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特許7545249無線通信ユニット及びそれを用いた無線ネットワークシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】無線通信ユニット及びそれを用いた無線ネットワークシステム
(51)【国際特許分類】
   H04W 4/40 20180101AFI20240828BHJP
   H04W 60/04 20090101ALI20240828BHJP
   H04W 76/18 20180101ALI20240828BHJP
   H04W 84/08 20090101ALI20240828BHJP
   H04W 88/08 20090101ALI20240828BHJP
   H04W 92/20 20090101ALI20240828BHJP
   H04W 92/24 20090101ALI20240828BHJP
【FI】
H04W4/40
H04W60/04
H04W76/18
H04W84/08
H04W88/08
H04W92/20 110
H04W92/24
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020120192
(22)【出願日】2020-07-13
(65)【公開番号】P2022017102
(43)【公開日】2022-01-25
【審査請求日】2023-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】弁理士法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】新井 国充
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 克彦
(72)【発明者】
【氏名】江川 祐介
(72)【発明者】
【氏名】前田 智志
(72)【発明者】
【氏名】勝又 貞行
【審査官】青木 健
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0141561(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00 - 99/00
H04B 7/24 - 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3GPP(Third Generation Partnership Project)で規定された通信プロトコルスタックに従い無線ネットワーク通信を移動端末との間で行なうための無線通信ユニットであって、
前記移動端末が端末無線ベアラを介して接続可能な無線基地局部と、
前記無線基地局部に有線接続され、該無線基地局部に対する上位ネットワーク制御部として機能するEPC(Evolved Packet Core)機能部と、
前記EPC機能部に有線接続されるとともに、上流側の他の無線通信ユニットである上流ノードユニットの無線基地局部(以下、上流無線基地局部という)にアタッチすることにより、上流側の連携無線ベアラ(以下、上流無線リンクという)を介して、前記上流ノードユニットとの連携接続が可能とされた中継無線通信部とを備え、
前記無線基地局部は、下流側の他の無線通信ユニットである下流ノードユニットの中継無線通信部(以下、下流中継無線通信部という)からのアタッチを受けることにより、下流側の連携無線ベアラ(以下、下流無線リンクという)を介し、前記下流ノードユニットとの連携接続が可能とされ、さらに、
自ノードをなす無線通信ユニット(以下、自ノードユニットという)の前記中継無線通信部の、前記自ノードユニットの前記無線基地局部へのアタッチに基づき前記自ノードユニット内に前記連携無線ベアラが構築されることを禁止する自ノード内アタッチ禁止制御部が設けられ
前記自ノード内アタッチ禁止制御部は、
前記上流ノードユニットの候補となる無線通信ユニットである上流候補ユニットとの間に前記上流無線リンクを構築するのに先立って、前記上流候補ユニットの無線基地局部が自ノードユニットの無線基地局部であるか否かを判別する自ノード無線基地局部判別部と、
前記上流候補ユニットが自ノードユニットの無線基地局部であった場合には前記上流無線リンクの構築を禁止する上流無線リンク構築禁止制御部とを備え、
前記無線基地局部は、自セルへのアクセス許可情報を組み込んだ報知情報を無線送出する報知情報送出部を備えるとともに、前記報知情報の前記アクセス許可情報の内容が、自セルへのアタッチを禁止すべき移動端末又は他の無線通信ユニットに付与される特定のアクセスクラスの情報を禁止アクセスクラス情報として含むように定められ、
前記中継無線通信部は、自ノードユニットに付与されたアクセスクラスを自ノードアクセスクラス情報として記憶する自ノードアクセスクラス情報記憶部を備えるとともに、前記自ノード無線基地局部判別部として、前記上流候補ユニットの無線基地局部から送出される前記報知情報を受信する報知情報受信部と、受信した報知情報に含まれる前記禁止アクセスクラス情報と前記自ノードアクセスクラス情報記憶部に記憶された自ノードアクセスクラス情報と照合するアクセスクラス情報照合部とを備え、また、前記上流無線リンク構築禁止制御部として、前記禁止アクセスクラス情報と前記自ノードアクセスクラス情報とが一致していた場合に、前記上流候補ユニットの無線基地局部へのアタッチ要求を回避するアタッチ制御部を有することを特徴とする無線通信ユニット。
【請求項2】
3GPP(Third Generation Partnership Project)で規定された通信プロトコルスタックに従い無線ネットワーク通信を移動端末との間で行なうための無線通信ユニットであって、
前記移動端末が端末無線ベアラを介して接続可能な無線基地局部と、
前記無線基地局部に有線接続され、該無線基地局部に対する上位ネットワーク制御部として機能するEPC(Evolved Packet Core)機能部と、
前記EPC機能部に有線接続されるとともに、上流側の他の無線通信ユニットである上流ノードユニットの無線基地局部(以下、上流無線基地局部という)にアタッチすることにより、上流側の連携無線ベアラ(以下、上流無線リンクという)を介して、前記上流ノードユニットとの連携接続が可能とされた中継無線通信部とを備え、
前記無線基地局部は、下流側の他の無線通信ユニットである下流ノードユニットの中継無線通信部(以下、下流中継無線通信部という)からのアタッチを受けることにより、下流側の連携無線ベアラ(以下、下流無線リンクという)を介し、前記下流ノードユニットとの連携接続が可能とされ、さらに、
自ノードをなす無線通信ユニット(以下、自ノードユニットという)の前記中継無線通信部の、前記自ノードユニットの前記無線基地局部へのアタッチに基づき前記自ノードユニット内に前記連携無線ベアラが構築されることを禁止する自ノード内アタッチ禁止制御部が設けられ、
前記自ノード内アタッチ禁止制御部は、
前記上流ノードユニットの候補となる無線通信ユニットである上流候補ユニットとの間に前記上流無線リンクを構築するのに先立って、前記上流候補ユニットの無線基地局部が自ノードユニットの無線基地局部であるか否かを判別する自ノード無線基地局部判別部と、
前記上流候補ユニットが自ノードユニットの無線基地局部であった場合には前記上流無線リンクの構築を禁止する上流無線リンク構築禁止制御部とを備え、
前記無線基地局部は、自セルのセルIDを組み込んだ報知情報を無線送出する報知情報送出部を備え、
前記中継無線通信部は、自ノードユニットの前記無線基地局部のセルIDを自ノードセルIDとして記憶する自ノードセルID記憶部を備えるとともに、前記自ノード無線基地局部判別部として、前記上流候補ユニットの無線基地局部から前記報知情報を無線取得する報知情報取得部と、取得した報知情報に含まれるセルIDと自ノードセルID記憶部に記憶されたセルIDとを照合するセルID照合部とを備え、また、前記上流無線リンク構築禁止制御部として、取得した報知情報に含まれるセルIDと自ノードセルID記憶部に記憶されたセルIDとが一致していた場合に、前記上流候補ユニットの無線基地局部へのアタッチ要求を回避するアタッチ制御部を有することを特徴とする無線通信ユニット。
【請求項3】
3GPP(Third Generation Partnership Project)で規定された通信プロトコルスタックに従い無線ネットワーク通信を移動端末との間で行なうための無線通信ユニットであって、
前記移動端末が端末無線ベアラを介して接続可能な無線基地局部と、
前記無線基地局部に有線接続され、該無線基地局部に対する上位ネットワーク制御部として機能するEPC(Evolved Packet Core)機能部と、
前記EPC機能部に有線接続されるとともに、上流側の他の無線通信ユニットである上流ノードユニットの無線基地局部(以下、上流無線基地局部という)にアタッチすることにより、上流側の連携無線ベアラ(以下、上流無線リンクという)を介して、前記上流ノードユニットとの連携接続が可能とされた中継無線通信部とを備え、
前記無線基地局部は、下流側の他の無線通信ユニットである下流ノードユニットの中継無線通信部(以下、下流中継無線通信部という)からのアタッチを受けることにより、下流側の連携無線ベアラ(以下、下流無線リンクという)を介し、前記下流ノードユニットとの連携接続が可能とされ、さらに、
自ノードをなす無線通信ユニット(以下、自ノードユニットという)の前記中継無線通信部の、前記自ノードユニットの前記無線基地局部へのアタッチに基づき前記自ノードユニット内に前記連携無線ベアラが構築されることを禁止する自ノード内アタッチ禁止制御部が設けられ、
前記自ノード内アタッチ禁止制御部は、
前記下流ノードユニットの候補となる無線通信ユニットである下流候補ユニットとの間に前記下流無線リンクを構築するのに先立って、前記下流候補ユニットの中継無線通信部が自ノードユニットの中継無線通信部であるか否かを判別する自ノード中継無線通信部判別部と、
前記下流候補ユニットが自ノードユニットの中継無線通信部であった場合には前記下流無線リンクの構築を禁止する下流無線リンク構築禁止制御部とを備え、
前記EPC機能部は、前記下流候補ユニットの中継無線通信部からアタッチ要求を受けるに伴い、該下流候補ユニットの中継無線通信部が固有に有する端末特定情報を取得する端末特定情報取得部と、アタッチ許可するべき他ノードユニットの中継無線通信部の端末特定情報のリストを記憶する端末特定情報リスト記憶部とを備えるとともに、前記自ノード中継無線通信部判別部として、前記下流候補ユニットの中継無線通信部から取得した前記端末特定情報と一致する端末特定情報を前記端末特定情報リスト記憶部にて検索する端末特定情報検索部とを備え、また、前記下流無線リンク構築禁止制御部として、前記下流候補ユニットの中継無線通信部から取得した前記端末特定情報と一致する端末特定情報が、前記端末特定情報リスト記憶部にて検索されないことを必要条件として、前記下流候補ユニットの中継無線通信部からのアタッチ要求を棄却する判定を行なうアタッチ棄却判定部と、該アタッチ棄却判定部の判定結果に基づいて前記前記下流候補ユニットの中継無線通信部からのアタッチ要求の受入れ又は棄却の制御を行なうアタッチ受入制御部とを有し、
前記アタッチ受入制御部は、前記下流候補ユニットの中継無線通信部からのアタッチ要求を棄却するに伴い、前記候補ユニットに対し、当該候補ユニットになされる次回のアタッチ要求までの期間延長を促す報知情報を前記候補ユニットに送信することを特徴とする無線通信ユニット。
【請求項4】
前記端末特定情報取得部は、前記下流候補ユニットに対するアタッチシーケンスにおいて該下流候補ユニットを接続認証するためのIMSI(International Mobile Subscriber Identity)情報を前記端末特定情報報として取得する請求項に記載の無線通信ユニット。
【請求項5】
前記アタッチ棄却判定部は、前記下流候補ユニットの中継無線通信部から取得した前記IMSIと一致するIMSIが前記端末特定情報リスト記憶部にて検索されず、かつ前記IMSIに含まれるオペレータコードが自ノードユニットのオペレータコードであることを必要条件として、前記下流候補ユニットの中継無線通信部からのアタッチ要求を棄却する判定を行なうものである請求項記載の無線通信ユニット。
【請求項6】
3GPP(Third Generation Partnership Project)で規定された通信プロトコルスタックに従い無線ネットワーク通信を移動端末との間で行なうための無線通信ユニットであって、
前記移動端末が端末無線ベアラを介して接続可能な無線基地局部と、
前記無線基地局部に有線接続され、該無線基地局部に対する上位ネットワーク制御部として機能するEPC(Evolved Packet Core)機能部と、
前記EPC機能部に有線接続されるとともに、上流側の他の無線通信ユニットである上流ノードユニットの無線基地局部(以下、上流無線基地局部という)にアタッチすることにより、上流側の連携無線ベアラ(以下、上流無線リンクという)を介して、前記上流ノードユニットとの連携接続が可能とされた中継無線通信部とを備え、
前記無線基地局部は、下流側の他の無線通信ユニットである下流ノードユニットの中継無線通信部(以下、下流中継無線通信部という)からのアタッチを受けることにより、下流側の連携無線ベアラ(以下、下流無線リンクという)を介し、前記下流ノードユニットとの連携接続が可能とされ、さらに、
自ノードをなす無線通信ユニット(以下、自ノードユニットという)の前記中継無線通信部の、前記自ノードユニットの前記無線基地局部へのアタッチに基づき前記自ノードユニット内に前記連携無線ベアラが構築されることを禁止する自ノード内アタッチ禁止制御部が設けられ、
前記自ノード内アタッチ禁止制御部は、
前記下流ノードユニットの候補となる無線通信ユニットである下流候補ユニットとの間に前記下流無線リンクを構築するのに先立って、前記下流候補ユニットの中継無線通信部が自ノードユニットの中継無線通信部であるか否かを判別する自ノード中継無線通信部判別部と、
前記下流候補ユニットが自ノードユニットの中継無線通信部であった場合には前記下流無線リンクの構築を禁止する下流無線リンク構築禁止制御部とを備え、
前記EPC機能部は、前記下流候補ユニットの中継無線通信部からアタッチ要求を受けるに伴い、該下流候補ユニットの中継無線通信部が固有に有する端末特定情報を取得する端末特定情報取得部と、アタッチ許可するべき他ノードユニットの中継無線通信部の端末特定情報のリストを記憶する端末特定情報リスト記憶部とを備えるとともに、前記自ノード中継無線通信部判別部として、前記下流候補ユニットの中継無線通信部から取得した前記端末特定情報と一致する端末特定情報を前記端末特定情報リスト記憶部にて検索する端末特定情報検索部とを備え、また、前記下流無線リンク構築禁止制御部として、前記下流候補ユニットの中継無線通信部から取得した前記端末特定情報と一致する端末特定情報が、前記端末特定情報リスト記憶部にて検索されないことを必要条件として、前記下流候補ユニットの中継無線通信部からのアタッチ要求を棄却する判定を行なうアタッチ棄却判定部と、該アタッチ棄却判定部の判定結果に基づいて前記前記下流候補ユニットの中継無線通信部からのアタッチ要求の受入れ又は棄却の制御を行なうアタッチ受入制御部とを有し、
前記端末特定情報取得部は、前記下流候補ユニットに対するアタッチシーケンスにおいて該下流候補ユニットを接続認証するためのIMSI(International Mobile Subscriber Identity)情報を前記端末特定情報報として取得するものであり、
前記アタッチ棄却判定部は、前記下流候補ユニットの中継無線通信部から取得した前記IMSIと一致するIMSIが前記端末特定情報リスト記憶部にて検索されず、かつ前記IMSIに含まれるオペレータコードが自ノードユニットのオペレータコードであることを必要条件として、前記下流候補ユニットの中継無線通信部からのアタッチ要求を棄却する判定を行なうことを特徴とする無線通信ユニット。
【請求項7】
3GPP(Third Generation Partnership Project)で規定された通信プロトコルスタックに従い無線ネットワーク通信を移動端末との間で行なうための無線通信ユニットであって、
前記移動端末が端末無線ベアラを介して接続可能な無線基地局部と、
前記無線基地局部に有線接続され、該無線基地局部に対する上位ネットワーク制御部として機能するEPC(Evolved Packet Core)機能部と、
前記EPC機能部に有線接続されるとともに、上流側の他の無線通信ユニットである上流ノードユニットの無線基地局部(以下、上流無線基地局部という)にアタッチすることにより、上流側の連携無線ベアラ(以下、上流無線リンクという)を介して、前記上流ノードユニットとの連携接続が可能とされた中継無線通信部とを備え、前記無線基地局部は、下流側の他の無線通信ユニットである下流ノードユニットの中継無線通信部(以下、下流中継無線通信部という)からのアタッチを受けることにより、下流側の連携無線ベアラ(以下、下流無線リンクという)を介し、前記下流ノードユニットとの連携接続が可能とされ、さらに、自ノードをなす無線通信ユニット(以下、自ノードユニットという)の前記中継無線通信部の、前記自ノードユニットの前記無線基地局部へのアタッチに基づき前記自ノードユニット内に前記連携無線ベアラが構築されることを禁止する自ノード内アタッチ禁止制御部が設けられている無線通信ユニットが、前記連携無線ベアラにて複数相互に接続された無線通信ユニット群からなり、
前記無線通信ユニットの任意の1つをなす第一無線通信ユニットに前記端末無線ベアラを介して接続された前記移動端末と、他の任意の1つをなす第二無線通信ユニットに前記端末無線ベアラを介して接続された前記移動端末とが、前記第一無線通信ユニットから前記第二無線通信ユニットに至る2以上の無線通信ユニットと、それら無線通信ユニットを相互に接続する前記連携無線ベアラとを介してユーザデータの送受信を行なうとともに、
前記自ノード内アタッチ禁止制御部は、
前記上流ノードユニットの候補となる無線通信ユニットである上流候補ユニットとの間に前記上流無線リンクを構築するのに先立って、前記上流候補ユニットの無線基地局部が自ノードユニットの無線基地局部であるか否かを判別する自ノード無線基地局部判別部と、
前記上流候補ユニットが自ノードユニットの無線基地局部であった場合には前記上流無線リンクの構築を禁止する上流無線リンク構築禁止制御部とを備え、
前記無線基地局部は、自セルへのアクセス許可情報を組み込んだ報知情報を無線送出する報知情報送出部を備えるとともに、前記報知情報の前記アクセス許可情報の内容が、自セルへのアタッチを禁止すべき移動端末又は他の無線通信ユニットに付与される特定のアクセスクラスの情報を禁止アクセスクラス情報として含むように定められ、
前記中継無線通信部は、自ノードユニットに付与されたアクセスクラスを自ノードアクセスクラス情報として記憶する自ノードアクセスクラス情報記憶部を備えるとともに、前記自ノード無線基地局部判別部として、前記上流候補ユニットの無線基地局部から送出される前記報知情報を受信する報知情報受信部と、受信した報知情報に含まれる前記禁止アクセスクラス情報と前記自ノードアクセスクラス情報記憶部に記憶された自ノードアクセスクラス情報と照合するアクセスクラス情報照合部とを備え、また、前記上流無線リンク構築禁止制御部として、前記禁止アクセスクラス情報と前記自ノードアクセスクラス情報とが一致していた場合に、前記上流候補ユニットの無線基地局部へのアタッチ要求を回避するアタッチ制御部を有することを特徴とする無線ネットワークシステム。
【請求項8】
3GPP(Third Generation Partnership Project)で規定された通信プロトコルスタックに従い無線ネットワーク通信を移動端末との間で行なうための無線通信ユニットであって、
前記移動端末が端末無線ベアラを介して接続可能な無線基地局部と、
前記無線基地局部に有線接続され、該無線基地局部に対する上位ネットワーク制御部として機能するEPC(Evolved Packet Core)機能部と、
前記EPC機能部に有線接続されるとともに、上流側の他の無線通信ユニットである上流ノードユニットの無線基地局部(以下、上流無線基地局部という)にアタッチすることにより、上流側の連携無線ベアラ(以下、上流無線リンクという)を介して、前記上流ノードユニットとの連携接続が可能とされた中継無線通信部とを備え、前記無線基地局部は、下流側の他の無線通信ユニットである下流ノードユニットの中継無線通信部(以下、下流中継無線通信部という)からのアタッチを受けることにより、下流側の連携無線ベアラ(以下、下流無線リンクという)を介し、前記下流ノードユニットとの連携接続が可能とされ、さらに、自ノードをなす無線通信ユニット(以下、自ノードユニットという)の前記中継無線通信部の、前記自ノードユニットの前記無線基地局部へのアタッチに基づき前記自ノードユニット内に前記連携無線ベアラが構築されることを禁止する自ノード内アタッチ禁止制御部が設けられている無線通信ユニットが、前記連携無線ベアラにて複数相互に接続された無線通信ユニット群からなり、
前記無線通信ユニットの任意の1つをなす第一無線通信ユニットに前記端末無線ベアラを介して接続された前記移動端末と、他の任意の1つをなす第二無線通信ユニットに前記端末無線ベアラを介して接続された前記移動端末とが、前記第一無線通信ユニットから前記第二無線通信ユニットに至る2以上の無線通信ユニットと、それら無線通信ユニットを相互に接続する前記連携無線ベアラとを介してユーザデータの送受信を行なうとともに、
前記自ノード内アタッチ禁止制御部は、
前記上流ノードユニットの候補となる無線通信ユニットである上流候補ユニットとの間に前記上流無線リンクを構築するのに先立って、前記上流候補ユニットの無線基地局部が自ノードユニットの無線基地局部であるか否かを判別する自ノード無線基地局部判別部と、
前記上流候補ユニットが自ノードユニットの無線基地局部であった場合には前記上流無線リンクの構築を禁止する上流無線リンク構築禁止制御部とを備え、
前記無線基地局部は、自セルのセルIDを組み込んだ報知情報を無線送出する報知情報送出部を備え、
前記中継無線通信部は、自ノードユニットの前記無線基地局部のセルIDを自ノードセルIDとして記憶する自ノードセルID記憶部を備えるとともに、前記自ノード無線基地局部判別部として、前記上流候補ユニットの無線基地局部から前記報知情報を無線取得する報知情報取得部と、取得した報知情報に含まれるセルIDと自ノードセルID記憶部に記憶されたセルIDとを照合するセルID照合部とを備え、また、前記上流無線リンク構築禁止制御部として、取得した報知情報に含まれるセルIDと自ノードセルID記憶部に記憶されたセルIDとが一致していた場合に、前記上流候補ユニットの無線基地局部へのアタッチ要求を回避するアタッチ制御部を有することを特徴とする無線ネットワークシステム。
【請求項9】
3GPP(Third Generation Partnership Project)で規定された通信プロトコルスタックに従い無線ネットワーク通信を移動端末との間で行なうための無線通信ユニットであって、
前記移動端末が端末無線ベアラを介して接続可能な無線基地局部と、
前記無線基地局部に有線接続され、該無線基地局部に対する上位ネットワーク制御部として機能するEPC(Evolved Packet Core)機能部と、
前記EPC機能部に有線接続されるとともに、上流側の他の無線通信ユニットである上流ノードユニットの無線基地局部(以下、上流無線基地局部という)にアタッチすることにより、上流側の連携無線ベアラ(以下、上流無線リンクという)を介して、前記上流ノードユニットとの連携接続が可能とされた中継無線通信部とを備え、前記無線基地局部は、下流側の他の無線通信ユニットである下流ノードユニットの中継無線通信部(以下、下流中継無線通信部という)からのアタッチを受けることにより、下流側の連携無線ベアラ(以下、下流無線リンクという)を介し、前記下流ノードユニットとの連携接続が可能とされ、さらに、自ノードをなす無線通信ユニット(以下、自ノードユニットという)の前記中継無線通信部の、前記自ノードユニットの前記無線基地局部へのアタッチに基づき前記自ノードユニット内に前記連携無線ベアラが構築されることを禁止する自ノード内アタッチ禁止制御部が設けられている無線通信ユニットが、前記連携無線ベアラにて複数相互に接続された無線通信ユニット群からなり、
前記無線通信ユニットの任意の1つをなす第一無線通信ユニットに前記端末無線ベアラを介して接続された前記移動端末と、他の任意の1つをなす第二無線通信ユニットに前記端末無線ベアラを介して接続された前記移動端末とが、前記第一無線通信ユニットから前記第二無線通信ユニットに至る2以上の無線通信ユニットと、それら無線通信ユニットを相互に接続する前記連携無線ベアラとを介してユーザデータの送受信を行なうとともに、
前記自ノード内アタッチ禁止制御部は、
前記下流ノードユニットの候補となる無線通信ユニットである下流候補ユニットとの間に前記下流無線リンクを構築するのに先立って、前記下流候補ユニットの中継無線通信部が自ノードユニットの中継無線通信部であるか否かを判別する自ノード中継無線通信部判別部と、
前記下流候補ユニットが自ノードユニットの中継無線通信部であった場合には前記下流無線リンクの構築を禁止する下流無線リンク構築禁止制御部とを備え、
前記EPC機能部は、前記下流候補ユニットの中継無線通信部からアタッチ要求を受けるに伴い、該下流候補ユニットの中継無線通信部が固有に有する端末特定情報を取得する端末特定情報取得部と、アタッチ許可するべき他ノードユニットの中継無線通信部の端末特定情報のリストを記憶する端末特定情報リスト記憶部とを備えるとともに、前記自ノード中継無線通信部判別部として、前記下流候補ユニットの中継無線通信部から取得した前記端末特定情報と一致する端末特定情報を前記端末特定情報リスト記憶部にて検索する端末特定情報検索部とを備え、また、前記下流無線リンク構築禁止制御部として、前記下流候補ユニットの中継無線通信部から取得した前記端末特定情報と一致する端末特定情報が、前記端末特定情報リスト記憶部にて検索されないことを必要条件として、前記下流候補ユニットの中継無線通信部からのアタッチ要求を棄却する判定を行なうアタッチ棄却判定部と、該アタッチ棄却判定部の判定結果に基づいて前記前記下流候補ユニットの中継無線通信部からのアタッチ要求の受入れ又は棄却の制御を行なうアタッチ受入制御部とを有し、
前記アタッチ受入制御部は、前記下流候補ユニットの中継無線通信部からのアタッチ要求を棄却するに伴い、前記候補ユニットに対し、当該候補ユニットになされる次回のアタッチ要求までの期間延長を促す報知情報を前記候補ユニットに送信することを特徴とする無線ネットワークシステム。
【請求項10】
3GPP(Third Generation Partnership Project)で規定された通信プロトコルスタックに従い無線ネットワーク通信を移動端末との間で行なうための無線通信ユニットであって、
前記移動端末が端末無線ベアラを介して接続可能な無線基地局部と、
前記無線基地局部に有線接続され、該無線基地局部に対する上位ネットワーク制御部として機能するEPC(Evolved Packet Core)機能部と、
前記EPC機能部に有線接続されるとともに、上流側の他の無線通信ユニットである上流ノードユニットの無線基地局部(以下、上流無線基地局部という)にアタッチすることにより、上流側の連携無線ベアラ(以下、上流無線リンクという)を介して、前記上流ノードユニットとの連携接続が可能とされた中継無線通信部とを備え、前記無線基地局部は、下流側の他の無線通信ユニットである下流ノードユニットの中継無線通信部(以下、下流中継無線通信部という)からのアタッチを受けることにより、下流側の連携無線ベアラ(以下、下流無線リンクという)を介し、前記下流ノードユニットとの連携接続が可能とされ、さらに、自ノードをなす無線通信ユニット(以下、自ノードユニットという)の前記中継無線通信部の、前記自ノードユニットの前記無線基地局部へのアタッチに基づき前記自ノードユニット内に前記連携無線ベアラが構築されることを禁止する自ノード内アタッチ禁止制御部が設けられている無線通信ユニットが、前記連携無線ベアラにて複数相互に接続された無線通信ユニット群からなり、
前記無線通信ユニットの任意の1つをなす第一無線通信ユニットに前記端末無線ベアラを介して接続された前記移動端末と、他の任意の1つをなす第二無線通信ユニットに前記端末無線ベアラを介して接続された前記移動端末とが、前記第一無線通信ユニットから前記第二無線通信ユニットに至る2以上の無線通信ユニットと、それら無線通信ユニットを相互に接続する前記連携無線ベアラとを介してユーザデータの送受信を行なうとともに、
前記自ノード内アタッチ禁止制御部は、
前記下流ノードユニットの候補となる無線通信ユニットである下流候補ユニットとの間に前記下流無線リンクを構築するのに先立って、前記下流候補ユニットの中継無線通信部が自ノードユニットの中継無線通信部であるか否かを判別する自ノード中継無線通信部判別部と、
前記下流候補ユニットが自ノードユニットの中継無線通信部であった場合には前記下流無線リンクの構築を禁止する下流無線リンク構築禁止制御部とを備え、
前記EPC機能部は、前記下流候補ユニットの中継無線通信部からアタッチ要求を受けるに伴い、該下流候補ユニットの中継無線通信部が固有に有する端末特定情報を取得する端末特定情報取得部と、アタッチ許可するべき他ノードユニットの中継無線通信部の端末特定情報のリストを記憶する端末特定情報リスト記憶部とを備えるとともに、前記自ノード中継無線通信部判別部として、前記下流候補ユニットの中継無線通信部から取得した前記端末特定情報と一致する端末特定情報を前記端末特定情報リスト記憶部にて検索する端末特定情報検索部とを備え、また、前記下流無線リンク構築禁止制御部として、前記下流候補ユニットの中継無線通信部から取得した前記端末特定情報と一致する端末特定情報が、前記端末特定情報リスト記憶部にて検索されないことを必要条件として、前記下流候補ユニットの中継無線通信部からのアタッチ要求を棄却する判定を行なうアタッチ棄却判定部と、該アタッチ棄却判定部の判定結果に基づいて前記前記下流候補ユニットの中継無線通信部からのアタッチ要求の受入れ又は棄却の制御を行なうアタッチ受入制御部とを有し、
前記端末特定情報取得部は、前記下流候補ユニットに対するアタッチシーケンスにおいて該下流候補ユニットを接続認証するためのIMSI(International Mobile Subscriber Identity)情報を前記端末特定情報報として取得するものであり、
前記アタッチ棄却判定部は、前記下流候補ユニットの中継無線通信部から取得した前記IMSIと一致するIMSIが前記端末特定情報リスト記憶部にて検索されず、かつ前記IMSIに含まれるオペレータコードが自ノードユニットのオペレータコードであることを必要条件として、前記下流候補ユニットの中継無線通信部からのアタッチ要求を棄却する判定を行なうことを特徴とする無線ネットワークシステム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、3GPP(Third Generation Partnership Project)で規定された通信プロトコルスタックに従い無線ネットワーク通信を移動端末との間で行なうための無線通信ユニットに関するものであり、複数ユニット間の連携動作を容易に実現でき、広域エリアのカバーリング対応にも好適に使用可能な無線通信ユニットと、それを用いた無線ネットワークシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
3GPP仕様に基づく高速通信規格(例えば、LTE(Long Term Evolution)あるいはWiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access))の無線ネットワークシステムにおいては、無線通信アクセス網を収容するEPC(Evolved Packet Core)をエリア内に構築することが必須であり、移動端末が接続する無線基地局は該EPCを介してIPパケットの送受信制御を受ける。一方、携帯電話、スマートフォンあるいはタブレットPCなどの移動端末の普及に伴い、海上や過疎地域、あるいは災害等により通信機能が喪失した地域など、EPCや無線基地局がインフラ的に整備されていない地域(以下、「無線非整備地域」と称する)においても、移動端末を利用したいという要望が高まっている。
【0003】
こうした要望に応えるべく、例えば特許文献1には、無線基地局とEPC機能部とを一体化した複合型の無線通信ユニットが提案されている。このような無線通信ユニットを上記のような無線非整備地域に設置することで、該ユニットに含まれる無線基地局部により小規模ながら通信可能エリアが構築され、ユニット内のEPC機能部が通信制御を行なう形で、前記無線基地局部に接続する複数の移動端末間で無線通信を行なうことが可能となる。しかし、無線通信ユニット1台でカバーできる通信エリアは狭く、また、通信容量も限られている。この場合、無線非整備地域内に無線通信ユニットを複数台配置することも考えられるが、ユニット間での通信連携が考慮されておらず、異なる複合装置に接続された移動端末同士の通信ができない、という欠点がある。また、移動端末の接続台数が増えたり、動画データなどの大容量データの送受信がなされたりした場合など、エリア内の通信トラフィックが過剰となった場合は輻輳などの問題を生じやすい問題がある。そこで、特許文献2~7には、複数の無線通信ユニットを連携させ、移動端末からの通信トラフィックを各無線通信ユニットに分散して転送処理する構成が開示されている。具体的には、特許文献5の図6に、移動端末との通信をオフロードさせるための無線通信ユニット同士の連携経路として、衛星装置を経由する形態が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016- 12841号公報
【文献】特開2018-137661号公報
【文献】特開2018-137662号公報
【文献】特開2018-137663号公報
【文献】特開2018-137664号公報
【文献】特開2018-137665号公報
【文献】特開2018-137666号公報
【文献】特開昭61-189034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2~7においては、複数の無線通信ユニットが相互接続されている様子が図示されている(例えば、特許文献2の図1等)。しかし、上述した衛星装置を経由したオフロード形態を除けば、上記文献には、該接続がいかなる実態にて構築されているかについて、全く開示はない。仮に無線通信ユニット間が有線接続されていると考えた場合、無線非整備地域内の相応に広い通信エリア内に無線通信ユニットを分散配置しようとすれば、装置間を接続する通信ケーブルが非常に長くなる。その結果、信号品質及び通信容量の低下を招き、これを防止するための中継装置が必要となるなど、接続インフラ構築のためのコストが高騰する問題がある。さらに、列車や自動車、船舶など、無線通信ユニットが移動体に搭載される用途にあっては、各無線通信ユニットをケーブル接続することは物理的に不可能である。
【0006】
また、特許文献8には、移動端末と基地無線局と間の無線通信において、中間に介在する山岳丘陵等の障害物により電波伝達が遮蔽されやすい地域での通信状況を改善するために、同一通信帯域内に近接してチャンネル設定される複数の中継装置(送受信装置)を併設した無線通信ユニットが開示されている。しかし、この種の通信装置においては、一方の中継装置の送信波が他の中継装置に回り込み受信された場合に、一つの通信装置内の複数の中継装置同士が相互接続し合う可能性が生ずる。このとき、それら中継装置同士は互いに送受信の帯域幅の一部を食い合う形となり、通信トラフィックが圧迫される問題がある。
【0007】
本発明の課題は、複数の無線通信ユニットを簡便な構造により無線連携させることが可能であり、ひいては複数ユニット間の連携動作を容易に実現できるとともに、一つの通信装置内の複数の送受信装置間の相互接続を効果的に防止できる無線通信ユニットと、それを用いた無線ネットワークシステムとを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の無線通信ユニットは、3GPP(Third Generation Partnership Project)で規定された通信プロトコルスタックに従い無線ネットワーク通信を移動端末との間で行なうための無線通信ユニットであって、移動端末が端末無線ベアラを介して接続可能な無線基地局部と、無線基地局部に有線接続され、該無線基地局部に対する上位ネットワーク制御部として機能するEPC(Evolved Packet Core)機能部と、EPC機能部に有線接続されるとともに、上流側の他の無線通信ユニットである上流ノードユニットの無線基地局部(以下、上流無線基地局部という)にアタッチすることにより、上流側の連携無線ベアラ(以下、上流無線リンクという)を介して、上流ノードユニットとの連携接続が可能とされた中継無線通信部とを備え、無線基地局部は、下流側の他の無線通信ユニットである下流ノードユニットの中継無線通信部(以下、下流中継無線通信部という)からのアタッチを受けることにより、下流側の連携無線ベアラ(以下、下流無線リンクという)を介し、下流ノードユニットとの連携接続が可能とされ、さらに、自ノードをなす無線通信ユニット(以下、自ノードユニットという)の中継無線通信部の、自ノードユニットの無線基地局部へのアタッチに基づき自ノードユニット内に連携無線ベアラが構築されることを禁止する自ノード内アタッチ禁止制御部が設けられていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の無線ネットワークシステムは、3GPP(Third Generation Partnership Project)で規定された通信プロトコルスタックに従い無線ネットワーク通信を移動端末との間で行なうための無線通信ユニットであって、移動端末が端末無線ベアラを介して接続可能な無線基地局部と、無線基地局部に有線接続され、該無線基地局部に対する上位ネットワーク制御部として機能するEPC(Evolved Packet Core)機能部と、EPC機能部に有線接続されるとともに、上流側の他の無線通信ユニットである上流ノードユニットの無線基地局部(以下、上流無線基地局部という)にアタッチすることにより、上流側の連携無線ベアラ(以下、上流無線リンクという)を介して、上流ノードユニットとの連携接続が可能とされた中継無線通信部とを備え、無線基地局部は、下流側の他の無線通信ユニットである下流ノードユニットの中継無線通信部(以下、下流中継無線通信部という)からのアタッチを受けることにより、下流側の連携無線ベアラ(以下、下流無線リンクという)を介し、下流ノードユニットとの連携接続が可能とされ、さらに、自ノードをなす無線通信ユニット(以下、自ノードユニットという)の中継無線通信部の、自ノードユニットの無線基地局部へのアタッチに基づき自ノードユニット内に連携無線ベアラが構築されることを禁止する自ノード内アタッチ禁止制御部が設けられている無線通信ユニットが、連携無線ベアラにて複数相互に接続された無線通信ユニット群からなり、無線通信ユニットの任意の1つをなす第一無線通信ユニットに端末無線ベアラを介して接続された移動端末と、他の任意の1つをなす第二無線通信ユニットに端末無線ベアラを介して接続された移動端末とが、第一無線通信ユニットから第二無線通信ユニットに至る2以上の無線通信ユニットと、それら無線通信ユニットを相互に接続する連携無線ベアラとを介してユーザデータの送受信を行なうようにしたことを特徴とする。なお、上流無線リンクと下流無線リンクは、着目している無線通信ユニットの上流側に構築されるか、下流側に構築されるかの違いのみであり、隣接する無線通信ユニットの中継無線通信部と無線基地局部とを相互に接続する連携無線ベアラとしての機能的実体は同じであり、以下、これらを総称する場合は単に「無線リンク」とも称する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の無線通信ユニットは、上流ノードユニットの無線基地局部(上流無線基地局部)と上流無線リンクを介して接続可能な中継無線通信部が設けられる。また、無線基地局部は、下流ノードユニットの中継無線通信部(下流中継無線通信部)と下流無線リンクを介して接続可能とされる。
【0011】
つまり、ある無線通信ユニットの中継無線通信部は、別の無線通信ユニットの無線基地局に対し無線接続できるようになる。その結果、無線リンクを介して複数の無線通信ユニットを連携接続させることができ、移動端末に対する無線通信エリアの拡張を図ることができる。また、自ノードユニット内にて中継無線通信部が無線基地局部へ自己アタッチすること、すなわち、自ノードユニット内に連携無線ベアラが構築されることを禁止する自ノード内アタッチ禁止制御部を設けたから、一つの無線通信ユニット内にて中継無線通信部と無線基地局部とが相互接続すること、ひいてはそれら中継無線通信部と無線基地局部との間で送受信帯域幅の一部が食い合って通信トラフィックが圧迫される問題等を効果的に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の無線ネットワークシステムの構成単位となる無線通信ユニット対の概念を示す模式図。
図2図1の無線通信ユニット対の電気的構成の概略を示すブロック図。
図3】本発明の無線通信ユニットの電気的構成の一例を示すブロック図。
図4】UE(移動端末)の電気的構成の一例を示すブロック図。
図5】一般的なIPパケットを連携報知パケットの構造と対比して示す概念図。
図6】本発明において使用するコントロールプレーン側のプロトコルスタックを概念的に示す図。
図7】同じくユーザプレーン側のプロトコルスタックを概念的に示す図。
図8】本発明において使用する下りリンクのチャネルマッピングを概念的に示す図。
図9】同じく上りリンクのチャネルマッピングを概念的に示す図。
図10】周波数バンドチャネル、及びリソースブロックの関係を示す概念図。
図11】本発明の無線ネットワークシステムの構成形態の一例を模式的に示す図。
図12】チャネルマップの概念図。
図13図11の無線ネットワークシステムにおける、各ノードユニットのルーティング管理テーブルの内容を模式的に示す図。
図14A】連携報知パケットを用いた各ノードユニットのルーティング管理テーブルの更新処理の流れを示す通信フロー図。
図14B図14Aに続く通信フロー図。
図15】連携報知パケットを用いた各ノードユニットにおける無線接続トポロジ情報の更新処理の流れを示す通信フロー図。
図16】無線通信ユニットの中継無線通信部の、上流側の別の無線通信ユニットに対するアタッチシーケンスを示す通信フロー図。
図17】UE(移動端末)の無線通信ユニットに対するアタッチシーケンスを示す通信フロー図。
図18】同一の無線通信ユニットに接続されたUE間でのIPパケット転送制御シーケンスを示す通信フロー図。
図19】隣接する無線通信ユニットに各々接続されたUE間でのIPパケット転送制御シーケンスを示す通信フロー図。
図20】カスケード接続された3つの無線通信ユニットの両端に各々接続されたUE間でのIPパケット転送制御シーケンスを示す通信フロー図。
図21】カスケード接続された3つの無線通信ユニットの末端に位置する無線通信ユニットのルータを介して、IPパケットを外部ネットワークに転送する制御シーケンスを示す通信フロー図。
図22】3GPP規格にて使用される報知情報のブロック構造を示す概念図。
図23】本発明の無線ネットワークシステムにおける各無線通信ユニットへのアクセスコード付与例を示す概念ブロック図。
図24】報知情報内容の解析により自己アタッチを回避する第一の処理例を示す通信フロー図。
図25】同じく第二の処理例を示す通信フロー図。
図26】3GPP規格にて一般的に使用されるIMSIのデータ構造を示す概念図。
図27図26のIMSIのデータ構造を、先頭の所定桁部分をオペレータコードとして使用されるように変形した例を示す概念図。
図28】IMSI内容の解析により自己アタッチを回避する処理例を示す通信フロー図。
図29】自己アタッチの概念図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態を添付の図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の無線ネットワークシステムの構成単位となる無線通信ユニット対の概念を一実施形態として示す模式図である。無線通信ユニット対は本発明の一実施形態である同一構成の無線通信ユニット1(A),1(B)からなり(以下、無線通信ユニット対1(A),1(B)ともいう)、それぞれ3GPPで規定された方式(本実施形態では、LTEとするが、WiMAXなど他の方式であってもよい)の通信プロトコルスタックに従い、UE(移動端末)5との間で無線通信を行なうものとして構成されている。
【0014】
無線通信ユニット1(A),1(B)は、それぞれ移動体である大型船舶WS(A),WS(B)に設置され、後に詳述する無線リンク55により無線接続されている。各無線通信ユニット1(A),1(B)は、それぞれUE(移動端末)5が接続可能となるセル50(A),50(B)を形成する。また、大型船舶WS(A),WS(B)(例えば漁業母船、タンカーなど)の周囲では小船舶FB(例えば、漁船、タグボートなど)が操業をおこなっており、セル50(A)又はセル50(B)内の小船舶FBの乗員がUE5を携行している。それらUE5は、それぞれ最も近い無線通信ユニット1(A),1(B)に対し端末無線ベアラ57により無線接続されている。なお、UE5は大型船舶WS(A),WS(B)の乗員が携行するものであってもよい。また、無線通信ユニット1(A),1(B)の設置先は船舶以外の移動体(車両など)であってもよいし、例えば陸上の所望の設置先に固定配置してもよい。
【0015】
図2は、無線通信ユニット1(A),1(B)の機能ブロック構成を示すものである。無線通信ユニット1(A),1(B)は電気的にはいずれも同一の構成を有する。そして、本明細書において複数の無線通信ユニット及びその構成要素を互いに区別して示す場合は、対応する構成要素に同一の番号を付与しつつ、該番号に続く形で括弧付きの大文字アルファベットを付与して示す。一方、無線通信ユニット間の区別を行なわずに各構成要素を示す場合は、括弧付きの大文字アルファベットを省略する場合がある。以下、無線通信ユニット1(A)側の符号を主体的に用いて説明するが、必要に応じて無線通信ユニット1(B)側についても、対応する符号を援用しつつ説明する。また、本明細書に添付の図面において無線ベアラを示す矢印線を破線にて示し、有線のベアラないし電気的な接続線は実線又は一点鎖線の矢印線で示している。
【0016】
無線通信ユニット1(A)は、UE(移動端末)5が端末無線ベアラ57を介して接続可能な無線基地局部4(A)(eNodeB(evolved NodeB))と、無線基地局部4(A)に有線接続され、該無線基地局部4(A)に対する上位ネットワーク制御部として機能するEPC(Evolved Packet Core)機能部3(A)とを有する。また、該EPC機能部3(A)には、上流側の無線通信ユニット1(B)(上流ノードユニット)の無線基地局部4(B)(上流無線基地局部)に対し上流側の連携無線ベアラ(上流無線リンク)55(A)を介して接続可能な中継無線通信部9(A)が有線接続されている。
【0017】
一方、無線通信ユニット1(B)は、同様の無線基地局部4(B)と、無線基地局部4(B)に有線接続され、該無線基地局部4(B)に対する上位ネットワーク制御部として機能するEPC機能部3(B)と、EPC機能部3(B)に有線接続される中継無線通信部9(B)を備える。該中継無線通信部9(B)は、例えば図11に示すように、無線通信ユニット1(B)の上流側に、さらに別の無線通信ユニット(上流ノードユニット)1(C)が配置されていれば、その無線通信ユニット1(C)の無線基地局部4(C)に対し無線リンク55(B)を介して接続可能である(図11参照)。また、無線基地局部4(B)は、下流側の無線通信ユニット1(A)(下流ノードユニット)の中継無線通信部9(A)(下流中継無線通信部)に対し、下流側の連携無線ベアラ(下流無線リンク)55(A)を介して接続可能とされている。無線リンク55(A)は、例えば無線通信ユニット1(A)から見たときは上流無線リンクとなり、無線通信ユニット1(B)から見たときは下流無線リンクとなる。
【0018】
次に、いずれの無線通信ユニット1(A),1(B)(以下、総称する場合は無線通信ユニット1という)においても、EPC機能部3は、コントロールプレーン側のゲートウェイとなるMME(Mobility Management Entity)2、ユーザプレーン側のゲートウェイとなるS-GW(Serving Gateway)6、EPC機能部3、及び該EPC機能部3の上流側ネットワーク要素(ここで、ルータ8(後述)及び中継無線通信部9)の結節点に位置し、上流側ネットワーク要素側(つまり、上流ノードユニット側)に向けたIPアドレス管理を行なうP-GW(PDN (Packet Data Network) Gateway)7を有する。無線基地局部4には複数のUE5が端末無線ベアラ57を介して無線接続される。また、ルータ8には、映像データ、画像データあるいは音声データからなるユーザデータの配信元となるアプリケーションサーバ8’が接続されている。また、MME2には、HSS(Home Subscriber Server)10が接続されている。HSS10は、移動通信ネットワークを利用する際に必要な電話番号やIMSI(International Mobile Subscriber Identity:SIMカードの識別番号)などのユーザ情報を管理するデータベースであり、ユーザの契約状況を反映した接続認証や、UE5で取得される位置情報に基づいて通信経路を判断する処理などに用いられる。HSS10は、本発明における端末特定情報リスト記憶部としての機能を担う。
【0019】
コントロールプレーン側において無線基地局部(eNodeB)4は、S1-MMEインターフェースを介してMME2に接続される。また、ユーザプレーン側において無線基地局部4は、S1-Uインターフェースを介してS-GW6に接続される。また、S-GW6はS5インターフェースを介してP-GW7と接続される。さらに、HSS10はS6aインターフェースを介してMME2に接続されている。
【0020】
図3は、無線通信ユニット1の電気的構成を示すブロック図である。EPC機能部3はマイコンハードウェアを主体に構成されており、CPU301、プログラム実行領域となるRAM302、マスクROM303(恒久的に書換えが不要なマイコンハードウェア周辺制御用等のファームウェアを格納している;以下、同様)及びそれらを相互に接続するバス306等からなる。また、バス306にはフラッシュメモリ305が接続され、ここにEPC用の通信プロトコルスタックを含む通信ファームウェア305a(通信制御部の機能実現プログラムである)が格納されている。
【0021】
図6及び図7は、無線通信ユニット1が使用する通信プロトコルスタックを示し、図6はコントロールプレーン側のプロトコルスタックを、図7はユーザプレーン側のプロトコルスタックを示している。いずれのプロトコルスタックも有線通信用のスタックと無線通信用のスタックとに分かれており、図6及び図7において、「LTE」と表示されている部分が無線通信用のスタックを示す。説明の便宜のため、いずれの図においても無線通信ユニット1(A)と無線通信ユニット1(B)とを無線リンクにより接続した状態で示している。EPC機能部3が使用するプロトコルスタックは、コアネットワーク側インターフェースCoreと無線アクセスネットワーク(Radio Access Network)側インターフェースRANとからなる。図6及び図7においては、説明の簡略化のため無線通信ユニット1(A)側についてはコアネットワーク側インターフェースCoreのみを図示している。
【0022】
まず、図6のコントロールプレーン側のプロトコルスタックから説明する。無線基地局部(eNodeB)4はEPC機能部3の無線アクセスネットワーク側インターフェースRANに接続される。この区間のプロトコルスタックは、PHY(物理)層(L1)、データリンク層をなすMAC(Medium Access Control)層(L2)、ネットワーク層をなすIP(Internet Protocol)層、トランスポート層をなすUDP(User Datagram Protocol)層及び最上層をなすGTP(GPRS(General Packet Radio Service)Tunneling Protocol)層からなる。この接続区間はユニット内部での有線通信となり、GTPを用いたトンネリングによりIPパケットのやり取りがなされる。また、中継無線通信部9はEPC機能部3のコアネットワーク側インターフェースCoreに接続され、IP層を介したLAN通信によりIPパケットのやり取りがなされる。
【0023】
一方、中継無線通信部9と無線基地局部(eNodeB)4との無線通信区間のプロトコルスタックは、PHY層、MAC層、RLC層、PDCP層及びRRC層からなる。各層の役割は以下の通りである。
・PHY層:符号化・復号、変調・復調、アンテナマッピング・デマッピング、及びリソースマッピング・デマッピングを行なう。UE5及び中継無線通信部9のPHY層と無線基地局部(eNodeB)4のPHY層との間では、物理チャネルを介してデータ及び制御信号が伝送される。
・MAC層:データの優先制御、HARQによる再送制御処理、及びランダムアクセス手順等を行なう。UE5及び中継無線通信部9のMAC層と無線基地局部4のMAC層との間では、トランスポートチャネルを介してデータ及び制御信号が伝送される。無線基地局部4のMAC層は、上下リンクのトランスポートフォーマット(トランスポートブロックサイズ、変調・符号化方式(MCS))及びUE5への割当リソースブロックを決定するスケジューラを含む。
【0024】
・RLC層:MAC層及びPHY層の機能を利用してデータを受信側のRLC層に伝送する。UE5のRLC層と無線基地局部4のRLC層との間では、論理チャネルを介してデータ及び制御信号が伝送される。
・PDCP層:PDUのヘッダ圧縮・伸張、及び暗号化・復号化を行なう。
・RRC層:制御信号を取り扱う制御プレーンでのみ定義される。UE5のRRC層と無線基地局部4のRRC層との間では、各種設定のためのメッセージ(RRCメッセージ)が伝送される。RRC層は、無線ベアラの確立、再確立及び解放に応じて、論理チャネル、トランスポートチャネル及び物理チャネルを制御する。UE5のRRCと無線基地局部4のRRCとの間に接続(RRC接続)がある場合、UE5はRRCコネクティッドモードとなり、そうでない場合はRRCアイドルモードとなる。
【0025】
次に、2つの無線通信ユニット(上流ノードユニット)1(A)及び無線通信ユニット(下流ノードユニット)1(B)間に連携無線ベアラ(無線リンク)を構築し、これらを連携接続するための制御シーケンスは、上記連携無線ベアラの構築及び管理の制御に使用する連携報知情報を、それら上流ノードユニット及び下流ノードユニットのEPC機能部3間にて送受信することにより実行される。そして、コアネットワーク側インターフェースCoreをなすプロトコルスタックには、該連携報知情報を取り扱う無線連携プロトコル層WLPが付加されている。
【0026】
コアネットワーク側インターフェースCoreをなすプロトコルスタックは、下層側からPHY層(L1)、MAC層(L2)、IP層、UDP層及び無線連携プロトコル層WLPを含む。無線連携プロトコル層WLPは、UDP層(トランスポート層)上に構築される本発明特有の新たなプロトコル層として定義される。上記の連携報知情報は無線連携プロトコル層WLP上にて定義される連携報知パケットに組み込まれ、上流ノードユニット及び下流ノードユニットのEPC機能部3は、連携報知情報の送受信制御を、トランスポート層(ここでは、UDP)上にて規定されるパケット送受信プロトコルに基づき連携報知パケットの送受信制御として実行する(連携報知情報送受信制御部の機能が実現されている)。UDPは、接続確認のためのステートが排除され、かつ送受信されるデータの誤りや順序の違いなどを検出する機能を有さない簡便なプロトコルである。例えば、同じトランスポート層のプロトコルであるTCP(Transmission Control Protocol)の場合、データ本体のパケット通信以外に、開始処理と終了処理が実施されるが、UDPは開始処理及び終了処理は実施されない。また、TCPではパケットの受信に対しACK(acknowledgement)を応答として返すが、UDPではACKを返さない。UDPのデータ送受信手順はこのように簡略化されたものであり、ユニット間の連携接続制御の迅速化に貢献する。なお、無線連携プロトコル層WLPの機能実現プログラムは、図3において通信ファームウェア305aに対し、無線連携プロトコル層モジュール305pとして組み込まれている。
【0027】
続いて、図7のユーザプレーン側のプロトコルスタックについて説明する。該プロトコルスタックの構造は、多くの点で図6のコントロープレーン側のスタック構造と共通しているので、以下、主にその相違点につい説明し、構造的に重複するプロトコル層については、図6と同じ符号を付与して詳細を略する。EPC機能部3のコアネットワーク側インターフェースCoreは、ユーザデータに関しては受信するIPパケットの受動的な転送処理に専念するため、最上層がネットワーク層であるIP層となっている。また、ユーザデータの送信元及び受信先となるUE5あるいはアプリケーションサーバ(APP)8’において、該ユーザデータの送受信を取り扱う最上部のプロトコル層はアプリケーション層APPである。
【0028】
図5の上は、ユーザデータの転送に用いるIPパケットの模式図である。IPパケット1300はIPヘッダ1301とペイロード1302とからなり、IPヘッダ1301にはPDU識別番号、データの送信元アドレス1301a、送信先アドレス1301bなどが書き込まれる。一方、同図下は、連携報知パケット1350の模式図であり、IPヘッダ1351とペイロード1352とからなる。ユーザデータの転送に用いるIPパケットとの相違点は、送信先アドレスが特定のアドレス(図5下においては「172.17.1.1」)に固定されたIPパケットとして発行される点にある。この固定送信先アドレスは、そのIPパケットが連携報知パケットであることを示す識別情報を兼ねたものである。このような連携報知パケット1350を用いることにより、1つの連携報知パケットのペイロード1352に組み込まれた連携報知情報を、無線リンクにより連携接続されている複数の無線通信ユニット間で容易に共有化することができる。
【0029】
通信ファームウェア305aの無線連携プロトコル層モジュール305pには、次の3つの制御モジュールが含まれている。
・ルーティング管理モジュール305pr
無線基地局部4又は中継無線通信部9が受信したIPパケット(ユーザデータ及び制御データ)を、EPC機能部3から見てどの向きに送信するかを管理する。基本的に、次の3つのいずれかが実行される。
(管理制御1)IPパケットを上流側に転送する。すなわち、自ノードユニットの中継無線通信部9及び上流無線リンクを経て上流ノードユニットの無線基地局部4に向かう方向である。
(管理制御2)IPパケットを下流側に転送する。すなわち、自ノードユニットの無線基地局部4及び下流無線リンクを経て下流ノードユニットの中継無線通信部9に向かう方向である。
(管理制御3)IPパケットを自ノードユニットに接続中のアプリケーションサーバ8’またはUE5に転送する。
【0030】
上流ノードユニット及び下流ノードユニットに接続されているアプリケーションサーバ8’及びUE5のノードアドレスのリストは、追って詳述する方式に従い、無線ネットワークシステムを構成する全てのノードユニット(無線通信ユニット1)間で情報共有され、ルーティング管理テーブル305f(ルーティング管理情報)として記憶される。このルーティング管理テーブル305fの内容は、隣接するノードユニット間の連携報知パケット介した通信により定期的に更新される。ルーティング管理モジュール305prの動作は、受信したIPパケットの送信先アドレスが、ルーティング管理テーブル305fを参照することにより、上流側に存在するのか(管理制御1)、下流側に存在するのか(管理制御2)、自ノードユニットのエリア内にあるのか(管理制御3)を単純に判断する処理に集約される。
【0031】
・トポロジ管理モジュール305pt
無線ネットワークシステムを構成する全てのノードユニットの無線接続トポロジ(無線リンクを介した位相幾何学的な接続形態)を管理する。無線接続トポロジは、自ノードユニットから見た上流ノードユニット及び下流ノードユニットの特定情報を、全てのノードユニット(無線通信ユニット1)間で情報共有することで把握が可能であり、その内容はトポロジ管理テーブル305tt(トポロジ管理情報)として記憶される。このトポロジ管理テーブル305ttの内容も、隣接するノードユニット間の連携報知パケット介した通信により定期的に更新される。また、後述の棄却リスト305rrもトポロジ管理モジュール305ptに組み込まれている。
【0032】
・無線リンク管理モジュール305pj
中継無線通信部9あるいは無線基地局部4が構築する無線リンク(連携無線ベアラ)の状態を管理する。具体的には自ノードユニットの中継無線通信部9が上流ノードユニットの無線基地局部4に無線リンク55を介して接続した場合、または下流ノードユニットの中継無線通信部9が自ノードユニットの無線基地局部4に無線リンク55を介して接続した場合に連携モードとなり、上記のルーティング管理モジュール305pr及びトポロジ管理モジュール305ptが起動する。一方、無線リンク55を介した他ノードユニットの接続がない場合は孤立モードとなり、ルーティング管理情報及びトポロジ管理情報の各内容はクリアされる。連携モードにて無線リンク55に割り当てるチャネルを決定するためのチャネルマップ305gも無線リンク管理モジュール305pjに組み込まれている。
【0033】
図11は、上記の構成の無線通信ユニット1を採用した場合の、本発明の無線ネットワークシステムの一構成例を示すものである。該無線ネットワークシステムにおいて無線通信ユニット群1(A)~1(C)は、互いに隣接する無線通信ユニット対(1(A)と1(B)、1(B)と1(C))の基地局セル(例えば、無線通信ユニット対1(A),1(B)の場合、図1の50(A)と50(B))が一部重なる位置関係で、無線リンク55(A)及び55(B)により接続されている。例えば、無線通信ユニット対1(A),1(B)の一方に接続されたUE5(A)(移動端末)と他方に接続されたUE5(B)(移動端末)とは、無線通信ユニット対1(A),1(B)及び該無線通信ユニット対1(A),1(B)を接続する連携無線ベアラ55(A)を介してIPパケットの送受信を行なうことができる。無線通信ユニット群1(A)~1(C)は、例えば全てが前述の船舶などの移動体上に搭載されていてもよいし、一部のもののみを移動体上に搭載し、残余のものを建物内などに固定設置するようにしてもよい。また、無線通信ネットワークが配備されていない地域にて、全ての無線通信ユニット群1(A)~1(C)を固定配置してもよい。
【0034】
また、図11においては、無線リンク55(A),55(B)により接続された無線通信ユニットが3(それ以上でもよい)となっている。例えば、無線通信ユニット1(A)に接続されたUE(移動端末)5(A)は、無線通信ユニット1(C)に接続されたUE(移動端末)5(C)と、無線通信ユニット1(A)~1(C)と、それら無線通信ユニット1(A)~1(C)を接続する連携無線ベアラ55(A),55(B)とを介してIPパケットを送受信できるようになっている。このように、接続される無線通信ユニットの数を容易に増やすことができ、より広大なエリアにてUE5同士の無線通信によるIPパケットの送受信が可能となる。
【0035】
図11下に掲げた表には、無線通信ユニット群1(A)~1(C)について、無線リンク55(A),55(B)の通信周波数/チャネル番号、トラッキングエリアコード、接続中のUE5(A)~5(C)及びアプリケーションサーバ8’(A)~8’(C)のノードアドレス(表示の簡略化のため、複数のUE5及びアプリケーションサーバ8’のノードアドレスをまとめたサブネットワークアドレスにて示している)、及び無線連携プロトコル層WLP上にて送受信される連携報知パケットの送信先アドレスをまとめて示している。連携報知パケットの送信先アドレスは、どの無線通信ユニット1(A)~1(C)についても同一に定められている。また、無線ネットワークシステム全体でみた場合の、接続中の全てのUE5(A)~5(C)及びアプリケーションサーバ8’(A)~8’(C)のノードアドレスは、無線通信ユニット群1(A)~1(C)間で共有化され、図3のルーティング管理テーブル305fに記憶される。また、無線通信ユニット1(A)~1(C)の接続トポロジ情報([A]→[B]→[C])も同様に共有化され、トポロジ管理テーブル305ttに記憶される。なお、トポロジ管理テーブル305ttに記憶される各無線通信ユニット1(A)~1(C)の特定情報(上記の[A]、[B]、[C])は、無線通信ユニット1(A)~1(C)に固有に割り振られたIDであってもよいし、無線通信ユニット1(A)~1(C)のノードアドレス(例えば、EPC機能部3、無線基地局部4、中継無線通信部9のいずれかのノードアドレスか、これらとは別に割り当てられたユニットノードアドレス)を用いてもよい。本実施形態では、EPC機能部3のノードアドレスを用いるものとする。
【0036】
図13は、ルーティング管理テーブル305fの内容の例を示すものであり、上から順に、図11の接続状態にある無線通信ユニット1(A)、1(B)及び1(C)のルーティング管理テーブル305fをそれぞれ示す。UE5(A)~5(C)及びアプリケーションサーバ8’(A)~8’(C)のノードアドレスは、自ノードユニットから見て下流ルート側に存在するノードと上流ルート側に存在するノードとが互いに区別された形で記憶されている。
【0037】
フラッシュメモリ305には、上記の通信プロトコルスタックをプラットフォームとして、図2のMME2、S-GW6及びP-GW7の各機能を仮想的に実現するMMEエンティティ305b、S-GWエンティティ305c、PーGWエンティティ305d及びHSSエンティティ305eの各プログラムがインストールされている。なお、MMEエンティティ305eは、後述の構成(2)において、端末特定情報検索部、アタッチ棄却判定部及びアタッチ受入制御部の各機能を実現する。また、バス306には上流側通信インターフェース304A及び下流側通信インターフェース304Bが接続されている。P-GW用のIPパケットの入出力ポートは上流側通信インターフェース304Aに、S-GW用のIPパケットの入出力ポートは下流側通信インターフェース304Bにそれぞれ確保される。なお、上記の構成では、図2のMME2、S-GW6及びP-GW7をコンピュータハードウェア上での仮想機能ブロックとして構成しているが、各々独立したハードウェアロジックにより構成してもよい。
【0038】
無線基地局部4はマイコンハードウェアを主体に構成されており、CPU401、プログラム実行領域となるRAM402、マスクROM403及びそれらを相互に接続するバス406等からなる。バス406にはフラッシュメモリ405が接続され、ここに無線基地局用のLTEプロトコルスタックを含む通信ファームウェア405aが格納されている。また、フラッシュメモリ405は、自ノードユニットのアクセスクラスとオペレータコードが書き込まれている。バス406には端末無線ベアラの構築によりUEと無線接続するための無線通信部412と、通信インターフェース404が接続されている。通信インターフェース404はEPC機能部3の下流側通信インターフェース304Bと有線の通信バス31により接続されている。
【0039】
中継無線通信部9はマイコンハードウェアを主体に構成されており、CPU901、プログラム実行領域となるRAM902、マスクROM903及びそれらを相互に接続するバス906等からなる。バス906にはフラッシュメモリ905が接続され、ここに中継無線通信部用のLTEプロトコルスタックを含む通信ファームウェア905aが格納されている。フラッシュメモリ905には自局(自ノードユニットの無線基地局部4)のセルIDが記憶されている。また、バス906には無線リンクの構築により上流無線基地局部と無線接続するための無線通信部912と、通信インターフェース904と、SIMカード907が接続されている。SIMカード907にはIMSIと自局のアクセスクラスが書き込まれている。通信インターフェース904はEPC機能部3の上流側通信インターフェース304Aと有線の通信バス30により接続されている。通信ファームウェア905aに組み込まれている中継無線通信部用のLTEプロトコルスタックは後述するUE(移動端末)用のプロトコルスタックと同一のものが使用される。換言すれば、中継無線通信部9の上流無線基地局部への接続手順は、UE(移動端末)の接続手順と方式的には同一である。なお、通信ファームウェア905aは、後述の構成(1)においては、自ノード無線基地局部判別部及びアタッチ制御部の機能を実現する。
【0040】
通信バス30には、EPC機能部3とアプリケーションサーバ8’(あるいは、インターネット等の外部ネットワークであってもよい)との間のIPパケットの送受信を中継するルータ8が接続されている。
【0041】
次に、無線通信ユニット1は、着脱式の二次電池モジュール21(例えば、リチウムイオン二次電池モジュールやニッケル水素二次電池モジュールなど)と、無線基地局部4、EPC機能部3、ルータ8及び中継無線通信部9の各機能回路ブロックと、二次電池モジュール21からの入力電圧を各機能回路ブロックの駆動電圧に変換して出力する電源回路部22とが可搬型筐体23に一体的に組付けられた構造を有する。これにより、無線通信ユニット1は、二次電池モジュール21から駆動電源電圧を自律的に調達でき、商用交流などの外部電源電圧が使用不能な設置場所(例えば海上など)においても問題なく使用可能である。可搬型筐体23は金属ないし強化型樹脂製の箱型であり、図3に示す例では、搬送ないし移動の便宜を図るため、可搬型筐体23の底部にキャスター24Cを、同じく背面に手押し用の取手24を設けている。
【0042】
放電により二次電池モジュール21の出力電圧が下がった場合は、可搬型筐体23から二次電池モジュール21を取り外し、例えば図示しない商用交流電源や自家発電装置に接続された専用の充電器に装着して充電することが可能である。また、電源回路部22は、上記商用交流や移動体に設けられた集中電源部などの外部電源電圧も受電できるようになっており、上記駆動電源電圧に変換出力が可能である。さらに、当該外部電源電圧により二次電池モジュール21の充電を実行できるように構成することもできる。例えば電源回路部22が商用交流等から受電している状態で、停電により該受電が途絶えた場合は二次電池モジュール21からの受電に切り替えることで、無線通信ユニット1の動作が継続可能となるように構成することもできる。
【0043】
図4は、UE(移動端末)5の電気的構成の一例を示すブロック図である。UE5はマイコン100を処理主体として備えたスマートフォンとして構成されている。マイコン100は、CPU101、プログラム実行領域となるRAM102、ROM103、入出力部104及びそれらを相互に接続するバス106等からなる。また、バス106にはフラッシュメモリ105が接続され、ここにUE5の動作環境を構築するためのOS(図示せず)と、端末アプリ105b等がインストールされている。また、バス106にはSIMカード107が接続され、IMSIとアクセスクラスが書き込まれている。
【0044】
入出力部104にはグラフィックコントローラ1091を介してモニタ109が接続されている。モニタ109には入力部をなすタッチパネル110が重ね合わされ、モニタ109に表示形成される種々のソフト操作部(ボタンやアイコンなど)と協働して、UE5の動作制御に必要な種々の情報入力がなされるようになっている。タッチパネル110はタッチパネルコントローラ1101を介して入出力部104に接続されている。入出力部104には静止画ないし動画を撮影するためのカメラ111が接続されている。さらに、バス106には無線通信部112が接続されている。UE5は該無線通信部112にて、図3の無線通信ユニット1の無線基地局部4と端末無線ベアラ57を介して無線接続される。
【0045】
図8は、LTEシステムにおける下りリンクのチャネルマッピングを示す。ここでは、論理チャネル(Downlink Logical Channel)、トランスポートチャネル(Downlink Transport Channel)及び物理チャネル(Downlink Physical Channel)相互間のマッピング関係を示している。以下、順に説明する。
・DTCH(Dedicated Traffic Channel:専用トラフィックチャネル)は、データの送信のための個別論理チャネルである。DTCHは、トランスポートチャネルであるDLSCH(Downlink Shared Channel:下りシェアドチャネル)にマッピングされる。
【0046】
・DCCH(Dedicated Control Channel:専用制御チャネル):UE5とネットワークとの間の個別制御情報を送信するための論理チャネルである。DCCHは、UE5及び中継無線通信部9が無線基地局部4とRRC接続を有する場合に用いられる。DCCHは、DLSCHにマッピングされる。
・CCCH(Common Control Channel:共通制御チャネル):UE5及び中継無線通信部9と無線基地局部4との間の送信制御情報のための論理チャネルである。CCCHは、UE5及び中継無線通信部9が無線基地局部4との間でRRC接続を有していない場合に用いられる。CCCHは、DLSCHにマッピングされる。
【0047】
・BCCH(Broadcast Control Channel:放送制御チャネル):システム情報配信のための論理チャネルである。BCCHは、トランスポートチャネルであるBCH(Broadcast Channel、放送チャネル)又はDLSCHにマッピングされる。
・PCCH(Paging Control Channel:ページング制御チャネル):ページング情報、及びシステム情報変更を通知するための論理チャネルである。PCCHは、トランスポートチャネルであるPCH(Paging Channel:ページングチャネル)にマッピングされる。
【0048】
トランスポートチャネルと物理チャネルとの間のマッピング関係は以下の通りである。
・DLSCH及びPCH:PDSCH(Physical Downlink Shared Channel:物理下りシェアドチャネル)にマッピングされる。DLSCHは、HARQ、リンクアダプテーション、及び動的リソース割当をサポートする。
・BCH:PBCH(Physical Broadcast Channel:物理ブロードキャストチャネル)にマッピングされる。
【0049】
図9は、LTEシステムにおける上りリンクのチャネルマッピングを示す。図8と同様に、論理チャネル(Downlink Logical Channel)、トランスポートチャネル(Downlink Transport Channel)及び物理チャネル(Downlink Physical Channel)相互間のマッピング関係を示している。以下、順に説明する。
【0050】
・CCCH(Common Control Channel:共通制御チャネル):UE5及び中継無線通信部9とEPC機能部3との間の制御情報を送信するために使用される論理チャネルであり、EPC機能部3と無線リソース制御(RRC:Radio Resource Control)接続を有していないUE5によって使用される。
・DCCH(Dedicated Control Channel:専用制御チャネル):1対1(point-to-point)の双方向の論理チャネルであり、UE5及び中継無線通信部9とEPC機能部3と間で個別の制御情報を送信するために利用するチャネルである。専用制御チャネルDCCHは、RRC接続を有しているUE5によって使用される。
・DTCH(Dedicated Traffic Channel:専用トラフィックチャネル):1対1の双方向論理チャネルであり、特定のUE又は中継無線通信部専用のチャネルであって、ユーザ情報の転送のために利用される。
【0051】
・ULSCH(Uplink Shared Channel:上りリンク共用チャネル):HARQ)、動的適応無線リンク制御、間欠送信(DTX:Discontinuous Transmission)がサポートされるトランスポートチャネルである。
・RACH(Random Access Channel:ランダムアクセスチャネル):制限された制御情報が送信されるトランスポートチャネルである。
【0052】
・PUCCH(Physical Uplink Control Channel:物理上りリンク制御チャネル):下りリンクデータに対する応答情報(ACK(Acknowledge)/NACK(Negative acknowledge))、下りリンクの無線品質情報、および、上りリンクデータの送信要求(スケジューリングリクエスト:Scheduling Request:SR)を無線基地局部4に通知するために使用される物理チャネルである。
・PUSCH(Physical Uplink Shared Channel:物理上りリンク共用チャネル):上りリンクデータを送信するために使用される物理チャネルである。
・PRACH(Physical Random Access Channel:物理ランダムアクセスチャネル):主にUE5から無線基地局部4への送信タイミング情報(送信タイミングコマンド)を取得するためのランダムアクセスプリアンブル送信に使用される物理チャネルである。ランダムアクセスプリアンブル送信はランダムアクセス手順の中で行なわれる。
【0053】
図9に示すように、上りリンクでは、次のようにトランスポートチャネルと物理チャネルのマッピングが行われる。上りリンク共用チャネルULSCHは、物理上りリンク共用チャネルPUSCHにマッピングされる。ランダムアクセスチャネルRACHは、物理ランダムアクセスチャネルPRACHにマッピングされる。物理上りリンク制御チャネルPUCCHは、物理チャネル単独で使用される。また、共通制御チャネルCCCH、専用制御チャネルDCCH、専用トラフィックチャネルDTCHは、上りリンク共用チャネルULSCHにマッピングされる。
【0054】
LTEシステムの下りリンクにおいては、UE5及び中継無線通信部9は無線基地局部4に対してOFDM(Orthogonal Frequency-Division Multiplexing、直交周波数分割多重)アクセス(OFDMA)により無線接続する。OFDMA方式は、周波数分割多重と時間分割多重とを複合させた二次元の多重化アクセス方式として特徴づけられる。具体的には、直交する周波数軸と時間軸のサブキャリアを分割してUE5に割り振り、各サブキャリアの信号がゼロ(0点)になるように、周波数軸上で直交するサブキャリアを分割する。サブキャリアを分割して周波数軸上に割り当てることにより、あるサブキャリアがフェージングの影響を受けても影響のない別のサブキャリアを選択することができるので、ユーザは無線環境に応じてより良好なサブキャリアを使用でき、無線品質を維持できる利点が生ずる。
【0055】
OFDMA方式においては、周波数軸と時間軸とが張る仮想平面上で定義されるリソースブロック(Resource Block:以下、RBともいう)が無線リソースとして採用される。RBは図10に示すように、上記平面を180kHz/0.5msecでマトリックスに区切ったブロックとして定義され、各ブロックは周波数軸上では15kHz間隔で隣接する12個のサブキャリアを、時間軸上ではフレームの1スロット分(7シンボル)を含む。このRBは時間軸上で隣接する2つ(1msec)を1組としてUE5及び中継無線通信部9に割り当てられる。他方、LTEシステムの上りリンクにおいても、SC-FDM(Single Career Frequency-Division Multiplexing)アクセス(SC-FDMA)が採用される点を除き、同様の概念のリソースブロックが無線リソースとして用いられる。OFDMAでは1つのリソースブロックが周波数軸上で12のサブキャリア(帯域幅:15kHz)に分割されるのに対し、SC-FDMAはサブキャリアへの分割がなされないシングルキャリア方式である。
【0056】
3GPP仕様の無線通信方式においては、該3GPPに規定された複数の周波数バンドのいずれが割り当てられる。この割り当てられる周波数バンドは、通信方式によって相違し、例えばLTEバンドとしてはバンド1、3、6、8、11、18、19、21、26、28、41及び42が使用されている。いずれのバンドも、予め定められた帯域幅の複数の周波数チャネルに分割され、EPC機能部3は、図2の無線リンク55及び端末無線ベアラ57を、予め定められた周波数チャネルを選択して構築することとなる。すなわち、下流ノードユニット間チャネル、上流ノードユニット間チャネル及び端末側チャネルは、各々3GPPに規定される複数のバンドのいずれかに属する周波数チャネルとして設定される。
【0057】
図11の実施形態において、EPC機能部3は、(下流)無線リンク55の設定周波数チャネルを、予め定められた特定の1つの周波数チャネルである(下流)ユニット間チャネルに固定設定する。また、端末無線ベアラ57の設定周波数チャネルである端末側チャネルについては、(下流)ユニット間チャネルと同一の周波数チャネルに設定される。つまり、EPC機能部3は、直下の無線基地局部4に対し、下流側の無線通信ユニット1の中継無線通信部9と移動端末5に対し同一の周波数チャネルを設定する。
【0058】
図11において、無線通信ユニット1(A)のセル、無線通信ユニット1(B)のセル及び無線通信ユニット1(C)のセルは互いに重なりを生じている(図1も参照)。この場合、例えば無線通信ユニット1(B)から見て上流及び下流の無線通信ユニット1(A),1(C)を接続する無線リンク55(A),(B)のユニット間チャネルは、これを互いに異なる周波数チャネルに設定することで、無線リンク55(A),(B)の構築に際して、これに関与する、互いに一部重なる複数のセルの間での電波干渉を効果的に防止することができる。
【0059】
より具体的には、無線通信ユニット1(A)~1(C)の各EPC機能部3は、(上流)無線リンクが構築される際に、下流ノードユニット間チャネルを、上流無線リンクに対して設定される上流ノードユニット間チャネルと異なる周波数チャネルに設定する一方、端末用チャネル群については、下流ノードユニット間チャネル及び上流ノードユニット間チャネルとのいずれとも異なる周波数チャネル群として設定している。例えば、無線通信ユニット1(B)に着目してみた場合、無線通信ユニット1(B)のEPC機能部3は、上流無線リンク55(B)に対して設定される上流ノードユニット間チャネルを例えばCH2に設定する。一方、無線通信ユニット1(A)のEPC機能部3は、該無線通信ユニット1(A)から見た上流無線リンク55(A)(無線通信ユニット1(B)から見れば下流無線リンクである)に対して設定される上流ノードユニット間チャネル(無線通信ユニット1(B)から見れば下流ノードユニット間チャネルである)を、上記CH2と相違するCH1に設定するのである。このとき、下流ノードユニット間チャネルCH1と上流ノードユニット間チャネルCH2とを同一バンド内の互いに異なる周波数チャネルとして設定することで、無線リンクを構築するための無線基地局部4及び中継無線通信部9のハードウェアを、単一バンド仕様にて簡便に構成できる利点が生ずる。
【0060】
また、端末側チャネルについては、上記同一バンドに属する周波数チャネルのうち、下流ノードユニット間チャネルと同一のチャネルに設定される。例えば、図11の無線ネットワークシステム全体に1つのバンドのみが割り当てられている場合、端末側チャネルは、同一バンドに属する周波数チャネルのうち、下流ノードユニット間チャネルと同一のチャネルを設定することで、端末無線ベアラ構築も含めて無線基地局部4及び中継無線通信部9のハードウェアの単一バンド仕様化を図ることができ、装置構成の簡略化に寄与する。なお、端末側チャネルは、下流ノードユニット間チャネル及び上流ノードユニット間チャネルとして設定されるもの以外の残余の周波数チャネルから切り替え可能に選択してもよい。
【0061】
また、本実施形態では、上記の同一バンドとして、3GPPに規定されたバンド28が採用されている。バンド28は、地上波アナログテレビ放送の停波に伴い空きを生じたVHF帯(700MHz帯)に設定されている。バンド28は低周波数帯のため通信速度が幾分遅い関係上、都市部など端末加入者の多いエリア等での採用が積極的に進められておらず、電波リソースの利用状況がそれほどひっ迫していないためスムーズな接続が期待できる。また、低周波数帯であるということは、電波の遠方到達性に優れ、1つの無線通信ユニットのセルカバレッジの拡大を図ることができる。また、地下や障害物があっても繋がりやすい特性を有し、例えば海上や鉱山などで本発明の無線ネットワークシステムを構築する上でも好適であるといえる。
【0062】
本発明の無線ネットワークシステムにおいて、図11のごとく隣接する無線リンク55(A),55(B)のユニット間チャネル設定を互いに異ならせるための具体的な手法としては、例えば無線リンク55(A),55(B)経由して、各無線通信ユニット1(A)~1(C)が前述の連携報知パケットの送受信によりユニット間チャネル情報を共有化することにより行なうことができる。
【0063】
また、無線ネットワークシステムに参加する無線通信ユニットの上限数が定められている場合には、例えば図11において個々の無線通信ユニット1(A)~1(C)に付与されるノードアドレスの組み合わせに応じて、割り振るべきユニット間チャネルの種別をチャネルマップの形で一律に定め、このチャネルマップを個々の無線通信ユニットのEPC機能部3に組み込んでおくことが、処理のさらなる簡略化を図るうえで有効である。各EPC機能部3はチャネルマップを参照することで、隣接する無線リンクのユニット間チャネルが異なるものとなるように設定とすることが可能となる。この場合、EPC機能部3は、下流ノードユニット間チャネルとして選択可能な周波数チャネル群と、接続先となる下流中継無線通信部のノードアドレスとの対応関係を示すチャネルマップを記憶するチャネルマップ記憶部を有し、下流中継無線通信部からのアタッチ要求を受けるに伴い、該下流中継無線通信部のノードアドレスを取得するとともに、取得したノードアドレスに対応する周波数チャネルをチャネルマップ上にて特定し、特定された該周波数チャネルを下流ノードユニット間チャネルとして設定するように動作する。
【0064】
図12は、チャネルマップ305gの一例を示す。該チャネルマップ305gにおいては、システム構築に参加する無線通信ユニット1の数が4つであり、それぞれユニット特定情報MID01~MID04が付与されている。そして、それらユニット特定情報の組み合わせに応じ、対応する無線通信ユニッ1トの間に設定するユニット間チャネルのチャネル番号が重複を生じないように定められている。ユニット特定情報は、無線通信ユニット1の認証情報(IMSI)であってもよいし、ノードアドレスであってもよい。
【0065】
以下、中継無線通信部9とUE5のアタッチシーケンスの流れについて、図16及び図17を用いて説明する。図16は中継無線通信部9のアタッチシーケンスを示す。まず、TS0にて無線基地局部4は自セルに向け、PBCHを用いて報知情報を送出する。3GPPにおいて報知情報は、図22に示すように、1つのMIB(Master Information Block)と、11個のSIB(System Information Block)とからなり、予め定められたスケジューリング情報に従い、順次送出される。MIBは、自セルに新たにアタッチしようとするUE5ないし中継無線通信部9を検出するために周期的に送出されるものであり、自セルのPHY層の情報や、システム情報(SIB)の受信に必要な情報(例えばシステム帯域幅など)を含む。
【0066】
SIBはMIBの送信後に順次送出され、内容の異なる11種類のブロックからなる。このうち、SIB1には、セルへのアクセス許可情報、セルID、オペレータコード、トラッキングエリアコード(Tracking Area Code:TAC)、SIBのマッピング及びスケジューリング情報などが含まれる。SIB2~SIB11については、SIB1で報知される上記のマッピング及びスケジューリング情報に従い送出がなされる。よって、中継無線通信部9(後述のUE5についても同じ)は、SIB1を受信することにより、SIB2~SIB11がどのタイミングで配信されるかを把握でき、全てのSIBの受信が可能となる。
【0067】
中継無線通信部9は、MIBの受信により、アタッチに必要なPHY層の仕様やその後の無線ベアラ構築のためのシステム情報を把握する一方、SIB1の受信により、アタッチ先の無線基地局部4のセルID、オペレータコード及びTACを把握するとともに、アタッチ可能な無線基地局部4であるかどうかを判断する。アタッチ可能な無線基地局部4と判断されれば中継無線通信部9は該無線基地局部4にアタッチ要求を出し、アタッチ不能と判断された場合はアタッチ自体を行なわない。
【0068】
ここで、オペレータコードは、通常、MCC(Mobile Country Code)及びMNC(Mobile Network Code)からなり、中継無線通信部9(UE5)は自身に割り振られたオペレータコードをSIMカード907(507)内にてIMSIに組み込まれた形で記憶している。図26は、一般的なIMSIのデータ構造を示すものであり、MCCは国番号を、MNCは事業者番号を、MSIN(Mobile Subscription Identification Number)は加入者識別番号をそれぞれ表す。10進数にてIMSI全体は15桁、MCCは3桁、MNCは2桁(3桁のこともあり得る)、MSINは10桁(9桁のこともあり得る)である。MSINは中継無線通信部9(UE5)の加入者契約に一義的に対応する情報であり、前述の通りアタッチ時に認証情報として使用される。無線基地局部4にアタッチ可能な中継無線通信部9(UE5)のMSINのリストはHSS10(図2)に記憶されている。一方、MCC及びMNCは、通常はそれ単独では中継無線通信部9(UE5)を個別に識別する情報としては機能しないが、本実施形態では、例えばMNCに無線通信ユニット1の装置個体ごとに一義的な情報として定めており(特に、MNC)、図27に示すように、MCC及びMNCからなるオペレータコードは自ノードユニットの特定情報としての機能を有する。
【0069】
図16に戻り、TS1では中継無線通信部9から無線基地局部(eNodeB)4を経由してMME2に対し、アタッチ要求が出される。このとき、中継無線通信部9は、認証用のIMSIを送信する。MME2はこれを受け、TS2にてS-GW6に対しベアラ設定要求を送信する。S-GW6はTS3にて、P-GW7との間でS5インターフェース上に物理回線のベアラ設定処理を実行する。ベアラが設定されればS-GW6はTS4にてMME2に、ベアラ設定応答を送信する。
【0070】
MME2は、TS5にて要求元ユニットのIPアドレスに対応する無線通信チャネルをチャネルマップ305g(図12)上で検索する。そして、TS6で、無線ベアラ設定要求(アタッチ受入れ)を無線基地局部4に設定チャネル番号とともに通知する。これを受けた無線基地局部4はTS7にて設定するべき無線ベアラ(無線リンク)の設定チャネル番号を含むMIBを中継無線通信部9に送信する。
【0071】
TS8にて中継無線通信部9はユニット間チャネルを、受信したMIBに含まれる設定チャネル番号に固定設定し、設定完了を返信する。これを受け、TS9にて無線基地局部4はセッション開始要求(タッチ受入れ)を中継無線通信部9に通知する。TS10にて中継無線通信部9は無線リンクを設定し、セッション開始応答を無線基地局部4に返す。TS11にて、無線基地局部4は、セッション開始応答をMME2に通知する。
【0072】
一方、図17はUE5(移動端末)のアタッチシーケンスを示す。図16の中継無線通信部9のアタッチシーケンスと全く同様に、TS10’で報知情報が配信され、TS11’では、これを受けたUE5から無線基地局部(eNodeB)4を経由してMME2に対し、アタッチ要求が出される。このとき、要求元に無線通信ユニットのIMSIを送信し、認証を受ける。MME2はこれを受け、TS12にてS-GW6に対しベアラ設定要求を送信する。S-GW6はTS13にて、P-GW7との間でS5インターフェース上に物理回線のベアラ設定処理を実行する。ベアラが設定されればS-GW6はTS14にてMME2に、ベアラ設定応答を送信する。
【0073】
MME2は、図13の処理に従い、端末無線ベアラ群として使用可能な設定チャネル番号を決定する。そして、TS16で、無線ベアラ設定要求(アタッチ受入れ)を無線基地局部4に決定した設定チャネル番号とともに通知する。これを受けた無線基地局部4はTS17にて設定するべき無線ベアラ(無線リンク)の設定チャネル番号を含むMIB(Master Information Block)をUE5に送信する。
【0074】
TS18にてUE5は端末側チャネルを、受信したMIBに含まれる設定チャネル番号に設定し、設定完了を返信する。これを受け、TS19にて無線基地局部4はセッション開始要求(アタッチ受入れ)をUE5に通知する。TS20にてUE5は端末側無線ベアラを設定し、セッション開始応答を無線基地局部4に返す。TS21にて、無線基地局部4は、セッション開始応答をMME2に通知する。上記のように、UE5のアタッチシーケンスと中継無線通信部9のアタッチシーケンスとは、周波数チャネル設定の内容を除き、基本的に同一の手順に従い実行されている。
【0075】
LTEシステムにおいては、上記設定チャネル番号などの報知情報の送信量を運用・環境ごとに柔軟に変更するために、PBCHを用いた固定的な報知情報リソースと、PDSCHを用いた可変的に使用できる無線リソースとが組み合わせて使用される。ここで固定的なリソースであるPBCHを用いるのは、UE5(中継無線通信部9)が最初に取得する情報として報知情報が定められており、UE5(中継無線通信部9)が無線基地局部(eNodeB)4からの通知を受けることなしに受信できる必要があるためである。UE5は固定的なリソースであるPBCHを最初に受信し、PBCHからPDSCHを受信するための最低限の情報を得て、その情報をもとにPDSCHにて送られる報知情報を読むようにしている。PDSCHはRB単位で割り当て可能な可変リソースであるため、PDSCHにて送信する報知情報の量は可変である。これにより報知情報に使用するリソース量の変更が実現され、ネットワーク運用や環境により異なる報知情報量に応じた無線リソースの割り当てが可能となる。
【0076】
そして、このPBCHにより送信される報知情報のうち上記のMIBは、無線フレームの先頭(すなわち、サブフレーム番号=0)で送信されるものであり、時間リソース及び周波数リソースが常に固定された形で割り当てられる。その送信情報は、通常は、例えばPDSCHにより他の報知情報(例えばSIB(System Information Block))を受信するための情報、及び無線フレーム番号(SFN: System Frame Number)などである。しかし、本実施形態では、このMIBを利用して、無線基地局部4はUE5(中継無線通信部9)に対し、端末無線ベアラあるいは無線リンクのチャネル情報を配信する。MIBのサイズは24ビットに固定されているが、そのうちの10ビットは予備領域となっているので、例えばこの予備領域を利用して上記無線ベアラの設定チャネル情報を組み込むことが可能である。
【0077】
次に、無線通信ユニット1には、図29に示すように、中継無線通信部9が自ノードユニットの無線基地局部4に対しアタッチしてしまうこと、すなわち自己アタッチすることを防止する機能が搭載されている。すなわち、自ノードユニットの中継無線通信部9の、自ノードユニットの無線基地局部4へのアタッチに基づき自ノードユニット内に連携無線ベアラが構築されることを禁止する自ノード内アタッチ禁止制御部の機能が設けられている。以下、該機能について詳細に説明する。
【0078】
自ノード内アタッチ禁止制御部の機能は、次のいずれかの構成により実現できる。
(1)上流ノードユニットの候補となる無線通信ユニットである上流候補ユニットとの間に上流無線リンクを構築するのに先立って、上流候補ユニットの無線基地局部が自ノードユニットの無線基地局部であるか否かを判別する自ノード無線基地局部判別部と、上流候補ユニットが自ノードユニットの無線基地局部であった場合には上流無線リンクの構築を禁止する上流無線リンク構築禁止制御部とを備える構成。
(2)下流ノードユニットの候補となる無線通信ユニットである下流候補ユニットとの間に下流無線リンクを構築するのに先立って、下流候補ユニットの中継無線通信部が自ノードユニットの中継無線通信部であるか否かを判別する自ノード中継無線通信部判別部と、下流候補ユニットが自ノードユニットの中継無線通信部であった場合には下流無線リンクの構築を禁止する下流無線リンク構築禁止制御部とを備える構成。
【0079】
構成(1)は、アタッチ要求を出す側のロジックとして構築され、中継無線通信部9は出そうとしているアタッチが自己アタッチに該当する否かを判別する必要があるが、自己アタッチに該当すると判別された場合はアタッチ要求処理そのものが実行されないので、無線基地局部4の処理負荷は軽減される。他方、構成(2)においては、アタッチ要求を受ける側のロジックとして構築され、無線基地局部4が下流ノードユニットからのアタッチ要求は一旦受け付けなければならないが、中継無線通信部9が自己アタッチに該当する否かを判別する必要はなくなる。
【0080】
構成(1)については、上流候補ユニットの無線基地局部4から図22に示す報知情報を受信し、その受信した報知情報の内容に基づいて、中継無線通信部9が出そうとしているアタッチが自己アタッチに該当する否かを判別する方式を採用できる。例えば、SIB1に含まれるセルへのアクセス許可情報として、以下に説明するアクセスクラス情報を用い、該アクセスクラス情報に基づいて上記判別を実施することができる。
【0081】
アクセスクラス(AC)は、中継無線通信部9あるいはUE5に搭載されたSIMカード907(図3),107(図4)に、オペレータにより端末ごとにあらかじめ割り当てられている情報である。3GPPの標準仕様では、一般の通信端末に割り当てられるACとして0~9が確保されている。他方、緊急通報(110番、118番、119番)時には10が、公共機関や保全業務に使用される特殊な端末には11~15が割り当てられる。一般的なアクセスクラス制御では、まず無線基地局部4が配信する報知情報(図22参照)に、アクセスクラスごとの制御情報(規制率など)を設定することで、当該無線基地局部4のセル内にあるすべてのUE及び中継無線通信部9に一斉に通知される。これによりネットワークに印加されるトラフィックを下げることができる。
【0082】
また、上記の制御情報に設定する内容を適宜変更することで、ネットワークの輻輳状況に応じてアクセスを規制することができる。例えば、高輻輳状況では報知情報を変更し、規制率を上げる(あるいは、疎通率を下げる)といった運用が可能である。端末側では何らかの接続要求を試みる際に、報知情報に設定されたこの制御情報を参照し、当該接続要求のACが規制対象であれば、設定条件に応じて、一定期間は当該接続要求信号(アタッチ要求信号)を送信しないよう制御される。また、このアクセスクラス制御情報は、一般的にはAC(0~9)に対してアクセスクラス制御を適用することでネットワーク装置の保全、および通信トラフィックの適正化を実施し、かつAC(10、11~15)をアクセスクラス制御による規制の適用外となるよう設定することで、重要通信を確保する運用が可能となる。
【0083】
本発明においては、このアクセスクラス情報を以下のように用いることで、同一無線通信ユニット内における自己アタッチの問題を効果的に解決することができる。すなわち、無線基地局部4に、自セルへのアクセス許可情報を組み込んだ報知情報(上記のSIB1)を無線送出する報知情報送出部を設ける(無線通信部412)。報知情報のアクセス許可情報の内容は、自セルへのアタッチを禁止すべき移動端末(UE5)又は他の無線通信ユニット(上流候補ユニットの中継無線通信部9)に付与される特定のアクセスクラスの情報を禁止アクセスクラス情報として含むように定める。中継無線通信部9は、自ノードユニットに付与されたアクセスクラスを自ノードアクセスクラス情報として記憶する自ノードアクセスクラス情報記憶部(SIMカード907)を備えるとともに、自ノード無線基地局部判別部として、上流候補ユニットの無線基地局部から送出される報知情報を受信する報知情報受信部(無線通信部912)と、受信した報知情報に含まれる禁止アクセスクラス情報と自ノードアクセスクラス情報記憶部に記憶された自ノードアクセスクラス情報と照合するアクセスクラス情報照合部(通信ファームウェア905a)とを備える。また、上流無線リンク構築禁止制御部として、禁止アクセスクラス情報と自ノードアクセスクラス情報とが一致していた場合に、上流候補ユニットの無線基地局部4へのアタッチ要求を回避するアタッチ制御部(通信ファームウェア905a)を有する。
【0084】
具体例について、図23のブロック図及び図24の通信フロー図を用いて説明する。
上記の通り、アクセスクラス制御による規制の適用が可能なのはAC(0~9)の10種類であり、図23の例では、その最大値よりも1つ少ない9台の無線通信ユニット1(連携無線ベアラ55により相互接続されている)に対し、各中継無線通信部(BTC)9に、互いに異なるアクセスクラス(AC=1~9)が割り振られ、それぞれSIMカード907(図3:自ノードアクセスクラス情報記憶部)に記憶されている。一方、各無線基地局部(eNB)4には、自ノードユニットのACと同一のACを有する中継無線通信部9あるいはUE5に対してアタッチを禁止する制御情報が割り振られる。
【0085】
上記の前提で、図24のT101では、アタッチ先となる無線基地局部4から自セル内に向けてSIB1を含む報知情報が送出される。前述の通り、そのSIB1には、中継無線通信部9のSIMカード907に書かれたAC、例えば図23の左端の無線通信ユニット1の場合、AC=0について「アタッチ禁止」の制御情報が書き込まれる。これを受信したアタッチ元の中継無線通信部9では、T102にて自分のアクセスクラス、つまり、SIMカード907に書かれたACをリードし、T103にてSIB1が示すアタッチ禁止のACに該当するか否かを判定する。アタッチ禁止のACでなかった場合はT104に進み、無線基地局部4にアタッチ要求する一方、アタッチ禁止のACであった場合はアタッチを行なわない。上記のごとく、自ノードユニットの中継無線通信部9のACは必ずアクセス禁止のACとなるから、自己アタッチが回避される。
【0086】
なお、各無線通信ユニット1のセル内のUE5については、アクセス許可を得る場合、アクセス禁止に該当しないACが設定されていなければならない。図23の場合、UE5には、9台の無線通信ユニットのいずれとも異なるAC=9が設定されており、どの無線通信ユニット1に対してもアタッチが可能である。例えば、各無線通信ユニット1が陸上に固定設置され、UE5を所持するユーザが、ある無線通信ユニット1のセルから他の無線通信ユニット1のセルに移動した場合も通信継続が可能となる。一方、例えば各無線通信ユニット1が異なる船舶に設置され、その船舶の乗組員が当該船舶内でのみ使用するUE5の場合は、該UE5に設定するCAは、対応する船舶に設置される無線通信ユニット1のCAとのみ不一致となっていればよい。この場合、AC=0~9を全て使用する形で、10台の無線通信ユニット1を連携無線ベアラ55により相互接続することも可能となる。
【0087】
また、構成(1)については、報知情報(SIB1)に含まれるセルIDを用いて上記判別を実施することもできる。本発明においては、セルIDを以下のように用いることで、同一無線通信ユニット内における自己アタッチの問題を効果的に回避することができる。すなわち、無線基地局部4には、自セルのセルIDを組み込んだ報知情報(上記のSIB1)を無線送出する報知情報送出部を設ける(無線通信部412)。中継無線通信部9は、自ノードユニットの無線基地局部のセルIDを自ノードセルIDとして記憶する自ノードセルID記憶部(図3のフラッシュメモリ905:自局セルID)を備えるとともに、自ノード無線基地局部判別部(通信ファームウェア905a)として、上流候補ユニットの無線基地局部から報知情報を無線取得する報知情報取得部(無線通信部912)と、取得した報知情報に含まれるセルIDと自ノードセルID記憶部に記憶されたセルIDとを照合するセルID照合部とを備える(通信ファームウェア905a)。上流無線リンク構築禁止制御部として、取得した報知情報に含まれるセルIDと自ノードセルID記憶部に記憶されたセルIDとが一致していた場合に、上流候補ユニットの無線基地局部へのアタッチ要求を回避するアタッチ制御部(通信ファームウェア905a)を有する。
【0088】
具体例について、図25の通信フロー図を用いて説明する。図25のT201では、アタッチ先となる無線基地局部4から自セル内に向けてSIB1を含む報知情報が送出される。図22に示すように、無線基地局部4に対応するセルIDが書き込まれる。これを受信したアタッチ元の中継無線通信部9では、T202にて自局(自ノードユニット)のセルIDをリードし、T203にてSIB1が示すセルIDと一致するか否かを判定する。セルIDが一致しなかった場合はT204に進み、無線基地局部4にアタッチ要求する一方、セルIDが一致した場合はアタッチを行なわない。これにより、自己アタッチが回避される。
【0089】
次に、構成(2)については、無線基地局部4が下流ノードユニットからのアタッチ要求は一旦受け付け、EPC機能部3にてそれが自己アタッチか否かを判別することになる。具体的には、EPC機能部3は、下流候補ユニットの中継無線通信部9からアタッチ要求を受けるに伴い、該下流候補ユニットの中継無線通信部9が固有に有する端末特定情報を取得する端末特定情報取得部(図3:通信インターフェース304A)と、アタッチ許可するべき他ノードユニットの中継無線通信部9の端末特定情報のリストを記憶する端末特定情報リスト記憶部(図2:HSS10、図3:HSSエンティティ305e)とを備える。また、自ノード中継無線通信部判別部として、下流候補ユニットの中継無線通信部9から取得した端末特定情報と一致する端末特定情報を端末特定情報リスト記憶部にて検索する端末特定情報検索部(MMEエンティティ305b)を備え、また、下流無線リンク構築禁止制御部として、下流候補ユニットの中継無線通信部から取得した端末特定情報と一致する端末特定情報が、端末特定情報リスト記憶部にて検索されないことを必要条件として、下流候補ユニットの中継無線通信部からのアタッチ要求を棄却する判定を行なうアタッチ棄却判定部(MMEエンティティ305b)と、該アタッチ棄却判定部の判定結果に基づいて下流候補ユニットの中継無線通信部からのアタッチ要求の受入れ又は棄却の制御を行なうアタッチ受入制御部(MMEエンティティ305b)とを有する。この構成によると、アタッチ受入しない中継無線通信部9の端末特定情報として、自ノードユニットの中継無線通信部9の端末特定情報を指定し、アタッチ受入する端末特定情報のリストから除外しておくことで、自己アタッチに該当する場合のアタッチ棄却判定を簡単に行うことができる。
【0090】
アタッチ受入制御部は、下流候補ユニットの中継無線通信部からのアタッチ要求を棄却するに伴い、候補ユニットに対し、当該候補ユニットになされる次回のアタッチ要求までの期間延長を促す報知情報を候補ユニットに送信するように構成できる。これにより、一旦アタッチ要求を拒否した候補ユニットから、自己アタッチを含む再アタッチ要求が短い間隔で頻繁に到来することを防止できる。
【0091】
端末特定情報取得部は、下流候補ユニットに対するアタッチシーケンスにおいて該下流候補ユニットを接続認証するためのIMSI情報を端末特定情報報として取得するように構成できる。LTEのアタッチシーケンスでは、UE5あるいは中継無線通信部9などの端末機器の加入者認証のため、PUSCHを介して下流端のノードユニットに端末機器からIMSIを送信することが手順として規定されており、これを利用することで、候補ユニットからユニット特定情報を容易に取得できる利点がある。
【0092】
アタッチ棄却判定部は、下流候補ユニットの中継無線通信部から取得したIMSIと一致するIMSIが端末特定情報リスト記憶部にて検索されず、かつIMSIに含まれるオペレータコードが自ノードユニットのオペレータコードであることを必要条件として、下流候補ユニットの中継無線通信部からのアタッチ要求を棄却する判定を行なうように構成できる。単にIMSIが端末特定情報リスト記憶部にて検索されないだけでなく、IMSIに含まれるオペレータコードが自ノードユニットのオペレータコードであることも含めて、アタッチ要求を棄却する判定を行なうようにすることで、自己アタッチの判定精度をより高めることができる。
【0093】
以下、具体的な処理例について、図28の通信フロー図を用いて説明する。アタッチ先となる無線基地局部4からT301にて報知情報が送出されると、アタッチ元の中継無線通信部9ではこれを受け、T302にてアタッチ要求を無線基地局部4に向け送信する。このとき、無線基地局部4には図27に示す認証用のIMSIが送信される。IMSIはEPC機能部3のMME2(図2図3:MMEエンティティ305b)に転送される。
【0094】
MME2では、転送されたIMSIをHSS10にて検索する。T304にて、ヒットするIMSIがあった場合はT305に進み、アタッチを受け入れる。一方、T304にて、ヒットするIMSIがなかった場合はT306にて受信したIMSIのオペレータコードをリードする。T307にて、そのオペレータコードが自局のオペレータコードであった場合はT308に進み、アタッチを棄却する。このとき、次回のアタッチ要求までの期間延長を促す報知情報として、アタッチ棄却の理由コード(Cause Code:PDSCHを用いて送信される)のうち、理由コード22が返される。理由コード22(Congestion:混雑)を受けたアタッチ元の中継無線通信部9は、混雑状態の解消を見込んだ一定期間の経過後にのみ無線基地局部4への再アタッチが許可されるようになっており、上記の期間延長に該当する処理が実現される。また、理由コード15(ほかのトラッキングエリア候補に移れ)を用いることも有効である。この理由コードを受けたアタッチ元の中継無線通信部9は、他のトラッキングエリアに属する無線基地局部4へのアタッチを試みるので、アタッチ棄却された無線基地局部4に再度アタッチ要求するまでの時間を引き延ばすことができる。トラッキングエリアコード(TAC)もまた、図23のSIB1に書き込まれている情報であり、ほかのトラッキングエリア候補を見出すための参照情報となる。
以上で自己アタッチ防止にかかる制御の実例について説明を終わる。
【0095】
次に、図18は、同じ無線通信ユニット1に接続するUE5(UE(I)及びUE(II))間のIPパケットの伝送処理の流れを示すものである。U1及びU2は図15により説明済みのアタッチシーケンスであり、端末無線ベアラが構築される。U3でUE(I)からIPパケットが無線基地局部4に向け上りパケットとして送出される。無線基地局部4がこれをEPC機能部3に転送する。EPC機能部3では、自ノードユニット1(A)に接続中のいずれかのUEのIPアドレスが、受け取ったIPパケットのヘッダに記録されている送信先アドレスと一致しているか否かを確認する。図18の場合、UE(II)のIPアドレスがこれに該当することとなり、D1にて該IPパケットを下りパケットとして配下の無線基地局部4に折り返し転送する。無線基地局部4はこれを受け取ってUE(II)に転送し、処理は完了する。
【0096】
図19は、図11において、無線通信ユニット1(A)に接続中のUE5(A)と、隣接する無線通信ユニット1(A)に接続中のUE5(B)と間のIPパケットの伝送処理の流れを示すものである。U1~U3までの処理は図18と同じである。U3において無線通信ユニット1(A)のEPC機能部3は、図13のルーティング管理テーブル305fを参照し、受け取ったIPパケットの送信先アドレスが、自ノードユニット1(A)に接続中のいずれのUEのIPアドレスとも一致しないことを確認するとともに、該送信先アドレスが上流ルート及び下流ルートのいずれに存在するかを確認する。例えば、送信先アドレスが上流ルート側に存在する場合は、U4にてそのIPパケットを、無線リンク55(A)により上流側の無線通信ユニット1(B)に転送する。無線通信ユニット1(B)では、このIPパケットを受け取り、同様に自ノードユニット1(B)に接続中のいずれかのUEのIPアドレスが、受け取ったIPパケットのヘッダに記録されている送信先アドレスと一致しているか否かを確認する。一致していれば、D2にて該IPパケットを下りパケットとして配下の無線基地局部4に転送する。無線基地局部4はこれを受け取ってUE5(B)に転送し、処理は完了する。
【0097】
たとえば、IPパケットの送信元のUEが、順次(カスケード)接続された無線通信ユニット群の中間のものに接続されており、送信先のUEが該無線通信ユニットよりも下流側の無線通信ユニットに接続中のUEである場合は、上記U3にてEPC機能部3はルーティング管理テーブル305fを参照し、受け取ったIPパケットの送信先アドレスが、下流ルート側のUEのIPアドレスと一致していることを確認することとなる。該IPパケットは下りパケットとして無線基地局部4に転送され、さらに送信先となるUEが接続される無線通信ユニットに下流側の連携無線ベアラを用いて転送される。
【0098】
図20は、図11において、無線通信ユニット1(A)に接続中のUE5(A)と、2つ先の無線通信ユニット1(C)に接続中のUE5(C)と間のIPパケットの伝送処理の流れを示すものである。U1~U4までの処理は図19と同じである。U4において無線通信ユニット1(B)のEPC機能部3はルーティング管理テーブル305fを参照し、受け取ったIPパケットのヘッダに記録されている送信先アドレスが、例えば上流ルート側に存在することが確認された場合、U5にてそのIPパケットを、無線リンク55(B)により上流側の無線通信ユニット1(C)に転送する。無線通信ユニット1(C)では、このIPパケットを受け取り、自ノードユニットに接続中のUE5(C)のIPアドレスが送信先のIPアドレスと一致することを確認する。そして、D3にて該IPパケットを下りパケットとして配下の無線基地局部4に転送する。無線基地局部4はこれを受け取ってUE5(C)に転送し、処理は完了する。
【0099】
図21は、無線通信ユニット1(A)に接続中のUE5(A)からのIPパケットが、無線ネットワークシステム外の送信先アドレスを有している場合の処理を示す。U1~U5までの処理は図20と同じである。U5において無線通信ユニット1(C)のEPC機能部3はルーティング管理テーブル305fを参照し、受け取ったIPパケットのヘッダに記録されている送信先アドレスが上流ルートに存在することを確認し、U6にてそのIPパケットをルータ8に転送する。
【0100】
前述の構成の通信ファームウェア305aは、ルーティング管理テーブル305fの作成および更新にかかる以下の機能部の実現プログラムとして機能する(図11参照)。
・ルーティング管理情報受信制御司令部:自ノードユニットよりも上流側又は下流側に接続されている無線通信ユニットを他ノードユニットとして、該他ノードユニットの無線基地局部に接続中の移動端末(UE)5のノードアドレスを含むルーティング管理情報を上流ノードユニット又は下流ノードユニットから、連携報知情報として受信することを連携報知情報送受信制御部に対し指令する。
・ルーティング管理情報統合処理部:自ノードユニットの無線基地局部4に接続中の移動端末5のノードアドレスを含むルーティング管理情報を、上流ノードユニット又は下流ノードユニットから受信される他ノードユニットのルーティング管理情報と統合する。
・ルーティング管理情報記憶制御部:統合後のルーティング管理情報をルーティング管理情報記憶部(図3において、フラッシュメモリ305のルーティング管理テーブル305fの記憶領域がこれに該当する)に記憶させる。
・ルーティング管理情報送信制御司令部:統合後のルーティング管理情報を連携報知情報として下流ノードユニット又は上流ノードユニットに向け送信することを、連携報知情報送受信制御部に対し指令する。
・ユーザデータ転送制御部:ルーティング管理情報記憶部に記憶されたルーティング管理情報を参照することによりユーザデータの転送先となる移動端末5のノードアドレスを特定し、通信プロトコルのユーザプレーン側にてユーザデータの転送制御を行なう。
【0101】
以上の構成により、無線連携プロトコル層WLP上での連携報知パケットの送受信処理により、連携接続された複数の無線通信ユニット1間でのルーティング管理情報の共有化処理をスムーズかつ簡便に実行することができる。以下、その具体的な処理の流れの一例について図14A及び図14Bを用いて説明する。ここでは、無線通信ユニット1(A)~1(C)が図11の接続状態となっている場合を例にとる。
【0102】
ルーティング管理テーブル305fの更新処理は、連携報知パケットを介したいわばバケツリレー的な手法により、無線ネットワークシステムの下流端に位置する無線通信ユニット1(A)と上流端に位置する無線通信ユニット1(C)との間で、往復的に実施される。すなわち、処理起点となる下流端の無線通信ユニット1(A)が自ノードユニットに接続中のUE5(及びアプリケーションサーバ8’)のノードアドレスを報知する連携報知パケットを更新トリガパケットとして発行し上流ノードユニットに送信する。これを受信した上流ノードユニットは連携報知パケットの内容を参照してルーティング管理テーブル305fの下流ルート側の内容を更新し、更新後の下流ルート側の内容を次の上流ノードユニットに連携報知パケットにより伝達する(図14A)。そして、 この伝達の流れが上流端の無線通信ユニット1(C)に到達すると、該上流端の無線通信ユニット1(C)はルーティング管理テーブル305fの下流ルート側の内容を更新した上で、自ノードユニットに接続中のUE5(及びアプリケーションサーバ8’)のノードアドレスを報知する連携報知パケットを発行し下流ノードユニットに送信する。これを受信した下流ノードユニットは連携報知パケットの内容を参照してルーティング管理テーブル305fの上流ルート側の内容を更新し、更新後の上流ルート側の内容を次の下流ノードユニットに連携報知パケットにより伝達する(図14B)。そして、この伝達の流れが下流端の無線通信ユニット1(A)に返ってくれば、無線通信ユニット1(A)はルーティング管理テーブル305fの上流ルート側の内容を更新し、一連の処理が完結する。このシーケンスは、下流端の無線通信ユニット1(A)が上記の更新トリガパケットを定期的に(例えば、あらかじめ定められた時間間隔で)発行することで繰り返され、ルーティング管理テーブル305fを最新の状態に維持することができる。
【0103】
以下、より詳細に説明する。まず、下流端の無線通信ユニット1(A)のEPC機能部3は、自ノードユニットに接続中のUE5のノードアドレス(192.168.1.0/24)とアプリケーションサーバ8’のノードアドレス(172.16.1.0/24)とをペイロードに組み込んだ連携報知パケットを発行する。そして、中継無線通信部(BTC)9に対し上流無線リンク55(A)を介して該連携報知パケットを送信させる(U101)。無線通信ユニット1(B)は無線基地局部4にてこれを受信し、連携報知パケットに書き込まれた上記のノードアドレスによりルーティング管理テーブル305fの下流ルート側の内容を更新する(U102)。
【0104】
このとき、連携報知パケットの送信元が無線通信ユニット1(B)から見て下流側のノードユニットであることは、本実施形態の場合、次のいずれのロジックからも自明に特定できる。
(1)連携報知パケットが無線基地局部4により受信されていること。
(2)連携報知パケットに書き込まれた送信元アドレスが、下流ノードユニットのノードアドレスを示していること。連携報知パケットの発行元はEPC機能部3であり、送信元アドレスが下流ノードユニットのものであるか、下流ノードユニットのものであるかはトポロジ管理テーブル305ttを参照することにより把握できる。
【0105】
続いて、無線通信ユニット1(B)のEPC機能部3は、無線通信ユニット1(A)から受け取ったUE5のノードアドレス(192.168.1.0/24)とアプリケーションサーバ8’のノードアドレス(172.16.1.0/24)に、自ノードユニットに接続中のUE5のノードアドレス(192.168.2.0/24)とアプリケーションサーバ8’のノードアドレス(172.16.2.0/24)を統合し、これらをペイロードに組み込んだ連携報知パケットを発行する。そして、中継無線通信部(BTC)9に対し上流無線リンク55(B)を介して該連携報知パケットを送信させる(U103)。
【0106】
上流端の無線通信ユニット1(C)のEPC機能部3は、無線基地局部4にて上記連携報知パケットを受信し、これに書き込まれた上記のノードアドレスにより、ルーティング管理テーブル305fの下流ルート側の内容を更新する(U104)。他方、無線通信ユニット1(C)には上流ノードユニットが接続されていないので、ルーティング管理テーブル305fの上流ルート側の内容は空白となる(図13の下参照)。ここまでのシーケンスにより、各無線通信ユニット1(A)~1(C)のルーティング管理テーブル305fの下流ルート側の内容更新が完了する。
【0107】
続いて、図14Bに進み、上流端の無線通信ユニット1(C)は、自ノードユニットに接続中のUE5のノードアドレス(192.168.3.0/24)とアプリケーションサーバ8’のノードアドレス(172.16.3.0/24)とをペイロードに組み込んだ連携報知パケットを発行する。そして、無線基地局部4に対し下流無線リンク55(B)を介して該連携報知パケットを送信させる(U105)。無線通信ユニット1(B)は中継無線通信部9にてこれを受信し、連携報知パケットに書き込まれた上記のノードアドレスによりルーティング管理テーブル305fの上流ルート側の内容を更新する(U106)。この時点で、無線通信ユニット1(B)のルーティング管理テーブル305fの内容は、図13の中央に示す状態となる。
【0108】
このとき、連携報知パケットの送信元が無線通信ユニット1(B)から見て上流側のノードユニットであることは、本実施形態の場合、次のいずれのロジックからも自明に特定できる。
(3)連携報知パケットが中継無線通信部9により受信されていること。
(4)連携報知パケットに書き込まれた送信元アドレスが、トポロジ管理テーブル305ttにおいて上流ノードユニットのノードアドレスを示していること。
【0109】
続いて、無線通信ユニット1(B)のEPC機能部3は、無線通信ユニット1(C)から受け取ったUE5のノードアドレス(192.168.3.0/24)とアプリケーションサーバ8’のノードアドレス(172.16.3.0/24)に、自ノードユニットに接続中のUE5のノードアドレス(192.168.2.0/24)とアプリケーションサーバ8’のノードアドレス(172.16.2.0/24)を統合し、これらをペイロードに組み込んだ連携報知パケットを発行する。そして、無線基地局部4に対し下流無線リンク55(A)を介して該連携報知パケットを送信させる(U107)。
【0110】
下流端の無線通信ユニット1(A)のEPC機能部3は中継無線通信部9にて上記連携報知パケットを受信し、これに書き込まれた上記のノードアドレスにより、ルーティング管理テーブル305fの上流ルート側の内容を更新する(U104)。他方、無線通信ユニット1(A)には下流ノードユニットが接続されていないので、ルーティング管理テーブル305fの下流ルート側の内容は空白となる(図13の上参照)。以上のシーケンスにより、各無線通信ユニット1(A)~1(C)のルーティング管理テーブル305fの内容更新処理は完了する。
【0111】
各無線通信ユニット1(A)~1(C)のUE5の接続状態が変化した場合は、次回の更新処理時にルーティング管理テーブル305fに反映される。このとき、ルーティング管理テーブル305fの内容は、古い内容を消去する形で新しい内容により置き換えられる(すなわち、更新される)。
【0112】
なお、自ノードユニットに接続中のUE5(及びアプリケーションサーバ8’)のノードアドレスは、各無線通信ユニット1(A)~1(C)が発行する連携報知パケットにより個別に取得してルーティング管理テーブル305fを更新することも可能である。この場合、トポロジ管理テーブル305ttにより連携報知パケットの送信元の上下流の区別を行ない、ルーティング管理テーブル305fの上流ルート側及び下流ルート側を、連携報知パケットを受け取るごとに更新する流れとなる。ここで、接続遮断されたUE5が発生した場合は、そのUE5のノードアドレスをルーティング管理テーブル305fから消去する手順が別途必要となる。具体的には、接続遮断されたUE5のノードアドレスを連携報知パケットにより報知するか、ルーティング管理テーブル305f上にて、接続中のUE5(及びアプリケーションサーバ8’)のノードアドレスを無線通信ユニットのノードアドレスと対応付けて管理するか、のいずれかが必要である。しかしながら、各ノードユニットに接続中のUE5(及びアプリケーションサーバ8’)のノードアドレスを中間の無線通信ユニット1(B)で統合しつつ、連携報知パケットにより報知する前述の手法であれば、ルーティング管理テーブル305fの既存の内容を消去するだけでよくなり、処理の大幅な簡略化を図ることができる。
【0113】
次に、通信ファームウェア305aは、トポロジ管理テーブル305ttの作成および更新にかかる以下の機能部の実現プログラムとしても機能する(図11参照)。
・無線接続トポロジ情報受信制御司令部:自ノードユニットよりも上流側又は下流側に接続されている無線通信ユニット群1(A)~1(C)について、該無線通信ユニット群1(A)~1(C)に含まれる個々の無線通信ユニットを接続順序とともに特定する無線接続トポロジ情報を上流ノードユニット又は下流ノードユニットから、連携報知情報として受信することを連携報知情報送受信制御部に対し指令する。
・無線接続トポロジ情報更新処理部:上流ノードユニット又は下流ノードユニットから受信された無線接続トポロジ情報の内容を、該無線接続トポロジ情報が特定する無線通信ユニット群に自ノードユニットを組み込んだ形で更新する。
・無線接続トポロジ情報記憶制御部:更新後の無線接続トポロジ情報を無線接続トポロジ情報記憶部(図3において、フラッシュメモリ305のトポロジ管理テーブル305ttの記憶領域がこれに該当する)に記憶させる。
・無線接続トポロジ情報送信司令部:更新後の無線接続トポロジ情報を下流ノードユニット又は上流ノードユニットに向け送信することを、連携報知情報送受信制御部に対し指令する。
この場合、ユーザデータ転送制御部は、無線接続トポロジ情報記憶部に記憶された無線接続トポロジ情報に基づいてユーザデータの転送制御を行なう。
【0114】
以上の構成により、無線連携プロトコル層WLP上での連携報知パケットの送受信処理により、連携接続された複数の無線通信ユニット1間でのトポロジ管理情報の共有化処理をスムーズかつ簡便に実行することができる。以下、その具体的な処理の流れの一例について図15を用いて説明する。ここでも、無線通信ユニット1(A)~1(C)が図11の接続状態となっている場合を例にとる。その基本的な処理の流れは、ルーティング管理テーブル305fの更新処理と同様のバケツリレー的な手法により、無線ネットワークシステムの下流端に位置する無線通信ユニット1(A)と上流端に位置する無線通信ユニット1(C)との間で、往復的に実施される。すなわち、処理起点となる下流端の無線通信ユニット1(A)は、自ノードユニットのノードアドレス[A]と上流ノードユニットのノードアドレス[B]を、例えば、その下流側から上流側へ向かう配列順序(接続順序)を反映した無線接続トポロジ情報([A]→[B])として組み込んだ連携報知パケットを、更新トリガパケットとして発行し上流ノードユニットに送信する(U201)。
【0115】
上流ノードユニットである無線通信ユニット1(B)は受け取った連携報知パケットの無線接続トポロジ情報([A]→[B])によりトポロジ管理テーブル305ttの内容を更新する(U202)。続いて上流ノードユニット1(B)は、受け取った無線接続トポロジ情報([A]→[B])の上流側に、次の上流ノードユニットのノードアドレス([C])を付け加える形で更新し、その更新後の無線接続トポロジ情報([A]→[B]→「C])を上流ノードユニットである無線通信ユニット1(C)に連携報知パケットを用いて送信する(U203)。
【0116】
連携報知パケットの送信の流れが上流端の無線通信ユニット1(C)に到達すると、該上流端の無線通信ユニット1(C)は受け取った無線接続トポロジ情報によりトポロジ管理テーブル305ttの内容を更新し(U204)、これを自ノードユニットが認識して最新の無線接続トポロジ情報([A]→[B]→「C])として、これを連携報知パケットにより下流ノードユニットである無線通信ユニット1(B)に送信する(U205)。これを受信した下流ノードユニットである無線通信ユニット1(B)は、受信した連携報知パケットの無線接続トポロジ情報の内容によりトポロジ管理テーブル305ttを更新し(U206)、更新後の無線接続トポロジ情報の内容を次の下流ノードユニットである無線通信ユニット1(A)に連携報知パケットにより伝達する(U207)。下流端の無線通信ユニット1(A)は、受信した無線接続トポロジ情報によりトポロジ管理テーブル305ttの内容を更新し、一連の処理が完結する。このシーケンスは、下流端の無線通信ユニット1(A)が上記の更新トリガパケットを定期的に(例えば、あらかじめ定められた時間間隔で)発行することで繰り返され、トポロジ管理テーブル305ttを最新の状態に維持することができる。
【0117】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、あくまで例示であって、本発明はこれに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0118】
1(A),1(B) 無線通信ユニット
WS(A),WS(B) 大型船舶
2 MME
3 EPC機能部
300 ユーザデータパケット
350 連携報知パケット
301 CPU
302 RAM
303 マスクROM
304A 上流側通信インターフェース
304B 下流側通信インターフェース
305 フラッシュメモリ
305a 通信ファームウェア
305p 無線連携プロトコル層モジュール
305pr ルーティング管理モジュール
305f ルーティング管理テーブル
305pt トポロジ管理モジュール
305tt トポロジ管理テーブル
305rr 棄却リスト
305pj 無線リンク管理モジュール
305b MMEエンティティ
305c S-GWエンティティ
305d PーGWエンティティ
305e HSSエンティティ
305g チャネルマップ
306 バス
21 二次電池モジュール
22 電源回路部
23 可搬型筐体
30,31 通信バス
4 無線基地局部
401 CPU
402 RAM
403 マスクROM
404 通信インターフェース
405 フラッシュメモリ
405a 通信ファームウェア
406 バス
412 無線通信部
5 UE(移動端末)
6 S-GW
7 P-GW
8 ルータ
9 中継無線通信部
901 CPU
902 RAM
903 マスクROM
905 フラッシュメモリ
905a 通信ファームウェア
906 バス
907 SIMカード
912 無線通信部
50(A),50(B) セル
55 無線リンク(連携無線ベアラ)
57 端末無線ベアラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図14A
図14B
図15
図16
図17
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