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特許7545259光学素子、光検出装置、及び蛍光検出装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】光学素子、光検出装置、及び蛍光検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/64 20060101AFI20240828BHJP
【FI】
G01N21/64 Z
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020135120
(22)【出願日】2020-08-07
(65)【公開番号】P2022030836
(43)【公開日】2022-02-18
【審査請求日】2023-07-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 真澄
(72)【発明者】
【氏名】土屋 広司
(72)【発明者】
【氏名】數村 公子
(72)【発明者】
【氏名】秋草 文
【審査官】伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-168653(JP,A)
【文献】特開2020-008667(JP,A)
【文献】特開2015-031682(JP,A)
【文献】特開2013-185887(JP,A)
【文献】特開2003-028799(JP,A)
【文献】特開2014-228409(JP,A)
【文献】特開2008-039477(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/83
G01B 11/00 - G01B 11/30
G02B 5/00 - G02B 5/136
G02B 21/00 - G02B 21/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1表面、所定の方向において前記第1表面に対向する第2表面、及び、それぞれが前記方向に沿って延在する複数の光通過部を有する光学部材を備え、
前記複数の光通過部のそれぞれは、前記第1表面に位置する第1領域、前記第2表面に位置する第2領域、及び、前記第1表面と前記第2表面との間の周面に形成された光減衰領域を含み、
前記第1領域の最大幅及び前記第2領域の最大幅のうち大きい幅をaとし、前記第1領域と前記第2領域との距離をbとすると、前記複数の光通過部のそれぞれは、90°-tan-1(b/a)≦10°を満たしており、
前記光学部材は、前記複数の光通過部に対応する複数の孔をそれぞれが有する複数の薄板が前記方向に積層されることで構成されており、
前記光減衰領域は、前記複数の薄板が前記方向に積層されることで形成された凹凸領域を含む、光学素子。
【請求項2】
前記光減衰領域は、前記方向から見た場合に環形状を有するように形成されている、請求項1に記載の光学素子。
【請求項3】
前記光減衰領域は、前記周面において環状に連続するように形成されている、請求項1又は2に記載の光学素子。
【請求項4】
前記光減衰領域は、前記周面の全域にわたって形成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項5】
前記複数の光通過部のそれぞれは、前記方向に沿って延在する貫通孔であり、
前記第1領域は、前記第1表面に位置する第1開口であり、
前記第2領域は、前記第2表面に位置する第2開口である、請求項1~4のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項6】
前記凹凸領域は、複数の凸部を含み、
前記複数の凸部のそれぞれの高さをcとし、前記光通過部に入射する光の最大波長をλとすると、前記凹凸領域は、(2π×(c/2))/λ≧1を満たしている、請求項1~5のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項7】
前記凹凸領域は、前記方向において隣り合う凸部を含む複数の凸部を含み、
前記複数の凸部のそれぞれの幅は、前記第1領域の最大幅及び前記第2領域の最大幅のそれぞれよりも小さく、
前記隣り合う凸部の間の距離は、前記第1領域の最大幅及び前記第2領域の最大幅のそれぞれよりも小さい、請求項1~6のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項8】
前記方向において前記光学部材の一方の側又は他方の側に配置され、前記方向に対して10°以下の入射角で入射した光のうち所定の波長範囲内の光を選択的に通過させる光学フィルタを更に備える、請求項1~のいずれか一項に記載の光学素子。
【請求項9】
前記光学フィルタは、誘電体多層膜を含む、請求項に記載の光学素子。
【請求項10】
請求項1~のいずれか一項に記載の光学素子と、
前記光学素子を通過した光を検出する光検出器と、を備える、光検出装置。
【請求項11】
前記光学素子は、前記方向に対して10°以下の入射角で入射した光のうち所定の波長範囲内の光を選択的に通過させる光学フィルタを更に備え、
前記光学フィルタは、前記方向において前記光学部材の一方の側又は他方の側に配置されている、請求項10に記載の光検出装置。
【請求項12】
前記光学フィルタは、誘電体多層膜を含む、請求項11に記載の光検出装置。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の光検出装置と、
試料に照射するための励起光を出射する光源と、を備え、
前記光学素子は、前記試料と前記光検出器との間の光路上に配置されており、
前記光検出装置は、前記試料から発せられた蛍光を、前記光学素子を介して検出し、
前記励起光は、前記所定の波長範囲外の光であり、
前記蛍光は、前記所定の波長範囲内の光である、蛍光検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子、光検出装置、及び蛍光検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、励起光源と試料との間において、励起光源から出射された励起光を選択的に通過させる励起光源用フィルタと、試料と検出器との間において、試料から発せられた蛍光を選択的に通過させる検出器用フィルタと、を備える食品状態評価装置が記載されている。特許文献1に記載の食品状態評価装置は、励起光源用フィルタと試料との間に配置された偏光板と、試料と検出器用フィルタとの間に配置された偏光板と、を更に備えている。この一対の偏光板は、一方の偏光板の透過軸の方向が他方の偏光板の透過軸の方向に垂直となるように配置されている。これにより、蛍光の波長が励起光の波長に近接しており、検出器用フィルタのみによっては励起光が完全に遮断されない場合であっても、一対の偏光板によって励起光が遮断され、試料から発せられた蛍光が検出器に入射する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-208745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、所定の波長範囲内の光を選択的に通過させる光学フィルタとして、誘電体多層膜を含むものが用いられる場合がある。誘電体多層膜を含む光学フィルタでは、誘電体多層膜に入射する光の入射角が大きくなると、所定の波長範囲外の光が誘電体多層膜を通過するおそれがある。そのため、誘電体多層膜を含む光学フィルタを適切に機能させるためには、誘電体多層膜に入射する光の入射角を小さくする必要がある。
【0005】
本発明は、様々な入射角で光が入射した場合に10°以下の入射角で入射した光を選択的に通過させることができる光学素子、並びに、そのような光学素子を備える光検出装置及び蛍光検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の光学素子は、第1表面、所定の方向において第1表面に対向する第2表面、及び、それぞれが上記方向に沿って延在する複数の光通過部を有する光学部材を備え、複数の光通過部のそれぞれは、第1表面に位置する第1領域、第2表面に位置する第2領域、及び、第1表面と第2表面との間の周面に形成された光減衰領域を含み、第1領域の最大幅及び第2領域の最大幅のうち大きい幅をaとし、第1領域と第2領域との距離をbとすると、複数の光通過部のそれぞれは、90°-tan-1(b/a)≦10°を満たしている。
【0007】
この光学素子では、複数の光通過部のそれぞれが90゜-tan-1(b/a)≦10゜を満たすように構成されており、複数の光通過部のそれぞれの周面に光減衰領域が形成されている。これにより、複数の光通過部のそれぞれにおいて第1領域及び第2領域のいずれを光入射領域として機能させた場合にも、10゜を超える入射角で光通過部に入射した光が周面に当たって減衰されやすくなり、10゜以下の入射角で光通過部に入射した光が周面に当たらずに(すなわち、減衰されずに)光通過部を通過しやすくなる。よって、この光学素子によれば、様々な入射角で光が入射した場合に10°以下の入射角で入射した光を選択的に通過させることができる。
【0008】
本発明の光学素子では、光減衰領域は、上記方向から見た場合に環形状を有するように形成されていてもよい。これによれば、10゜を超える入射角で光通過部に入射した光をより確実に減衰させることができる。
【0009】
本発明の光学素子では、光減衰領域は、周面において環状に連続するように形成されていてもよい。これによれば、10゜を超える入射角で光通過部に入射した光をより確実に減衰させることができる。
【0010】
本発明の光学素子では、光減衰領域は、周面の全域にわたって形成されていてもよい。これによれば、10゜を超える入射角で光通過部に入射した光をより確実に減衰させることができる。
【0011】
本発明の光学素子では、複数の光通過部のそれぞれは、上記方向に沿って延在する貫通孔であり、第1領域は、第1表面に位置する第1開口であり、第2領域は、第2表面に位置する第2開口であってもよい。これによれば、光学部材の構造を単純化することができる。
【0012】
本発明の光学素子では、光減衰領域は、凹凸領域を含んでいてもよい。これによれば、光減衰領域の構造を単純化しつつも、10゜を超える入射角で光通過部に入射した光を確実に減衰させることができる。
【0013】
本発明の光学素子では、凹凸領域は、複数の凸部を含み、複数の凸部のそれぞれの高さをcとし、光通過部に入射する光の最大波長をλとすると、凹凸領域は、(2π×(c/2))/λ≧1を満たしていてもよい。これによれば、凹凸領域に光が入射すると散乱が生じやすくなるため、10゜を超える入射角で光通過部に入射した光をより確実に減衰させることができる。
【0014】
本発明の光学素子では、凹凸領域は、上記方向において隣り合う凸部を含む複数の凸部を含み、複数の凸部のそれぞれの幅は、第1領域の最大幅及び第2領域の最大幅のそれぞれよりも小さく、隣り合う凸部の間の距離は、第1領域の最大幅及び第2領域の最大幅のそれぞれよりも小さくてもよい。これによれば、10゜を超える入射角で光通過部に入射した光が周面で正反射されるのを抑制することができるため、当該光をより確実に減衰させることができる。
【0015】
本発明の光学素子では、上記方向において光学部材の一方の側又は他方の側に配置され、上記方向に対して10°以下の入射角で入射した光のうち所定の波長範囲内の光を選択的に通過させる光学フィルタを更に備えてもよい。例えば、光路上において光学部材の前段に光学フィルタが配置された場合において、所定の波長範囲内の光及び所定の波長範囲外の光が様々な入射角で光学フィルタに入射したときには、所定の波長範囲内の光が10°以下の入射角で光学部材に入射しやすくなり、所定の波長範囲外の光が10°を超える入射角で光学部材に入射しやすくなる。このとき、光学部材では、10°以下の入射角で入射した光が選択的に通過させられるため、結果として、所定の波長範囲内の光及び所定の波長範囲外の光から所定の波長範囲内の光を抽出することができる。また、例えば、光路上において光学部材の後段に光学フィルタが配置された場合において、所定の波長範囲内の光及び所定の波長範囲外の光が様々な入射角で光学部材に入射したときには、所定の波長範囲内の光及び所定の波長範囲外の光が10°以下の入射角で光学フィルタに入射しやすくなる。このとき、光学フィルタでは、10°以下の入射角で入射した光のうち所定の波長範囲内の光が選択的に通過させられるため、結果として、所定の波長範囲内の光及び所定の波長範囲外の光から所定の波長範囲内の光を抽出することができる。
【0016】
本発明の光検出装置は、上記光学素子と、光学素子を通過した光を検出する光検出器と、を備える。
【0017】
この光検出装置によれば、10°以下の入射角で入射した光を選択的に検出することができる。
【0018】
本発明の光検出装置では、光学素子は、上記方向に対して10°以下の入射角で入射した光のうち所定の波長範囲内の光を選択的に通過させる光学フィルタを更に備え、光学フィルタは、上記方向において光学部材の一方の側又は他方の側に配置されていてもよい。これによれば、所定の波長範囲内の光を選択的に検出することができる。
【0019】
本発明の光学素子及び光検出装置では、光学フィルタは、誘電体多層膜を含んでもよい。これによれば、所定の波長範囲内の光の選択的な通過を高精度で実現することができる。
【0020】
本発明の蛍光検出装置は、上記光検出装置と、試料に照射するための励起光を出射する光源と、を備え、光学素子は、試料と光検出器との間の光路上に配置されており、光検出装置は、試料から発せられた蛍光を、光学素子を介して検出し、励起光は、所定の波長範囲外の光であり、蛍光は、所定の波長範囲内の光である。
【0021】
この蛍光検出装置によれば、上記光学素子を備えるため、励起光及び蛍光が光学素子に入射した場合にも、蛍光を選択的に検出することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、様々な入射角で光が入射した場合に10°以下の入射角で入射した光を選択的に通過させることができる光学素子、並びに、そのような光学素子を備える光検出装置及び蛍光検出装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】一実施形態の蛍光検出装置の構成図である。
図2図1に示される光学部材の一部分の断面図である。
図3図2に示される貫通孔の模式的な断面図である。
図4】変形例の蛍光検出装置の構成図である。
図5】変形例の蛍光検出装置の構成図である。
図6】変形例の蛍光検出装置の構成図である。
図7】変形例の光学部材の一部分の断面図である。
図8】変形例の貫通孔の模式的な断面図である。
図9】変形例の貫通孔の模式的な断面図である。
図10】変形例の貫通孔の模式的な断面図である。
図11】変形例の貫通孔の模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
[蛍光検出装置の構成]
【0025】
図1に示されるように、蛍光検出装置1は、光源2と、光検出装置3と、を備えている。蛍光検出装置1は、光源2から出射された励起光ELを試料Sに照射し、試料Sから発せられた蛍光FLを光検出装置3により受光することにより、蛍光強度を測定する。これにより、蛍光検出装置1は、試料S中の物質の濃度を測定する。
【0026】
光源2は、試料Sに照射するための励起光ELを出射する。光源2は、例えばLED等で構成されている。光源2は、試料Sに対して、励起光ELを照射する。試料Sは、例えば、植物プランクトンを含む海水を収容している透明な水槽である。
【0027】
光検出装置3は、光源2から試料Sに至る光路と直交(交差)する方向において、試料Sに対向するように配置されている。光検出装置3は、励起光ELが試料Sに照射されることにより試料Sから発せられた蛍光FLを受光する。以下の説明では、試料Sと光検出装置3とが対向する方向をZ方向(所定の方向)、Z方向に垂直な水平方向の一方向をX方向、Z方向及びX方向に垂直な方向をY方向という。
【0028】
光検出装置3は、光学素子10と、光検出器6と、パッケージ7と、を有している。光検出器6は、Z方向において試料Sに対向するように配置されている。光学素子10は、試料Sと光検出器6との間の光路上(Z方向において試料Sと光検出器6との間)に配置されている。
【0029】
光学素子10の全体、及び光検出器6の一部(後述する受光部61及び各リードピン62の一部)は、パッケージ7内に配置されている。パッケージ7は、例えば、円筒状の部材である。パッケージ7は、Z方向において光学素子10を挟んで光検出器6とは反対側に受光面7aを有している。一例として、パッケージ7のうち、受光面7aの部分は、透明なガラスからなり、その他の部分は金属からなる。パッケージ7の受光面7a、並びにパッケージ7内に配置された光学素子10及び光検出器6は、Z方向において、試料Sに対向するように配置されている。
【0030】
光検出器6は、励起光ELが照射されることにより試料Sから発せられた蛍光FLを受光する。光検出器6は、受光部61と、複数のリードピン62と、を含んでいる。受光部61は、励起光EL及び蛍光FLに感度を有している。受光部61は、例えば、シリコンフォトダイオードである。複数のリードピン62は、パッケージ7との間で電気絶縁性及び気密性が維持された状態で、パッケージ7を貫通している。複数のリードピン62は、信号処理回路(図示せず)に接続されている。これにより、受光部61と信号処理回路とが電気的に接続されている。受光部61が光を受光すると、受光面に入射した光の光量に応じた電流を受光部61が発生させ、信号処理回路が、光検出器6により発生した電流を電圧に変換して外部に出力する。
【0031】
光学素子10は、様々な入射角で光Lが入射した場合に所定の波長範囲内の光を選択的に通過させる。光Lは、試料S側から光検出器6側に進行する光であって、励起光EL及び蛍光FLを含んでいる。光Lのうち、蛍光FLは、所定の波長範囲内の光である。所定の波長範囲内の光は、蛍光検出装置1の測定対象の波長を含む波長範囲の光である。すなわち、蛍光FLは、光検出器6の受光部61に入射させるべき光である。一方、励起光ELは、所定の波長範囲外の光である。すなわち、励起光ELは、光検出器6の受光部61に入射させるべきではない光である。光学素子10は、光学部材4と、光学フィルタ5と、を含んでいる。
【0032】
光学部材4は、パッケージ7内において受光面7aと隣り合うように配置されている。光学部材4は、様々な入射角で光Lが入射した場合に10°以下の入射角で入射した光Lを選択的に通過させる。「10°以下の入射角で入射した光Lを選択的に通過させる」とは、10°以下の入射角で入射した光Lを90%以上通過させ、且つ10°を超える入射角で入射した光Lを90%以上遮断することを意味する。具体的には、光学部材4には励起光EL及び蛍光FLが様々な入射角で入射する。光学部材4は、励起光EL及び蛍光FLのうち10°以下の入射角で入射した励起光EL及び蛍光FLを選択的に通過させる。
【0033】
光学部材4は、光吸収材料を含んでいる。本実施形態では、光学部材4は、光吸収材料を含んだ構成材料、或いは光吸収材料によって着色された構成材料からなる。構成材料の例としては、アクリル、PLA、ABS、エポキシ、ナイロン、ポリカーボネート、ポリプロピレン等の樹脂、シリコンゴム等の弾性材料、ポリアセタール、石膏、及び金属等が挙げられる。なお、光学部材4は、光吸収材料とは異なる材料からなる部材がレゴリス等の天然材料を含む塗料によって塗装されることにより形成されてもよい。光学部材4は、例えば、円板状を呈している。光学部材4の直径は、例えば、20mmであって、光学部材4の厚さは、例えば、10mmである。光学部材4の詳細については後述する。
【0034】
光学フィルタ5は、光学部材4と光検出器6との間の光路上(Z方向において光学部材4と光検出器6との間)に配置されている。光学フィルタ5は、Z方向に対して10°以下の入射角で入射した光Lから蛍光FLを、所定の波長範囲よりも低い波長範囲の光を通過させることなく(波長特性が短波長にシフトすることなく)選択的に通過させる。つまり、光学素子10は、光学部材4及び光学フィルタ5を含んでいることにより、10°以下の入射角で入射した蛍光FLを選択的に通過させる。
【0035】
本実施形態では、光学フィルタ5は、光透過部材51と、誘電体多層膜52と、を含んでいる。一例として、光透過部材51は、シリコン、ガラス等の光透過性材料によって形成され、例えば円板状を呈している。誘電体多層膜52は、光透過部材51の表面に形成されている。誘電体多層膜52の例としては、TiO、Ta等の高屈折材料と、SiO、MgF等の低屈折材料との組合せからなる多層膜が挙げられる。光学フィルタ5は、誘電体多層膜52を含むことにより、10°以下の入射角で入射した光Lから蛍光FLを選択的に通過させる。
[光学部材の構成]
【0036】
図2に示されるように、光学部材4は、第1表面4a、Z方向において第1表面4aに対向する第2表面4b、及び複数の貫通孔(複数の光通過部)4Aを有している。光学部材4では、第1表面4a及び第2表面4bの一方が、Z方向において試料Sと向かい合うように配置されることにより光入射面として機能し、第1表面4a及び第2表面4bの他方が、光出射面として機能する。本実施形態では、Z方向において試料Sと向かい合うように配置されている第1表面4aが光入射面として機能し、第2表面4bが光出射面として機能する。
【0037】
複数の貫通孔4Aは、例えば、Z方向から見て、平面三角格子状に配列されている。なお、複数の貫通孔4Aの配置関係は、これに限られず、例えば、四角格子状に配列されていてもよい。各貫通孔4Aは、Z方向に沿って延在している。複数の貫通孔4Aは、例えば、円柱状を呈している。なお、各貫通孔4Aの形状は、これに限られず、例えば、六角形状を呈していてもよい。
【0038】
図3は、1つの貫通孔4Aの模式的な断面図である。図2及び図3に示されるように、各貫通孔4Aは、第1開口(第1領域)R1、第2開口(第2領域)R2、及び光減衰領域41を含んでいる。第1開口R1は、第1表面4aに位置している。第2開口R2は、第2表面4bに位置している。本実施形態では、第1開口R1の大きさは、第2開口R2の大きさと等しい。
【0039】
光学部材4では、第1開口R1及び第2開口R2の一方が、光入射領域として機能し、第1開口R1及び第2開口R2の他方が、光出射領域として機能する。本実施形態では、第1開口R1が光入射領域として機能し、第2開口R2が光出射領域として機能する。
【0040】
光減衰領域41は、第1表面4aと第2表面4bとの間の周面4cに形成されている。光減衰領域41は、凹凸領域42を含んでいる。本実施形態では、凹凸領域42は、周面4cにおいて環状に連続するように、且つ周面4cの全域にわたって形成されている。凹凸領域42は、複数の凸部42aを含んでいる。
【0041】
複数の凸部42aは、Z方向に延在しており、第1表面4aから第2表面4bまで並ぶように配列されている。複数の凸部42aは、Z方向において隣り合っている。これにより、Z方向において隣り合う凸部42aの間には、空間が設けられている。本実施形態では、各凸部42aは、同一の形状を呈しており、Z方向において等間隔に配列されている。
【0042】
各凸部42aは、Z方向から見た場合に、貫通孔4Aの中心に向かって突出するように形成されている。各凸部42aは、周面4cにおいて環状に連続するように形成されている。換言すれば、各凸部42aは、Z方向から見た場合に、円環状を呈している。X方向から見た各凸部42aの断面は、四角状を呈している。一例として、X方向から見た各凸部42aの断面は、矩形状を呈しており、各凸部42aは平面状の頂部を含んでいる。
【0043】
第1開口R1の最大幅及び第2開口R2の最大幅のうち大きい幅をaとし、第1開口R1と第2開口R2との距離をbとすると、各貫通孔4Aは、90°-tan-1(b/a)≦10°を満たしている。本実施形態では、第1開口R1の大きさは、第2開口R2の大きさと等しい。したがって、本実施形態では、第1開口R1の最大幅及び第2開口R2の最大幅はいずれも幅aとなる。距離bは、Z方向における貫通孔4Aの長さである。
【0044】
また、各凸部42aの高さをcとし、貫通孔4Aに入射する光Lの最大波長をλとすると、凹凸領域42は、(2π×(c/2))/λ≧1を満たしている。各凸部42aの高さcは、貫通孔4Aの周面4cを基準とした場合に、周面4cから貫通孔4Aの中心に向かう方向に沿った各凸部42aの頂部までの長さである。
【0045】
各凸部42aの幅dは、第1開口R1の最大幅(幅a)及び第2開口R2の最大幅(幅a)のそれぞれよりも小さい。幅dは、Z方向における各凸部42aの幅である。また、隣り合う凸部42aの間の距離eは、第1開口R1の最大幅及び第2開口R2の最大幅のそれぞれよりも小さい。距離eは、Z方向における隣り合う凸部42aの間の距離である。
【0046】
光学部材4は、複数の薄板(図示せず)が組み合わせて構成されている。各薄板は、第1表面、第1表面に対向する第2表面、及び複数の孔を有している。各薄板は、円板状を呈している。各薄板は、同一の形状を呈している。各薄板の各孔は、薄板の厚さ方向に沿って延在している。各孔は、第1表面に位置する第1開口、及び第2表面に位置する第2開口を含んでいる。各孔は、第1開口及び第2開口の少なくとも一方側に拡幅された形状を呈している。一例として、各孔は、第1開口及び第2開口の一方側にステップ状に拡幅された形状を呈している。このような複数の孔が形成された複数の薄板が、積層されるように互いに固定されることにより、光学部材4が構成される。
【0047】
なお、光学部材4は、互いに形状が異なる第1薄板及び第2薄板を含む複数の薄板が組み合わせて構成されてもよい。第1薄板及び第2薄板のそれぞれは、上述した各薄板と同様に、第1表面、第1表面に対向する第2表面、及び複数の孔を有している。第1薄板の各孔は、第2薄板の各孔と同心円状に設けられている。第1薄板の各孔の幅は、第2薄板の各孔の幅よりも小さい。このような第1薄板と第2薄板とを1枚ずつ交互に組み合わせた複数の薄板が、積層されるように互いに固定されることにより、光学部材4が構成される。
[蛍光検出装置の動作]
【0048】
以上のように構成された蛍光検出装置1の動作の一例について説明する。まず、光源2から励起光ELがY方向に沿って出射されると、出射された励起光ELは、試料Sに照射される。そして、励起光ELが照射された試料Sから蛍光FLが発せられる。励起光EL及び蛍光FLを含む光Lは、様々な入射角で光学部材4に入射する。そして、光学部材4により、10°以下の入射角で入射した励起光EL及び蛍光FLが、選択的に通過させられ、光学フィルタ5に入射する。そして、10°以下の入射角で光学フィルタ5に入射した励起光EL及び蛍光FLのうち蛍光FLが選択的に通過させられる。その結果、蛍光FLが、受光部61の受光面に入射する。そして、受光部61は、受光面に入射した蛍光FLの光量に応じた電流を発生し、受光部61に電気的に接続された信号処理回路(図示せず)が、受光部61により発生した電流を電圧に変換して出力する。このようにして、蛍光検出装置1では、検出対象の蛍光FLの蛍光強度が測定される。
[作用及び効果]
【0049】
光学素子10では、各貫通孔4Aが90゜-tan-1(b/a)≦10゜を満たすように構成されており、各貫通孔4Aの周面4cに光減衰領域41が形成されている。これにより、各貫通孔4Aにおいて第1開口R1及び第2開口R2のいずれを光入射領域として機能させた場合にも、10゜を超える入射角で貫通孔4Aに入射した光Lが周面4cに当たって減衰されやすくなり、10゜以下の入射角で貫通孔4Aに入射した光Lが周面4cに当たらずに(すなわち、減衰されずに)貫通孔4Aを通過しやすくなる。よって、この光学素子10によれば、様々な入射角で光Lが入射した場合に10°以下の入射角で入射した光Lを選択的に通過させることができる。
【0050】
特に、光学素子10では、光学素子10に入射した光LがZ方向に沿って延在する各貫通孔4Aを通過し、第1表面4aには、第1開口R1が位置しており、第2表面4bには、第2開口R2が位置している。これにより、光学部材4の構造を単純化することができる。
【0051】
光学素子10では、光減衰領域41が、周面4cにおいて環状に連続するように形成されている。これにより、10゜を超える入射角で貫通孔4Aに入射した光Lをより確実に減衰させることができる。
【0052】
光学素子10では、光減衰領域41が、周面4cの全域にわたって形成されている。これにより、10゜を超える入射角で貫通孔4Aに入射した光Lをより確実に減衰させることができる。
【0053】
光学素子10では、光減衰領域41が、凹凸領域42を含んでいる。これにより、光減衰領域41の構造を単純化しつつも、10゜を超える入射角で貫通孔4Aに入射した光Lを確実に減衰させることができる。また、光減衰領域41の製造の容易化を図ることができる。
【0054】
光学素子10では、凹凸領域42が、複数の凸部42aを含み、複数の凸部42aのそれぞれの高さをcとし、貫通孔4Aに入射する光Lの最大波長をλとすると、凹凸領域42が、(2π×(c/2))/λ≧1を満たしている。これにより、凹凸領域42に光Lが入射すると散乱が生じやすくなるため、10゜を超える入射角で貫通孔4Aに入射した光Lをより確実に減衰させることができる。
【0055】
光学素子10では、凹凸領域42が、Z方向において隣り合う凸部42aを含む複数の凸部42aを含み、複数の凸部42aのそれぞれの幅が、第1開口R1の最大幅及び第2開口R2の最大幅のそれぞれよりも小さく、隣り合う凸部42aの間の距離が、第1開口R1の最大幅及び第2開口R2の最大幅のそれぞれよりも小さい。これにより、10゜を超える入射角で貫通孔4Aに入射した光Lが周面4cで正反射されるのを抑制することができるため、当該光Lをより確実に減衰させることができる。
【0056】
光学素子10では、Z方向において光学部材4の後段に配置され、Z方向に対して10°以下の入射角で入射した光L(すなわち、励起光EL及び蛍光FL)のうち蛍光FLを選択的に通過させる光学フィルタ5を備えている。これにより、励起光EL及び蛍光FLが様々な入射角で光学部材4に入射したときには、励起光EL及び蛍光FLが10°以下の入射角で光学フィルタ5に入射しやすくなる。このとき、光学フィルタ5では、10°以下の入射角で入射した励起光EL及び蛍光FLのうち蛍光FLが選択的に通過させられるため、結果として、励起光EL及び蛍光FLから蛍光FLを抽出することができる。更に、光学素子10を有する光検出装置3では、励起光EL及び蛍光FLが光学素子10に入射した場合にも、蛍光FLを選択的に検出することができる。
【0057】
光学フィルタ5は、誘電体多層膜52を含んでいる。これにより、所定の波長範囲内の光Lの選択的な通過を高精度で実現することができる。
【0058】
ここで、誘電体多層膜52を含む光学フィルタ5と光学部材4とを組み合わせて構成される光学素子10の効果について詳細に説明する。蛍光測定における前提として、一般的に、励起光の波長ピークと一般的な蛍光色素の波長ピークとの差は、例えば20nm程度しかなく、励起光の波長ピークと蛍光の波長ピークとは、近接している。そのため、波長分離特性が良く、蛍光色素の特性に合わせて、測定対象の波長を含む蛍光を透過させ、励起光を遮断することが可能な光学フィルタが必要とされる。
【0059】
このように透過する光及及び遮断する波長の特性を任意に設計できるフィルタとして、誘電体多層膜を含む光学フィルタが挙げられる。しかし、誘電体多層膜を含むフィルタは、10°を超える入射角で光が入射すると、所定の波長範囲よりも低い波長範囲の光を通過させる(波長特性が短波長にシフトする)性質があり、この性質を無くすことは困難である。したがって、光学フィルタには、10°以下の入射角で光を入射させるのが望ましい。
【0060】
そこで、例えば、光路上において試料と光学フィルタとの間に光学レンズを配置することが考えられる。光学レンズは、光学レンズの表面に対して垂直の入射角で入射した光を通過させ、それ以外の光(光学レンズの表面に対して斜め方向から入射した光)を遮断する。しかしながら、光学レンズによっては、光学レンズの表面に対して斜めから入射したすべての光を遮断することは困難である。また、光学レンズを用いると、小型化が困難且つ高コストになる問題がある。特に、従来の蛍光検出装置を顕微鏡に用いる場合においては、光学レンズの表面に対して斜め方向から入射した励起光が光学レンズを通過すると、顕微鏡の鏡筒で乱反射して光学フィルタに入射してしまう。その結果、励起光が光学フィルタを通過して光検出器に入射してしまうおそれがあった。
【0061】
そこで、蛍光測定において、光学レンズに代えて、光の入射角度に依存しない吸収型の光学フィルタを用いることが考えられる。吸収型の光学フィルタを用いることで、光学レンズを用いる場合と比較して小型化を図ることができるが、吸収型の光学フィルタには、色素の吸収の原理が用いられている。このため、蛍光色素の特性に合わせて、蛍光を透過させ且つ励起光を遮断することが難しい。また、多くの吸収型の光学フィルタは、光学フィルタ自体が蛍光性を有しているため、試料から発せられた蛍光とは異なる蛍光の誤検出につながるおそれもある。また、光学レンズに代えて、ファイバオプティックプレートを用いることが考えられる。しかしながら、ファイバオプティックプレートは、10°以上の入射角で入射した光を通過させてしまい、10°以下の入射角で入射した光のみを抽出することができない。したがって、ファイバオプティックプレートも、蛍光測定には不適である。
【0062】
これに対して、光学素子10では、まず、励起光EL及び蛍光FLが様々な入射角で光学部材4に入射したとしても、10°以下の入射角で入射した励起光EL及び蛍光FLが光学部材4から選択的に通過させられる。その結果、光学フィルタ5によって、励起光ELのうちバックグラウンドとなる蛍光を良好に遮断し、蛍光FLのみを光学素子10から抽出することができる。特に、蛍光検出装置1を顕微鏡に用いる場合においては、蛍光FLを効率よく検出することができるため、従来と比較して、励起光ELを弱めて測定することが可能となる。その結果、励起光ELが試料Sに与えるダメージを低減することができる。また、光学素子10では、蛍光FLを効率よく検出することができるため、例えば、ウイルス検査等、試料Sが容器に収容される場合において、蛍光FLの検出に容器での光Lの散乱が与える影響を低減することができる。
【0063】
光学素子10は、複数の薄板が組み合わされて構成される。これにより、低コスト且つ小型に光学素子10を製造することができる。
【0064】
蛍光検出装置1では、光学素子10が、試料Sと光検出器6との間の光路上に配置されており、光検出装置3は、試料Sから発せられた蛍光FLを、光学素子10を介して検出し、励起光ELは、所定の波長範囲外の光であり、蛍光FLは、所定の波長範囲内の光である。
【0065】
この蛍光検出装置1によれば、光学素子10を備えるため、励起光EL及び蛍光FLが光学素子10に入射した場合にも、蛍光FLを選択的に検出することができる。
[変形例]
【0066】
本発明は、上述した実施形態に限定されない。例えば、上記実施形態では、光学部材4が、複数の貫通孔4Aを有していたが、光学部材4は、複数の光通過部を有していればよい。その場合、光通過部は、第1領域及び第2領域を含んでもよい。第1領域は、第1表面4aに位置し、光入射領域として第2領域は、第2表面4bに位置してもよい。光学部材4では、第1領域及び第2領域の一方が、光入射領域として機能し、第1領域及び第2領域の他方が、光出射領域として機能してもよい。光通過部の例としては、例えば、光透過媒体が挙げられる。
【0067】
光学素子10では、光学フィルタ5は、Z方向において光学部材4の一方の側又は他方の側に配置されていればよく、例えば、光路上において光学部材4の前段に配置されていてもよい。図4に示される例では、光検出装置3は、光検出器6、光学素子10、及びパッケージ7を有している。光学フィルタ5は、試料Sと光検出器6との間の光路上(Z方向において試料Sと光検出器6との間)に配置されている。つまり、図4に示される例では、光学フィルタ5が光検出装置3の外(具体的には、光検出器6の前段)に配置されている。
【0068】
本変形例による蛍光検出装置1によれば、励起光EL及び蛍光FLが様々な入射角で光学フィルタ5に入射したときには、蛍光FLが10°以下の入射角で光学部材4に入射しやすくなり、励起光ELが10°を超える入射角で光学部材4に入射しやすくなる。このとき、光学部材4では、10°以下の入射角で入射した蛍光FLが選択的に通過させられるため、本変形例によっても、励起光EL及び蛍光FLから蛍光FLを抽出することができる。また、本変形例の光検出装置3では、10°以下の入射角で入射した蛍光FLを選択的に検出することができる。また、本変形例による蛍光検出装置1によれば、光学フィルタ5が光検出装置3とは別体に設けられているため、光学フィルタ5を容易に交換することができる。
【0069】
蛍光検出装置1は、光学レンズ8を更に備えていてもよい。図5に示される例では、光検出装置3が、光検出器6に代えて光検出器9を有している点、及び光学レンズ8を更に有している点で、図4に示される例と相違する。光検出器9は、受光部91と、複数のリードピン92とを含んでいる。光検出器9の受光面の面積は、上記実施形態の光検出器6の受光面の面積と比較して小さい。光学レンズ8は、光学部材4と光検出器9との光路上(Z方向において光学部材4と光検出器9との間)に配置されている。光学レンズ8の凸側の表面は、光検出器9と向かい合っている。本変形例による蛍光検出装置1によれば、蛍光FLが10°以下の入射角で光学レンズ8に入射しやすくなる。このとき、蛍光FLが、光学レンズ8によって光学レンズ8の凸部42aの頂点付近に向かって集光させられる。その結果、光学レンズ8を通過した蛍光FLは、光検出器9に入射しやすくなる。よって、本変形例の蛍光検出装置1によれば、面積が小さい受光面を含む光検出器9を有している場合であっても、蛍光FLを選択的に検出することができる。
【0070】
また、図6に示される例では、蛍光検出装置1が、光学レンズ8を更に有している点で、図4に示される例と相違する。光学レンズ8は、試料Sと光学フィルタ5との光路上(Z方向において試料Sと光学フィルタ5との間)に配置されている。光学レンズ8の凸側の表面は、試料Sと向かい合っている。本変形例による蛍光検出装置1によれば、例えば励起光ELが照射されることにより試料Sから発せされる蛍光が弱い(蛍光の輝点が小さい)場合であっても、光学レンズ8によって適度に広がった且つ平行化された光Lが光学フィルタ5及び光検出装置3に入射しやすくなる。したがって、本変形例の蛍光検出装置1によれば、試料Sから発せされる蛍光FLが弱い場合であっても、蛍光FLを選択的に検出することができる。
【0071】
第1領域の最大幅は、第2領域の最大幅と異なってもよい。その場合、第1領域の最大幅及び第2領域の最大幅のうち大きい幅が幅aとなる。各凸部42aの幅dは、第1開口R1の最大幅及び第2開口R2の最大幅のそれぞれよりも大きくてもよい。また、隣り合う凸部42aの間の距離eは、第1開口R1の最大幅及び第2開口R2の最大幅のそれぞれよりも大きくてもよい。
【0072】
上記実施形態では、各凸部42aの断面が、矩形状を呈しており、各凸部42aが平面状の頂部を含んでいたが、各凸部42aの形状は、これに限られない。図7に示される例では、X方向から見た各凸部42aの断面が、三角状であって、各凸部42aの頂部において角部が形成されている。このような凹凸領域42を含む光学部材4は、以下のような複数の薄板の組合せによって構成されてもよい。各薄板は、上記実施形態の各薄板と同様に、第1表面、第2表面、及び複数の孔を有している。各孔は、第1開口及び第2開口の両側に拡幅された形状を呈している。一例として、各孔は、厚さ方向における薄板の中心を基準として、第1開口及び第2開口の両側に徐々に拡幅された形状を呈している。このような複数の孔が形成された複数の薄板が、積層されるように互いに固定されることにより、光学部材4が構成される。
【0073】
また、各凸部42aは、同一形状でなくてもよい。図8に示される例では、隣り合う凸部42aが互いに異なる形状を呈している。具体的には、X方向から見た各凸部42aの断面が、三角状であって、各凸部42aの頂部において角部が形成されている。また、凹凸領域42では、Z方向において隣り合う凸部42aの高さが互いに異なっている。また、図9に示される例では、X方向から見た各凸部42aの断面が、角部のない滑らかな形状(凸部42aの各点において接線の傾きが連続的に変化している形状)を呈している。
【0074】
また、凹凸領域42は、複数の溝の間に形成された突起状の複数の凸部42aを含んでいてもよいし、また、複数の壁状の複数の凸部42aを含んでいてもよい。また、複数の凸部42aは、規則的なパターンで形成されてもよいし、或いは、不規則なパターンで形成されてもよい。
【0075】
光減衰領域41は、凹凸領域42に限られず、光Lを減衰させる領域であればよい。光減衰領域41は、例えば、光吸収材料で構成された平面状の領域であってもよい。また、凹凸領域42とは異なる光減衰領域41が、周面4cにおいて環状に連続するように、且つ周面4cの全域にわたって形成されていてもよい。
【0076】
また、光減衰領域41は、周面4cの全域にわたって形成されていなくてもよく、また、周面4cにおいて環状に連続するように形成されていなくてもよい。図10に示される例では、光減衰領域41が含む凹凸領域42が、周面4cの一部にわたって形成されている。具体的には、凹凸領域42は、Z方向において第1開口R1側と、第2開口R2側とに1つずつ形成されている。また、図11に示される例では、光減衰領域41が含む凹凸領域42が、Z方向において貫通孔4Aの中央付近に形成されている。図10に示される例、及び図11に示される例では、凹凸領域42は、例えば、周面4cにおいて環状に連続するように形成されている。なお、光減衰領域41は、周面4cにおいて環状に連続しておらず、Z方向から見た場合に環形状を有するように形成されていてもよい。例えば、光減衰領域41が含む凹凸領域42は、図10に示される例、及び図11に示される例において、周方向において端部を有しないように(環状に連続しないように)形成されていてもよい。これによっても、10゜を超える入射角で貫通孔4Aに入射した励起光ELをより確実に減衰させることができる。
【0077】
光学部材4は、上記実施形態とは異なる位置に配置されてもよい。例えば、光学部材4は、光源2と試料Sとの間の光路上(Y方向において光源2と試料Sとの間)に配置されていてもよい。
【0078】
光学フィルタ5は、光吸収型のフィルタであってもよい。また、光検出器6は、光電子増倍管であってもよい。
【符号の説明】
【0079】
1…蛍光検出装置、2…光源、3…光検出装置、4…光学部材、4a…第1表面、4A…貫通孔(光通過部)、4b…第2表面、4c…周面、5…光学フィルタ、6,9…光検出器、10…光学素子、41…光減衰領域、42…凹凸領域、42a…凸部、52…誘電体多層膜、EL…励起光、FL…蛍光、L…光、R1…第1開口(第1領域)、R2…第2開口(第2領域)、S…試料。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図9
図10
図11