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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】シフト操作装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 20/02 20060101AFI20240828BHJP
   G05G 1/10 20060101ALI20240828BHJP
   G05G 5/06 20060101ALI20240828BHJP
【FI】
B60K20/02 E
G05G1/10 B
G05G5/06 D
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020169608
(22)【出願日】2020-10-07
(65)【公開番号】P2022061590
(43)【公開日】2022-04-19
【審査請求日】2023-09-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】弁理士法人イトーシン国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100100413
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 温
(72)【発明者】
【氏名】村山 純哉
(72)【発明者】
【氏名】大塚 智之
【審査官】増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-32905(JP,A)
【文献】特開2002-254946(JP,A)
【文献】特表2016-539836(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 20/02
G05G 1/10
G05G 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の駆動装置のレンジ選択操作が入力されるシフト操作装置であって、
固定部材と、
前記レンジ選択操作に応じて前記固定部材に対して回動する回動部材と、
前記回動部材に形成された被係合部と、
前記被係合部と係合して前記回動部材を所定の角度範囲内でのみ回動可能とする係合位置と、前記被係合部から退避した退避位置との間で、前記固定部材に対して相対変位可能なよう前記固定部材に取り付けられる係合部材と、
前記係合部材を前記係合位置と前記退避位置との間で変位させる係合部材駆動部と、
前記車両の状態に応じて前記係合部材駆動部を制御する制御部とを備え
前記回動部材は筒状部を有し、
前記被係合部は、前記回動部材の内周面に形成された溝部の少なくとも一方の端部に形成された端面であり、
前記係合部材は、前記係合位置にあるときに、少なくとも一部が前記溝部に挿入され、
前記溝部及び前記係合部材は、前記回動部材の回動中心軸方向に離間した複数箇所にそれぞれ設けられることを特徴とするシフト操作装置。
【請求項2】
前記係合部材駆動部は、前記筒状部の内径側に設けられたカム部と、前記カム部を駆動するアクチュエータとを有し、
前記係合部材は、前記カム部と当接するカムフォロワ部を有すること
を特徴とする請求項1に記載のシフト操作装置。
【請求項3】
前記溝部の一方の端部に前記溝部の深さが徐々に変化するスロープ面部が設けられ、
前記カムフォロワ部の前記カム部との当接面部は前記回動部材の径方向に対して傾斜して配置され、
前記カム部は、前記カムフォロワ部に所定以上の力で押圧されることにより、前記係合部材を前記溝部から退避させる方向に変位可能であること
を特徴とする請求項2に記載のシフト操作装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の走行レンジ選択操作が入力されるシフト操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両に搭載され、エンジン等の走行用動力源の出力軸回転を変速する自動変速機は、例えばP(パーキング)レンジ、R(リバース)レンジ、N(ニュートラル)レンジ、D(ドライブ)レンジ等の複数のレンジを、ドライバの操作に応じて切り換える(シフトする)よう構成されている。
近年、このようなレンジの切り換えを、変速機等の制御装置に電気的に接続されたシフト操作装置へのシフト操作に応じて行うシフトバイワイヤ方式が提案されている。
また、シフトバイワイヤ方式のシフト操作装置において、回転式のダイアル状のノブを操作部材(シフタノブ)とすることが提案されている。
このようなシフト操作装置には、不適切なシフト操作を禁止して安全性を確保したり、変速機等を保護するため、所定の条件下でシフタノブの回動を規制するシフトロック機構が設けられる。
【0003】
上述したシフトバイワイヤ方式のシフト操作装置に関する従来技術として、例えば特許文献1には、円筒状のシフト体に凹部を有する節度面を形成するとともに、凹部に挿入される節度ピンを有する節度体をばねの付勢力により係合させ、付勢力に抗して係合が解除されることにより、シフト体の移動を可能としたものが記載されている。
また、所定のシフト位置にあるときに、ロータカムが節度体の移動を規制する位置に移動することにより、節度ピンの凹部からの離脱を禁止してシフトロックを行うことが記載されている。
特許文献2には、シフト装置のノブの回転を規制するロック部材を、カム部材及びモータを用いて、ノブの外径側からノブに形成されたロック用孔に挿入するシフトロック装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019- 51745号公報
【文献】特開2017-136962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来技術においては、回動規制時(シフトロック機構の作動時)には、操作部材であるノブが完全に固定されるため、ノブを回動させることができない。
また、回動規制を解除した場合には、一切のロック機能が作動せず、全ポジションへの移動が可能となる。
しかし、車両の状態によっては、一定の範囲でノブの回動を許容しつつ、その範囲を超えることがないよう回動規制を行うべき場合がある。
例えば、車両の前進に用いられるDレンジが選択されている際に、中立状態であるNレンジまでのシフトは許容するが、Nレンジを通過して後進に用いられるRレンジへのシフトされることは禁止すべき場合がある。
このような場合に、特許文献1,2のようなシフトロック機構においては、シフトロック機構の作動状態ではノブが固定されてしまうため、適切な回動規制を行うことができない。
また、ノブを予め設定された一定の角度範囲内でのみ回動可能とするストッパを用いることも考えらえるが、この場合、部品の交換などを行うことなく回動が許容される範囲(ストッパの間隔)を変更することは難しい。また、モータ等によりストッパを可動とすることも考えられるが、この場合、ドライバによるシフト操作に追従して高速かつ迅速にストッパを駆動することが難しい。
上述した問題に鑑み、本発明の課題は、車両状態に応じた適切な回動規制を行うことが可能なシフト操作装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下のような解決手段により、上述した課題を解決する。
請求項1に係る発明は、車両の駆動装置のレンジ選択操作が入力されるシフト操作装置であって、固定部材と、前記レンジ選択操作に応じて前記固定部材に対して回動する回動部材と、前記回動部材に形成された被係合部と、前記被係合部と係合して前記回動部材を所定の角度範囲内でのみ回動可能とする係合位置と、前記被係合部から退避した退避位置との間で、前記固定部材に対して相対変位可能なよう前記固定部材に取り付けられる係合部材と、前記係合部材を前記係合位置と前記退避位置との間で変位させる係合部材駆動部と、前記車両の状態に応じて前記係合部材駆動部を制御する制御部とを備え、前記回動部材は筒状部を有し、前記被係合部は、前記回動部材の内周面に形成された溝部の少なくとも一方の端部に形成された端面であり、前記係合部材は、前記係合位置にあるときに、少なくとも一部が前記溝部に挿入され、前記溝部及び前記係合部材は、前記回動部材の回動中心軸方向に離間した複数箇所にそれぞれ設けられることを特徴とするシフト操作装置である。
【0009】
請求項に係る発明は、前記係合部材駆動部は、前記筒状部の内径側に設けられたカム部と、前記カム部を駆動するアクチュエータとを有し、前記係合部材は、前記カム部と当接するカムフォロワ部を有することを特徴とする請求項に記載のシフト操作装置である。これによれば、主要部分を回動部材の内径側に収容可能な簡単かつコンパクトな構成により確実に係合部材を駆動することができる。
【0010】
請求項に係る発明は、前記溝部の一方の端部に前記溝部の深さが徐々に変化するスロープ面部が設けられ、前記カムフォロワ部の前記カム部との当接面部は前記回動部材の径方向に対して傾斜して配置され、前記カム部は、前記カムフォロワ部に所定以上の力で押圧されることにより、前記係合部材を前記溝部から退避させる方向に変位可能であることを特徴とする請求項に記載のシフト操作装置である。
これによれば、回動部材を回動させて係合部材がスロープ面部を通過する際に、カム部を変位させて係合部材を溝部から退避させることにより、カム部がスロープ面部に乗り上げる方向(徐々に溝深さが減少する方向)の回動を妨げることがない。
これにより、回動規制のバリエーションの設定自由度を高めることができる。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、本発明によれば、車両状態に応じた適切な回動規制を行うことが可能なシフト操作装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明を適用したシフト操作装置の第1実施形態の分解斜視図である。
図2】第1実施形態のシフト操作装置の構成を示す図であって、シフタノブの径方向から見た状態を示しかつシフタノブをその中心軸を含む平面で切って見た図である。
図3】第1実施形態のシフト操作装置の構成を示す図であって、シフタノブの中心軸の方向から見た状態を示しかつシフタノブは図2のIII-III部矢視断面を示す図である。
図4】第1実施形態のシフト操作装置のPレンジにおけるアンロック状態を示す図である。
図5】第1実施形態のシフト操作装置のRレンジにおけるアンロック状態を示す図である。
図6】第1実施形態のシフト操作装置のNレンジにおけるアンロック状態を示す図である。
図7】第1実施形態のシフト操作装置のDレンジにおけるアンロック状態を示す図である。
図8】第1実施形態のシフト操作装置のシフタノブとシフタインナをシフトロックモータ側から見た図である。
図9】第1実施形態のシフト操作装置のロックピン周辺部の構成を示す図である。
図10】各実施形態のロックロータアウタにロックロータインナが組み込まれた状態をシフタノブの中心軸の方向から見た図である。
図11】各実施形態のロックロータアウタにロックロータインナが組み込まれた状態を示す斜視図である。
図12】第1実施形態のシフト操作装置を有する車両の自動変速機の制御システムの構成を模式的に示すブロック図である。
図13】第1実施形態のシフト操作装置のPレンジにおけるP-Rロック状態を示す図である。
図14】第1実施形態のシフト操作装置のNレンジにおけるNロック状態を示す図である。
図15】第1実施形態のシフト操作装置のDレンジにおけるN-Rロック状態を示す図である。
図16】第1実施形態のシフト操作装置のNレンジにおけるN-Rロック状態を示す図である。
図17】第1実施形態のシフト操作装置のRレンジにおけるR-Pロック状態を示す図である。
図18】第1実施形態のシフト操作装置のNレンジにおけるN-Dロック状態を示す図である。
図19】第1実施形態のシフト操作装置におけるロックピンのスロープ面通過時の状態を示す図である。
図20】本発明を適用したシフト操作装置の第2実施形態の断面図である。
図21】本発明を適用したシフト操作装置の第3実施形態におけるロックピンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第1実施形態>
以下、本発明を適用したシフト操作装置の第1実施形態について説明する。
第1実施形態のシフト操作装置は、例えば乗用車等の自動車に搭載されるシフトバイワイヤ方式の変速機における走行レンジの選択操作(シフト操作)を行うものである。
【0014】
第1実施形態のシフト操作装置は、例えばドライバ等のユーザが手指により操作することによってシフト操作が入力され、選択されたレンジに関する情報を電気的な信号により後述するシフトバイワイヤECU300に伝達するスイッチとして構成されている。
【0015】
図1は、第1実施形態のシフト操作装置の分解斜視図である。
図2は、第1実施形態のシフト操作装置の構成を示す図であって、シフタノブの径方向から見た状態を示しかつシフタノブをその中心軸を含む平面で切って見た図である。
図3は、第1実施形態のシフト操作装置の構成を示す図であって、シフタノブの中心軸の方向から見た状態を示しかつシフタノブは図2のIII-III部矢視断面を示す図である。
図4は、第1実施形態のシフト操作装置のPレンジにおけるアンロック状態を示す図である。
図4(a)、図4(b)、図4(c)は、それぞれ図2のa-a部、b-b部、c-c部に相当する箇所を示している。(図5乃至図7、後述する図13乃至図18において同じ)
図5は、第1実施形態のシフト操作装置のRレンジにおけるアンロック状態を示す図である。
図6は、第1実施形態のシフト操作装置のNレンジにおけるアンロック状態を示す図である。
図7は、第1実施形態のシフト操作装置のDレンジにおけるアンロック状態を示す図である。
【0016】
シフト操作装置1は、シフタノブ10、シフタインナ20、外側蓋30、内側蓋40、ロックピン50A,50B,50C,スプリング60、ロックロータアウタ70、ロックロータインナ80、スプリング91,92、シフトロックモータ150等を有して構成されている。
なお、図2乃至図7においては、シフタインナ20、スプリング60、ロックロータインナ80、スプリング91,92、シフトロックモータ150は、図示を省略している。
【0017】
シフタノブ10は、例えばドライバ等の操作者が手指により操作入力を行うダイアル状の回動部材である。
シフタノブ10は、ほぼ円筒状に形成され、シフト操作装置1が取り付けられる基部となる図示しない内装部材に対して、シフタノブ10の中心軸回りに回動可能となっている。シフタノブ10の中心軸は、シフタノブ10の回動中心軸としても機能する。
シフタノブ10の本体部は、本発明の筒状部として機能する。
シフタノブ10は、Pレンジにおける位置から、時計回り方向に回動させることにより、Rレンジ、Nレンジ、Dレンジを順次選択することが可能となっている。
シフタノブ10には、例えば、シフトノブ10の基部に対する角度位置を検出するシフタセンサ140(図12参照)が設けられている。
【0018】
シフタノブ10の内周面部には、ロックピン50A,50B,50Cの突出部51が挿入される溝部110,120,130が形成されている。
【0019】
溝部110,120,130は、シフタノブ10の内周面部を凹ませ、周方向(中心軸回り方向)に延在して形成されている。
溝部110,120は、シフタノブ10の中心軸の方向における位置が同一となり、かつ、中心軸回りにおける分布範囲を異ならせて配置されている。
溝部130は、溝部110,120に対してシフタノブ10の中心軸の方向における位置を外側蓋30側にオフセットさせた位置に配置されている。
【0020】
図3等に示すように、溝部110は、シフタノブ10の中心軸回りにおける角度範囲が例えば約270°程度の範囲にわたって延在している。
シフタノブ10を外側蓋30側(ドライバ側)から見たときに、溝部110の反時計回り方向側の端部には、ロックピン50Aと係合してシフタノブ10の時計回り方向側への回動を規制する被係合部である端面111が形成されている。
溝部110の時計回り方向側(端面111側とは反対側)の端部には、溝部110の深さが先端側で徐々に減少するよう形成された溝底面であるスロープ面112が形成されている。
【0021】
図4に示すように、端面111は、Pレンジが選択された状態において、ロックピン50Aを溝部110内に挿入可能なよう配置されている。
Pレンジが選択された状態でロックピン50Aの突出部51を溝部110内に挿入した場合、突出部51は、端面111とシフタノブ10の周方向に微小な間隔を隔てて対向するよう配置されている。以下、このような状態を「隣接」と称して説明する。
図4図5に示すように、スロープ面122は、シフタノブ10の周方向における位置(中心角回りにおける角度位置)が、Pレンジが選択された状態においてロックピン50Aとスロープ面122の浅溝側端部122Aとがほぼ一致する箇所に設けられ、Rレンジが選択された状態においてロックピン50Aとスロープ面122の深溝側端部122Bとがほぼ一致する箇所に設けられている。
スロープ面122は、Rレンジ側からPレンジ側へ推移する際に、ロックピン50Aの位置における溝部110の深さが徐々に減少するよう構成されている。
【0022】
溝部120は、溝部110とはシフタノブ10の周方向にずれた箇所に、シフタノブ10の中心軸回りにおける角度範囲が例えば約70°程度の範囲にわたって延在している。
シフタノブ10を外側蓋30側(ドライバ側)から見たときに、溝部120の反時計回り方向側の端部には、ロックピン50Aと係合してシフタノブ10の時計回り方向側への回動を規制する被係合部である端面121が形成されている。
溝部120の時計回り方向側(端面121側とは反対側)の端部には、溝部120の深さが先端側で徐々に減少するよう形成された溝底面であるスロープ面122が形成されている。
【0023】
図6に示すように、端面121は、Nレンジが選択された状態において、ロックピン50Aを溝部110内に挿入した場合に、ロックピン50Aの突出部51が端面121と隣接し、シフタノブ10のNレンジ側からDレンジ側への回動規制が可能なよう配置されている。
図6図7に示すように、スロープ面112は、シフタノブ10の周方向における位置(中心角回りにおける角度位置)が、Nレンジが選択された状態においてロックピン50Aとスロープ面112の浅溝側端部112Aとがほぼ一致する箇所に設けられ、Dレンジが選択された状態においてロックピン50Aとスロープ面112の深溝側端部112Bとがほぼ一致する箇所に設けられている。
スロープ面112は、Nレンジ側からDレンジ側へ推移する際に、ロックピン50Aの位置における溝部110の深さが徐々に減少するよう構成されている。
溝部110,120の端面111,121は、ドライバ側から見たときに、シフタノブ10の時計回り方向(Pレンジ側からDレンジ側)への回動を規制する機能を有する。
【0024】
図4等に示すように、溝部130は、シフタノブ10の中心軸回りにおける角度範囲が例えば約350°程度の範囲にわたって延在している。
シフタノブ10を外側蓋30側(ドライバ側)から見たときに、溝部130の時計回り方向側の端部には、ロックピン50B,50Cと係合してシフタノブ10の反時計回り方向側への回動を規制する被係合部である端面131が形成されている。
溝部130の反時計回り方向側(端面131側とは反対側)の端部には、溝部130の深さが先端側で徐々に減少するよう形成された溝底面であるスロープ面132が形成されている。
【0025】
図5に示すように、端面131は、Rレンジが選択された状態において、ロックピン50Bの突出部51を溝部130に挿入した場合に、端面131と突出部51とが隣接するよう配置されている。このとき、ロックピン50Cは、スロープ面132の深溝側端部132Bの近傍の領域において、溝部130内に挿入可能なよう配置されている。
また、図6に示すように、端面131は、Nレンジが選択された状態において、ロックピン50Cの突出部51を溝部130内に挿入した場合に、端面131と突出部51とが隣接するよう配置されている。このとき、ロックピン50Cは、溝部130内に挿入可能なよう配置されている。
図5に示すように、スロープ面132は、Rレンジが選択された状態において、回動中心回りにおける角度範囲が、ロックピン50Bとロックピン50Cとの間の範囲に配置され、ロックピン50C側の深溝側端部132Bからロックピン50B側の浅溝側端部132Aにかけて、溝部130の深さが徐々に減少するよう構成されている。
溝部130の端面131は、ドライバ側から見たときに、シフタノブ10の反時計回り方向への回動を規制する機能を有する。
【0026】
シフタインナ20は、シフタノブ10の内径側に、シフタノブ10と同心となるように配置される円筒状の部材である。
シフタインナ20は、シフト操作装置1が取り付けられる基部となる内装部材に対して、相対回転しないよう取り付けられる。
シフタノブ10は、レンジ選択操作時(シフト操作時)においては、シフタインナ20に対して相対回転する。
【0027】
シフタインナ20は、シフタノブ10の回動可能範囲を規制する機能、及び、ロックピン50A,50B,50Cを径方向に直進可能な状態で保持する機能を備えている。
図8は、第1実施形態のシフト操作装置のシフタノブとシフタインナをシフトロックモータ側から見た図である。
シフタインナ20の内側蓋40側の端部には、外周面から外径側に突出した突起21が形成されている。
【0028】
シフタノブ10の内側蓋40側の端部には、突起21が挿入される凹部11が形成されている。
凹部11は、シフタノブ10の開口端の端縁における内径側の領域を凹ませて形成されている。
凹部11は、シフタノブ10の中心軸回りにおける所定の角度θにわたって円弧状に延在している。
凹部11の両端部は、Pレンジ、及び、Dレンジが選択された状態において、突起21とそれぞれ当接するようになっている。
これにより、シフトロックを行わない状態におけるシフタノブ10の回動可能な角度範囲は、Pレンジに相当する位置からDレンジに相当する位置までの間となるように規制される。
【0029】
シフタインナ20は、ロックピン保持面部22、溝部23、開口24、凹部25等を有する。
ロックピン保持面部22は、ロックピン50A,50B,50Cをシフタノブ10の径方向に直動可能に案内しつつ支持する部分である。
ロックピン保持面部22には、ロックピン50A,50B,50Cを案内する溝部23が形成されている。
溝部23には、ロックピン50A,50B,50Cのガイド突起53が挿入される。
開口24は、シフタインナ20の外周面に形成され、ロックピン50A,50B,50Cの突出部51が挿入される貫通穴である。
凹部25は、シフタインナ20の内周面を、開口24の周辺部で段状に凹ませて形成された部分である。
凹部25は、後述するスプリング60の一方の端部を保持する部分(スプリング座面)である。
【0030】
外側蓋30は、シフタノブ10、シフタインナ20のドライバに対向する側の端部(一例として上端部)に設けられ、シフタノブ10の端部開口を閉塞する部材である。
外側蓋30は、例えば円盤状に形成され、シフタインナ20に固定されている。
外側蓋30の裏面(シフタインナ20側の面)には、シフタインナ20と協働してロックピン50B,50Cを案内する図示しない溝部が形成されている。
【0031】
内側蓋40は、シフタノブ10、シフタインナ20の外側蓋30側とは反対側(一例として下端部)に設けられ、シフタノブ10の端部開口を閉塞する部材である。
内側蓋40は、例えば円盤状に形成され、シフタインナ20、及び、図示しない車両の内装部材(例えば、インストルメントパネル、センターコンソール等)に固定されている。
図1に示すように、内側蓋40には、切欠部41、溝部42が形成されている。
切欠部41は、内側蓋40の外周縁部の一部を内径側に凹ませて形成され、シフタインナ20の突起21の一部が嵌め込まれる部分である。
溝部42は、ロックピン50Aのガイド突起53が挿入され、シフタインナ20の溝部23と協働してロックピン50Aをシフタノブ10の径方向に直進案内するものである。
以上説明したシフタインナ20、外側蓋30、内側蓋40は、本発明の固定部材として機能する。
【0032】
ロックピン50A,50B,50Cは、シフタインナ20等によってシフタノブ10の径方向に相対変位可能に支持され、その突出部51が溝部110,120,130に挿入され、端面111,121,131と当接し、係合することによって、シフタノブ10の回動規制を行う係合部材である。
ロックピン50A,50B,50Cは、突出部51が溝部110,120,130に挿入されて端面111,121,131との係合(回動規制)が可能な係合位置と、溝部110,120,130から退避した退避位置との間で移動する。
図9は、第1実施形態のシフト操作装置のロックピン周辺部の構成を示す図である。
図9(a)は、シフタノブ10の中心軸の方向から見た図である。
図9(b)は、図9(a)のb-b部矢視断面図である。
以下、ロックピン50Aの周辺部の構造について説明するが、ロックピン50B,50C及びその周辺部も、ロックピン50Aと実質的に同様の構成を有する。
なお、図9においては、理解を容易とするために、ロックピン50B,50Cは図示を省略している。
【0033】
ロックピン50Aは、突出部51、カムフォロワ部52、ガイド突起53を有する。
突出部51は、シフトロックを作動させる際に、開口24からシフタインナ20の外径側に突き出され、溝部110又は溝部120内に挿入される突起状の部分である。
突出部51は、溝部110,120に挿入された状態で端面111,121に当接することにより、シフタノブ10の回動を規制する機能を有する。
【0034】
カムフォロワ部52は、突出部51のシフタノブ10の内径側の端部に設けられ、ロックロータアウタ70のカム72等と当接、摺動し、押圧される部分である。
カムフォロワ部52のカム72等との当接面は、シフタノブ10の径方向に対して傾斜した斜面として形成されている。
カムフォロワ部52のカム72等との当接面は、シフタノブ10の回動中心方向における外側蓋30側(ユーザ側)から見たときに、時計回り方向側の端部が、反時計回り方向側の端部に対して、シフタノブ10の外径側に位置する方向に傾斜している。
【0035】
ガイド突起53は、シフタノブ10の中心軸の方向におけるカムフォロワ部52の両端面から突出して形成されている。
ガイド突起53は、シフタインナ20の溝部23、内側蓋40の溝部42に挿入され、各溝部と協働してロックピン50Aをシフタノブ10の径方向に直進案内するものである。
なお、ロックピン50B,50Cの場合には、ガイド突起53は、シフタインナ20の溝部23、及び、外側蓋30に形成される図示しない溝部に挿入される。
【0036】
スプリング60は、シフタインナ20に対してロックピン50A,50B,50Cを内径側に付勢するばね要素(一例として圧縮コイルばね)である。
図9に示すように、スプリング60は、ロックピン50Aの突出部51が巻径内側に挿入された状態で、シフタインナ20とロックピン50Aとの間に配置される。
スプリング60の一方(シフタノブ10の内径側)の端部は、ロックピン50Aのカムフォロワ部52におけるシフタノブ10の外径側に向いた面部と当接している。
スプリング60の他方の端部は、シフタインナ20の内周面に形成された凹部25と当接している。
なお、スプリング60は圧縮コイルばねに限らず、例えば板ばねやその他の付勢手段を適宜利用することができる。
【0037】
ロックロータアウタ70は、ロックピン50A,50B,50Cをシフタノブ10の外径側に繰り出す複数のカムが形成された部材である。
ロックロータアウタ70の本体部は、シフタノブ10と同心となる円筒状に形成されている。
ロックロータアウタ70には、突出部71、カム72,73,74,75,76が形成されている。
【0038】
突出部71は、ロックロータインナ80の凹部81と系統してロックロータインナ80との間で回転力を伝達するとともに、ロックロータアウタ70とロックロータインナ80との間に掛け渡されるスプリング91,92がそれぞれ係止される部分である。
突出部71は、本体部の内周面から突出した突条として形成され、例えば、本体部の周方向に分散して二か所に形成されている。
【0039】
カム72,73,74,75,76は、本体部の外周面から外径側に張り出して形成され、本体部の中心軸(シフタノブ10の中心軸と同心)の方向から見たときに三角形状の平面形を有する平面カムである。
カム72,73,74,75,76の突端部は、円筒外面状の凸曲面に形成されている。
カム72,73は、ロックピン50Aを外径側に繰り出すことにより、ロックピン50Aの突出部が溝部110,120内に挿入され、端面111,121と係合可能な係合位置とするものである。
カム72,73は、シフタノブ10の回動中心方向における位置が同一であって、かつ、シフタノブ10の周方向に分散した位置に配置されている。
【0040】
カム74,75,76は、ロックピン50B,50Cを外径側に繰り出すことにより、ロックピン50B,50Cが溝部130内に挿入され、端面131と係合可能な係合位置とするものである。
カム74,75,76は、シフタノブ10の径方向から見たときに、シフタノブ10の中心軸の方向に沿った位置が同一となるように配置されている。
カム74,75,76は、ロックロータアウタ70及びシフタノブ10の中心軸の方向から見たときに、周方向に分散して放射状に配置されている。
カム73とカム75とは、ロックロータアウタ70及びシフタノブ10の中心軸の方向から見た位置が一致するよう配置されている。
【0041】
ロックロータインナ80は、シフトロックモータ150の出力軸に固定されるとともに、ロックロータアウタ70に回転力を伝達する部材である。
図10は、各実施形態のロックロータアウタにロックロータインナが組み込まれた状態をシフタノブの中心軸の方向から見た図である。
図11は、各実施形態のロックロータアウタにロックロータインナが組み込まれた状態を示す斜視図である。
ロックロータインナ80は、外周面に下記する凹部81が形成された略円柱状に形成され、ロックロータアウタ70の本体部の内径側に挿入される。
ロックロータインナ80は、凹部81、突起82,83等を有して構成されている。
凹部81は、ロックロータインナ80の外周面の一部を凹ませて形成され、ロックロータアウタ70の突出部71と係合し、ロックロータアウタ70とロックロータインナ80との間で回転力を伝達する部分である。
凹部81は、シフトロックモータ150によりロックロータインナ80が回転駆動された場合に、回転力をロックロータアウタ70に伝達する機能を有する。
突起82,83は、ロックロータインナ80の端面から突出し、スプリング91,92のロックロータインナ80側の端部が係止されるものである。
スプリング91,92は、ロックロータアウタ70とロックロータインナ80とがシフタノブ10の中心軸回りに相対揺動可能なよう、ロックロータアウタ70とロックロータインナ80とを弾性的に連結するねじりスプリングである。
また、スプリング91,92は、ロックロータアウタ70がロックロータインナ80に対してシフタノブ10の回動中心回りに相対揺動することを許容するとともに、揺動角に応じたばね反力(復元力)を発生する。
図11に示すように、スプリング91,92の一方の端部91a等は、ロックロータインナ80に設けられた突起82,83等に係止され、他方の端部91b等は、ロックロータアウタ70の突出部71に係止されるよう折り曲げられている。
図11ではスプリング91のみ図示するが、スプリング92も実質的に同様に係止される。)
【0042】
シフトロックモータ150は、後述するシフトバイワイヤECU300からの指令に応じて、ロックロータアウタ70及びロックロータインナ80が目標の角度位置となるように回転駆動する電動アクチュエータである。
シフトロックモータ150は、例えば、出力軸の位置制御が可能なステッピングモータを用いることができる。
【0043】
以上説明したシフタノブ10、シフタインナ20、外側蓋30、内側蓋40、ロックピン50A,50B,50C、ロックロータアウタ70、ロックロータインナ80は、例えば樹脂材料をインジェクション成型することにより、それぞれ一体に成型されている。
【0044】
図12は、各実施形態のシフト操作装置を有する変速機の制御システムの構成を模式的に示すブロック図である。
シフト操作装置1には、シフト機構部100、シフタECU200が設けられている。
シフト機構部100は、例えば、シフト操作に関わる機構部品として構成することができる。
シフタECU200は、例えば、CPU等の情報処理部、RAMやROMなどの記憶部、入出力インターフェイス、及び、これらを接続するバス等を有するマイクロコンピュータとして構成することができる。
【0045】
シフト機構部100は、シフタセンサ140、シフトロックモータ150を有する。
シフタセンサ140は、シフタノブ10の基部(一例としてインストルメントパネル等の内装部材)に対する中心軸回りにおける例えば角度位置を検出する角度エンコーダである。
【0046】
シフタECU200は、シフタ入力制御部210、シフトロックモータ駆動制御部220等を有する。
シフタ入力制御部210は、シフタセンサ140の出力信号を処理し、シフトロック制御部310に伝達するものである。
シフトロックモータ駆動制御部220は、シフトロック制御部310の出力信号を処理し、シフトロックモータ150へ伝達するものである。
【0047】
シフトバイワイヤECU300は、シフトロック制御部310等を有する。
シフトロック制御部310は、シフタ入力制御部210から伝達されるレンジ選択操作の状態、図示しない各車両デバイスから伝達される車両の状態、図示しない自動変速機制御ユニットから伝達される自動変速機の状態の少なくとも一つに応じて、シフトロックモータ駆動制御部220に指令を出力するものである。
【0048】
シフトバイワイヤECU300は、シフト操作装置1のシフトロックモータ150を制御し、図示しない車両の走行状態、現在選択されているレンジ等に基づいて、シフタノブ10の回動を所定の範囲内に規制する回動規制を行う。
以下説明する各回動規制は、シフトロックモータ150により、ロックロータアウタ70を例えばドライバ側から見て時計回りに回動させ、カム72乃至76によって各ロックピン50A,50B,50Cを係合位置に推移(溝部に挿入)することによって行われる。
第1実施形態のシフト操作装置1において行われる各種の回動規制について、以下詳細に説明する。
【0049】
図13は、第1実施形態のシフト操作装置のPレンジにおけるP-Rロック状態を示す図である。
ロックピン50Aは、カム72と当接して溝部110内に挿入された係合位置にある。
ロックピン50Aは、端面111と隣接あるいは当接しており、シフタノブ10の時計回り方向への回動(PレンジからRレンジ側への回動)を規制している。
ロックピン50Bは、いずれのカムとも接触せず、シフタノブ10の内径側に引き込まれた退避位置にある。
ロックピン50Cは、カム74と当接して溝部130内に挿入された係合位置にあるが、端面131とは離間しており、この状態では回動規制機能は発揮していない。
PレンジにおけるP-Rロック状態は、例えば、車速が所定値以下(典型的にはゼロ)でありかつブレーキ操作が行われた状態、かつ、車両電源が通電状態(イグニッションオン)以外で、PレンジからRレンジへシフトされることを防止するために用いられる。
【0050】
図14は、第1実施形態のシフト操作装置のNレンジにおけるNロック状態を示す図である。
ロックピン50Aは、カム72と当接して溝部120内に挿入された係合位置にある。
ロックピン50Aは、端面121と隣接あるいは当接しており、シフタノブ10の時計回り方向への回動(NレンジからDレンジ側への回動)を規制している。
ロックピン50Bは、いずれのカムとも接触せず、シフタノブ10の内径側に引き込まれた退避位置にある。
ロックピン50Cは、カム74と当接して溝部130内に挿入された係合位置にある。
ロックピン50Cは、端面131と隣接あるいは当接しており、シフタノブ10の反時計回り方向への回動(NレンジからRレンジ側への回動)を規制している。
NレンジにおけるNロック状態は、例えば、車速が所定値以下(典型的にはゼロ)でありかつ車両電源が通電状態以外で、Nレンジから他のレンジへシフトされることを防止するために用いられる。
【0051】
図15は、第1実施形態のシフト操作装置のDレンジにおけるN-Rロック状態を示す図である。
ロックピン50Aは、いずれのカムとも接触せず、シフタノブ10の内径側に引き込まれた退避位置にある。
ロックピン50Bは、いずれのカムとも接触せず、シフタノブ10の内径側に引き込まれた退避位置にある。
ロックピン50Cは、カム76と当接して溝部130内に挿入された係合位置にあるが、端面131とは離間しており、この状態では回動規制機能は発揮していない。
ロックピン50Cは、シフタノブ10が反時計回り方向に回動し、DレンジからNレンジまで推移した際に端面131と当接し、シフタノブ10のNレンジからRレンジへの回動を規制するようになっている。
【0052】
図16は、第1実施形態のシフト操作装置のNレンジにおけるN-Rロック状態を示す図である。
ロックピン50Aは、いずれのカムとも接触せず、シフタノブ10の内径側に引き込まれた退避位置にある。
ロックピン50Bは、いずれのカムとも接触せず、シフタノブ10の内径側に引き込まれた退避位置にある。
ロックピン50Cは、カム76と当接して溝部130内に挿入された係合位置にある。
ロックピン50Cは、端面131と隣接あるいは当接しており、シフタノブ10の反時計回り方向への回動(NレンジからRレンジ側への回動)を規制している。
Dレンジ又はNレンジにおけるN-Rロック状態は、例えば、前進側への車速が発生した状態でRレンジへのシフトを禁止するために用いられる。
【0053】
図17は、第1実施形態のシフト操作装置のRレンジにおけるR-Pロック状態を示す図である。
ロックピン50Aは、カム73と当接して溝部120内に挿入された係合位置にあるが、端面121とは離間しており、この状態では回動規制機能は発揮していない。
ロックピン50Bは、カム75と当接して溝部130内に挿入された係合位置にある。
ロックピン50Bは、端面131と隣接あるいは当接しており、シフタノブ10の反時計回り方向への回動(RレンジからPレンジ側への回動)を規制している。
ロックピン50Cは、いずれのカムとも接触せず、シフタノブ10の内径側に引き込まれた退避位置にある。
【0054】
図18は、第1実施形態のシフト操作装置のNレンジにおけるN-Dロック状態を示す図である。
ロックピン50Aは、カム73と当接して溝部120内に挿入された係合位置にある。
ロックピン50Aは、端面121と隣接あるいは当接しており、シフタノブ10の時計回り方向への回動(NレンジからDレンジ側への回動)を規制している。
ロックピン50Bは、カム75と当接して溝部130内に挿入された係合位置にあるが、端面131とは離間しており、この状態では回動規制機能は発揮していない。
ロックピン50Bは、シフタノブ10が反時計回り方向に回動し、NレンジからRレンジまで推移した際に端面131と当接し、シフタノブ10のRレンジからPレンジへの回動を規制するようになっている。
ロックピン50Cは、いずれのカムとも接触せず、シフタノブ10の内径側に引き込まれた退避位置にある。
RレンジにおけるR-Pロック、NレンジにおけるN-Dロックは、例えば、後進方向への車速が発生した状態でのPレンジ、Dレンジへのシフトを禁止するために用いられる。
【0055】
また、各ロックピン50A,50B,50Cが対応する溝部110,120,130に挿入された状態においても、スロープ面112,122,132を乗り上がる方向(溝深さが徐々に浅くなる方向)の回動は許容されるようになっている。
以下、このときの動作について説明する。
図19は、第1実施形態のシフト操作装置におけるロックピンのスロープ面通過時の状態を示す図である。
図19においては、カム73等は図示を省略している。
図19(a)、図19(b)、図19(c)は、ロックピン50Aが溝部110内におけるスロープ面112に隣接する領域にある状態から、シフタノブ10を反時計回り方向に回動させた際の各部材の状態を時系列に順次示したものである。
【0056】
図19(a)に示す状態から、図19(b)に示すようにロックピン50Aがスロープ面112に当接した状態に推移すると、シフタノブ10の回動に応じて溝部110の溝深さが徐々に減少することにより、ロックピン50Aはシフタノブ10の内径側に押圧される。
このとき、カムフォロワ部52がカム72の突端部を内径側に押圧すると、接触面が径方向に対して傾斜していることから、ロックロータアウタ70を時計回り方向に回動させるモーメントが発生する。
このとき図示しないロックロータインナ80が固定されている場合であっても、ロックロータアウタ70はスプリング91,92を介して弾性的にロックロータインナ80と連結されていることから、ロックロータアウタ70はロックロータインナ80に対して時計回り方向に揺動し、カム72が退避してロックピン50Aの内径側への変位が許容される。
【0057】
図19(b)に示す状態から図19(c)に示す状態に推移し、ロックピン50Aが溝部120に挿入可能な状態になると、ロックロータアウタ70はロックロータインナ80に対する相対回動前の角度位置(位相)に復帰し、ロックピン50Aは再び外径側に繰り出されて溝部120内に挿入される。
以上説明した動作により、第1実施形態のシフト操作装置1においては、ロックピン50Aが繰り出されて係合位置にある場合であっても、シフタノブ10を反時計回り方向に回動させることは妨げられないようになっている。
同様に、ロックピン50B,50Cが係合位置にある場合であっても、シフタノブ10を時計回り方向に回動させることは妨げられないようになっている。
【0058】
以上説明したように、第1実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)回動規制を行うロックピン50A,50B,50Cの突出部51を、溝部110,120,130内に挿入した係合位置とした状態であっても、シフタノブ10の中心軸回りにおける角度位置が、突出部51が端面111,121,131に突き当たって当接し、係合した状態以外での角度範囲内ではシフタノブ10の回動を妨げることがなく、シフタノブ10が所定の角度位置にあるときのみ回動規制を行うことができる。
また、ロックピン50A,50B,50Cの係合位置、退避位置を、車両の状態に応じて制御されるシフトロックモータ150によって推移させることにより、このような回動規制を所定の車両状態等が発生した場合にのみ選択的に行うことができる。
(2)溝部110,120,130の端面111,121,131を、ロックピン50A,50B,50Cの突出部51と係合する被係合部とすることにより、簡単な構成により確実に、ロックピン50A,50B,50Cと端面111,121,131との係合による回動規制を行うことができる。
(3)溝部110,120と溝部130とを並行に配列し、それぞれロックピン50A及びロックピン50B,50Cを設け、個々の溝部の端面111,121,131に異なった回動防止機能を割り当てることにより、回動規制のバリエーションの設定自由度を高めることができる。
(4)シフタノブ10の内径側に設けられたロックロータアウタ70、ロックロータインナ80、及び、これらを駆動するシフトロックモータ150によって、カムフォロワ部52を有するロックピン50A,50B,50Cを駆動することにより、主要部分をシフタノブ10の内径側に収容可能な簡単かつコンパクトな構成により確実にロックピン50A,50B,50Cを駆動することができる。
(5)溝部110,120,130の端面111,121,131側とは反対側の端部にスロープ面112,122,132を設け、ロックピン50A,50B,50Cのカムフォロワ部52のカム72乃至76との当接面をシフタノブ10の径方向に対して傾斜した斜面とし、ロックロータアウタ70とロックロータインナ80とをスプリング91,92により相対回動可能に弾性的に接続したことにより、シフタノブ10を回動させてロックピン50A,50B,50Cがスロープ面112,122,132を通過する際に、カム72乃至76を変位させてロックピン50A,50B,50Cを溝部110,120,130から退避させることにより、カム72乃至76がスロープ面112,122,132に乗り上げる方向(徐々に溝深さが減少する方向)の回動を妨げることがない。
これにより、回動規制のバリエーションの設定自由度を高めることができる。
【0059】
<第2実施形態>
次に、本発明を適用したシフト操作装置の第2実施形態について説明する。
以下説明する各実施形態において、上述した第1実施形態と共通する箇所には同じ符号を付して説明を省略し、主に相違点について説明する。
図20は、第2実施形態のシフト操作装置の断面図(第1実施形態の図2に相当する断面を示す図)である。
図20に示すように、第2実施形態においては、シフタノブ10の中心軸の方向における一か所にのみ、溝部110,120、及び、ロックピン50Aを設けている。
必要とされる回動規制のバリエーションが、例えばPレンジにおけるP-Rロック、NレンジにおけるN-Dロックのみであるなど比較的少ない場合には、このような第1実施形態に対して簡素化された構成であっても実現することが可能である。
以上説明したように、第2実施形態においても、上述した第1実施形態の効果と同様の効果((3)項に記載したものを除く)を得ることができる。
【0060】
<第3実施形態>
次に、本発明を適用したシフト操作装置の第3実施形態について説明する。
図21は、本発明を適用したシフト操作装置の第3実施形態におけるロックピンを示す図である。
図21(a)は、ロックピン50Dを、シフタノブ10の中心軸の方向から見た状態を示し、図21(b)は図21(a)のb-b部矢視図を示している。
図21(c)は、ロックピン50Eを、シフタノブ10の径方向から見た状態を示し、図21(d)は、図21(c)のd-d部矢視図を示している。
第3実施形態のロックピン50Dは、第1実施形態、第2実施形態のロックピン50Aに置換して設けることができる。
第3実施形態のロックピン50Eは、第1実施形態のロックピン50B,50Cに置換して設けることができる。
【0061】
第3実施形態のロックピン50Dは、第1実施形態、第2実施形態のロックピン50Aにおける一対のガイド突起53のうち一方に代えて、ローラ54を設けたものである。
第3実施形態のロックピン50Eは、第1実施形態のロックピン50B,50Cにおける一対のガイド突起53のうち一方に代えて、ローラ54を設けたものである。
なお、ローラ54は、ガイド突起53の両方を置換して一対設けることもできる。
ローラ54は、円柱状に形成され、外周面の一部がロックピン50D,50Eの本体部から突出した状態で、ロックピン50D,50Eに対してローラ54の中心軸回りに回動可能に支持されている。
ローラ54の中心軸の方向は、ロックピン50D,50Eの直進案内方向(シフタノブ10の径方向)と直交するように配置されている。
ローラ54は、例えば、シフタインナ20、外側蓋30、内側蓋40の対向する面部に沿って転動し、ロックピン50D,50Eをシフタノブ10の径方向に沿って直進案内する機能を有する。
以上説明した第3実施形態によれば、シフタインナ20、外側蓋30、内側蓋40にガイド突起53を案内するための溝部を形成する必要がなく、これらの部品の構成を簡素化することができる。
【0062】
(変形例)
本発明は、以上説明した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。
(1)シフト操作装置、変速機、変速制御装置、車両等の構成は、上述した実施形態に限定されず、適宜変更することが可能である。
例えば、シフト操作装置を構成する各部材の形状、構造、材質、配置、数量、製法などは、特に限定されず適宜変更することができる。
(2)実施形態において、変速機は一例としてチェーン式のCVT(無段変速機)であったが、本発明のシフト操作装置はこれに限らず、ベルト式、トロイダル式、電気式などの他種のCVTや、プラネタリギヤセット、平行軸ギヤセット等を有するステップAT、DCT、AMTなど各種自動変速機のレンジ選択にも適用することができる。
また、電動モータのみを走行用動力源とする電動車両(電気自動車(ピュアEV)、燃料電池車(FCEV)、シリーズハイブリッド車など)の前後進切替、パーキングロック機構の制御などにも適用することができる。
(3)実施形態のシフト操作装置は、例えば、P,R,N,Dの4つのレンジを選択するものであったが、選択対象となるレンジはこれらに限らず、適宜追加あるいは削減することができる。
例えば、駆動装置のフリクションを用いて制動を行うための走行レンジや、ドライバの手動操作による変速を受け付けるマニュアル変速レンジを付加的に設けてもよい。
(4)実施形態における回動規制のバリエーションは一例であって、適宜変更することができる。
この場合、変更された回動規制のバリエーションに応じて、溝部、端面、スロープ部、ロックピン(係合部材)などの構成は適宜変更することができる。
(5)実施形態において、被係合部は溝部の端面として構成されているが、例えば、回動部材に溝を設けず、被係合部を回動部材における係合部材と対向する箇所を張り出させた突起状に形成する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 シフト操作装置 10 シフタノブ
11 凹部
20 シフタインナ 21 突起
22 ロックピン保持面部 23 溝部
24 開口 25 凹部
30 外側蓋
40 内側蓋 41 切欠部
42 溝部
50A,50B,50C,50D,50E ロックピン
51 突出部 52 カムフォロワ部
53 ガイド突起 54 ローラ
60 スプリング
70 ロックロータアウタ 71 突出部
72,73,74,75,76 カム 80 ロックロータインナ
81 凹部 82,83 突起
91,92 スプリング 100 シフト機構部
110 溝部 111 端面
112 スロープ面 112A 浅溝側端部
112B 深溝側端部 120 溝部
121 端面 122 スロープ面
122A 浅溝側端部 122B 深溝側端部
130 溝部 131 端面
132 スロープ面 132A 浅溝側端部
132B 深溝側端部 140 シフタセンサ
150 シフトロックモータ
200 シフタECU 210 シフタ入力制御部
220 シフトロックモータ駆動制御部
300 シフトバイワイヤECU 310 シフトロック制御部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21