(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-27
(45)【発行日】2024-09-04
(54)【発明の名称】機械式駐車場の入庫案内装置
(51)【国際特許分類】
E04H 6/42 20060101AFI20240828BHJP
E04H 6/18 20060101ALI20240828BHJP
【FI】
E04H6/42 Z
E04H6/18 606Z
(21)【出願番号】P 2020191582
(22)【出願日】2020-11-18
【審査請求日】2023-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000198363
【氏名又は名称】IHI運搬機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】副田 武司
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-019127(JP,A)
【文献】特開2009-024337(JP,A)
【文献】意匠登録第1324128(JP,S)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 6/00-6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車いす使用者対応の180度入庫型エレベータ方式の機械式駐車場における入庫案内装置であって、
前記機械式駐車場に設けられ、前記機械式駐車場の昇降装置により昇降される搬器が前記機械式駐車場の入庫階に位置するときに前記入庫階の床スラブと前記搬器との間に存する隙間を埋め、前記搬器の周囲に前記床スラブの床面と同一レベルの床面を規定する板状のプラットホームの一部をなし、車両の入庫方向に関して前記搬器の手前において前記搬器の両側方に位置する一対のプラットホーム部を備え、
前記一対のプラットホーム部はそれぞれ一対の上下方向へ伸びる支柱を介して前記昇降装置に支持され、また、前記一対のプラットホーム部は、前記昇降装置の昇降動作により、両プラットホーム部の床面が前記床スラブの床面と同一のレベルとなる高さ位置及び前記床スラブの床面より上方のレベルとなる高さ位置に選択的に配置可能とされている、入庫案内装置。
【請求項2】
前記プラットホーム部は入庫する車両に対して湾曲する側面を有する、請求項1に記載の入庫案内装置。
【請求項3】
さらに、前記プラットホーム部に取り付けられ前記支柱の周囲を部分的に取り巻く板部材であって入庫する車両に対して湾曲する側面を有する板部材を備える、請求項2に記載の入庫案内装置。
【請求項4】
前記プラットホームの側面及び前記板部材の側面は、それぞれ、前記車両の入庫方向及びこれに直交する方向へ互いに直交する一対の平坦部と両平坦部に連なる湾曲部とを有する、請求項3に記載の入庫案内装置。
【請求項5】
前記プラットホーム部の側面及び前記板部材の側面は、それぞれ、円筒面の一部からなる、請求項3に記載の入庫案内装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車いす使用者対応の機械式駐車場であって該機械式駐車場が180度入庫型エレベータ方式であるものの入庫案内装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車いす使用者対応の機械式駐車場については、一般的に、車両の出入口が設けられた入庫階の床面に、該床面上における車両の搭乗者(運転者又は同乗者)の車いすでの移動の障害となる段差が存しないようにすることとされている。このため、入庫階の床面からその上方に向けて突出するポスト型の入庫案内装置(例えば、後記特許文献1に記載された入庫案内装置)は設置されない。しかし、少なくとも車両の搭乗者が車いす非使用者である場合に利用可能であるポスト型の入庫案内装置を設置することができれば便宜である。
【0003】
機械式駐車場の一つである180度入庫型エレベータ方式の機械式駐車場では、車いす使用者対応のために、昇降装置により昇降される搬器が入庫階に位置するときに入庫階の床スラブと搬器との間に存する隙間を埋め、搬器と床スラブとの間の橋渡しをなすプラットホームが設置されている。プラットホームは、床スラブが規定する平坦な床面と同一のレベルにあり、搬器の周囲に、床スラブの床面に対して段差のない平坦な床面を規定する。
【0004】
また、プラットホームは、車両の入庫方向に関して搬器の手前において前記搬器の両側方に位置する一対のプラットホーム部を有する。両プラットホーム部は昇降装置に一対の支柱を介してそれぞれ支持され前記昇降装置と共に昇降可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、車いす使用者対応の180度入庫型エレベータ方式の機械式駐車場における入庫案内装置であって、前記プラットホームの一部を利用した、車いす使用者の移動の妨げとならない、車いす非使用者の便に供し得る入庫案内装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る入庫案内装置は車いす使用者対応の180度入庫型エレベータ方式の機械式駐車場に適用される。前記入庫案内装置は、前記機械式駐車場に設けられ、前記機械式駐車場の昇降装置により昇降される搬器が前記機械式駐車場の入庫階に位置するときに前記入庫階の床スラブと前記搬器との間に存する隙間を埋め、前記搬器の周囲に前記床スラブの床面と同一レベルの床面を規定する板状のプラットホームの一部をなし、車両の入庫方向に関して前記搬器の手前において前記搬器の両側方に位置する一対のプラットホーム部を備える。前記一対のプラットホーム部はそれぞれ一対の上下方向へ伸びる支柱を介して前記昇降装置に支持され、また、前記一対のプラットホーム部は、前記昇降装置の昇降動作により、両プラットホーム部の床面が前記床スラブの床面と同一のレベルとなる高さ位置及び前記床スラブの床面より上方のレベルとなる高さ位置に選択的に配置可能とされている。
【0008】
本発明によれば、両プラットホーム部はその床面が前記床スラブの床面と同一レベルにあるように置かれた状態にあるとき、前記搬器の周囲に車いすの移動の妨げとならない床面を提供する。また、両プラットホーム部はこれらの床面が前記入庫階の床面より上方のレベルにあるように置かれた状態にあるとき、両プラットホーム部は車両中の車いす非使用者が目視可能である状態におかれ、入庫案内としての機能を果たす。
【0009】
前記プラットホーム部は、好ましくは、入庫する車両に対して湾曲する側面を有する。これによれば、入庫車両が前記プラットホーム部に接触した場合における接触圧の低減を図ることができ、これにより、前記車両の損傷及び前記プラットホーム部の損傷の度合いを低減することができる。
【0010】
さらに、前記プラットホーム部に取り付けられ前記支柱の周囲を部分的に取り巻く板部材であって入庫車両に対して湾曲する側面を有する板部材を備えるものとすることができる。前記板部材も、また、前記車両及び前記プラットホーム部の損傷度合の低減に寄与する。
【0011】
前記プラットホームの側面及び前記板部材の側面は、例えば、前記車両の入庫方向とこれに直交する方向とに伸びる一対の平坦部と、両平坦部に連なる湾曲部とを有するものとすることができる。あるいは、また、前記プラットホームの側面及び前記板部材の側面を例えば円筒面の一部からなるものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】車両の入庫階に位置する、搭乗者が車いす使用者である場合の搬器及びプラットホーム部の概略的な半断面図である。
【
図3】車両の入庫階に位置する、搭乗者が車いす非使用者である場合の搬器及びプラットホーム部の概略的な半断面図である。
【
図4】プラットホーム部及びその支柱の一方向から見た斜視図である。
【
図5】プラットホーム部及びその支柱の他方向から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1を参照すると、車いす使用者対応の機械式駐車場であって該機械式駐車場が180度入庫型エレベータ方式である機械式駐車場における、車両の入庫階の床スラブと、前記入庫階の位置にある搬器(パレット)とが、それぞれ、全体に符号10及び12で示されている。床スラブ10は前記入庫階の平坦な床面13を規定する。搬器12は、床スラブ10に設けられた開口(搬器12の上下方向への移動用開口)14内にあって、車両の載置を待つ待機状態にある。図示の搬器12は、車両の搭乗者が車いす使用者である場合に使用される後記フラットパレットからなる。
【0014】
前記車いす使用者対応の180度入庫型エレベータ方式の機械式駐車場(以下、「機械式駐車場」という。)では、その利用に際し、車両の運転者が、前記入庫階に設けられた車両の出入口(図示せず)から前記機械式駐車場内の搬器12へと入庫方向15へ車両を進め、搬器12上に停車させる。前記機械式駐車場にあっては、車載の搬器12は回転されることなくそのままの状態で、前記機械式駐車場の設備である昇降装置16(
図2及び
図3参照)により、前記機械式駐車場内の複数段の格納棚(図示せず)のうちの一の格納棚の高さ位置まで上昇又は下降される。その後、前記一の格納棚上へ横移動され、当該一の格納棚上に駐車される。
【0015】
図示の機械式駐車場においては、搬器12の前記格納棚上への横移動のために、また、任意の格納棚上に載置された状態にある搬器12の前記格納棚から昇降装置16への横移動のために、
図2及び
図3に示すように、昇降装置16に複数のレール16aが設けられ、また、搬器12の底面下に、昇降装置16のレール16a上を転動可能である複数のローラ12aが設けられている。
【0016】
再び
図1を参照すると、図示の昇降装置16は、前記機械式駐車場を構成する4つの柱18にそれぞれ回転可能に取り付けられた複数のプーリ(図示せず)と、該プーリにそれぞれ掛けられ該プーリを巡る4つのロープ20とを介して、4つの柱18に吊持されている。昇降装置16は、電動モータのような駆動装置(図示せず)を駆動源とするロープ20の巻き上げ又は巻き戻し操作により駆動、昇降される。
【0017】
前記機械式駐車場においては、車いす使用者対応のために、昇降装置16により昇降される搬器12が前記入庫階に位置するとき、搬器12と、床スラブ10との間に存する隙間を埋め、搬器12の周囲に床スラブ10の床面13と同じ高さ位置に平坦な床面22を規定するプラットホーム26が配置されている。なお、搬器12は前記入庫階に位置するとき、床スラブ10に固定された弾性変形可能である複数のゴム板28により支持される。このとき、昇降装置16は搬器12の直下(例えば搬器12の約2mm下方)に位置する。搬器12はこの上に車両が乗ったときにその重みで下降し、ゴム板28が弾性変形し、昇降装置16上に支持される。
【0018】
また、前記機械式駐車場においては、車いす使用者が搭乗する車両を載せる搬器12として、特別なパレットである、平坦な車載面を有するフラットパレット(
図2参照)が使用される。これによれば、搬器12の車載面とプラットホーム26の床面22とが規定する車いすのための平坦な走行面を形成することができる。他方、車いす非使用者のみが搭乗する車両のための搬器12としては、通常のパレット、例えば全体にU字形に折れ曲がった形態を有する折り曲げパレット(
図3参照)が使用される。
【0019】
プラットホーム26は複数のプラットホーム部からなる。すなわち、搬器12の両側方にあって、
図1で見て、搬器12の平面形状である矩形の両長辺に沿って上下方向へそれぞれ伸びる一対の細長いプラットホーム部26aと、両プラットホーム部26aの両端にそれぞれ接する全体に山形の平面形状を有する一対のプラットホーム部26b及び一対のプラットホーム部26cと、入庫方向15に関して搬器12の奥の側及び手前の側にあって搬器12の平面形状である前記矩形の両短辺に沿って図上を左右方向へそれぞれ伸びる2つの細長いプラットホーム部26d、26eと、搬器12の奥及び手前の側にそれぞれ位置する比較的小さい一対のプラットホーム部26f及び一対のプラットホーム部26gとからなる。なお、4つの柱18は、その2つが搬器12の奥の側においてプラットホーム部26dと一対のプラットホーム部26bとの間を上下方向へ伸びている。また、他の2つの柱18は、搬器12の手前の側においてプラットホーム部26eと、一対のプラットホーム部26c、より詳細には一対のプラットホーム部26gとの間を上下方向へ伸びている。
【0020】
搬器12の両側方にそれぞれ位置する各対のプラットホーム部26a、26b、26cと、搬器12の奥の側及び手前の側にそれぞれ位置するプラットホーム部26d、26eとは、それぞれ、床スラブ10に固定されている。他方、比較的小さい残りの一対のプラットホーム部26f及び一対のプラットホーム部26gは、それぞれ、一対の支柱(図示せず)及び一対の支柱34(
図4及び
図5参照)を介して昇降装置16に支持され、昇降装置16と共に昇降可能である。
【0021】
ここで、固定のプラットホーム部である、搬器12の奥及び手前の側にそれぞれ位置する2つの細長いプラットホーム部26d、26eと、可動のプラットホーム部である二対の比較的小さいプラットホーム部26f、26gとに着目する。搬器12の奥の側に位置する固定の細長いプラットホーム部26dはその両端部にそれぞれ搬器12に向けて開放する2つの切り欠き30を有し、可動の両プラットホーム部26fはそれぞれ両切り欠き30内に位置する。また、搬器12の手前の側に位置する固定の細長いプラットホーム部26eはその両端部にそれぞれ搬器12の両側方に向けて開放する2つの切り欠き32を有し、可動の両プラットホーム部26gはそれぞれ両切り欠き32内に位置する。
【0022】
本発明においては、搬器12の手前において搬器12の両側方に位置する可動の両プラットホーム部26gを、車両の搭乗者が車いす非使用者である場合の入庫案内装置として利用する。このために、可動の両プラットホーム部26gが、昇降装置16の昇降動作により、2つの異なる高さ位置に選択的に配置可能とされている。
【0023】
より詳細には、車両の搭乗者に車いす使用者が含まれているとき、両プラットホーム部26gは、両プラットホーム部26gの床面22が床スラブ10の床面13と同一のレベルとなる高さ位置(
図2参照)に置かれる。これにより、両プラットホーム部26gの床面22と床スラブ10の床面13とが段差のない同一レベルの平面上に置かれ、車いすの移動に支障のないものとされる。このとき、搬器(前記フラットパネル)12の車載面もまた前記同一レベルの平面上に位置する。
【0024】
また、車両の搭乗者の全てが車いす非使用者であるとき、両プラットホーム部26gはその床面22が床スラブ10の床面13より上方のレベル(例えば100mm上方のレベル)となる高さ位置(
図3参照)に置かれる。これによれば、床スラブ10の床面13及び他のプラットホーム部26a~26eの床面からこれらの上方へ突出する両プラットホーム26gが、車両内から目視可能の前記ポスト型の入庫案内装置と同様の入庫案内装置として機能する。
【0025】
次に、
図1に示すプラットホーム部26gを拡大して示す斜視図である
図4及び
図5に示すように、プラットホーム部26gは、好ましくは、入庫する車両に対して湾曲する側面36を有する。これによれば、入庫車両が両プラットホーム部26g間を通過するときにこれらのプラットホーム部26gの一方の側面36に接触した場合における接触圧の低減を図ることができ、これにより、前記車両(特にタイヤ又はホイール)の損傷及びプラットホーム部26gの損傷の度合いを低減することができる。特に、プラットホーム部26gの損傷に伴う該プラットホーム部26gの修理又は交換に要する労力及び費用を低減することができる。
【0026】
さらに、好ましくは、プラットホーム部26gに取り付けられ支柱34の周囲を部分的に取り巻く板部材38を有する。板部材38は、入庫する車両に対して湾曲する側面40を有する。板部材38の側面40も、また、前記車両及びプラットホーム部26gの損傷度合の低減に寄与する。また、板部材38は、該板部材がない場合にプラットホーム部26g下に存する隙間を通しての物(例えば車両のキー)の落下を防止する働きをなす。
【0027】
図示のプラットホーム部26gの側面36及び板部材38の側面40は、それぞれ、前記車両の入庫方向15とこれに直交する方向(搬器12の幅方向)とに伸びる一対の平坦部36a及び一対の平坦部40aと、両平坦部36aに連なる湾曲部36b及び両平坦部40aに連なる湾曲部40bとを有するものとすることができる。図示の例に代えて、プラットホーム部26gの側面36及び板部材38の側面40を、それぞれ、円筒面の一部(図示せず)からなるものとすることができる。
【符号の説明】
【0028】
10 入庫階の床スラブ
12 搬器
15 入庫方向
16 昇降装置
22 プラットホームが規定する床面
26 プラットホーム
26g プラットホーム部
34 支柱
36 プラットホームの側面
38 板部材
40 板部材の側面