(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】回転電機の固定子
(51)【国際特許分類】
H02K 3/24 20060101AFI20240828BHJP
H02K 21/22 20060101ALI20240828BHJP
H02K 9/197 20060101ALI20240828BHJP
【FI】
H02K3/24 J
H02K21/22 M
H02K9/197
(21)【出願番号】P 2020173449
(22)【出願日】2020-10-14
【審査請求日】2023-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】岩野 龍一郎
【審査官】中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-032892(JP,A)
【文献】特開2010-142019(JP,A)
【文献】特開2007-221912(JP,A)
【文献】特開2014-107877(JP,A)
【文献】特開2003-219591(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/00- 3/28
H02K 9/00- 9/28
H02K 21/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のティースを有する固定子コアと、前記複数のティースを巻く複数のコイルとを有する固定子と、前記固定子の外径側に空隙を介して回転自在に配置される回転子と、を備えたアウターロータ型回転電機の固定子であって、
前記複数のコイルの複数のコイルエンド部は、前記固定子コアの端部位置で、前記固定子コアの径方向の内側へ0~90°の折り曲げ角度の範囲で折り曲げられており、
前記複数のコイルエンド部の互いに隣接する前記コイルエンド部の軸方向端部の間の距離は、
前記固定子コアの端部位置における、前記複数のコイルエンド部の互いに隣接する前記コイルエンド部の間の距離より長
く、
前記固定子コアの前記径方向の中央部に位置する前記複数のコイルエンド部の互いに隣接する前記複数のコイルエンド部の前記軸方向端部の間の距離は、
前記固定子コアの前記径方向の両端部側に位置する前記複数のコイルエンド部の互いに隣接する前記複数のコイルエンド部の前記軸方向端部の間の距離より長いことを特徴とする回転電機の固定子。
【請求項2】
請求項1に記載の回転電機の固定子において、
前記複数のコイルエンド部の前記折り曲げ角度は、前記固定子コアの
外径側に位置する前記コイルエンド部より、前記固定子コアの
内径側に位置する前記コイルエンド部の方が大であることを特徴とする回転電機の固定子。
【請求項3】
請求項1に記載の回転電機の固定子において、
前記複数のコイルエンド部は、前記固定子コアの端部位置で、前記固定子コアの径方向内側へ0~90°の折り曲げ角度の範囲で折り曲げられ、前記固定子コアの前記端部位置より、前記複数のコイルエンド部の軸方向端部に近い位置で、前記径方向の外側へ曲げられ、前記固定子コアの軸方向と略平行の方向に延びる ことを特徴とする回転電機の固定子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機の固定子に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車や航空機の分野において、モータはコイルやコアを冷却する必要があり、そのための冷却構造が設けられている。近年は、自動車や航空機の電動化のため、モータの高出力密度化が進められ、さらに冷却性能の向上が求められている。
【0003】
モータの冷却装置として、下記の特許文献1が知られている。特許文献1には、モータのステータの両端部に連通する円環状のオイルジャケットを設けることで、ステータスロット内に軸方向の冷媒流路を形成して、ステータの巻線を直接液冷する技術が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、コイルエンド部に長いものと短いものを組み合わせることで、巻線の重なりを避け、放熱性を高める技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-145302号公報
【文献】特開2020-18093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
回転電機の固定子における巻線の放熱については、以下の課題がある。
【0007】
例えば、アウターロータ型の回転電機の固定子巻線において、占積率の高い平角線を巻線に用いて巻回させると、径方向に隣接する巻線のターン間の隙間は、固定子コアのスロット内においては、例えば薄い絶縁部材により絶縁されている。
【0008】
また、巻線が固定子コアの端部を超えて軸方向(以下の記載においては、回転電機の回転軸の方向を単に「軸方向」と称する)に突出した部分であるコイルエンド部においては、固定子コアの径方向に隣接する巻線のターン間の隙間は、ターン間の絶縁部材に相当する小さな隙間しか空いていない。
【0009】
さらに場合によっては、巻線のターン間の絶縁を、巻線の絶縁被覆のみで確保する場合もあり、この場合には、巻線のターン間に隙間は無い。
【0010】
以上のような巻線の構造の場合、冷媒によりコイルエンド部を直接冷却しようとしても、巻線のターン間の隙間が非常に小さいため、冷媒の粘性により巻線の隙間を流れる冷媒の流速が小さくなり、冷却性能が低下するという問題がある。巻線のターン間に隙間は無い場合は、巻線間に冷媒が流れないため、巻線間は冷却されず、一層巻線温度が高くなり、その冷却をどのようにするかが問題となる。
【0011】
ここで、巻線の熱は、熱伝導により固定子の外径表面側と内径表面側へ逃げていくため、巻線の径方向中心部分は熱が残りやすく、温度が高くなる傾向がある。
【0012】
また、コイルエンド部においても、熱は主に、高速の冷媒が接触するコイルエンド外径側表面とコイルエンド内径側表面から逃げていくため、コイルエンド部の径方向中心部分の温度が高くなる傾向がある。
【0013】
特許文献1に記載の技術では、コイルエンド部を直接冷媒で冷却している点では、冷却効率が高いといえるが、巻線の径方向中心部の温度が高くなるという問題に対する解決策は提示されていない。
【0014】
また、特許文献2に記載の技術では、放熱性を高めるためにコイルエンド部の少なくとも一部の長さを長くする必要がある。巻線の長さが長くなると、巻線の電気抵抗が増加するため銅損(ジュール損失)が増大するという問題がある。
【0015】
本発明の目的は、巻線の長さを増加させることなく、コイルエンド部の径方向中心部の冷却性能を高め、温度を低減することができる巻線構造を有する回転電機の固定子を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、上記目的を達成するため、以下のように構成される。
【0017】
複数のティースを有する固定子コアと、前記複数のティースを巻く複数のコイルとを有する固定子と、前記固定子の外径側に空隙を介して回転自在に配置される回転子と、を備えたアウターロータ型回転電機の固定子であって、前記複数のコイルの複数のコイルエンド部は、前記固定子コアの端部位置で、前記固定子コアの径方向の内側へ0~90°の折り曲げ角度の範囲で折り曲げられており、前記複数のコイルエンド部の互いに隣接する前記コイルエンド部の軸方向端部の間の距離は、前記固定子コアの端部位置における、前記複数のコイルエンド部の互いに隣接する前記コイルエンド部の間の距離より長く、前記固定子コアの前記径方向の中央部に位置する前記複数のコイルエンド部の互いに隣接する前記複数のコイルエンド部の前記軸方向端部の間の距離は、前記固定子コアの前記径方向の両端部側に位置する前記複数のコイルエンド部の互いに隣接する前記複数のコイルエンド部の前記軸方向端部の間の距離より長い。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、巻線の長さを増加させることなく、コイルエンド部の径方向中心部の冷却性能を高め、温度を低減することができる巻線構造を有する回転電機の固定子を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施例1が適用される回転電機の固定子の説明図である。
【
図2】本発明の実施例1に係る回転電機のコイルエンド部の説明図である。
【
図3】本発明の実施例1に係る回転電機の固定子のコイルエンド部を示す図であり、コイルエンド部の折り曲げ角度の大小関係を表す図である。
【
図4】本発明の実施例2に係る回転電機の固定子のコイルエンド部の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を用いて回転電機の固定子の構成および本発明の実施形態を説明する。
【実施例】
【0021】
(実施例1)
(回転電機の固定子の構成)
図1は、実施例1が適用される回転電機の固定子1の説明図である。
図5は、本発明とは異なる例の構成を示し、本発明との比較のための図である。
図5に示す例は、
図1の回転電機の固定子1のコイルエンド部3a、3bに対応する部分の説明図である。
【0022】
図1を参照して、実施例1が適用される回転電機の固定子1を説明し、
図5を参照して、本発明の比較例を説明する。これは、本発明の構成の理解のために、
図5に示した比較例を
図1の説明に続いて説明する。
【0023】
図1に示した例は、回転電機の内径側に固定子1と、この固定子1とエアギャップ(空隙)13を介して外径側に永久磁石6を有する回転子4とを配置した、アウターロータ型の回転電機の例である。
【0024】
回転子4は、図示していないシャフトによって回転される回転軸を有しており、永久磁石6が周方向に複数個配置されている。また、回転子4は、ベアリング7により、回転自在に支持されていて、このベアリング7は冷媒流路を形成する流路形成体9に直接支持されており、流路形成体9がベアリング7の固定部材を兼ねた一体構造となっている。
【0025】
なお、ベアリング7の固定部材が別体であり、ベアリング7と流路形成体9を組み合わせる構造にしてもよい。
【0026】
ティース2は、焼き嵌め等の方法により流路形成体に保持されている後述の固定子コア5の周方向に沿って複数設けられている。また、ティース2には銅線が巻回され、コイル3を形成している。つまり、コイル(巻線)3がティース2を巻く構成となっている。
【0027】
固定子1は、固定子カバー8a、8bを有しており、固定子1の回転軸方向の両端に固定子カバー8a、8bと流路形成体9とティース2とにより区画されている、円環状空洞10a、10bを形成している。
【0028】
回転電機を冷却する冷媒は、車体側の固定子カバー8aに設けられた冷媒入口11から流入し、流路形成体9に設けられた入口流路12から、車外側の円環状空洞10aに流入する。流入した冷媒は、固定子1の周方向に流れつつ、隣り合う複数のティース2同士の間の部分であるスロットにおいて隣接する巻線間へと分流して軸方向へ流れ、車体側の円環状空洞10aへと流入する。車体側の円環状空洞10aへ流入した冷媒は、冷媒出口14により固定子1から排出される。
【0029】
次に、
図5を参照して、本発明の比較例を説明する。なお、
図5は、
図1の固定子1のコイルエンド部3a、3bに対応する部分の断面の拡大図である。ただし、コイルエンド部3bは、コイルエンド部3aと同様な構成であるので、
図5においては、図示を省略している。
【0030】
図5に示すように、ティース2の周りに導線が巻き回されており、巻線(コイル)3が形成されている。また、巻線3の軸方向端部側(
図5の左右方向側)は、固定子コア5の端部より外側に突出したコイルエンド部3a、3bを形成している。
【0031】
図5に示したコイルエンド部3a、3bは、
図1に示した円環状空洞10a、10bに内包され、円環状空洞10a、10b内を周方向に流れる冷媒により直接冷却されている。冷媒は、径方向に隣接するコイルエンド部3a、3bの導体間隙間にも流入するが、隙間が狭いために冷媒の粘性の効果により、流速が低下して、導体表面と冷媒との間の熱伝達率が減少することがある。
【0032】
その結果、コイルエンド部3a、3bの導体間隙間からの放熱量が減少して、冷却性能が低下する。また、
図5に示した例では、巻線3のターン間に絶縁層15を配置した構成を示しているが、導体の被覆のみで絶縁を保たせ、導線のターン間を密着させて巻線3を形成する場合も多い。
【0033】
この場合は、隣接するコイルエンド部3a、3bにおける導体間には隙間が無く、冷媒が接触しないため、コイルエンド部3a、3bにおける導体間の表面は放熱面として働かない。
【0034】
巻線3のターン間に別途絶縁層15がある場合、無い場合のいずれの場合でも、
図5に示した例の構成では、コイルエンド部3a、3bの導体間の表面からは、十分に冷媒へと熱を放熱することができず、冷却性能の悪化を招いている。
【0035】
ここで、コイルエンド部3a、3bの導体間の隙間の径方向中心部において、熱がこもって高温となるという問題が発生する場合がある。前記のように、コイルエンド部3a、3bの導体間隙間では冷媒の材料の粘性によって、冷媒の流速は、コイルエンド部3a、3bの外径側表面、コイルエンド部3a、3bの内径側表面近傍よりも遅くなる。
【0036】
一方、コイル3の熱は、熱伝導により熱が外径側表面と内径側表面側に逃げるため、コイル3の径方向中心部で温度が高くなる傾向がある。
【0037】
これを踏まえると、
図5に示した例における巻線の巻回方法では、コイル3の径方向中心部の放熱を効率よく行うことができない。
【0038】
その結果として、コイル3の径方向中心部の冷却効率が悪くなることで、抵抗値の増加による銅損が起き、コイル3の劣化による短寿命の問題も起こる。本発明はこれを鑑みたものである。
【0039】
図2は本発明の実施例1に係る、回転電機のコイルエンド部3aの説明図である。なお、巻線3を巻回させるための複数のティース2を有する固定子コア5については、従来のものと構成は変わらない。
【0040】
図2に示すように、本実施例1の回転電機の固定子1に形成された巻線3は、
図2の最上に位置する巻線3を除き、コイルエンド部3aの根元付近(固定子コア5の端部位置付近)で、内径側に折り曲げられている。この際、コイルエンド部3aの根元隙間(固定子コア5の端部位置における互いに隣接するコイルエンド部3aの間の距離)L0よりも、コイルエンド部3aの軸方向端部隙間の距離L1、L2、L3の方が大きくなるように形成されている。
【0041】
つまり、複数のコイル3の複数のコイルエンド部3aは、固定子コア5の端部位置で、固定子コア5の径方向の内側へ0~90°の折り曲げ角度の範囲で折り曲げられており、 複数のコイルエンド部3aの互いに隣接するコイルエンド部3aの軸方向端部30AE、30BE、30CE、30DE、30FEの互いの間の距離L1、L2、L3等は、固定子コア5の端部位置における、複数のコイルエンド部3aの互いに隣接するコイルエンド部3aの間の距離L0より長い。
【0042】
コイルエンド部3aを、
図2に示すような構成とすることにより、コイルエンド部3aの隣接する導体間の隙間を、従来技術におけるコイルエンド部隣接導体間の隙間より大きくすることができる。
【0043】
これにより、コイルエンド導体間隙間を流れる冷媒の流速が大きくなり、導体と冷媒間の熱伝達率が増加するので、コイルエンド部3aの冷却性能を向上できる。
【0044】
また、径方向一方端側巻線30Aの軸方向端部30AEと当該径一方端側巻線30Aに隣接する巻線30Bの軸方向端部30BEとの距離L1、及び径方向他方端側巻線30Fの軸方向端部30FEと当該径方向他方向端側巻線30Fに隣接する巻線30Eの軸方向端部30EEとの距離L2よりも、径方向両端側巻線30A及び30F以外の巻線であって、互いに隣接する一組の巻線30C及び30Dの軸方向端部30CEと30DEと距離L3を長くなる構成としている。
【0045】
つまり、固定子コア5の径方向の中央部に位置する複数のコイルエンド部3aの互いに隣接する複数のコイルエンド部3aの軸方向端部間の距離L3は、固定子コア5の径方向の両端部側に位置する複数のコイルエンド部3aの互いに隣接する複数のコイルエンド部3aの軸方向端部間の距離L1及びL2より長い。
【0046】
このような構成とすることにより、径方向両端側巻線30A及び30F以外の巻線であって、互いに隣接する一組の巻線30C及び30Dの軸方向端部30CEと30EEとの間の冷媒の流速は、径方向一方端側巻線30Aの軸方向端部30AEと隣接する巻線30Bの軸方向端部30BEとの間を流れる冷媒の流速及び径方向他方端側巻線30Fの軸方向端部30FEと隣接する巻線30Eの軸方向端部30EEとの間を流れる冷媒の流速より大きくなるので、コイルエンド部3aの径方向中心部の冷却性能を高くすることができる。
【0047】
コイルエンド部3bは、コイルエンド部3aと同様な構成となっているので、図示及び詳細な説明は省略する。
【0048】
上記構成により、コイルエンド部3a、3bの導体間隙間の径方向中心部において、熱がこもって高温となるという問題を解決することができる。
【0049】
なお、本実施例1では巻線(コイル)3を直接冷却する冷媒については特に指定していないが、冷却性能を向上させるためには、気体よりも液体冷媒の方が望ましい。
【0050】
液体冷媒の場合、一般的には油など絶縁性の冷媒が選択される。油は水などより粘性が大きいため、小さな隙間を流れる際の流速の低下が大きい。このため、コイル3を直接液冷する場合に、特に本発明の実施例1の効果が大きい。
【0051】
図3は、本発明の実施例1に係る、回転電機の固定子1のコイルエンド部3aを示す図であり、コイルエンド部3aの折り曲げ角度の大小関係を表す図である。
【0052】
図3に示すように、コイルエンド部3aの導体は、内径側へと折り曲げられている。折り曲げ角度の範囲は0°~90°である。つまり、最上に位置する巻線3は、折曲げ角度は0°であり、最下に位置する巻線3は90°に折り曲げ可能である。
【0053】
ただし、
図3に示した例では、最下に位置する巻線3は90°に折り曲げられてはいない。
【0054】
また、内径側の導体の方が、外径側の導体よりも折り曲げ角度を大きくする。例えば、本実施例1では、外径側の折り曲げ角度θ1よりも、内径側の折り曲げ角度θ2の方が大きい。
【0055】
つまり、複数のコイルエンド部3aの折り曲げ角度は、固定子コア5の外径側に位置するコイルエンド部3aより、固定子コア5の内径側に位置するコイルエンド部3aの方が大である。
【0056】
これにより、コイルエンド部3aの軸方向端部において、隣接するコイルエンド部3aの導体間の間隔を、根元における、隣接する導体間の間隔(本実施例1ではL0)よりも大きくすることができる。
【0057】
これにより、コイルエンド部3aにおける、隣接する導体間隔を従来技術よりも大きくすることができ、この隙間を流れる冷媒の流速が従来技術より大きくなることで、コイルエンド部3aの冷却能力を向上できる。
【0058】
また、
図3に示した構成においても、
図2に示した構成と同様に、径方向両端側巻線30A、30Fに隣接する巻線30B、30Eの軸方向端部との距離L1(30AEと30BEとの距離)、L2(30FEと30EEとの距離)よりも、径方向両端側巻線30A、30F以外の巻線であって互いに隣接する一組の巻線(30Cと30D)の端部同士の距離L3(30CEと30DEとの距離)を長くすることは、作業上容易である。
【0059】
従って、この場合も同様に、コイルエンド部3aの導体間隙間の径方向中心部において、熱がこもって高温となるという問題を解決することができる。
【0060】
(実施例2)
図4は、本発明の実施例2に係る、回転電機の固定子1のコイルエンド部3aの説明図である。
【0061】
図4に示した実施例2においては、固定子コア5の軸方向端部位置で、巻線3の導線を内径側に曲げ、所定の内径位置で導線を外径側へ曲げ戻して、導線の方向を回転電機の軸方向と一致させている。
【0062】
つまり、複数のコイルエンド部3aは、固定子コア5の端部位置で、固定子コア5の径方向内側へ0~90°の折り曲げ角度の範囲で折り曲げられ、固定子コア5の端部位置より、複数のコイルエンド部3aの軸方向端部に近い位置で、径方向の外側へ曲げられ、固定子コア5の軸方向と略平行の方向に延びるように構成されている。
【0063】
このような構成では、コイルエンド部3aを折り曲げる工数が増加する代わりに、コイルエンド部3aの互いに隣接する導線間の間隔が最大になる軸方向距離LLを長くとることができる。
【0064】
本実施例2では、隣接する導線3間の間隔の最大値は、各径方向位置において、距離L1、L2、L3等となる。例えば、コイルエンド部3aの径方向上端の導線3に着目すると、隣接する導線との最大間隔は軸方向端部の距離L1であり、隣接する導線3を外径側に曲げ戻した位置から、軸方向端部までの距離LLに渡って、最大間隔距離L1となっている。
【0065】
このような構成によれば、コイルエンド部3aの互いに隣接する導線3間の距離を、広い範囲で大きくすることができる。従って、冷媒流速が大きい範囲も広くなる。
【0066】
これにより、導線3と冷媒間の熱伝達が高い範囲を拡大できるので、コイルエンド部3aの冷却性能を向上できる。
【0067】
実施例2において、距離L1、L2、L3の長さの関係は、実施例1と同様に、距離L1及びL2より距離L3の方が長い。
【0068】
距離L1、L2、L3の寸法の一例としては、距離L1、L2が約1.0mmであるとすると、距離L3は2.0~3.0mmとすることができる。
【0069】
ただし、距離L1、L2、L3の長さを略同等としてもよい。
【0070】
上述した本発明の実施例1及び実施例2によれば、巻線の長さを増加させることなく、コイルエンド部の径方向中心部の冷却性能を高め、温度を低減することができる巻線構造を有する回転電機の固定子を実現することができる。
【0071】
以上、各実施例はあくまで一例であり、発明の特徴が損なわれない限り、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。例えば、本発明はアウターロータ型の回転電機で実施形態が記載されているが、インナーロータ型の回転電機でも本発明は適用可能である。
【0072】
ただし、本発明をインナーロータ型の回転電機に適用する場合は、巻線3の曲げ方向は、
図2~
図4に示した曲げ方向と逆になる。
【0073】
また、本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0074】
1・・・固定子、2・・・ティース、3・・・巻線(コイル)、3a、3b・・・コイルエンド部、4・・・回転子、5・・・固定子コア、6・・・永久磁石、7・・・ベアリング、8a、8b・・・固定子カバー、9・・・流路形成体、10a、10b・・・円環状空洞、11・・・冷媒入口、12・・・入口流路、13・・・エアギャップ(空隙)、14・・・冷媒出口、30A、30B、30C、30D、30E、30F・・・巻線、30AE、30BE、30CE、30DE、30EE、30FE・・・軸方向端部