(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20240828BHJP
G03G 21/14 20060101ALI20240828BHJP
【FI】
G03G15/20 555
G03G21/14
(21)【出願番号】P 2020131496
(22)【出願日】2020-08-03
【審査請求日】2023-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土井 洋平
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-029746(JP,A)
【文献】特開平09-329991(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
G03G 21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置に入力された電圧を計測する電圧計測部と、
シートを加熱する加熱部を有する定着器と、
計測された前記電圧が閾値以上となった場合に、前記電圧に基づく前記加熱部の加熱タイミングを決定し、決定した前記加熱タイミングで前記加熱部を加熱するように制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記電圧計測部によって計測された前記電圧が閾値以上となった場合には、
前記画像形成装置を使用可能な電力が制限されている状態で動作させる制御として印刷動作の効率を低下させた印刷制御を行うことによって前記シートの印刷処理を実行する、画像形成装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記加熱タイミングとして、電源から入力された交流電圧のピーク後のタイミングで前記加熱部を加熱するように制御する、
請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
交流電圧のゼロクロス点を検出するゼロクロス回路をさらに備え、
前記制御部は、前記ゼロクロス回路によって検出された前記ゼロクロス点を基準にして、前記加熱タイミングとなった時点で前記加熱部を加熱するように制御する、
請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記印刷動作の効率を低下させた印刷制御として、前記シートの搬送速度を通常時よりも遅くする制御、印刷時の濃度を落とす制御、特定のシート種別の印刷
が可能になされるとともに前記特定のシート種別以外の他のシート種別の印刷が不可能となされる制御、単色の印刷
が可能となされるとともに、多色印刷が不可能となされる制御のいずれか1つ又は複数の制御を行う、
請求項1から3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置で使用される定着器に対して製品定格以上の高電圧が入力された場合、定着器のヒータが破損してしまうおそれがある。そこで、従来では、製品定格以上の高電圧が入力された際には、機体を使用できなくさせることで定着器の加熱部を保護していた。
しかしながら、機体を使用できなくさせた場合には印刷動作を継続することができなくなってしまうため、印刷効率が低下してしまう場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、高電圧入力時において、定着器の加熱部を保護しつつ、印刷効率の低下を抑制することができる画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の画像形成装置は、電圧計測部と、定着器と、制御部とを持つ。電圧計測部は、画像形成装置に入力された電圧を計測する。定着器は、シートを加熱する加熱部を有する。制御部は、計測された前記電圧が閾値以上となった場合に、前記電圧に基づく前記加熱部の加熱タイミングを決定し、決定した前記加熱タイミングで前記加熱部を加熱するように制御する。前記制御部は、前記電圧計測部によって計測された前記電圧が閾値以上となった場合には、前記画像形成装置を使用可能な電力が制限されている状態で動作させる制御として印刷動作の効率を低下させた印刷制御を行うことによって前記シートの印刷処理を実行する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】実施形態の画像形成装置の全体構成例を示す図。
【
図2】実施形態の画像形成装置のハードウェア構成を示すブロック図。
【
図3】実施形態における画像形成装置が行う印刷制御処理の流れを示すフローチャート。
【
図4】入力電圧が定格時の画像形成装置の動作を説明するための図。
【
図5】入力電圧が高電圧時の画像形成装置の動作を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態の画像形成装置を、図面を参照して説明する。
図1は、実施形態の画像形成装置1の全体構成例を示す図である。実施形態の画像形成装置1は、複合機(MFP;Multi Function Peripheral)である。画像形成装置1は、画像形成処理及び画像定着処理による印刷を実行する。画像形成処理は、シート上に画像を形成する処理である。画像定着処理は、シート上に形成された画像を定着する処理である。シートは、例えば文字や画像などが形成される紙などである。シートは、画像形成装置1が画像形成できる物であればどのような物であってもよい。
【0008】
画像形成装置1は、画像読取部10、コントロールパネル20、画像形成部30、シート収容部40、定着器50、搬送ローラ611,612、排紙ローラ621,622、制御装置70及び制御基板90を備える。
画像読取部10は、原稿上の読み取り対象の画像を光の明暗として読み取る。例えば、画像読取部10は、原稿読み取り台にセットされた読み取り対象のシートに印刷されている画像を読み取る。画像読取部10は、読み取った画像情報を記録する。記録された画像情報は、ネットワークを介して他の情報処理装置に送信されてもよい。記録された画像情報は、印刷データとして画像形成部30によってシート上に画像形成されてもよい。
【0009】
コントロールパネル20は、表示部および操作部を備える。表示部は、液晶ディスプレイおよび有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等の表示装置である。表示部は、制御装置70の制御に応じて、画像形成装置1に関する種々の情報を表示する。操作部は、複数のボタンなどを備える。操作部は、ユーザの操作を受け付ける。例えば、操作部は、印刷の実行指示を受け付ける。操作部は、ユーザによって行われた操作に応じた信号を制御装置70に出力する。なお、表示部と操作部とは一体のタッチパネルとして構成されてもよい。
【0010】
画像形成部30は、画像形成処理を実行する。具体的には、画像形成部30は、画像読取部10によって生成された画像情報又は通信路を介して受信された画像情報に基づく画像をシート上に形成する。例えば、画像形成部30は、トナーによりシート上にトナー像を形成する。
【0011】
画像形成部30は、転写ベルト31、露光部32、複数の現像器33(現像器331、332、333及び334)、複数の感光体ドラム34(感光体ドラム341、342、343及び344)及び転写部35を備える。
転写ベルト31は、無端状の中間転写体である。転写ベルト31は、ローラの回転により矢印で示す方向(反時計回り)に回転する。
【0012】
露光部32は、現像器33と帯電器(不図示)の間の感光体ドラム34に対向する位置に設けられる。露光部32は、各感光体ドラム341、342、343及び344の表面(感光体層)に対して、画像情報に基づいたレーザ光を照射する。感光体ドラムに対してレーザ光が走査する方向が主走査方向であり、その主走査方向と直交する方向が副走査方向である。例えば、本実施形態において、主走査方向は感光体ドラムの軸方向と一致し、副走査方向は転写ベルトの回転方向と一致する。
【0013】
レーザ光の照射により、各感光体ドラム341、342、343及び344の表面(感光体層)上の電荷が消失する。この結果、感光体ドラム341、342、343及び344の表面には、レーザ光が照射された位置に静電気のパターンが形成される。すなわち、露光部32によるレーザ光の照射によって、感光体ドラム341、342、343及び344の表面には、静電潜像が形成される。なお、露光部32は、レーザ光の代わりに、LED(Light Emitting Diode)光を用いてもよい。
【0014】
現像器331、332、333及び334は、トナーを感光体ドラム341、342、343及び344に供給する。例えば、現像器331は、感光体ドラム341の表面上の静電潜像をイエロー(Y)により現像する。また、現像器332は、感光体ドラム342の表面上の静電潜像をマゼンタ(M)により現像する。また、現像器333は、感光体ドラム343の表面上の静電潜像をシアン(C)により現像する。また、現像器334は、感光体ドラム344の表面上の静電潜像をブラック(K)のトナーにより現像する。
【0015】
現像器331、332、333及び334は、感光体ドラム341、342、343及び344上に可視像としてのトナー像を形成する。感光体ドラム341、342、343及び344上に形成されたトナー像は、不図示の複数の1次転写ローラにより転写ベルト31上に転写(1次転写)される。1次転写ローラは、転写ベルト31を挟んで感光体ドラム341、342、343及び344それぞれに対向する位置に複数設けられる。
【0016】
転写部35は、支持ローラ351及び2次転写ローラ352を有する。転写部35は、転写ベルト31上のトナー像を2次転写位置Uにおいてシート41に転写する。2次転写位置Uは、支持ローラ351及び2次転写ローラ352が転写ベルト31を挟んで対向する位置である。転写部35は、転写電流によって制御する転写バイアスを転写ベルト31に与える。転写部35は、転写バイアスにより転写ベルト31上のトナー像をシート41に転写する。転写電流は、制御装置70により制御される。
【0017】
シート収容部40は、単数又は複数の給紙カセットを備える。給紙カセットは、所定のサイズ及び所定の種類のシート41を収納する。給紙カセットは、ピックアップローラを備える。ピックアップローラは、給紙カセットからシート41を1枚ずつ取り出す。ピックアップローラは、取り出したシート41を搬送部80へ供給する。
【0018】
定着器50は、画像定着処理を実行する。具体的には、定着器50は、シート41に対して加熱及び加圧を行うことによって、シート41上に形成された画像(例えば、トナー像)をシート41に定着させる。定着器50は、シート41を加熱する加熱部を有する。加熱部は、例えばハロゲンランプ方式、IH(Induction Heating)方式又は面状ヒータ方式である。面状ヒータは、表面に発熱抵抗体が設けられたヒータである。
【0019】
搬送ローラ611及び612は、給紙カセットから給紙されたシート41を画像形成部30へ供給する。搬送ローラ611及び612は、対向する位置に設置される。
排紙ローラ621及び622は、定着器50によって画像が形成されたシート41を排出部に排紙する。排紙ローラ621及び622は、対向する位置に設置される。
【0020】
制御装置70は、画像形成装置1の各機能部を制御する。
搬送部80は、シート41を搬送する。搬送部80は、搬送路と、不図示の複数のローラを備える。搬送路は、シート41が搬送される経路である。ローラは、制御装置70の制御に応じて回転することによってシート41を搬送する。
制御基板90は、制御装置70の制御に応じて、定着器50が有する加熱部の加熱を制御する。加熱部の加熱を制御するとは、加熱部を加熱するように制御又は加熱部の加熱を停止するように制御することを意味する。
【0021】
図2は、実施形態の画像形成装置1のハードウェア構成を示すブロック図である。なお、
図2では、本実施形態における画像形成装置1の特徴的なハードウェア構成のみ示している。
画像形成装置1は、画像読取部10、コントロールパネル20、画像形成部30、シート収容部40、定着器50、制御装置70、制御基板90、補助記憶装置120及びネットワークインタフェース130を備える。各機能部は、システムバス11を介してデータ通信可能に接続されている。
【0022】
画像読取部10、コントロールパネル20、画像形成部30、シート収容部40及び定着器50については具体的な構成について説明したため説明を省略する。以下、制御装置70、制御基板90、補助記憶装置120及びネットワークインタフェース130について説明する。
【0023】
制御基板90は、電圧検知回路91、ゼロクロス検知回路92及び加熱制御基板93を備える。
電圧検知回路91は、画像形成装置1に入力された電圧を計測する。電圧検知回路91は、ジョブ毎に電圧を計測してもよいし、予め定められたタイミングに電圧を計測してもよい。予め定められたタイミングとは、例えば画像形成装置1の電源が投入されたタイミングであってもよいし、予め定められた時刻となったタイミングであってもよい。電圧検知回路91は、計測した電圧値を制御装置70に出力する。電圧検知回路91は、電圧計測部の一態様である。
【0024】
ゼロクロス検知回路92は、電源から入力された交流電圧のゼロクロス点を検出する。ゼロクロス点の検出とは、交流電源の電圧がゼロボルトを通過するタイミングを検出することである。ゼロクロス検知回路92は、ゼロクロス点を検出する度に、ゼロクロス点を検出したことを示すゼロクロス信号を制御装置70に出力する。
【0025】
加熱制御基板93は、定着器50への電源供給を制御するスイッチング素子である。加熱制御基板93は、例えばトライアックである。加熱制御基板93は、制御装置70から送信される制御信号に基づいてオン状態とオフ状態を切り替え可能である。加熱制御基板93がオン状態の場合、加熱制御基板93と定着器50とが導通するため、定着器50に対して電源が供給される。一方、加熱制御基板93がオフ状態の場合、加熱制御基板93と定着器50とが導通しないため、定着器50に対して電源が供給されない。加熱制御基板93は、非ゼロクロスタイプのトライアックである。非ゼロクロスタイプは、交流のゼロボルト付近でない地点であっても、制御信号が入力されるとオン状態とすることが可能である。
【0026】
制御装置70は、制御部71、ROM(Read Only Memory)72及びRAM(Random Access Memory)73を備える。制御部71は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサである。制御部71は、画像形成装置1の各機能部の動作を制御する。制御部71は、ROM72に記憶されたプログラムをRAM73に展開して実行することによって各種の処理を実行する。なお、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)が、制御部71が実現する適宜の機能を担ってもよい。ASICは、特定の機能を実現するための専用の回路である。
【0027】
制御部71は、電圧検知回路91で計測された電圧が閾値以上となった場合に、電圧に基づく加熱部の加熱タイミングで加熱部を加熱するように制御する。ここで、閾値は、画像形成装置1で定められる定格電圧より高い値である。電圧に基づく加熱部の加熱タイミングとは、電圧検知回路91で計測された電圧から求められる時間が経過したタイミングである。制御部71は、ゼロクロス検知回路92によって検出されたゼロクロス点を基準にして、加熱タイミングとなった時点で加熱部を加熱するように制御する。制御部71は、加熱タイミングとして、電源から入力された交流電圧のピーク後のタイミングで加熱部を加熱するように制御する。
【0028】
制御部71は、電圧検知回路91によって計測された電圧が閾値以上となった場合には、保護制御によるシートの印刷処理を実行する。保護制御とは、印刷動作の効率を低下させた印刷制御である。保護制御による動作時には、使用できる電力にも制限がある。そのため、制御部71は、印刷動作の効率を低下させた印刷制御として、以下に示す(1)~(4)のいずれか1つ又は複数の制御を行う。なお、いずれの制御を行うかは、ユーザが印刷時に設定してもよいし、予め設定されていてもよい。
(1)シートの搬送速度を通常時の搬送速度よりも遅くする制御
(2)印刷時の濃度を落とす制御
(3)特定のシート種別の印刷を可能にする制御
(4)単色の印刷を可能にする制御
【0029】
通常時とは、画像形成装置1に異常が生じていない場合である。通常時のシートの搬送速度及び通常時よりも遅くする場合のシートの搬送速度の情報は、予め設定されている。印刷時の濃度を落とす制御とは、印刷時に設定されている濃度よりも低い濃度で印刷を行う制御である。特定のシート種別の印刷を可能にする制御とは、一部のシートの印刷を可能にする制御である。例えば、普通紙の印刷を可能にして、厚紙の印刷を不可とするなどである。単色の印刷を可能にする制御とは、モノクロ印刷を可能にして、カラー印刷を不可とする制御である。
【0030】
制御部71は、保護制御によるシートの印刷処理を実行する場合、保護制御によるシートの印刷処理を実行している旨をコントロールパネル20に表示させる。
【0031】
ROM72は、制御部71を動作させるためのプログラムを記憶する。RAM73は、画像形成装置1が備える各機能部が用いるデータを一時的に記憶するメモリである。なお、RAM73は、画像読取部10が生成するデジタルデータを記憶してもよい。RAM73は、ジョブ及びジョブログを一時的に記憶してもよい。
【0032】
補助記憶装置120は、例えばハードディスク又はSSD(solid state drive)であり、各種データを記憶する。各種データは、例えばデジタルデータ、ジョブ及びジョブログなどである。
【0033】
ネットワークインタフェース130は、他の装置との間でデータの送受信を行う。ここで、他の装置とは、例えばパーソナルコンピュータ等の情報処理装置である。ネットワークインタフェース130は、入力インタフェースとして動作し、他の装置から送信される印刷データ、又は、指示を受信する。他の装置から送信される指示としては、印刷の実行指示などである。また、ネットワークインタフェース130は、出力インタフェースとして動作し、他の装置に対してデータを送信する。
【0034】
図3は、実施形態における画像形成装置1が行う印刷制御処理の流れを示すフローチャートである。
図3に示す処理は、画像形成装置1に対して印刷の実行指示がなされた場合に実行される。
電圧検知回路91は、入力された電圧を計測する(ACT101)。電圧検知回路91は、計測した電圧値の情報を制御装置70に出力する。制御装置70の制御部71は、電圧値の情報に基づいて、電圧値が定格電圧以内であるか否かを判定する(ACT102)。電圧値が定格電圧以内である場合(ACT102:YES)、画像形成装置1に異常な高電圧が入力されていない。そのため、画像形成装置1は、通常の印刷を行う(ACT103)。具体的には、制御部71は、画像形成部30及び定着器50を制御して、実行指示がなされた印刷を実行する。
【0035】
電圧値が定格電圧以内ではない場合(ACT102:NO)、画像形成装置1に閾値以上の電圧が入力されたことになる。そこで、制御部71は、入力された電圧値(閾値以上の電圧)に基づいて加熱タイミングを決定する(ACT104)。加熱タイミングの決定方法について説明する。まず制御部71は、入力された入力された電圧値に基づいて最大値を算出する。例えば、交流電圧の定格が100(V)である場合、最大値は以下の式(1)に基づいて求めることができる。
【0036】
最大値=100×√2=141.1(V)・・・式(1)
【0037】
交流電圧の正弦波の瞬時値は、以下の式(2)に基づいて求めることができる。
【0038】
瞬時値=最大値×sinωt・・・式(2) (ω=2πf,f=50Hz)
【0039】
式(2)を変形すると、式(3)が得られる。
【0040】
sinωt=瞬時値/最大値=(異常電圧×√2)/141.1・・・式(3)
【0041】
式(3)を変形すると、式(4)が得られる。
【0042】
t=sin-1×2πf×(異常電圧×√2)/141.1・・・式(4)
【0043】
式(3)及び式(4)に示す異常電圧は、画像形成装置1に入力された閾値以上の電圧(V)の値である。制御部71は、ゼロクロス点を基準として、式(4)により求められる時間t経過したタイミングを加熱タイミングとして決定する。その後、制御部71は、加熱タイミングとなったか否かを判定する(ACT105)。制御部71には、ゼロクロス検知回路92がゼロクロス点を検出する度に出力されたゼロクロス信号が入力されている。そこで、制御部71は、加熱タイミングを決定した後に入力されたゼロクロス信号に基づいて、加熱タイミングとなったか否かを判定する。具体的には、制御部71は、入力されたゼロクロス信号を基準として、ゼロクロス信号が入力されてから時間t経過した場合に加熱タイミングとなったと判定する。一方で、制御部71は、入力されたゼロクロス信号を基準として、ゼロクロス信号が入力されてから時間t経過していない場合に加熱タイミングとなっていないと判定する。
【0044】
加熱タイミングとなっていない場合(ACT105:NO)、制御部71は加熱タイミングとなるまで待機する。
一方、加熱タイミングとなった場合(ACT105:YES)、制御部71は制御信号を加熱制御基板93に出力することによって定着器50の加熱を制御する(ACT106)。具体的には、加熱制御基板93に対して制御信号が入力されると、加熱制御基板93と定着器50とが導通する。これにより、定着器50に対して電源が供給されて加熱部が加熱される。
【0045】
制御部71は、コントロールパネル20を制御して、エラーを表示する(ACT107)。例えば、制御部71は、電圧異常による保護印刷中であることを示す通知をコントロールパネル20に表示させる。制御部71は、保護制御による印刷動作を実行する(ACT108)。加熱制御基板93にはなだれ降伏があるため、制御部71はゼロクロス前に加熱制御基板93をオフ状態にするための制御信号を出力する。
【0046】
図4は、入力電圧が定格時の画像形成装置1の動作を説明するための図である。
図5は、入力電圧が高電圧時(定格時より大きい電圧)の画像形成装置1の動作を説明するための図である。
図4に示すように、入力電圧が定格(例えば、100V)の場合には、保護制御無しで印刷処理が実行される。そのため、加熱部オン/オフ制御に示すように継続して印刷動作が行われる。一方で、
図5に示すように、入力電圧が高電圧の場合には、画像形成装置1は、ゼロクロス信号を基準にt時間経過タイミングで加熱部を加熱するように制御する。そして、画像形成装置1は、次のゼロクロスの前に加熱部の加熱を停止する。このように、入力電圧が高電圧の場合には、画像形成装置1は、加熱部のオン制御とオフ制御の定期的に切り替えて印刷動作を行う。
図5には、定格時の交流電圧の波形94及び高電圧時の交流電圧の波形95を示している。
【0047】
以上のように構成された画像形成装置1によれば、高電圧入力時において定着器50の加熱部を保護しつつ、印刷効率の低下を抑制することが可能になる。具体的には、まず画像形成装置1は、計測された電圧が閾値以上となった場合に、電圧に基づく加熱部の加熱タイミングを決定する。画像形成装置1は、決定した加熱タイミングで加熱部を加熱するように制御する。このように、画像形成装置1は、入力された電圧に基づく加熱部の加熱タイミングを決定している。そして、画像形成装置1は、印刷指示が入力されたとしてもすぐには印刷処理を実行せずに、決定した加熱タイミングとなるまで印刷処理を行わない。これにより、入力電圧が製品定格を超える異常な高電圧が入力された場合であっても、定着器の加熱部(例えば、ヒータ)に対して異常な電圧が与えられることがない。そのため、定着器の加熱部の破損を防止することができる。さらに、画像形成装置1は、決定した加熱タイミングとなると印刷処理を行う。そのため、入力電圧が異常な高電圧であっても、定着器の加熱部の加熱ができるため、フルパフォーマンスとはならないが印刷動作を実行することができる。このように、画像形成装置1は、高電圧入力時において定着器50の加熱部を保護しつつ、印刷効率の低下を抑制することが可能になる。
【0048】
画像形成装置1は、交流電圧のゼロクロス点を検出するゼロクロス検知回路92を備えている。そして、画像形成装置1は、ゼロクロス検知回路92によって検出されたゼロクロス点を基準にして、加熱タイミングとなった時点で加熱部を加熱するように制御する。このように、画像形成装置1は、ゼロクロス点を基準とすることで、ゼロクロス点から同じ時間経過したタイミングで加熱部を加熱するように制御することができる。したがって、略同じ電圧に基づいて印刷を行うことができる。そのため、印刷ムラを軽減することができる。
【0049】
画像形成装置1は、加熱タイミングとして、電源から入力された交流電圧のピーク後のタイミングで加熱部の加熱制御を行う。例えば、画像形成装置1は、電圧波形の絶対値が製品定格の電圧以下となったタイミングで加熱部の加熱制御を行う。このような制御を行うことで、高電圧が入力された場合であっても加熱部の破損を防止することが可能になる。
【0050】
画像形成装置1は、電圧検知回路91によって計測された電圧が閾値以上となった場合には、印刷動作の効率を低下させた印刷制御を行うことによってシートの印刷処理を実行する。これにより、パフォーマンスは低下するものの、印刷動作を継続して実行することができる。そのため、利便性を向上させることが可能になる。
【0051】
画像形成装置1は、印刷動作の効率を低下させた印刷制御として、上記の(1)~(4)のいずれか1つ又は複数の制御を行う。これにより、パフォーマンスは低下するものの、印刷動作を継続して実行することができる。そのため、利便性を向上させることが可能になる。
【0052】
入力電圧が異常時に全段に降圧回路を設けて加熱部を保護した場合には、コストアップとなってしまう。それに対して、実施形態における画像形成装置1では、画像形成装置1に備えられている電圧検知回路91とゼロクロス検知回路92とを組み合わせて本制御を実現できる。そのため、製品のコストアップを抑制することができる。
【0053】
加熱部の耐圧性を上げるために、パターン幅を広くした場合にはニップ部以外も加熱することになり省エネとならない。さらに、コストが高くなってしまう。それに対して、画像形成装置1は、異常な電圧が入力された場合に動作する制御であるため、製品定格時の電圧が入力された場合には通常時の動作を行うため定着制御に影響がない。そのため、TPHの利点を活かすことが可能である。
【0054】
以下、画像形成装置1の変形例について説明する。
上記の説明では、電圧検知回路91、ゼロクロス検知回路92及び加熱制御基板93は制御基板90に備えられる構成を示した。電圧検知回路91、ゼロクロス検知回路92及び加熱制御基板93は、それぞれ個別に画像形成装置1に備えられてもよい。
【0055】
上述した実施形態における画像形成装置1の一部の機能をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録する。そして、上述したプログラムを記録した記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、オペレーティングシステムや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、可搬媒体や記憶装置等のことをいう。可搬媒体は、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等である。また、記憶装置は、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等である。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するものである。通信回線は、インターネット等のネットワークや電話回線等である。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」は、サーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリであってもよい。揮発性メモリは、一定時間プログラムを保持しているものである。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。また上記プログラムは、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【0056】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0057】
1…画像形成装置,50…定着器,70…制御装置,71…制御部,90…制御基板,91…電圧検知回路,92…ゼロクロス検知回路,93…加熱制御基板