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特許7545273耐火断熱装置、耐火断熱方法、および耐火断熱構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】耐火断熱装置、耐火断熱方法、および耐火断熱構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/94 20060101AFI20240828BHJP
【FI】
E04B1/94 D
E04B1/94 L
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020157183
(22)【出願日】2020-09-18
(65)【公開番号】P2022050967
(43)【公開日】2022-03-31
【審査請求日】2023-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(73)【特許権者】
【識別番号】592171131
【氏名又は名称】株式会社ロンビックジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100166051
【弁理士】
【氏名又は名称】駒津 啓佑
(72)【発明者】
【氏名】西村 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】藤井 俊洋
(72)【発明者】
【氏名】村松 克己
(72)【発明者】
【氏名】加藤 真輝
(72)【発明者】
【氏名】松原 道彦
(72)【発明者】
【氏名】畑中 裕司
(72)【発明者】
【氏名】大室 真吾
(72)【発明者】
【氏名】大久保 秋男
【審査官】坪内 優佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-095202(JP,A)
【文献】特開2010-065474(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0298620(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/94
E04B 2/56
E04B 2/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
方立の間に耐火パネルを取り付けた金属製カーテンウォールによる建造物のスパンドレル部で耐火断熱する耐火断熱装置において、
あらかじめ前記建造物が有する床スラブより下方で前記方立のうち前記建造物の屋内側で露出した部位を覆う形状に形成された耐火断熱材と、
前記露出した部位を覆った状態で前記耐火断熱材の落下を防止するために支持する支持手段と、
を備え
前記支持手段は、
前記耐火断熱材を挟持する挟持部と、
前記挟持部から前記耐火パネルに沿って前記床スラブより上方まで延設された垂直支持辺と、
前記建造物を支える構造体に前記耐火パネルを固定するための耐火パネル固定金具に前記垂直支持辺を固定する垂直支持辺固定手段と、
を備えることを特徴とする耐火断熱装置。
【請求項2】
前記挟持部と前記垂直支持辺との間に介在されて、前記垂直支持辺を水平方向外側で支持する水平支持辺、
を備えることを特徴とする請求項記載の耐火断熱装置。
【請求項3】
前記水平支持辺は、
前記方立と前記床スラブとを、または前記耐火パネルと前記床スラブとを固定する方立耐火パネル固定具に、前記垂直支持辺を固定可能な位置で支持する十分な長さ、
を備えることを特徴とする請求項記載の耐火断熱装置。
【請求項4】
前記水平支持辺は、
前記方立または前記耐火パネルと前記床スラブを固定する方立耐火パネル固定具と、前記垂直支持辺とが干渉しない位置で支持する十分な長さ、
を備えることを特徴とする請求項記載の耐火断熱装置。
【請求項5】
前記垂直支持辺は、
前記垂直支持辺固定手段に代えて、前記床スラブの上面から屋内側に折り曲げられて、前記床スラブの上面に載置される上面支持部、
を備えることを特徴とする請求項記載の耐火断熱装置。
【請求項6】
前記上面支持部を前記床スラブに固定するための上面支持部固定手段、
を備えることを特徴とする請求項記載の耐火断熱装置。
【請求項7】
方立の間に耐火パネルを取り付けた金属製カーテンウォールによる建造物のスパンドレル部で耐火断熱する耐火断熱装置において、
あらかじめ前記建造物が有する床スラブより下方で前記方立のうち前記建造物の屋内側で露出した部位を覆う形状に形成された耐火断熱材と、
前記露出した部位を覆った状態で前記耐火断熱材の落下を防止するために支持する支持手段と、
を備え
前記支持手段は、
前記耐火断熱材の屋内側側面を前記耐火パネルの方向に押し当てる押当板材と、
前記押当板材と、前記床スラブを下側から支持する梁材と、を突っ張らせるようにして配される突っ張り手段と、
を備えることを特徴とする耐火断熱装置。
【請求項8】
方立の間に耐火パネルを取り付けた金属製カーテンウォールによる建造物のスパンドレル部で耐火断熱する耐火断熱装置において、
あらかじめ前記建造物が有する床スラブより下方で前記方立のうち前記建造物の屋内側で露出した部位を覆う形状に形成された耐火断熱材と、
前記露出した部位を覆った状態で前記耐火断熱材の落下を防止するために支持する支持手段と、
を備え
前記支持手段は、
前記耐火断熱材を挟持する挟持部と、
前記耐火パネルと前記床スラブの端面との間に形成された層間隙間に充填される耐火層間材を支持するための支持金具に引っ掛けるように前記挟持部から延設された引っ掛け部と、
を備えることを特徴とする耐火断熱装置。
【請求項9】
方立の間に耐火パネルを取り付けた金属製カーテンウォールによる建造物のスパンドレル部で耐火断熱する耐火断熱装置において、
あらかじめ前記建造物が有する床スラブより下方で前記方立のうち前記建造物の屋内側で露出した部位を覆う形状に形成された耐火断熱材と、
前記露出した部位を覆った状態で前記耐火断熱材の落下を防止するために支持する支持手段と、
を備え
前記耐火断熱材は、
前記方立に沿って棒状に形成された芯材であって、
前記芯材は、
前記露出した部位を覆うように前記芯材の一方側面に形成された切り欠き部、
を備えることを特徴とする耐火断熱装置。
【請求項10】
前記芯材は、
屋内側の表面に耐火性能および強度を備えた被覆ボード、
を備えることを特徴とする請求項記載の耐火断熱装置。
【請求項11】
方立の間に耐火パネルを取り付けた金属製カーテンウォールによる建造物のスパンドレル部で耐火断熱する耐火断熱方法において、
あらかじめ前記建造物が有する床スラブより下方で前記方立のうち前記建造物の屋内側で露出した部位を覆う形状に耐火断熱材が形成される工程と、
前記露出した部位を覆った状態で前記耐火断熱材の落下を防止するために支持手段が支持する工程と、
を備え
前記支持手段は、
前記耐火断熱材を挟持する挟持部と、
前記挟持部から前記耐火パネルに沿って前記床スラブより上方まで延設された垂直支持辺と、
前記建造物を支える構造体に前記耐火パネルを固定するための耐火パネル固定金具に前記垂直支持辺を固定する垂直支持辺固定手段と、
を備えることを特徴とする耐火断熱方法。
【請求項12】
方立の間に耐火パネルを取り付けた金属製カーテンウォールによる建造物のスパンドレル部で耐火断熱する耐火断熱方法において、
あらかじめ前記建造物が有する床スラブより下方で前記方立のうち前記建造物の屋内側で露出した部位を覆う形状に耐火断熱材が形成される工程と、
前記露出した部位を覆った状態で前記耐火断熱材の落下を防止するために支持手段が支持する工程と、
を備え
前記支持手段は、
前記耐火断熱材の屋内側側面を前記耐火パネルの方向に押し当てる押当板材と、
前記押当板材と、前記床スラブを下側から支持する梁材と、を突っ張らせるようにして配される突っ張り手段と、
を備えることを特徴とする耐火断熱方法。
【請求項13】
方立の間に耐火パネルを取り付けた金属製カーテンウォールによる建造物のスパンドレル部で耐火断熱する耐火断熱方法において、
あらかじめ前記建造物が有する床スラブより下方で前記方立のうち前記建造物の屋内側で露出した部位を覆う形状に耐火断熱材が形成される工程と、
前記露出した部位を覆った状態で前記耐火断熱材の落下を防止するために支持手段が支持する工程と、
を備え
前記支持手段は、
前記耐火断熱材を挟持する挟持部と、
前記耐火パネルと前記床スラブの端面との間に形成された層間隙間に充填される耐火層間材を支持するための支持金具に引っ掛けるように前記挟持部から延設された引っ掛け部と、
を備えることを特徴とする耐火断熱方法。
【請求項14】
方立の間に耐火パネルを取り付けた金属製カーテンウォールによる建造物のスパンドレル部で耐火断熱する耐火断熱方法において、
あらかじめ前記建造物が有する床スラブより下方で前記方立のうち前記建造物の屋内側で露出した部位を覆う形状に耐火断熱材が形成される工程と、
前記露出した部位を覆った状態で前記耐火断熱材の落下を防止するために支持手段が支持する工程と、
を備え
前記耐火断熱材は、
前記方立に沿って棒状に形成された芯材であって、
前記芯材は、
前記露出した部位を覆うように前記芯材の一方側面に形成された切り欠き部、
を備えることを特徴とする耐火断熱方法。
【請求項15】
方立の間に耐火パネルを取り付けた金属製カーテンウォールによる建造物のスパンドレル部で耐火断熱する耐火断熱構造において、
あらかじめ前記建造物が有する床スラブより下方で前記方立のうち前記建造物の屋内側で露出した部位を覆う形状に形成された耐火断熱材と、
前記露出した部位を覆った状態で前記耐火断熱材の落下を防止するために支持する支持手段と、
を備え
前記支持手段は、
前記耐火断熱材を挟持する挟持部と、
前記挟持部から前記耐火パネルに沿って前記床スラブより上方まで延設された垂直支持辺と、
前記建造物を支える構造体に前記耐火パネルを固定するための耐火パネル固定金具に前記垂直支持辺を固定する垂直支持辺固定手段と、
を備えることを特徴とする耐火断熱構造。
【請求項16】
方立の間に耐火パネルを取り付けた金属製カーテンウォールによる建造物のスパンドレル部で耐火断熱する耐火断熱構造において、
あらかじめ前記建造物が有する床スラブより下方で前記方立のうち前記建造物の屋内側で露出した部位を覆う形状に形成された耐火断熱材と、
前記露出した部位を覆った状態で前記耐火断熱材の落下を防止するために支持する支持手段と、
を備え
前記支持手段は、
前記耐火断熱材の屋内側側面を前記耐火パネルの方向に押し当てる押当板材と、
前記押当板材と、前記床スラブを下側から支持する梁材と、を突っ張らせるようにして配される突っ張り手段と、
を備えることを特徴とする耐火断熱構造。
【請求項17】
方立の間に耐火パネルを取り付けた金属製カーテンウォールによる建造物のスパンドレル部で耐火断熱する耐火断熱構造において、
あらかじめ前記建造物が有する床スラブより下方で前記方立のうち前記建造物の屋内側で露出した部位を覆う形状に形成された耐火断熱材と、
前記露出した部位を覆った状態で前記耐火断熱材の落下を防止するために支持する支持手段と、
を備え
前記支持手段は、
前記耐火断熱材を挟持する挟持部と、
前記耐火パネルと前記床スラブの端面との間に形成された層間隙間に充填される耐火層間材を支持するための支持金具に引っ掛けるように前記挟持部から延設された引っ掛け部と、
を備えることを特徴とする耐火断熱構造。
【請求項18】
方立の間に耐火パネルを取り付けた金属製カーテンウォールによる建造物のスパンドレル部で耐火断熱する耐火断熱構造において、
あらかじめ前記建造物が有する床スラブより下方で前記方立のうち前記建造物の屋内側で露出した部位を覆う形状に形成された耐火断熱材と、
前記露出した部位を覆った状態で前記耐火断熱材の落下を防止するために支持する支持手段と、
を備え
前記耐火断熱材は、
前記方立に沿って棒状に形成された芯材であって、
前記芯材は、
前記露出した部位を覆うように前記芯材の一方側面に形成された切り欠き部、
を備えることを特徴とする耐火断熱構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐火断熱装置、耐火断熱方法、および耐火断熱構造に関し、特に方立間に耐火パネルを取り付けた金属製カーテンウォールによる建造物のスパンドレル部で耐火断熱する耐火断熱装置、耐火断熱方法、および耐火断熱構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から高層建造物において、建造物へ荷重の負担をかけないように、カーテンウォールと呼ばれる非耐力壁を土台や柱等の骨組みにはめ込んで形成する外壁構法が採用されている。
【0003】
カーテンウォールによる外壁構法は、いくつかの部材で構成されており、最も代表的な金属製カーテンウォールによる外壁構法は、方立(マリオン)と呼ばれる仕切り材を上下の床や梁の間に架設し、そこに壁材であるガラスや耐火パネルなどがはめ込まれる方立方式の外壁構法が知られている。
【0004】
なお、建造物で区画される所定の防火区画において、防火区画で区画される部分がガラス張りである場合、火災時に外壁を介して隣接する区画や上下階に火災が延焼してしまうことが考えられるため、隣接する防火区画との区画部分には、「スパンドレル」と呼ばれる防火区画を区画する耐火構造の床、壁、もしくは特定防火設備が設けられることになっている。
【0005】
具体的には、床スラブと外壁とが接するスパンドレル部に設けられる壁材は、屋外側に設けられるガラス面と、ガラス面の屋内側に設けられた耐火ボードなどが一体化された耐火パネルが設置されている。
【0006】
このような方立方式の金属製カーテンウォールは、ガラスや耐火パネルなどの壁材が方立よりも室内側に取付けられ、方立の縦線が外側から強調されるデザインが特徴的である。また近年では、バックマリオンと呼ばれ、壁材が方立の室外側に取付けられる構法が増えている。
【0007】
図17は、方立方式の金属製カーテンウォールの構造例を示す正面図、上面図および側面断面図である。
図17に示すように、方立方式の金属製カーテンウォールは、上下の床スラブ10に掛けて架設される縦桟部材である方立21と、方立21を横方向につなぐ無目部材であるトランザム22とが格子状に組み立てられ、固定金具23によって床スラブ10に固定されている。
【0008】
また床スラブ10は鉄骨梁材70によって支持されており、方立21または方立21にはめこまれた耐火パネル24は、固定金具23によって床スラブ10に固定されている。
さらに格子状に組み立てられた方立21とトランザム22との間に耐火パネル24やガラス窓25などの壁材20がはめ込まれている。また、方立21やトランザム22は、軽量性、耐候性、施工性を向上させるためにアルミニウム材で構成されている。
【0009】
図18は、方立方式の金属製カーテンウォールのスパンドレルパネル部の詳細を示す平面断面図である。
図18に示すように、床スラブ10と耐火パネル24やガラス窓25などの壁材20との隙間は、支持金具40によって支持された耐火層間材30を挿入することで閉塞されている(たとえば、特許文献1、又は特許文献2参照)。
【0010】
前述のように、通常、方立21はアルミニウム材で構成されているため、耐火性能が低く、600℃程度で溶融してしまう。たとえば図18に示すように屋外で火災が発生した場合、屋外側に露出した方立21は発生した火災による熱で溶融して焼失する可能性がある。
【0011】
火災によって方立21が溶融焼失してしまうと、スパンドレルとしての機能を果たすことができない。このため方立21を構成するアルミニウム材の積層数と厚みとを増やすことで耐火性能を確保している。
【0012】
具体的には、30分の耐火性能を確保する場合は、2mm以上のアルミニウム板を2層以上積層することで積層厚を5mmで方立21を構成する、また1時間の耐火性能を確保する場合は、2mm以上のアルミニウム板を4層以上積層することで積層厚を10mmで方立21を構成するなどで運用されている。
【0013】
ところが、方立21を構成するアルミニウム材は熱伝導率が高いため、上記のように方立21を構成するアルミニウム材の積層数と厚みとを増やしても、屋外で発生した火災の熱が方立21を介して屋内に伝わるため、屋内側を一定の温度以下に制御する外壁としての性能が満たされない。
【0014】
そこで2009年に国土交通省によって技術的助言が通達され、スパンドレルパネル部における方立21の屋内側は耐火被覆することが義務付けられている。この技術的助言を受けて、現在はスパンドレルパネル部における方立21の屋内側にロックウールを吹き付けて耐火被覆する方法などが用いられている。
【0015】
ところが、狭所でのロックウールの吹付け作業は、作業効率の低下や、施工品質の安定性を低下させる問題がある。
たとえばスパンドレルパネル部における方立21の屋内側にロックウールを吹き付ける場合、床スラブ10よりも上部に関しては方立21の周囲に障害物がなく空間が開放されているため、容易にロックウールを吹き付けることができる。またロックウールをコテで方立21に押し付ける作業も問題なく行うことができる。
【0016】
しかし、床スラブ10よりも下部に関しては、床スラブ10の下側面に配置された例えばH鋼のような鉄骨梁材70が存在するため、作業スペースが狭い。このような作業スペースが狭い場所でロックウールの吹付け作業を行うと、必要のない箇所にロックウールが付着してしまう問題や、不要なロックウールが付着しないように丁寧に養生する必要があり、施工に多くの時間と手間が必要になる。
【0017】
またロックウールをコテで方立21に押し付ける作業も、狭所での作業となると鉄骨梁材70と方立21との間に手が入らないなどの問題も生じる。この場合、吹き付けたロックウールを方立21の屋内側に完全に耐火被覆することができなくなり、施工品質の安定性の低下につながる。
【0018】
このような狭所でのロックウールの吹付け作業による湿式工法の対応策として、コの字型に成形した耐火ボードの両側面に、コの字型に成形した耐火ボードを構造体にボルトなどで留め付ける金物を備えた乾式工法による耐火ボード支持構造が開発されている(たとえば、特許文献3)。
【0019】
図19は、金属製カーテンウォールの耐火ボード支持構造を示す平面断面図である。
図19に示すように、特許文献3で開示された金属製カーテンウォールの耐火ボード支持構造60は、アルミニウム製の方立21の左右両側に配置された耐火パネル24と、耐火パネル24を構造体に支持させる固定金具23と、方立21を室内側から覆うと共に、耐火パネル24と構造的に分離された方立用耐火パネル61と、方立用耐火パネル61を鉄骨梁材70に支持させる一対の上側ブラケット62及び一対の下側ブラケット63と、を備えている。
【0020】
特許文献3で開示された金属製カーテンウォールの耐火ボード支持構造60によれば、方立21の左右両側には耐火パネル24が配置されている。この方立21は、方立用耐火パネル61によって室内側から覆われている。したがって、火災時における方立21の温度上昇が低減されるため、方立21の溶融等が抑制される。
【0021】
また、耐火パネル24は、固定金具23によって構造体に支持される。一方、方立用耐火パネル61は、耐火パネル24と構造的に分離されると共に、固定金具23とは別の一対の上側ブラケット62及び一対の下側ブラケット63によって構造体に支持されている。
【0022】
これにより、仮に方立21の左右両側の耐火パネル24が別々の変形挙動を示したとしても、これらの金属製カーテンウォール用耐火ボードの変形に方立用耐火パネル61が追従することが抑制される。したがって、方立用耐火パネル61の破損等が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【文献】特開2002-242334号公報
【文献】特開2010-261232号公報
【文献】特開2014-095202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
しかし、特許文献3で開示された金属製カーテンウォールの耐火ボード支持構造60では、一対の上側ブラケット62及び一対の下側ブラケット63を介して鉄骨梁材70に方立用耐火パネル61を固定するため、狭所での取り付け作業が強いられ、作業性が著しく低下する問題がある。
【0025】
具体的には、上側ブラケット62は鉄骨梁材70の上部に取り付けられるため、鉄骨梁材70と方立21とが接近した場合、鉄骨梁材70の下側フランジが障壁となり、ボルトなどで上側ブラケット62を鉄骨梁材70の上部に取り付ける作業が困難になる。
【0026】
また、下側ブラケット63は鉄骨梁材70の下部に取り付けられるため、同様に鉄骨梁材70の下側フランジによりボルトの締め付け位置が死角となり、下側ブラケット63の留め付け作業が困難になる。
【0027】
また、上側ブラケット62及び下側ブラケット63の留め付け作業は上記の理由で作業が困難になるだけでなく、留め付け作業が不完全になることで方立21の室内側を完全に耐火被覆できない可能性も考えられる。
【0028】
スパンドレルパネル部における方立21の屋内側が完全に耐火被覆されない状態で火災が起きると、この隙間から上下階に延焼してしまうため、隙間が耐火上の弱点となってしまう。
【0029】
また外部で発生した火災により、不完全に耐火被覆された方立21から屋内に熱が伝わった場合、床スラブ10を支える鉄骨梁材70に火災による熱が伝わってしまう恐れがある。熱に弱い鉄骨梁材70に火災による熱が伝わると、鉄骨梁材70は容易に変形する。
【0030】
鉄骨梁材70は建造物の構造を支える骨組みとなる構造体であり、鉄骨梁材70が変形してしまうと、やがて鉄骨梁材70と共に構造体を構成する床スラブ10や建造物を支えることができなくなり、建造物全体の崩壊へとつながる恐れがあり非常に危険である。
【0031】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、スパンドレルパネル部における方立の屋内側を容易に耐火被覆できる耐火断熱装置、耐火断熱方法、および耐火断熱構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0032】
本発明では上記問題を解決するために、方立間に耐火パネルを取り付けた金属製カーテンウォールによる建造物のスパンドレル部で耐火断熱する耐火断熱装置において、あらかじめ前記建造物が有する床スラブより下方で前記方立のうち前記建造物の屋内側で露出した部位を覆う形状に形成された耐火断熱材と、前記露出した部位を覆った状態で前記耐火断熱材の落下を防止するために支持する支持手段とを備えることを特徴とする耐火断熱装置が提供される。
【0033】
これにより、あらかじめ建造物が有する床スラブより下方で方立のうち建造物の屋内側で露出した部位を覆う形状に耐火断熱材が形成され、耐火断熱材の落下を防止するため支持手段が、耐火断熱材が露出した部位を覆った状態で支持する。
【0034】
また、本発明では、方立間に耐火パネルを取り付けた金属製カーテンウォールによる建造物のスパンドレル部で耐火断熱する耐火断熱方法において、あらかじめ前記建造物が有する床スラブより下方で前記方立のうち前記建造物の屋内側で露出した部位を覆う形状に耐火断熱材が形成される工程と、前記露出した部位を覆った状態で前記耐火断熱材の落下を防止するために支持手段が支持する工程とを備えることを特徴とする耐火断熱方法が提供される。
【0035】
これにより、あらかじめ建造物が有する床スラブより下方で方立のうち建造物の屋内側で露出した部位を覆う形状に耐火断熱材が形成され、耐火断熱材の落下を防止するため支持手段が、耐火断熱材が露出した部位を覆った状態で支持する。
【0036】
また、本発明では、方立間に耐火パネルを取り付けた金属製カーテンウォールによる建造物のスパンドレル部で耐火断熱する耐火断熱構造において、あらかじめ前記建造物が有する床スラブより下方で前記方立のうち前記建造物の屋内側で露出した部位を覆う形状に形成された耐火断熱材と、前記露出した部位を覆った状態で前記耐火断熱材の落下を防止するために支持する支持手段とを備えることを特徴とする耐火断熱構造が提供される。
【0037】
これにより、あらかじめ建造物が有する床スラブより下方で方立のうち建造物の屋内側で露出した部位を覆う形状に耐火断熱材が形成され、耐火断熱材の落下を防止するため支持手段が、耐火断熱材が露出した部位を覆った状態で支持する。
【発明の効果】
【0038】
本発明の耐火断熱装置、耐火断熱方法、および耐火断熱構造によれば、あらかじめ建造物が有する床スラブより下方で方立のうち建造物の屋内側で露出した部位を覆う形状に耐火断熱材が形成され、耐火断熱材の落下を防止するため支持手段が、耐火断熱材が露出した部位を覆った状態で支持するので、スパンドレルパネル部における方立の屋内側が完全かつ容易に被覆することができ、耐火断熱構造を容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】第1の実施の形態に係るノックダウン方式の金属製カーテンウォール構造に耐火断熱装置が設置された耐火構造を示す垂直断面図、および水平断面図である。
図2】第1の実施の形態に係るユニット方式の金属製カーテンウォール構造に耐火断熱装置が設置された耐火構造を示す垂直断面図、および水平断面図である。
図3】第1の実施の形態に係るノックダウン方式における耐火断熱装置の詳細を示す正面図、背面図、左側面図、右側面図、平面図、および底面図である。
図4】第1の実施の形態に係る耐火断熱装置が設置された耐火構造を示す斜視図である。
図5】第2の実施の形態に係るノックダウン方式の金属製カーテンウォール構造に耐火断熱装置が設置された耐火構造を示す垂直断面図、および水平断面図である。
図6】第2の実施の形態に係るノックダウン方式における耐火断熱装置の詳細を示す正面図、背面図、左側面図、右側面図、平面図、および底面図である。
図7】第3の実施の形態に係る耐火断熱装置が設置された耐火構造を示す斜視図である。
図8】第3の実施の形態に係るノックダウン方式の金属製カーテンウォール構造に耐火断熱装置が設置された耐火構造を示す垂直断面図、および水平断面図である。
図9】第4の実施の形態に係るノックダウン方式の金属製カーテンウォール構造に耐火断熱装置が設置された耐火構造を示す垂直断面図、および水平断面図である。
図10】第4の実施の形態に係るノックダウン方式における耐火断熱装置の詳細を示す正面図、背面図、左側面図、右側面図、平面図、および底面図である。
図11】第4の実施の形態に係る耐火断熱装置が設置された耐火構造を示す斜視図である。
図12】耐火断熱装置および耐火層間材を支持するための支持金具の詳細を示す断面図である。
図13】耐火断熱装置、耐火層間材、および金属製板材を支持するための支持金具の詳細を示す断面図である。
図14】第5の実施の形態に係るノックダウン方式の金属製カーテンウォール構造に耐火断熱装置が設置された耐火構造を示す垂直断面図、および水平断面図である。
図15】第5の実施の形態に係るノックダウン方式における耐火断熱装置の詳細を示す正面図、背面図、左側面図、右側面図、平面図、および底面図である。
図16】第5の実施の形態に係る耐火断熱装置が設置された耐火構造を示す斜視図である。
図17】方立方式の金属製カーテンウォールの構造例を示す正面図、上面図および側面断面図である。
図18】方立方式の金属製カーテンウォールのスパンドレルパネル部の詳細を示す平面断面図である。
図19】金属製カーテンウォールの耐火ボード支持構造を示す平面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
〔第1の実施の形態〕
図1は、第1の実施の形態に係るノックダウン方式の金属製カーテンウォール構造に耐火断熱装置が設置された耐火構造を示す垂直断面図、および水平断面図である。
【0041】
図1に示すように、壁材20、特にスパンドレル部における耐火パネル24は垂直方向に架設された方立21にはめこまれることで支持されており、鉄骨梁材70に支持された床スラブ10と耐火パネル24との間では、耐火パネル24から屋内側に方立21の屋内側が露出している。
【0042】
耐火断熱装置100は、耐火性と断熱性とを備えた耐火断熱材110、および耐火断熱材110を支持して、床スラブ10よりも上部で耐火パネル24に固定するための支持金具120を備えており、床スラブ10の下側で屋内側に露出した方立21を覆うように耐火断熱材110が固定されている。
【0043】
耐火断熱材110は、セラミックス繊維、ロックウール、グラスウール、ケイ酸カルシウム等の無機質繊維を集束または積層することで弾性をもたせたものであり、床スラブ10の下側で屋内側に露出した方立21を周面から覆うことで、完全な防火区画を設けることができる。
【0044】
また、方立21と鉄骨梁材70とを耐火断熱材110によって分断し、屋外での火災が発生した場合でも、その屋外での火災によって温度上昇が屋内に伝わることを防止することができるため、光熱による鉄骨梁材70の変形を防止することができる。
【0045】
図1では、ノックダウン方式の金属製カーテンウォールをはめ込むための方立21を覆うための耐火断熱材110として説明するが、耐火断熱材110のサイズは方立21の形状に応じて、露出した方立21を覆うことができれば任意の形状で形成することができ、耐火断熱材110を支持するための支持金具120もそれに応じて任意の形状で形成することができる。
耐火断熱材110は、床スラブ10の下側で耐火パネル24と鉄骨梁材70との間で、屋内側に露出した方立21を十分に覆うことのできる形状で形成される。
【0046】
以下、縦方向(壁材20の高さ方向)に架設された方立21が耐火パネル24をつなぎ合わせた状態で、屋内側に幅(壁材20の幅方向)40mm×厚さ(壁材20の厚さ方向)60mmが突出している構造を耐火断熱材110で覆った場合を例として説明する。なお、ここで示す寸法はあくまで一例であり、建造物の設計条件に応じて適宜変えることができる。
【0047】
図1のA-A´断面図に示すように、耐火断熱材110は幅120mm×厚さ100mmの直方体で形成され、耐火断熱材110の幅方向の側面の屋外側に、方立21が挿入される幅40mm×厚さ60mmの切り欠き部Kが高さ方向に沿って形成されており、断面がコの字状に形成されている。
【0048】
耐火断熱材110は、床スラブ10の下側面に配置された例えばH鋼のような鉄骨梁材70と耐火パネル24との間で、耐火パネル24の下端部から床スラブ10の下側面の間で露出した方立21を覆うことが可能な高さで形成される。
【0049】
具体的には、鉄骨梁材70が高さ150mmのH鋼であって、耐火パネル24の高さが835mm、耐火パネル24のうち耐火パネル24の上端から床スラブ10の下面まで高さが337.5mmの場合、耐火断熱材110の高さは耐火パネル24のうち床スラブ10の下面から耐火パネル24の下端までの高さと同じ高さである497.5mmで形成される。
【0050】
これにより、耐火断熱材110が方立21の屋内側で露出した部分を被覆することができる。また、床スラブ10と接近する耐火パネル24と鉄骨梁材70との間に耐火断熱材110が介在し、耐火断熱材110が屋外と鉄骨梁材70とを完全に遮ることができる。
【0051】
このため、屋外で火災が発生したとしても、屋外からの熱が鉄骨梁材70に直接伝わることがなくなり、屋外の火災によって温度が上昇しても建造物内で建造物を支える構造体である鉄骨梁材70の変形を防止することができる。
【0052】
また、耐火断熱材110の高さを耐火パネル24のうち床スラブ10の下面から耐火パネル24の下端までの高さにすることで、耐火断熱材110が耐火パネル24からはみ出ることがなくなる。
【0053】
つまり、耐火パネル24の下面にガラス窓25のみが連結されていても、耐火断熱材110が耐火パネル24の高さ内で収まるため、周囲からガラス窓25を介して耐火断熱材110が屋外に露出することがないため審美性もよい。
【0054】
なお、本実施の形態では、耐火断熱材110を立方体に切り欠き部Kを形成する例で説明したが、3枚の板状体を組み合わせることで、水平断面をコの字状に形成して方立21が挿入される切り欠き部Kを形成することもできる。
【0055】
また耐火断熱材110の周面には、耐火断熱材110の表面を完全に耐火被覆する例えばポリエチレンフィルム製の外被材を備えることができ、外部から浸入した雨水などの水分から耐火断熱材110を守ることができる。
【0056】
また、耐火断熱材110の周面を被覆する外被材は、アルミシート材等の防湿性能を有する材料を表面に設置することもできる。外被材に防湿性能を備えることで、建造物の外側から内側へ流入する湿気を遮断することができるため、耐火断熱材110に生じる結露や霜を防止することができる。
【0057】
支持金具120は、耐火断熱材110を屋内側から覆って耐火断熱材110を挟持する挟持部121と、挟持部121から水平方向に延設されて耐火パネル24に接する面を備える水平支持辺122と、水平支持辺122から垂直方向に延設されて耐火パネル24に接する面を備える垂直支持辺123とを備えている。
【0058】
挟持部121は、金属板を水平断面がコの字状になるように折り曲げ加工したものであって、挟持部121の開口部と耐火断熱材110の開口部とが同じ方向になるようにして、挟持部121の開口部から耐火断熱材110が挿入されて固定される。
【0059】
耐火断熱材110と挟持部121との固定方法は、例えば接着剤や両面テープを耐火断熱材110と挟持部121との間に介在させて固定する方法や、挟持部121の任意の場所に穴をあけて、そこからビスやボルトなどで耐火断熱材110と挟持部121とを固定する方法などがあり任意の方法で固定することができる。
【0060】
この挟持部121で弾力性のある耐火断熱材110を覆って挟持することで、耐火断熱材110の形状を維持することができるため、所望の大きさで形成された耐火断熱材110で方立21を確実に覆って挟持することができる。
【0061】
また、挟持部121は、耐火断熱材110の変形を防止するために、耐火断熱材110の高さに応じて適宜コの字状に形成された挟持部121のみである挟持部121Aを耐火断熱材110の任意の高さ位置に設けることができる。これにより、耐火断熱材110の開口部の広がりなどの変形を防止することができる。
【0062】
なお、ここでは挟持部121Aと挟持部121とを分離して形成する例で示したが、挟持部121と挟持部121Aとを一連の金属で形成し、耐火断熱材110の開口部とは反対側の側面に沿った金属辺で連結してもよい。
【0063】
水平支持辺122は、挟持部121の開口部両端辺から水平方向に延設され、挟持部121の開口部方向の両端部から両外側に所定の長さで直角に折り曲げ加工された金属辺である。
【0064】
水平支持辺122は、床スラブ10の上面に設けられる方立21または耐火パネル24と床スラブ10とを固定する固定金具23に連結して、建造物を支える構造体である床スラブ10に固定可能なように水平方向に位置を調節する役割を担っている。
【0065】
垂直支持辺123は、水平支持辺122により固定金具23と連結可能な位置で垂直方向に延設された耐火パネル24に接する金属辺であり、層間隙間G1の下側から挿入されて、垂直支持辺123の上端部が床スラブ10の上面より上に十分突き抜ける長さで形成される。
【0066】
垂直支持辺123の上部にはボルト穴が設けられ、方立21または耐火パネル24と床スラブ10とを固定する固定金具23にボルト124などの締結具によって締結される。これにより耐火断熱材110は、建造物を支える構造体である床スラブ10から落下することなく耐火パネル24の下端部から床スラブ10の下側面の間で露出した方立21を覆った状態で固定される。
【0067】
具体的には、垂直支持辺123の上部は、固定金具23と方立21または耐火パネル24との間に挟み込まれ、固定金具23を方立21または耐火パネル24に固定するためのボルト124によって締結固定される。
【0068】
固定金具23は、建造物を支える構造体である床スラブ10に固定されているため、垂直支持辺123は固定金具23を介して床スラブ10に固定されることになる。つまり、耐火断熱材110は支持金具120によって構造体である床スラブ10に固定される。
【0069】
なお、ここでいう固定金具23は、建造物を支える構造体である床スラブ10と耐火パネル24とを固定するためのものだけではなく、たとえば固定金具23を耐火パネル24に固定するための補助金具も含むことができる。つまり、支持金具120は、固定金具23を耐火パネル24に固定するための補助金具に、ボルト124などの締結具によって締結することで、耐火断熱材110を支持することもできる。
【0070】
なお、上記例での耐火断熱材110は、支持金具120によって支持され、耐火パネル24に締結具で支持金具120が固定される例で示したが、支持金具120による支持固定に加えて耐火断熱材110と方立21とが接する部分に例えば接着剤や両面テープを介在させて耐火断熱材110と方立21とを確実に接着することもできる。
【0071】
また、本実施の形態では、挟持部121と垂直支持辺123との間に水平支持辺122が形成されているが、支持金具120が固定金具23に固定できるのであれば、水平支持辺122を省略して、挟持部121から垂直支持辺123を延設することもできる。
【0072】
図2は、第1の実施の形態に係るユニット方式の金属製カーテンウォール構造に耐火断熱装置が設置された耐火構造を示す垂直断面図、および水平断面図である。
図2の耐火構造では、図1の耐火構造と方立21の形状がことなり、これに伴い耐火断熱材110および支持金具120の寸法が異なる以外は、図1で示した構成とほぼ同様である。このため、上記第1の実施の形態とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付すなどして適宜その説明を省略する。
【0073】
図1では、ノックダウン方式の金属製カーテンウォールをはめ込むための方立21を覆うための耐火断熱材110として説明したが、図2ではユニット方式の金属製カーテンウォールをはめ込むための方立21を覆うための耐火断熱材110として説明する。
【0074】
図2に示すように、縦方向(耐火パネル24の高さ方向)に架設された方立21が耐火パネル24をつなぎ合わせた状態で、屋内側に幅(耐火パネル24の幅方向)132.5mm×厚さ25mmが突出している構造を例として説明する。
【0075】
図2のA-A´断面図に示すように、耐火断熱材110は幅212.5mm×厚さ65mmの直方体で形成され、耐火断熱材110の幅方向の側面の屋外側に、方立21が挿入される幅132.5mm×厚さ25mmの切り欠き部Kが高さ方向に沿って形成されており、断面がコの字状に形成されている。
【0076】
耐火断熱材110は、床スラブ10の下側面に配置された例えばH鋼のような鉄骨梁材70と耐火パネル24との間で、耐火パネル24の下端部から床スラブ10の下側面の間で露出した方立21を覆うことが可能な高さで形成される。
【0077】
具体的には、鉄骨梁材70が高さ150mmのH鋼であって、耐火パネル24の高さが817.5mm、耐火パネル24のうち耐火パネル24の上端から床スラブ10の下面まで高さが250mmの場合、耐火断熱材110の高さは耐火パネル24のうち床スラブ10の下面から耐火パネル24の下端までの高さと同じ高さである567.5mmで形成される。
【0078】
これにより、耐火断熱材110が方立21の屋内側で露出した部分を被覆することができる。また、床スラブ10と接近する耐火パネル24と鉄骨梁材70との間に耐火断熱材110が介在することで、耐火断熱材110が屋外と鉄骨梁材70とを完全に遮るため、屋外で火災が発生したとしても、屋外からの熱が鉄骨梁材70に直接伝わることがなくなり、温度上昇による鉄骨梁材70の変形を防止することができる。
【0079】
図3は、第1の実施の形態に係るノックダウン方式における耐火断熱装置の詳細を示す正面図、背面図、左側面図、右側面図、平面図、および底面図である。
図3に示すように、耐火断熱装置100は、耐火断熱材110、および耐火断熱材110を支持して耐火パネル24に固定するための支持金具120を備えており、支持金具120は、挟持部121と、2つの水平支持辺122と、2つの垂直支持辺123とを備えている。
【0080】
挟持部121および挟持部121Aの厚さ方向の2つの側面の長さは、耐火断熱材110の厚さよりも短くすることが望ましい。挟持部121および挟持部121Aの厚さ方向の2つの側面の長さと耐火断熱材110の厚さとを等しく、または挟持部121および挟持部121Aの厚さ方向の2つの側面の長さを耐火断熱材110の厚さ以上にしてしまうと、耐火断熱装置100を方立21に押圧したときに、挟持部121および挟持部121Aの厚さ方向の2つの側面が先に耐火パネル24と干渉してしまい、耐火パネル24と耐火断熱装置100との間に隙間が生じてしまう恐れがあるためである。
【0081】
このため、挟持部121および挟持部121Aの厚さ方向の2つの側面の厚さは、耐火断熱材110の厚さよりも短くすることで、耐火断熱装置100を方立21に押圧しても耐火パネル24と耐火断熱装置100との間に隙間が生じることなく耐火構造を形成することができる。
【0082】
図4は、第1の実施の形態に係る耐火断熱装置が設置された耐火構造を示す斜視図である。
図4に示すように、耐火断熱装置100は、まず下階の作業員が床スラブ10の下側から方立21に沿わせて耐火断熱材110を床スラブ10の上方に向かって挿入していく。次に、垂直支持辺123の上端を層間隙間G1から床スラブ10の上面方向の固定金具23と耐火パネル24との間に差し込み、耐火断熱材110が床スラブ10の下面に当接した状態で、上階の作業員が垂直支持辺123の上部に設けられたボルト穴からボルト124などの締結具で固定金具23および耐火パネル24に固定する。
【0083】
このとき、垂直支持辺123の上部に設けられたボルト穴は、垂直支持辺123の長さにより床スラブ10の上面より上部に出ているため、上階の作業員は容易に耐火断熱装置100を固定金具23および耐火パネル24に固定することができる。
【0084】
また水平支持辺122が固定金具23と耐火パネル24とを固定するボルト124の位置に垂直支持辺123がくるように水平方向に延設されているため、床スラブ10と耐火パネル24とを連結する固定金具23に耐火断熱装置100を固定することができる。
なお、床スラブ10より上部に関しては、鉄骨梁材70などの障害物が配置されていないので、ロックウールなどの耐火材を容易に吹付けて耐火構造を得ることができる。
【0085】
また、耐火断熱装置100を少人数の作業員で設置する際には、まず下階で作業員が耐火断熱装置100を差し込み、耐火断熱材110が床スラブ10の下面に当接した状態で、耐火断熱材110の閉口側面から方立21に向かって水平方向に、ビスやクギを打ち込んで耐火断熱装置100を所望の位置に仮止めしておき、上階に作業員が移動した後に支持部材を、建造物を支える構造体に固定するようにしてもよい。
【0086】
〔第2の実施の形態〕
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。本実施の形態の耐火断熱装置は、支持金具の形状や支持方法が異なる以外は、第1の実施の形態で示した構成とほぼ同様である。このため、上記第1の実施の形態とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付すなどして適宜その説明を省略する。
【0087】
図5は、第2の実施の形態に係るノックダウン方式の金属製カーテンウォール構造に耐火断熱装置が設置された耐火構造を示す垂直断面図、および水平断面図である。
耐火断熱装置100は、耐火断熱材110、および耐火断熱材110を支持して耐火パネル24に固定するための支持金具120を備えており、床スラブ10の下側で耐火パネル24と鉄骨梁材70との間で方立21を覆うように固定されている。
【0088】
支持金具120は、挟持部121と、水平支持辺122と、垂直支持辺123と、垂直支持辺123から床スラブ10方向に水平に折り曲げられて、床スラブ10の上面に配置される上面支持辺125と、を備えている。
【0089】
上面支持辺125は、垂直支持辺123を床スラブ10方向に水平に折り曲げて形成される。垂直支持辺123の折り曲げ加工は、あらかじめ折り曲げた上面支持辺125の下面が床スラブ10の上面に接した状態で、耐火断熱材110と床スラブ10の下面との間に隙間ができない位置で折り曲げ加工する。
【0090】
また、床スラブ10の厚さなどにより、現場で床スラブ10の下から耐火断熱装置100を挿入した後に、耐火断熱材110が床スラブ10の下面に当接した状態で、垂直支持辺123を床スラブ10の上端部の角部で床スラブ10方向に折り曲げ加工をして上面支持辺125を形成することもできる。
【0091】
上面支持辺125は、上面支持辺125と床スラブ10の上面との間に接着剤や両面テープを介在させて上面支持辺125と床スラブ10とを確実に接着することもでき、また図示しないボルト穴に締結ボルトなどを介して上面支持辺125と床スラブ10とを固定することもできる。
【0092】
なお、本実施の形態では、ノックダウン方式の金属製カーテンウォール構造に耐火断熱装置100が設置された耐火構造を例として説明したが、本実施の形態の耐火断熱装置100の耐火断熱材110および支持金具120の寸法変形することで、ユニット方式の金属製カーテンウォール構造に耐火断熱装置100を設置することもできる。
【0093】
図6は、第2の実施の形態に係るノックダウン方式における耐火断熱装置の詳細を示す正面図、背面図、左側面図、右側面図、平面図、および底面図である。
図3に示すように、耐火断熱装置100は、耐火断熱材110、および耐火断熱材110を支持して耐火パネル24に固定するための支持金具120を備えており、支持金具120は、挟持部121と、2つの水平支持辺122と、2つの垂直支持辺123と、2つの上面支持辺125を備えている。上面支持辺125の長さは、支持する耐火断熱材110の重量によってバランスの良い長さで形成することができる。
【0094】
図7は、第3の実施の形態に係る耐火断熱装置が設置された耐火構造を示す斜視図である。
図7に示すように、あらかじめ垂直支持辺123が折り曲げられて上面支持辺125が形成された耐火断熱装置100は、まず下階の作業員が2つの上面支持辺125の間に固定金具23を介在させた状態で2つの上面支持辺125を層間隙間G1から床スラブ10の下側から上方に向けて挿入し、上面支持辺125と垂直支持辺123との折り曲げ部を中心に耐火断熱装置100の後端を床スラブ10から耐火パネル24方向に回転させながら、耐火断熱材110の切り欠き部Kを方立21にはめ込むように挿入する。
【0095】
また、あとから垂直支持辺123を折り曲げることで上面支持辺125を形成する耐火断熱装置100は、まず下階の作業員が床スラブ10の下側から方立21に沿わせて耐火断熱材110を床スラブ10の上方に向かって挿入していく。
【0096】
次に、垂直支持辺123の上端を層間隙間G1から床スラブ10の上面に向かって差し込み、耐火断熱材110が床スラブ10の下面に当接した状態で、上階の作業員が垂直支持辺123を床スラブ10の上端部の角部で床スラブ10方向に折り曲げ加工をして上面支持辺125を形成して耐火断熱装置100を固定する。
【0097】
〔第3の実施の形態〕
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。本実施の形態の耐火断熱装置は、支持金具の形状や支持方法が異なる以外は、第1の実施の形態、および第2の実施の形態で示した構成とほぼ同様である。このため、上記第1の実施の形態、および第2の実施とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付すなどして適宜その説明を省略する。
【0098】
図8は、第3の実施の形態に係るノックダウン方式の金属製カーテンウォール構造に耐火断熱装置が設置された耐火構造を示す垂直断面図、および水平断面図である。
耐火断熱装置100は、耐火断熱材110、および耐火断熱材110を支持して耐火パネル24に固定するための支持金具120を備えており、床スラブ10の下側で耐火パネル24と鉄骨梁材70との間で方立21を覆うように固定されている。
【0099】
支持金具120は、挟持部121と、挟持部121が固定された耐火断熱材110を耐火パネル24方向に押し当てて突っ張らせるための突っ張り手段126と、を備えている。
【0100】
突っ張り手段126は、鉄骨梁材70と耐火断熱材110とを連結して、耐火断熱材110を耐火パネル24方向に押し当てて突っ張らせるための手段であり、鉄骨梁材70に固定されるクランプ材126Aと、クランプ材126Aに固定されて水平方向に所定の径でねじ切り加工されているネジ穴部126Bと、ネジ穴部126Bと同径でネジ穴部126Bに挿入される押当ボルト126Cと、押当ボルト126Cと挟持部121との間に介在されて、耐火断熱材110全体を耐火パネル24方向に押し当てるための押当板材126Dを備えている。
【0101】
クランプ材126Aは、たとえば鉄骨梁材70の一部であるフランジ部などに締め付けて固定される工具である。クランプ材126Aは、締め付け工程を経て鉄骨梁材70に固定される。
【0102】
ネジ穴部126Bは、クランプ材126Aの一部またはクランプ材126Aに連結されるネジ穴である。クランプ材126Aに形成されるネジ穴は、水平方向に形成されて、同径の押当ボルト126Cが挿入され、押当ボルト126Cを締め付けることで、押当ボルト126Cは耐火パネル24方向に移動する。
【0103】
このほか、突っ張り手段126は、鉄骨梁材70と耐火断熱材110との間で、たとえばバネの復元力を利用して鉄骨梁材70と耐火断熱材110とを突っ張らせたり、シリンダーの伸縮構造を利用して鉄骨梁材70と耐火断熱材110とを突っ張らせたりすることもできる。
【0104】
押当板材126Dは、垂直断面がL上の板材であって、耐火断熱材110と同じ高さ、または耐火断熱材110の高さ以下の高さで形成される。
押当板材126Dの内側角部を、耐火断熱材110の床スラブ10側下端部に押し当て、挟持部121を介在させた状態で、押当ボルト126Cを押当板材126Dに押し当てながら、押当ボルト126Cを締め付ける。
【0105】
これにより、耐火断熱材110が全体的に耐火パネル24方向に押し当てられる。また押当板材126Dの折り曲げられた下端部により、耐火断熱材110が落下することを防止することができる。
【0106】
〔第4の実施の形態〕
次に、本発明の第4の実施の形態について説明する。本実施の形態の耐火断熱装置は、支持金具の形状や支持方法が異なる以外は、第1の実施の形態~第3の実施の形態で示した構成とほぼ同様である。このため、上記第1の実施の形態~第3の実施の形態とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付すなどして適宜その説明を省略する。
【0107】
図9は、第4の実施の形態に係るノックダウン方式の金属製カーテンウォール構造に耐火断熱装置が設置された耐火構造を示す垂直断面図、および水平断面図である。
耐火断熱装置100は、耐火断熱材110、および耐火断熱材110を支持して耐火パネル24に固定するための支持金具120を備えており、床スラブ10の下側で耐火パネル24と鉄骨梁材70との間で方立21を覆うように固定されている。また、床スラブ10と耐火パネル24やガラス窓25などの壁材20との隙間は、支持金具40によって支持された耐火層間材30が挿入されることで閉塞されている。
【0108】
支持金具120は、挟持部121と、水平支持辺122と、垂直支持辺123と、垂直支持辺123の上端部に設けられ、他の耐火層間材30を支持するための支持金具40に引っ掛けて耐火断熱材110を支持するための引掛部127と、を備えている。
【0109】
引掛部127は、他の耐火層間材30を支持するために、方立21を挟んで両脇に設置された支持金具40に引っ掛けるためのものであり、垂直支持辺123の上端部から水平方向外側に向かって延設される突起体である。引掛部127は、支持金具40の下端部に設けられた湾曲部などによって引っ掛けられ、多少の動きでは外れてしまうことのない十分な幅をもって形成される。
【0110】
また、垂直支持辺123と、引掛部127との形成位置は、引掛部127を支持金具40に引っ掛けた状態で、耐火断熱材110と床スラブ10の下面との間に隙間ができない位置に設けられる。
【0111】
また引掛部127は、支持金具50のように支持金具50の一部に設けられた金属製板材80を支持するための板材支持部54などの突起帯に引っ掛けて代用することもできる。
【0112】
図10は、第4の実施の形態に係るノックダウン方式における耐火断熱装置の詳細を示す正面図、背面図、左側面図、右側面図、平面図、および底面図である。
図10に示すように、耐火断熱装置100は、耐火断熱材110、および耐火断熱材110を支持して耐火パネル24に固定するための支持金具120を備えており、支持金具120は、挟持部121と、2つの水平支持辺122と、2つの垂直支持辺123と、2つの引掛部127を備えている。
【0113】
図11は、第4の実施の形態に係る耐火断熱装置が設置された耐火構造を示す斜視図である。
図11に示すように、耐火断熱装置100は、まず下階の作業員が床スラブ10の下側から方立21に沿わせて耐火断熱材110を床スラブ10の上方に向かって挿入していく。
次に、垂直支持辺123および引掛部127を層間隙間G1から床スラブ10の上面に向かって差し込み、耐火断熱材110が床スラブ10の下面に当接した状態にする。
【0114】
次に、上階の作業員が床スラブ10の上部から方立21を中心に両側から層間隙間G1に支持金具40を挿入する。最後に、上階の作業員が層間隙間G1に挿入した支持金具40を左右に移動させながら、支持金具40に引掛部127が完全に引っかかる状態まで移動させて、耐火断熱材110を支持金具40に引っ掛けて固定する。これにより、耐火断熱材110は所望の位置に固定される。
耐火断熱材110を支持するために使用された支持金具40は、さらにこの状態から、層間隙間G1に挿入された耐火層間材30を支持するように使用することもできる。
【0115】
図12は、耐火断熱装置および耐火層間材を支持するための支持金具の詳細を示す断面図である。
図12に示すように、耐火断熱装置100は支持金具40によって支持されている。
【0116】
建造物の床スラブ10と壁材20との間の層間隙間G1に、耐火層間材30が挿入されている。この耐火層間材30は、層間隙間G1の長手方向に間隔を置いて配置された複数の支持金具40で支持されている。
【0117】
支持金具40は、床スラブ10の上面に配置される上面支持部41と、上面支持部41から床スラブ10の外面に沿って垂下する垂下部42と、垂下部42の下端から壁材20方向に屈曲して先端が壁材20に接触する突っ張り部43とで構成されている。
【0118】
芯材31は、層間隙間G1に圧入され、上面被覆材32が粘着剤を介して床スラブ10および壁材20の表面に接着されることで、層間隙間G1を完全に閉塞することができる。
【0119】
耐火断熱装置100に備えられた引掛部127は、垂下部42の下端で壁材20方向に屈曲して形成された突っ張り部43と垂下部42との下端部に引っ掛けられて、ここでは図示しない耐火断熱材110が支持される。
【0120】
図13は、耐火断熱装置、耐火層間材、および金属製板材を支持するための支持金具の詳細を示す断面図である。
図13に示すように、耐火断熱装置100は、支持金具50によって支持されている。
【0121】
建造物の床スラブ10と壁材20との間の層間隙間G1に、耐火層間材30が挿入されている。この耐火層間材30は、層間隙間G1の長手方向に間隔を置いて配置された複数の支持金具50および金属製板材80で支持されている。
【0122】
支持金具50は、床スラブ10の上面に配置される上面支持部51と、上面支持部51から床スラブ10の外面に沿って垂下する垂下部52と、垂下部52の下端から壁材20方向に屈曲して先端が壁材20に接触する突っ張り部53と、垂下部52に設けられた金属製板材80を支持するための板材支持部54とで構成されている。
【0123】
支持金具50を床スラブ10に設置し、支持金具50の垂下部52に設けられた板材支持部54によって、金属製板材80の床スラブ10側部分が支持され、金属製板材80の壁材20側が壁材20に支持される。これにより床スラブ10の端面と壁材20との間の層間隙間G1が金属製板材80によって閉塞される。
【0124】
耐火断熱装置100に備えられた引掛部127は、垂下部52の下端で壁材20方向に屈曲して形成された突っ張り部53と垂下部52との下端部に引っ掛けられて、ここでは図示しない耐火断熱材110が支持される。
【0125】
〔第5の実施の形態〕
次に、本発明の第5の実施の形態について説明する。本実施の形態の耐火断熱装置は、支持金具の形状や支持方法が異なる以外は、第1の実施の形態で示した構成とほぼ同様である。このため、上記第1~4の実施の形態とほぼ同様の構成部分については同一の符号を付すなどして適宜その説明を省略する。
【0126】
図14は、第5の実施の形態に係るノックダウン方式の金属製カーテンウォール構造に耐火断熱装置が設置された耐火構造を示す垂直断面図、および水平断面図である。
耐火断熱装置100は、耐火断熱材110、および耐火断熱材110を支持して耐火パネル24に固定するための支持金具120を備えており、床スラブ10の下側で耐火パネル24と鉄骨梁材70との間で方立21を覆うように固定されている。
【0127】
支持金具120は、挟持部121と、水平支持辺122と、垂直支持辺123と、垂直支持辺123から床スラブ10方向に水平に折り曲げられて、床スラブ10の上面に配置される上面支持辺125と、を備えている。
【0128】
耐火断熱材110は、第1~4の実施の形態の耐火断熱材110と同様の形状をしているが、耐火断熱材110の外側にコの字状の石膏ボード111が貼り付けられている。石膏ボード111は、耐火性能とロックウールなどの弾力性を備えた耐火断熱材110を所定の形状を維持することのできる強度を備えている。
【0129】
このため、コの字状に形成された石膏ボード111の内側に収容された耐火断熱材110は、弾力性を備えつつも所定の形状を維持することができ、耐火断熱材110が変形することなく方立21に沿って所定の位置に配置することができる。
また石膏ボード111は、強度を備えているため、支持金具120と石膏ボード111とをビスなどの留め具128で容易に固定することができる。
【0130】
上面支持辺125は、垂直支持辺123を床スラブ10方向に水平に折り曲げて形成される。垂直支持辺123の折り曲げ加工は、あらかじめ折り曲げた上面支持辺125の下面が床スラブ10の上面に接した状態で、耐火断熱材110と床スラブ10の下面との間に隙間ができない位置で折り曲げ加工する。
【0131】
また、床スラブ10の厚さなどにより、現場で床スラブ10の下から耐火断熱装置100を挿入した後に、耐火断熱材110が床スラブ10の下面に当接した状態で、垂直支持辺123を床スラブ10の上端部の角部で床スラブ10方向に折り曲げ加工をして上面支持辺125を形成することもできる。
【0132】
上面支持辺125は、上面支持辺125と床スラブ10の上面との間に接着剤や両面テープを介在させて上面支持辺125と床スラブ10とを確実に接着することもでき、また図示しないボルト穴に締結ボルトなどを介して上面支持辺125と床スラブ10とを固定することもできる。
【0133】
図15は、第5の実施の形態に係るノックダウン方式における耐火断熱装置の詳細を示す正面図、背面図、左側面図、右側面図、平面図、および底面図である。
図15に示すように、耐火断熱装置100は、外側表面に石膏ボード111を備えた耐火断熱材110、および耐火断熱材110を支持して耐火パネル24に固定するための支持金具120を備えており、支持金具120は、挟持部121と、2つの水平支持辺122と、2つの垂直支持辺123と、2つの上面支持辺125を備えている。上面支持辺125の長さは、支持する耐火断熱材110の重量によってバランスの良い長さで形成することができる。また、耐火断熱材110と支持金具120とは、留め具128によって挟持部121と石膏ボード111とが固定されている。
【0134】
図16は、第5の実施の形態に係る耐火断熱装置が設置された耐火構造を示す斜視図である。
図16に示すように、耐火断熱材110と支持金具120とは、留め具128によって挟持部121と石膏ボード111とが固定されている。
【0135】
あらかじめ垂直支持辺123が折り曲げられて上面支持辺125が形成された耐火断熱装置100は、まず下階の作業員が2つの上面支持辺125の間に固定金具23を介在させた状態で2つの上面支持辺125を層間隙間G1から床スラブ10の下側から上方に向けて挿入し、上面支持辺125と垂直支持辺123との折り曲げ部を中心に耐火断熱装置100の後端を床スラブ10から耐火パネル24方向に回転させながら、耐火断熱材110の切り欠き部Kを方立21にはめ込むように挿入する。
【0136】
また、あとから垂直支持辺123を折り曲げることで上面支持辺125を形成する耐火断熱装置100は、まず下階の作業員が床スラブ10の下側から方立21に沿わせて耐火断熱材110を床スラブ10の上方に向かって挿入していく。このとき、耐火断熱材110の外側表面に設けられた石膏ボード111によって、耐火断熱材110の直線形状を維持できるので、スムーズに方立21に沿って挿入することができる。
【0137】
次に、垂直支持辺123の上端を層間隙間G1から床スラブ10の上面に向かって差し込み、耐火断熱材110が床スラブ10の下面に当接した状態で、上階の作業員が垂直支持辺123を床スラブ10の上端部の角部で床スラブ10方向に折り曲げ加工をして上面支持辺125を形成して耐火断熱装置100を固定する。
【符号の説明】
【0138】
10 床スラブ
20 壁材
21 方立
23 固定金具
24 耐火パネル
30 耐火層間材
70 鉄骨梁材
100 耐火断熱装置
110 耐火断熱材
120 支持金具
121 挟持部
121A 挟持部
122 水平支持辺
123 垂直支持辺
124 ボルト
G1 層間隙間
K 切り欠き部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19