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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20240828BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020189578
(22)【出願日】2020-11-13
(65)【公開番号】P2022078707
(43)【公開日】2022-05-25
【審査請求日】2023-07-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅井 亨太
(72)【発明者】
【氏名】徳山 健
【審査官】安食 泰秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-195216(JP,A)
【文献】国際公開第2016/170910(WO,A1)
【文献】特開2008-198750(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワー半導体素子と、前記パワー半導体素子を間に挟んで前記パワー半導体素子のエミッタとコレクタにそれぞれ接続される複数の導体部と、をそれぞれ有する第1及び第2パワー回路部と、
前記第1及び第2パワー回路部を収納し、かつ冷媒を流す流路形成体と、を備え、
前記第1及び第2パワー回路部は、前記冷媒を通すための貫通孔をそれぞれ有し、かつ互いに積層方向に重ねて配置され、
前記第1パワー回路部の前記エミッタ側の前記導体部は、前記第2パワー回路部の前記コレクタ側の前記導体部と対向して配置され、
前記第1パワー回路部の前記エミッタ側の前記導体部と前記第2パワー回路部の前記コレクタ側の前記導体部とは、前記冷媒と接触している複数の導電性フィンにより電気的に接続され
前記複数の導電性フィンは、前記第1パワー回路部の前記貫通孔から前記第2パワー回路部の前記貫通孔に向かって流通する前記冷媒に接触する
電力変換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電力変換装置であって、
前記パワー半導体素子は、IGBTとダイオードで構成され、前記第1パワー回路部のIGBTが前記第2パワー回路部のダイオードに対向し、前記第1パワー回路部のダイオードが前記第2パワー回路部のIGBTに対向する配置である
電力変換装置。
【請求項3】
請求項1に記載の電力変換装置であって、
前記流路形成体は、前記第1パワー回路部の上面に流路を形成する上面流路形成体と、前記第2パワー回路部の下面に流路を形成する下面流路形成体と、前記第1及び第2パワー回路部の間に流路を形成する中間流路形成体と、で構成され
前記第1パワー回路部の前記エミッタ側の前記導体部と前記第2パワー回路部の前記コレクタ側の前記導体部とは、前記中間流路形成体により形成された前記流路の途中に配置された前記複数の導電性フィンにより接続されている
電力変換装置。
【請求項4】
請求項1に記載の電力変換装置であって、
前記第1及び第2パワー回路部は、前記導体部に電気的に接続される導体層を備えた第1基板と第2基板にそれぞれ搭載される
電力変換装置。
【請求項5】
請求項4に記載の電力変換装置であって、
前記第1基板及び前記第2基板は、同一の形状で構成される
電力変換装置。
【請求項6】
請求項5に記載の電力変換装置であって、
前記第1基板及び前記第2基板の導体層は、互いに対向して配置され、前記流路形成体の外部に配置されるコンデンサの正極端子及び負極端子とそれぞれ接続される
電力変換装置。
【請求項7】
請求項3に記載の電力変換装置であって、
前記上面流路形成体と前記下面流路形成体とのそれぞれの内部の流路は、前記中間流路形成体の内部の流路を介して、互いに導通している
電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電力変換装置が変換する電力量の増大傾向に対して、自動車全体では小型化や軽量化の需要があるため、電力変換装置の大型化や重量の増加を抑えつつ、装置の出力向上のための技術改善が日々成されている。また、車載用の電力変換装置は、産業用のものなどと比較すると温度変化の大きい環境で使用されるため、高温の環境下でも高い信頼性を維持できる装置が要求されている。
【0003】
さて、電力変換装置は、電力変換を行う際に、インバータ回路の上下アームを構成する半導体モジュールが遮断状態と導通状態を繰り返す、スイッチング動作が必要になる。この時、上下アームを通して流れる過渡電流が、配線の寄生インダクタンスの影響を受けてサージ電圧の原因となる。これによって、半導体モジュールの損失が増大し、内部に搭載されているチップの温度が上昇する。この温度上昇の原因となるインダクタンスの低減と温度上昇を抑える冷却性能の向上とを両立させることが、高い信頼性の電力変換装置にとって重要な課題となる。
【0004】
本願発明の背景技術として、下記の特許文献1が知られている。特許文献1の半導体装置の冷却構造では、出力電極を挟んで互いに対向して配置される2つの半導体素子と、半導体素子に対して出力電極の反対側に配置される放熱器と、が備えられている。この出力電極は、素子実装部と熱輸送部とを含み、素子実装部は、2つの半導体素子に電気的に接続され、導電性材料から形成される。熱輸送部は、素子実装部から放熱器に向けて延設される。このように構成することで、温度上昇の原因となるインダクタンスを低減し、かつ冷却効率の優れた技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2011/064841号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の方法では、複数の入力電極が平行に配置されており、入力電極間で寄生インダクタンスが打ち消されることでスイッチング損失を低減できる。しかし、熱輸送部が絶縁部材を介して放熱器に接続されるため、放熱経路上の絶縁部材の冷却効率を低下させる恐れがある。これを鑑みて、本発明の課題は、放熱経路上の絶縁部材を排除した両面冷却による冷却性能の向上と、スイッチング損失を抑制するインダクタンスの低減と、を両立し、出力増大を図った電力変換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
電力変換装置は、パワー半導体素子と、前記パワー半導体素子を間に挟んで前記パワー半導体素子のエミッタとコレクタにそれぞれ接続される複数の導体部と、をそれぞれ有する第1及び第2パワー回路部と、前記第1及び第2パワー回路部を収納し、かつ冷媒を流す流路形成体と、を備え、前記第1パワー回路部の前記エミッタ側の前記導体部は、前記第2パワー回路部の前記コレクタ側の前記導体部と対向して配置され、前記第1パワー回路部の前記エミッタ側の前記導体部と前記第2パワー回路部の前記コレクタ側の前記導体部とは、前記冷媒と接触している複数の導電性フィンにより接続される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、冷却性能の向上とインダクタンスの低減とを両立し、出力増大を図った電力変換装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る、電力変換装置の断面図。
図2】本発明の一実施形態に係る、第1パワー回路部の基板(下層)の平面図。
図3図2からモールド樹脂を除いた平面図。
図4】パワーモジュールの平面図。
図5】パワーモジュールの斜視図。
図6】パワーモジュールの正面図。
図7】本発明の一実施形態に係る、第2パワー回路部の基板(上層)の平面図。
図8図7からモールド樹脂を除いた平面図。
図9】本発明の一実施形態に係る、電力変換装置の上視図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(本発明の一実施形態)
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。ただし、本発明は下記の実施形態に限定解釈されるものではなく、公知の他の構成要素を組み合わせて本発明の技術思想を実現してもよい。なお、各図において同一要素については同一の符号を記し、重複する説明は省略する。
【0011】
また、図面において示す各構成要素の位置、大きさ、形状、範囲などは、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲などを表していない場合がある。このため、本発明は、必ずしも、図面に開示された位置、大きさ、形状、範囲などに限定されない。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係る、電力変換装置の断面図である。
【0013】
電力変換装置100は、バッテリなどからの直流電力を交流電力に変換して電動機に供給する電力変換装置で、図1では1相分の上アーム回路及び下アーム回路の構成を表している。
【0014】
電力変換装置100は、第1パワー回路部201を備える第1基板3001と、第2パワー回路部202を備える第2基板3002と、電力変換装置100に印加される電圧を平滑化するコンデンサ40と、電力変換装置100全体を冷却する冷媒を流す流路形成体25と、によって構成される。
【0015】
第1パワー回路部201は、パワー半導体素子であるIGBT10を、第1パワー回路側エミッタ導体板221および第1パワー回路側コレクタ導体板211と、はんだ付け等により接続している。同様に、第2パワー回路部202は、パワー半導体素子であるIGBT10を、第2パワー回路側エミッタ導体板222および第2パワー回路側コレクタ導体板212と、はんだ付け等により接続している。
【0016】
第1パワー回路部201および第2パワー回路部202は、IGBT10とエミッタ導体板221(222)とコレクタ導体板211(212)によって構成されている。また、第1パワー回路部201および第2パワー回路部202は、プリント回路基板などの基板30(3001、3002)に設置するために形成されたパワーモジュール組込孔303に設置される。基板30(3001、3002)に設置された第1パワー回路部201および第2パワー回路部202は、モールド樹脂23で密閉固定されている。これにより、複雑な形状のバスバーが不要となり、生産性が向上する。
【0017】
基板30(3001、3002)は、銅材などにより構成される複数の導体層を備え、導体層以外の箇所はガラスエポキシ樹脂などの絶縁部材で構成され、導体がビア302を介して各層に形成される。これにより、導体の断面積が拡大され、インダクタンスを低減できる。
【0018】
図1に示すように、電力変換装置100は、第1パワー回路部201が下層、第2パワー回路部202が上層、の上下2層に構成されており、流路形成体25が、2つのパワー回路部を覆うように形成されている。また、流路形成体25は、上面流路形成体251、下面流路形成体252、中間流路形成体253、の3つの流路形成体によって構成されている。
【0019】
上面流路形成体251は、第2パワー回路部202と第2基板3002と共に、流路を形成している。上面流路形成体251に流れる冷媒は、流路入口26から内部に流入し、貫通孔301aより、中間流路形成体253に連絡して流れている。これにより、第2パワー回路部202と第2基板3002の上面が冷却されている。
【0020】
中間流路形成体253は、第2パワー回路部202および第2基板3002と、第1パワー回路部201および第1基板3001と共に、流路を形成している。中間流路形成体253に流れる冷媒は、上面流路形成体251から貫通孔301aを通って、中間流路形成体253に流入し、貫通孔301bを通って、下面流路形成体252に連絡して流れている。これにより、第2パワー回路部202および第2基板3002の下面と、第1パワー回路部201および第1基板3001の上面とが冷却されている。
【0021】
下面流路形成体252は、第1パワー回路部201と第1基板3001と共に、流路を形成している。下面流路形成体252に流れる冷媒は、中間流路形成体253から貫通孔301bを通って、下面流路形成体252に流入し、流路出口27を通って、流路形成体25の外部に排出される。これにより、第1パワー回路部201および第1基板3001の下面が冷却されている。
【0022】
図1で説明した構成により、冷媒経路254が形成され、冷媒は冷媒経路254の矢印に沿って流路形成体25の内部を流れていく。この冷媒経路254の途中には、冷却フィン24が設けられており、第1パワー回路部201および第2パワー回路部202の放熱効果を促進させている。
【0023】
冷却フィン24は、導電性を有しており、第1パワー回路側エミッタ導体板221と第2パワー回路側コレクタ導体板212とを電気的に接続している。これにより、最短距離でパワー回路部間を接続することができるようになり、インダクタンスの低減に貢献している。また、第1パワー回路部201および第2パワー回路部202を平面方向に並列に並べて配置する必要がないため、電力変換装置100の小型化にも貢献している。
【0024】
コンデンサ40は流路形成体25の外部に設置され、第1基板3001に正極端子401、第2基板3002に負極端子402が接続されている。これにより、冷媒の接触による電子部品の腐食が防止されている。
【0025】
図2は、本発明の一実施形態に係る、第1パワー回路部の基板(下層)の平面図である。なおX-X’は図1の断面位置を示すためのものである。
【0026】
第1基板3001は、第1パワー回路部201と、正極電源端子311を備える正極電源端子導体31と、交流出力端子331を備える交流出力端子導体33と、制御信号を生成する制御回路50と、によって構成されている。
【0027】
第1基板3001には、第1パワー回路部201と正極電源端子311との間にコンデンサ40が搭載されている。コンデンサ40は、セラミックコンデンサなどで構成され、複数個搭載される。コンデンサ40は、正極端子401及び負極端子402(図1)を有し、第1基板3001には正極端子401が接続されている。コンデンサ40は、第1パワー回路部201と並列に搭載されることで、コンデンサ40から第1パワー回路部201への電流経路が拡大されるため、インダクタンスを低減できる。
【0028】
第1パワー回路部201は、モールド樹脂23によってモールドされているが、第1パワー回路側エミッタ導体板221の一部の面はモールドされておらず、冷媒の流路に露出するようになっている。さらに、この一部の露出面には冷却フィン24が複数形成されている。これにより、第1パワー回路部201の放熱効果を向上させている。
【0029】
図3は、図2からモールド樹脂を除いた平面図である。
【0030】
制御回路50は、第1パワー回路部201に隣接して配置され、流路内基板配線52からワイヤボンディングなどの制御信号配線51を介して、第1パワー回路部201に接続される。これにより、制御信号配線51のインダクタンスを低減し、素子駆動性能の低下を防ぐことで損失増加を防止している。
【0031】
第1基板3001において、第1パワー回路部201と交流出力端子331との間に、冷媒を通すための貫通孔301bが設けられる。貫通孔301bは円形などの形状で形成され、第1パワー回路部201に対して並列に複数設けられる。貫通孔301bにより、基板3001の両面に設けられた全ての導体層に冷媒が連通し、第1パワー回路部201の両面冷却が可能となる。
【0032】
図4は、パワーモジュールの平面図、図5はその斜視図、図6はその正面図である。
【0033】
パワーモジュール20は、直流電力を交流電力に変換する電力変換装置における1相分の上アーム回路または下アーム回路を構成している。また、パワーモジュール20は、IGBT10と、ダイオード11と、コレクタ導体板21と、エミッタ導体板22と、によって構成される。
【0034】
IGBT10は、板形状で主電極101と当該主電極101に流れる主電流を制御する制御電極102とを有する。コレクタ導体板21とエミッタ導体板22は銅材で構成されており、IGBT10とダイオード11は、コレクタ導体板21とエミッタ導体板22により両面からそれぞれ挟まれている。IGBT10及びダイオード11は、はんだなどの金属接合材12を介してコレクタ導体板21及びエミッタ導体板22に接続される。
【0035】
本実施形態の電力変換装置100では、上記のような構造のパワーモジュール20により、第1パワー回路部201と第2パワー回路部202がそれぞれ構成される。第1パワー回路部201において、コレクタ導体板21とエミッタ導体板22は、第1パワー回路側コレクタ導体板211と第1パワー回路側エミッタ導体板221にそれぞれ相当する。第2パワー回路部202において、コレクタ導体板21とエミッタ導体板22は、第2パワー回路側コレクタ導体板212と第2パワー回路側エミッタ導体板222にそれぞれ相当する。なお、図1においてダイオード11は図示を省略している。
【0036】
図7は、本発明の一実施形態に係る、第2パワー回路部の基板(上層)の平面図である。なおX-X’は図1の断面位置を示すためのものである。
【0037】
第2基板3002は、第2パワー回路部202と、負極電源端子321を備える負極電源端子導体32と、交流出力端子331を備える交流出力端子導体33と、制御信号を生成する制御回路50と、によって構成される。第2パワー回路部202と負極電源端子321との間には、冷媒を通すための貫通孔301aが、第2パワー回路部202に対して並列に複数設けられる。
【0038】
第2基板3002は、第1基板3001と同一構造で形成されているが、第1基板3001と第2基板3002の配置および構造について、図2図7を用いて比較して説明する。図2に示す第1基板3001と、図7に示す第2基板3002とは、コンデンサ40の配置を除いて、互いに点対称な形状を有している。すなわち、第1基板3001の正極電源端子導体31は第2基板3002の交流出力端子導体33に該当し、第1基板3001の交流出力端子導体33は第2基板3002の負極電源端子導体32に該当する。このように、電力変換装置100を構成する上下アームを同一の形状および構造で製造しているため、生産性が向上する。
【0039】
さらに、図1に示したように、第1基板3001と第2基板3002を重ねて上下層の形態に配置することで、配線経路を短くすることと、流路形成体25の中に流入する冷媒による冷却と、を同時に実現できる。そのため、冷却性能の向上とインダクタンスの低減とを両立することによる出力増大の効果だけでなく、装置全体の小型化にも貢献している。
【0040】
第2基板3002において、第2パワー回路側コレクタ導体板212が第1パワー回路側エミッタ導体板221に対向するように配置され、第1パワー回路側エミッタ導体板221と第2パワー回路側コレクタ導体板212は複数の導電性冷却フィン24で接続される(図1)。これにより、第1パワー回路部201のIGBT10が第2パワー回路部202のダイオード11に対向し、第1パワー回路部201のダイオード11が第2パワー回路部202のIGBT10に対向する配置となる。このようにしたので、電力変換装置100のスイッチング時における過渡電流経路を短縮し、第1パワー回路部201と第2パワー回路部202に対向電流が流れることで、インダクタンスが低減する。
【0041】
コンデンサ40は、第2基板3002において、第2パワー回路部202と負極電源端子321との間に位置している。第2基板3002には、コンデンサ40の負極端子402が接続され、正極端子401に対して負極端子402は対向して配置される(図1)。これにより、コンデンサ40から第1パワー回路部201に流出する電流経路と、第2パワー回路部202からコンデンサ40に流入する電流経路が対向し、インダクタンスを低減できる。
【0042】
また、以上説明した構成において、電力変換装置100では、バッテリからの電動機の駆動に必要な電気エネルギーが第1パワー回路部201及び第2パワー回路部202に供給され、交流出力端子導体33に設けられた交流出力端子331から出力される交流電力を制御する。電力変換装置100のスイッチング時には、コンデンサ40の正極端子401から流出した電流は、第1パワー回路部201から導電性冷却フィン24を介して第2パワー回路部202に流れ、負極端子402に流入する。これにより、スイッチング時の過渡電流経路を短縮化し、インダクタンスを低減している。
【0043】
さらに、第1パワー回路部201及び第2パワー回路部202の半導体素子(IGBT10,ダイオード11)から導電性冷却フィン24まで、絶縁部材を介さずに放熱経路を形成しており、油などの冷媒により直接冷却されることで、熱抵抗の増加を抑制し電力変換装置100の出力増大を図ることができる。また、貫通孔301a,301bをモールド樹脂23に近接して設けることで冷媒経路254を短縮でき、圧力損失の低減と冷却効率の向上とを両立できる。
【0044】
図9は、本発明の一実施形態に係る、電力変換装置の上視図である。なおX-X’は図1の断面位置を示すためのものである。
【0045】
流路形成体25は、モールド樹脂23と貫通孔301a,301bを囲うように設けられ、コンデンサ40及び制御回路50は、流路形成体25の外側に形成される。これにより、冷媒の接触による電子部品の腐食を防止できる。一方で、第1パワー回路部201及び第2パワー回路部202と、制御信号配線51と、は流路形成エリア内に構成されるが、モールド樹脂23により冷媒の接触による電気的影響を受けない。
【0046】
以上説明した本発明の一実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
【0047】
(1)電力変換装置100は、パワー半導体素子であるIGBT10と、IGBT10を間に挟んでIGBT10のエミッタとコレクタにそれぞれ接続される複数の導体部(第1パワー回路側エミッタ導体板221、第1パワー回路側コレクタ導体板211、第2パワー回路側エミッタ導体板222、第2パワー回路側コレクタ導体板212)と、をそれぞれ有する第1及び第2パワー回路部201,202と、第1及び第2パワー回路部201,202を収納し、かつ冷媒を流す流路形成体25と、を備え、第1パワー回路部201のエミッタ側の導体部221は、第2パワー回路部202のコレクタ側の導体部212と対向して配置され、第1パワー回路部201のエミッタ側の導体部221と第2パワー回路部202のコレクタ側の導体部212とは、冷媒と接触している複数の導電性冷却フィン24により接続される。このようにしたので、冷却性能の向上とインダクタンスの低減とを両立し、出力増大を図った電力変換装置を提供できる。
【0048】
(2)パワー半導体素子は、IGBT10とダイオード11で構成され、第1パワー回路部201のIGBT10が第2パワー回路部202のダイオード11に対向し、第1パワー回路部201のダイオード11が第2パワー回路部202のIGBT10に対向する配置である。このようにしたので、インダクタンスを低減できる。
【0049】
(3)流路形成体25は、第1パワー回路部201の上面に流路を形成する上面流路形成体251と、第2パワー回路部202の下面に流路を形成する下面流路形成体252と、第1及び第2パワー回路部201,202の間に流路を形成する中間流路形成体253と、で構成される。このようにしたので、冷媒を連通させつつ上下層のパワー回路部201,202を同時に冷却することができる。
【0050】
(4)第1及び第2パワー回路部201,202は、導体部に電気的に接続される導体層を備えた第1基板3001と第2基板3002にそれぞれ搭載される。このようにしたので、上下層に配置した第1及び第2パワー回路部201,202による高さ方向の大きさを抑えている。
【0051】
(5)第1基板3001及び第2基板3002は、同一の形状で構成される。このようにしたので、生産性が向上する。
【0052】
(6)第1基板3001及び第2基板3002の導体層は、互いに対向して配置され、流路形成体25の外部に配置されるコンデンサ40の正極端子401及び負極端子402とそれぞれ接続される。このようにしたので、スイッチング時の過渡電流経路を短縮化し、インダクタンスを低減している。
【0053】
(7)上面流路形成体251と下面流路形成体252とのそれぞれの内部の流路は、中間流路形成体253の内部の流路を介して、互いに導通している。このようにしたので、上下層のパワー回路部201,202を同時に冷却することができる。
【0054】
以上、本発明を説明したが、IGBT10には、RC-IGBTを適用してもよく、これにより、HEVやEVの燃費向上のための半導体素子の低損失化、および電力変換装置100の小型化にさらに貢献できる。
【0055】
また、発明の技術的思想を逸脱しない範囲で、削除・他の構成に置換・他の構成の追加をすることが可能であり、その態様も本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0056】
10・・・IGBT
101・・・主電極
102・・・制御電極
11・・・ダイオード
12・・・金属接合材
20・・・パワーモジュール
201・・・第1パワー回路部
202・・・第2パワー回路部
21・・・コレクタ導体板
211・・・第1パワー回路側コレクタ導体板
212・・・第2パワー回路側コレクタ導体板
22・・・エミッタ導体板
221・・・第1パワー回路側エミッタ導体板
222・・・第2パワー回路側エミッタ導体板
23・・・モールド樹脂
24・・・導電性フィン
25・・・流路形成体
251・・・上面流路形成体
252・・・下面流路形成体
253・・・中間流路形成体
254・・・冷媒経路
26・・・流路入口
27・・・流路出口
30・・・基板
301a、301b・・・貫通孔
302・・・ビア
303・・・パワーモジュール組込孔
3001・・・第1基板
3002・・・第2基板
31・・・正極電源端子導体
311・・・正極電源端子
32・・・負極電源端子導体
321・・・負極電源端子
33・・・交流出力端子導体
331・・・交流出力端子
40・・・コンデンサ
401・・・正極端子
402・・・負極端子
50・・・制御回路
51・・・制御信号配線
52・・・流路内基板配線
100・・・電力変換装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9