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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/00 20060101AFI20240828BHJP
   E02F 9/16 20060101ALI20240828BHJP
【FI】
E02F9/00 Z
E02F9/16 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020182241
(22)【出願日】2020-10-30
(65)【公開番号】P2022072674
(43)【公開日】2022-05-17
【審査請求日】2023-10-24
(73)【特許権者】
【識別番号】398071668
【氏名又は名称】株式会社日立建機ティエラ
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】弁理士法人広和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金井 博
(72)【発明者】
【氏名】川本 純也
(72)【発明者】
【氏名】國領 おさむ
(72)【発明者】
【氏名】山本 大介
(72)【発明者】
【氏名】島田 貴裕
【審査官】山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】実開昭54-062220(JP,U)
【文献】特開2005-213933(JP,A)
【文献】特開2006-193913(JP,A)
【文献】特開2018-053530(JP,A)
【文献】特開平06-002339(JP,A)
【文献】特開2003-336290(JP,A)
【文献】特開平07-179153(JP,A)
【文献】特開2015-140636(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/00 - 9/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走可能な下部走行体と、前記下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体と、前記上部旋回体の前部に回動可能に設けられた作業装置とからなり、
前記上部旋回体は、前部に前記作業装置を支持する支持部を有する旋回フレームと、前記旋回フレーム上に設けられオペレータが着座する運転席と、を備えてなる建設機械において、
前記運転席の前側には、前記旋回フレームの前部から上側に延びる支柱が設けられ、
前記上部旋回体の前部には、前記運転席と前記作業装置との間に位置して前記作業装置を含む給脂箇所にグリースを給脂するためのグリースガンを保持するグリースガンホルダが設けられ
前記グリースガンホルダは、前記支柱に設けられていることを特徴とする建設機械。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械において、
前記支柱は、前記運転席の前側に複本設けられ、
前記グリースガンホルダは、前記作業装置に最も近い前記支柱に設けられていることを特徴とする建設機械。
【請求項3】
請求項1または2に記載の建設機械において、
前記グリースガンホルダは、前記上部旋回体の前面視で前記作業装置に重ならない位置に配置されていることを特徴とする建設機械。
【請求項4】
請求項1または2に記載の建設機械において、
前記上部旋回体には、前記作業装置よりも右側に位置して前記旋回フレーム上に右側カバーが設けられており、
前記グリースガンホルダは、前記上部旋回体の前面視で前記作業装置と前記右側カバーとの間に配置されていることを特徴とする建設機械。
【請求項5】
請求項またはに記載の建設機械において、
前記グリースガンホルダは、前記支柱の前側位置に配置されていることを特徴とする建設機械。
【請求項6】
請求項またはに記載の建設機械において、
前記グリースガンホルダは、前記グリースガンと前記支柱との間に位置して前記支柱に取付けられる背板を有していることを特徴とする建設機械。
【請求項7】
請求項1または2に記載の建設機械において、
前記グリースガンホルダは、前記グリースガンのレバーを前記作業装置から離れた位置に固定するレバー固定部を有していることを特徴とする建設機械。
【請求項8】
請求項1または2に記載の建設機械において、
前記グリースガンホルダは、前側から前記グリースガンが押し込まれることにより当該グリースガンを挟んで保持する挟持部を有し、
前記グリースガンホルダは、前記グリースガンを上側に向け後側に傾けた傾斜姿勢で保持する構成としたことを特徴とする建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば油圧ショベル等の建設機械に関し、特に、給脂作業に用いるグリースガンを備えた建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械の代表例としての油圧ショベルは、自走可能な下部走行体と、下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体と、上部旋回体の前部に回動可能に設けられた作業装置とを備えている。
【0003】
上部旋回体は、前部に作業装置を支持する支持部を有する旋回フレームと、旋回フレーム上に設けられオペレータが着座する運転席とを備えている。上部旋回体には、作業装置を含む給脂箇所にグリースを給脂するためのグリースガンが運転席の左側方のスペースに配置されている(特許文献1)。また、油圧ショベルには、上部旋回体の後側に搭載された熱交換器や油圧ポンプ等をメンテナンスするための側面ドアの内側にグリースガンを配置したものもある(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-21118号公報
【文献】特開2000-309944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の油圧ショベルは、グリースガンを運転席の左側方に配置している。しかし、運転席の左側方位置は、操作レバー装置と左側面カバーとが近い位置に配置されているために大きなスペースを確保するのが難しい。これにより、グリースガンを取出したり、格納したりするのに手間を要してしまう。また、運転席の左側方位置は、主な給脂対象となる作業装置から離れている。これらのことから、グリースガンを用いた給脂作業の作業効率が悪くなるという問題がある。
【0006】
また、特許文献2の油圧ショベルは、メンテナンス用の側面ドアの内側にグリースガンを配置しているから、グリースガンの有無を確認するためには、側面ドアを開かなくてはならず手間を要してしまう。しかも、特許文献2の油圧ショベルは、特許文献1の油圧ショベルと同様に、グリースガンの保管位置が給脂対象となる作業装置から離れているから、グリースガンを用いた給脂作業の作業効率が悪くなるという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、グリースガンの有無を容易に確認することができると共に、作業装置に対する給脂作業を効率よく行うことができるようにした建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態は、自走可能な下部走行体と、前記下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体と、前記上部旋回体の前部に回動可能に設けられた作業装置とからなり、前記上部旋回体は、前部に前記作業装置を支持する支持部を有する旋回フレームと、前記旋回フレーム上に設けられオペレータが着座する運転席と、を備えてなる建設機械において、前記運転席の前側には、前記旋回フレームの前部から上側に延びる支柱が設けられ、前記上部旋回体の前部には、前記運転席と前記作業装置との間に位置して前記作業装置を含む給脂箇所にグリースを給脂するためのグリースガンを保持するグリースガンホルダが設けられ、前記グリースガンホルダは、前記支柱に設けられている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、グリースガンの有無を容易に確認することができると共に、作業装置に対する給脂作業を効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の実施形態に係る油圧ショベルを示す左面図である。
図2図1に示す油圧ショベルの前面図である。
図3】上部旋回体の前側部分を手摺りの支柱に取付けられたグリースガンホルダ、グリースガンと一緒に示す斜視図である。
図4】手摺り、グリースガンホルダおよびグリースガンを図3中の矢示IV-IV方向から示す断面図である。
図5図4に示す手摺り、グリースガンホルダおよびグリースガンの斜視図である。
図6図4に示す手摺りとグリースガンホルダの斜視図である。
図7】手摺りとグリースガンホルダとを分解して示す斜視図である。
図8】本発明の第2の実施形態によるグリースガンホルダを、手摺り、グリースガンと一緒に図5と同様位置から示す斜視図である。
図9図8に示す手摺りとグリースガンホルダの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る建設機械の実施形態を、油圧ショベルに適用した場合を例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
【0012】
図1ないし図7は第1の実施形態を示している。図1図2において、油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3と、上部旋回体3の前部に回動可能に設けられ、土砂の掘削作業等を行う作業装置4とを備えている。
【0013】
作業装置4は、上部旋回体3の車幅方向となる左右方向の中間に位置して後述する旋回フレーム5の前部に回動可能に設けられている。作業装置4は、旋回フレーム5の支持部5Aに左右方向に揺動可能に取付けられたスイングポスト4Aと、第1端がスイングポスト4Aに上下方向に回動可能に取付けられたブーム4Bと、第1端部がブーム4Bの第2端部に回動可能に取付けられたアームと、アームの第2端部に回動可能に取付けられたバケット(いずれも図示せず)と、ブーム4Bを動作させるブームシリンダ4Cと、アームを動作させるアームシリンダ4Dと、バケットを動作させるバケットシリンダ(図示せず)とを含んで構成されている。また、スイングポスト4Aと旋回フレーム5との間には、スイングシリンダ(図示せず)が設けられている。なお、作業装置4は、バケットに換えて他の作業具、例えば、グラップル、ブレーカ等を取付けることもできる。
【0014】
上部旋回体3は、後述の旋回フレーム5、運転席8、右側カバー11、キャノピ12、手摺り13、グリースガンホルダ14を含んで構成されている。
【0015】
旋回フレーム5は、上部旋回体3のベースを構成している。旋回フレーム5の前部には、左右方向の中間部(中央部付近)に位置して前側に突出するように支持部5Aが設けられている。支持部5Aには、作業装置4のスイングポスト4Aが左右方向に揺動可能に支持されている。
【0016】
旋回フレーム5の上側には、後側の運転席台座6と前側のフロア部7とが設けられている。運転席台座6は、旋回フレーム5の後側にステップ状に形成されている。運転席台座6は、後述の運転席8の台座をなすと共に、原動機(図示せず)を上側から覆うカバーを兼ねている。フロア部7は、運転席台座6から旋回フレーム5の前部に亘って設けられている。フロア部7は、例えば運転席8に着座したオペレータが足を乗せる。フロア部7の前部には、後述の手摺り13が設けられている。ここで、運転席台座6とフロア部7は、旋回フレーム5上に固定されることにより、旋回フレーム5の一部を構成している。
【0017】
運転席8は、旋回フレーム5上となる運転席台座6に設けられている。運転席8は、油圧ショベル1を操作するオペレータが座るものである。運転席8の左側と右側には、作業装置4等を操作するための左操作レバー装置9と右操作レバー装置(図示せず)とが配置されている。また、フロア部7の前部には、左右で一対の走行レバーペダル装置10が設けられている。走行レバーペダル装置10は、手動操作または足踏み操作されることにより、下部走行体2を走行させる。さらに、フロア部7の前部には、走行レバーペダル装置10よりも前側の最前部に位置して後述の手摺り13が設けられている。
【0018】
右側カバー11は、運転席台座6とフロア部7の右側に位置して旋回フレーム5上に設けられている。右側カバー11は、作業装置4よりも右側に配置されている。右側カバー11は、例えば、コントロールバルブ、作動油タンク、燃料タンク等(いずれも図示せず)を覆っている。右側カバー11の左面部11Aは、前後方向に延びる垂直面からなり、油圧ショベル1を運転するための運転スペースと右側カバー11内の収容スペースとを仕切っている。
【0019】
キャノピ12は、運転席8を上側から覆っている。キャノピ12は、運転席8の後側から上側に延びた2本の柱12Aによってルーフ12Bを支える2柱式のキャノピとして構成されている。
【0020】
手摺り13は、運転席8の前側となるフロア部7の前部に設けられている。手摺り13は、走行レバーペダル装置10よりも前側、即ち、フロア部7の最前部にフロア部7から上方に延びて設けられている。手摺り13は、例えば、オペレータが地上とフロア部7との間で乗り降りするときや、運転席8から立上ったオペレータが掘削した穴を覗込むときに把持される。
【0021】
手摺り13は、旋回フレーム5の前部となるフロア部7の左前部から上側に延びた左支柱13Aと、旋回フレーム5の前部となるフロア部7の右前部から上側に延びた右支柱13Bと、左支柱13Aの上端と右支柱13Bの上端とに亘って横方向(水平方向)に延びた上横棒13Cと、左支柱13Aの中間位置と右支柱13Bの中間位置とに亘って横方向に延びた下横棒13Dとを含んで構成されている。例えば、左支柱13Aと右支柱13Bと上横棒13Cとは、1本のパイプ材を逆U字状に折り曲げることにより一体的に形成されている。
【0022】
ここで、左支柱13Aと右支柱13Bは、下横棒13Dよりも少し高い位置で屈曲し、この屈曲位置よりも上側が後側(運転席8側)に傾斜している。また、左支柱13Aと右支柱13Bのうち、右支柱13Bが作業装置4に最も近い支柱となっている。この右支柱13Bの傾斜部13B1には、後述のグリースガンホルダ14が取付けられている。
【0023】
次に、本実施の形態の特徴部分であるグリースガンホルダ14の構成について詳細に説明する。
【0024】
グリースガンホルダ14は、上部旋回体3の前部に位置する手摺り13に設けられている。グリースガンホルダ14は、後述するグリースガン21を上下方向に延びた縦姿勢で保持する。グリースガンホルダ14は、運転席8と作業装置4との間に配置されている。この運転席8と作業装置4との間とは、運転席8と作業装置4とを直線的に結んだ場合の間ではなく、上部旋回体3において、運転席8が配置された後側位置と作業装置4が取付けられた前側位置との間の中間位置を示し、この中間位置にグリースガンホルダ14が配置されている。
【0025】
このように、運転席8と作業装置4との間にグリースガンホルダ14を配置した場合、運転席8に着座したオペレータは、グリースガンホルダ14に保持されたグリースガン21を容易に目視で確認できる。また、主な給脂対象となる作業装置4の近くにグリースガン21を配置できる。
【0026】
図3ないし図5に示すように、グリースガンホルダ14は、運転席8の前側に設けられた手摺り13の左支柱13Aと右支柱13Bのうち、作業装置4に最も近い支柱、即ち、右支柱13Bに設けられている。また、図2に示すように、グリースガンホルダ14は、右支柱13Bに設けられることにより、上部旋回体3の前面視で作業装置4に重ならない位置に配置されている。また、グリースガンホルダ14は、上部旋回体3の前面視で作業装置4と右側カバー11(左面部11A)との間に配置されている。さらに、グリースガンホルダ14は、右支柱13Bの前側(作業装置4側)に配置されている。このような位置に配置されたグリースガンホルダ14は、作業装置4に邪魔されることなく、上部旋回体3の前側からグリースガン21の取り出し、格納作業を容易に行うことができる。また、グリースガンホルダ14の清掃作業も容易に行うことができる。
【0027】
図6に示すように、グリースガンホルダ14は、手摺り13の右支柱13Bに取付けられる背板15と、背板15の下部に設けられた受け部16と、受け部16の上方に位置して背板15の上側に設けられた保持部17と、受け部16の上側の近傍に位置して背板15の下側に設けられたレバー固定部18とを含んで構成されている。
【0028】
図7に示すように、背板15は、上下方向(縦方向)に長尺な長方形状の板体として形成されている。背板15には、上側位置と下側位置とにそれぞれ横方向に間隔をもって2個のボルト挿通孔15Aが設けられている。2個のボルト挿通孔15Aの間隔寸法は、右支柱13Bの傾斜部13B1の直径寸法よりも僅かに大きな寸法に設定されている。そして、背板15は、傾斜部13B1に後側(運転席8側)から引っ掛けたUボルト19の先端に形成されたねじ部をボルト挿通孔15Aに挿通し、この先端のねじ部にナット20を螺着することにより、右支柱13Bの前側に取付けられている。
【0029】
ここで、背板15は、グリースガン21と右支柱13Bとの間に配置されることにより、グリースガン21から漏れ出たグリースが運転席8側(フロア部7側)に飛散するのを防止する遮蔽板として機能する。
【0030】
受け部16は、グリースガン21のシリンダ21Aの底部側を受ける部材である。受け部16は、グリースガン21から垂れ落ちたグリースが周囲に広がらないように、周縁から立ち上がった周縁部16Aを有している。また、保持部17は、グリースガン21のシリンダ21Aが挿入される筒体17Aと、筒体17Aを背板15に取付けるブラケット17Bとにより構成されている。
【0031】
レバー固定部18は、受け部16と対面する板体として形成されている。レバー固定部18には、保持部17の筒体17Aと同軸に位置してグリースガン21のシリンダ21Aが挿入される円形開口18Aと、円形開口18Aから径方向の外側に延びた固定溝18Bとが設けられている。固定溝18Bには、グリースガン21のレバー21Cが差し込まれる。この上で、固定溝18Bは、背板15側となる後側に向けて延びている。これにより、固定溝18Bは、差し込まれたグリースガン21のレバー21Cを作業装置4から離れた位置に固定することができる。
【0032】
グリースガン21は、作業装置4等の給脂部位にグリースを給脂するものである。図4図5に示すように、グリースガン21は、内部にグリースが収容される円筒状のシリンダ21Aと、シリンダ21Aの先端部に設けられグリースを給脂対象に注入する注入ノズル21Bと、シリンダ21Aに設けられ当該シリンダ21Aに収容されたグリースを注入ノズル21B側に押出すレバー21Cとにより構成されている。ここで、レバー21Cは、シリンダ21Aの先端側に支点を有し、この支点を中心としてシリンダ21Aに接近、離間するように回動される。
【0033】
そして、作業装置4等の給脂部位にグリースを給脂する場合には、作業者は、注入ノズル21Bの先端部を給脂対象のグリスニップル(図示せず)に押し当て、レバー21Cをシリンダ21A側に回動させる。これにより、グリースガン21は、注入ノズル21Bの先端部からグリスニップルを介してグリースを給脂部位に供給することができる。
【0034】
次に、給脂作業後にグリースガン21を格納する場合には、作業者は、レバー21Cをシリンダ21A側に接近させた状態で、シリンダ21Aを保持部17の筒体17A、レバー固定部18の円形開口18Aに挿入し、シリンダ21Aの底部を受け部16に当接させる。このときに、上部旋回体3の前側からグリースガン21を取り扱うときに、多数を占める右利きの作業者がレバー21Cを扱い易いように、レバー21Cは、上部旋回体3の左側に配置されている。この上で、作業者は、レバー21Cを作業装置4から離れた後側に配置し、この状態でレバー固定部18の固定溝18Bに挿入する。これにより、グリースガン21をグリースガンホルダ14に格納することができる。
【0035】
また、グリースガンホルダ14に格納されたグリースガン21は、注入ノズル21Bの先端が上側となる縦置き状態でグリースガンホルダ14に保持されているから、注入ノズル21B内の残存したグリースが漏れ難くなっている。
【0036】
本実施形態による油圧ショベル1は、上述の如き構成を有するもので、次に、油圧ショベル1の動作について説明する。
【0037】
上部旋回体3の運転席8に座ったオペレータは、走行レバーペダル装置10を操作することにより、下部走行体2を前進または後退させることができる。一方、オペレータは、左操作レバー装置9と右操作レバー装置を操作することにより、作業装置4等を動作させて土砂の掘削作業等を行うことができる。
【0038】
かくして、本実施形態によれば、上部旋回体3の前部には、オペレータが着座する運転席8と上部旋回体3の前部に設けられた作業装置4との間に位置して、作業装置4を含む給脂箇所にグリースを給脂するためのグリースガン21を保持するグリースガンホルダ14が設けられている。
【0039】
従って、運転席8と作業装置4との間にグリースガンホルダ14を配置したことにより、運転席8に着座したオペレータは、グリースガンホルダ14を視界に捉えることができ、グリースガンホルダ14にグリースガン21が保持されているか否かを容易に目視で確認することができる。また、主な給脂対象となる作業装置4の近くにグリースガン21を配置することができる。
【0040】
この結果、グリースガン21の有無を容易に確認することができ、始業点検等の作業性を向上することができる。また、グリースガンホルダ14からグリースガン21を取り出して直ぐに作業装置4に給脂を行うことができ、給脂作業時の作業性も向上することができる。
【0041】
グリースガンホルダ14は、作業装置4に最も近い手摺り13の右支柱13Bに設けられている。これによっても、作業装置4に対する給脂作業時の作業性を向上することができる。
【0042】
グリースガンホルダ14は、上部旋回体3の前面視で作業装置4に重ならない位置に配置されている。また、グリースガンホルダ14は、上部旋回体3の前面視で作業装置4と右側カバー11との間に配置されている。さらに、グリースガンホルダ14は、右支柱13Bの前側(作業装置4側)に配置されている。従って、このような位置に配置されたグリースガンホルダ14に対し、作業者は、作業装置4に邪魔されることなく、上部旋回体3の前側から容易にグリースガン21を取り出したり、格納したりすることができる。また、グリースガンホルダ14の清掃作業も容易に行うことができる。
【0043】
グリースガンホルダ14は、グリースガン21と右支柱と13Bの間に位置して右支柱13Bに取付けられる背板15を有している。これにより、背板15は、グリースガン21から漏れ出たグリースが運転席8側のフロア部7、走行レバーペダル装置10等に飛散するのを防止することができ、フロア部7等を清浄に保つことができる。
【0044】
さらに、グリースガンホルダ14は、グリースガン21のレバー21Cを作業装置4から離れた位置に固定するレバー固定部18の固定溝18Bを有している。従って、グリースガンホルダ14にグリースガン21を格納した状態では、固定溝18Bによってレバー21Cを作業装置4から離れた位置に固定することができる。これにより、例えば、作業装置4に設けられた油圧ホースがレバー21Cに干渉する事態を未然に防ぐことができる。
【0045】
次に、図8および図9は本発明の第2の実施形態を示している。第2の実施形態の特徴は、グリースガンホルダは、前側からグリースガンが押し込まれることにより当該グリースガンを挟んで保持する挟持部を有し、グリースガンホルダは、グリースガンを上側に向け後側に傾けた傾斜姿勢で保持する構成としたことにある。なお、第2の実施形態では、前述した第1の実施形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0046】
図8において、第2の実施形態によるグリースガンホルダ31は、第1の実施形態によるグリースガンホルダ14と同様に、ボルト挿通孔15Aを有する背板15、周縁部16Aを有する受け部16、円形開口18Aと固定溝18Bを有するレバー固定部18を備えている。しかし、第2の実施形態によるグリースガンホルダ31は、保持部32がグリースガン21のシリンダ21Aを前側から差し込む構造になっている点で、第1の実施形態によるグリースガンホルダ14と相違している。
【0047】
図9に示すように、第2の実施形態による保持部32は、ばね性をもった鋼板をU字形状に折り曲げることにより形成され、グリースガン21のシリンダ21Aに沿って湾曲した挟持部32Aでシリンダ21Aを挟む構造になっている。これにより、保持部32は、前側から各挟持部32A間にシリンダ21Aが押し込まれたときに、互いに近づく方向にばね性をもった各挟持部32Aによってシリンダ21Aを保持することができる。一方で、シリンダ21Aを各挟持部32Aのばね性に抗して前側に引っ張ることで、各挟持部32Aを弾性変形させてシリンダ21Aを取外せるようになっている。
【0048】
ここで、グリースガンホルダ31は、屈曲して後側に傾斜した右支柱13Bの傾斜部13B1に取付けられているから、上側に向け後側に傾いている。従って、グリースガンホルダ31は、グリースガン21を上側に向け後側に傾けた傾斜姿勢で保持している。
【0049】
かくして、このように構成された第2の実施形態においても、前述した第1の実施形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、第2の実施形態によれば、グリースガンホルダ31は、前側からグリースガン21のシリンダ21Aが押し込まれることにより当該グリースガン21のシリンダ21Aを挟んで保持する保持部32の挟持部32Aを有している。この上で、グリースガンホルダ31は、グリースガン21を上側に向け後側に傾けた傾斜姿勢で保持する構成としている。
【0050】
従って、グリースガンホルダ31は、保持部32からグリースガン21のシリンダ21Aを取外す方向とは逆の後方向にグリースガン21の重心を配置できる。これにより、グリースガンホルダ31は、走行時や作業時の振動等によってグリースガン21が前側に移動するのを抑えることができ、グリースガン21を安定的に保持することができる。
【0051】
なお、第1の実施形態では、手摺り13の右支柱13Bにグリースガンホルダ14を取付けた場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、ルーフの前側を支持するキャノピの右前柱にグリースガンホルダを取付ける構成としてもよい。また、旋回フレームの前部に専用の支柱を設け、この支柱にグリースガンホルダを取付ける構成としてもよい。これらの構成は、第2の実施形態にも同様に適用することができる。
【0052】
また、第1の実施形態では、手摺り13の左支柱13Aと右支柱13Bのうち、作業装置4に最も近い右支柱13Bにグリースガンホルダ14を取付けた場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、3柱式のキャノピの前側に位置する1本の右前支柱、専用に設けた1本の支柱に、グリースガンホルダを取付ける構成としてもよい。これらの構成は、第2の実施形態にも同様に適用することができる。
【0053】
さらに、各実施形態では、クローラ式の下部走行体2を備えた油圧ショベル1を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えばホイール式の下部走行体を備えた油圧ショベルに適用してもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 油圧ショベル(建設機械)
2 下部走行体
3 上部旋回体
4 作業装置
5 旋回フレーム
5A 支持部
8 運転席
11 右側カバー
13 手摺り
13A 左支柱(支柱)
13B 右支柱(支柱)
13B1 傾斜部
14,31 グリースガンホルダ
15 背板
17,32 保持部
18 レバー固定部
18B 固定溝
21 グリースガン
21C レバー
32A 挟持部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9