一般に例えば図1Bに描かれるように、多くの数のソースピクセル213を備えることが理解されるべきである。図2Aの優先散乱軸214は、照度分布212に対して配向αに配向される。それぞれのソースピクセル213-1、213-2、213-3は、優先散乱軸214に平行な方向の受け入れ錐体260の断面部分262の境界からの(図1D及び図1EでR1、R2、R3と標識付けされる)距離r、r、rにある。そのため、優先散乱軸214の配向を変えることによって、それぞれのソースピクセルから断面262の境界への距離rは、対応して変わる。上記最適化問題を解くことによって、ソースピクセル213から断面262の境界への平均距離を最小化する優先散乱軸214の配向αminは見つけられる。その後、ソースピクセル213-1、213-2、213-3と関連する光が、優先散乱軸214に沿って優先的に散乱され、配向αminに応じて優先散乱軸214を配向するので(すなわちそれぞれのソースピクセル213-1、213-2、213-3から断面262の境界への優先散乱軸214に沿う平均距離を最小化する)、光の捕獲部分の散乱部分(すなわち受け入れ錐体260の断面262内の光)は最小化される。
【0042】
上述の最適化を解くことによって決定される図2Aで示される例の優先散乱軸214の配向は、図2Bで示される。また、図2Bで見られるように、最適化問題を解くことによって見つけられる方向に優先散乱軸214を配向することにより、ソースピクセル213は、大部分、優先散乱軸214が等しい大きさの八分儀に対向する象限に分けられるように象限が定義される、対向する2つの象限内に収まる。言い換えると、上記最適化問題を解くことによって見つけられ優先散乱軸214の配向は、幾何学的なソース瞳軸263と平行である。
【0043】
優先散乱軸214の配向は、上記されたような他の方法で決定されることが理解されるべきである。例えば、他の数値手法は、捕獲部分の散乱部分が減らされるように、照度分布に対して優先散乱軸の配向を決定するために用いられる。他の実施例のように、優先散乱軸の配向は、配向が捕獲部分の散乱部分を減少/最小化する決定をするために、優先軸の異なる配向が試される試行錯誤アプローチによって決定されてもよい。
【0044】
当業者は、決して本発明の概念が上記された好ましい変形に限定されないことを自覚する。それどころか多くの改良及びバリエーションは添付された請求項の範囲内で可能である。
【0045】
さらに、開示された変形へのバリエーションは、図、開示、添付された請求項の教示から請求された発明を実施する際に、当業者によって理解され、もたらされることができる。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B